最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第八十一話ハルナガ京討ち入り(後編)

ハルナガ京 メインストリート

「コイツ化け物だぞ!!」

 

「恐ろしく素早い奴だ!!!!」

 

「この乱戦で何で急所を正確ッ」

 

「君達では、俺の相手は務まらない!!!!」

 

向上は射撃と簡単な格闘を混ぜながら、乱戦に持ち込んで相手に攻撃をさせない。帝国兵が持つライフルはボルトアクション式であり、1発ごとのリロードが必要となる。更にライフルは無駄に長いので、こういう至近距離での格闘戦にはめっぽう弱い。例え銃剣で突こうとしても、帝国兵の数が多い方へ多い方へと向上が進むので、味方に刃が刺さりそうで刺すに刺さない。

 

「何なんだよコイツ!!!!」

 

「何で刀なのに、銃相手に戦えたんだ!!!!」

 

「コイツ神谷浩三!神谷浩三・修羅だ!!!!!!」

 

「気付いた所で、何にもなんねーよ!!!!」

 

一方の神谷は、そもそも根底から違った。向上は乱戦に持ち込ませて撃たせない様にするのに対して、神谷はその辺りは何も考えずに相手を殺すことのみを考える。放たれた弾丸は刀で切り裂き、突き刺そうとしてくる銃剣はライフルごと刀で弾き、刀をライフルで防いだら剛撃を持ってライフルを脳天にめり込ませる。無茶苦茶である。

 

「神谷殿は化け物か.......」

 

「団長さんもそうだけど、隣の副長さんも相当だよ.......。あんなの、見た事ない」

 

「お嬢さん方。頼むから、アレを皇国基準にするのはやめてくれよ?」

 

「そうそう。あそこで戦ってる2人がやばいのであって、それ以外はヤバくないから」

 

とは言うが、皇国にだってヤバいのはもっといる。鎌倉バイキングとか第四海兵師団とかコイツら神谷戦闘団とか、色々人間辞めてる連中がいるのだ。確かに神谷と向上クラスは殆どいないが、それでも普通に人間やめてる奴は結構いる。

 

「そんじゃま、我々も暴れますかね」

 

「そうだなー。多分、そろそろ潮目が変わるしな」

 

兵士達は屋根の淵へと並び出し、射撃態勢に入る者や銃剣を装着し出す者もいる。白亜のワルキューレも武器を構え直し、列へと並ぶ。

 

「.......あぁ、ごめんなさい。2人は分からないわよね」

 

「ヘルミーナさん。もしかしてこれって、あの戦いに飛び込むんですか?」

 

「そうよ。今は向上さんと浩三くんの攻撃で敵は混乱しているわ。でもそろそろ、統制を取り戻す筈。その瞬間に私達が更に奇襲を仕掛けるの」

 

ヘルミーナはさも当然かの様に言うが、戦場を読むのはかなり難しい。天気と同じで必ずしも予測が当たるとも限らないのが戦場だ。だが神谷戦闘団の面々は、命令もなく何を言わずとも全員が戦場を読んで同じ戦法を選択している。これだけでも恐ろしい。

 

「どうだ、2人も我らと共に行かぬか?」

 

「しかし我々が行けば、そちらの連携を崩すやもしれぬぞ?」

 

「問題ないよ。何せ、その為の我々だ」

 

真っ赤な機動甲冑を纏った男がアナスタシアの背後から現れる。赤衣鉄砲隊の隊員だ。

 

「我々、赤衣鉄砲隊は神谷戦闘団の中でも特に射撃に秀でた者が配属される。この理由は白亜のワルキューレを援護する為であり、我々は予測の難しい超至近での斬り合いの中でも正確な援護射撃を持って、ワルキューレの姫君を守れる様になっている。そこに同じ近接特化の者が2人加わったところで、さほど問題はない」

 

「彼らの腕は私が保証しよう。事実、我ら姉妹は一度たりとも誤射を受けた事はない。訓練中も含めてな」

 

アナスタシアの言葉に、2人は頷いた。フィームとアキナ、参戦決定である。2人が屋根の縁まで行くと、丁度戦闘の潮目が変わる瞬間だった。

 

「変わったな。野郎共、掛かれ!!」

 

白亜のワルキューレ、フィーム、アキナ、赤衣鉄砲隊、白亜衆の近接特化組が屋根から飛び降りて神谷と向上の戦闘に加わる。

 

「ナイスタイミング!!」

 

「うわぁ、かなり食い散らかしたわね。私たちの分を残してくれてもいいんじゃない?」

 

「そう言うなって!」

 

「これは帰還後に焼肉かBBQパーティーの詫びが必要だと思うが?」

 

「お!アーシャ姫いいねぇ!!」

 

「俺たちも欲しい!!」

 

「全く、今は戦闘中だ!!その辺の話は後後!あ、長官。松坂、神戸、佐賀、近江、鹿児島の黒毛。全部A5でお願いしますね!!」

 

「おい待て向上!お前今の流れ止める時のヤツだろ!!!!しかも高いヤツだし全部!!まあ別にいいけどさぁ」

 

戦闘前に敵がいる目の前で語るべき内容ではない。焼肉、BBQというのは分からずとも、多分食事か何かなのは分かる。それにしたって、普通なら上官からの鉄拳が飛ぶ様な会話だ。にも関わらず、普通に神谷もツッコミを入れながら乗っている。この時点でかなり異質であった。

 

「テメェら焼肉ないしBBQがしたいなら、敵を倒せ!!」

 

「肉ぅぅぅぅ!!!!!」

「ミーーーート!!!!!」

「A5和牛ぅぅぅぅ!!!!!」

 

近接組の白亜衆が銃剣片手に敵に襲い掛かり、まるでバーサーカーの様に雄叫びを上げながら敵を殺しまくる。これに合わせて上からも弾丸が飛んできて、ついでにレイチェルとミーシャも攻撃を開始。矢と魔法も飛んでくる。

 

「上にも敵だ!!!」

 

「クソッ、なんなんだコイツら!!!!」

 

「退け退け!!!!」

 

帝国兵はどうにか逃げようとするが、逃げて行く方向に矢と魔法が飛んでくる。もうこの時点で彼らの運命は降伏か死ぬかの二択でしかない。逃げるというのは、許されないのだ。

 

「逃げてはダメですよ。逃げられては、折角のパーティーが台無しです」

 

余談だが、完全にエルフ五等分の花嫁は神谷戦闘団に染まっている。神谷戦闘団は基本的に戦闘狂というか、少なくとも他部隊では「頭がおかしい」「狂ってる」と言われる連中がノーマルである。そんな狂った連中に揉まれた結果、普段は普通の出会った時と同じ様な感じなのだが、戦闘となるとドSというか容赦が無いというか、ナゴ村に住んでいた頃よりも戦闘を嬉々として楽しむ様な感じになっていた。簡単に言えば、全員まるで悪の組織の女幹部みたいな言動をすることが多々あるのだ。

 

「クソッ!!」

 

逃げ惑う兵士の1人が、ミーシャに向かってライフルを構えて、撃ち殺そうとしてくる。だがそうさせるよりも先に、ミーシャの横に控えている白亜衆の1人が射殺した。

 

「奥方様には傷一つ付けさせぬ!」

 

「我ら白亜衆。奥方様を害そうとするならば」

 

「まずは我らを倒し」

 

「我らの屍を越えてからでないと」

 

「その凶弾は決して届かぬと知れ!!」

 

「いよぉぉぉぉ!!」

 

なんか何処ぞの家臣団みたいな事を言っている、この6人。彼らはミーシャの護衛だ。ミーシャとレイチェルには基本的に護衛が必ず付く。というのも彼女達は前線の後衛からの援護が多く、特性も相まって、まあまあ敵にも狙われやすい。だがミーシャもレイチェルも総じて、一撃の威力は大きいが攻撃までに時間がかかるという欠点がある。それを補うために、供回りを付けているのだ。

無論これは神谷が嫁を守るためにプライベートな理由で付けたのではなく、戦略的に考えての判断である。しかも発案自体は白亜衆の隊員からであるし、他の3人はそういう供回りは付いていない。

 

「あー、こーきゅん?アレ、どうしようか」

 

エリスが指差す先には、機関銃を装備した装甲車がいた。恐らく、応援に駆けつけたのだろう。正直、下にいる味方を撤退させる暇はない。

 

「エリス姐さんお願いします」

 

「任せてこーきゅん!」

 

エリスは愛剣を地面に叩きつけて、剣の固有アビリティを発動させる。このアビリティは地面を割って、中から数千℃の溶岩を垂直に吐き出させる技で、例え皇国の戦車であろうと破壊できる威力を持つ。帝国の装甲車では太刀打ちできない。

 

「汚い花火ね」

 

「おぉ」

「エリス姫かっけぇぇ」

「流石エリス!俺達にできないことを平然とやってのける!そこに痺れる憧れるぅ!!」

 

エリスは得意げに髪を手で払いのけ、なんかカッコいい。そしてセクシーである。男どもはまたも「おぉ」という声を上げて、エリスを崇め奉らん勢いで拝み始めた。

一方、フィームとアキナもしっかり神谷戦闘団の戦闘についていっていた。

 

「はぁ!!」

 

「よくもパパとママを!!!」

 

フィームとアキナ。共にヒノマワリ王国内でも一、二を争う剣の使い手だ。相手が帝国兵相手でも、全く引けを取らない。だがそれでも、あまり実戦経験がない2人は少しアラが目立ってしまう。兵士を殺しきれてない事もしばしばある。

 

「アキナ、後ろだ!!」

 

「え?」

 

「.......死.......ね.......」

 

帝国兵の1人が、アキナを背後から撃とうとしていたのだ。もう避ける事もできない。だが撃たれるよりも先に、向上がそれを阻止した。

 

「後ろからレディを撃とうとは、無粋な帝国兵もいるものだ」

 

「副長さん!」

 

「お怪我は?」

 

「大丈夫!」

 

「よろしい。もう恐らく、掃討が終わるでしょう。次の場所へ進撃しますよ」

 

ひと足先にフィームとアキナを屋根の上へと運び、向上はまた戦場へと戻る。その姿をアキナはうっとりとした表情で眺めていた。

 

「かっこいい.......」

 

「お前のタイプだもんな彼は」

 

アキナ、向上に惚れた。全く、この国はどんだけ皇国の人間を好きになるのやら。だが知っての通り、向上は推しに恋して今は相思相愛となっている。付け入る隙はない。ぶっちゃけアキナが傾国の美女だったとしても、向上は推しを取るだろう。その位惚れている。アキナよ、お疲れ。

そんな恋路はさておき、戦闘は数分後には終結した。また屋根の上から次の場所へと進撃するべく進むのだが、ここで偵察用にドローンを飛ばしていた兵士が一団を止めた。

 

「この先にかなり頑丈な防御陣地を築いてますね。この先、広場あるでしょ?」

 

「あぁ。セントラル広場という、この都市で1番の広さを誇る円形の公園だ」

 

「そこに恐らく民家から引っ張ってきたであろう家財道具と土嚢を組み合わせた、簡易的な三重の陣地を構築しています。対戦車砲8門、迫撃砲19門、重機関銃が30挺はありますね。

うわ、しかも歩兵装備がかなり良い。全員が大型のアサルトライフルで武装してやがる」

 

この一言で神谷と向上は、そこに陣取っているのが例の帝国が保有する特殊部隊である事に気付いた。正直、突破できなくはないが面倒なのには変わりない。となれば、手段は一つだ。

 

「ところで、そのセントラル広場は歴史的な場所なのか?」

 

「うーん、特にそういうのはないよ」

 

「よし。なら、焼き払うか。極帝さん、やっておしまい!!!!」

 

闇夜の空に、超巨大な竜が現れる。その姿にフィームとアキナは震え上がった。ワイバーンや風竜を上回る、巨大な赤い体躯に、立派な角と巨大な翼。間違いなく、伝説の竜である。

 

『任せよ!!!!』

 

極帝はいつもの様に、魔力ビームでセントラル広場を焼き払う。シーン暗殺部隊の兵士達は、死体も残らず消え去った。それだけではない。綺麗だった公園は中の植物から、遊具やトイレなどの施設、シーン暗殺部隊の兵器群に至るまで跡形もなく消し去った。しかも一撃で。

 

『やはり焼き尽くすのは気分が良い!!!!』

 

「まさかあれ.......」

 

「竜神皇帝『極帝』だ.......」

 

現地民の取り分け武を極めようとする者や竜騎士にとって、極帝は並々ならぬ存在だ。竜騎士は言わずもがな竜の大親分であり、一説では全ての竜の父とまで言われる存在でもある。武を極めようとする者にとっては、極帝を武の化身や神として崇める者もいる。崇めるとまではいかずとも、最強の存在である極帝には畏敬の念を持つのが普通だ。

そんな存在がいきなり現れれば、ポカーンとするに決まっている。

 

「うへぇ。団長、見事に黒焦げです。グロ注意です。R18Gです」

 

「うわぁヒデぇ」

 

ドローンを操縦する兵士達からは、まあ一応の報告が上がる。とは言えあの攻撃では、もう残る物も残らない。全てが焼滅している以上、報告のしようがない。

 

「か、神谷殿。あれは.......」

 

「俺の盟友、竜神皇帝『極帝』だ。多分現地民なら、名前くらいは知ってるんじゃない?」

 

「もう驚くのも疲れたよ.......」

 

なんかもう、無茶苦茶すぎて驚く気力もなかった。取り敢えず広場のシーン暗殺部隊の撃退には成功したわけだが、まだまだ障害はいる。なんと次は機甲師団が出てきたのだ。

 

「次は戦車のお出ましです。どうします?」

 

「うーん、どうしようか」

 

「まさか戦車って、あの戦車?鋼鉄製の大砲つけた荷車」

 

「その戦車であってる」

 

2人は戦車の単語を聞いた瞬間に、見事に萎縮してしまった。というのも占領後、統治軍の演習に免れたことがある。そこで見た戦車の威容は、今も尚記憶にこびりついて離れない。大きな音を上げながら突き進む鋼鉄の塊に、巨大な大砲。更には機関銃までついている。あんなのと出くわして、生きて帰れる自信はない。

 

「まさか戦うのか?」

 

「どうだろ。団長がどう判断するかだな。まあ、あんなチハたん擬きに負けはしないがね」

 

「戦車に勝てるの!?」

 

「勝てるよー。何せ、あんなの皇国基準じゃ戦車じゃなくて、ただの装甲車とか歩兵戦闘車程度の扱いだし。あ、装甲車とか歩兵戦闘車ってのは戦車のワンランク下の兵器ね。あんなの、こっちのもつ携行式対戦車ミサイルで1発よ」

 

白亜衆の兵士の言葉に、2人は言葉を失った。あの威容を誇る戦車を歩兵が倒すなんて、全く考えつかない。イメージすら湧いてこないというのに、目の前の男は倒せるというのだ。狂っている。

 

「おいおい。あんなチハたん擬きにミサイルは勿体ねーよ。普通にジェットパックで屋根に取り付いて、中にグレネード投げ込もうや」

 

「いやいや。たかが二次大戦の骨董品にグレネードなんて、ご大層な兵器はいらんいらん。即席の火炎瓶をエンジンの上に投げつければ終わりよ」

 

「いっそ装甲歩兵の60mmオートで、履帯ちょん切って貰おうぜ?」

 

「だったら、ランスガンとかヒートブレードでボコボコにしようや。それが一番コスパがいい」

 

兵士達はどうやって戦車を破壊するかで盛り上がる。側から見たらかなりヤベェ奴らの集まりだが、この一団なら余裕でやってのける。というか第二次世界大戦程度の装備であれば、ジェットパックで真上から奇襲できる以上、結構簡単に破壊できてしまう。他の皇国兵でも難なくやってのけるだろう。

 

「よーし決めた。麗奈ちゃんよろしくー!!!!」

 

『はい!』

 

無線から響く銀鈴の声。次の瞬間、真っ白な四足歩行の戦車の様な兵器が屋根や通りに飛び出してきた。戦車を遥かに凌駕する機動性に、2人は目を見開いて驚いている。

 

「なにあれなにあれ!!」

 

「XMLT1土蜘蛛。第86独立機動打撃群(エイティシックス)にのみ配備されている、高機動多脚戦車だ」

 

赤衣の隊員がそう説明しているが、殆ど頭に入ってこない。あんな鋼鉄の塊が、まるで虫の様にわちゃわちゃ動くのは2人には異常な光景だったのだ。

そんな2人を他所に、彼らは敵戦車に食らいつく。

 

「戦隊各機、敵戦車は軽装甲かつ鈍重だ。主砲で撃ち抜ける。反撃に注意しつつ、全て破壊するぞ」

 

『俺は適当に撃って場を賑やかしますかね』

 

『雷電の60mm、今回ばかりは大活躍しそうだよね」

 

『そうねぇ。帝国の戦車、装甲薄いから』

 

『でもさー、主力戦車が機関砲に負けるってどうよ』

 

『ダセェ!』

 

シェイファーもハウンドも、共に装甲は紙同然。皇国基準ではあって無いような物に等しい。本来であれば軽装甲目標の掃討や、重装甲目標への火力拘束が目的の60mm機関砲が最強武器になってしまう。こんな戦場、中々ない。

 

『ブラッディレジーナより戦隊各機!敵戦車、総数30!殲滅してください!!』

 

「了解」

 

エイティシックス達はシンを先頭に、敵戦車群へと突貫。58式90mm滑腔砲が、あちこちから敵戦車に突き刺さる。

 

『21号車がやられた!!』

 

『クソッ、なんなんだコイツらは!?』

 

『素早いぞ!!』

 

『照準が追い付かない!!』

 

『退け退け!!』

 

戦車隊はどうにか撤退しようとするが、退路を塞ぐように攻撃しているので、撤退しようにも撤退路が存在しない状態になっている。そんな状態にもなれば、さらに戦車兵達は混乱し指示も二転三転しマトモな統制なんて取れやしない。

その瞬間を待ってましたと言わんばかりに、シンが駆るアンダーテイカーが真上から接近戦を仕掛ける。

 

『なんだアイツは!!』

 

『剣だ!剣が付いてるぞ!!』

 

『く、来るな!!来るんじゃね———ガッ』

 

流石の戦車も高周波ブレードで斬られる事は、全く予想だにしていない。接敵より、僅か2分。戦車30両からなる防衛部隊は壊滅。神谷達は統制府近くまで進撃した。

 

「長官。神谷戦闘団各部隊、集結完了しました。次はどうされますか?」

 

「簡単だ。統制府まで凱旋と行こうじゃないか。音楽を流せ!!」

 

「団長!曲はどうするんですよ!!」

 

「抜刀隊のremix版でいい!」

 

抜刀隊と言えば旧陸軍からある日本の軍歌の代表格であり、メロディーだけならミリタリーに明るくない者でも聞いたことがあるくらいには有名な物だ。それを現代風にアレンジした物が、大音量でハルナガ京に響き渡る。

神谷戦闘団の面々は、何もする事なくただ統制府に向かって歩く。なんなら整列する事なく、通りを歩く者もいれば屋根を歩く者、ジェットパックで空を飛ぶ者もいる。その後方には戦車や装甲車もズラリと並び、歩兵の後ろから付いてくる。

 

「掲げろ!!」

 

「おう!!!!」

 

軍団の先頭に5種の旗が翻る。白地に真ん中に赤い丸のある旗、白地に赤い太陽の意匠を象った旗、赤地に金の十六葉八重表菊が描かれた旗、黒地に白で丸と揚羽蝶の描かれた旗、旧世界の地図を背にしたアリコーンとその下に二太刀の刀と一挺の拳銃が描かれた旗だ。

日本の国旗、旭日旗、天皇旗、神谷家家紋、神谷戦闘団の部隊旗が翻り、その後ろから軍歌と共に軍人達が続く。まるで閲兵式である。戦闘が始まってから建物の中に隠れていたヒノマワリ王国の民も、窓から顔を出しその様子を何が何だか分からずに見ていた。

 

「奴ら、行進しているだと!?」

 

「舐めやがって!!機関銃で一掃してやる!!!!」

 

統制府前に陣取っていた最後の守備隊の兵士達は、舐めた行動を取る神谷戦闘団に対して怒りを覚え、自らの武器のトリガーに指をかける。だが兵士の誰かが、こう叫んだ。

 

「あの紋章、神谷戦闘団だぞ!!!!」

 

「神谷戦闘団.......?」

 

神谷戦闘団の言葉が出て数秒後、兵士達の士気は一気に下落した。神谷戦闘団と言えば、ムーへの侵攻を撃退した皇国の精鋭軍団。この辺りまでは末端の兵士でも知っている事だが、帝国上層部が神谷戦闘団に関する様々な情報を隠した結果、どんどん尾鰭が付いてよく分からない組織に進化した。「神谷戦闘団の兵士は全員化け物であり、生き血を啜り、捕虜を拷問して笑う狂人の集まり」だとか「化け物を飼い慣らし、敵に突撃させる」とか「全員不死身で、弾が全く効かない」とかである。

無論神谷戦闘団の人間は狂っちゃいるが、人道に反する事は基本しないし殺せば死ぬか弱い人間である。あながち間違いでもないが、少なくともそんな妖怪とかモンスターの集団ではない。ただちょーっと人間を辞めているだけに過ぎない。

 

「狼狽えるな!!総員着剣!!!!これより突撃を敢行する!!!!!!」

 

「お、おぉ!!!!」

 

「皇帝陛下万歳!!!!」

 

「グラ・バルカス帝国万歳!!!!」

 

「突撃ぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

 

帝国兵が恐らく儀礼用と思われるカトラスを持った士官を先頭に、ライフルに銃剣を装備して突っ込んでくる。だがそれを許すほど、神谷戦闘団は甘くない。

 

「撃て」

 

装甲歩兵の35式七銃身5.7mmバルカン砲と、歩兵の42式軽機関銃、32式戦闘銃、43式小銃といった火器が阻む。帝国兵はボルトアクション式のライフル銃で、連射できるのは機関銃部隊の機関銃のみ。対する皇国兵は全てフルオートな上、35式にいたってはバルカン砲であり発射レートはもう歩兵が装備するレベルの代物ではない。その圧倒的弾幕の前に、帝国兵は倒れていく。

 

「怯むな!!続けぇ!!!!!」

 

だがカトラス持ちの士官だけは、怯む事なく前へと進む。その姿を見た神谷は、素早く前に飛び出して士官の元へと走る。

 

「貴様ぁ!!よくも部下達をッ!!!!!!」

 

真上から振り下ろされるカトラス。普通なら神谷の頭は、兜割の要領で真っ二つになるだろう。実際、その位の威力は出る速さだ。

だが神谷の場合は違う。振り下ろされるカトラスの刃ごと、真横から斬り込んで首諸共飛ばしてしまう。身体を少し士官の腹の中に入り込むようにしてやれば、振り下ろされてる時の慣性が働いていたままの刃も背中を通って地面へと転がる。問題はない。

 

「刀で首を一撃!?」

 

「なんという腕だ.......」

 

アキナとフィームが驚くのも無理はない。よく映画だとサクッと切っているが、実際あんな綺麗に一撃で切れるのはギロチンか余程腕の良いか2択なのだ。ギロチンの場合は重力とか自重でスパンと行くが、刀の場合は使用者の腕前と刀自体の切れ味にも左右される。どちらか一方が欠けていても成立しない技。それが一刀での斬首というものなのだ。

 

「敵戦車3、近づく!!!!」

 

「46式、前に出ろ!!」

 

歩兵部隊と入れ替わるように、1両の46式戦車が前に出る。戦車は皇国兵にとって見慣れた存在ではあるが、それでもやはり46式だけは別格だ。その威容は見ているだけで闘志が湧いてくる。だがこれが敵の立場であれば、単なる悪魔だろう。

 

「見えた!敵集団発見!!!!先頭に巨大戦車!!!!!」

 

「徹甲弾、込め!!!!」

 

「装填完了!!」

 

「発射!!」

 

3両のハウンドIIから徹甲弾が放たれる。だがこの戦車47mm砲塔を搭載した新型とはいえ、所詮は47mmの豆鉄砲。装甲歩兵の60mmオートライフル砲よりも小さい。戦車が人間に負けるって、これ如何に。

一方の46式は正面装甲は250mm砲に耐えられる、幾重にも重ねられた特別な複合装甲を装備している。たかだか豆鉄砲では、精々凹みを作るくらいだ。

 

「敵さん撃ってきました」

 

「無駄な事を。返してやれ」

 

「撃て!」

 

46式の主砲と、上部の速射砲から計3発の砲弾が発射される。主砲は350mm、上部速射砲は120mmであり、チハたん程度の装甲しかないハウンドIIには防ぎようがない。

 

『前方クリア』

 

「よーし、また行くぞ。進めー!」

 

また陣形を直しつつ、行進を始める。また散発的に敵の襲撃こそあったが、その悉くを撃退し更に進軍。ついに統制府庁舎前にまで来た。

 

「ここが統制府で間違いないな?」

 

「そうだ。これが統制府。グラ・バルカス帝国による、我がヒノマワリ王国支配の象徴だ」

 

「もしかしてこれ、統治後に作った?」

 

「う、うん。そうだよ」

 

「つまり、ぶっ壊したって問題はないと.......」

 

ここで神谷の顔は、見事なまでに悪い顔をしだした。この顔は絶対に何か良からぬ事を考えている顔である。とはいえ「敵の、壊してもいい、まあまあ豪華な、デカい建物」と揃えば、神谷の次の命令は分かるのではないだろうか?

 

「向上。いつものアレ、やっちゃおうか」

 

「えぇ!?やるんですか、アレを今ここで!?!?」

 

「やっちゃいますとも。お前達、ド派手に決めてこい!!!!」

 

神谷がそう叫んで数十秒後、軍団の中から3台の44式装甲車ロ型が飛び出した。オターハ百貨店ぶりの登場、ヒャッハー装甲車である。

 

「ヒャッハーーーーー!!!!!!!!やっぱり突撃は俺達の出番だぜ!!!!!!!!!!!」

 

「俺たちゃ泣く子がもっと泣き叫ぶ!!!!!神谷戦闘団の突撃隊長だぜ!!!!!!!!」

 

「今回から俺もいるぜ魂バリバリ!!!!!!!」

 

えー、ヒャッハー装甲車は3台に増えました。はい。3台目の口癖は「魂バリバリ」なので、よろしくお願いします。

3台の装甲車は一直線に統制府へと走り、途中でジャンプ。統制府は4階建てなのだが、それぞれが4〜3階まで順番に突き刺さって攻撃を敢行する。

 

「な、なんだコイツは!!!!」

 

「装甲車が突っ込んできたぞ!!!」

 

「に、逃げろ。ここから逃げろ!!!!!!」

 

戦闘員ではない統制府職員は逃げ惑うしかないのだが、彼らにそれは関係ない。搭載している武装で、周囲の人間を徹底的に排除する。しかも搭載してるのが大口径重機関銃なので、壁の後ろに隠れようが部屋に逃げ込もうが、問答無用で弾丸の嵐が職員を襲う。まあ一応、軍人も中にいるのでセーフだ。

 

「上がおっ始めた。俺達も始めるぞ!一斉撃ち方、撃て!!!!!!!」

 

一方、まだ統制府前に陣取っていた残りの兵士達は、統制府の一階に向けて大量の弾丸を撃ち込んだ。圧倒的な弾幕と物量の前に、中で籠城をするつもりだった帝国兵はなす術がない。

 

「護衛騎士、向上、ワルキューレ共!!俺に続けぇ!!!!!」

 

アキナとフィーム、向上、白亜のワルキューレの5人は神谷を先頭に弾幕に牽制して貰いながら統制府へと突入。好き放題に暴れ出す。

 

「こ、こいつら化け物」

 

「クソッタレがぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「はいはい、うるさいうるさい。首を切り落としますよ」

 

「こっちのおっさん、口が臭いわ。剣に貫かれて死になさい!!」

 

「蛇はお好きか?」

 

弾幕に貫かれて死んでいった方がマシだったかもしれない。白亜のワルキューレに睨まれた者は、武器固有のアビリティを駆使して殺されている。例えば前衛を務めるヘルミーナ、アナスタシア、エリスならそれぞれ首を切り落とされ、毒を喰らってパープル・ヘイズで殺された様な無惨な死体になり、無数の剣が地面から生えてきて串刺しにされると、かなりエグい死に方をしていた。

後衛のミーシャ、レイチェルも基本的に死に方はエグい。魔法で焼かれるか溺れるか貫かれるか感電するか、矢で貫かれるかである。

 

「大将首だ!! 大将首だろう!? なあ、大将首だろう。おまえ?首置いてけ!!なあ!!! 」

 

「チクショォォォ!!!!!!」

 

神谷に睨まれた者はライフルで防ごうとガードするが、そのライフルごとぶった斬って頭を半分にされてしまう。向上なら有無を言わさず、頭や心臓などを撃ち抜かれる。

ある意味、護衛騎士の2人の方が平和だったかもしれない。一応、まだ互角に戦闘できたのだから。

 

「はぁ!!!」

 

「女が調子に乗ってんじゃねぇ!!!!!」

 

「アキナ!!!!」

 

例えばこんな風に、殺されそうになったとしよう。普通ならこのまま、アキナは死ぬ運命だと思う。だが背後に控える赤衣鉄砲隊がそれを許さない。

 

ズドォン!

 

「我ら赤衣。我らが後ろに構える限り、皇国の賓客にして、我が戦闘団の同志を凶弾の餌食にはさせん!!!!」

 

しっかり援護代わりに殺してくれるので、結果としてアキナとフィームも倒せないでいた。元より白亜のワルキューレという、皇国軍の中でも異端中の異端達を援護する為に作られた部隊。この手の援護はお手の物だ。

 

「あ、ありがとう!」

 

「どうも。さっ、早いとこ行きますぜ騎士殿!」

 

「おーいこっちだ!下への階段があったぞ!!」

 

兵士の1人が階段を見つけ、神谷を含めた10名程度が下に降りる。地下は監獄施設となっており、一番奥にヒノマワリ王国の国王と王子がいた。

 

「国王陛下!!王子殿下!!」

 

「アキナ!フィーム!」

 

「其方ら、無事であったか.......」

 

「神谷殿!鍵を!!」

 

「.......かぎ?」

 

神谷戦闘団の人間、全員が顔を見合わせた。そうだ、牢屋を開けるには鍵が必要なのだ。だが誰も鍵なんて持ってないし、全階既に穴だらけの無茶苦茶だ。鍵なんて埋まってる上に高確率で折れてるか、蜂の巣か、溶けてるかである。

 

「あ、うん。鍵ね、マスターキーあるから」

 

「そんな物、いつの間に?」

 

フィームがそう尋ねるが、全員がそれをガン無視して1人の装甲歩兵が檻の前へと歩き出す。そして両腕に装備された35式スレッジハンマーを構えて…

 

「パワー!!!!!!!」

 

そう言って振り下ろした。もはや、爆発音にしか聞こえない爆音と共に鉄格子が破壊され、鉄格子は奥の壁へと突き刺さっている。一応鉄格子は鋼鉄製だし、壁もコンクリート製の硬いやつだ。

 

「て、鉄格子が刺さった.......」

 

「エゲツねぇ.......」

 

神谷戦闘団の兵士も、これにはちょっとドン引きであった。我が皇国の兵器ながら恐ろしいなと、誰もが思った。王と王子はそのまま担ぎ出され、外傷はなかったが念の為に一度王国を離れて貰い、リュウセイ基地へと移送。検査を受けてもらう。

王と王子を見送ると神谷と護衛剣士の2人は統制府の屋根の上へと登り、最もやらなければならない事をやる。

 

「そんじゃ、行きますよと!」

 

神谷は統制府の屋根に翻るグラ・バルカス帝国の旗をポールから切り離し、ついでに火をつけながら地面へと投げ捨てる。それと同時に神谷の左右に控えていたアキナがヒノマワリ王国の国旗を。フィームはヒノマワリ王家の家紋の旗を掲げ、その後ろでは日の丸、旭日旗、天皇旗、神谷家家紋の旗、神谷戦闘団の部隊旗が翻る。

 

「我々の勝利だ!!!!!!」

 

神谷がそういうと、統制府前の広場にいた兵士達が声を上げる。この夜、ヒノマワリ王国は1年と5ヶ月ぶりにグラ・バルカス帝国から解放されたのである。

 

 

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