向上「おめでとうございます!!」
一色「今年もどうぞ」
川上「鬼武者シリーズを!」
エルフ五等分の花嫁「「「「「よろしくお願いしま〜す」」」」」
てな訳で、新年1発目言ってみようか!!
「いやー、なんで雪」
「何処ですかね、ここ」
神谷達、神谷戦闘団の面々の目の前に広がるのは、広大な雪が積もった森林だった。別に北海道とか東北とかに旅行に来た訳でも、どこかの北国に行った訳でもない。例によって、なんかまたよく分からん世界にやって来てしまったのだ。
「どうします長官?」
「あ、繋がりました!状況を報告します!!」
「GPS!」
「一応繋がってんですけど、マップの表示じゃここは海のど真ん中ですよ?」
神谷戦闘団が何故こんなところにいるのか。というのも本日神谷戦闘団は、来るパガンダ、イルネティア両島解放作戦の為の演習の為、一時的に千葉演習場に向かう途中だったのだ。
所がどういう訳か、いきなり何の前触れもなく雪が積もった広大な雪原にやってきてしまっていたのだ。本当に何か雷が落ちたとかではなく、普通に飛んでたらいきなり風景がスイッチで切り替えたみたいに雪の大地に早替わりし、撤収しようにも来た方向も森林だったのだ。取り敢えず着陸して、今に至る。
「どうするこれ?」
「どうしましょうか.......」
本国に撤退したいが、あくまで通信が繋がってるってだけで帰り方は分からない。見たところ、一面全部木と雪で出入り口は勿論、何かしらの境界線やガラリと変わってる場所もない。
「浩三様、私達が周囲の偵察に行きましょうか?」
「その心は?」
「私達はハイエルフ。知っての通り、森で生活する民族よ。だからこういう森とか山って、私達にとっては最も動きやすい、えっとふぉーるあうと?なの」
「ミーナミーナ。多分それ、フィールドだよ。フォールアウトは核戦争後の世界が舞台のゲーム」
レイチェルに突っ込まれて見事に台無しだが、ミーナの言っている事は一理ある。エルフはその長い耳により聴覚に優れ、魔法の素質も高い。更に彼女達はハイエルフという、エルフの上位種。エルフ以上の聴覚の他、並外れた高い身体能力も併せ持ち、魔法の才能は最上位の部類になる。
加えて彼女達の故郷、ナゴ村は山奥にある集落で幼少期の頃では日頃から遊び、大人になってからは狩りで毎日の様に出入りしていた。しかも数百年単位でである。実際、白亜衆と森林で模擬戦をした時も圧倒していた。悪くない手である。
「よし、白亜のワルキューレは半径1km圏内を偵察。ドローン出撃。飛行ログから航路を割り出し、それを辿らせろ。他は周囲を偵察。情報を集めろ。行動開始!」
神谷戦闘団の面々は行動を開始する。さて、数十分もしない内に早速ミーシャから連絡が入った。
『浩三さん、あの、ロボットが目の前にあります』
「ロボット?」
『は、はい。今映像で送ります』
ミーシャから送られた映像には、確かに巨大な人型ロボットが膝を付いていた。ただ、全く見たことがない。そもそも二足歩行兵器は基本的に、旧世界でも皇国でしか運用されていなかった。皇国とて二足歩行兵器ではあるが、完全な人型ではない。だが映像の兵器はまるで、ガンダムのMS並みに洗練された二足歩行人型兵器である。
「ラヴァナールとかいう、古の魔法帝国とやらの遺産か?」
「にしてはなんか、ザ・ロボットだよな」
「なんか異世界感がないというか、こっちと似た様な匂いがするというか、なんで言えば良いんだ?」
「いや、言わんとしてる事はわかるぞ。言葉にはしにくいが」
幹部達も映像に見入っている。だがこの世界特有の魔法とか、古の傍迷惑国家ことラヴァナール帝国の遺物という訳でもなさそうだ。勝手なイメージだが、古の魔法帝国の兵器はどっちかというとシュッとしていて、流線型というか何処かスタイリッシュさを感じる。対して目の前のロボットは、武骨で角ばっていて、尚且つ何処か古臭さを感じる。いやまあ、確実に皇国と同等かそれ以上の技術な訳だが、なんだか旧世代機とか量産機とかその手のロボットから感じる雰囲気なのだ。
「周囲にパイロットとかもなし、か?」
「あ、いや!長官、ここ!誰かいますよ」
映像の端に、赤髪の青年が映っていた。学校からして、恐らくこのロボットのパイロットなのだろう。リスキーだが、ここは接触しておきたい。
「ミーシャ、接触しろ。できればこっちに連れて来てくれ。無理そうなら全力で逃げろ」
『わかりました!』
赤髪の青年こと、テオドール・エーベルバッハは1人、愛機の前でコーヒーを飲んでいた。テオドールの所属するドイツ民主共和国陸軍第666戦術機中隊の本拠地がある、ベーバーゼー基地を同じくドイツ民主共和国国家保安省、通称シュタージの武装警察軍によって占領された。何故占領されたのかというとかなり長くなるのだが、簡単に言うと中隊全員が国家反逆とかの嫌疑があり、それを口実に武装警察軍が攻めて来たのだ。しかも中隊にスパイがいて、そのスパイがテオドールの義理の妹(肉体関係構築済み)とかいうオマケ付きである。
それでこの国家反逆の嫌疑の方は本当にクーデターを考えており、今はそのクーデターを起こすの同志と共に基地の奪還と中隊の仲間達を助けるべく動いているのだ。
「リィズ.......」
「あのー.......」
「誰だ!」
テオドールは即座に声のした方に銃を向けた。そこには金髪ショートのスタイル抜群の女がいた。だが格好が、まるでおとぎ話のワルキューレの様な格好である。こんな雪積もる森の奥でする格好ではないし、そもそも女1人な時点で怪しい。
「えっと、私はミーシャ・ナゴ・神谷と言います。怪しい者ではないです。その、私と一緒に来てくれませんか?」
「お前、シュタージの手先か!?」
「しゅたーじ?」
ミーシャは初めて聞く単語にハテナを浮かべていたが、テオドールも顔にこそ出さないが驚いていた。東ドイツ国民で「シュタージ」の名前を知らぬ者はいない。東ドイツの秘密警察であり、何の罪を犯しておらずとも「疑わしきは罰せよ」の考えで捕まり、拷問&処刑されるのはよくある話だ。亡命者狩りや反体制派狩り、果ては権力闘争&内部抗争と悪名高き組織だ。
「あの、せめてお名前は教えてもらえませんか?」
「.......テオドール・エーベルバッハ。少尉だ」
「エーベルバッハさんですね。私はミーシャと呼んでください」
「それでミーシャ。君は何者だ?シュタージか?ヴァアヴォルフ大隊の人間か?」
「私は神谷戦闘団、白亜のワルキューレの隊員です」
「カミヤ戦闘団?」
そんな部隊、聞いたこともない。そもそも『戦闘団』という部隊規模は、東ドイツ軍には存在しない筈だ。ますます怪しい。
テオドールが訝しんでいると、ミーシャは神谷からの無線に応答し出す。その内容とは、もう1人恐らく同じ所属のロボットを発見し、黒髪ロングにメガネの女性パイロットと接触したと言う物だった。
「エーベルバッハさん。あなたの仲間に、長い黒髪にメガネを掛けた女性はいますか?」
「中尉に何をした!!」
「何もしてませんよ!ただあなたと同じ様に、私の仲間がこんな風に接触しただけです。とにかく、状況を説明する為にも、私について来てくださいませんか?」
「いいだろう。だが、機体をそのままにする訳にはいかない。機体ごと動かすが、構わないな?」
「構いませんよ。ただ、できればその機体に私も乗せて貰えるとありがたいのですが」
「わかった」
何とか神谷戦闘団の仮拠点まで引っ張る事に成功したミーシャは、早速仮拠点へと向かう。どうやらもう1人のパイロットも呼ぶ事が出来たらしく、向こうも仮拠点にやって来た所だった。
「中尉!」
「テオドール!コイツらは何者なんだ?」
「わからない。だが、それを知る為にもここに来た。賭けだがな」
「私も同じだ。見た所、シュタージでも軍でもソ連軍でも西側でもない。そもそも何処の国かも検討も付かないからな。だから付いてくる事にした」
周りにいた兵士達は、ソ連だとかシュタージという言葉に首を傾げていた。西側というのは旧世界でも使われていたが、ソ連は1991年には崩壊し、ロシア連邦になっている。シュタージというのは、そもそも聞き馴染みがない。
「お二方、こちらへどうぞ。団長がお待ちです」
柿田を先頭に、2人は神谷のいる天幕に入った。2人はその道すがらで、兵士達の装備を見たが明らかに今のどの国の装備よりも数段先を行くものばかりで、まるでSFの軍隊である。お陰で余計に怪しさが深まる。
「柿田大尉、入ります!」
「入れ」
天幕の中に入ると、コーヒー片手にタブレットを操作する神谷が座っていた。その後ろには、向上が直立不動で控えている。
「ドイツ民主共和国陸軍第666戦術機中隊所属、政治将校グレーテル・イェッケルン中尉です!」
「同じく第666戦術機中隊所属、テオドール・エーベルバッハ少尉です!」
「大日本皇国統合軍総司令長官兼、神谷戦闘団団長、神谷浩三元帥だ。後ろに控えているのは、俺の秘書官にして戦闘団の副長兼赤衣鉄砲隊隊長の」
「向上六郎大佐です」
まさかの高階級2人に、見事に冷や水をぶっかけられてしまった。てっきり大佐とか少将位の階級と、少佐とか大尉位の階級の2人かと思いきや、全軍の総指揮官たる元帥と大佐という、もう何が何だか分からない2人組だったのだ。お陰で顔をピクピクさせている。
「取り敢えず出入り口でフリーズしないで座ったらどうだ?なにもとって食うつもりもないし、君達の国の元帥ではない。別に無礼も何も言わないから」
そうは言われても、流石に「はいそうですか」とはならない。軍隊とは階級が全て。一階級の上下であっても、礼儀はしっかりしなければならない組織だ。取り敢えず座って出されたコーヒーを啜るが、味も何も分かったものじゃない。
「さーて、それで君達はドイツ民主共和国、所謂東ドイツの軍隊、でいいんだな?」
「はい。そうであります、元帥殿」
「念の為に聞くが、いまは西暦何年だ?」
「1983年ですが.......」
神谷と向上は顔を見合わせると、また溜め息をついた。「あぁ、またこのパターンですか」と。また安定の、世界線ごちゃ混ぜ事件が起きたのだ。頭が痛い。
「OK、ありがとう中尉。お陰で状況が理解できた。まず我々は、この世界の住民ではない」
「はい?」
「元帥閣下、それは一体どういう意味なのですか?」
「少尉、あのロボット。確か戦術機、というのだったな?あんなSFロマン兵器、我々は知らない。そもそも我々の時間軸では、今は2059年だ。1983年、ざっと半世紀前であんな兵器があるのだ。もしアレが最重要国家機密級の兵器であったとしても、何かしらの情報は出ているだろうし、それを基幹とした進化系の兵器や装置が開発されている筈だ。だがそんな兵器、我が皇国を含め世界中何処にも存在しない。
つまり我々は君達とは異なる世界線、つまり戦術機が生まれなかった世界線の、君達の世界線から見れば半世紀後からやって来たのだ」
2人とも頭がパンクし殆ど理解できていないが、そんなのお構いなしに神谷は話を続ける。
「荒唐無稽だと思うだろう。俺が頭可笑しいと思うだろう。だがな、この手の話は初めてじゃないんだよ」
「どういう意味ですか?」
「この世界線スリップとでも言うべき現象は、これで4度目だ。最初は我が国、皇国。皇国はさっき言った世界にいたのだが、3年前に国土ごと突如異世界に転移した。その後も年一回、同じ日本だが異なる世界線の日本と邂逅している。恐らく今回は、君たちがそれに巻き込まれたのだろう」
いずれにしろ「はいそうですか」で信じれる訳がない。物的証拠がいる。それを分かっている神谷は、2人にとある魔法を掛けた。
「
「お?おぉぉ!?!?」
「な、なんだこれは!!」
「
これで少しは信じて貰えるといいんだが、どうだ?」
「し、信じる!!信じるから!!」
「降ろしてくれ!!」
「はいはい」
物凄い絶叫で「降ろせ」と言われたので、そのまま地面にゆっくり降ろした。さて、これで取り敢えずはクリアだ。ここからのミッションは、協力を取り付ける事である。現状下では、何も情報がない。その為、少しでも情報が欲しい。仲間とまでは行かずとも、友好的な関係は構築しておきたい所だ。
「それで君達は何故、こんなところにたった2人で?中隊がどの程度の規模かは知らないが、少なくとも君達2機ではエレメントとか分隊規模だろ?」
「そ、それは.......」
「基地を襲撃する為です」
「エーベルバッハ少尉!!」
基地を襲撃とは、中々聞き捨てならない。一体何処の基地を襲撃するのやら。
「中尉、大丈夫。心配するな。別に我々は君達が、どの様な計画を実行しようとしていても邪魔するつもりはない。我々の兵器をかっぱらおうとか、我が軍と一戦交えたいとかなら全力で殲滅するが、その手の話でないなら止めるつもりも道理もない。
もし君達が我々を党の回し者、例えば秘密警察とかその手のものだと思ってるなら、それも違う。どうか信じてほしい」
「.......」
「なら、コイツを渡そう。おい。銃を彼らに渡せ」
「よろしいのですか?」
「銃ってお守りがありゃ、少しはこっちを信じてくれるかもしれん。持ってこい」
向上に指示を出し、43式小銃を持って来させる。それを2人に渡し、更に他の団員に武装を解除させる様に指示も出した。
「これで、信じてもらえたかな」
「.......良いでしょう」
2人が話したのは、これまでに起こった全てだった。中隊が反体制派の嫌疑で基地ごとシュタージに襲われ、現在占領下にあること。グレーテルは偶々別動中で難を逃れ、テオドールは仲間のカティアという少女と共にどうにか逃げられたこと。現在は反体制派の部隊やレジスタンスと共に、ベーバーゼー基地の奪還と仲間の救出の為に作戦行動中であること。全てを語り終えた時、1人の兵士が入ってきた。
「会談中に失礼致します!先程、アナスタシア少尉より報告が上がりました!茶髪の少女を保護したとの事で、カティア・ヴァルトハイムと名乗っているそうです!」
2人が勢いよく報告しにきた兵士の方を向いた。さっき言っていた、共に脱出した仲間だろう。
「すぐにこっちに連れてこい」
「了解!」
暫くすると、カティアという少女が天幕にやって来た。テオドールとグレーテルを見ると、駆け寄ってくる。
「テオドールさん!中尉!」
「カティア!」
「ヴァルトハイム少尉、何故ここにいる?」
「分かりません。気付いたら、ここに居ました。私、お手洗いに行ったんですけど、トイレから出たら森の中で、しかもドアも消えちゃって。すぐにここが基地の近くと分かったので、近かったテオドールさんの方に向かっていたら、アナスタシアさんに保護してもらいました」
いよいよ持って、転移の件が現実味を帯びて来た事に気づいた2人。一方の神谷も、なんだか嫌な予感がして来たので、テオドールに無線で味方と交信できるか頼んでみた所、やはり繋がらなかった。
つまり今この森は、元いた東ドイツのあるユーラシア大陸から、皇国の正確には海上にあるという事である。その証拠に先程、偵察に出したドローンから周囲10km圏内より外は全て、海上に出たと報告が上がって来た。
「状況を整理する。現在地は太平洋側、皇国より西に40kmの海上だ。ここら一帯はドイツ民主共和国の領土であるが、どういう訳か海上に転移している。しかし周囲からは姿形は見えず、こちらも見渡す限りの森林だが、ここより10km圏内より外は皇国に繋がっている。現在、ドイツ民主共和国とは通信がつながらず、物理的に遮断した物と思われる。
でだ、どうする666中隊?」
テオドールとグレーテルは偵察の意味も込めて本体よりも先に出撃しており、本隊や西方方面軍とは連絡も取れない。つまり孤立状態な訳だが、ベーバーゼー基地には恐らくまだ仲間とシュタージがいる。それは助けたい。だが、たった2機では、失敗するのは目に見えている。
「あの、神谷閣下」
「なんだ、ヴァルトハイム少尉。トイレは天幕出て右、コーヒーと紅茶や茶菓子はそこから、自由に取ってもらって構わないぞ?」
「いえ、そうではなくて。その、私達に力を貸して頂けませんか?」
まさかの提案に、天幕内にいた戦闘団の幕僚達もテオドールとグレテールも驚いた。だが神谷だけは、カティアの次の言葉を待つ。
「666中隊は私に居場所をくれました。お世話になった人もいます。だから、助けたいんです!でも私達だけじゃ、何もできない。お願いです、力を貸してください!シュタージを倒すのを手伝ってください!!」
「カティア、お前そんなことができる訳ないだろ!」
「そうだぞ少尉!閣下の国は大日本皇国。私達やシュタージは東ドイツ!2つの国が武力を用いて戦闘を行えば、それは戦争だ!!」
そうなのだ。大日本皇国とドイツ民主共和国の武装勢力が争えば、それは戦争に他ならない。普通の将軍ならそんな事に協力する訳がない。だが神谷は、普通ではない。常な法の抜け道を使って、不可能を無理矢理にでも可能にして来た。今回もそうするまで。
「向上。シュタージ、武装警察軍、ベーバーゼー基地、東ドイツまたはドイツ民主共和国なんて国、この世界にあったか?」
「は?い、いえ。ッ!長官、まさか!!」
「ここは法的には大日本皇国の領海上だ。そこに完全武装の軍隊がいて、拉致監禁している。本来警察が出張るべき案件だが、そのシュタージは例のロボットを保有しているんだろ?」
「そ、その通りだが.......」
テオドールの回答に、神谷は不敵な笑みを浮かべ、軽く拍手をしながら「それは良い。実に良い」と言う。もう最初の方で幕僚達も分かってはいたが、これで確信に変わった。
「あんなロボット兵器を警察じゃ相手できないし、そもそも軍隊並みの武装しているんだろ?そんなテロリストを放置していては、我が国の安全保障問題に直結する」
「あ、あの元帥閣下?」
「喜ぶが良い諸君。君達は我が国の保護下に置かれた。そして、これより我が神谷戦闘団は総力を上げて、誘拐罪、監禁罪、国家転覆罪、テロ等準備罪等々の罪により、武装組織『シュタージ』を殲滅する!!向上!全部隊に戦闘態勢を下令しろ!!!!本件は統合軍法第78条第3項、緊急治安出動に於ける案件とする。全兵器使用自由、シュタージを血祭りにあげるぞ!!!!!!!!」
神谷の考えというのが、治安出動である。本来であれば総理や都道県知事の要請が必要な治安出動であるが、転移後に少し改定され新たに『国家的非常時に直結する場合は、師団長、艦隊司令、基地司令以上の役職者の判断により出動を許可する』という物も追加されている。まあ色々と後が面倒だったりはするが、流石に未知の人型二足歩行兵器を持っているとなれば問題はないだろう。
「え?えっと、つまり?」
「ヴァルトハイム少尉、分からんか?要はウチの敷地に武装した上で土足で上がり込んだ挙句、戦術機とかいうヤベェ物まで持ち込みやがったシュタージってテロリストを殲滅して、ついでにシュタージが拉致って監禁した被害者を助けようって言ったんだ」
「き、詭弁だ」
「大佐殿。我々としては願ってもないのですが、その、よろしいのですか?」
「イェッケルン中尉。神谷戦闘団に入りなさい。そしたら、慣れますから」
向上は遠い目をしながら、薄っすら乾いた笑みを浮かべながらそう言った。苦労人立ち位置気取っているが、コイツも普通に神谷側である。人の事は言えない。
「偵察隊を出せ!ドローン出撃!」
「各員、雪上迷彩に換装の上、戦闘配置のまま待機!」
「展開中の偵察隊の一部を、そのまま本陣警戒に当たらせろ!」
幕僚達から指示が飛び、兵士達はそれに従って動き出す。ベーバーゼー基地の戦力や、666中隊の仲間の安否も分からない以上、まずは偵察からだ。
数時間もしない内に、ベーバーゼー基地の現状は分かった。一個大隊、凡そ700名。更にシュタージの協力者になってる物も含めれば、更にます。これに加えてMiG-23チボラシュカなるシュタージの戦術機とMiG-21バラライカもいるらしい。
歩兵だけならこちらも歩兵だけでいけるが、流石に戦術機とかいう機甲戦力にはこちらも戦車をぶつけたい。となれば全部隊で切り込むのが良いだろう。
「これより、ベーバーゼー基地強襲作戦の概要を説明する。耳かっぽじってよく聞け!
今回の戦闘で最も厄介かつジョーカーとなる存在は、例の戦術機とかいうロボットだ。これを歩兵だけでどうこうできないし、こちらの保有するのは3機で向こうは30機持っている。となればこちらも、それ相応の準備をしなくてはならない。51式をここと、ここに配置し支援砲撃を行わせつつ、戦車を先頭に機甲部隊を陸路で突っ込ませ、空から歩兵を降下させる。後は安定の陽動と撹乱で、適当に足止めしつつ各個に鎮圧する。相手に戦術機がいようと臆する事はない!彼らシュタージの武装警察軍は、言うなればアインザッツグルッペン。無抵抗な民間人とかを殺すのがお仕事な連中だ。奴らブリキの兵隊に、本物の戦争と真の兵士の戦闘を教育してやれ!!!!!!!」
次の瞬間、兵士達が銃を空高く掲げ鬨の声を上げる。士気は十分だ。
「神谷戦闘団、出撃!!!!!」
神谷の指示を受け、最強の猛者達が動き出す。まず突っ込んだのは46式を先頭とした、機甲部隊である。フェンスを突き破り、基地内に突入。そのままこちらに銃を向けてくるものを容赦なく射殺し、建物には砲撃を食らわせる。
「クソッ!何処の所属だ!?!?」
「戦車を呼べ!ミサイルも持ってこい!!」
シュタージ側にもT72が配備されていたらしく、46式の前に8両が現れた。だが46式を、そこらの戦車と一緒にされては困る。
「APFSDS装填!目標、前方の超大型戦車!!撃て!!!!」
ズドォン!!
基本、APFSDSを使えば正面装甲でもある程度の可能性はある。側面や背面なら、ほぼ確実に貫通せしめるだろう。だが目の前にいる46式は、たかだか125mm程度、簡単に弾く。
「効いてません!!」
「斉射だ!撃て!!!!」
8門の斉射に普通の戦車なら一撃だろうが、46式はそれすらも耐える。それどころかお返しに、主砲をお見舞いして2両一気に蹴散らす始末だ。
「隊長!だめです!!硬すぎる!!!!」
「後退だ。後退しろ!!」
「了解!!」
ギアをバックに入れ後進を始めるが、それを許すほど甘くはない。後方には34式戦車改が既に回り込んでおり、逆に砲弾を食らわす。残る6両も倒し、機甲部隊は基地内の掃討に当たる。
「そろそろ頃合いか。突入しろ!!」
テオドールとグレーテルを戦闘に、突空の編隊も基地に突入。そのまま牽制射撃を四方八方に行いながら、神谷戦闘団の兵士達を展開していく。
「全軍突撃!!テロリスト共をぶっ殺せ!!!!!!」
「閣下に続け!!」
「突っ込めぇ!!!!!」
格納庫前に降り立った戦闘団は、神谷を先頭に各所に雪崩れ込む。中は整備兵組がシュタージをボコボコにしたりと乱戦状態だったが、後方にはしっかりシュタージがいる。そっちを神谷戦闘団は対応するべきだろう。
「侵入者だ!!」
「応戦しろ!!!」
「テメェらに言われたくはねーよこの野郎!!!!」
侵入者にして現在進行形で不法占拠している奴らに、侵入者呼ばわりはされたくはない。ツッコミの弾丸がシュタージを襲い、シュタージの方が倒されてしまう。
「アンタら、何処の所属だ?」
「神谷戦闘団だ!それより、中隊の人間は何処にいる!?」
「地下にある独房だ」
「衛生兵、付いてこい!!他はここを死守!!!!!!」
神谷は衛生兵を引き連れ、地下に下る。地下にもシュタージはいるが、閉所での接近戦では神谷に叶う訳がない。
「こいつ何者だ!!」
「邪魔じゃぁぁぁぁ!!!!!!」
「ゴフッ」
「閣下を援護しろ!」
神谷が切り捨ててつつ、後方から衛生兵組なんかが援護射撃しながら突き進む。暫くすると、独房区画と思われる厳重な扉が等間隔に置かれた場所についた。
「片っ端からドアを壊せ!!中を確認しろ!!シュタージはぶっ殺せ!!!!!」
扉は勿論鍵かかっていて開かないが、鍵を銃でぶっ壊せば問題ない。無理矢理こじ開けて、中にいる人々を次々に救出していく。そのうち第666中隊の隊員と思われる格好の者達も発見され、そのままストレッチャーに乗せて運び出す。
「残るはここだけですが、扉がガッチリしてて銃では無理です」
「チッ。テルミットだ!」
「誰か!テルミットを持ってこい!!」
ドアブリーチ用の爆薬であるテルミットは、3000℃の熱で凡ゆる妨害を焼き切ってしまう。その上で爆破すれば、扉は木っ端微塵だ。中には金髪のスタイルのいい女性が捉えられていて、隣にはシュタージ将校の格好をした男がいた。
「貴様ら、何処の者だ!?」
「姉ちゃん。アンタ、第666中隊のアイリスディーナ・ベルンハルト大尉か?」
「そうだ.......」
「おい聞いているのか!」
「エーベルバッハ少尉の使いだ。すぐに助けてやる」
神谷は縮地の要領で、将校の懐に一気に入り込む。そのままの勢いで、さっきからギャーギャーうるさい将校の首を一瞬で切り落とした。血を勢いよく吐き出させながら、首がゴロリと転がる。
「貴様、何処の所属だ.......」
「詳しくは後だ。あぁ、エーベルバッハ、カティア両少尉、それからイェッケルン中尉は既に仲間だ。上にいる。とりあえずアンタらは、すぐに病院に担ぎ込まねーと」
アイリスディーナを下に下ろし、そのままストレッチャーに乗せて上まで運ぶ。格納庫に戻ると、戦闘は既に終わっていた。戦術機の方も格納庫から出てくるや否や、51式をはじめとする砲兵隊が破壊してくれて、中に引き篭もればエイティシックスとか46式が集中砲火してたらしく、すぐに殲滅されたそうだ。更にテオドールの方が、1人捕虜を取ったらしく、そちらも確保済みだ。
「仕事は終わった。撤収するぞ!!」
「長官!」
「どうした向上?」
「皇国本土にて、深海棲艦に酷似したアンノウンが現れ、所属不明の部隊が交戦中とのこと!無線傍受によると、霞桜という単語が出ていたそうです!」
神谷はこの報告を聞くとニヤリと笑い、神谷戦闘団の面々も狂った笑みを浮かべた。彼らもこちらに来たのだ。こんな報告、嬉しい限りである。
「野郎共もうひと暴れだ!!一部はコイツらを病院と基地に運び込むが、残りは俺と一緒に戦争だ。行くぞ!!!!!!」
兵士達は嬉々として突空に乗り込み、ベーバーゼー基地から離脱して皇国へと帰還する。そしてそのまま、共に転移してきた横浜基地で戦闘を開始するのだが、それはまた別の機会に記そう。何はともあれ、新年1発目はこれにて終了だ。
phase IIは明日投稿予定です。まだ書けてないので、伸びる可能性はあります。その時は「あ、間に合わなかったか」と笑って許してください。お願いします。