最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第九十七話天の火

レイフォリア爆撃より1時間後、レイフォリアより西方40kmの海域に大艦隊がいた。ミリシアルからは新鋭魔導戦艦オリハルコン級の『コスモ』を筆頭にミスリル級魔導戦艦2隻、ブロンズ級重巡洋装甲艦1隻、ルビー級駆逐艦2隻からなる混成魔導艦隊『デス・バール』。ムーからは戦艦『ラ・カサミ』を筆頭としたラ・ヴィース級戦艦3隻、ラ・マートン級3隻、ラ・ベルファー級6隻、ラ・ゴーゼルク級12隻からなる第一機動艦隊。そして皇国海軍からは究極超戦艦『日ノ本』を旗艦とし超戦艦『大山祇』『吉備津彦』、要塞超空母『翔鶴』『瑞鶴』、大和型前衛武装戦艦8隻が参加している。

これらの艦隊とは別に後方にロデオス級空母2隻、ブロンズ級重巡洋装甲艦3隻、ルビー級駆逐艦3隻、アイアン級魔砲船6隻、ラ・グレイ級4隻、ラ・クーギュ級4隻、ラ・マートン級4隻、ラ・ベルファー級10隻、ラ・ゴーゼルク級20隻、摩耶型対空巡洋艦10隻、浦風型草薙駆逐艦20隻、神風型駆逐艦10隻からなる機動艦隊が待機している。

この3カ国連合艦隊の目的は、レイフォリアに駐屯するレイフォリア守備艦隊の撃滅と制海権の確保。そして海兵隊の上陸支援である。だが作戦を開始して間も無く、いきなり目標が増えてしまった、

 

「艦長!第七潜水艦隊より、こちらに向かう帝国軍艦隊を補足したとの報告が入りました!」

 

「規模は?」

 

「オリオン級戦艦3、アリコーン級2、アマテル級5、キャニス・ミナー級8!これとは別にヘルクレス級2、オリオン級4、アリコーン級1、ペガスス級2、タウルス級3、アルドラ級6、エクレウス級24!さらに潜水艦20隻も探知したとのこと!!」

 

この2艦隊の陣容に、神谷は少しばかり心当たりがあった。あれは遡る事約2ヶ月前、まだイルネティア島とパガンダ島を解放する前に行われた会議の際にこの艦隊と殆ど同じ陣容を見た事がある。

当時はイルネティア島とパガンダ島を母港にしていた様だが、定期メンテナンスか何かの為に帝国本土に一時帰還するという報告を受けた。こちらとしてもこれ幸いと、そのメンテナンス中に攻撃を仕掛け結果として島は解放でき、現在は知っての通り前線拠点として艦隊の補給港や空軍基地が設置されている。どうやらその時のメンテナンス艦隊が、巡り巡ってレイフォリア救援に駆け付けたようだ。

 

「想定よりも多くなりましたな」

 

「まあこれだけの大艦隊だ。丁度いいくらいだとは思うが……」

 

「何か、ありますかい?」

 

「ジョー。お前、前回の海戦でミリシアルが何したか覚えてるか?」

 

「ん?あー…」

 

主席参謀の牛嶋は思い出した。前回の海戦、俗に言う第二次バルチスタ沖海戦に於いて、ミリシアル側はかなり色々とやらかしてくれた。まずは皇帝による「我の名の下に戦うのを許可する」発言と、その後の大臣が誰かの天皇陛下侮辱発言。次が最も最悪の行為だった、随伴した空中戦艦『パル・キマイラ』による火器管制レーダーの照射。

どちらも普通に宣戦布告に近しい行為であり、外交筋でしっかり抗議して謝罪までしてもらっている。だが問題なのは、ミリシアルは普通にそういう迷惑行為をわざとか偶々かは別としてやるということだ。今回も何か変な事をするかもしれない。

 

「そういやミリシアルの連中、色々とやらかしていたな」

 

「そうだ、そうだった」

 

「おーい通信士。ムーとミリシアル側に映像通信だ。作戦を練り直す」

 

「アイ・サー」

 

この戦争が始まる少し前、ミリシアルとの国交を結んだ辺りから統合軍では魔導通信機の設置が急ピッチで行われた。特に艦船の場合は大型の物を導入できる為、映像付きのリアルタイム通信が受信できるミリシアルに限り可能となっている。尚ムーの場合は、皇国製の装備を多数搭載した『ラ・カサミ』限定となる。

 

「モニターに出します!」

 

『神谷司令、何のご用ですかな?』

 

『全く。これから決戦だというのに、余程の用なのでしょうな?』

 

今回のムー側指揮官は、お馴染みのレイダー。一方のミリシアル側はタキオンという、デス・バール結成に伴い任命された司令官だ。元々は帝都防衛艦隊の指揮官である為、未だに皇国の強さに疑いを持つ派閥の1人でもある。とは言え皇帝陛下直々のお達しもあり、表面上は敬意を評しているが、それでも節々にトゲが目立つ。

 

「これが「決戦を前に親睦を深めましょう」なんて平和的な目的なら良かったんだが、生憎とそうではない。先程、我が方の潜水艦隊が新たに2艦隊を補足した。一方はオリオン級戦艦3、アリコーン級2、アマテル級5、キャニス・ミナー級8。もう一方はヘルクレス級2、オリオン級4、アリコーン級1、ペガスス級2、タウルス級3、アルドラ級6、エクレウス級24。更に潜水艦20隻のオマケ付きだ。

見て分かる通り、見事なまでの主力艦隊。それも戦艦を主軸としつつも、空母を要する機動部隊と来た。流石にこの量、当初の予定通りにとはいけないだろう」

 

『これだけの艦隊がまだ居たのか!?』

 

『神谷司令、何か心当たりは?』

 

「編成から察するに、元はイルネティア島とパガンダ島を本拠地としていた艦隊と、レイフォルと両島の海域を確保していた防衛艦隊だろう。この艦隊達は我々の解放作戦前に、何かしらの理由、恐らくは定期メンテナンスで一度帝国本土に帰還していた。だがメンテナンス中に両島は落ち、今度はこのレイフォリアの決戦に投入されたのだろう。

今、本国で確認してもらっているが…」

 

通信士からの報告書類を渡された牛嶋が、今度は神谷の背後から耳打ちしながら書類を手渡す。一瞥した辺り、そのメンテナンスに行っていた艦隊で間違いないだろう。

 

「確認が取れた。どうやらメンテナンスを終えた後、レイフォリア防衛艦隊に組み込まれる予定だったらしい。どうやら我々のタイミングが、見事なまでに悪かったようだな」

 

『これだけの艦隊が現れたというのに、随分と余裕そうだ。流石は、若きエリートと言った所でしょうか』

 

「余裕?別に余裕なんて無い。戦場に絶対はあり得ない。確かに規模は想定外ではあるが、帝国にとっても天下分け目の大戦だ。そんな国なら予想外の一策や二策、或いは奇策や無謀な策すら講じるものだろう。

我が軍はそういう不測の事態すら予測に入れ、行動するのが基本なのだがミリシアルでは違うのか?」

 

どうやらタキオンとしては「お前の様な若造はお気楽でいい」という意味で言ったらしいが、生憎と神谷もその手の話には慣れている。何せこの年で現在のポジションに立っているのだ。ついでにいえば出自自体も天皇家並みの由緒正しきお家柄かつ、日本でも旧世界でもトップクラスで軍の装備も製造している超大企業の子供。出世するにつれて、嫉妬やら妬みを買いまくりあちこちで色々と嫌味を言われてきた。

そんな訳でこの程度の嫌味や皮肉なら、逆にカウンターを喰らわせるくらいは造作もなくやってのける。今更その程度の言葉の暴力では、神谷の心にはそよ風の様な心地良さすら感じさせるだけである。

 

『し、失礼しましたな元帥殿。しかし我が軍は、事前の通告通り(・・・・・・・)にやらせて頂きます。これは譲れません』

 

「その立場や考えは、我々としても理解している。だが緊急時に備え背後には控えさせて貰うし、その行為も最初に接敵するであろうレイフォル防衛艦隊のみにして頂きたい。

それ以降の今回探知した艦隊戦については、三国連合で行いたいと思うが、異論はあるだろうか?」

 

『ムー海軍としては異論ありません。しかし指揮系統の混乱を避ける為にも、連絡は密に行いたいのですが構いませんか?』

 

「では後ほど、無線のチャンネルを送ろう」

 

『……デス・バールも異論はない』

 

と口では言うタキオンではあるが、その顔面は物凄く不満がある事を雄弁に語ってくれている。別に雄弁に語っていても、言葉にはしてないので聞く義理はない。これでいい。

 

 

 

1時間後 魔導戦艦『コスモ』 艦橋

 

『総員戦闘配置、総員戦闘配置』

 

ブザーと無機質な女性オペレーターの声が艦橋に響く。見た目だけで言えば、様々なディスプレイが何も無いはずの空間に映し出されるという遥か彼方の未来的な空間だ。SFのワンシーンのようにも思える。

だが中身の方は、正直なところを言うと皇国の方が凄かったりするという代物だ。

 

「魔導機関出力安定。魔光呪発式2段燃焼サイクルエンジン起動」

「装甲強化システム異常なし」

「主砲管制システム異常なし」

「誘導魔光弾発射筒魔力注入システム異常なし」

「誘導魔光弾管制システム異常なし」

「魔法力電力変換システム異常なし。誘導電波準備完了」

 

続々と続く「異常なし」の号令と共に、艦長席前の各システムを表示した部分が青く輝く。青は「異常がなく、準備も完了した」という意味だ。

 

「攻撃準備完了!いつでも撃てます!!」

 

「まだ撃つなよ!まずはご挨拶だ……」

 

タキオンの顔に嫌味ったらしい笑顔が浮かぶ。今回のタキオン、いや。ミリシアル海軍の目的はただ一つ。この新鋭魔導戦艦『コスモ』とそれに搭載された天の火、つまり魔導制御型艦対艦誘導弾道ミサイルの華々しいデビューを飾る事にある。

その為にも、単艦での殲滅は絶対条件であった。先程の通信中にあった「事前の通告通りに」というのは、簡単に言えば「この『コスモ』だけで敵艦隊は殲滅するから、お前ら外野は手を出すな」という事である。ムーとしては既に象徴である『ラ・カサミ』と『ラ・イーセ』はお披露目代わりに首都を守るという英雄的スタートを切っているし、皇国としてはミリシアル製ミサイルこと誘導魔光弾というのは、是非とも一度見ておきたかった。そんな訳で両国共に許可している。

 

「通信つながりました!」

 

『私はグラ・バルカス帝国海軍レイフォリア守備艦隊、司令官のアケイルである。何の用だ?』

 

「やっと繋がったか。私は神聖ミリシアル帝国海軍、混成魔導艦隊『デス・バール』艦隊司令タキオンである。航行中のグラ・バルカス帝国艦隊に告げる。我とお前たちの戦力比は明らかである。艦隊ごと降伏せよ。降伏せぬ場合、逃げる事すら許さずにお前たちを全滅させる。一人残らずな。……これは神聖ミリシアル帝国皇帝陛下から、お前たちへの最後の御慈悲だ」

 

尚これ、タキオン及びミリシアルの「例え負けて生き延びたとしても、捕虜には絶対致しません」という宣言である。後からこの事を知った神谷は「シーマンシップって言葉をコイツらに教えてやりたい」と漏らしたとか。

 

『貴様らの艦隊に、我が栄えあるグラ・バルカス帝国艦隊が負けるとでも思っているのか?

三国連合の混成艦隊が相手であっても、我らはお前たちが思っているほど簡単に負ける事はない!!』

 

「何を言っている?大日本皇国もムーもこの海戦に参加しない。彼らはギャラリーだ。神聖ミリシアル帝国のみで簡単に片が付く程貴様らとは、どうしようもない戦力比が生まれてしまったのだ」

 

皇国とムーは参加しない。この言葉にコルネフォロスの艦橋はざわついた。敵は何故か神聖ミリシアル帝国艦隊だけで戦おうと申し立てている。それが本当か嘘かは解らないが、もし本当ならば勝機が見えてくる。何せこちらは以前に、ミリシアル最強の艦隊を殲滅しているのだから。

 

『神聖ミリシアル帝国艦隊のみで戦うだと?皇国に泣きつかなくて良いのか?負けそうになったらすぐに泣きついて、皇国に助けを求めるのだろう?

全世界に、負けそうになったら皇国に助けを求めましょうと宣言してはどうだね?』

 

アケイルは神聖ミリシアル帝国のプライドを刺激し、挑発した。皇国さえ参戦させなければ、例え数で向こうが圧倒していたとしても、神聖ミリシアル帝国艦隊程度ならば戦える。

決して舐めてはならないが、かと言って絶望するほどの相手ではない。それなりにダメージを与えたら、撤退しても本国から文句は出ないだろうし、何より本気で頑張れば倒せる可能性も無きにしも非ず。

 

「挑発しているつもりか?阿呆め、お前たち如きに本国艦隊は出ない」

 

『何だと?』

 

「我が国の最新鋭艦かつ混成魔導艦隊旗艦である、このオリハルコン級魔導戦艦コスモたった1隻でお前たち如きの相手は十分だと言っている。繰り返す。この1隻だけでお前たちの艦隊をたたきつぶすには十分なのだ。

我が神聖ミリシアル帝国の技術力を身をもって知る事になるかもしれない事を幸運に思え。コスモ……これは降伏せぬ場合、貴様らを殺す事になる超戦艦の名前だ。死の寸前まで覚えておけ』

 

アケイルは一瞬何を言っているのか理解出来ずに艦長のイライガを向く。そのイライガもポカーンとした顔をしており、状況が飲み込めてないようだ。

 

「イライガ艦長。私は敵の行動が全く理解出来ないのだが、敵は狂ってしまったのか?それとも我々がおかしいのか?」

 

「たったの1隻で我が艦隊10隻に突っ込んでくるなど、いくら単艦として強力であったとしても自殺行為です。しかも艦隊が後ろに控えているにも関わらず、旗艦が突っ込むなど信じられません。百歩譲って突っ込んだとしても、それを戦術として成立させられるのは大日本皇国だけでしょう」

 

「……敵は上司から責められすぎて狂ってしまっているのか?」

 

グラ・バルカス帝国の常識からもかけ離れた行動に、彼等は理由を理解出来ずに議論を続ける。

 

「敵艦隊が参戦すれば、卑怯者と国際社会に発信するとしよう。仮に1隻で本当に来るならば、これは好機だ!!!」

 

艦隊司令アケイルは、再び無線を手にする。確かに馬鹿みたいな愚かな愚行とすら言える行為ではあるが、武人として、1人の軍人として、敬意を払うのに値する行為でもある。上の無茶な命令であろうと、それを実行する。軍人の職責への忠義は、敵としても天晴れだ。

 

『このグラ・バルカス帝国艦隊に、1艦での突入や潔し!!降伏は無い。我が帝国の強さを誤認したことを後悔するがいい!だが、その潔さに免じ正々堂々戦おう!!』

 

「お前たちはやり過ぎた。我らに殺される事を光栄に思え。この最新鋭かつ超戦艦に負けたのであれば、後世まで言い訳が効くだろう。我が艦と戦った事をあの世で自慢すると良い」

 

タキオンにはそういう武人どうのの誉とかは無く、ただ目の前の艦隊を潰すことしか考えていない様だ。その証拠に、顔には獰猛な獣のような顔を浮かべている。

 

「敵との距離、100kmを切りました」

 

「『天の火』の準備を行え!!目標、敵戦艦3!!」

 

「了解、対艦誘導魔光弾『天の火』、3発発射準備開始。発射筒への魔力回路開放、コアへ魔力充填開始。魔法種別、電1、空2、炎3、爆4……。エネルギー充填70%……80%……100%!!!」

 

「対艦式誘導魔光弾でこのエネルギー充填速度とは……なんという出力か!!」

 

主砲や装甲強化に比べても多くの魔力を使用する誘導魔光弾。艦長の横に立つタキオンは充填速度の速さに驚きの声を上げる。他の艦であれば、まだ4分の1位しか充填できてないだろう。

 

「エネルギー充填完了!!続いて対象座標入力……入力完了!!」

 

「相対速度計算開始………計算完了」

 

「全システム異常なし、誘導魔光弾発射準備完了!!!!」

 

天の火の発射準備完了していく中、イレイザはタキオンの方を向く。

 

「タキオン司令、敵を殲滅してよろしいですな?」

 

「もちろんだ」

 

「これより、歴史的な戦いが始まる!!我が神聖ミリシアル帝国は愚かなる悪の帝国へ神罰を降す!!天の火を……悪魔に落とせ!!!」

 

「天の火、発射!!!」

 

魔導戦艦コスモに備え付けられた誘導魔光発射筒の上部に青い爆発が起こり、甲高い音と共に魔光弾が飛んでいく。中心に魔力をとどめるコアを持ち、コアの周辺が青く輝く。コアの下からは青い光りの尾を引いた。神聖ミリシアル帝国が天の火と称したそれは、空に向かって駆け上がっていった。 

 

「レーダー探知!戦艦『コスモ』より、高速飛翔体の発射を確認。恐らく、例の新型誘導魔光弾と思われます!」

 

「しっかり電探で追えよ。観測班にもデータリンクで情報送れ」

 

天の火が放たれた瞬間は、当然皇国のレーダーがしっかり綺麗に捉えていた。しかも帝国軍艦隊の付近には、既に観測班としてAS5海猫が派遣されている。着弾の瞬間をカメラで捉えるのが仕事だ。

 

「高速飛翔体、時速600……650……700……。凄い、まだ上がる」

 

「この世界の技術力にしては、なかなかの速度だな」

 

「えぇ。しかし巡航ミサイルというよりは、弾道ミサイルですね」

 

「加速止まりました!時速912kmです!」

 

音速の域に一歩及ばない亜音速ではあるが、それでもこの世界では充分に超高性能兵器に該当するだろう。

 

「落下を開始しました!目標は……トラックナンバー209!前衛の戦艦と思われます!」

 

「戦術長。一応聞くが、もしアレがこちらに向けられたとして迎撃できるか?」

 

「レーダー反射面積も普通でステルス性能は無く、尚且つ弾道飛行の亜音速ミサイルですから、我が海軍のミサイル防衛戦術と乗員練度を持ってすれば1艦に飽和攻撃でもされない限り迎撃可能かと」

 

「やはり、そうだよな」

 

確かにこの世界基準での超兵器とは言え、皇国基準ではようやく我々の領域への入場門が見えて来た程度のものだ。宇宙から降り注ぐ大陸間弾道ミサイルすら迎撃可能な皇国海軍をもってすれば、この程度の兵器、造作もない。

 

「着弾しました!映像出します!!」

 

メインモニターに着弾時の映像が流れた。しっかりと命中し、戦艦が爆炎を上げる。だがその光景を見て、中央作戦室にいた全員が驚いた。

 

「これは予想外だな…」

 

「戦艦を一撃ですか……」

 

「思ったより威力がデケぇ。コイツはウチの艦隊でも、ちょいと不味いかもしれませんな」

 

「まあ少なくとも、駆逐艦なら跡形もなく沈むな」

 

そう。単発の威力があまりに大き過ぎたのだ。明らかに対艦用の兵器にしては威力が大きすぎる。少なくともこれまでの基準では、こんな超高威力兵器は見た事がない。伊達に世界一は名乗らない、という事だろう。

 

「敵艦隊、ミリシアル側の攻撃により全艦撃沈されました」

 

「ミリシアルのショーは閉幕したし、次はこっちが本気を見せてやろう」

 

これでミリシアルの士気も上がるだろうが、それ以上に変に自信をつけられて謎の論理による邪魔をして来られては困る。早々に出鼻をくじき、自分達が未来永劫常に世界最強の座に君臨できる道理はない事を教えておく必要がある。

そんな思惑があるなんて知らないミリシアルとムーの艦隊を引き連れて、3ヶ国連合艦隊は敵艦隊を目指す。

 

「対空レーダーに反応!敵編隊、我が艦隊に接近中!!機数130!!!!」

 

「恐らく、先程の艦隊が壊滅したのを受け、予測進路に攻撃隊を派遣した、という所でしょう。長官、ご指示を」

 

「対空戦闘用意!各艦に下令しろ!!」

 

「アイ・サー!対空戦闘よーい!!」

 

警報が鳴り響き、乗員達は大急ぎで自分の持ち場は走る。準備が完了したセクションからは随時報告が上がり、ものの2分程度で準備が完了した。

 

「待機中の直掩機、スクランブル発進させましょう。よろしいですね?」

 

「あぁ。発艦後は艦隊上空にて待機させろ」

 

「アイ・サー。当直航空隊、発艦せよ。繰り返す…」

 

加藤の提案により、待機していた航空隊が発艦する。皇国海軍では出航後は、常に当直の航空隊が待機する様になっている。艦の規模によって変わってくるが最大で『日ノ本』であれば六個航空隊、熱田型なら二個航空隊赤城型の場合は八個航空隊が待機する。

 

「航空隊発艦完了しました!」

 

「よーし、では諸君。歓迎パーティーを始めよう。まずは花火を打ち上げるぞ。12機だ。選定は任せる」

 

「アイ・サー。目標に照準!」

 

「ミサイル攻撃始め!!!!」

 

「前甲板VLS開放!サルボー!!」

 

先手を打ったのは当然『日ノ本』である。前部甲板より対空ミサイル信長が飛び出し、目標目掛けてすっ飛んでいく。明らかに天の火よりも速いミサイルに、タキオンらミリシアルの軍人達は腰を抜かした。

 

「なんだ今のは!?」

 

「こ、皇国の艦対空誘導魔光弾です!!時速……マッハ4.5!?」

 

「何だと!?」

 

ミリシアルには未だ、音速を超える兵器というのは存在しない。天の火の試作モデルは、落下中にブースターに点火して更に加速する代物であった為、一応このモデルは音速を超えはした。しかしブースターに点火した結果、速すぎるのと弾体制御が追い付かずマトモに使える兵器ではなかった。その結果生まれたのが、例の天の火である。

 

「な、なんだこれ!?皇国の誘導魔光弾、反応が小さすぎます!!」

 

「ど、どういうことだ!?」

 

「わかりません!と、とにかくレーダーの反応が、明らかに小さすぎるんですよ!!」

 

皇国のミサイルには、基本的に対レーダー塗料が使われている。物によっては形状からシステムに至るまで、ステルス性を高めた物も存在する程だ。信長の場合、形状は普通の物ではあるが対レーダー塗料とレーダー撹乱システムが搭載されている。

こんな高性能ミサイルに狙われては、帝国軍機もひとたまりも無い。そもそも何の妨害手段も持たない以上、避けようがないのだ。

 

「ミサイル全弾命中。しかし敵編隊、こちらに向かって来ます」

 

「そのまま両用砲郡の射程まで待機だ」

 

「アイ……!?『コスモ』より高速飛翔体の発射を確認!!」

 

「対空用か!!観測急げ!!!!」

 

なんと『コスモ』は、艦対艦ミサイルだけではなく、個艦防空用の艦対空ミサイルも装備していたらしい。尚、この対空ミサイルの名は天の雷である。

 

「高速飛翔体、時速1100kmで安定しました!」

 

「音速に後一歩及ばずか。だがこの世界では脅威になりうるな」

 

「チャフとフレアが通用するのなら良いのですが……」

 

「そればっかりは、情報を入手するか撃たれないと分からないな」

 

こんな風に語っているが、この天の雷は皇国の想像するミサイルとは違う。皇国の対空ミサイルとは、燃料が続く限り目標を追いかけ回す。チャフやフレアで妨害されるか、或いは探知範囲内から離脱できればその限りではないが。

対する天の雷は、言うなれば対空ロケット弾なのだ。弾頭には大型の空中炸裂弾を採用しており、一定の範囲内に物体が入ると起爆という代物である。

 

「高速飛翔体、敵編隊前方にて起爆!」

 

「………恐らくは、空中炸裂弾頭と思われます」

 

「これにステルス性持たれてたら、皇国としても面倒な兵器だったかもな」

 

恐らく皇国の戦闘機の最大高度までは飛んでこれないだろうが、空中炸裂弾の場合は破片をエンジンに吸い込む可能性がある。外部から大量の空気を吸い込むジェットエンジンは、そういうのにかなり弱い。しかも爆発物である以上、運が悪ければ燃料に引火する可能性すらある。そうなればタダでは済まない。

 

「敵機、間も無く射程圏内に入ります!」

 

『こちら艦橋。見張りが目視にて捉えました』

 

「対空戦闘始め!!!!」

 

各艦は持ち前の対空兵装を使い、戦闘を開始する。皇国はお決まりの両用砲群と機関砲群での戦闘だ。だがそれよりも先に、まずは彼らが食いつく。

 

『見えた!敵艦隊だ!!』

 

『各機、対空砲火に注意しつつ攻撃を』

 

『指揮官機被弾!!』

 

攻撃機編隊の右後方から襲い掛かるのは、先んじて発艦していた直掩のF8C震電IIとF8CZ震電IIタイプ・極。しかも今回飛んでいるのは、主力艦隊の旗艦を務める『大山祇』『吉備津彦』の飛行隊と第五航空戦隊の飛行隊である。旧海軍では最精鋭の一航戦、二航戦から馬鹿にされていた五航戦。現在でも一航戦、二航戦は海軍の精鋭航空戦隊として名を連ねている。しかし五航戦も今では、その精鋭に名を連ねている。レシプロ程度に遅れを取る者達ではない。

だが今回は多勢に無勢。すり抜けられてしまう。すり抜けた編隊は、そのままミリシアルとムーに攻撃を集中するべく群がっていく。

 

「敵機、来ます!」

 

「対空魔光砲、攻撃用意!」

 

この『コスモ』の側面には、多数のアクタイオン25㎜三連装対空魔光砲が装備されている。それが、一斉に艦隊の上空に向けられた。

 

「対空魔光砲、自動呪文詠唱完了。属性比率、爆21風65炎14!連射モード切替完了。魔力充填率70、80、90、100%、魔力充填完了!対空魔光砲、発射準備完了!」

 

発射口が仄かに赤く輝き、赤い光の粒子が砲口に吸い込まれていく。その様子は、安定のSF感満載の光景だ。

 

「対空戦闘開始!」

 

「対空戦闘開始!」

 

アクタイオンの攻撃が始まる。赤い光がシャワーのように打ち出される様はまるで、ヤマトのパルスレーザー砲の如く。尤もパルスレーザー砲並みの威力はなく、航空機にしか使えない。何処ぞのメダルーサ級にしたみたいな事はできない。

 

「ミリシアルが始めたな。ミニラル艦長!」

 

「ハッ!総員!ムー海軍の誉れを見せよ!対空戦闘始め!!!!」

 

日本が魔改造した『ラ・カサミ改』は、皇国海軍を除けばこの世界の艦艇で最も高度な対空戦闘が可能となる。補助砲等の単装砲群は全て60mm機関砲であり、4基の49式対空戦闘車の砲塔とAIM63烈風を120発搭載している。負けるはずがない。

 

「ミニラル艦長も始めたか。我々も始めよう!主砲三式、撃ち方始め!!!!」

 

ラッサンの指示で『ラ・イーセ』も攻撃を開始。艦隊の上空は対空砲火の爆発に彩られ、帝国軍機を多数撃墜していく。だがこの砲火を越えて突っ込んでくる、強運と確かな腕を持つパイロットも存在する。

 

「敵機直上!急降下ぁぁぁ!!!!!」

 

「アクタイオンに魔力をありったけ流し込め!!!!」

 

魔導兵器の特性は、エネルギー兵器とよく似ている。兵器含めた各装置は魔力を流し込めば流し込む程、性能を底上げすることが可能だ。だがその一方で寿命を著しく縮める上、限界を越えれば壊れる。場合によっては爆発も有り得る。だがこういう緊急時には、限界域まで酷使できるのはアドバンテージとなる。

 

「迎撃間に合いません!!!!」

 

「くっ!!衝撃に備え!!!!!」

 

タキオンがそう叫んだ瞬間、接近してくる敵機は赤い光に貫かれて爆発した。見れば前方にいる『日ノ本』の甲板に、赤い光を灯した砲塔がこちらを向いていた。

 

「まさか、今のは……」

 

「わ、私見ましたよ。今のは、あの戦艦の攻撃です……」

 

「そ、そんな馬鹿な……」

 

タキオンは目の前で起こった事が理解できなかった。魔法でレーザーを放つことは、アガルタ法国の艦隊級極大閃光魔法の例があるように可能ではある。しかしチャージが必要であり、即応性には欠ける兵器なのだ。

 

「なんという技術力か……。皇国はまさか、魔法を科学で解明したとでも言うのか…………」

 

タキオンは愕然としているが、これは科学の産物である。皇国ではお馴染みの兵器TLSなのだが、それを知った時のタキオンはどんな反応をするのだろうか。程なくして敵編隊は殲滅され視界内には、敵艦隊が入ってくるようになる。

 

「この戦いを終わらせるとしよう。統制波動砲戦よーい!波動砲への回路開けッ!!!!!」

 

「アイ・サー。プラズマ粒子波動砲への回路開きます。非常弁、全閉鎖。強制注入機作動」

 

「艦首解放、プラズマ粒子波動砲展開」

 

ムーとミリシアルの戦艦が砲撃を始める中、皇国海軍は決戦兵器を使う。ミリシアルは天の火という超兵器を見せてくれたのだから、こちらも見せてやるのが筋というものだろう。

 

「安全装置解除」

 

「セーフティーロック解除。強制注入機の作動を確認。最終セーフティー解除。トリガー、艦長に回します」

 

「艦長、受け取った」

 

「薬室内、プラズマ化粒子圧力、上昇中。86、97、100。エネルギー充填、120%!!」

 

「波動砲、発射用意。対ショック、対閃光防御」

 

艦橋のガラスに防護シャッターが展開され、外の様子はシャッターに搭載されてるディスプレイに表示される。

 

「電影クロスゲージ、明度20。照準固定!」

 

スコープ内に表示される各艦艇とのリンクも『接続』から『同期』という文字に変わり、全艦が同期し射撃準備完了の合図であるブザーも鳴り響く。

 

「プラズマ粒子波動砲、発射ァァァァ!!!!」

 

この一斉射により、敵艦隊は蒸発。唯一生き残った潜水艦隊も血祭りに挙げられ、ここにレイフォリア近海の制海権は確保された。

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