同時刻 イルネティア島北方20km ALCAC1号艦橋
「閣下。先発したイースティリア奇襲部隊、並びに第三潜水戦隊より、攻撃成功との報告が入りました。イースティリア港、サーザン港は既にその港湾機能を喪失。停泊していた防衛艦隊、並びに輸送艦は全艦撃沈。戦闘艦艇の撃破数は事前情報の艦艇数と同じである事から、恐らくは全て無力化された物と思われるとの事です」
「そうか。ならばこっちも、彼らに続くとしよう。航空隊を突っ込ませろ!」
「アイ・サー!!」
神谷の指令を受けた艦載機部隊60機が、上陸地点のアーバン要塞に殺到。大量の爆弾とAGM103旋風をばら撒き、効率よく上陸地点を確保していく。普通であればこの攻撃だけで上陸地点は掃討され、続く上陸部隊は簡単に上陸を果たすだろう。だがこのアーバン要塞は違う。
アーバン要塞、というよりイルネティア島とパガンダ島には、そもそもかなりの数の余剰兵器が集められていた。流石の帝国も負けまくって、これはヤバいと焦り色々研究を重ねた結果、見事この2つの島をイルネティア島攻略前に抑えるだろうと結論づけていた。となれば要塞化するべきなのだが、本土の要塞化が決まりこっちは後回しとされてしまった。だが軍部は代替案として、新型戦車に更新され余剰兵器化したハウンドやシェイファーIIといった戦車を派遣。即席の砲台として活用する方法を考案したのだ。
前回のイルネティア島守備部隊の戦車の数が、べらぼうに多かったのはこれが理由である。新型兵器の方は、もしもここを無視してレイフォルに攻め込まれた際、救援部隊として動かせる様にとの意味もあって大量に配備されている。無論、その際はハウンドとシェイファーIIも馳せ参じる手筈だ。
「な、何事か!!」
「わかりません!!」
アーバン要塞司令、ジャーズは何が起きたか何もわからなかった。大きな揺れと爆発音で、恐らく攻撃を受けたことだけはわかった訳だが、どこにどの程度の被害が出たかまでは分からない。
「報告!戦車砲台に攻撃を受け、大破炎上中!!被害規模は不明ですが、かなりの数が燃えています!!!!」
「何処の国の攻撃であるか!!」
「大日本皇国と思われます!!」
「くぅ!直ちに警報発令!!本部に連絡だ!!消火はもういい!!周りに引火しそうなのと建物内に煙が入ってくるのだけ消して、残りは戦闘態勢!!あの国のことだ。今のは戦闘開始の号砲にすぎん!!今から来る第二撃第三撃が本命だ!!!!」
ジャーズは冷静だった。すぐに次が来ることを見抜き、兵士達に迎撃を命令する。これまでの指揮官は、あんまりこういう咄嗟の行動ができていなかった。ジャーズはそれができるだけ冷静かつ、将軍として最低限の仕事はできる。兵士達もジャーズの命令で、決められた塹壕や点在するトーチカに滑り込み、皇国軍が来るのを待ち構える。
「間も無く上陸ポイントです!」
「戦闘配置だ!防御シャッターを下ろせ!!」
他の上陸用舟艇がある程度の重砲が排除、もしくは支援が行える状態なのを前提に作られているのに対し、ALCACは敵勢力下に援護なしでも殴り込める様に開発された兵器である。その為、窓は元から防弾ガラスではあるが、さらに厚さ60mmの防弾鋼板が3枚下りてくる仕様になっている。防弾板使用中は、各部のカメラアイで外の様子がわかる様になっている。
「攻撃始め!!」
ALCAC総勢600隻からのロケット弾攻撃により、上陸地点は爆炎に包まれて海が全く見えなくなる。通常の弾頭の他にも、煙幕弾を仕込んであるのでその効果は絶大だ。
「煙幕展開完了!!」
「このまま突っ込め!!」
ALCACはそのまま浜に乗り上げ、ハッチを解放。それと同時に、エンジンを掛けてスタンバイしていたアサルトタイガーの戦車軍団が飛び出す。
「野郎共!!戦線を食い破るぞ!!!!虎の名に恥じない戦いを見せろ!!!!!!!」
これまでは制圧後の輸送か、航空機からの空中投下でしか活躍できなかった46式戦車だが、その装甲と火力が最も生かされる局面とは、こういう攻勢作戦の先鋒である。特に上陸作戦に於いては火力が不足しがちなので、この突破力はまさに鬼に金棒だろう。
「敵超重戦車、多数上陸!!」
「天板を狙え!!上からの攻撃に戦車は弱い!!!!」
「了解!!!!」
生き残っている野砲及び戦車は、46式の天板に攻撃を集中させる。この攻撃で上に装備している機関銃なんかは破壊されたりもしたが、大したダメージにはなり得ない。何せコイツは天板に通常MBTの正面装甲と同等の装甲を配置しているのだから。
「お返しだ!撃てぇ!!」
「てぇっ!!!!!」
46式の砲身から榴弾が飛び出し、攻撃を加えてきた地点に砲弾が突き刺さる。46式の主砲であれば、単純な大口径で普通の榴弾でもMBTだろうと破壊できる。たかだか装甲車程度の装甲しかない帝国の戦車など、単なるウザい障害物程度にしかなり得ない。
「おーおー、暴れてる暴れてる。それじゃ、俺達も暴れますかね」
要塞の前線を46式、34式戦車改が食い破り、その後方でALCACが弾幕を展開している中、LCHH、LCAC、HLCACといった後続の上陸部隊が到着。敵の注意が逸れている間に、手早く上陸を果たす。
「団長に続け!!」
「進め!!」
「GO GO GO!!!」
兵士達は素早く敵方の塹壕内に転がり込み、素早く背後から敵を殲滅していく。特に塹壕内では神谷の刀、ワルキューレの魔法と剣、向上の2丁拳銃が猛威を振るう。
「こ、コイツら危険だ!!」
「ゴフッ」
「ちゃ、着け」
「隊長!?く、来るな。来るなぁぁぁぁぁ!!!!!!」
塹壕の様な閉所戦に於いて、近接武器を持った連中はかなり厄介な相手となる。とは言え二丁拳銃は良しとして、剣と刀はかなり扱いが難しくなる。剣と刀は本来、振り回して相手を斬る武器。塹壕の様な横幅が狭い場所では、本来あんまり使い物にならない。その筈がこの集団の場合、そんなのお構いなしに殺しに掛かってくる。
ヘルミーナのブロードソードは鋏としても運用できる為、普通に相手の首や腕を切断し、アーシャのレイピアは元々フェンシングの様に突き刺す攻撃を行うので、相手の弱点である首とか胸を突いて回り、エリスの大剣はアビリティの剣山で塹壕内に剣を無数に生やし、それで即座に串刺しにしていく。そして神谷の場合、愛刀の天夜叉神断丸と獄炎鬼皇の切れ味が良すぎて、ちょっとの動きでスパスパ切れてくれる。お陰で狭い範囲での動きが可能となり、素早い攻撃が可能であった。
「切れ味抜群。流石、一族の家宝だ」
「もうそれ、ライトセイバーもびっくりですよ長官!!」
「て、撤退!撤退しろ!!!!」
兵士の1人がそう叫んだ。その声に、全員が脱兎のように彼らのいる反対方向へと群がる。一応それをミーシャの魔法、レイチェルの矢、向上の12.7mm弾が襲うが、殆ど効果はない。
だが生憎と、彼らが逃げた先には別の地獄があるだけだ。何もこの場にいるのは、神谷達だけではない。神谷戦闘団の兵士達も、この場にはいる。
「あ、アイツら化け物か!!みんな死んじ.......ま.......う.......」
逃げ出した兵士の目の前に、それはいた。ずんぐりむっくりしたトラックで轢いても問題なさそうなガチガチの装甲を纏った、言うなれば人間戦車とでも言うべき奴がいた。
「あぁ、神よ.......」
次の瞬間、塹壕の狭い空間に5.7mmライフル弾の嵐が巻き起こる。装甲歩兵の両腕に装備された35式七銃身5.7mmバルカン砲が作り上げる、毎秒数百発の弾幕を前に逃げ場はない。とは言え、まだバルカン砲装備ならマシだろう。死体は最早、死体と呼ばないくらいのミンチ肉に加工されるとは言え、死ぬ時の苦痛は苦痛を感じる前に死ねる。
新開発の59式重火炎放射器を装備していたタイプに遭遇したら、もっと酷い目に遭っていた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「火炎放射器だー!!!!!!」
「逃げろ下がれ!!」
「おい押すな!!来るな!!」
塹壕は知っての通り、基本的に人がギリギリ2、3人通れるか通れないかのサイズである。本部区画とか砲兵の区画ならもっと広いが、基本は狭い。その為、神谷達から逃げてる集団と火炎放射器装備の重装歩兵から逃げる連中がぶつかり、お互いに押し合う最悪の事態になってしまったのだ。
それを神谷戦闘団の面々が見逃す筈もなく、寧ろ一塊に固まってくれるのはこちらとしても楽である。という訳で真上から手榴弾放り込まれたり、火炎放射で焼かれたり、単純に弾丸叩き込まれたりして、最早「殲滅」ではなく「駆除」とでも言わんばかりの末路を辿った。
「大体片付いたか?」
『こちら五反田。要塞司令部を占領しました』
「あらぁ速ーい。そんじゃ、部隊集結後、予定通り進撃を開始する」
アーバン要塞攻略戦は上陸後、凡そ20分という素早さで終わり、その後の部隊集結や後続の上陸なんかを待っていると、何だかんだで1時間過ぎており、戦闘よりも集結に時間のかかる訳のわからない事態が発生した。
部隊集結後、神谷戦闘団はイルネティア島の首都を目指し前進。とは言え一目散に首都を目指すのではなく、途中にあるどんなに小規模の村にでも立ち寄り、敵兵1人見掛ければ戦闘をしていくので、普通に向かうよりも何倍の時間が掛かる。無論、神谷戦闘団全員が揃って行うわけもなく、幾つかに部隊を分けて行動している。
「なんか、海の方が騒がしいのぉ」
「そうですねぇ爺さん」
「帝国の馬鹿共が演習でもしとるんかのぉ?」
「そうですねぇ爺さん」
アーバン要塞の近くで、牧場を営んでいた老夫婦はいつも通り、朝食を家のテラスで摂っていた。雨だったり暑かったり寒かったりしなければ、この老夫婦は必ず外で食事を摂る。
帝国の占領後に食糧その他が配給制となり、前程の量はない。前はパンにスクランブルエッグにベーコンかウィンナー、デザートにフルーツといったメニューだったが、今や半分の黒パンとミルク位な物だ。だがそれでも、老夫婦のこの日課だけは変わらない。今日もいつも通りの日常が始まる思っていたが、生憎と今日始まるのは老夫婦の人生でもイルネティア島の歴史に於いても非日常である。
「爺さんや。あれは何じゃろうか?」
「.......何じゃ、アレは?」
老夫婦が目にしたのは、土煙を上げて近付いてくる何かであった。動物にしては早すぎるし、見える影自体がそもそも動物的ではない。
だんだんと近付いてくると、それには人間が跨っていることが分かった。しかし馬とかロバではなく、機械的な物である。
「ありゃぁ、オータバーとかいう乗り物じゃ」
「おーたばー?」
「昔、ムーで見た事がある。2個の車輪がついとってな、速いんじゃよ」
そのオータバーこと偵察バイクは、神谷戦闘団の斥候である。彼らは部隊に先んじて既に協力が確定している村々を回り、敵上や進撃ルートの情報を手に入れる役目を帯びているのだ。
「御免!家主は居られるか!!」
「おーおー。ワシが家主じゃよ。どうしたんじゃ?金なら無いぞ」
「物盗りではありません。私は大日本皇国統合軍、神谷戦闘団所属。植島軍曹であります。この先の地理についてお教え頂きたく参上致しました」
「あら、お茶でもいかがかしら?」
「お気持ちは嬉しいのですが、現在作戦中ですので。それよりも、この先の地理や村の場所等、知っている範囲で限りませんので、お教え願います」
ぶっちゃけさっきから良い匂いがするので、飲めるなら飲みたいし何か食べれる物なら食べたい。とは言え、今は仕事中でそれも作戦中だ。そんな事は出来ない。
「まあ、よくわかんねぇけども上がりなはれ」
お爺さんの一声で家に上げさせてもらい、現状の説明を行う。我々は神谷戦闘団であり、その目的は帝国軍の殲滅とイルネティア島の開放であること。現在はその作戦中であり、自分はその斥候であること。この周辺の地理や集落の位置、できればその規模、もし帝国軍の駐屯所があるのならその情報も欲しいこと。
これを話すと、老夫婦は最初は疑った。しかし腕にある日の丸と旭日旗で信じてくれて、最終的には快く教えてくれた。曰く、この先には村が3つばかりあり、その真ん中には町もあり、そこには帝国兵が駐屯しているらしい。
「ありがとうございます。では私はこれ」
そう言って出ようとした時、玄関の方でガラスの割れる音が聞こえた。そのまま5人の軍服姿の男達が、土足で上がり込んでくる。
「金目の物を出せ!!」
「な、なんじゃ貴様ら!!」
見ればその軍服は、帝国軍の軍服。ご丁寧にライフルも肩に引き下げている。どこの所属かは知る由もないが、民間人を脅して金品を毟り取ろうとする連中な時点で例え味方だろうと容赦する道理はない。
「うるせぇ!!」
そう言いながらライフルの銃床部分で、お爺さんの腹を殴る軍人。齢70前半と思われる老人の腹を銃で殴り付けては、最悪骨折や臓器損傷の可能性すらあるだろう。植島は物陰から飛び出して、装備している37式短機関銃を構える。
「あ?テメェ、皇国の兵士か?」
植島は何も答えずに、37式を撃つ。閉所戦での短機関銃は、帝国兵の小銃よりも遥かに取り回しが良い上に連射力も上だ。抵抗どころか殆ど動くことなく、確実に殲滅されていく。
とは言え37式にも弱点はある。連射力が高すぎて、弾の減りが速いのだ。お陰で4人しか倒せていない。だが1人残る事も計算して撃っている為、問題はない。残る1人には腰に装備している銃剣をぶん投げて、首に当てる。首であれば致命傷となり、最悪殺さずとも一定の隙を作り出せる。
「お婆さん。もう大丈夫ですよ。お爺さん、失礼します」
お爺さんの方は、取り敢えず目立った外傷はないので問題ないだろう。死ぬ程痛いだろうが、死ぬ事はない。例えアザが残ろうと男かつ人生のラストスパートに突入している年齢である以上、傷が残って人生が左右される事もまず無い。問題はないだろうが、念には念を入れて本隊に連絡を取り回収は頼んでおく。
老夫婦の回収が完了したのと同時刻、五反田の部隊は植島の報告があった村の一つに到着していた。
「師団長!報告のあった村、アレじゃないですか?」
「どれ」
五反田は47式指揮装甲車のハッチから身を乗り出し、ヘルメットの双眼鏡機能で確認する。村の入り口辺りに刺さっている看板の文字にも、イルネティアと帝国双方の文字で報告通りの名前が書かれていた。
「ん?アレは.......」
「敵車両、トラック3台。どうされますか?」
「決まっておる。排除せよ!!」
五反田の指示で後方からWA1極光2機が飛び出す。武装は58式六銃身7.62mmバルカン砲と大太刀という、典型的な対人装備ではあるが輸送トラック相手なら余裕である。
「行くぞ。俺は右から」
「なら左は貰います」
2機の極光はトラックの死角となる位置から高速で接近し、射程に入った瞬間、バルカン砲を撃つ。基本的に民生品と何ら変わらないトラックなのだ、数秒で破壊できる。
「はい終了」
「いやー、弱いっすねぇ」
「所詮トラックだからな」
トラックを血祭りにあげると、2機はまた部隊へと戻る。そのまま部隊は村に突入。帝国兵がいないか確認しつつ、住民の保護を行う。
「怪我をしている者は1箇所に纏めよ!栄養状態はどうか!!」
「師団長、村長がお話ししたいと」
「無論だ。案内せよ」
「こちらです」
部下の案内に付いていくと、村の中でも恐らく1番大きな建物に着いた。1番大きいと言ってもさほど変わらないが、こういうのが村長の家というのはお約束というヤツだろう。
「村長殿。私が当部隊の指揮官、五反田である。何用であるか?遠慮なく申されよ」
「五反田様。どうか、少しで良いのです。食料を恵んでくださりませんか.......?」
村長の口から語られたのは、かなり痛々しい内容であった。この村含め、基本的に村には基幹産業がある。この村では畑、正確には麦の栽培がそれに該当するらしいが、今ではその殆どを帝国に持っていかれているらしい。
「その比率はどの程度の物なのだ?」
「ほぼ全てです」
「何だと!?」
「それも買い付けではなく、徴収ですから、代金その他はありません。残った作物は次の作物を作る種なので、殆ど食べられません.......」
確かに村長含め、ここに来るまで見た村民は既にガリガリに痩せこけている。栄養状態はかなり悪いだろう。殆ど食べていないのなら、この姿も当然である。
「酷い物だな.......」
「我が村はまだマシな方です。ここを担当する大尉殿は良心的でして、最低限の食料は残す様に誤魔化してくださります。しかし他の村では、村民全員が餓死して廃村になっている村や、その、村民同士を食らっている村もある位ですから.......」
「なんたる事だ.......。安心なされよ村長殿。我が隊の食料は今後の攻勢作戦上分け与えられぬが、後続部隊に食料を輸送している部隊がいる。すぐに手配しよう。1時間もすれば到着する筈だ」
村長は涙を流して、五反田の手を取った。村長にも、村民にも、五反田達は文字通りの救世主に見えたのだ。
五反田はすぐに後続の輸送部隊に連絡すると、彼らはすぐに動いてくれた。だがすぐに医療チームから待ったがかかる。というのも長らく低栄養状態で、そこにいきなり栄養を摂取すると代謝機能が狂って死亡するリフィーディング症候群というのがあり、今の村民達は正にその状態なのだ。
つまり今ここで食料を普通に食べると、それが毒となって死ぬ可能性があるのである。となればやる事は決まっている。
「村長殿!」
「五反田様。どうされましたか?」
「村民を1箇所に集められよ!この村から我々の拠点に移動する!!」
村民達を1箇所に集め、ヘリコプターとVCシリーズを動員して現在の野営地に運び込む。更にこの報告を受けた神谷は念には念を入れて、ムーに停泊している大鯨型潜水救難母艦の出動を指示。護衛の駆逐艦を随伴させ、医療拠点として動かす事を決定した。
「にしてもまあ、帝国の連中もかなり胸糞悪い。ホロドモールじゃん」
「国家的な道徳心なんかが、あの辺の時代で止まっているんでしょう。全く、腐ってますね」
「なら、そんな腐り野郎共を掃除しよう。大掃除の時間だ」
現在神谷は白亜衆と赤衣鉄砲隊を率いて、飛行場を目指している。AVC1突空を超低空から飛行場に突っ込ませ、そのまま電撃的に奇襲。最小限の施設破壊で、基地機能を奪取するのが目的である。
「団長ー!基地が見えてきましたぜぇ!!!!」
「よっしゃ!カーゴドア開けろ!!」
編隊は飛行場の敷地内に飛び込む。速すぎて対空砲の照準も追いついておらず、航空機のスクランブルも気付くのが遅すぎて間に合っていない。理想的な状況だ。
「敵機来襲!!!!」
「対空戦闘用意!!!!」
「多いぞ!!迎撃急げ!!!!!」
「見張りは何やってたんだ!!」
「戦闘機隊スクランブル!!迎撃しろ!!!!」
一気に基地内は騒がしくなり、兵士達が慌ただしく動き出す。対空用員は自分の受け持つ対空砲に走り、照準を突空に合わせる。補給員達は弾薬を引っ張り出し、整備士は戦闘機の離陸準備を手早く行い、パイロットは自分の愛機へと走りコックピットに滑り込む。
だが、余りにも遅すぎた。突空はその準備を嘲笑うかの様に、搭載した武装で地上を薙ぎ払う。
「クソッ!地上でやられてたまるか!!回せェェェェ!!!!!!」
「何が何でも航空隊を上げろ!!」
航空機を空に上げれば、どうにかなるかもしれない。そんな期待を込めて、整備兵達は素早く準備を行い、パイロットはそれに答えるために操縦桿を握り締める。
「上げさせるかよ!!」
だがそれを許してくれる訳がない。徹底的に爆弾と機関砲群が、飛び立つ前の航空機を一方的に排除する。航空機、取り分け戦闘機は生まれてこの方いつの時代でも空の覇者である。だが裏を返せば、飛ばなければ脅威にはなり得ない。「飛ばない豚はただの豚」という訳だ。
あぁ、飛ぼうと飛ばなかろうと豚は豚だとかいう反論は一切受け付けないので悪しからず。
「野郎!航空機を破壊しやがって!!!!」
「撃て撃て!!撃ちまくれ!!!!」
対空砲も苛烈に攻撃を加えるが、そもそも戦車級の装甲を持つ突空に通用する訳がない。逆に攻撃してきた奴を、こっちが殲滅していく。
地上の掃討が終われば、今度はコイツらが動き出す。神谷率いる神谷戦闘団の精鋭。白亜衆と赤衣である。
「まずは外の航空機を破壊しろ!!残骸の山にすれば、格納庫のは鹵獲できる!!!!」
「聞いたな野郎共!目に付く飛行機全部壊せぇ!!!!」
そう命令すると権田川はいの1番に飛び込み、手近の航空機に肉迫。そのまま35式ヒートブレードで両断し、そのまま近くのタンクローリーに35式ランスガンを突き立てる。装甲甲冑の装甲であれば、目の前でタンクローリーが爆発しようと問題はない。それを知っているとはいえ、普通にその戦闘は狂っている。
「ば、化け物!!」
「こ、殺せ!!」
整備兵達は武器を持たない。だが工具という、鈍器はあるにはある。整備兵達は群れをなして、権田川に襲い掛かる。だが権田川は武器を背中に装備する35式スレッジハンマーに切り替える。右はアックス型、左はハンマー型だ。
「オラァァ!!!!!もういっちょぉぉぉ!!!!!!」
1人はアックス型で縦に切り裂かれ、もう1人はハンマーで横腹をぶん殴られ、身体が曲がってはいけない方向に曲がった状態で錐揉みになり、そのまま地面にぶつかる。頭が割れて、地面には整備兵の多分脳みそと思われる肉片が飛び散る。
「なんだよそれ.......」
整備兵相手なら、これだけでも戦意喪失させるには充分だった。誰かが逃げる。それに連れられて周りの2、3人が。さらにそれに連れられて、どんどん逃げ出す。
だが逃げる先には権田川の部下が先回りしており、1人残らず殲滅していく。
「全く単細胞はこれやさかい困る。さて諸君、私達も仕事を始めまひょ」
「へい!」
槍河達、ラグナロクの面々も動き出す。槍河を先頭に手近の対空砲群にジェットパックで飛びながら群がり、中にいる砲員を殲滅していく。
「コイツら何で空を飛んでるんだよ!!」
「照準が追いつかない!!」
ジェットパックは何も空を飛ぶだけでない。地上スレスレを飛び、ブースターを吹かせまくってトリッキーな動きで相手を撹乱し、そのまま懐に飛び込む使い方だってできる。
「遅いなあ。そないなんじゃすぐ死ぬで?こないな風に」
槍河はそのまま陣地内に突っ込むと、クルリとジェットパックを使いながら回った。ジェットパックのブースターから出ているのは、言わずもがな火である。この火でも人は殺せる。人1人を浮かばせ、そのまま高機動できるジェットパックなのだ。その推力を産むバーニアからの炎は、普通の生活で目にする炎とは格が違う。掠めただけでも、服は引火する。
「あぢいぃぃぃ!!!!」
「うわ!うわっ!うわぁぁ!!?!?」
「汚物は焼却滅菌するのんは常識や。知らへんとは言わせへんよ?」
槍河は戦公家とか言われる位のイケメンだが、それでも神谷戦闘団のそれも白亜衆に名を連ねる隊長である。確かにお淑やかで品があるが、その本性は人を人とも思わない程の思い切った残虐な手段も取れる男なのだ。一度敵と相対すれば、一切の容赦なく相手を狩る。
「槍河と権田川にここは任せ、俺達は内部に突っ込む!行くぞ!!!!」
飛行場の制圧は任せ、神谷達は建物内の制圧に移る。特に建物は情報の宝庫。何か面白いネタがあるかもしれない。流石にここを破壊するのは、些か勿体なく思う。
「し、侵入者だ!!」
出会った帝国兵は容赦なく殺し、無理矢理押し通る。こういう建物の中に詰めている大半は、直接戦闘するのではなく後方からの支援に特化した連中が多い。それにここは前線であっても、後方な上にこういう大規模な白兵戦は想定されていない航空基地。そもそも普通の銃とかの武器自体、数が少ない。航空機と対空砲さえ越えれば、余裕で制圧できてしまう。
「一掃しろ。部屋を虱潰しだ」
「了解です隊長!」
赤衣の隊員達は部屋という部屋にライフルを撃ち込み、中にいる人間を兎に角殺す。降伏してきたら保護するが、この世界にはジュネーブ条約を筆頭とした戦時国際法はない。別に撃ち殺したって問題はない。
だが流石に後味悪いので、降伏してきたら基本的には保護することにしている。尤も、その降伏ができる暇があればの話だが。
「隊長!」
「どうした?」
「この部屋、資料室ですよ!」
「長官!!」
すぐに向上は神谷を呼びに走る。神谷もすぐに走ってきて、資料室に入ってみた。どうやら、かなりの当たりを引いたらしい。
「これはこれは。ご丁寧にあちらの文字で㊙︎的な意味を持つ物が書かれてる。しかも奥には鍵付きの別室もある辺り、これはかなりの大当たりだ。よし、ここに兵を配置しろ。他はこのまま建物全体の排除に向かう!!」
程なくして基地は神谷戦闘団の占領下に入り、計画していた最初の攻勢は終わりを迎えた。だが、イルネティア島攻略作戦はまだ始まったばかりである。とはいえ、この島から帝国が駆逐されるのも秒読みだ。