最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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新年早々、能登半島地震が出て死傷者まで出る大惨事となった訳ですが、読者の皆様はご無事でしょうか?亡くなられた方々のご冥福を祈ると共に、被災された方々にお見舞いを申し上げます。また被害が未だ判然としていない状況ではありますが、1日も早い復興をお祈り致します。


2024お正月スペシャルphase II

「ここ、どこ?」

 

「わからぬな」

 

「僕たちって、どこかでバカンス中だったっけ?」

 

本来なら江ノ島で朝を迎える筈だった。一応時系列的には、日本脱出の前日で今日はその当日なのだが、目が覚めたら砂浜でしかも周りは海、後ろには密林である。

 

「しかもご丁寧に装備は一式揃ってる上に、強化外骨格を着ていると」

 

「主様、寝る時その格好だった?」

 

「まさか。普通に寝巻きだ」

 

流石に訓練でもないのに、強化外骨格装備の上で眠りはしない。というか寝心地悪くて、寝れたものじゃない。

 

「取り敢えずここじゃ埒が開かない。中に入って、何処か拠点を探す。八咫烏、空から探せ。犬神、左を頼む。俺は右側だ」

 

「心得た」

「はーい」

 

それぞれがそれぞれのルートに突き進むが、何も無い。木と虫位である。だが植物から見るに、ジャングルというよりこれはヤシの木みたいで、どっちかというと南国系だろう。

暫く歩くと開けた道に出て、奥に洞窟があった。しかも微かに焦げ臭い。恐らく、誰かいる。

 

(お前達、集合しろ。人がいる痕跡を発見した)

 

(心得た。すぐに向かう)

 

(オッケー。ちょっと待っててね)

 

数分後、合流した長嶺と2匹は洞窟の中へと突入した。中に入っていく程、何かの焼ける臭いは強くなり、微かに明るくもなっていく。恐らく人が居るはずだ。

 

「これからどうするかなぁ」

 

「基地との連絡手段が無い以上、無闇に動くべきでは無いだろう」

 

「SOSとヘルプマークは描いてある。それを見つけてくれることを祈るしか無いな」

 

「わたしたち、帰れるよね?」

 

「大丈夫よ、イーニァ.......」

 

中に居たのはアジア系、恐らく日本人の男1人と同じく日本人と思われる女性、それから多分スラブ系と思われる女性とその妹と思われる女の子がいた。話を聞く感じ、こちらと同じ事象に巻き込まれたのだろう。

 

「よぉ。アンタらも気付いたらここに居た感じか?」

 

いきなり声をかけた結果、4人ともバネ仕掛けのおもちゃの様に飛び上がり、こちらに銃を向けてくる。反応から見るに軍人だろう。それに格好からして、恐らくはパイロットと思われる。

 

「おい待て待て!争う気はねーよ」

 

「ならアンタ、なんで武器を持ってるんだ?」

 

「そりゃ中にいるのか誰か分からなかったんだ。護身用に持つに決まってるだろ。もし中に化け物でも居たら、こっちが食い殺されちまうからな。ほら、これでいいだろ?」

 

長嶺は手に持っていた阿修羅HGを地面に置き、刀も下ろして、両手を上げる。まあ素手でも普通に殺せるが、流石にこの状況下ではまだ殺せない。

 

「いいだろう、手荒な真似をして済まなかった」

 

日本人と思われる女性が銃を下げた事で、男とスラブ系っぽい女も銃を下ろした。妹の方は、姉の後ろから顔だけを出してこちらを伺っている。

 

「見たところ、そちらも軍人と思われるが、どこの所属だ?」

 

「怪しさ満点だろうが、一応特殊部隊扱いで所属は答えられない。だが、俺は自衛隊員だ」

 

「自衛隊?その様な隊は聞いたことがないぞ?」

 

「お姉さん日本人じゃないのか?」

 

「私は日本人だ。今は国連軍所属だが、元は帝国斯衛軍の所属だ」

 

いきなり訳が分からない単語が出てきた。まず日本人なのに自衛隊を知らない。更には国連軍に、帝国斯衛軍なんて軍隊は存在しない。よくフィクションで出てくる国連軍だが、実際は国連憲章41条の定める非軍事的措置が不十分であると安保理が判定した場合、同42条に基づいて使用される軍隊、つまりは国連の安全保障理事会が指揮する軍隊である。アメリカとかが指揮をする多国籍軍こそあったが、今日に至るまで国連軍は存在しない。深海棲艦との初期の戦闘、日本海反攻作戦と太平洋反攻作戦に於いても指揮を取ったのは、日米の幕僚達であり種別は多国籍軍となる。

そして帝国斯衛軍というのは、そもそも聞いたことが無い。近衛師団はかつて存在していたが、現在は解体され、その任務は皇宮警察等に引き継がれている。一応、陸上自衛隊の第32普通科連隊は『近衛連隊』を自称しているが、帝国は付かないし現状、帝国がつくのは海軍と陸軍だけである。

 

「アンタ、本当に日本人か?」

 

「あ、あぁ。そういうアンタは?見たところ、日本人と思うが」

 

「俺は日系アメリカ人だ。所属も今は国連だが、元は陸軍にいた」

 

「それよりも貴様、本当に日本人かどうか怪しいぞ。場合によっては、ここで捕縛する!」

 

「お、おい唯衣!」

 

なんか本当に今にもロープで縛ってきそうな勢いなので、長嶺の方も身構えるが、1つ思い出したことがある。なんか大体こういうよく分からん事態が発生した時、これまで出会ってきたのは別世界の住民達だった。となれば、さっきの国連軍どうこうも辻褄が合うのは合う。

 

「.......新・大日本帝国海軍連合艦隊司令長官兼江ノ島鎮守府提督、そして非正規特殊部隊、海上機動歩兵軍団『霞桜』総隊長、長嶺雷蔵海軍元帥。これが俺の所属だ」

 

全員が固まった。次の瞬間、全員が勢いよく立ち上がり直立不動の敬礼をする。特にさっき疑っていた日本人女性は、顔面蒼白であった。

 

「失礼しました元帥閣下!!」

 

「先ほどのご無礼、どうかお許しください!!」

 

「お、おぉ、落ち着こうか。そして座ろう。というか、俺が今心停止でポックリ逝かなかったのは奇跡だぞ」

 

流石にいきなり立ち上がられて、敬礼されては、こっちもビックリする。しかも声が洞窟で反響して増幅されるので、余計に心臓に悪い。

 

「あー、それから固いの嫌いだから普通に話せ。あ、これ命令な。そして名前と所属を教えろ」

 

「篁唯衣中尉です。アルゴス試験小隊にて、新型戦術機を開発しています」

 

「ユウヤ・ブリジッス少尉だ。アルゴス試験小隊でテストパイロットをしている」

 

「ソビエト連邦軍クリスカ・ビャーチャノア少尉だ。現在はイーダル試験小隊のテストパイロットをしている」

 

「ソビエト連邦軍イーニァ・シェスチナ少尉だよ。よろしくね、お兄さん」

 

もう驚かない。だが、これで別世界の住人説確定だ。今やソビエト連邦は、歴史の中の国である。

 

「ソ連に国連軍に斯衛軍。もう無茶苦茶だ.......」

 

「元帥閣下、1つ聞きたい。大日本帝国とはなんだ?日本帝国ではないのか?」

 

「明治維新後から1945年の敗戦までの日本の国名だ」

 

「明治維新以降、我が国はずっと日本帝国ですよ?それに終戦も1944年です」

 

篁が言うには、日本はずっと日本帝国を名乗っており、歴史に関してもこちらとはかなり差異があった。第二次世界大戦までは基本同じだが、例えば原爆は2発とも広島と長崎ではなく、ドイツのベルリンに落とされたらしい。さらに終戦も1944年らしく、そのまま東西の宇宙開発競争に突き進み、所謂冷戦が行われたそうだ。

 

「なぁ、アンタなんか可笑しいぞ?いくら歴史が苦手でも、それは余りにも間違いすぎてないか?」

 

「なぁ、お前らは異世界転移って信じるか?」

 

ユウヤの問いの答えが余りに突拍子も無さすぎて、大人組は「コイツ何を言ってるんだ」という顔をし、唯一イーニァだけが不思議そうな顔をする。

 

「俺はこれまで2度、別の世界にいる日本と接触した。恐らく今回も、それ関連なんだろう。悪いが俺の知る限りの、俺の記憶にある今日までの歴史を言わせてくれ」

 

長嶺が語ったのは、長嶺の生きた世界の歴史だった。原爆が1945年8月6日に広島、9日に長崎に投下され、1945年8月15日に終戦を迎え、それ以降の数々の戦争や、1969年のアポロ11号の月面着陸、1989年のベルリンの壁崩壊、といった大きな出来事。阪神淡路大震災や9.11テロ、東日本大震災やチェルノブイリ事故といった、事件や災害。そして2020年の深海棲艦の出現。だがその殆どが、向こうは知らなかったそうだ。

 

「ありえない。我が祖国が無くなるなんて.......」

 

「クリスカ.......」

 

「元帥閣下。BETAは、いないのですか?」

 

「BETA?なんだそりゃ。アルファ、ベータ、ガンマのベータか?」

 

長嶺の答えに4人は信じられないという顔で、こちらを見てきた。そのままその、BETAなる謎の存在の講義にシフトしていく。

 

「これがBETAです。閣下」

 

「え、何この気色悪い生物。新手のバイオハザード?」

 

篁から渡されたタブレットには、BETAという存在が映っていた。そのBETAの見た目を一言で表すなら、生理的嫌悪しか抱かないクソキモい生物である。しかもまあまあ種類がいて、しかもしかも一種類ずつがしっかりキモい。これをデザインした奴は、かなり趣味が悪いだろう。

 

「これがBETAです、閣下」

 

「これ、殺せるのか?」

 

「戦術機っていうロボットを使って戦うんだ。兵士(ソルジャー)級、闘士(ウォリアー)級は歩兵でも倒せるが、それ以上になるとかなり難しい」

 

「ならまあ、まだマシか。ん?」

 

「どうしたのお兄さん?」

 

「静かに」

 

長嶺は地面に耳を押し当て、音を聞く。何か引き摺られる様な音を出しながら、複数こちらにやって来るのが分かる。しかもかなり速い。

 

「なんか奥から来るぞ。下がれ」

 

「閣下こそ、お下がりください」

 

「アホ。お前みたいなパイロットは、空で戦うのが仕事だろ。こういうのは、プロに任せておけ」

 

篁から止められはするが、長嶺は阿修羅を抜きながら前へと進む。セーフティーを外し、こっちに来る何かに向けて銃を構える。

 

「誰だ!!姿を見せろ!!!!」

 

暗がりから現れたのは、例の兵士級とかいう白い気持ち悪い見た目のデカい人間の様な化け物だった。パイロット組は反射的に後ずさるが、長嶺は逆に一歩前に出る。

 

「よう。テメェ、言葉喋れんのか?」

 

兵士級は代わりに長嶺を捕まえ様と手を伸ばし、その大きな口を開ける。長嶺は素早くバックステップで回避し、逆にトリガーを引き、兵士級の胴体を吹き飛ばす。

 

「へぇ。いくら化け物でも、23mm弾には耐えられんか」

 

「お兄さん後ろにまだ一杯いる!!」

 

イーニァが叫ぶと同時に、奥からワラワラとゴキブリの様に這い出て来る兵士級達。流石にこの数を捌くのは、できなくはないがそれよりも後ろから逃げた方が早い。

 

「はーい、回れ右&ダッシュ!!」

 

「逃げるのか!?」

 

「そうだ!戦略的撤退って言葉はソ連にもあるだろ!!」

 

そのまま入り口まで走ったが、今度はその入り口に要撃(グラップラー)級とかいう蟹みたいな奴がいて、しかも穴を掘って中に入ろうとしてきている。

 

「クソッ!」

 

「ブリジッス撃つな!!撃ったところで、デカ物が塞ぐのは変わりない!!!!」

 

「じゃあどうするんだ!」

 

「簡単だ。兵士級、だったか?アレ全部、ぶっ殺すだけだ」

 

長嶺はホルスターに阿修羅をしまった代わりに、愛刀の幻月と閻魔を抜いて、いつもの様に逆手で構える。

 

「無茶です閣下!!」

 

「篁中尉の言う通りだ元帥閣下!せめて銃を!!」

 

「お兄さん死んじゃうよ!!」

 

「早まるな元帥!!」

 

「ガタガタ騒ぐな。なーに、心配すんな。さっきので、ある程度コイツらの戦法は分かった。要は捕まらず、噛みつかれなければ良いだけだ。簡単だろ?

さぁ、この煉獄の主人を楽しませてくれ。楽しい楽しいショーの開演だ。BETA共、足掻いて見せろよ!!!!!」

 

長嶺は前に飛び出すと、そのまま兵士級の群れの中に突っ込んだ。普通に考えて、捕まってグチャグチャに噛み殺されるのが運命の筈だ。特に篁は、かつて仲間がBETAが人を食べるのを見ている。

確かに普通の一般兵であれば、その末路を辿るだろう。だが今突っ込んだのは、かつて2つの国を世紀末状態の地獄に変え、1つの国を滅ぼし、更には世界中の裏で常に戦争を繰り広げていた正真正銘の化け物。ぶっちゃけBETAが可愛く思える程の、真の化け物である。負けるはずがない。

 

「な、なぁ唯衣。あれ、兵士級を倒してないか?」

 

「そんな事があり得る.......のか?」

 

「いや.......。私も何度もBETAと戦ったが、生身であんな事をしているのは見た事がない」

 

断末魔こそ聞こえないが岩肌には兵士級の血が飛び散り、長嶺が通った後には動かなくなった兵士級が転がる。余りの惨状に全員が言葉を失った。だが、イーニァは更に恐怖に怯えた顔でクリスカの服の袖を引っ張る。

 

「ね、ねぇクリスカ。変だよ。お兄さん、変!」

 

「ッ!?どうしたのイーニァ!!何が変なの!?」

 

「あのね、お兄さん、よろこんでる。BETAを倒して、戦ってるのをすごくすごくよろこんでるの!」

 

「喜んでいる?シェスチナ少尉、それはどういう事だ?」

 

「わかんないよ.......。でも、すごく喜んでる。普通のよろこびとは違って、ものすごく濃い色.......」

 

篁はイーニァの言ってる意味が、少し分かる気がした。篁の実家は譜代武家の本家であり、篁はその当主。故に小さい頃から武芸も嗜んでいたが、長嶺の動きは剣術を習ってる者からすれば歪であり野蛮そのものであった。明らかに人を一瞬で殺し、他者を圧倒し、とにかく勝つ為に、生き残る為に作られた独学の剣。そしてその端々に、どこか狂気を孕んでいる。その狂気さが野蛮性を添加し、余計に酷く見える。恐らく今、長嶺は戦闘に狂気している。

 

「唯衣。あれは、やっぱり凄い剣なのか?」

 

「明らかに実戦で編み出され、戦闘に、もっと言えば相手を殺す為だけに作られた剣だ。あれを術には落とし込めないだろう」

 

最近ユウヤは、剣術に興味が出てきた。というのもユウヤがテストパイロットを務める94式不知火・弍型は、接近戦に高いアドバンテージがある。日本機なだけあって、侍のように刀で戦えるのだ。それをテストする上で自分も剣術について知りたいと思っており、正直言うと長嶺の剣に見惚れていたのだ。

一方の長嶺は、ただ我武者羅に前を見て戦っていたのだが、段々と退屈になってきた。何せこの兵士級、動きが単調すぎる上に武器もないので、戦闘に張り合いがない。向こうは掴むか噛み付くかしかしないので、全くと言っていい程、脅威にならない。お陰で暇で暇で仕方がない。しかも数が多すぎて、向こうは身動きが取れないので基本されるがまま。最初こそ未知の敵に狂喜したが、今や単なる面倒な作業と化している。

 

(主様ー。助けいる?)

 

(いらねぇ。ってか弱ぇ。取り敢えず、外のキモい蟹モドキ。あれ冷凍しといて。流石に、ケツから来られたら面倒だし)

 

(はーい)

 

そのまま数分位は兵士級と遊んでいたのだが、いよいよ持って飽きてきた。長嶺は完全にお遊びというか、実験モードに入る。こんな未知の存在を、ただ殺すのでは勿体ない。肉体にどの程度のポテンシャルがあるのか。はたまた身体の構造はどうなってるのか。その辺りが気になって来る。

 

「よーし、遊びましょうかね兵士級さん」

 

長嶺は刀を仕舞うと、そのまま兵士級に肉薄する。そのまま捕まえようと伸ばした腕を掴み、力一杯引きちぎってそれを口の中に放り込ませたり、こちらに齧りつこうと開けた口に手を突っ込んで、そのまま頬肉を引きちぎりながら180度開いてみたり、目と思われる四つの器官を潰したり、下腹部に空いてる謎の開口部に引きちぎった腕を突っ込んでみたり、貫手でなどを突き破ったり、プロレス技みたいな事をしてみたり、無理矢理共食いさせてみたりと、いよいよ持って悪魔じみた所業をし始めた。

後ろからやってきた4人は、まさかの惨状にドン引きである。なにせ明らかに兵士級が、弄ばされて嬲り殺しされたのが分かる状態で転がっているのだ。これまでは首が飛んでたり、一刀両断されてたり、袈裟斬りにされてたりと、刀で斬られたのが分かる死体だった。対してこっちは、明らかに色々された状態で転がっているのだ。中には腕を口に縦で突っ込まれ、脚部を半分切られた、所謂ダルマに近い状態で放置されてる物もあった。しかも生きてるという。

 

「こ、これはかなり酷いな.......」

 

「ホラー映画のマッドサイエンティストでも、もうちょっとマシだぞ.......」

 

「お兄さん、凄い、ね.......」

 

「.......ユウヤ、それに篁中尉。元帥閣下は、本当に人間なのだろうか?」

 

「「.......」」

 

クリスカがボソリと発した言葉に、2人は答える事が出来なかった。だがまあ確実に言えるのは、間違いなく人間を超えた化け物であるというだけだ。因みに長嶺は人間ではあるが、艦娘の力とか神授才とか持ってるので、厳密に人間とは言えないのだが、それは気にしてはいけない。

更にもうしばらく兵士級と遊んでいると、遂に外に出た。だが外はどういう訳か見渡す限りの荒野で、開けている。周り建物も何もないが、代わりに車が置いてあった。三菱のランサーエボリューションXである。

 

「そんじゃま、これで逃げるか」

 

ダメ元でドアを引いたが、なんと普通に開いた。しかも霞桜が使う無線機もあり、一目でこれが霞桜仕様のランエボだと分かる。霞桜仕様だと他と何が違うのか。まずエンジン、足回り、吸排気等々、全てに手が入りフルチューンされており、車体も戦車砲を防げる程度の装甲を持つ。更に内部に武装を搭載しており、ボンドカーの様に振り回す事もできるのだ。

 

「閣下!その車は?」

 

「いいから早く乗れ!ブリジッス!お前は前な」

 

(八咫烏。犬神を連れて上空からの援護に備えろ)

 

(心得た)

 

4人が乗ったのを確認すると、そのまま車を発進させ荒野を爆走する。ラリーカーとしての信頼性もあるので、荒野での走行にも問題はない。まあ少し乗り心地は悪いが、そこは仕方がないだろう。

 

「これ、お兄さんが用意してたの?」

 

「いや。何故かは分からんが、ウチの部隊の特別仕様車が止まってたんだ。ウチの車は特別性だ。ちょっと乗り心地は悪いかもしれないが、この車にいれば大抵の事はどうにかなる」

 

「だがこれは、普通の車なんじゃないか?ちょっとチューンされてるっぽいが」

 

「そりゃパッと見じゃ分からない様に、しっかりと隠してあるからな。では、お見せしよう。戦闘モード起動」

 

長嶺がそう言った瞬間、車が変形し出した。屋根には30mm機関砲1門が展開され、フロント部分からは素早くM2重機関銃2基が組み立てられ、フロントフェンダーからは左右から計4挺のMINIMIが飛び出す。

 

「変形した!?」

 

「スゲェ。マジのボンドカーだ.......」

 

「すごいすごーい!」

 

全員驚いてるし、イーニァとユウヤは大興奮である。特にイーニァはキラキラした目でこちらを見るのがルームミラーでも見えるし、子供心的にもやはりこういうのは大好きなんだろう。

 

「しかし、態々車を変形させる必要はないだろ?戦車や装甲車を持っていけばいい」

 

「確かに、それは言うとおりだ。だがビャーチャノア少尉。その戦車やら装甲車を、一般市民が何も気にせずいつもの日常を送っている市街地に入れたら、どうなると思う?」

 

「目立ってしまうか.......」

 

「俺達の部隊は、一応、市街地でも戦闘するからな。こういう世を偲ぶ戦闘車がいるんだ。さて、それじゃ騎兵隊を呼びますかね」

 

長嶺は無線のスイッチを入れ、周波数を霞桜のチャンネルに合わせ江ノ島との通信を試みる。意外にも通信は繋がり、普通にオペレーターと会話できた。

 

「こちらゴールドフォックス。聞こえるか?」

 

『総隊長!?よかった、ご無事だったんですね!!』

 

「あぁ。ご無事ついでに、ちょっと回収を頼めるか?」

 

『お待ちを。GPSで位置を確認します。..............見つけました。直ちに回収部隊を送ります』

 

「よろしく頼む」

 

無線切った直後、またBETAが現れた。しかも今度は要撃級を筆頭に戦車(タンク)級と突撃(デストロイヤー)級まで、大量にである。

 

「なんか一杯来たんですけどぉ!?!?」

 

「閣下、スピード上げてください!追いつかれます!!」

 

「オッケー。コイツ、アフターバーナー.......クソッ!付いてないタイプかよ!!だったらアクセル全開だ!!!!」

 

アクセルベタ踏みで加速するが、それでも不整地なので車道よりも速度は落ちる。一応牽制射撃で、30mm機関砲を撃ってみるが何か全く効いてない。

 

「元帥閣下、あれに30mmは効かないぞ!あのBETAは突撃級と言って、あの衝角は120mm砲弾でも弾く。後方に回り込むのが一番だ!」

 

「それは無理な相談だ!そうだ、足!足は!?」

 

「前に試した事がある!足は36mmでも破壊できた!!」

 

「だったら、足を狙うのみ!!」

 

機関砲で足を狙うが、やっぱりそれでも無理があった。突撃級の足は地味に狙いにくい位置にあり、射角的に足の前の地面に着弾している。最早、焼け石に水にすらなっていない。

 

「ダメだわ。全然当たらん」

 

「他に手は!?」

 

「心配すんな。まだまだ手札は残ってる」

 

長嶺は念話で相棒達に指示を出す。その指示を聞いた2匹は、BETAの集団に急降下して突っ込んだ。

 

「ワオォォォォン!!!!!」

 

「カアァァ!!!!カアァァ!!!!」

 

犬神と八咫烏が巨大化し、BETAの目の前に立ちはだかる。2匹は妖術を用いて、BETAを瞬く間に殲滅していった。

 

「何だあれは!!」

 

「あの烏、もしや八咫烏?」

 

「おぉ、さすが日本人。そう。あれは八咫烏だ」

 

「八咫烏を使役しているのですか!?」

 

「なんか使役しちゃった。あ、犬の方は犬神な」

 

もう無茶苦茶だ。普通に考えて、神とか妖怪とかは使役できない。にも関わらず、それを当然かの様に使役してるあたりぶっ飛んでいる。

 

「ねぇねぇ唯衣。やたがらすってなーに?」

 

「.......日本帝国初代天皇、神武天皇を導いたとされる神様だ。神話にしか存在しない、御伽話の筈なんだがな」

 

「お兄さん凄いね!ね、クリスカ!!」

 

「え、えぇ。そうね」

 

「神を使役する人間って、あんた本当に人間か?」

 

「俺はどっちかっていうと、化け物だろうな」

 

なんて話していると、長嶺は急ブレーキを踏んだ。車はそのままドリフトの要領で滑らせて止まり、みんな頭ぶつけたりと地味に痛い思いをする。

 

「ど、どうしたのですか閣下?」

 

「最悪だ。道がない」

 

窓の外を見れば、巨大な渓谷が広がっており、恐らく100mはある大きな溝が地平線の奥まで続いている。しかも幅も50mはあり、まず飛び越えるのは不可能だ。しかもBETAはこっちに迫ってきており、何か手を早々に打たなくては死ぬだろう。

 

「回収部隊が到達するまで、後10分。それまでにコイツらを抑えるだけか。よし、お前ら全員降りろ!」

 

「何か策があるのか!?」

 

「あぁ。戦って時間を稼ぐ。オートモード起動、戦闘モードで接近する敵を殲滅しろ!!」

 

ランエボは即座に飛び出し、突撃の群れへと攻撃を仕掛ける。シュミレーター何千億通りの戦闘を経験させたAIだ。この程度の敵であれば、容易に対応できる。いざとなれば自爆する事になっているし、これで時間は稼げるだろう。

 

「オールウェポンズ!!」

 

長嶺は全ての武器を装備して、BETAの集団に突貫。攻撃を開始する。特に長嶺にとって、こういう1対多の戦闘は最も得意とする戦闘だ。敵の優先度を素早く判別し、それと同時に叩く。

 

「テメェらが幾ら頑丈に守ろうと、対深海徹甲弾を持ってすれば、大抵はどうにかなんだよ!!!!!!」

 

ジェットパックで地面をスケートの様に滑り、四方八方に弾丸をばら撒く。更に人間サイズという小ささを活かし、突撃級や要撃級の下に潜り込み、下から銃撃を加え、戦車級は真正面から素早く倒す。長嶺が参戦しただけで、BETAの群れは一部崩壊状態になり進軍速度が落ちていく。

 

「な、何だよあれ!」

 

「ありえない。あんな、あんな事が人間にできるのか.......」

 

「あんな動き、見た事がない.......」

 

「BETAって、あんなに簡単にたおせないよね?」

 

そのまま10分程遊び、BETA集団が半壊状態になった頃、戦域殲滅VTOL輸送機『黒鮫』が飛来。ユウヤ達の前に着陸し、中から霞桜の隊員達が降りてくる。

 

「ここか。あ、アンタら!ここに総隊長殿、あー、いや。長嶺雷蔵って方はいなかったか?」

 

「閣下ならあちらで戦闘を繰り広げているぞ」

 

「あー、やっぱりか。取り敢えずアンタらは、先に機体に乗ってくれ」

 

「俺も忘れられては困るぞ」

 

いつの間にか帰ってきていた長嶺も合流し、全員とランエボを『黒鮫』に乗せて現場を離脱。そのまま江ノ島に戻るつもりだったのだが…

 

「おわっ!?」

 

パイロットがいきなり機体を横倒しにして、何かを避けた。次の瞬間、真横をレーザーが通り抜けていく。

 

光線(レーザー)級!!」

 

「なんだそりゃ!?」

 

「BETAです!レーザーを撃って、飛行目標を全て落とす厄介な存在です!!380㎞離れた高度1万mの飛翔体を的確に捕捉可能で、基本的に狙われれば最後。堕とされます!!!!」

 

流石の長嶺も一瞬顔が強張るが、しかしすぐに篁に聞き返した。まだ長嶺は、諦めてはない。

 

「その光線級の強度は!!」

 

「装甲はそれほどではぁぁ!?」

 

「よし。パイロット!!高度を上げまくれ!!!!コークスクリューだ!!!!レーザーに貫かれんなよ!!!!!!」

 

『このままじゃジリ貧ですからね!!やったりましょう!!!!!!』

 

確かにその光線級というのは、厄介なのかもしれない。だがこのまま放置していては、その内貫かれるだろう。だったら先に、光線級とやらを撃退すればいい。

 

「かなり揺れるぞ!!何かに捕まれ!!!!」

 

パイロットは『黒鮫』をブンブン振り回し、高度を上げまくる。お陰で貨物室では、悲鳴と絶叫の嵐だ。唯一長嶺とイーニァだけは笑っているあたり、子供は怖いもの知らずなのだろう。長嶺は、まあ、単純に狂ってるだけだ。

 

『高度1万5,000!!!!』

 

「カーゴドア開放!!」

 

長嶺は開いた扉から飛び降り、そのまま一気に降下していく。手には桜吹雪SR、背中には龍雷RGを装備している。降下状態のまま姿勢を立て直し、桜吹雪を構えて撃った。光線級は全部で16体、桜吹雪の装弾数は8発。7発撃って、8発目を撃ちながらマガジンを変更し、更に撃つ。そして最後に、確か重光線(レーザー)級とかいうゴツい奴2体も見えたので、龍雷を2発撃ち込む。

 

「死んどけレーザー野郎!!!!」

 

確かに光線級は、飛行目標に対して最強の天敵かもしれない。だがそれが、弾丸にまでは及ばない。それに賭けてみた訳だが、レーザーはずっと『黒鮫』にばかり向けてられており、こちらには見向きしないし、弾丸にも気付いてないらしい。18発の弾丸は全て、正確に光線級を撃ち抜き光線級の撃退に成功した。それを確認すると長嶺は最も速度の遅い体勢に変更し、『黒鮫』の方も長嶺回収のためにこちらに向かってくる。長嶺の下を『黒鮫』が通過する瞬間、ワイヤーを撃ち込んでそのまま機体の中へと入る。

 

「クリアだ。全速離脱!!江ノ島に帰還する!!!!」

 

『ラジャー!』

 

パイロットはスロットルを目一杯上げて、機体を最高速のマッハ6にまで加速させ、江ノ島を目指す。どうやら江ノ島でもゴタゴタがあったらしく、大隊長達が消えていたらしい。だが帰還途中で通信が回復し連絡がついたのだが、聞けば深海棲艦に襲われているらしい。

 

「総隊長、どうされます?」

 

「無論応援に向かうぞ。さぁ、戦争の時間だ!!」

 

 

 

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