最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第八十七話野暮仕事(Black ops)

数時間後 帝国支配領域の街 宿の一室

「お前達、仕事の時間だ」

 

イルネティア島への攻勢が始まった日の夜、決して表の記録には残る事のない作戦が開始されようとした。街中の極々ありふれた宿の一室に、4人の男が集まっている。

彼らは普通の旅人や商人ではない。大日本皇国統合軍諜報局、通称『JMIB』のエージェントである。JMIBの任務はCIAに於けるパラミリタリー、準軍事工作担当のエージェントを数多く有する軍の暗部である。作戦の為なら暗殺、誘拐、爆破、拷問、監禁、処刑といった凡ゆる違法行為をも躊躇わない狂気の集団であり、本家本元となるCIAからも「本気で怒らせたら1番ヤバい」と言わしめる集団だ。

 

「知っての通り、今回の任務はイルネティアの古都フリッチオにある、帝国諜報局管轄の極秘地下バンカーに潜入し、そこの指揮官であるヤーデル大佐を確保。そのまま旧パーパルディア皇国南東海岸地区の秘密基地に連行する。

だが今回、飛び込みで別の任務が追加された。詳しくは、この方にご説明頂く」

 

今回の指揮官、スティールヘイズがタブレットを取り出しテレビ通話に切り替えて、アイツとの通信を繋げる。

 

『.......あれ映らねぇぞ。おーい、映ってる?お?おぉ、あー、きたきた。はい、どーも長官です』

 

まさかの人物の登場に、エージェント達も面食らう。だがすぐに椅子から立ち上がり、画面に向かって敬礼をした。

 

「閣下、お願いします」

 

『はいよ。さーて諸君、今回飛び込みで任務を突っ込んだこと、まずは謝罪させてくれ。申し訳ない。こちらとしても、ちょっと想定外のことが起きていてな。早急に情報が欲しいんだ』

 

「何があったんですか団長」

 

『大尉。いや、エフィメラ。まだその名で呼んでくれるのか?』

 

「あ、失礼を長官」

 

このエフィメラというエージェント、転移前に神谷戦闘団に参加していた。所謂『第1期生』というヤツで、転移直前の人事でJMIBのエージェントに移籍し、今ではチームリーダーをやっている。

 

『さぁ、話を戻そうか。本作戦ではイルネティアとパガンダ、ここを同時に攻める。その筈だったんだが、作戦前の偵察で有り体に言えばゾンビパンデミックがパガンダで起きてるっぽくてな』

 

「ゾンビィ?そりゃぁ、ゾンビですか?死体が動いて噛まれたらゾンビになる、バイオハザードお馴染みの?」

 

『まあ確定情報じゃないし、あくまで写真と映像で見た感じはってだけだがな。だがパガンダ島内にて帝国兵、現地民、そして恐らく入植してきた帝国の一般人が暴徒とかし、無差別に人を襲っている。しかもその攻撃手段が暴徒の方は武器を持たず、噛み付く攻撃しかしていない。それが同時多発的に島内各地で発生している。この顛末は事実だ。

これが何かの政治的、或いは宗教的な理念からの暴動か、或いは自然界から発生した未知のウイルスなのか、はたまた帝国や何処ぞの第3勢力がばら撒いた生化学兵器かは、中央特殊武器防護隊の到着と調査がないと何とも言えん』

 

ここで神谷は一度話を区切り、横にあるバインダーを取ってページを捲る。バインダーに挟まっているのは、基地襲撃の資料保管庫から発見した極秘書類の一部だ。

 

『ここまでが前段だ。本題に入ろう。俺の率いる神谷戦闘団は上陸後、予定通り侵攻ルート上の街や集落を解放して周り、今いる航空基地を奪還し拠点化を進めている。その際に接収した機密文書の中から、こんな物が見つかった。

簡単に要約すると、この書類は今から96時間前に飛来し、84時間前に飛び立った1機の爆撃機の記録だ。備考欄には『アンブレラ作戦につき、詳細は極秘』とある。俺の見立てでは、パガンダ島での騒ぎの原因じゃないかと考えてる。諸君にはこのアンブレラ作戦とやらの記録、詳細、或いは何か手掛かりを持ち帰って貰いたい。無論これは飛び込みの作戦である為、優先順位は下だ。ヤーデル大佐の確保、なにより諸君の命を最優先として貰いたい。以上だ、諸君の奮闘に期待する』

 

「という訳だ。これより作戦を開始する。状況開始!」

 

エージェント達はボストンバックに詰めていた装備を取り出し、バックパックに移し替える。防弾チョッキ、ナイフ、拳銃は上からコートなんかを羽織れば問題はないので装備してしまう。

準備が完了すると、ランダムに時間を置いて宿を出る。ここからフリッチオまでは馬車で2時間で着く距離なので、見かけた馬車に飛び乗りフリッチオまで向かう。フリッチオに到着したら、そのまま近くの河辺に下りここで仲間との合流を待つ。

 

「全員来たな。これより内部に突入する」

 

「それにしても川に排水施設を作って警備なしって、些か不用心すぎね?」

 

「突貫工事で作ったんだ。仕方ないだろ」

 

流れに逆らって歩いていくと、やがて小高い崖が見えてくる。崖の下には鉄格子が嵌められただけの、粗末な水道の出口があった。しかも鉄格子が全部ゆるゆるで、錆びてもないのに簡単に取れそうである。

 

「こ、これマジ?」

 

「ゆるっゆる。施工不良だな」

 

「仮にも秘密拠点がこれかよ.......」

 

軽口を叩いているが、水道に入った瞬間、空気が一気に変わる。静かに迅速に、バンカー内の監獄へと移動する。既に鍵はICIBのエージェントが開けている手筈になっているので、簡単に入り込めるだろう。

因みにICIBというのは、敵の懐に入り込み諜報を行う「スパイ」と聞いてイメージする事全般を担当する。エージェント、或いは協力者を作って情報を集め、それを繋ぎ合わせて1つの情報にしたり、或いはこちらに都合の悪い情報を消したりもする。今回はエージェントの1人が帝国軍の将校として潜入しており、この作戦での情報提供や各種支援を行う事になっている。

 

「ここだ。行くぞ」

 

暫く歩くと、梯子が見えてきた。この上が監獄となっている。正確には監獄のある洞窟の、ちょっとした空間に出るのだ。

 

「ひでぇ臭いだ。コイツは.......」

 

「カビ、血、湿気、汚物。拷問されてる奴もいる筈だ」

 

「(隠れろ。誰かいる)」

 

ランセツの声で、8人は素早く物陰に滑り込み隠れる。電灯で顔こそ見えないが、格好からして帝国軍の将校だろう。流石に階級は分からないが。

 

Zdravstvujtye(こんにちは)

Да здравствует Родина(祖国万歳)

 

聞こえてきたのは、この世界にはない筈のロシア語。それもかなり流暢な発音である。ハルは物陰から出て、将校の前に立った。

 

Guten Tag(こんにちは)Es lebe das Mutterland(祖国万歳)

 

スティールヘイズがドイツ語を話すと、2人は握手を交わした。この将校こそICIBのエージェントであり、さっきのは暗号なのだ。英語はまだしも、ドイツ語やロシア語は単語ならまだしも、文章や幾つかの単語をくっ付けて使うことは早々無い。お陰で暗号には最適なのだ。

 

「大佐は2階の執務室にいる。資料保管庫は3階、他の各施設は見取り図を用意した。それから4人分の制服もな。これに着替えておくといい。何か聞かれたら「特務機関の者だ」と言えばいい。これでどうにかなる。それから外に脱出用の車も用意しておいた。

ここの施設は当然だが電子ロックは無いし、お前達にとってはイージーミッションの筈だ。任務の成功を祈っているよ」

 

「協力に感謝する」

 

ICIBのエージェントは情報を伝えると、また外へと戻って行く。スティールヘイズの分隊は早速着替え、エフィメラの分隊は周囲の安全を確保する。

 

「(歩哨2名。排除執行する)」

 

「(カバー)」

 

まず手始めに手近にいる歩哨2名を背後からナイフで殺し、死体を引きずってさっき来た水道に落とす。そのまま監獄の看守室へと向かう。

 

「報告します軍曹殿。異常ありませんでした」

 

「うむ、ご苦労。最もここは臭いが異常だがな」

 

「言わないでください。正直、こっちも軽い拷問受けてるみたいなもんですよ。お陰で最近、肉が食えなくて」

 

「私もだよ。私はそもそも食欲がね。まあ、年もあるかもしれないが。所で、他の2人はどうした?」

 

「今日は水道のチェックもありますので、少し時間がかかっているそうです」

 

看守室で談笑している2人は知る由もないが、その仲間の歩哨は既にあの世へと旅立っている。もう戻ってくる事はない。だが心配せずとも、報告は聞けるだろう。

 

「(排除執行する)」

 

尤も、その報告を聞く場所があの世である以上、何の意味も持たないだろうが。

 

「囚人名簿をチェックしろ。こちら側に引き込めそうな奴は引き込め。無理なら殺す」

 

「あー、反乱軍の奴が3人いるわ。コイツらは確保で。それとこの上官に取り立ての緩和を進言してぶち込まれた奴も確保。残りの懲罰で監獄に入れられてる奴2人は、もう普通に殺していいだろ」

 

反乱軍のメンバーだった3人は助けて問題ないが、この上官に進言して恐らく命令不服従とかの嫌疑で入れられた奴は扱いに困る。会って決めるしかない。

 

「なんだ、こんな時間に。ここから出してくれるのか?」

 

「グラ・バルカス帝国情報部、ゴーバッツ・デュノベル少佐だな?」

 

「.......おい待て。お前は、誰だ?」

 

いきなり喋りかけてきた謎の男。明らかに帝国軍の装いではない不審者に、デュノベルも驚き困惑している。

 

「俺が何処の誰かは関係ない。お前に問う。お前は何故、上官に取り立ての是正を求めた?」

 

「決まってるだろ。幾ら何でもやり過ぎだ。確かに帝国の勝利には物資が必要で、尚且つ植民地の住民である現地民は帝国臣民よりも下だ。それにしたって、この惨状は無いだろ.......。

一昨日産まれた子は死に、昨日産まれた子は虫の息。今日産まれた子も養えぬ親は一思いに殺す。こんなのあんまりだ」

 

デュノベルの言葉に、エフィメラ分隊の隊員であるレッドシフトも黙るしかなかった。スティール分隊、エフィメラ分隊の他にも、JMIBのチームはオープンフェイス分隊、ローダー分隊、ライガーテイル分隊がいる。この五つの分隊は、半年近く前からイルネティア島にて反乱軍への軍事教練を行っていた。それ故に、ここの惨状はよく知っている。帝国にもこういうマトモな者がいたのかと、そういう感想を抱いた。だからこそ、殺したくはない。

 

「だったら、裏切れるか?祖国を」

 

「それはできない。祖国を裏切る事は、家族を裏切る事だ」

 

「.......だがその祖国が、この引き起こした様がこれだ。お前もその、破壊者の一員になっていいのか?それに本当の意味で家族を裏切るっていうのは、お前が死んで一生会えなくなる事じゃないか?」

 

レッドシフトの言葉に、今度はデュノベルが黙った。実を言うとデュノベルにはまだ顔も見たことがない、2歳になる娘がいる。産まれてくる1週間前に戦争が始まり、そのままここに赴任してきたのだ。それ以来帰れることもなく、今では牢獄にぶち込まれる始末。もしこのまま居たらきっと殺されるだろうし、例え殺されずとも何処かの最前線に送り込まれる可能性すらある。友人も上官の腹いせ人事で最前線に送り込まれ、程なく戦死したと聞く。迷った末にデュノベルは、決断した。

 

「裏切る。俺は祖国を裏切るぞ」

 

「その答えを待っていた。とは言え詳しい事は俺ではなく、上の者が決める事になる。だが、悪いようにはしない」

 

「分かった」

 

レッドシフトはすぐにエフィメラに報告し、そのままスティールヘイズにも報告した。これで捕虜が手に入ったのだが、この駒をどう使うか決めあぐねていた。取り敢えず監獄に監禁しておき、後からICIBのエージェントに任せる事にした。

 

『ではこれより、手筈通りに動く。エフィメラ分隊は破壊工作、その後資料保管庫を襲撃する。我々は変装し混乱に乗じてヤーデル大佐を確保、連行する』

 

「ならこちらは早速動く。成功を祈っているぞ」

 

エフィメラ分隊が先にバンカー内部に潜入し、少しずつ敵を減らしていく。監視カメラやトラップもなし、警報機は手動、セキュリティは鍵かダイヤル式のロック。皇国基準からすれば、ザルもいい所だ。

 

「(歩哨2人、排除執行)」

 

背後から近づき、素早く首をへし折る際に絞めてしまえば血も出ずに殺害できる。死体は適当な部屋のロッカーに押し込むなり、トイレの大にでも押し込めば当分はバレない。後からバレてもその頃には、脱出している頃だろう。

 

「ここが電源室だな。C5を設置する」

 

奥の方にC5を設置し、電気式雷管をセット。端末とのチャンネルを接続し、ボタン一つで爆破できるように準備しておく。

 

「よーし、誰もいないなー」

 

「この電源室、普段誰も入らないからサボりには持ってこいなんだよなぁ。さぁてタバコ♪タバコ♪」

 

ここまで順調だったのだが、大体こういう時には何か不測の事態が起きるもので、歩哨の2人が電源室に入ってきてしまった。このまま放置するとC5を見つけてしまう可能性がある以上、殺して無力化しておく必要がある。エフィメラはネブラとアウロラにハンドサインで射殺する様に指示を出し、2人は素早く狙いをつける。

 

「チッ。マッチが切れちまった。火、くんね?」

 

「はいはい」

 

片方がマッチを出した時、ネブラとアウロラは引き金を引いた。寸分の狂いなく頭を撃ち抜き、そのまま倒れる。

 

「排除執行完了」

 

「用事は済んだ。資料保管庫に行くぞ」

 

死体を適当な見つかりにくい所に隠し、今度は資料保管庫目指して歩き出す。途中、鍵で施錠された扉もあったがピッキングで素早く突破し、歩哨も例によって血の出ないやり方で倒して隠し、資料保管庫に無事到着した。

 

「さぁ、宝探しの時間だ」

 

「お宝ちゃーん、出ておいでー」

 

「意外と楽そうだな」

 

この際なので、使えそうな資料は持てる限り持っていく事になっている。とは言えまずは、例のアンブレラ作戦の資料を探すべきだろう。幸いにして、想定よりも本棚の数は少ない。

 

「.......なぁ、エフィメラ」

 

「どうしたネブラ。何か見つけたか?」

 

「この山からどう探せと?」

 

だがネブラが指差した先には、想像の5、6倍の量の本棚と膨大な資料があった。ここから当たりを引くのは、かなりの至難の業だろう。というかこんな大量の本というかファイル、ファンタジー系の魔法使いの書斎とかでもないと見た事がない。

 

「何か法則を見つけるしかないな」

 

「法則?」

 

「紙媒体で管理するにしろ、サーバーでデータを管理するにしろ、何か法則性がある筈だ。日付とかあいうえお順とか」

 

アウロラの考えに、全員が色々試行錯誤を開始する。資料を適当に取り出して中をパラパラ捲り、内容や日付、タイトルの確認を行う。その結果、日付ごとに分けられている事が分かった。

だがそれでも、1つ問題がある。計画や作戦の中身が、全然重要度の低い物ばかりなのだ。例えば何かの尾行記録、何かしらの疑いのある兵士の内定調査の結果、犯罪組織の資金の流れや各種記録といった大局を左右する情報ではなく、統治や内部事情に関する物ばかりだったのだ。

 

「この棚じゃないのか?そっちはどうだ!?」

 

「駄目。こっちは何か本土の議員だか何だかのスキャンダル写真。車の中で熱いキスを交わしてる写真しか無かったよ。しかも相手男」

 

「oh.......」

 

ある意味最強の兵器であろう。ジェンダーなんだ言われてる昨今ではあるが、流石に恐らくかなり年の行ったおっさんのキスシーンとか誰得である。これが美形のイケメンとか、イケおじ枠なら腐女子界隈で需要があるかもしれないが、脂ぎったオヤジの男とのキス写真とか需要はかなり限られる。そして何より、見てしまったこっちの身にもなって貰いたい。

 

「こうも無い物か?」

 

「出てくるのはスキャンダル、スキャンダル、スキャンダル、帳簿、リスト、スキャンダル。しかも総じて優先度が低そうというか、何なら最悪紛失しても然程影響がないカスばかり」

 

「俺達入る部屋間違った?」

 

「こうも見つからないと、段々病んでくるぞ」

 

エフィメラ、ネブラ、アウロラ、レッドシフトの4人が頭を抱えて悩む。幾ら何でも、こうも見つからないのは可笑しい。正直、こんな大層な地下バンカーで極秘裏に守る様な物でもない。まあプライバシー云々とかの観点からでは極秘にした方が都合がいいのかもしれないが、それにしたってこうも当たりが無いのは逆に不自然だ。

 

「ッ!?みんな、上見ろ上!!」

 

だがその時、レッドシフトがある事に気付いた。天井に屋根裏収納の階段が隠されてる時にある、棒を引っ掛ける穴が空いていたのだ。つまりここには2階があるのだ。

 

「よし、あの名前知らんけど、とにかくなんか、階段開ける棒!あれ探すぞ!!」

 

適当にロッカーとかを漁るとすぐに見つかり、階段を下ろす事に成功した。一応念の為、武器を構えながら階段を登ると、上り切ってすぐに鉄製の扉があった。しかもチェーンでぐるぐる巻きにして南京錠をはめ、その奥に鍵穴があるかなり厳重な封鎖がされている。

とは言え、所詮は普通の鍵。サクッとピッキングされて、簡単に解除されてしまう。しかもこのピッキング、よくある針金でカチャカチャするタイプではなく、自動で素早く開けてくれる優れ物だ。お陰で開けるのに5秒と掛からない。

 

「はーい、オープンセサミっと」

 

「中は下と変わらないな。取り敢えず探すぞ」

 

本棚から適当に資料を引っ張り出してみたが、どうやら当たりには近づいたらしい。下のどうでもいい内容とは違い、こっちは是が非でも隠し通したい内容ばかりだった。

 

「拷問とそこから得た情報の記録か.......」

 

「こっちは暗殺作戦の記録だ」

 

「おいおいコイツは.......。いつか現地民(アイツら)の言ってた、街一個の集団失踪事件か。やっぱり大量虐殺の的にされてたな」

 

「人体実験の記録もある。まるでナチスだ」

 

数々の非道な行いの数々。だがこういうのが出てきたという事は、それだけ当たりに近付いている証拠でもある。取り敢えず重要そうなのは写真を撮り、端末に記録していく。

 

「ヤバい代物ばっかだが、アンブレラ作戦とやらは見つからねぇな」

 

「また更に上でもあるのか?」

 

レッドシフトとエフィメラが悩んでいると、今度はネブラが何かを見つけたらしく、2人を呼びに来た。ネブラについて行くと、アウロラがいるが別に何の変哲もない本棚の前で止まる。

 

「これ、本が取れないんだ」

 

「.......ッ。ホントだ、ビクともしない」

 

「じゃあ押すか?」

 

エフィメラの言葉に4人は顔を見合わせると、頷き合い本と本棚を押してみる。すると本棚ごとドアの様にぐいっと曲がり、奥に数冊の資料があった。

 

「表題は『アンブレラ作戦概要書』。これだ、間違いない」

 

「んで隣はっと。『プラミティーバ・フランマ計画』?なんじゃこりゃ」

 

レッドシフトが『プラミティーバ・フランマ計画』と書いてある本を手に取り、中をパラパラ捲ってみる。だがレッドシフトの顔はみるみると青褪めていき、最後まで行き着くと震える手でそっと閉じた。

 

「レッドシフト?」

 

「エフィメラ。こりゃぁ、ヤベェぞ。だが同時に、幸運でもある。これは持ち帰ろう」

 

「.......一体何が書いてあったんだ?」

 

「結構専門的な事だらけで詳しくは分からないが、コイツはとどのつまりウラン採掘計画(・・・・・・・)だ」

 

全員が息を呑んだ。知っての通り、ウランは核兵器や核燃料の材料として用いられる物質である。第二次世界大戦相当の技術力を持つ戦時国家がウランを求める理由は、まず間違いなく核爆弾の製造を目論んでいると見て間違いないだろう。

 

「よし。とにかくこの『プラミティーバ・フランマ計画』に関する書類、資料は根こそぎ奪う。時間も迫っている。急げ!」

 

エフィメラの指示に全員が即座に動く。このプラミティーバ・フランマ計画に関する書類は、かなりの数があった。だが幸い、こちらには軍用の高性能スマホがある。片っ端から資料を取り出して撮影し、撮影しては引っ張り出しを繰り返し全ての書類を保存する事に成功した。

 

「長居は無用。撤収し、捕虜達の移送準備に入る」

 

エフィメラ分隊は資料室を後にし、さっきの監獄へと戻る。今度は捕虜達の誘導に備えなくてはならない。丁度準備が完了するとスティールヘイズから連絡が入り、すぐにC5を起爆させる。電源室が爆発すれば、ハンガー内は大混乱に陥り兵士達は右往左往しながら大慌てだ。

 

「何処が爆発した!!」

 

「電源室ですッ!!」

 

「消火急げ!!ホース持ってこい!!スプリンクラーはどうした!!!!」

 

スティールヘイズ分隊はその混乱を尻目に、ヤーデルの執務室へと早歩きで向かう。焦ってる感を出しつつ、何なら小走り位の速さだ。こうすれば焦りを演出でき、大佐を避難させる様な優秀な兵士に見えて丁度いい。

 

「失礼致します!」

 

「な、なんだ君達は!!」

 

「大佐殿、今は一刻の猶予もありません!如何なる処罰もお受けします故、今はご無礼をお許しください」

 

スティールヘイズの合図でレーザイサーとサンプはヤーデルの両脇を抱き抱え、素早く立ち上がらせる。ヤーデルも対抗するが、流石に50代くらいのおっさんが精鋭の特殊工作員2人に敵うはずも無く引きずられていく。

 

「ま、待て!待ってくれ!!その鞄だけは持って行かせてくれ!!」

 

「そんな余裕はありません」

 

「あの鞄にはこの国の未来が掛かっているのだ!!」

 

その言葉にスティールヘイズは止まった。何かの情報である可能性が高い以上、確保しておいて損はないだろう。そこでスティールヘイズは仕方がなさそうな仕草と態度で、ランセツに合図を出し鞄を持って来させる。

 

「こちらでありますか?」

 

「そ、そうだ!」

 

「では私がお運び致します。大尉殿!」

 

「あぁ。お連れしろ!!」

 

ヤーデルを引きずったままエレベーターに乗り込み、そのまま地上階へと移動。用意されていた車に分乗し、バンカー基地から離れる。

 

「それで何処に向かうのだ?司令部かね?」

 

「地獄だよおっさん」

 

次の瞬間、両サイドに座っていたレーザイサーとサンプがスタンガンでヤーデルを気絶させて黙らせる。そのまま車は道を外れ、合流ポイントに向かう。

 

『エフィメラよりスティールヘイズ。こちらは手筈通りに、車列を離れ反乱軍と合流する』

 

「了解した。こちらは大佐殿をお連れした後、反乱軍との合流を目指す。また会おう」

 

『あぁ。だがこちらは、少佐を閣下に預ける為に一度会うつもりだ』

 

「了解した」

 

ここでエフィメラ分隊と反乱軍の捕虜、それからデュノベル少佐を乗せたトラックは別の道を進みだす。程なくしてスティールヘイズ分隊は、回収班との合流地点に到着しヤーデルを引き渡す。

 

「スティールヘイズ分隊、ご苦労だった。後はこちらで引き継ぐ」

 

「あぁ。丁重(・・)に頼むぞ。大佐殿だからな」

 

「皮肉にしか聞こえないぞ」

 

「あぁ。皮肉だからな」

 

ヤーデルを乗せたVC4隼は、イルネティア島を離れ旧パーパルディア皇国の南東海岸地区にある秘密基地に向かう。この秘密基地が何なのかというと、平たく言えばブラックサイトというヤツである。

パーパルディア戦役に於いて、皇国は首都のあったエストシラントからクラールブルク含むデュロまでの南東海岸地区を確保した。この地域は戦争の影響もあり、不発弾やパーパルディア皇国が使用した兵器によって汚染されている地域も多い。その為、一般人の立ち入りは禁止されている。だがこれはカバーストーリーであり、実際の所はここに対外諜報組織であるICIB、対外工作組織であるJMIB、国内でのテロ事案等の捜査を行う公安警察、天皇家直属の諜報工作組織である八咫烏の4組織が共同運営する秘密基地が設立されている。

ここでは大日本皇国憲法を筆頭とした全ての法律は機能しない。その為、拷問や処刑が簡単に行えるのだ。無論扱い的には大日本皇国の国土なのだろうが、何せ距離が離れすぎている上に土地自体が立ち入り禁止区域に指定されている。空から見ようが、あるのは単なる廃墟だけだ。お陰で皇国本土にバレる事はなく、色々と後ろ暗い事ができてしまう。ヤーデルは今後、余生をそこで過ごす事となる。

 

「あ、そうだ。預かった鞄の中身を検めておけよ。何やら大事な物が入ってるらしい」

 

「了解。てぇーと、ペンにノートに、あん?なんだこりゃ。ハスタム・ソリス計画?」

 

この隼は軍ではなくJMIB管轄の機体である為、搭乗員の中に帝国の翻訳家がいた。すぐにその搭乗員に資料を渡すと、その隊員の顔色が変わった。

 

「すぐに神谷閣下に無線を繋げてくれ!!!!」

 

「ど、どうしたいきなり!?」

 

「核だ!帝国は核を作ってやがる!!!!」

 

プラミティーバ・フランマ計画とハスタム・ソリス計画。帝国が生み出そうとした狂気がどの様なカオスを齎すかは定かではないが、少なくとも世界にとって最悪の始まりである事は間違いないだろう。何せこの兵器一つで、今の軍事バランスは崩壊するのだ。例え前線で勝ちを得ようと、遥か後方にある自国の手薄な都市を消し飛ばされては意味がない。

隼は白み始めた空を駆け抜け、秘密基地へと急ぐ。一刻も早く翻訳を進め情報に纏めなくては、時間切れになってしまう可能性すらあるのだ。

 

 

 

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