最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

103 / 141
第八十三話会議崩壊

「では続けて、レイフォル解放に関して議論を進めていきたいと思います」

 

前回のあらすじという程、ご大層な物ではないが簡単に決まった事を纏めておこう。レイフォル解放作戦の前哨戦として、パガンダ島とイルネティア島を解放し、両島に対潜哨戒機を派遣。輸送ルートを遮断し、レイフォルに兵糧攻めを行うことが決定された。

前哨戦が決まったら次は、本戦となるレイフォル解放についてである。当然だが、こちらに関しては未だ何も決まっていない。

 

「ではまずは、こちらをご覧いただきたい」

 

デイバーノックが立ち上がり、魔導式のプロジェクターを使ってボードにレイフォル一帯の地図を映す。地図には地名や主要な街道が描かれており、こうやって見るとまあまあ広い国であることがよく分かる。

 

「最初の方で軽く説明されておりますが、改めて詳細を説明させていただきます。とは言え、かなりの障害があります。まず第一に補給。これはご承知の通り遮断する予定ですので良しとして、問題はここからです。次の障害は、この街道です。この5つ街道ですが、いずれも平原に設置されており上空からの攻撃に弱い。となるとこちらの2つの街道を使うことになるのですが、それぞれ問題があります。

この西にある街道は、単純に距離が長い上に道なりも険しく、岩場や砂漠を踏破する必要が出てきます。東は比較的侵攻しやすいとはいえ、ここのダイジェネラ山に要塞が築かれており、この要塞を占領しなくては進軍できません」

 

「では陸路では自殺覚悟で5つの街道を通るか、多数の犠牲を払って要塞を攻略するか、時間と疲労を対価に安全なルートでゆっくり行くかと言うことであるな?」

 

「コーナハカ殿の仰る通りであります。となると次は海路なのですが、先述の通り大艦隊が控えております。空路も戦闘機隊がいるので、かなりの犠牲を覚悟しなくてはなりません」

 

やはりレイフォルの攻略はかなり骨が折れる。皇国だけなら、やりようは幾らでもある。例えば例の5つの街道を、大部隊に空軍のエアカバーをつけた上で進軍しつつ、海上からは主力艦隊による火力支援と陸戦隊を持って上陸させ、レイフォリアには富嶽爆撃隊なんかを投入して焼き払えばいい。

とは言え活躍しすぎるのは、皇国としては何度も言う通り旨みが少ない。ここは各国合同、協調するべきだろう。

 

「デイバーノック殿。その要塞は、大体どの程度の規模なのだ?」

 

「我が国の諜報機関によれば、比較的小さいとは言えかなり厳重だと聞いている」

 

「対空兵器は?」

 

「そこまで多くはないようだが.......」

 

「であれば、極みの雷炎竜を用いようぞ」

 

イヴァンがそう言った。神谷と向上はそこまでだが、他の将軍達は目を丸くして驚いていた。何せ極みの雷炎竜とは、エモール王国に於ける最強の切り札であり、エモール三竜は王国最上位の戦力でもある。それを投入するというのは、かなり信じられない行動なのだ。アメリカが気前よく、邦人保護とかではなく空母機動部隊と遠征打撃群を速攻で送り込み、ついでに陸軍の特殊部隊を即座に投入したくらいの衝撃だ。

 

「で、であれば我が国もワイバーンを出しましょうぞ!!」

 

「我が国も!!」

 

「となれば、我が国も出しましょう」

 

ニグラート連合、アガルタ法国、マギカライヒ共同体もワイバーンの投入が決まる。早速、良い感じに纏まってきたが、ここでイヴァンが神谷に向き直った。

 

「極帝様、神谷様。どうかこの飛竜隊の指揮、お任せできませんでしょうか!!」

 

「ぁへ俺!?」

 

「ふむ。良いではないのか、我が友よ」

 

「いやいやいやいや!俺、艦隊と陸の指揮は何度もしたけど、航空隊は地上での管制くらいしかした事ないぞ!?!?」

 

神谷は知っての通りかつては海軍の人間であり、大東亜事変に於いて艦隊を指揮している。そして現在は神谷戦闘団を率いているので、海と陸の戦闘は指揮できる。だが、生憎と空は防空指揮とか指揮管制位しかやった事がない上に、ワイバーンの飛行隊の指揮とか余計に訳が分からない。無理だ。

 

「良いではないか」

 

「良かねーよ!!」

 

「いや、是非ともお願いしたい修羅殿!極帝様は、我らワイバーン乗り、いや!世界的にも敬意を払う神であると同時に、憧れでもあるのだ。我らワイバーン乗りはどの国の、どの立場の物でも、極帝様とそれを駆る真の戦士と共に戦場をかけるのは夢なのだ!!

ワイバーン乗りに「極帝様と真の戦士が来る」という話だけでも、士気は鰻登り。本当にその通りになった暁には、もはや天を貫き大地を裂く程の士気になるだろう。だからどうか、頼めぬだろうか」

 

ペネッションが深々と頭を下げると、イヴァン、マリオリルも頭を下げた。どうやら彼らにとっての極帝とは、こうやって新参に頭を下げられる程の存在らしい。

となれば、こちらとしても断るのは色々問題というか、禍根が残りそうだ。受けるしかないだろう。

 

「.......いいだろう、話を受ける」

 

「長官、よろしいのですか?」

 

「やるしかないだろ。ってか、極帝めっちゃノリノリだし」

 

「今から楽しみであるな。よし、今すぐ焼きに行くか!!」

 

「アホ、これは戦争だ。戦争ってのは、戦略を立ててスマートに戦う物だ」

 

なんか極帝なら今すぐ飛んで行きかねないが、そんな事をされては色々困る。

さて、これで取り敢えず要塞は目処がついた。次はレイフォリア本丸の攻略である。

 

「では次に、レイフォリア攻略について議論していきたいと思います。レイフォリアは要塞化が行われており、都市内部に大規模な航空基地、倉庫、兵器廠が建設されており、戦艦5隻を中核とする主力艦隊が隣接する港湾地区に陣取っております。

港湾地区には更に、戦艦の主砲を流用したと思われる大型砲が設置されており、艦艇での接近は自殺行為となるでしょう」

 

「それについてであるが、ここは我が国に案がある」

 

これまで基本的に沈黙を保っていた、ミリシアルの3人が手を挙げた。まずはクリスベンが話し始める。

 

「この艦隊と要塞砲についてだが、我が海軍にお任せいただきたい。現在海軍には、誘導魔光弾を標準搭載した最新鋭艦が就役しており、これを中核とした艦隊を持って敵艦隊と要塞砲を殲滅。港湾地区を解放し、ここに陸上部隊を送り込もうと考えている」

 

「陸軍としては、この作戦に3個歩兵師団、2個機甲師団の投入を決定している。これに加え別働隊として空挺旅団を降下させ、上陸部隊の援護を行わせる予定だ」

 

「空軍としても提案がある。このレイフォリアの空港、兵器廠を空爆で破壊したいと考えている。これにより、抵抗勢力は一気に減らせるだろう」

 

ここまでミリシアルが黙っていた訳だ。レイフォリア攻略という、この作戦に於ける天王山の主導権を握れば他は用無しという事らしい。確かにレイフォリア解放の名声があれば、取り敢えず『世界最強の神聖ミリシアル帝国』の看板は守られる。

 

「ではレイフォリア攻略は、全てミリシアルが行うと?」

 

ゴウンの指摘に、クリスベンが「まさか」と答えた。流石にミリシアルとて、ポーズとして他国を参加させる必要はあるらしい。

 

「主力が我々というだけであって、我々について来れる部隊であれば、他国の部隊でも歓迎しよう。例えば海なら、ムーと皇国からも艦隊を出して貰いたい」

 

「ならばムーとしては、新設の第一機動遊撃艦隊を派遣しよう。戦艦『ラ・カサミ』『ラ・イーセ』を筆頭とした、最新鋭艦で構成された艦隊だ。ミリシアルの新鋭艦でも、充分に着いていけるだろう」

 

「であれば皇国は、究極超戦艦『日ノ本』以下、熱田型超戦艦2、赤城型要塞超空母2、大和型前衛武装戦艦8、摩耶型対空巡洋艦10、駆逐艦30、潜水艦20を出そう」

 

皇国の編成を聞いた瞬間、クリスベンの顔色が一気に強張る。明らかに編成がガチガチの主力編成な上に、化け物艦艇がゴロゴロいる。これではミリシアルの立つ瀬がない。

 

「い、いや、修羅殿?皇国にはパガンダ島、イルネティアの攻略がある。無理をしてこちらに出る必要は.......」

 

「ご心配なく。我が海軍の艦艇、とりわけ大型艦の居住性は良好だ。兵の士気は旺盛にして、練度も高い。問題はない」

 

ミリシアルだけに美味しいところは持って行かせない。恐らくこの戦闘、これが実質的な決戦となる。それをミリシアルのみとか、絶対に許されない。確かに皇国としては散々言っての通り他国に出血を強いたい所だが、それは大前提てして国際的イニシアティブを確保できてこそ意味を為す。

旧世界に於いては軍事はもちろん、経済、文化、技術などでも取ることはできた。現実世界で言えば、今の日本は文化と技術では一定のポジションを確保している様に。だがこの世界では、国際的イニシアティブはイコールで軍事力に直通している。軍事を抑えれば、こちらの物だ。

 

「.......良いだろう。しかし上陸部隊については」

「無論、我が海軍陸戦隊を出そう。そうだなぁ、海の北鎮部隊、第七海兵師団辺りを投入するか」

 

ミリシアル陣営の顔はみるみると強張っていく。基本、ミリシアルが持ってる物はその進化系が皇国にもある。しかもミリシアルは平和が長い上に、戦略面やドクトリンでは「世界最強」に胡座を掻いていたので、古びた物や非効率的な物も散見される上、装備も皇国からしてみたら「なんかよく分からん切った貼ったのキメラ兵器」とか「ロマンを追い求めすぎた駄作」という、何とも言えないお粗末な物ばかり。

対して皇国はご承知の通り、数年前には東亜事変という紛争を経験し、以降も転移後のこの世界で戦争をしてきた。ロウリア王国に始まり、パーパルディア戦役、カルミアーク内乱介入、ウェルゾロッサ防衛戦、リーム王国侵攻、そしてグラ・バルカス帝国とは現在進行形で絶賛戦争中である。更に訓練プログラムとして各部隊は、千葉特別演習場での訓練が義務付けられている。この演習場は太平洋沖にある東京の2.5倍の面積を誇り、ジャングル、砂漠、山岳、岩山、森林、小規模な都市、平原、要塞陣地と基本的な戦場が再現され、ARで様々な敵を表示できる。海軍、空軍にもARを用いた相手を出現させられる演習装置があるので、実戦経験は少なくとも実戦と遜色ない戦闘を経験できるのだ。

そして装備だが、もうこれは語る必要もないだろう。世界中の国家を敵に回したとしても、その悉くを殲滅し敵対国家全てを消滅させられるだけの兵器群を有する。

 

「(長官、よろしいのですか?)」

 

「(こうもあからさまに美味しい部分を掻っ攫いに来たら、そりゃ抵抗するだろ。舐められたら終わりだ)」

 

「では、陸軍の方はこちらの我が軍の戦力だけでよろしいでs」

「いやいや!ここは我が皇国の誇る飛行強襲群より、第一空挺団を投入しよう。無論、バックアップだ。そうだ、ムーにも第212特別機動空挺大隊が居たはず。それを投入しては?」

 

「え?あ、あぁ。そうだな。是非我が軍も、戦力を派遣させて頂こう」

 

ムーも巻き込まれる形となり、派遣が決定した。ムーとしてはミリシアルと敵対したくないが、今はミリシアルよりも皇国の派閥についたほうが良いという考えである。問題はない。

 

「.......空の方はどうされるか?」

 

「それはもちろん、我が軍の富嶽爆撃隊を投入する.......と言いたい所ですが、現在富嶽爆撃隊の機体が皇国本土にてオーバーホール中でして、今回は見送らせて頂きます」

 

嘘である。海と違い、空の場合は基本的に見学というのは難しい。皇国の戦略爆撃機となる超重爆撃機富嶽IIは、1機でアメリカのB52ストラトフォートレス10機分の爆弾を搭載できる化け物機体。こんなのを投入してしまえば、確実にミリシアルのお仕事が消えてしまう。

 

「そうであるか。実に残念d」

「代わりに我が軍は、護衛部隊を提供しよう。爆撃機は何処の国も、やはり機動性は劣悪だ。護衛は多いに越したことはない」

 

「.......確かに、それは我が軍としても嬉しい申し出だ」

 

「では我が軍の超長距離戦略打撃群を護衛につけよう」

 

この超長距離戦略打撃群、通称『アウトレンジ部隊』は新たに創設された空軍に於ける特殊部隊である。この部隊には皇国が派遣しているエース級部隊の中でも、特に強いスーパーエース級、ウルトラエース級の一騎当千どころか当万、当億の連中が集まっている。というのも、これがその面子だ。

 

・第366飛行隊『ガルム』

・第408飛行隊『ガルーダ』

・第18戦闘飛行隊『スカーフェイス』

・第206戦術戦闘飛行隊『ラーズグリーズ』

・第118戦術飛行隊『メビウス中隊』

・第156戦術飛行隊『アクィラ(黄色)中隊』

・第123戦術飛行隊第1小隊『ストライダー』

・第123戦術飛行隊第2小隊『サイクロプス』

 

見ての通り、たった1部隊で戦局を変えてしまう航空隊が一堂に集まっている。上から順に円卓の鬼神&片翼の妖精、皇国の神鳥、皇国の不死鳥、ラーズグリーズの悪魔、リボン付きの死神&Mr.ベイルアウター、黄色の13(イエロー13)、3本線の大馬鹿野郎、伯爵殿と化け物だらけだ。

 

「さて、では次に後方の要塞攻略についてですが」

 

会議がこのまま進むかに思われたが、そうはいかないらしい。なにやら嫌な予感が、神谷と向上を襲う。いきなり武器を構えたりはしないが、いつでも構えられるようにした上で、意識を扉の外へ向ける。

暫くすると扉が開き、中にエルドルベとニョナスが入ってきた。手にはM1928トンプソン・サブマシンガンの試作モデルである、アナイアレーターIの様なサブマシンガンが握られている。

 

「少佐、大尉、どうした?」

 

アグラの問い掛けに、2人は無言で銃を向けてくる。次の瞬間、向上が動いた。即座にホルスターから26式拳銃を抜き、銃を壊す。

 

「ナイスショット向上」

 

「ありがとうございます。しかし、一体何の目的が.......」

 

何がどうなっているか分からないが、一つだけ言えるのは、これは恐らく帝国の攻撃だ。

 

「って、おいおいおいおい!銃口がヤバい方向向いてるぞ」

 

だが今はそんな事を考えさせてくれる暇はない様で、さっきのアナイアレーターIモドキで武装したミリシアル兵がズラリと廊下に並び、こちらに銃口を突き付けている。

 

「みんな!こっち側に転がり込め!!!!」

 

神谷がそう叫んだと同時に、ミリシアル兵は銃を乱射し始めた。ガラスが割れ、机にある書類が宙を舞い、椅子は穴だらけになる。取り敢えず机を倒して気休めの遮蔽物を作ってみるが、まあ殆ど意味がなく弾が貫通し頭上を弾が掠める。

 

「どうします長官!?」

 

「ここに引きこもっても破滅の先延ばしだ。奴ら、景気良く撃ってくれてるお陰でもう弾が尽きる。そこを俺が狩る!!アグラ殿、殲滅するけど文句ないな!!」

 

「む、無論だ!」

 

「よーし、言質は取った。向上、神谷戦闘団流の返礼を持って盛大にもてなす。3カウント!3、2、1、行くぞ!!」

 

まず神谷が飛び出して、敵陣に切り込む。距離が離れており、弾丸の応酬に晒されそうになるが、そこは向上が後方から援護射撃を持って時間を稼いでくれる。向上の射撃に意識が行けば最後、次の瞬間には神谷が懐に飛び込んでいる。

 

「この距離じゃ長物は使えねぇよなぁぁぁ!!!!!」

 

的確に急所だけを切り裂き、殺したら姿勢を低くして次の獲物へ。次を殺せば姿勢を低く這う様に次の獲物へを繰り返し、瞬く間にミリシアル兵を殲滅していく。神谷が突っ込んで僅か20秒で、全員が惨殺された。

 

「にしてもコイツら、どう見てもミリシアルの兵隊だが、なんでまた俺達を襲ったんだ?」

 

扉を閉めて、一旦部屋に立て篭もる。流石に無策で外で飛び出せる程、今の状況は楽観視できない。帝国の攻撃なのはタイミング的に見て間違いないが、そこに何故ミリシアル兵がいるかが気になる。

 

「私にも分からん。何故、我が軍の兵が.......」

 

「ミリシアル軍の制服を着た、帝国の工作兵の可能性はありませんか?」

 

トラマリの問いに、死体を見ていたデイバーノックが静かに答えた。「我が軍の兵に間違いない」と。となると、いよいよ分からない。

 

「てことは何だ?コイツら、裏切ったのか?こんな首都のど真ん中、世界最強ミリシアル軍の本部の兵隊が?」

 

マオリアルの言う通り、裏切りだとしたら意味がわからない。裏切ったとしても、理由がわからない。仮に何かしらの脅しだと言うなら数が限られるだろうし、賄賂で買収されたにしても、こんなに集まる物だろうか?仮にそうだとしたら、色々と違う意味で問題だ。

 

「であれば、私が調べてみよう。何か魔法的な痕跡があるやもしれん」

 

ゴウン魔導将が手に持つ黄金の杖を死体に向け何か唱えると、オレンジ色の光が死体を包んだ。

 

「!?これは.......。なるほど、彼らは操られたようだ」

 

「操られた、だと?」

 

「アグラ殿が驚かれるも無理はない。反応から察するに、使われたのは恐らく魔帝の産物。かつて書庫で、その手の記述を読んだことがある。この反応と私の記憶が正しければ、恐らくこの建物の1階の高さまでで、敷地内に居たものは全て支配下に置かれているだろう。しかも一度支配されれば最後、元には戻らない」

 

魔法が原因なら分かるが、次に出てくる謎は何故帝国が魔帝の魔法を行使できたかである。帝国も皇国と同じで、一部例外を除いて魔力がない上に、魔力がある者も微弱な物だと言う。そんな如何にも大魔法っぽい魔法を、早々行使できるのだろうか?

とは言え、今はそんな事を考える暇はないだろう。こうなった以上、ここを脱出するほかない。

 

「ゴウン殿。その魔法、今もその範囲に入ったら支配下に置かれるか?」

 

「いや、それは問題ない。使用直後、1分程度は残留するが流石にもう残ってはいない」

 

「ここの兵力、及び近隣の基地から増援が来るまでどの位だ?」

 

「警備要員、約1000人。指揮系統の混乱等から、援軍が到着するまで最短でも2時間はかかる」

 

皇国の場合なら例え神谷が殺されたようと、都内であれば15分〜30分以内に初動は完了する。ミリシアルの練度が知れるが、今はそんな事を気にしてられる暇もない。こうなった以上、こちらの盤上に切り替える必要がある。

 

「こうなった以上、皇国は独自に動く。向上!」

 

「ハッ!」

 

「待機中の各部隊は、国防総省庁舎に集結。我々の救援に当たらせろ。都市内飛行中は、拡声器で皇国軍機である事を明言し、誤射を避けさせるんだ。いいな!」

 

「了解!!」

 

向上が無線機で連絡を取っている中、神谷は腕にグラップリングフックを装備し、スマートコンタクトレンズを付けて、銃の残弾を確認。戦闘体制を整える。

向上の方も同じ様に装備を整えて、銃を構える。既にドアの付近に、ミリシアルの警備兵が集まっているのか、銃が擦れるカチャカチャという音が聞こえる。

 

「向上、合わせろよ」

 

「何年コンビやってると思ってるんです?完璧に合わせて見せますよ」

 

「上等!!」

 

向上と神谷は同時に扉を蹴破って外へ飛び出し、扉付近の敵を殲滅する。向上を銃を乱射、神谷は刀を巧みに操って切り裂く。

 

「流石に予想外か?」

 

「最強のミリシアル兵とて、我らの敵ではありませんね」

 

ドア付近の敵を殲滅すると、まるで談笑するかの様に普通に話しながら、ゆっくりと階段のある方向へと歩き出す。その後ろを他の将軍達が、ビクビクしながら着いていく。

歩いていると、神谷の足元に何かが転がってきた。恐らく見た目的に手榴弾だろう。手榴弾じゃなくとも、敵の足元に投げつけてくる時点で危険物には変わりない。

 

「手榴!」

「焦んなよ向上。こういうのは、な!」

 

だが生憎と、手榴弾を投げた程度で神谷は死なない。そのまま足で空中に蹴り上げて、それを投げてきた方向に蹴り飛ばして返却してあげた。手榴弾は先の突き当たりのあたりで起爆し、兵士の悲鳴が廊下に木霊する。

 

「ビビったら負けよ」

 

「いつもの事ながら、度胸がおかしいですよ長官。そんな簡単にできてたまるか」

 

「そう言うなって」

 

涼しい顔でそう言い合う2人だが、他の将軍達からすればヤベェ奴らでしかない。確かに将軍達の内、一部は戦闘もできる。だがその将軍達が攻撃に移る前より先に、神谷と向上が動く。神谷が斬り込み、向上が後ろから援護したり、或いは2人とも前に出て阿吽の呼吸でお互いをカバーし合い敵を殲滅していく。まるで芸術だ。

 

「あそこまでの物とは.......」

 

「ふん、我が友を甘く見るでないわ」

 

「極帝様!!」

 

「あの者は単なる指揮官にあらず。お主らは本陣から指揮を執るだろうし、それが将としての普通だろう。だが彼奴は己が自ら最前線に殴り込み、五感で戦場を感じ、意のままに全てを操る。その様はまさに、修羅である」

 

鮮血に塗れ、服を真っ赤に染めても尚、ただ相手の懐に飛び込み続ける神谷。その姿は修羅と瓜二つだ。これまで皇国は恐怖の対象だったが、この姿を見てしまったら皇国よりも神谷の方が怖く思える。

神谷と向上が不埒なミリシアル兵に最高のおもてなしをしている頃、国防総省があるルーンポリス上空には、白亜衆仕様の真っ白と赤衣鉄砲隊仕様の真っ赤なUH73天神が飛来していた。

 

「ルーンポリス上空に到達!!」

 

「高度を下げろ。ビルの合間を飛行する」

 

「了解!」

 

6機の天神は一気に高度を下げ、都市内部に突入。街中を爆音と強烈なダウンウォッシュを撒き散らしながら、ルーンポリスを飛んでいく。今日は普通の平日、それも丁度世間は昼休みの時間帯だ。学生も社会人も、ランチを食べるべく近くのレストランやカフェにいるし、中にはランチが終わり帰る者もいて、メインストリートは普通に人が多い。そんな中を見た事ない飛行機械が、頭上を超低空で飛んで行くとか軽くトラウマ物である。

 

「なんだありゃ!?!?」

 

「攻撃か!?!?」

 

「誰か!!警察呼べ!!!!!!」

 

この始末である。しかも都市内のビルとビルの間を飛行する上に、パイロット達は全員、皇国軍でもトップクラスの腕前を持つベテラン共の為、動きが一々素人目には危なっかしい。例えば交差点を、物凄い角度をつけて曲がっていたり、クソ狭い中で追い抜きを行ったりと、墜落しそうな挙動を見せていた。

 

「国防総省本庁舎、視認!!」

 

「このまま突っ込む。ハードランディングだ、行くぞ!!」

 

映画のSEALDsの様に、部隊を降下させる前にヘリごと撃墜されて二階級特進する訳にはいかない。天神はそのまま広場に、まるで飛行機が着陸するかの様に無理矢理滑り込む。

 

「うおっとぉ!!」

 

「ケツ痛!!」

 

「あいて!頭打った」

 

尚、着陸の衝撃で中に乗っている兵士達は、ケツとか頭とか腰とかを軽く痛めるが、コラテラルダメージだ。問題はない。

 

「ランディングゾーン確保!!GOGOGO!!!!」

 

扉を開けて、素早く広場に転がり込む。突入要員全員の展開が完了すると、ヘリはそのままルーンポリスへと戻る。ビルとビルの間で待機しつつ、スナイパー組を近くのビルに挟ませるのだ。

 

「どのビルがいい!!」

 

「ちょっと待ってくれよ.......。この先の角を右に!」

 

「よっしゃ!捕まってろよ!!レフトターン!!!!」

 

ほぼ真横で角に滑り込み、そのまま強引に曲がりこむ。高度が後6m下なら、確実にブレードが地面に擦れていただろう。

 

「次は左!」

 

「おう!!」

 

「今度は右だ!!」

 

「アイアイ!!」

 

曲芸飛行並みの捻り込みで、ビルとビルの間を器用に飛んで行く。5分程で目的のビルに到着し、ギリギリまで高度を落とす。

 

「ありがとう!」

 

「いいって事よ!帰りのルーンポリスジェットコースターファストパスは購入済みかい?」

 

「もう勘弁!命がいくつあっても足りねーや」

「ゲロ撒き散らしながら乗るしかないな」

 

「はは、ちげーねぇ。行きな!!」

 

「おう!!」

「行ってくるぜ!」

 

スナイパーとスポッターを下ろし、天神は潜伏予定ポイントまで一度退く。こうすれば例え、対空火器を相手に奪取されたとしても、攻撃する事はできない。歩兵が近づいてくれば、ドアガンで一掃するだけだ。

 

「な、なんだキミ達は!!!!」

 

「不審者だ!!」

 

どうやらここのビルは、普通のオフィスビルだったらしい。受付嬢のお姉さん3人は肩を抱き寄せあって震えているし、ロビーにいた男性陣から詰められている。無理もない。2人の服装は機動甲冑にライフルという、明らかにヤバい格好だ。不審者どころの話ではない。完璧なテロリストである。

 

「エレベーターで上がるぞ!!」

 

「何階だ!!」

 

「45階!!」

 

多分魔導式なので呼び名は違うだろうが、エレベーターに乗り込み45階を目指す。皇国の物とは違い、めちゃくちゃ揺れる上にガタゴトガタゴトガタゴトうるさいが、問題はない。

 

「どの部屋が最適だ!!」

 

「.......ここ!!!!」

 

スポッターの兵士が指差す部屋には、ミリシアルの文字で『総務部』とあった。2人には読めないが、ドアを蹴破って中に転がり込む。

 

「おお!?!?」

 

「な、なんだなんだ!!」

 

「コイツら誰だ!!」

 

中にいたサラリーマン達はビックリして、書類を投げてしまい紙吹雪の様に舞う。その中を2人は走り抜け、部長のデスクの前で止まった。

 

「な、何が目的だ.......」

 

「退け」

 

「は?」

 

「退けぇ!!」

 

「は、はいぃぃぃ!!!!」

 

部長、完敗である。まあ現役のそれも精鋭中の精鋭に名を連ねる兵士に恫喝されては、たかがサラリーマンでは太刀打ちできない。

 

「どうだ!行けるか!!」

 

「バッチリだ!!丸見えだ!!」

 

「よし!!」

 

スナイパーはライフルをケースから取り出し、手早くセット。スポッターもスコープを用意するが、ちょっと問題があった。絶妙に窓と彼らの身長が合わない。

 

「おいアンタ!」

 

「な、なんだ!!」

 

「机、いくつか借りるぜ?」

 

「は?」

 

部屋にあるデスクを5つ位並べて、即席のベッドを作る。ここに伏せて撃てば、良い感じに狙える。

 

「こちらスナイパー。配置良し」

 

『了解、待機せよ』

 

無線で仲間に知らせたのと同時に、警備員が部屋に入ってきた。不審者2人組を取り押さえて、警察に突き出す為である。

 

「お前達、そこを動くな!!」

 

「ん?心配すんな、仕事が終わるまで動かねーよ」

 

「そもそも貴様は何者だ!!」

 

「あ、そうだ俺たち名乗ってない」

 

「あー、そりゃテロリストが乗り込んできたみたいな反応になるわ。なら、ゴホン。サラリーマン諸君、我々は怪しい者ではない。我々は大日本皇国統合軍、神谷戦闘団白亜衆の兵士だ。現在、統合軍総司令、神谷浩三元帥の要請により、国防総省本庁舎への援護狙撃の為、ここを勝手ながら狙撃ポイントにさせて貰った。諸君には危害を加えないが、任務遂行の妨害その他に付いては実力を持って対処させて貰うのでそのつもりで」

 

全員ポカーンである。いきなり完全武装の二人組が押しかけてきた、ライフルを構え出した状況で、怪しくないだの白亜衆だの言われても理解が追いつかない。

スナイパー組がオフィスでサラリーマンから物凄い目で見られてる間、神谷達は会議室のある6階から3階へと下ることが出来ていた。

 

「うへぇ、死体だらけだ」

 

「しかもミリシアル兵同士で殺し合いですからね。目も当てられませんよ」

 

廊下にはミリシアル兵の死体が折り重なっている。見たところ戦闘服以外の制服の死体には、拳銃やカッターナイフといった武器が近くに転がっている。恐らく1階にいた兵士達は操られ、上階にいた兵士達は事務方のために武器がなく、手近な物で戦いを挑んだ結果がこれなのだろう。この光景には言葉が出ない。

 

「いやはやいやはや。お見事ですなぁ、神谷浩三・修羅閣下」

 

暫く歩くと、軽く拍手をしながら目出し帽の男が出てきた。装備からして、ミリシアル兵ではない。

 

「誰だアンタ。俺達は初対面のはずだが?」

 

「えぇ。そうでしょうねぇ。私が一方的に知っているだけですから。あぁ、申し遅れました。私、ダードラと申します。この地獄絵図を描いた、しがない芸術家ですよ」

 

「抜かせぇ!!!!テメェ殺してやる!!!!!」

 

「マリオリル!!」

 

マリオリルが剣を素早く抜いて切り掛かるが、ダードラはワルサーP38の様な拳銃を抜いて、脚に弾を当てて止めてしまう。多分この男、まあまあ強いだろう。

 

「ぐぁぁぁあ!!!!!」

 

「お静かに。ご心配せずとも、皆さんにはキッチリ死んでもらいますよ。さて閣下、1つ取り引きと行きませんか?」」

 

「取り引き?」

 

「えぇ。貴方の腰に下げる刀、それを私にお譲りください。私は芸術にら目がなくてねぇ、そういう綺麗な刀もコレクションしたいのですよ。そうすれば、楽に殺してあげますよ」

 

「なら、渡さなかったら?」

 

「苦しんで死んでもらいます」

 

神谷は少し考える。別に渡しても良いが、ここは時間を稼いでおきたい。もしかしたら、逃げ仰られるかもしれないし、どうせ死ぬならそれに賭けるも一興だろう。

 

「あぁ、逃げようだなんて考えない事ですよ。こちらには…」

 

パチンと指を鳴らすと、奥からダードラと同じ装備の男が10人ばかりと、60人のミリシアル兵がゾロゾロとやってきた。

 

「これだけの人員がいますから」

 

「あらまー。こりゃ逃げられんわ」

 

これは流石の神谷と向上でも、他の将軍を守って逃げることはできない。2人だけなら多分行けるが、それでも無傷とはいかないだろう。

 

「では、どうされますか?」

 

「そうだなぁ、わかった!刀を譲ってやる。ただ楽に殺すついでに、冥土の土産にこの絵について教えてくれよ。何か仕掛けがあるんだろ?」

 

「.......まぁ、良いでしょう。今回哀れなミリシアル兵の皆さんが操られているのは、魔帝だかライオン帝国だか覚えてませんが、古代の魔法遺物コレクターの男から譲って貰った魔道具とやらを使ったのです。一定範囲内の人間を支配下に置き、思い通りに動かすことができる。その結果が、これなのですよ。

最初は半信半疑でしたが、使ってみればビックリ。こんなにも効果があるとは」

 

「ほー。そりゃ良いことを聞いた。そうだ、お返しに俺も1つ良いことを教えてやるよ」

 

「それはそれは。何ですかな?」

 

「日ノ本発、ルーンポリス行き。死の超特急はな、世界一足が速いんだよ!!!!!!」

「皆さん伏せて!!!!!」

 

神谷と向上が同時に叫び、向上と共に他の将軍達がしゃがむ。次の瞬間、無数の弾丸が頭上を通過していった。

 

「閣下を助けろ!!!!撃ちまくれ!!!!!!」

 

「将軍方に誤射すんなよ!!!!俺たちのクビが物理でも社会でも飛ぶからな!!!!」

 

「おぉ怖いねぇ」

「そりゃ気をつけないとな」

 

何と後ろから、白亜衆と赤衣の兵士達が銃を乱射していたのだ。神谷が適当なトークで情報を引き出している間に、彼らは接近していたのだ。スナイパー組も狙撃で的確に援護し、ミリシアル兵を一掃する。

 

「ダードラさんよぉ。さっきの取り引きは無しだ!代わりに、これを受け取りな!!!!」

 

「グボァォ!!!!!!」

 

神谷が刀の峰でぶん殴り、無理矢理気絶させてダードラを確保。白亜衆と赤衣は内部の掃討を開始し、将軍達は近隣のミリシアル駐屯地へと移動。ダードラは一時的に皇国が身を預かる事となり、ここに神聖ミリシアル帝国国防総省本庁舎襲撃事件は、一応の終結を迎えたのである。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。