物足りなかったらすいません。
十咎さんに全てを話したあの日から、一週間が過ぎた。
どこに行くにも着いてきてくれるようになった彼女のお陰で、イジメはパッタリとなくなり、私も少しづつだけど元に戻り始めた。
正直、感謝してもしきれない。
だから、その思いを伝えようとしたが、彼女に言われた言葉が脳裏に過った。
『アタシが好き勝手やる。桜の都合も同意も気にしない。……だから、気にすんな』
喉元まで出かけた言葉が、止まってしまい、結局何も言えなかった。
そして、今も隣に歩く十咎さん、私に対して気を使ってるとは思えない態度で接してくれている。
あやふやな関係だった。
不確かな関係だった。
距離感が分からない。
知り合いとも言えず、友達とも思えない。
存在しないはずの壁が、私と彼女を隔ててるようだ。
きっと、一緒に居てもつまらないだろうに、いつまで律儀に私を守ってくれるんだろうか?
元に戻りつつあるのに、彼女の事を考えると、いつも悪い方悪い方へと傾いてしまう。
──無意識だった、だから思いが口から漏れる。
「十咎さんは、私と居て良いの? 友達、他にもいっぱい居るのに……」
ハッと気付いた時には遅くて、どうしようもない嫌悪感に心が埋め尽くされる。
助けて貰ってるのに、支えて貰ってるのに、私は何も返せてないのに。
……恐る恐る、彼女の顔色を伺った。
見えたのは、教室では見た事の無いような、陰りのある笑顔。
「そう、だな。付きっきりは良くない……けど、アタシは見捨てるなんてできないからさ。バカなんだよ、ホント」
最低だ。
ちゃんと、言わなきゃ。
「……バカじゃない」
「え……?」
「十咎さんは、バカじゃない。さっきの言葉は違くて。ただ、あなたにお礼が言いたかっただけ」
証明しなくちゃ。
十咎さんが頑張った結果はここにあるって。
あなたの行動のお陰で救われた人間がここに居るって。
最高の笑顔で、示すんだ。
「ありがとう」
「……っ。別に、良いのに」
一瞬だけ、本当に一瞬だけ破顔しそうになった彼女は、無理矢理に切り替えてそう言った。
嬉しい、私の行動が、彼女の心を動かしたのだ。
多分だけど、ちょっとは楽にしてあげられたはず。
放課後の帰り道。
私たちは少しだけ寄り道をして帰った。
◇
つい先日オープンしたばかりのクレープ屋に、アタシと桜は足を運んでいた。
一週間も一緒に居たのに、彼女との寄り道はこれが初めて。
さっきのお礼の件もあり、アタシたちを取り巻く雰囲気はどこか温かい。
桜は、よく変なタイミングで距離を詰めてくる。
知り合いとも友達とも言えない、微妙な関係故だろう。
でも、アタシにとってそれは心地が良かった。
意地悪な言い方になってしまうが、戸惑う彼女は可愛らしく、アタシの理想の女の子だったから。
色々なことが立て続けに起きて疲れていた心も、彼女と過ごす内にほぐれていき、危うく泣くところだった。
まだ、知らない事も多いが、確実なことがある。
隣に立つ、桜咲という少女は良い奴だ。
「十咎さんはどれを頼むつもり?」
「あ〜。アタシは、イチゴチョコにしようかな。桜は?」
「…じゃあ、チョコバナナ。違うやつだったら、お互いの食べてもおもしろいでしょ?」
「……だな」
苦笑混じりに返すアタシとニコニコと笑う桜。
素で今の言葉が言えるあたり、天然の人たらしに見えてくる。
イジメの理由は、彼女のこう言う部分にもあるのかもしれないと察したが、口にすることはなかった。
取り敢えず、今後あーんを強要するのは止めて欲しい。
時系列的にはメルの魔女化後~って感じです。