最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第八十二話レイフォル戦略会議

ヒノマワリ王国奪還より2日後、神谷はどういう訳か神聖ミリシアル帝国の首都ルーンポリスにある、国防総省にあった。この国防総省は、アメリカのペンタゴンと同じ様に神聖ミリシアル帝国全軍を統括する場所であり、今日はそこで次の作戦についての戦略会議が行われる事になっているのだ。

 

「さーて、鬼が出るか蛇が出るか。向上、首尾は?」

 

「既に配置完了しています。何もなければいいんですけどね.......」

 

「まあ、何かありゃプラスになるし、無くてもマイナスにはならん。気楽に行こう」

 

2人がこうもピリピリしているのは、何も会議があるからではない。無論それも無くは無いが、会議の占める割合は微微たる物だ。メインは会議自体ではなく、会議中に起こるであろう事態である。

実はこの会議において、グラ・バルカス帝国の特殊部隊が奇襲を仕掛けるという話が出ているのだ。ただ奇跡的に断片的に手に入った情報であり、信用度としては余り高くない。無用な混乱を避ける為、この事は皇国軍内に留めている。とは言え仮にも襲撃情報があった以上、何も対策せずに会議に臨む程、皇国も愚かではない。急遽、付近を航行中だった究極超戦艦『日ノ本』を本部とし、神谷戦闘団の内、白亜衆と赤衣鉄砲隊を連れて来ているのだ。更に監視のために、JMIBとICIBのエージェントも大量に動員している。

 

「それもそうですね。さぁ、行きましょうか」

 

「そうだな」

 

因みに今回、流石に戦闘時の機動甲冑とか、機動甲冑の下に着るスーツの上から普段羽織るジャンパーとかで行く訳にはいかないので、しっかり統合軍の黒い制服を纏っている。皇国剣聖の羽織も今は羽織っていないが、愛刀と愛銃はしっかり装備している。

 

「止まれ!身分証を提示しろ」

 

「あぁ。これでいいかな?」

 

「ッ!?失礼いたしました神谷閣下!!」

 

門兵はまるでバネ仕掛けかの様に飛び動き、冷や汗と共に敬礼をしている。その姿に内心笑いながらも、しっかりと返礼する。

すると奥から、ミリシアル帝国軍の軍服を纏った士官がやって来た。恐らく、彼が案内役なのだろう。

 

「初めまして神谷元帥閣下、向上大佐殿。私、エルドルベと申します。こちらはニョナス大尉。本日、アグラより御二方の案内を仰せつかりました」

 

「よろしく頼むよ少佐」

 

「それでは閣下。いきなりで申し訳ないのですが、アグラが1対1での面会を希望しております。もしよろしければ、受けて頂けないでしょうか?」

 

正直に言おう。かなり面倒くさい。ぶっちゃければ、マジでやりたくない。とは言え、ここで国防省長官であるアグラと関係を持つ事は、メリットしかないだろう。

 

「では向上、お前は、あー、どうする?」

 

「私が待機用のお部屋までご案内します」

 

という訳で向上はニョナスと共に待機室へと向かい、神谷はエルドルベの案内の元、アグラの執務室へと向かった。

国防総省の庁舎内に入ってみて感じた率直な感想は「煌びやかすぎて眩しい」である。流石に何処ぞのパーパルディア皇国とまではいかないが、かなり煌びやかな装飾が施されており、皇国とはまるで違う。皇国の統合参謀本部や国防省庁舎で煌びやかな内装になっているのは、要人用の応接室等の極一部であり、大半は普通のオフィスの様な見た目である。一方こっちは王宮までとは行かずとも、並の貴族の邸宅程度には装飾されているだろう。

 

「失礼します!神谷浩三元帥閣下をお連れしました!!」

 

「おぉ、神谷殿。お初にお目にかかる!神聖ミリシアル帝国国防長官、アグラだ。以後お見知り置きを」

 

「大日本皇国統合軍総司令長官兼、神谷戦闘団団長兼、究極超戦艦『熱田』艦長、神谷浩三だ。こちらこそ宜しく頼む」

 

パッと見では和やかな雰囲気だが、その実は全くの逆である。互いが互いの腹を探り合う、かなりドロドロかつバチバチの状況だ。

 

「さて、本来なら適当な挨拶でも交わすべきだろうが、私も貴殿も軍人。無駄な前振りは抜きにして、ここにお呼びした理由を語ろう。貴殿はこの戦争、どう見る?」

 

「真意が見えない。何を見ればいい?行く末か?戦況か?はたまた別の視点だろうか?」

 

「無論、現在の戦況と行く末だ」

 

「.......現在の戦況は、取り敢えずはこちら有利という所だろう。先進11ヵ国会議以降、帝国が第二文明圏に伸ばした支配権は既に殆どが奪還されている上に、インフェルノ艦隊という主力艦隊級を集めた連合艦隊を文字通り殲滅した。これだけ見れば、我々の優勢と言えるが実はそうじゃない。

確かに海軍力は我々が有利。だが未だレイフォリア及び、その近郊には多数の陸軍部隊が駐屯している上に、レイフォリアの奥には堅固な要塞が構えられ、その後方には補給港があり、護衛付きの輸送船団が本土とを繋いでいる。兵糧攻めしようにもっていうのが現状だ」

 

この時点でアグラは、目の前の男な只者じゃない事を読み取った。実は世界連合軍全体でインフェルノ艦隊壊滅の報を受けて「我が国にも戦果を」という考えの下、見事なまでに好戦的な意見に傾倒しつつある。

だが現実は先述の通り、海軍戦力こそ失ったが陸軍戦力は健在な上に補給も万全で防御も鉄壁という、そんな簡単に落とせる状況じゃないのだ。それを見抜いているだけでも、アグラ個人としてはプラス評価なのだ。

 

「だが、貴国であれば殲滅できるのでは?」

 

「分かってるんだろうが、言ってやろう。そうだとも。仰る通り、攻略自体はできる。だがコストとメリットが釣り合わない」

 

「何?」

 

「戦争つっても、所詮は金金金金金。金がないんじゃ資源は買えないし、資源がないんじゃ最強の軍隊だろうが何だろうが単なる案山子。そういう訳だ」

 

なんて言っているが、まあ嘘である。確かに資源とか金の問題はあるが、実際はグラ・バルカス帝国位なら4、5回は滅ぼせるだけの物が揃っている。

敢えて金と資源の問題を表に出したのは、皇国の目的である「互いに潰しあってもらって権威を落としてもらい、そこを皇国が掻っ攫う」というプランを隠すためだ。流石に馬鹿正直には語る訳にはいかない。

 

「もし、我が国が支援するとしたらどうだ?」

 

「約250億ミル。何の値段かお分かりか?」

 

「.......?」

 

「皇国海軍に配備されている艦対艦ミサイル、そちら流でいう所の誘導魔光弾1発のお値段だ」

 

因みに為替レートは1ミル=100円である。つまりミサイル1発あたり、2.5兆円ということになる。

 

「.......それをどのくらい搭載できるのかな?」

 

「駆逐艦で96発、巡洋艦で128発、戦艦で200発以上って所だな」

 

アグラは卒倒しそうなのをどうにか堪え、殆ど気力だけで平然を装っていた。あの第二次バルチスタ沖海戦の時、皇国海軍が動員したのは数千隻単位の超大艦隊。空母もいたが、少なくともあの中の9割程度が駆逐艦、巡洋艦、戦艦といった艦種だった。その全てにこれだけの数のミサイルが搭載されていると考えると、その資金は馬鹿にならない。

 

「ま、まあ良いだろう。では、戦争の行く末はどう見ているのかね?」

 

「どう転ぶやら。少なくとも皇国としては、別にこれ以上の戦果は望まない」

 

「皇国は関係ないと?」

 

「皇国が参戦したのは、あくまでも友邦ムーの支援の為。そもそも我が国は新参者な上に、元々「絶大な軍事力をもった謎多き文明圏外国家」っていう認識だった筈だ。そんな国が暴れすぎたら、戦後社会に於いて我々がグラ・バルカス帝国の立場に収まるだろう。

もしかしたら、数十年後には世界連合対皇国の図式になっているかもしれない。それを避けるためにも、積極的に介入はしたくないのだ」

 

「それは考えすぎだ。皇国の力は誰もが認めている!」

 

「そう。それが問題でもある。皇国がパーパルディアと争ったのも、元を辿れば我が国が舐められていたからでもある。そして今度は、強い事が世界に知れ渡ってしまった。今は戦時下故に、我々は持て囃されている。だが戦後、この戦争がどういう形で終わろうと、強力な武力は各国がこぞって削ぎに掛かるだろう。そうなった時、今の様な良好な関係が築けるとは限らない」

 

アグラは黙るしかなかった。戦力を削ぎに掛かるとすれば、その矢面に立つのは確実に祖国たる神聖ミリシアル帝国だろう。ミリシアルというのは、世界最強でなくてはならない。元々はラヴァナール帝国が現世に復活した時、世界の守り手である為だった。

だがいつしか、そこに権威や権力が絡み出し、そんなお題目は形骸化していると言っていい。国民から皇帝たるミリシアル8世に至るまで、思考の根底には常に「世界最強の国家である神聖ミリシアル帝国の人間」というプライドがある。第二次バルチスタ沖海戦が始まる前、聨合艦隊が集った時のミリシアル8世の発言がそれをよく表している。

神聖ミリシアル帝国にとって、今の戦時下なら皇国は頼れる味方である。それは間違いない。だがもし戦争が終わり、世界に平和が戻った時、皇国の力を削ごうとする勢力は必ず現れるだろう。更に言えば技術開示を要求し、その戦力を我が物にしようとするなんて者も現れる筈だ。神谷の言っていることは、未来予知にも等しい。

 

(まあ、嘘ですけどねー)

 

深刻そうな顔をするアグラを、神谷は心の中で指差して大爆笑していた。どういう事かと言うと、別に皇国というか三英傑的には世界と敵対しようがどうでも良いのだ。資源が大量に眠るクイラ王国と、食糧の宝庫であるクワ・トイネ公国さえあれば、もっと正確に言えばその国土さえあれば皇国は生き残れる。ムーだって貿易で儲かりはするが、最悪なくなってしまっても国が滅ぶ程ではない。

もしも仮に、世界が皇国に戦争を仕掛けてくるのなら。もしも仮に、今のグラ・バルカス帝国の様に世界中で寄ってたかって攻撃してくるのなら。侵攻軍を全てを殲滅した後、第一、第二文明圏の全ての国家に、核の雨を降らせるまで。第三文明圏及び文明圏外国は、通常戦力で蹂躙すれば良い。第一、第二文明圏は例え核の放射能で侵されても、皇国へのダメージはほぼ無い。風向き的には問題ないし、海流の方は海辺だけイザナミ弾頭を用いれば良いだけだ。

 

「失礼します!アグラ長官、そろそろお時間です」

 

「.......あぁ、そうか。そうだったな。では神谷殿、行こうか」

 

会議室には、各国の代表達が集まっている。先進11ヵ国会議が各国の外交部門における有力者が集まっているのなら、この戦略会議に集まっているのは軍事部門に於ける有力者達。纏う雰囲気が独特だ。

因みに参加国は大日本皇国、神聖ミリシアル帝国の他、ムー、エモール王国、アガルタ法国、マギカライヒ共同体、ニグラート連合である。

 

「定刻になりましたので、これより戦略会議を始めさせて頂きます。ここに集まる人間は何度かお会いしたことがありますが、大日本皇国のお2人については、まず自己紹介をお願いします」

 

今回、というか大体ミリシアルで行う時は毎回司会を務めているアグラに促され、神谷と向上が立ち上がる。

 

「大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三元帥だ。宜しく頼む」

 

「大日本皇国統合軍総司令長官秘書官、向上六郎大佐です。よろしくお願いします」

 

「であれば、我らもするべきだろうな。まずは我らから」

 

ミリシアル側に座る3人の男が立ち上がる。緑、白、青の制服を着ている辺り、恐らく陸海空の軍人なのだろう。

 

「私はデイバーノック。陸軍の総司令を務めている。階級は大将だ」

 

「海軍提督、クリスベンである。修羅殿、お会い出来て光栄の極みだ」

 

「私がゴルゴー空軍大将である。栄えある神聖ミリシアル帝国空軍、総司令官を拝命している」

 

「となれば、次は我らであるな」

 

続いてミリシアルの三大将の隣に座る、2人の竜人が立ち上がる。この部屋でも数少ない亜人であり、かなり目立つ異色の2人組だ。

 

「久しいな神谷殿。コーナハカである」

 

「えぇ、お久しぶりですな。使節派遣以来、ですか」

 

「そうだとも。さて、でこちらにいるのが」

 

「エモール三竜が1人、イヴァン竜騎将である。修羅殿はご存知かな?」

 

「なんかまあ、凄そう位にしか」

 

いつかエモール王国に関する報告書だかレポートだかで、なんかそんな文言をチラーっと見た様な見てない様な、その程度にしか分からなかった。

 

「エモール三竜とは、我が国に3人しかいない極みの雷炎竜を操れる騎士である。有り体に言えば、我が国最強の騎士という物であるな」

 

「左様。我が極みの雷炎竜が勝てぬ竜は火、水、土、風、雷、闇、光を司る神竜と呼ばれる上位種と、その頂点に君臨なされる竜神皇帝の極帝様のみ」

 

「あー、やっぱアイツすげー竜なのね」

 

「よもや修羅殿は、極帝様にお会いになられたことが?」

 

「いやー、お会いになられちゃったどころか眷属にしてますけど?」

 

瞬間、議場が凍り付いた。極帝自体、この世界に於いては最も尊ぶべき竜であり、エモール王国においては前身のインフィドラグーン建国神話にも登場する父祖の竜みたいな存在なのだ。それを眷属って、もうどう反応すればいいのやら。

 

「なぁ極帝さん。なんか、全員フリーズしてんだけど」

 

「ふぅむ。我は一応、竜人からしてみれば創造神も同義であるからな」

 

ひょっこり現れたデフォルメバージョンの極帝が、神谷の横でこのリアクションの意味を解説してくれる。

 

「あー。じゃあ、マズい感じ?」

 

「まあそうかもしれんな」

 

「じゃあ、今のなし!議事録もカットで!」

 

「「「「「「なるかぁぁぁぁ!!!!!」」」」」

 

無論、総ツッコミである。向上も後ろで頭を抱えながら「アンタは何処のガープ中将ですか長官」とツッコんでいる。

 

「極帝様!!!!イヴァンと申す者です!!!!!!」

 

「イヴァンとやら、何用であるか?」

 

「はっ!!恐れながら極帝様、1つお答え頂きたく存じます!!何故極帝様は、修羅殿と主従の契約を結ばれたのですか!!!!!」

 

「決まっておろう。この男と、この男の祖国が強いからである。そして何より、共にいて楽しいのだ」

 

竜人としては、やはり何処か納得がいかない所がある。いくら神谷と言っても、所詮は非力な人間。竜人ではなく、何故よりにもよって人間と主従を結んだのかは知りたいのだ。特に竜騎士として最も高みに立つ者としては、それは余計に知りたい。

だがこの答えで納得した。神話の中での極帝は、全ての竜を統べる竜の皇帝でありながら、最も自由を愛し、常に自由を求めて突き進んだ竜でもある。「共に居て楽しい」という事は、それ即ち神谷が自由の戦士たる証拠でもある。

 

「修羅殿。いえ、神谷様。どうか我らが皇帝と共に、その命尽きるまで道をお歩みください」

 

「我らエモール王国、必要とあらば国を挙げて神谷様と極帝様に尽くす所存。その代わり、どうか極帝様と共にいつまでもお歩みください」

 

イヴァンとコーナハカが人目も憚らず、神谷と極帝の前に平伏した。流石に神谷も対応できず、周りを見渡すがその目はまるで神話を見ているかの様な目の輝き様で、こちらを見守っていた。取り敢えず向上の方を振り向くが、満面の笑みを浮かべながら「ごめん無理ー」と口パクで言われてしまい、見事に退路が塞がってしまう。

 

「貴様らの事情はしかと届いた。元より我は、この者の命尽きるその時まで共に歩むつもりだ。貴様らも、共に歩むが良い」

 

「「ははー!!!!」」

 

(事態悪化したぁぁぁぉぁぁぁ!!!!!!)

 

更に極帝が極め付けに完全に動きを封じてくれやがったので、もう逃れられない。こうなったら、川山に丸投げするしかないだろう。

 

「は、話を戻そうか。うん。とは言え、我々は面識があるしな」

 

「我々は飛ばして頂こう」

 

ムー代表のレイダーとは合同軍事演習以来、何度か会ったことがあるし、カサダラに関しては開戦以来、何度も会議で会っている。この2人は今更だ。

 

「では、次は私らの番か。我が名はゴウン。アガルタ法国魔導将にして、法国一の魔法の使い手である」

 

「私はドラッペン。アガルタ法国にて、全軍の指揮を任せられている。向上殿、それに修羅殿。武人として、お2人の強者と共に戦える事は最高の栄誉だ」

 

ドラッペン将軍は筋骨隆々の大男であるが、それだけで特段おかしな点はない。だがゴウン魔導将に関しては、姿形からして驚きであった。ローブによって顔を含めた全身が隠れていた為に気付かなかったが、この男、人間ではない。全身が骸骨で、ゲームとかでいうスケルトン・メイジとか、エルダーリッチとか言われる種族なのだろう。最早、エルフやドワーフといった亜人ですらない。

 

「次はオレ達だな。オレはマリオリル竜騎長!アンタみたいな連中と戦えて、すげー嬉しく思う!」

 

「トラマリと申します。マリオリルは口が悪いですが、悪い奴ではありません故、どうかお許しください」

 

続くマギカライヒ共同体代表のマリオリルとトラマリは、完全に正反対の2人だった。マリオリルの方は熱血系の血の気の多い若者だが、対するトラマリはサラサラの長髪に爽やかな風貌をしたエルフである。

 

「最後は我らであるな。我が名はエクニオール。ニグラート連合にて、将軍を務める者だ。1人の戦士として、2人には最大の敬意を表そう」

 

「私はペネッション筆頭竜騎士長である。強き者よ、お会いできて光栄の至だ」

 

エクニオールは白髪の老人であるが、その目には不屈の闘志が宿っている。老練な将軍をそのまま具現化した様な男だ。対するペネッションも、同じ様にベテランの風貌を醸し出す中年の男だ。しかも左目に眼帯をしている辺り、いかにも「ザ・エース」という感じで何だかかっこいい。

 

「では自己紹介も済んだ所で、本題に戻りましょう。本日皆様を招集したのは、今後の対グラ・バルカス帝国戦略を取り決めるためであります。

現状、グラ・バルカス帝国はムーから完全に撤退し支配地域に引き篭もっている状態であり、主力艦隊級を複数集めたと思える艦隊も第二次バルチスタ沖海戦にて撃滅されております。支配地域への攻勢計画ですが、まずは前段としてヒノマワリ王国の奪還を…」

 

「議長、よろしいか」

 

「神谷殿、なんでしょう?」

 

「ヒノマワリ王国についてだが、既に2日前に我が軍が奪還している」

 

いきなりの爆弾発言に、事情を知っているムーを除いた各国代表が驚く。というのもヒノマワリ王国には、例のシーン暗殺部隊が駐留していた為に何度か攻勢を仕掛けたものの、手も足も出ずに敗退しているのだ。以来、威力偵察などで国境線近くで軽く小競り合いが起こる程度の膠着状態だったのだ。

 

「修羅殿、ではあの精兵達はどうされたのだ?」

 

「ドラッペン将軍の言う精兵とは、シーン暗殺部隊の事だろう。確かに彼らは通常の帝国兵とは次元の違う、特殊部隊の位置付けだったのだろう。だが、たかだか第二次世界大戦程度の特殊部隊黎明期の集団が、各国の様々な事例を踏まえて高度に進化した我が国の特殊部隊やその特殊部隊を凌ぐ練度を誇る我が戦闘団の前には赤子にも等しい。奇襲の効果もあったとは言え、一夜で終わった。

尚、今回の軍事行動については我が軍の独断先行という形ではあったが、ヒノマワリ王国第3王女、フレイア・タカツカサ・ヒノマワリ殿下からの非常時国家保護法に基付く正式な要請と、ヒノマワリ王家の救出及び現地民の差し迫った人道的危機からの保護の為であったと申し添えておく」

 

一応あの行動は、世界連合軍的には面倒な事だろう。何を言われるか分からない。だがお題目さえ正当であれば、全てはノープロブレム。一色曰く、口実として正しいか正義であれば、後は基本ノー問題というのが政治という物らしい。

 

「ヒノマワリ王国の掃討はどの程度掛かりますか?」

 

「恐らく、掃討に後1週間。そこからインフラの整備等々、最低限の主要なインフラ整備に3週間という所だろう。補給拠点や前線基地の建設であれば、我が軍の即応拠点で良ければすぐにでも展開可能だ」

 

「失礼、即応拠点とは?」

 

「我が軍の保有する装備の1つであり、コンテナ化した兵舎、食堂、風呂、トイレ、車両整備設備、手術室、指令所等の設備の事だ。これにより一定の広さがあれば、世界中どこでも簡易的な拠点が設営できる」

 

即応拠点のメリットは展開の速さだけでは無い。コンテナの為、組み合わせて用途に合った拠点にできる。例えば手術室、診察室、兵舎、ICUといったコンテナを組み合わせて野戦病院にしてみたり、キッチンを大量に設置して炊事所にしてみたり、武器と車両の整備設備に武器庫や倉庫を組み合わせて補給拠点にしたりと、様々なバリエーションに変幻自在なのだ。

 

「ではヒノマワリ王国を前線拠点としつつ、レイフォル領域へと進軍する形でよろしいですか?」

 

全員が頷く。ヒノマワリ王国までは鉄道が通っており、それはそのままレイフォルまで続く。これにより補給線の確保も容易な上、アイアンレックスによる強襲も場所によれば可能となる。

しかもヒノマワリ王国とムー区間には一応の街道も整備されているので、輸送トラックを走らせる事もできる。陸路での補給線、及び負傷者等の後送も可能だ。

 

「次はレイフォルへの攻勢計画ですが、現状多数の防衛部隊が駐留しており、侵攻は困難を極めます。既に戦車と呼ばれる大砲を重装甲の車体に搭載した動く要塞兵器を主軸とした部隊が9個師団を筆頭に、5個砲兵師団、15個歩兵師団が確認されており、軍港には戦艦と空母を主軸とする艦隊が停泊し、航空基地にも戦闘機や爆撃機も多数確認されております。

加えてレイフォル自体が要塞化しており、戦艦の主砲クラスの要塞砲も確認されている他、内部に兵器廠を有する自給自足型の要塞です。更に後方には強固な要塞陣地が2つ築かれており、補給線も本国から海路で伸びております。この補給路はイルネティア島、パガンダ島の何れかを経由しています。両島には即応艦隊と思われる艦艇群の母港となっており、レイフォル自体が難攻不落の要塞と化しております」

 

将軍達の顔が一気に暗くなる。何せレイフォルを攻めるのが、各国の現有戦力では難しいのだ。まず陸路では流石に補給線が伸び切る可能性が出てくる上に、歩兵が主力となる侵攻軍には戦車は天敵である。仮にエアカバーとしてワイバーン等を随時展開しても、帝国のアンタレスに狩られる運命しか見えてこない。というかそもそも、前半は良いとして後半は航続距離の問題で難しくなってくる。空路も同様に、例え航続距離の問題をパスしても、性能差で狩られるのは目に見えている。

次に海路。ミリシアル、ムーを除いて艦隊戦に勝てる見込みがまず無い。例え艦隊を倒せても要塞砲という脅威がある上に、例え援護砲撃を行いながらの上陸もかなりの被害が予測されるだろう。

 

「陸路、海路、空路共にダメか」

 

「これはかなり難しいな.......」

 

ゴウンとイヴァンが頭を抱える。皆が、さてどうしたものかと考えていると、コーナハカが何かを思い付いた。

 

「皆の者。レイフォルを城と考えればどうだろうか?」

 

「城だぁ?コーナハカの爺さん、どういうことだ?」

 

「城攻めにも火や水とある訳だが、兵糧攻めもセオリーであろう?まずイルネティアとパガンダ両島を占領し、奴らの補給路を遮断するのだ。更に海域を封鎖すれば、レイフォルは待てば勝手に自滅するであろう」

 

他の将軍達からも感嘆の声が上がる。「確かにその発想ならば」とか「時間はかかるが、確実ではあるな」とか肯定的な意見が出た訳だが、神谷が一言、「甘いな」と呟いた。それをクリスベンが即座に拾い上げた。

 

「修羅殿。甘いとは?」

 

「確かにコーナハカ殿の言う通り、兵糧攻めは悪く無い手だろう。だがレイフォルに補給を届かせるだけなら、やりようはある。足の速い駆逐艦による輸送、輸送機からの物資投下、さらには潜水艦による輸送も考えられる」

 

「潜水艦とは聞かぬ名だな。何だそれは?」

 

「自分で浮き沈みできる艦艇だ。魚雷と呼ばれる水中航送式の爆弾で、艦船の喫水線下を攻撃してくる。この艦種は海に潜れば最後、探すのはかなりの困難を極める。

実際、旧世界においてグラ・バルカス帝国と同等の文明だった頃、潜水艦は各国で極秘の輸送任務に度々使用されていた。恐らく、数こそ減らせど戦える量は運び込めるだろうな」

 

海軍の将軍達は、一気にざわつき始めた。潜水艦という兵器の発想すらなかった上に、喫水線下への攻撃兵器。こんな攻撃された日には、自国の艦艇はあっという間に殲滅される事だろう。

 

「修羅殿。その物言い、何か考えがあるのでは無いですか?」

 

トラマリの指摘に、神谷はニヤリと笑う。そしてアグラに頼んで、部屋の灯りを消してもらった上で、カーテンを閉めてもらい部屋全体を暗くしてもらった。

 

「向上、準備を」

 

「はい」

 

向上は部屋の真ん中に台を設置すると、立体映像を映し出す小型プロジェクターを置いて離れる。次の瞬間、立体映像が部屋の真ん中に現れて、ムー大陸のレイフォル付近が映し出される。

 

「つまりはこうだ。グラ・バルカス帝国の補給路を遮断する為に必要なのは、まずこのパガンダ島とイルネティア島。この両島を占領し、ここを拠点に海上封鎖を試みる。それがさっきのプランだ。このプランの障害は、潜水艦の存在とすり抜ける可能性のある足の速い駆逐艦。後者は良しとして、問題は前者の潜水艦。これを探知、攻撃する術は、現状我が皇国海軍にしかない。

であれば私は、別のプランを申し上げよう。まずパガンダ島、イルネティア島を解放し、そこをレイフォル攻勢の拠点に据え置く。更に島内の飛行場を改装し、ここに皇国海軍の保有する対潜哨戒機と空軍の航空隊を配備。潜水艦と輸送機の警戒に当てる」

 

「では輸送船はどうすんだ?」

 

「輸送船については、我が国の潜水艦隊を使用しようと思う。こちらをご覧頂きたい」

 

さっきまでの地図の映像から、潜水艦隊の保有する伊3500号型、伊3000号型、伊2500号型、伊2000号型、伊1500号型、伊900号型のスペックと写真が表示される。

 

「我が海軍が保有する潜水艦だ。通常動力型なれど高い静音性を誇る伊900型。原子炉を持ち高い打撃力を誇る伊1500型。610mmの電磁投射砲と艦載機を保有する伊2000型。ミサイルキャリアーとして活動できる伊2500型。情報収集と偵察に特化した伊3000型、旗艦として機能し高い汎用性を誇る伊3500型。これらの潜水艦を用いて、海域を封鎖する。例え相手が護衛付きの輸送艦隊だろうと、戦艦や空母を主軸とした主力艦でも、殲滅して見せよう。

更に盤石にする為、我が軍の駆逐艦を両島に配置。マギカライヒ共同体、ニグラート連合には補給艦とバックアップの駆逐艦を配置させて貰えれば、ほぼ完璧に補給をシャットアウトできる」

 

本来なら各国の見栄とかが出てくるだろうが、相手が自らの理解の範疇の外にある兵器なら皇国に全てを押し付ける。故に今回は特段何の妨害もなく、寧ろ感嘆の声が上がる。

会議はまだまだ続く。レイフォルにいる帝国をどう調理するのか。そしてエージェントがキャッチした、この会議の襲撃計画は如何に。

 

 

 

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