VR・デビル・ストーリー 真・女神転生   作:アリス大好き

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時代錯誤

誰かに体を揺さぶられている。

 

「起きろ、こんなとこで寝ていたら風邪をひくぞ。」

 

イズミが目蓋を開けるとそこには、やや時代錯誤の恰好をした青年がいた。その傍らには小さな人形が浮遊している。

180前後の身長に擦り切れた学ラン、下駄にリーゼントと見るからに番長らしき恰好をしている。

 

『ねえねえマスター、この人私が見えているみたいよ。』

「さして強そうには見えないが、同業者だったか。」

『依頼に疲れて寝ちゃったとかかしら。』

「だとしてもこんなとこで寝るか、悪魔に食われかねんぞ。」

 

青年は癖なのか首の横をさすりながら、人形と話をしている。イズミは片手で目をこすりながら、体を起こした。

どこかの路地裏のようだ。周囲からはエアコンの室外機の音が鈍く響いている。

 

「おはようございます。いい天気ですね。」

「ああ、おはよう。」

『普通に挨拶返すんですね、マスター。この人多分変人ですよ。』

「可愛いお人形ですね。」

「少し小うるさいのが欠点だが、俺の自慢の仲魔だ。よくわかっているじゃないか。」

『むー、小うるさいとは何ですか。素敵で可愛いポルターガイストちゃんですよ私。』

 

怪異ポルターガイストは主人の周りをぐるぐる回っている。イズミはいつ攻撃されるか内心ひやひゃしていた。

どこをどう見ても一般人には見えない青年はあからさまにサマナーである。いくら漫才師のようなことをしていても、サマナーである以上下手な受け答えは死につながりかねない。

 

「あの、此処どこでしょうか、寝て起きたら此処にいたんですが。」

「妖精のイタズラにでも巻き込まれたのか。まあいいがここは新宿だ。異能者なら分かっていると思うが、最近は悪魔の仕業と思われる事件が増えているからな。死にたく無いなら、表通りを歩くことをおすすめするぞ。」

『ゾンビやらガキやらうようよしていますからね。あいつら話が通じないので、倒すしかないですし。』

 

ポルターガイストは肩をすくめている。まるでやれやれとばかりに手をふりふりしている姿はとても悪魔とは思えない。

 

『マスター、そろそろ待ち合わせの時間ですよ。』

 

ポルターガイストが青年の時計を指差すと、そろそろ12時を回ろうとしていた。

 

「あんたも寝るんだったら、業魔館なり結界張った家なりに泊るんだな。そうじゃなければ悪魔に体を持ってかれちまうぞ。」

『近くの施設のマップデータいりますか。マスター怖がらない人は希少だから、友達になってくれるなら渡しますよ。』

「ちょっと待て。」

 

青年はポルタ―ガイストの首元をつかみ、少し離れたところで口論している。

「イスト、何を勝手なことを言ってんだ。」

『いいじゃないですか。何かあったとき頼れそうですし。同じ業界の友達を作るのも大事ですよ。』

「これじゃ、金渡して友達になったようなもんじゃねえか。流石にダメだろう。」

『だったら、マスターが口説き落としてくださいよ。信用できる友達欲しいでしょう。』

 

残念ながらイズミには全部聞こえていたが、口論はやむ様子がない。イズミからすれば友達になることはウェルカムなのだが、方法論に問題があったのか青年が受け入れるかは微妙なところだろう。

とはいえこのまま放置されるのも何なので声をかけることにした。

 

「二人とも、当人そっちのけで口論するのはどうかと思うんだけど。」

『そうですね。マスターもまずはちゃんと話さないとダメですね。』

「わりい、あんたの話も聞くべきだったな。」

「友達になるならないは置いといて、自己紹介はしましょう。私は代紋 泉(ダイモン イズミ)、医療従事者です。」

「俺は高築 一成(タカツキ イッセイ)。こいつが俺の仲魔のポルターガイストのイストだ。高校生兼悪魔専門の探偵をしている。」

『お姉さん、お医者さんなのか。』

「それと友達の件、受けても構わないですよ。こっちはまだ素人同然なんで、それでも良ければですが。」

 

むしろ受けさせてほしいというのがイズミの意見である。メシアンやガイア教徒なら罠を疑うが、イッセイ青年に関しては特に疑う理由がない。情報を得られるという点ではメリットが多い。

後はイッセイ青年が好青年であるため、純粋に楽しそうだからというのも大きかった。

 

「ああ、分かったよ。乗りにかかった船だ。DDSパスコードとマップはやる。何かあったら連絡してくれ。」

『素直じゃないですね、マスター。』

「友達になるなら、何が無くても連絡してくれてもいいですよ。」

「その気になったらな。」

 

イッセイ青年改めイッセイ君はイズミのCONPにデータを送ると、去っていった。

イズミが思うに、おそらく彼はプレイヤーではないだろう。VRゲーム全般では人工知能の一つとして電子脳型中間性知性体《デジタル・ブレイン・インターフェース》が運用されている。通常のAIとは違い、より人間に近い行動を取り、人間と同じように喜怒哀楽を有する性質を持つ。そのため彼らのことを別名、人工人間と呼ぶことすらある。VRにおいてプレイヤー以外の存在は全てが彼のように意思を持って生活している、イズミは改めてそう理解した。

 

「NPCだ、などと考えて動いていたら手痛いしっぺ返しを受けそうだな。」

 

CONPにはイッセイのパスコードが入っている。渡されたマップを開くとすぐそばの依頼仲介所兼宿屋が見つかった。

BAR・ヤドリギまでをCONPにナビゲートさせイズミは表通りに歩き出した。

 

 

 

 




電子脳型中間性知性体《デジタル・ブレイン・インターフェース》
デジタル・ブレインに個別に人格データを搭載したもの。肉体をデータ上で作成し、そこに重ね合わせることで疑似的に人間を作成できる。人間の脳みそを利用しているも同然の技術なので、当初は倫理的にどうなのかと突き上げを受けることも少なくなかった。現在では一定の条件下で人権を認める例も存在する。VRゲームでは簡易人格データをランダムに割り振って運用されている。中間性知性体でインターフェースと読ませている。

CONP
いろいろな形をした情報媒体の総称。要するにコンピュータのこと。軽く持ち歩けるスマホ型やタブレットサイズのもの、腕に着けるものなどが人気。

DDSパスコード
DDS-NETで特定の個人と連絡するために必要なコード。電話したり、メールしたりできる。

ポルターガイスト
外道・悪霊などが多い悪魔。イッセイのは少し特殊なのでこの種族ではない。DARK-CHAOS悪魔なので本来は会話が成立しない。
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