ノーベース要塞への連合竜騎士団による開幕奇襲攻撃から始まった、帝国への反攻作戦。『審判の炎作戦』が始まり20時間が経過した。各軍にも若干名の死傷者は出ているが、計画よりも損失は少なく行軍スピードも予定以上だ。
作戦は第三段階へと突入し、ムーの航空基地からは皇国、ムー、ミリシアルの航空隊が飛び立ち、レイフォルを目指して飛行している。双発の中型、四発機の大型併せ延べ1100機もの大戦力であり、これに加えて護衛機も多数随伴している。ムーからはP51Hを元に開発されたグレン、ミリシアルからはお馴染みの制空型天の浮舟エルペシオ3、そして皇国からは数は最も少ないが、最強の航空部隊が護衛についている。
「間も無く皇国空軍との合流地点の筈だが……。航法士、念の為確認してくれ」
「了解!……………………はい、間違いありません。この空域です」
「しかしこうも雲が多いんじゃ、何処から来るか分かりませんな隊長」
「全く。魔導探知レーダーをコイツに積みたいよ」
そうミリシアル爆撃隊の隊長兼この機体の機長であるフキニーは、物理的に不可能な願いをぼやいた。このムニシピオは航空機としては、かなりの巨体に分類される大型航空機だ。だが魔導探知レーダーなんて、重くデカく魔力を馬鹿みたいに食べる大型装置は載せられない。そんなのを載せても飛び立てるか怪しい上、飛べたとしても、どれ程の時間運用できるだろうか。少なくとも戦力としてカウントできる程の能力は出せないだろう。
「そう言えば隊長、聞きました?皇国の連中、たったの41機しか出さないらしいですよ。しかも7機は、戦闘機でも爆撃機でもない大型機だとか」
「もちろん知っている。上は皇国を目の敵にしている節があるが、私としては是非とも皇国空軍の航空機が大挙している姿を見たかったのだがな。少し残念だよ」
フキニーは大の航空
「まあでも、問題ですよ隊長!こっちにはブルーナイツとホワイトスピアがいるんですから」
「あぁ、そうだったな」
神聖ミリシアル帝国空軍、第6独立戦闘航空旅団『ブルーナイツ』と第38航空団『ホワイトスピア』。どちらも帝都付近に配備されている精鋭部隊であり、ブルーナイツは貴族、ホワイトスピアは平民で構成された航空隊である。この部隊は宣伝も兼ねて敢えて貴族と平民で分けており、広告として軍の広報に載る事もあるが、その本業は帝都の防空及び難易度の高いミッションを成功に導く切り札である。何れも自国でも他国でもアグレッサーとして活躍する事も多く、名実共に最強の精鋭飛行隊なのだ。
「隊長!魔信に反応あり!!」
『こちら大日本皇国空軍
「噂の皇国空軍です」
「回線を接続しろ。俺が出る」
手元のスイッチで、頭につけているヘッドフォンと魔信を接続する。昔は一々魔信機まで行く必要があったが、最近はスイッチ1つで切り替えられるので便利だ。
「こちら神聖ミリシアル帝国空軍、フキニー少佐だ」
『…確認した、少佐。以降は我々が情報提供を行う。通信回線をこのまま解放したままにして欲しいのだが、問題ないか?』
「問題ない。他の機体にも連絡しよう。所で、君達は今どこに?」
『間も無くそちらに合流する。そちらの編隊から見て3時の方向から侵入する。間違って撃たないでくれよ?』
そう言われたフキニーは、双眼鏡片手に右側に広がる雲海を見る。当然だが雲で何も見えない。だが数分後、その雲の中から戦闘機の編隊が現れた。
「なんだあの機体は.......」
フキニーが見たのは、写真や雑誌で見る普通の皇国の戦闘機ではなかった。左の翼が赤い機体、両翼が青い機体、翼端が黄色い機体、全身真っ黒な機体、翼全面の縁が赤い機体、尾翼に3本線や水色のリボン、或いは青い鳥が描かれた機体達。異質の極みだ。
「あの塗装、エース級部隊なのか?」
「アグレッサー部隊ですかね?」
この世界でもアグレッサー役やエースと呼ばれるパイロットには、特例的に自分の愛機の塗装やマーキングを弄る権利が付与される。特殊な機体カラーやマークは、それだけでエース或いは精鋭の証なのだ。
「いずれにしても、皇国の戦闘機だ。丁重に扱え」
「了解です!」
『こちらスカイアイ、これより編隊に合流する。注意しろ』
フキニーは機体をバンクさせ了承を示す。アウトレンジ部隊各隊は、指示された場所に移動。護衛に入る。
暫くは平和な遊覧飛行だったが、30分もしない内にスカイアイからの無線が爆撃機編隊全機に飛ぶ。
『全機警戒!敵影を探知した。方位0-3-9。機数…多いな。約180!』
「迎撃用意!規定通りの陣形に変更する!!」
編隊はフキニー考案の陣形に遷移する。最も防御力と攻撃力に優れたフォートを外縁部に配置し、中心はムニシピオで固める。爆撃機を取り囲むように護衛戦闘機を配置し、戦闘爆撃機のウッドチェイサーは少数の護衛を付けた上で編隊から離れ別働隊とし、そのまま本隊が壊滅した時の予備戦力として温存させるというものだ。
『……フェニックス、エンゲージ』
『エッジ、エンゲージ!』
『スラッシュ!エンゲージ!!』
無線からそう聞こえた瞬間、編隊の最後方から3機の戦闘機が一直線に突っ込んでいく。余りの加速に衝撃波が発生し、周囲にいた機体をビリビリと揺らした。
「うおっ!?な、なんだぁ!?」
『スカーフェイス隊エンゲージ。こちら、空中管制機キーノートのオルセンだ。スカーフェイス隊はこれより、接近する敵戦力の迎撃に当たる』
「しょ、少佐!フキニー少佐!皇国軍が迎撃に移りますよ!!」
「なに!?」
急いでフキニーは双眼鏡を取り出し、皇国軍機を追う。確かに真っ先に突っ込んでいた3機以外も、迎撃態勢を取りつつあった。しかもその動きは皇国軍を知らない素人目で見ても、明らかに精鋭の動きだというのが分かる。
『よし!全機、トリガーの周りに集まれ!編隊飛行だ!ロングキャスター、頼む!』
『あぁ!……新たな情報を送った。全機撃墜しろ!!』
『さっさと片付けるぞトリガー!!』
3機を追いかけて行くように、3本の爪痕マークを尾翼に刻んだ戦闘機が先陣を切る8機の編隊が加速していく。
『♪ララーラ ラ〜〜我々の罵声を聞きたまえ。こちらは空中管制機オーカ・ニエーバ。新たに敵影を探知した。方位2-3-5、迎えるか?』
『聞いていたな?
『了解、撃墜します』
即座に動いた翼端が黄色い5機。両翼の4機が行動を取りながらロールしつつ、左右が入れ替わる。そして一気に加速しながら両翼の編隊がクロスし、交わったのと同時に隊長機が一気に高度を上げて2編隊と1機が交わり敵に向かっていく。
『サンダーヘッドよりラーズグリーズ。イエローを援護しろ』
『ラーズグリーズ隊、俺に続け』
『ラーズグリーズの名を轟かせるぞ!!』
今度は真っ黒の戦闘機達が、翼端が黄色い戦闘機達を追いかけていく。今この編隊に残っているのは、見た限りだと青い鳥が描かれた2機とAWACSだの空中管制機だのと言われている大型機だけだ。
爆撃機隊が迎撃準備を整える中、帝国軍の方は今から起こる地獄に何の警戒もできていなかった。
「全機に告ぐ。今回の敵はあくまで爆撃機!護衛戦闘機には構うな。さらに今回の編隊には、皇国は戦力を殆ど提供していないらしい。30機前後だそうだ。対して我々は150機。さっさと爆撃機を落として、レイフォリアの上を凱旋飛行だ!!」
『隊長!よろしいでしょうか?』
「どうした一飛曹?」
『例の皇国のエースが出てきたらどうするのですか?』
「心配するな!あの編隊にいる訳ないだろ?あのエースは単体で突っ込ませ、戦況をひっくり返す様な存在。護衛なんてするわけないだろ」
そう言った瞬間、一等飛行曹と彼が指揮する分隊、及びその周辺にいた12機が一気に爆発した。しかもほぼ同時だ。こんな手品のような攻撃ができるのは、世界でもたった1つ。
「皇国軍の攻撃だ!!備えろ!!!!」
だがこの命令は遅かった。この命令を叫んだ瞬間、自らの期待の真横を皇国の戦闘機が通過して行った。その尾翼には、真っ赤な鳥のエンブレムが刻まれており、機体カラーも赤が入っているのが見えた。
「今のは…まさか!」
『え、エマージェンシー!!エース部隊、スカーフェイスです!!』
『第18戦闘飛行隊『スカーフェイス』!』
『皇国の不死鳥、フェニックスかッ!!!!』
第18戦闘飛行隊『スカーフェイス』は、皇国空軍のエース文化を作り上げた「原初のエース部隊」とでも言うべき存在である。エースパイロットの頂点に君臨し、経験豊富な彼らを持ってすれば凡ゆるミッションは完遂されたも同然だと言わしめる程だ。
『フォウ!フェニックス!敵のケツを盛大に蹴り上げようぜ!!』
『スラッシュ.......。フェニックスはもう、6機撃墜してるわ.......』
『…………我が隊長ながら恐ろしいぜ』
たったの3機に編隊は滅茶苦茶にされ、既に連携も何もあった物ではない。これに追い討ちをかける形で、ロングレンジ部隊も追い付いた。
『コイツは……』
『スカーフェイスの連中が食い荒らしてる……』
『カウント、フーシェン。俺達のやる事は変わらないだろ?トリガー、行くぞ!』
『ウィルコ』
第123戦術戦闘飛行隊第1小隊『ストライダー』と第二小隊『サイクロプス』は、アウトレンジ部隊の先駆けとなった
「ッ!?ちくしょ、3本線が出やがった!!!!」
『マジですか!?』
「うげっ!伯爵もいやがる!!」
『なんだってこんな所に!!』
『空に3本線は凶事なり……』
特にこのトリガーというのは、帝国軍パイロットからすると恐怖の対象であった。「空に3本線は凶事なり」なんて言葉が生まれるほどに、尾翼に刻まれた3本の爪痕は恐怖の対象となっている。
『敵はトリガーを見て逃げ出してるぞ!』
『敵を前に背中を見せるのは愚かな行為だ。今度息子にも教えないとな』
『ストライダー隊全機、行くぞ』
『サイクロプス1よりオールサイクロプス、ストライダーに遅れるな?俺達も行くぞ!』
この11機に食い荒らされた編隊は散り散りとなり、応援の護衛戦闘機が到着した頃にはその大半が落とされていた。
左翼側から接近していた編隊はと言うと…
『ら、ラーズグリーズ!!』
『く、来るな!!来る———』
『悪魔めぇぇぇぇぇ!!!!!』
『い、嫌だ!死にたくなッ』
『コイツらなんなんだ!!黄色野郎め!!!!』
『コイツら化け物だ!!』
完膚なきまでにボッコボコにされていた。何せラーズグリーズの悪魔こと第206戦術戦闘飛行隊『ラーズグリーズ』は、あの神谷戦闘団専属戦闘機部隊。最強という訳ではないが、それでもその練度は化け物じみている。そして黄色中隊こと第156戦術飛行隊『アクィラ中隊』は、連携させて戦わせれば敵なしと言わしめる程に強い。この二隊に襲われた帝国軍は、ご愁傷様としか言えない。
だが帝国もタダではやられない。対空用クラスター爆弾を装備したシリウス型爆撃機を飛ばし、爆撃機編隊の上空に送り込んでいたのだ。戦闘機の様に軽快な動きでドッグファイトは出来ないが、爆撃機の様に編隊で行動する鈍重な機体には有効な戦術である。
『全機コーション!編隊上空に敵機だ!!』
『こちらブルーナイツ。これより迎撃に移る』
『ホワイトスピアも同様に迎撃に向かう。情報を共有されたい』
『了解した!方位、1-9-0!機数80、高度8000!!』
エルペシオ3は破綻した設計を持つ航空機だ。ミリシアルの兵器は基本的に魔帝の遺産を解析して作り上げた古代兵器の残り香か、その遺産そのものなのは知っての通りであり、エルペシオ3は前者に当たる。魔帝のブランド力やスペックを盲信して作られており、空力だとか物理学の部分は基本的にアウトオブ眼中状態で設計されている。その為、一応ジェットエンジンを搭載しているのに翼はテーパー翼でジェットのポテンシャルを抹殺しており、機動性の悪さに拍車を掛けるという状況だ。まあこれはエルペシオ3に限らず、他のどの兵器も似たり寄ったりなのだが。
とは言え物事には常に、例外やイレギュラーと呼ばれる存在がある。それが今回で言えばブルーナイツとホワイトスピアだ。ここに所属するパイロット達は、エルペシオ3の性能特性をよく理解している。格闘戦に持ち込めば確実に負けるが、上昇能力ではこちらが上。横ではなく、縦で戦えば勝機はある。
『全機、下から一気に行くぞ!!』
『このまま食い破る!!突っ込め!!!!』
基本的に航空機にとって、真下というのは絶対的な死角となる。皇国の機体ともなればセンサーやレーダーでカバー出来るが、帝国の場合は機体をロールさせて物理的に窓を下側に向けるしかない。
『ターゲット、ロック!攻撃開始!!!!』
20mm魔光砲が一斉に火を吹き、シリウスを蜂の巣にしていく。ミサイル、誘導魔光弾を搭載していないが、20mm弾を浴びればシリウスとてひとたまりも無い。そのまま編隊は急降下で再度攻撃を仕掛けるべく、推力はそのままに高度を上げていく。だが護衛の戦闘機達も、そう易々と許してくれる筈がなく増槽を捨て、エルペシオ3を追い掛ける。
そのまま後ろを取って、仲間を殺したエルペシオ3を血祭りに上げてやるつもりだった。
『ガルム隊へ、撤退は許可できない。迎撃せよ』
『だろうな。報酬上乗せだ。生き残るぞ、ガルム2』
『あぁ。相棒、花火の中へ突っ込むぞ!』
『行くぞ、ガルーダ2!』
『
そうはさせない。上空に待機していたガルム隊とガルーダ隊が入れ替わる様に突っ込み、ブルーナイツとホワイトスピアを援護する。
『今のは!?』
『日の丸を確認!皇国軍です!!』
『ッ!?片翼の妖精に、アイツは……円卓の鬼神!?!?』
『エース部隊か!!しかも
『エースが後詰にいるなんて聞いてねぇ!!!!』
第366飛行隊『ガルム』と第408飛行隊『ガルーダ』。ガルム隊はスカーフェイス隊同様、最初期に作られたエース部隊であり原初のエースである。NATOの戦闘機パイロット用特別高等訓練プログラムB7R、通称『円卓』にてフルスコアを達成した『円卓の鬼神』サイファーと事故で片翼失いながらも帰還した『片翼の妖精』ピクシーで構成されている。
ガルーダ隊は他のエース部隊とは異なり、その本業は攻撃任務である。その為戦闘機ではなく、戦闘攻撃機分類だが攻撃機の色合いが強いA9ストライク心神を装備している。だが普通にドッグファイトも可能であり、今回は空対空ミサイルを満載している。
『やむを得ん!全機、独自に攻撃を開始せよ!!!!』
隊長の指示に、パイロット達は自分達の判断で爆撃機隊に突っ込んで行く。だが爆撃機編隊には未だ相当数の護衛が張り付いており、更にはそもそもの爆撃機にも防護機銃というのがある。ムニシピオにも防御用の高レート低威力の魔光砲が搭載されているし、フォートの場合はB17Gを元にしているだけあって、要塞の名に恥じない防御力とハリネズミ並みの防護機銃を搭載している。
「敵機後方から近づく!!」
「射撃許可!連携して撃退しろ!!!!」
「この弾幕を潜れるものなら、潜ってみろよ!!!!」
防護機銃と魔光砲から撃ち出される火線が空を彩り、次々に帝国軍機を血祭りに上げていく。とは言え組織だった攻撃ではなく個別による突撃な上、こういう状況に慣れていない搭乗員達は機体のポテンシャルを完全に引き出し切れて居らず、若干の被害が出始めてしまう。
「チッ!1機ケツに食いつかれた!!」
「逃げろ!!雲の影を飛べ!!!!」
フキニーの指示に、パイロットが操縦桿を右に左に捻るが全く離れてくれない。幸い攻撃は全部逸れているが、それでも近くを弾が通過しており次当たっても可笑しくない。
「ダメです!引き離せない!!」
「何としても振り切るんだッ!!」
「クソッタレがぁぁぁ!!!!」
後部魔光砲が攻撃を開始。気休めの牽制目的で弾をばら撒き、相手へプレッシャーを掛ける。当たらずとも弾が近くを飛んで行けば、それだけでエースパイロットでも恐怖心が出てくる。所が相手も腕が良いようで、一向に当たらない。それどころか逆に撃たれて、しかも嫌な振動が機体を揺らす。
「左翼タンク被弾!」
「しまった!魔液*1が噴くぞ!!」
キラキラとした魔液が翼から噴き出す。幸い引火はしていないらしいが、それでもかなりマズい状況であることには変わりない。誰もがダメだと思ったその瞬間、魔信にスカイアイの声が入ってきた。
『
『
『
『
『
次の瞬間、背後にいた戦闘機が爆ぜた。その後方から8機の皇国の戦闘機が飛び出し、接近してくる敵機に突っ込んでいく。そしてその機体達の尾翼には、蒼いリボンが描かれていた。
『フキニー少佐、間に合ってよかった』
「スカイアイ!彼らは、一体!」
『第118戦術飛行隊『メビウス中隊』。私が専属で管制を担当するエース部隊だ。隊長機のメビウス1は皇国ではこう呼ばれている。「リボン付きの死神」と』
「リボン付きの死神か。そうか」
フキニーは今になって思い出した。皇国軍にはエース部隊、或いはエースパイロットと呼ばれる存在がゴロゴロいる事。その中でも最上位のエース部隊。専属管制官を有し、二つ名や機体のカラーリング変更と言った特権が認められている部隊だけを集めた特殊部隊が派遣されている事。そしてその中でも無類の強さを誇るメビウス中隊の事。
最早、恐怖はない。敵としてエースパイロットに遭遇すれば、確実に絶望感に苛まれ恐怖に悶えながら炎に巻かれるだろう。だが味方として肩を並べれば、それはどんな幸運の神様への願掛けよりも信じられる希望の光となるのだ。そんな事を考えていると、いつの間にか編隊は目標のレイフォリア付近にまで到達していた。フキニーは全チャンネル一斉送信に魔信を切り替えると、マイクを持って話す。
「全機!これよりレイフォリア爆撃を開始する!!!!」
『行くぞ!
『レイフォリアまで一直線だ!!』
爆撃機の群れはレイフォリア上空に突入する。当然、対空砲の砲火が空に花を咲かせ爆撃機を襲う。実際それで落ちていく機体もあるが、そんなのお構い無しに突っ込む。
『6番機被弾!墜落します!!』
『24番機もだ!!粉々に吹き飛びやがった!!!!』
『こちら38番機……我、制御不能。栄えある帝国に幸あ——』
「全機怯むな!!爆撃開始!!!!』
爆弾の雨がレイフォリアに降り注ぐ。流石に東京大空襲だとか本土空襲でアメリカがやった無差別爆撃ではなく、倉庫区画や航空基地に絞った戦略爆撃である。まあ風で流れて、ちょいちょい民家に爆弾が突き刺さっているが戦争に犠牲は付き物だ。例えUAVを総動員で爆撃しようと、誰もいないど田舎でもない限り、ほぼ必ず民間への被害は出る。人が多く民家も密集し、軍事施設との距離も近い都市部ともなれば尚の事だ。
『へへっ!食らってみやがれ!!!!』
『ほれほれぇ!天空の神様からの贈り物だとさ!!』
『爆弾のフルコースだ!たらふく食べな!!!!』
この爆撃によりレイフォリア内の航空基地、倉庫及び物資集積所、燃料タンク、兵器工廠はその尽くが破壊し尽くされ、レイフォリアには巨大な火の手が上がった。爆撃は成功である。
同時刻 レイフォリアより西方60kmの海域 究極超戦艦『日ノ本』 艦橋
「艦長。レイフォリア爆撃に参加していたAWACSサンダーヘッドより入電。レイフォリア爆撃は成功し、内部の航空基地は滑走路が完全に破壊され格納庫も大半が倒壊。倉庫、物資集積所、燃料タンクは7割の破壊に成功。兵器工廠は完全に破壊されたとの事です」
「そうか。なら、当初の作戦通りという事だな。これでレイフォリアは丸裸同然だ。残る大きな戦力といえば、海軍の戦艦5隻からなる艦隊位のものだ」
神谷が地図を見ながらそう言うと、宗谷は軽い微笑を浮かべながら余裕たっぷりにこう言った。
「しかしその艦隊も命運は決したも同義でしょう。何せムーの近代化艦隊と我が皇国の精鋭で組んだ臨時艦隊。一応ミリシアルも新鋭艦を出す様ですし、簡単な仕事ですとも」
まあその通りではある。だが戦場では何が起こるか分かった物ではない。流石に我々が負ける確率は限りなく低く、最早奇跡が起ころうと我々の勝利は約束されたも同然だ。だがそれでも、用心に越したことはない。
「宗谷。気持ちは分かるが、あまり敵を舐めたら痛い目見るぞ」
最近は宗谷の様な若い世代……いや神谷も充分に若いが、とにかく最近は皇国軍もそれ以外の公的機関から世論に至るまで、皇国最強ムードとでも言うべき空気がある。ある意味喜ばしい限りだが、このままその空気が増長し過ぎれば確実に災禍を産む。極論を言えば次の戦争では、帝国の立場に皇国がいるかもしれない。この辺りで負けてもいい位だが、流石にそうなって貰っても困る。どうにかしたいというのが、三英傑の率直な感想だ。
「艦長!艦影30隻を探知!!」
「識別は?」
「艦種識別!ムー海軍です!!」
「オーライ。それじゃ、俺達も始めるとしようか。全艦、対空、対潜、対水上警戒を厳とし、合戦に備えよ!!」
いよいよ審判の炎作戦も後半戦に入りつつある。この海戦でレイフォル近海、引いてはムー大陸の安全を確保する。確保後は海兵隊をレイフォリアに殴り込ませる手筈だ。