最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第八十九話反乱

12:00 経済都市ドイバ メインストリート

 

カンコーン…カンコーン…カンコーン…

 

今日も鐘の音が鳴り響く。かつて王都と港湾地区の中継都市として、様々な商人の館や外国企業のオフィスが置かれ、交易の街として栄えていたドイバは変わり果ててしまった。在りし日のドイバは王都に勝るとも劣らない、美しい都市であった。街のどこかでは必ずと言っていいほど毎日の様に露天市が開かれ、イルネティア王国の特産品は勿論のこと海外から輸入されてきた珍しい物が売られていた。お陰で常に人で溢れ、例え夜でも人通りのある程に活気のある街だった。

だが帝国が進駐してきて、全てが変わってしまった。最初こそ市が開催されていたが、いつしか消えて無くなり、人通りで溢れたメインストリートは浮浪者と物乞いがカップを揺らし、或いは娼婦が帝国兵相手に売春を持ち掛ける都市となってしまった。だが今日、歴史が変わる。12:00になる鐘の音を合図に、彼らが動き出す。

 

「な、なんだ貴様ら!!」

 

「撃ちまくれ!!!!!」

 

帝国軍の憲兵は、ボルトアクション式ライフルを装備した民兵に取り囲まれた。普通の歩兵ではなく憲兵であった為、持っているのは拳銃のみ。何処か重要施設の憲兵とかなら短機関銃位持っていたかもしれないが、生憎とこの憲兵は普通の街中をパトロールする任務だったのだ。お陰で抵抗する間も無く、射殺されてしまう。

 

「行くぞ!!!!!!」

 

「「「「「おーー!!!!!!!!!」」」」」

 

彼らが誰かは、もうお分かりであろう。イルネティア解放戦線、つまりレジスタンスのメンバーである。12時を合図に、各地で一斉に反乱を起こしたのだ。なので何も、このエーベンダルトだけではない。他の都市や街でも、レジスタンス達が行動を開始している。

レジスタンスには第八十四話『神谷幕僚団』に於いて語られている通り、皇国より武器が供与されている。かれこれ半世紀近く前の89式小銃を筆頭に、コルト・ガバメントM1911だとか色々である。だがこの辺の兵器をメインに使わせると、もし横流しされた場合、戦後のパワーバランスが可笑しな事になってしまう。その為、ガバメントはともかくとして89式等は精鋭にのみ配備されており、大半の民兵はムーが装備更新で余りに余りまくっている、型落ちのボルトアクション式ライフル等を使用している。

 

「王国を我らの手に取り戻すのだ!!続けぇ!!!!」

 

「王国万歳!!!!!」

 

「王国の名の下、全ての侵略者には死の鉄槌を!!!!」

 

メインストリートから裏通りまで、武装した民兵達が帝国兵を見つける度に殺して行く。更には帝国臣民も殺して回る。帝国臣民は現地民を蛮族として扱っていたのもあって、自らが帝国臣民である証明として必ず胸には帝国の国章が刻まれたバッチを付けている。これが仇となって、バッチをつけている者は問答無用で殺された。

それはもう酷いもので、これまでの恨みを晴らすかの様に嬲り殺しにしていった。銃剣で突き殺す、撲殺、焼き殺されるなんて可愛いもので、敢えて殺さずに足と腕を撃った状態で犬に食わせてみたり、馬に縛り付けて街中を引き摺らせたり、ナイフとかデカい釘で壁に打ち付けて、胸から腹まで文字通りに切り開いて放置したりとか、無茶苦茶な殺し方をしていた。

 

『こちら憲兵09!現在暴徒による襲撃により、我が方被害甚大!!救援を乞う!繰り返』

『いたぞ!こっちだ!!』

 

『ッ!?頼む助けてくれ!!戦車か装甲車を!!助け』

『殺せぇ!!!!!』

 

『や、やめ!ゴフッ.......』

 

「隊長!!」

 

「すぐに出るぞ!!暴徒どもに分を弁えさせろ!!!!」

 

本部に駐屯している独立機械化憲兵小隊は、この無線を受けて市街地に出撃した。この小隊は暴徒鎮圧や叛乱部隊への強行突入等を視野に入れて試験的に編成された部隊であり、最新のシェパード装甲車とブル軽戦車を装備している。更に憲兵の武装も短機関銃やら催涙ガスグレネードやらと、かなり重武装なのだ。因みにこれ、バイツが提言したらしい。

さて、こんな重武装憲兵軍団であるが、彼らには一つ誤算があった。彼らが鎮圧しようとしている暴徒は、単なる暴徒ではない。鎮圧対象の暴徒は、皇国のパラミリチームが軍事教練を施した統率の取れている民兵なのだ。そんじょそこらの、鉄パイプとか角材を振り回しているような連中とは訳が違う。

 

「こちら監視班。装甲車と戦車がそっちに向かった」

 

『了解。対処する』

 

こんな感じでしっかりと司令部前に、反乱軍の同志が一般人に扮して監視している。まさかこんな事になっているとは知らない憲兵隊は、メインストリートを堂々と進軍。なんならスピーカーで軍歌を流す余裕っぷりである。

だがその進軍を、手ぐすね引いて待っている連中がいた。

 

「お前達、仕事の時間だ」

 

「おう!合図は頼むぜ、ハンドラー・ハル」

 

「あぁ」

 

パラミリチームの一つ、ローダー分隊である。この分隊はパラミリチームの中でも別格であり、ローダー分隊が正式名称ではあるが、こう呼ばれている。『レイヴン分隊』と。メンバーはローダーことレイヴン、ハル、ソル、ターナーである。

 

『ハル。こちらは準備完了です。レイヴン、ターナー。そっちはどうですか?』

 

『問題ないアルよ』

 

『いける』

 

「ハウンズ。準備しろ」

 

ハウンズとは反乱軍の精鋭であり、ハル及びレイヴン分隊の指揮下に入っている独立部隊である。この部隊には皇国が供与した89式やカールグスタフ等のチート兵器を運用しており、こういった危険な任務に駆り出される部隊だ。

因みに何故、隊長のレイヴンが指揮を取らないかと言うと、単純に大人数を動かすのが下手だからである。パラミリチームには序列があってないような分隊が多いが、この分隊は異質で実質的な指揮はハルが執る。しかしここぞの判断や咄嗟の判断にはレイヴンに定評があり、その能力を最大限活用する為に分隊長をしているのだ。その為、ハルはしばしば『ハンドラー・ハル』と呼ばれる事もある。

 

『車両、補足したアル!』

 

「ハウンズ。燃え残った全てに火を付けろ」

 

ハルの命令で、ハウンズ達は一斉にカールグスタフM2やパンツァーファウストIIIを撃つ。先頭のブル軽戦車を破壊し、そのすぐ後ろのシェパード装甲車も破壊。車列は完全に停車した。

シェパード装甲車から武装した憲兵隊が降りてくるが、その前にこのコンビが迎撃に移る。

 

「レイヴン、私は右を仕留めます。あなたは左を!」

 

「任せて!」

 

この2人はある、特別な装備を持っている。レイヴンは左右の腕にパワードスーツの腕を装備しており、36式散弾銃を二挺装備できる。しかも下部レールにはグレネードランチャーを装備しており、遠近共に対応できる。

一方のソルは左手には刀、右手には37式短機関銃を装備しており、完全に近接特化の武装だ。この2人のコンビネーションの前に、憲兵隊はなす術なく殲滅された。

 

「ハル。終わりましたよ」

 

『こちらでも確認した。レイヴン、お前の方は?』

 

「こっちも終わった」

 

『一先ず戦闘終了だ。一度帰還しろ』

 

 

 

同時刻 裏通り 元バーの廃墟

「どうやらメインストリートではパーティーが始まった様だな。では作戦内容を説明する。一字一句聞き漏らすな!今回本部は反乱軍援護の為、このエーベンダルト内の司令部を破壊する事を決定した。指揮系統の破壊により、連中が泣いて逃げ回る状況にするのが目的だ。愉快な遠足の始まりだ!!」

 

メインストリートが地獄の様な状況になっている中、JMIBのパラミリチームも動き出す。今回アサインされているのは、ライガーテイル分隊。分隊員はライガーテイルを筆頭にタイヤングショウ、サンタイ、ベリルである。

 

「全く、ライガーテイルのオヤジは相変わらず声がデケェ」

 

「チッ。こんな地下で怒鳴るなよな」

 

「ほう、どうやら耳が寂しくて仕方がないようだな。だったら集音器でも付けて、環境音を爆音で聞いていろ!!!!!」

 

ベリルが「テメェのせいで聞こえねぇよ!!」と怒鳴りそうになったが、それを察したサンタイが無理矢理ベリルの口を塞ぎ、それを言わせないようにする。それを見てタイヤングショウは遠目から笑っていた。

 

「これより作戦行動を開始する。突入しろ!役立たずども!!!!」

 

ライガーテイル分隊が司令部を強襲している頃、もう一つの分隊も動き出した。彼らの仕事は、言うなれば誘拐だ。どういう事かと言うと、実はライガーテイル分隊が攻め込む司令部にいる指揮官は、自らの保身しか考えないクズなのだ。となればライガーテイル分隊が攻め込んで来た瞬間、必ず司令部から逃げ出してくる。そこを誘拐するのだ。

しかもこの指揮官、コネと情報は持っている。イルネティア島駐留部隊の総指揮官は、かなりやり手らしく間違いなく徹底抗戦なり降伏なりしてくる。少なくとも、逃げることはない筈だ。だがこっちの指揮官も、それに劣るとは言えかなりの情報を持っている。こちらからしてみれば、お手頃な獲物にも関わらず得る物が大きいボーナスキャラのような存在なのだ。そしてこの任務を任されている分隊は…

 

「分隊各員。統率を欠かぬように」

 

オープンフェイス分隊である。分隊員は分隊長のオープンフェイスと前回の回想に出ていたアイスワーム、これにアーキボーイとバルテウスという分隊員がいる。

 

「アーキボーイくん、駄犬の情報を」

 

「えっとー、駄犬の名前はシュナイダー・アーキバース。略奪行為を主導した男で、この国の惨状の8割はコイツのせいだねー」

 

「ほう」

 

「この男が略奪推奨して、ついでに現地人を人猿呼ばわりして色々やってたみたいー。まあ平たく言って、クズだねー」

 

「ではアーキボーイくんとバルテウスくんは、都市内部で帝国臣民及び帝国兵をできるだけ残虐に殺してきなさい。可能であれば、新型薬剤の投与も。私とアイスワームくんは、駄犬の捕獲に向かいます」

 

ここで分隊は別れ、オープンフェイスとアイスワームは司令部を目指す。正確にはその裏手だ。到着から10分もしないうちに、ライガーテイル分隊が動き出したのか爆音が鳴り響く。

それから更に10分すると、一台の車が猛スピードで飛び出してきた。指揮官クラスの高級将校が乗る乗用車である。それを確認した瞬間、アイスワームは無反動砲を構える。弾頭には通常弾の代わりに、車をスタンさせる新型砲弾が装填されている。これが車に命中し、敢えなく車は停車。動かなくなる。

 

「目標を無力化。ええ、指示どおり生かしてありますよ。まったく、皇国を出し抜こうなど、身の程を弁えない駄犬には教育が必要です。それから、そのツレにも」

 

アイスワームからの報告を受けると、オープンフェイスはスタンして動けない車に近付く。車からは例のシュナイダー・アーキバースと、その護衛と思われる将校が出てきてこちらに銃を構えてくる。

 

「動くな!!」

 

「…どいつもこいつも、身の程というものを弁えない。途方もない頭の悪さだ…!あくまで噛みつくつもりか…?そう言えば、帝国人は慢心しているのだったな。胡座を掻いて踏ん反り返る事しかできないわけだ」

 

「なんだと貴様!?!?」

 

護衛の1人とアーキバースが拳銃を撃つ。しかしこんな状況に追い込まれたことがないのか、戦場を知らないのかは分からないが、弾丸はオープンフェイスを掠めるだけだった。

 

「シュナイダー・アーキバース。駄犬というのは訂正しましょう。貴様は…駆除すべき害獣だ!

略奪で私服を肥やすのはいいでしょう。バレても勝手に内輪揉めするだけです。こちらになんの被害もない。

現地民を虐げたのも、まぁ、いいでしょう。

だが貴様はこの私を.......。皇国を殺そうとした。害獣め、駆除以外の選択肢はない!!消えろ…!害獣!!!!」

 

「貴様は何を言っているんだ!?!?」

 

「殿様外交しかできない無能外交官。頭の悪い上層部。そして何より、災厄を撒き散らす世界の害獣.......。どいつもこいつも、この私を苛立たせる…!

死んで平伏しろ!!

私こそが皇国だ!!!!

 

オープンフェイスは護衛とアーキバースを殴り飛ばす。この男、見た目こそ嫌味なインテリメガネなのだが、そのパワーはかなりの物で殴り飛ばされた2人は1発ノックアウト。口から泡を吹いて倒れ伏した。

 

「貴様らのせいで、再教育(・・・)の手間が増えてしまった。また忙しくなる」

 

因みにこのオープンフェイス分隊、再教育のスペシャリストである。皇国の再教育センターとは素晴らしい物で、どんな堅物だろうと再教育センターで再教育を受ければ従順になる。

とまあ、こういう触れ込みだがその実情とは、再教育センターというのもブラックサイトや秘密監獄等を示す隠語であり、再教育もそういう名の拷問である。科学的根拠に基づいた人間がギリギリ死なない程度の加減が行われるが、これはつまり「どんなに苦しかろうと死ぬ事のない、生物学上の最大苦痛を長期間与えられ続ける」という事でもある。この2人がどの様な末路を辿るかは、オープンフェイス分隊の気分次第だ。

ドイバ他、各地での一斉蜂起が始まってから1時間後。この蜂起に合わせる形で、皇国軍も出撃。第二海兵師団と神谷戦闘団は首都を挟み込む様な形で進軍を開始し、各所の街や村々で帝国軍を殲滅しつつ首都を目指す。

 

「長官、戦況報告です。第二海兵師団、第三連隊は予定通りに進軍。現在、首都キルクルスの東方30km地点にて、合流してくる反乱軍を纏めています。第一、第二連隊はこことここに布陣。待機しています」

 

「偵察隊からの報告は?」

 

「現在、本島守備隊は首都に集結中であり、首都に三重の防衛網を構築しています。例のカチューシャも配備されており、反乱軍を殲滅する構えですね」

 

上陸から2日目にして、既に王手を掛けている現状であるが、ここに至るまでに帝国軍ご自慢かどうかは知らないが、例の新鋭機甲部隊やカチューシャ擬きも殆ど遭遇していない。カチューシャ自体の装甲は弱いが、数を揃えて攻撃されると面倒な事この上ない兵器なのだ。

特に反乱軍は数だけの存在であり、幾らパラミリチームが鍛えたとは言え所詮は民兵。武器で障害を排除する戦闘行為はできても、本職の軍人の様に戦略を立て、戦術を考え、それを実行して戦争をするという戦争行為はできない。そういう相手に、このカチューシャはとにかく有効だ。無誘導ロケット砲のコンセプトは、基本的に下手な鉄砲数撃ちゃ当たる理論であり、命中精度よりもバカスカ目標周辺に撃ちまくって弾幕を張って面制圧を行い、それによって生じた隙をつく戦法を取る。実際、ソ連でもカチューシャで面制圧と注意を引いて、野戦砲等の精度が高い兵器で重要な施設や装備を破壊する戦法が一般的だった。

 

「あの、閣下。よろしいでしょうか?」

 

「何だ長谷川大佐」

 

「何故、そんなにも悩んでいるのですか?機甲師団でゴリ押して、戦線を無理矢理こじ開ければよろしいのではないのですか?」

 

長谷川の言う通りではある。確かに恐ろしい兵器だが、こちらの機甲部隊、特に46式戦車を前面に出して突破させれば被害はなく突破できるだろう。だがそれでは態々、民兵達に兵器を持たせた意味がない。

 

「これは一種の実験なんだよ」

 

「実験、ですか?」

 

「我々の武力を持ってすれば、いとも簡単に突破できるだろう。それこそ神谷戦闘団だけで、この島を解放するのも簡単だろうさ。だがそれでは、ここの民には意味がない。自らの手で独立を、勝利を勝ち取らせる必要がある。そうしなくては、いつかまた危機に瀕した時に頼り切りになってしまう。

例え現地民に大量の被害が出ようと、取り敢えずは「共に戦い、共に独立を勝ち取った」という体裁は取っておきたい。そうすれば例え共闘であっても、それは彼らの手にした揺るぎない勝利だ。その事実が王国には必要であって、皇国にはその結果が必要なんだよ。

今回、この方法を模索する実験として、早期からのパラミリチームによる軍事教練や、ICIBとJMIBによる武器の密輸を行ってきた。その成果を見る為にも、ここは彼らにどうにかして貰いたい所だな」

 

なんて言っているが、その実は経費削減である。もし今後、金のかかる正規軍を動かさずに、皇国製の古い兵器を融通するだけで勝利できるのなら、こちらとしては願ったり叶ったりである。

また既に一色と川山の間では、戦後世界の枠組みも議論されている。その中で2人は恐らくはミリシアルと皇国は、軽い冷戦になるのではと予測が出ている。流石に米ソ程ではないにしても、互いを牽制しあったり紛争を影から操ったりと、そういう事はする可能性がある。その為にもこの辺りで異世界での裏工作を実験しておきたいのもあり、この作戦はそういう側面もあったりするのだ。

 

「まあ、とにかく今はこっちも前進あるのみだ。向こうで考えよう」

 

途中、敵戦車と遭遇したが、先頭を走るアサルトタイガーの46式で、ものの見事に撃破し、そのまま残骸を踏み潰して進撃してきた為割愛する。数時間後には、目標地点に到着。キルクルスは完全に包囲された。

 

「浩三さん。ここからどうするのかしら?」

 

「さてどうしましょ。別にゴリ押しでもいけるが、それじゃぁな」

 

「このまま包囲して兵糧攻め?」

 

「兵糧攻めしたとこでなぁ。ぶっちゃけ期間長くなるし」

 

どう料理してくれようかと、緑茶片手にキルクルスを見ていると、急に極帝が装甲車から這い出てきた。何かあったらしい。

 

「友よ。どうやら、この国の英雄が現れた様だぞ?」

 

「この国の英雄?」

 

「あぁ。空を見よ」

 

空を見ると、夕焼けの太陽を背に竜がこちらに猛スピードで接近してきていた。その竜は見るからに、ワイバーンとは違う。明らかにその上位種なのだと、竜の知識がない神谷でも分かるくらい巨大だった。

 

「.......まさか、昼の竜か?」

 

「幼き神竜と、それを手懐けた女子である。友よ、彼女らであれば突破できると思うが?」

 

「..............悪くない」

 

救国の英雄が幼き神竜と、それを手懐けた将来有望な少女というのは、分かりやすい英雄譚だろう。何より反乱軍の士気は、これで否が応でも上がる。これを使わない手はない。

 

「総員戦闘配置!突撃に備えろ!!どうやら彼女達が、道を切り開いてくれそうだ!!各部隊にも伝達!!!!さぁ、フィナーレを飾るぞ!!!!!!」

 

神谷は巨大化した極帝の背中に飛び乗り、大空へと飛び立つ。見つからない様に不可視化の魔法も掛けてある。

 

「イルクス!わたし達なら、きっと大丈夫だよね!!」

 

『僕たちなら大丈夫だよ!!行こっ!!!!』

 

イルクスとライカのコンビは、果敢にも帝国が築いた防御陣地に飛び込む。さっきの戦闘でも、いとも簡単にセンシャは倒せた。例の戦闘機さえ来なければ、きっとどうにかなる。

そう考えていたのだ。だがこの防御陣地に結集した戦力は、この島の全戦力に等しい。幾ら神竜とは言え、たかが1匹では戦局を打開できる訳がない。しかもここに集結している大半は、最新鋭の兵器群。対空砲の弾幕も濃密で、なんの訓練も受けていないライカとイルクスは攻撃できずに、上空に逃げる始末だ。

 

「な、なにあれ!!!」

 

『分からない!でも、ちょっと危ないかもね.......』

 

「か、勝てるよね!わたし達はなら、大丈夫だよね!?」

 

『.......』

 

イルクスは答えられなかった。これだけ濃密な弾幕は、当然だが生まれて初めて見る。こんな弾幕を掻い潜って、しかも背中にライカを乗せて飛び回るなんて、流石に神竜と言えど無理があった。

それを察したのか、ライカはイルクスを抱きしめた。何も言わずに、ただ抱き締めるだけ。お互い、言わんとしていることは言葉に出さずとも分かった。

 

「イルクス。やろう!」

 

『.......そうだね、やろう!!』

 

イルクスとライカは再び突っ込んだ。イルクスは喉に魔力を溜めて、それを解放。口から雷属性のビームを吐き出した。そのビームは地上を焼き払い、防衛線の穴を作り出す。

だが次の瞬間、イルクスの左翼を砲弾が貫いた。

 

『ぐっ.......』

 

「イルクス!!」

 

『しっかり.......掴まっ.......て..............』

 

生き残ってる翼をフルで使い、どうにか不時着に漕ぎ着ける。ライカに傷一つ付けることなく、不時着に成功したイルクスだが、そこは敵陣のど真ん中。すぐに兵士達が駆けつけて、銃を突き付けてくる。

 

「イルクスを撃たないで!!!!」

 

『ダメ!下がって!!』

 

「イルクスは私を守ってくれた!!だから今度は、私が守る!!!!!!」

 

ライカはイルクスの前に立ち塞がり、両腕を大きく広げてイルクスを守ろうとした。だが次の瞬間、真上に巨大な竜が飛来した。

 

「幼き竜とは言え、人間に遅れを取るでないわ。小僧」

 

『極帝.......様.......』

 

「だが、友を守ったその意気は良し!!」

 

いきなり現れた巨大な竜に、帝国兵達は困惑する。取り敢えず銃や砲を向けるが、そこからどうするかは考えてないらしい。極帝はそれを知ってか知らずか、天地万物を震わす巨大な咆哮を上げる。

 

「我こそは竜神皇帝『極帝』である!我が前に立ち塞がるは、その身を業火に焼き尽くされるのみと知れ!!!!」

 

「おいおい。そんなカッコいい名乗りをやるなら、先に言ってくれよ」

 

極帝の背中から神谷が飛び降り、刀を構えながら着地する。いつも通りの羽織りを纏った姿は、ライカにはとても眩しく、物語の勇者が現れた様な興奮を覚えた。

 

「貴様は.......」

 

「この顔を忘れたか?俺は大日本皇国統合軍総隊司令長官にして、神谷戦闘団の団長!!神谷浩三・修羅だぞ!!!!」

 

この一言で兵士達は一気にざわつき、顔色は真っ青になる。神谷の名は、半ばフーファイターの様な都市伝説じみた事になっているのだ。やれ悪魔の化身だの、人の肉を喰らい生き血を啜るだの、ゆっくりジワジワと殺されるだの、かなり酷い話が広まっている。故に屈強な帝国兵も、恐怖でどうにかなっているらしく逃げようとする者も居るほどだった。

 

「極帝。そっち任せる」

 

「心得た、友よ」

 

そこから始まったのは一方的な戦闘であった。極帝は戦車とか人間の区別なく焼き払い、神谷は相手の懐に飛び込んで刀を振り回し、的確に命を刈り取っていく。

更に砲弾が神谷達に被害が出ないギリギリの地点に着弾し爆炎を上げ、帝国兵の数をみるみる減らしていく。

 

「初弾命中!」

 

「団長の周囲を薙ぎ払う。51式を使え!」

 

「ハッ!」

 

神谷戦闘団隷下、グラディエイターヴィーナスに続く形で他の砲兵部隊も攻撃を開始。これに呼応して、戦車を先頭に歩兵部隊も戦線に殺到。首都を目指して進撃する。

 

「そんな.......。まさか、これが狙いだったのか!?!?」

 

指揮官らしき男がそう叫んだ。だが神谷は冷ややかな目をその男に向けると、さも当たり前かの様に語る。

 

「狙い?そんなもんあるかよ。彼らは俺が思い描いたタイミングで、最高の仕事をやってくれるんだよ。まあ、お前達は運がなかったってことで」

 

「や、やめっ!」

 

「死んでいいぜ」

 

神谷は指揮官らしき男の首を切り落とす。その頃には周囲の敵部隊も壊滅状態であり、殆ど大勢は決した様な物だった。そんな中、極帝はイルクスに話しかけた。

 

「幼き竜よ。歩けるな?」

 

『は、はい!』

 

「ならば、その足を持って敵に突っ込まぬか。気高き竜が、翼を折られた程度で終わるものか」

 

『わかりました!!』

 

イルクスはライカを背中に乗せて、そのまま王都の門の方へと走って行った。この頃には機甲部隊を先頭に各部隊も続々と門に殺到し、数時間後には王都は解放され、ここにイルネティア島の帝国軍は駆逐されたのであった。

 

「あ、あの!!」

 

戦闘後、部下達に戦闘後の後始末を命令していたところ、ライカが神谷に話しかけてきた。その目はキラキラ輝いており、神谷自身も逆に身構える。

 

「何の用だい、嬢ちゃん?」

 

「えっと、わたしを弟子にしてください!!」

 

「.......はぁい?」

 

まさかの頼みに、変な返事をしてしまう神谷。流石に一応初対面の少女に、いきなり弟子にしろと言われても反応に困る。

 

「.......な、何故弟子に?」

 

「修羅様が強いからです!!!!!!私もそうなりたいのです!!!!!!」

 

「お、おぅ。そうか」

 

物凄い剣幕でそう言ってくるが、コチラとしてもますます対応に困る。生憎と神谷は弟子を取るつもりないし、寧ろ魔法に関しては何処かの高名な魔術師に弟子入りしたい位だ。

だが流石に、こういう時にNOを突きつけるだけでは面白みがない。少し夢を守ったっていいだろう。

 

「悪いが、君を弟子にはしない」

 

「そ、そんな!どうしてですか!!」

 

「もっと強くなりなさい。まだ君達は、経験が足りなさすぎる。いつか時が来たら、皇国へ来るといい。その時は君に教えを授けましょう」

 

こう言っておけば、大体どうにかなる。夢も守れて弟子も取らなくて一石二鳥かつ、本人も遠くないうちに忘れてくれるので全て丸く収まる。

 

「はい!わかりました師匠!!!!」

 

ライカの返事に、神谷は優しい笑みを浮かべて頷いた。これで神谷は終わりだと思っていたが、後日マジで弟子入りの為に皇国にやってくる事になるとは神谷は思っても見なかった。

 

 

 

 




設定集が中規模リニューアルしました!陸軍と海軍陸戦隊に、部隊の規模の項目が消え、新たに編成の項目が追加されてあります!皇国軍の強さの秘訣、その一端ですw。
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