遊びに誘ったあの日以来、なんとなくだけど……私は十咎さんに避けられてる気がする。
勿論、学校ではできる限り傍に居てくれるが、距離が遠く感じる。
理由は、分からない。
倒れてしまって迷惑をかけたが、彼女はそれくらいで私を避けたりしない。
折角、距離を縮めようと、心地よい距離に戻ろうとしたのに──最悪だ。
けど、諦めるなんてしたくない。
それだけは嫌……だから、助っ人を呼んだ。
私より十咎さんと付き合いがあるであろう、助っ人を。
「来てくれてありがとう、秋野さん」
「ううん、困った時はお互い様だもん。大丈夫だよ! ……それより、お話って?」
「実はね──」
そうして、ある程度要件を話すと、秋野さんの表情は、どこか困ったようなものに変わっていった。
流石の彼女でも、対処出来ないような相談だったのかもしれない。
「秋野さん、もしかしてだけど……難しい相談だった?」
「ふゆぅ……だ、大丈夫だよ! 任せて!」
苦笑いでそう言ったあと、秋野さんは「う〜ん」と唸り始めた。
勘でしかないけど、水波さんに相談してもきっと、なんだかんだ助けてくれたんだろうな、と思った。
少しずつ時間が過ぎて、唸りも収まり始めた頃、彼女は顔を上げる。
「ももこちゃんは……きった桜ちゃんのことを避けてる訳じゃないよ? 大切に思ってるから、距離感が分からなくなってるだけだと思うんだ」
「十咎さんが、私を大切に想ってる?」
「そうだよ! 内緒だけどね、ももこちゃんが私やレナちゃんに桜ちゃんのことを話す時、すっごく優しい顔なんだよ?」
「優しい、顔」
「全然見たことなかったから、私もレナちゃんも驚いちゃった。……だから、安心して大丈夫。少ししたら、きっと元通りになるから」
そっか……そっか。
私、十咎さんに大切に想われてるんだ。
だったら、待ってみようかな。
無理矢理押し気味に行ったら、余計拗れちゃうかもだし。
一人、私はそう納得して、秋野さんに感謝を伝えた。
相談しなかったら、酷く関係が歪んでしまうところだった。
「今度、なにか別にお礼するよ? 何がいい?」
「気にしないで、力になれたなら良かったよ」
朗らかに笑う秋野さんは、少しだけ十咎さんに似ている気がした。
いつか、私もこんな顔で笑う時が来るのかな?
来たら、良いな。
◇
「一応、濁して誤魔化せたけど……長くは続かないと思うよ? どうするのももこちゃん」
「アタシの問題だしな、勝手になんとかするよ。ありがとな、かえで」
「大丈夫。……桜ちゃんと話すの嫌いじゃないから」
長くは続かない……か。
分かってる、あの時の魔女は強かった。
近くにいた人間の殆どが魔女の影響を受けていて、その中で桜だけが無事だった。
キュウべぇに聞かなきゃ分からないが、少なくとも魔法少女になる素質は十分ある。
でも、この世界に桜を来させる訳にはいかない。
バットエンドな結末が確定しているような地獄の道を、彼女に選ばせたくない。
時間が経つにつれその思いは強くなって、自然と桜と距離を置いている自分がいた。
アタシに──アタシたちに関わり続けたら、いづれこっちに来る。
だから多分、無意識に遠ざけていたんだ。
普通に生きて欲しい、普通に幸せになって欲しい。
そう思うくらい、桜はアタシにとって大切な友達。
「だけど、自分の事情を押し付けて悲しませたら、意味ないよなぁ」
「ももこちゃん……」
「悪い、かえで先帰っててくれ。アタシはもう少し頭を冷やしてから帰るからさ」
「……うん。また明日」
「おう、じゃあな」
太陽は仕事を終えて、月の優しい光と街灯が道を照らしている。
子供はとっくに家にいる時間。
かえでを見送ったあと、家の近くにある、昔遊んでいた公園に足を運ぶ。
人っ子一人いない公園は怖い、と言うよりもの哀しい雰囲気で、アタシは適当なベンチに腰を下ろした。
考える。
今後のことを、考える。
先ず、魔女狩りは止めない、
苦しい思いをすることになるし、もしかしたら桜をもっと悲しませることになるかもしれないが、もうそれしか選べない。
お互いが好きになればなるほど、一歩間違えるだけで、関係はグチャグチャに壊れてしまう。
方や一般人、方や絶望を知った魔法少女。
「ホント、バットタイミングだよなぁ」
時期が悪かった。
状況も悪かった。
相手も悪かった。
なにもかもが悪い方向で重なって、偶然出会ったのがアタシと桜。
桜じゃなかったら、大切に思えなかっただろう。
桜じゃなかったら、絶対に助けたいとは思えなかっただろう。
桜じゃなかったら──
「苦しまなくて、済んだのかな?」
答えは自分の中にしかない、そんなの分かってる。
今は、進むだけだ。
桜が憂いなく笑える明日のために。
そこに、アタシが居なくても。