最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

124 / 141
第九十九話古き最強と新しき最強

合流より数分後 集結地点 納屋

「失礼します、皇国の絹松大佐をお連れしました」

 

「入れ」

 

ミリシアル側の下士官に連れられ、一応の拠点となっている納屋に案内された。中にはミリシアル側の代表者達2名が待っており、片方はこちらを蔑む様な目を、もう片方は穏やかかつ何とも申し訳なさそうな目をしている。こうも丸っ切り対局な目を同時に向けられる事は、中々ないだろう。

 

「貴様が皇国の士官だと?いやいや、良くぞ参られた!尤も!!我が軍のように、鉄風雷火吹き荒れる中を降下する度胸はない様だが、それで良く間に合ったものだ。良い練度をしている」

 

蔑む様な目をしていた将校がそう宣う。開始3秒でもうコイツとは話す事が無い事が分かった訳だが、だからと言ってスルーする訳にもいかない。

 

「えぇ、ありがとうございます」

 

堂々と、一切の曇りない目と笑顔でそう答える。向こうは嫌味100%で言ったのに、逆に純度120%の笑顔で返されて困惑した表情を見せながらも、咳払いして話を戻す。

 

「ふ、ふむ!悪くない士官教育がされているようだ。私は神聖ミリシアル帝国参謀本部、ジーツ大佐である!本レイフォリア降下作戦の為、本国より派遣されてきた参謀であり、貴様の様な青二才とは違う高貴な血を引くエリートである!!本作戦中は、私の指示に従ってもらう!!!!」

 

「嫌です」

 

「そうだろうそうだろう、感謝……ん?貴様、今なんと」

 

「ミリシアル軍の指揮下には入らない、そう言いました」

 

当然である。絹松率いる第一空挺団は何処まで行っても大日本皇国軍であり、命令権を有するのは大日本皇国である。勿論正規の要請や、作戦の内容を鑑みて指揮権を貸与する場合もある。

だが今回はこのジーツという参謀が口で言っているだけで、命令書も無ければ事前連絡も無い。であれば従う道理はない。

 

「き、貴様!!それが何を意味するのか分かっているのか!!!!」

 

「さぁ?」

 

「貴様は今!!貴族たるこの私を侮辱したのだ!!!!ミリシアル人であれば、不敬罪で牢屋に叩き込む所であるぞ!!!!!!」

 

「まあまあジーツ大佐殿、ここは落ち着きましょう。ほら、こんな男の対応なんて些事は私がやっておきますから、兵達の鼓舞をお願いします」

 

そう言ってジーツを宥める隣にいた士官。言っている言葉自体は棘があるが、悪意や敵意というのを感じない。寧ろ何処か申し訳なさそうにも聞こえる。

 

「しかしだな!」

 

「兵を鼓舞する事は私でもできますが、大佐殿であればこそ兵士達の士気が上がるというもの。どんな精兵も、士気が低ければ被害が出るというものでしょう。ここは私にお任せください」

 

「そ、そうか?であれば私は兵士達を鼓舞するとしよう!!」

 

そう言ってジーツは絹松を押しのけ、そのまま外に出ていく。残った士官が溜め息を吐くと、こちらに頭を下げてきた。

 

「まずは数々の非礼、どうかお許しください。絹松大佐殿」

 

「お、おぉ」

 

「申し遅れました。私は第506特別強襲大隊にて大隊長を務めております、オービ中佐です」

 

「どこかで見た事あると思ったら……」

 

一度、作戦会議で顔を見た記憶がある。今回の降下作戦は殆どが神谷ら軍のトップ層が決めている上、色々とゴタゴタがありすぎてロクに顔合わせすら出来ていなかった。とは言え文書でのやり取りはしているので、作戦の共有に問題はない。

 

「どうもお久しぶりです。しかし何故、皇国軍がここに……。やはり我が軍の動きは察知されていましたか?」

 

「……幾ら何でも、これだけの大部隊が動けば察知くらいする」

 

「では何故動いたかも?」

 

「詳しくは知らないが、まあ予測はつく。要は箔を付け、権威を守りたいって事だろ?」

 

「お恥ずかしながら。しかし今回の一件、司令部やましてミリシアルの総意ではありません。全ての元凶は純国派と呼ばれる、簡単に言えば「ミリシアルこそが至高の国家であり、全ての国家はミリシアルの名の下にあるべき」と考える連中です。この派閥に属するか、或いは考えに傾倒する高官達による独断でした」

 

オービが言うには、この純国派というのはミリシアル最強伝説から未だ脱却できないどころか、「ミリシアルこそが神である」とすら言いかねない程の新興極右派閥らしい。数こそ少ないが所属する人間が有力貴族やら大富豪やらで、数の割に強力な力を持っているそうだ。さっきのジーツもその派閥の人間だそうで、作戦の強行を主張した元凶らしい。

 

「なんというか、大変だな。そっちも……」

 

「幸いマトモなのが多いですから、まだ救いはあります。それに我々も第一空挺団という、思ってもみなかった幸運に恵まれました。約1名違う考えがいますが、我が部隊は第一空挺団と共闘する事を心待ちにしていました。どうかここは、共に戦ってはくれませんか。レイフォリアで圧政に苦しむ人々と、世界の平和の為に」

 

「そんな事を言われて、断れる皇国軍人はいない。何より俺達は、その為に来た。本隊を助ける為に共に暴れよう」

 

絹松とオービは固く握手を交わす。ジーツは嫌いだし信用もできないが、彼らは信用できる。彼らだけは戦友として、共に戦場を駆けられるだろう。

 

「では早速、状況と情報を共有しましょう。我が部隊は大隊とは付いていますが、その規模は通常よりも大型です。1200名の兵士で構成されていますが、現状で生存が確認できているのは403名。3分の2が戦死か行方知れずであり、装備と弾薬を掻き集めていますが足りるかどうか……。恐らく森林にはまだ我が部隊の者が数多く残っているでしょう」

 

「我が第一空挺団は現在、そちらの兵士を捜索・救助中だ。既に200名近くを確保し、随時合流させる。また途中でミリシアルと帝国の武器を集めて貰っているから、取り敢えずの武装は問題ないだろう。

あぁ、我が部隊の損害は0。欠員もいない。装備についても全員が規定通りの装備を持っているし、援護も期待出来る」

 

「援護ですか!?」

 

「現在レイフォリア沖に進出真っ最中の神谷長官座上艦、究極超戦艦『日ノ本』より支援の為に航空隊が発艦している。こちらの要請に合わせて、攻撃してくれるはずだ。それに上空には、我々が乗ってきた輸送機が装甲車を載せて飛行している。

そこで我々は航空隊が対空砲を破壊した後、装甲車を投下。これに乗り込み、沿岸砲陣地を破壊するプランを提案するがどうだろうか?」

 

第一空挺団とは言えど、一応は歩兵部隊。その為、各種装甲車も配備されている。第二空挺団の場合は機甲部隊、第三空挺団に至っては46式戦車すら有する。

これら車両は空挺部隊の降下後、要請に応じて投下される事が多い。更には所謂クレートも装備されており、オーダーすれば即座に配達される。とは言えこれは、あくまでも制空権が確保されていることが大前提であり、制空権未確保の場合は歩兵のみの降下や同時に投下する場合もある。

 

「装甲車があるのはありがたい!是非お願いします!!」

 

「しかし、となるとジーツ大佐が問題か……」

 

「ご心配なく。あくまであの男は、階級こそ私の上ですがオブザーバーです。提案はできても、命令はできません。最終決定者は私です」

 

「なるほど。文字通りのお飾りというわけか」

 

「それにしては、大音量スピーカーで常に騒音を撒き散らしてくれますがね」

 

どうやらオービも、ジーツは大っ嫌いらしい。嫌味が止まらない。こちらとしては、寧ろその方がやり易い。人を纏めたり或いは仲良くするのに手っ取り早いのは、明確な敵を作ってしまうこと。ジーツにはその役目を負ってもらうとしよう。

 

「集合!!」

 

納屋の外に出てオービがそう言うと、ミリシアルの兵士達は即座に整列。これまで見てきた異世界の軍隊の中でも、抜きん出て動きが機敏で無駄がない。どうやら精鋭である空挺に配属されているのは、伊達ではないようだ。

 

「我々は現在合流を目指している戦友達を待ち、然る後に当初の予定通り沿岸砲陣地に向けて進軍する。知っている者も多いだろうが、今回の作戦では皇国の第一空挺団との共闘作戦となる。今の内に挨拶しておけ。

それからこちらが、第一空挺団の団長、絹松大佐殿だ」

 

「大日本皇国陸軍飛行強襲群、第一空挺団団長!絹松康成大佐だ。君達と戦えること、嬉しく思う。恐らく同じ空挺である以上、今後とも何かと共に戦う事や訓練でも会う事だろう。今回はその第一歩だ。まずは生き残って、終わったら酒でも飲もう。あぁ、勘定は割り勘で頼むぞ?」

 

最初こそミリシアル兵の顔は強張っていたが、後半及び最後の部分で何人か吹き出し笑うのを堪えていた。取り敢えずこれで、少しはとっつき易いイメージになっただろう。

集結地点で合流を待っている間に、絹松は航空支援を要請。一部対空砲を破壊し、その間にクレートと車両の投下をする算段をつける。暫くすると、続々と兵士達が合流。装備も整い、進軍を開始した。

 

 

 

数十分後 集結地点近くの平原

「オービ大隊長、ここで止めてくれ。作戦を始める」

 

「了解です。止まれ!」

 

何もない、だだっ広い平原。おそらく明るければピクニックに最適な、子供が大はしゃぎするような場所だろう。だが生憎と暗くて何も見えない。

 

「始めろ」

 

絹松の指示でまずは航空隊が動き出す。空中で待機していたF8CZ震電IIタイプ・極8機が、レイフォリア内部に突入するべく最大推力で突っ込んでいく。

 

「全機!高度30でホバリング移行!!間違えて地面にキスするなよッ!!!!!」

 

ステルス機である以上、帝国製レーダーでは一切感知されない。帝国軍は先のミリシアル空挺部隊の侵入に気を取られ極の発見が遅れてしまい、気付いた時にはもう目視で捉えられる程に接近を許していた。

 

「プルアップ!!からのホバリング!!!!!」

 

各部のスラスターに物を言わせ、無理矢理急減速しホバリングに移行。殲滅が始まる。

 

『おっ始めようぜ!!!!』

 

『喰らってみやがれ!!』

 

8機の極が暴れ回る。機首には七銃身30mmバルカン砲4基と60mm機関砲2門を搭載し、胴体には連装レールガン2基とTLS1基、更には多目的ミサイルランチャーまで搭載している。こんなのがホバリングしながら、ぐるぐると周囲を焼き払えば跡形も残らない。しかも単独でホバリングするのではなく、8機がまるで歯車のように回転するのだから満遍なく、常に弾幕に晒される状況だ。これでは対空砲を向ける以前に、逃げることもできない。

 

「よーし周囲の対空砲は食い散らかした。撤収!!」

 

極は1分程暴れると、とっとと撤収。まるで竜巻の様に瞬間的に破壊を齎し、すぐに消えてしまった。いきなり何処からか攻撃を受けたかと思いきや、犯人は1分間で周囲の対空砲を破壊し尽くし、他には目もくれず即座に撤収。こんな通り魔の様な襲撃に、帝国軍の司令部は頭を抱える事態だった。

そんな最高の陽動が行われる中、平原には次々に装甲車が着地。しかもパラシュートではなく、自由落下で投下して姿勢制御用のスラスターで減速させながら投下するという方式である為、展開速度もかなりの物だ。

 

「ミリシアル兵を中に乗せろ。俺達は屋根に乗るか飛ぶ!全周警戒しつつ準備でき次第、即時出発!」

 

投下されたのは47式指揮装甲車3両、44式装甲車イ型20両、44式装甲車ロ型6両、44式装甲車ハ型3両、39式偵察車9両、40式小型戦闘車40両、WA1極光360機という、かなりの数だ。

これに加えてクレートには38式携行式対戦車誘導弾、33式携行式対空ミサイル、C5高性能プラスティック爆薬、そして一個小隊分の装甲甲冑及び兵装が収められていた。これら武装を手早く回収していると、ミリシアル兵にとっては聞いたことのない、逆に皇国兵にとっては聞き慣れている上に今の状況では聞きたくない爆音が聞こえてきた。

 

「おい!なんだこの音は!!」

 

「分かりません。絹松大佐殿は分かりますか?」

 

「装備回収、移動急げ!!報告!!!!」

 

『東南東方面より、敵ヘリコプター接近中!数12!スタブウィングにロケット弾、機体側面に機関銃らしき装備を認む!!』

 

そもそも航空機自体が陸上戦力にとっては天敵であり、歩兵は愚か戦車すらも無力なのは知っての通りだ。その中でも現代戦で尤も会いたくない兵器と言っても差し支えないのが、重武装のガンシップと呼ばれる攻撃ヘリコプターである。

ヘリコプターというのは固定翼機よりも武装は少ないが、ホバリングにて空中で停止できる。いくら武装が少なかろうと、当たればミンチ肉に加工される武装が搭載されているのだ。厄介度で言えば、攻撃機よりこちらの方が上だ。

 

「なんなのだ!そのヘリコプターとかいうのは!!!!答えろ皇国の大佐めが!!!!」

 

「お荷物は黙ってろッ!!!!」

 

絹松に怒鳴られ、さっきまでの威勢は何処へやら。ジーツはビクッとすると、そのまま黙った。これで横の問題は片付いたが、目の前のヘリコプターの方が問題だ。艦これユーザーにはお馴染みのカ号観測機みたいな、オートジャイロが出てくるのなら分かる。まだ姿を見ていないとはいえ報告で「ヘリコプター」と明言している以上は、メインローターとテイルローターを持つ想像通りのヘリコプターなのだろう。そんな機体を持っているというのは、中々に予想外だ。

 

「迎撃しろ!!近付けさせるな!!!!」

 

甲冑のヘルメットには録画機能もあり、常に映像記録として残っている。後からデータを抜き取って解析に回せば、幾らでも装備や性能の予測検証は可能だ。ならば今は返り討ちにするのみ。

 

「急げ!ヘリコプターに対処しろ!!」

 

「いいか!!奴はどうせフレアなんざ持ってない!!しっかり狙えば当たる!!!!」

 

「ターゲットロック!」

 

33式を持っている兵士達がコンピューターを起動させヘリコプターにロックすると、ピーーという電子音が鳴る。ヘルメットのHUDにもヘリコプターのターゲットボックスが、ロックオンを示す赤いマークに切り替わり周囲に小さく「Lock」の文字が浮かび上がる。

 

「行け!!」

 

引き金を引くと同時に、ミサイルが飛び出しヘリコプターに吸い込まれる様に命中。案の定フレアやチャフの類は装備してない様で、何の妨害も無くミサイルが命中。爆発四散して、地面に落ちた。

 

「クリア!」

 

「よーし!急いで逃げるぞ!!今ので絶対バレてる!!グズグズしてたら、二階級特進コースの最短ルートだ!!!!」

 

急いで平原から逃げ出し、目的の沿岸砲陣地へと向かう。20分程で目的地に到着し、最終確認の為にドローンを投入して偵察を行う。なのだが、ここでジーツがまた喚き出した?

 

「早く突撃命令を出さぬか!!」

 

「ジーツ大佐殿。現在は偵察中です、今しばらくお待ちを」

 

「黙れオービ!こんな森の中に隠れるなぞ、我が軍の沽券に関わる!!直ちに兵を出したまえ!!!!」

 

さっきからこうも喚き散らかされては、うるさくて敵わない。ただでさえ装甲車なのだから密閉空間である事から声が意外と響くというのに、こうもギャンギャン狂犬の様に喚かれては増幅されて音波兵器だ。

 

「さっきから聞いてりゃ、うるせぇんだよおっさん。黙れ」

 

「き、貴様ァ!!今の物言いといい、さっきの物言いといい、私に敬意を払わないとはどういう事かッ!!!!!!」

 

「俺は日本人だ。テメェが貴族だろうが何だろうが、日本人の俺には関係ない。そして軍の階級では、他国とはいえ同じ大佐。同等だ。一応初対面だから敬意を払ってやっていたが、テメェみたいな奴に払う敬意はない」

 

そう言いのけた絹松に、ジーツは顔をまるで1000℃に熱した鉄球のように真っ赤にしながら詰め寄り、そのまま襟首を掴もうとしてくる。だがジーツは軍人とはいえ頭脳労働がメインの参謀であって、対する絹松は同じく頭脳労働やデスクワークメインになっているとはいえ、未だに訓練に混じって団員達と汗と偶に血を流す現役の精兵。遅れをとるわけもなく、軽く遇らわれて終わった。

 

「この車から出てけー」

 

目を回しているジーツを車内から文字通り摘み出し、そのまま外に放り出す。素早く扉を閉めて鍵をかければ、向こうから開けることは出来ない。外で扉やら装甲板をバシバシ叩いて、恐らく入れろとか何とか叫んでいたのだろうが、勇気あるミリシアル兵2人と団員2人がジーツを「作戦に致命的な障害をもたらす危険因子」という事にして、ロープでぐるぐる巻きにして口を猿轡で塞ぎ、適当な木に括り付けてやったらしく、すぐに静かになった。

 

「オービ中佐。偵察の結果だが、これを見てくれ。陣地周囲には車両阻害用のコンクリートブロックが設置され、塹壕が幾重にも張り巡らされている。機関銃トーチカも合計8箇所ある。戦うことになるのは4箇所だろうが、それでも面倒なことこの上ない。

野戦砲、対戦車砲の類はないが、代わりに後方に大型の迫撃砲がある。オマケに装甲車も配備されている始末だ。最早陣地というより、要塞だろう」

 

「これは面倒ですね。それにしても、よくこんなに分かりますね。流石は皇国の精鋭部隊だ」

 

オービはどうやら、このガジェットを精鋭部隊専用の特殊装備だと思っているらしい。今回偵察に使っているマイクロドローン及び蝶は、一般部隊にも広く配備されている装備である。マイクロドローンは兵士1人1人が必ず携行する必須アイテムだし、蝶と子機の蜘蛛は分隊に数台が配備されている。

 

「これは通常装備だ。通常の部隊にも配備されている」

 

「…………えぇ?」

 

「情報は大事だという方針で、全員が必ず携行している装備だ。銃と同じだよ」

 

オービは信じられないという顔をしていたが、一応今は作戦中。すぐに顔は真剣なものに戻り、作戦を決めていく。

 

「私としては、皇国の装甲車を前面に押し出して正面突破を狙いたい。絹松大佐殿ら空挺団頼みの作戦ですが、どうかお願いできませんか……」

 

「無論、先陣は我々が切る。44式ハ型を後方に配置してトーチカを破壊させ、装甲車と装甲歩兵を盾に塹壕へ突入。砲台を目指す、というのでどうだろう?

部隊間の連絡を密にする為、そちらにも我が部隊の人間を一個小隊程お貸しする。客人だからとの気遣いは無用、好きに使ってくれ」

 

「ありがたい。では作戦はこれでいきましょう!」

 

作戦は兵士達に伝達され、すぐに動き出す。東の空が白み始め、もうすぐ夜明けだ。今日、歴史は動く。レイフォリアは今日解放される。その尖兵こそ、この決死隊である。その事実に兵士達は否が応でも士気が上がり、自然と笑みが溢れる。世界が違かろうが、人種が違かろうが、男というのは大体こういうノリは大好きで、身体が勝手に順応するものらしい。

 

『作戦、開始』

 

絹松が無線で指示を出すと、兵士達が一斉に動き出す。初手は44式ハ型による砲撃だ。ハ型は見た目こそ36式機動戦車と同じように、装輪式の車体に戦車砲が載っている。だが任務は全く違う。36式は「戦車」というだけあって、対戦車戦闘を念頭に開発された装輪戦車である。対してハ型は歩兵への支援が目的であり、装甲車や今回のようにトーチカや屋内陣地の様な、歩兵では対処し難い障害を排除するのが主目的である。

とはいえ、それでも主砲に44式150mm速射砲を搭載しており、専用砲弾を用いればMBT相手でも戦える代物ではある為、その攻撃力は戦車と同程度でもある。

 

「目標発見!距離1500!!」

 

「砲撃用意!単発射撃で行くぞ!!弾種、対戦車榴弾!!」

 

リボルバー式の弾倉が回転し、対戦車榴弾が装填されているチャンバーで停止。レールが伸び、砲弾を薬室へと送り込む。

 

「装填良し!」

 

「他の車両と合わせ……」

 

「全車砲撃準備完了です!!」

 

「なら撃つ!撃てぇ!!」

 

44式150mm速射砲から放たれた砲弾はトーチカに命中し、モンローノイマン効果により厚いコンクリートを突破して、中にいる兵士をジェット噴流で殲滅。例え生き残ってしても、コンクリートが崩れ瓦礫に埋まってしまい、すぐに戦える状況ではないだろう。少なくとも最も重要な機関銃は、瓦礫の下敷きで使い物にならない筈だ。

 

「命中!!目標沈黙!!!!」

 

「よーし!次弾、対人キャニスター!!突入を援護する!!!!」

 

トーチカが破壊されたのと同時に、次々に装甲車が突入。障害物がないコースや、障害物があろうと上手いこと避けて無理矢理突破して塹壕に取り付く。

 

「敵装甲車!!皇国の車両だ!!!!」

 

「クソッ!!ミリシアルが来たのは知ってるが、なんで皇国がいるんだよ!!!!!」

 

「あの攻撃を受けたんだ!!数は知れてる!!押し切れ!!!!!!」

 

帝国兵達も負けじと機関銃とライフルを撃ちまくり、装甲車を撃退しようと奮闘する。物にもよるが、こういう装輪式の装甲車は装甲が薄い。火力を集中させれば、ちょっとしたダメージは与えられる。そう思っているらしい。

だが生憎と44式の装甲は、歩兵火力ではまず撃退できない装甲を持ち、内部機構も帝国基準では新しくとも、皇国基準は枯れまくった技術であり頑丈にできている。その程度ではビクともしない。

 

「行け行け!!」

 

こちらからも牽制射撃を加えつつ、ミリシアル兵を塹壕に投入していく。皇国兵はジェットパックで迂回しながら塹壕に飛び込むか、極光と共に先んじて飛び込んでいく。

 

「クリア!」

 

「行くぞッ!!バンカーに雪崩込む!!!!

 

「おいミリシアル兵!!俺達が盾になる!!後ろから撃て!!!!」

 

「しかし!」

 

「心配すんな!!これが装甲歩兵の戦い方だ!!!!」

 

装甲甲冑を纏った団員が前に出て、その一身に銃弾を引き受ける。だが一切通用せず、逆に重火器で応戦していく。60mmオートライフル砲に5.7mmバルカン砲、場合によっては火炎放射器を装備している。塹壕では会いたくない装備ばかりだ。

 

「俺達も負けるな!!撃ちまくれ!!!!!」

 

ミリシアルは魔法を使うだけあって、銃の方もかなり違う。弾丸はビーム弾みたいにカラフルだし、音も銃声の様に重苦しい後ではなく、SFチックな音がする。まるでスターウォーズだ。

敵を蹴散らしながら砲台への入口となるバンカーへ進撃するが、どうやら帝国兵が逃げながらも装甲扉を閉めた上で鍵まで掛けたようで中に入れない。

 

「扉ぶっ壊すか。テルミット持ってこい!!」

 

「いや、ここは我々に任せてくれないか?」

 

そう言ってミリシアル兵の中でも、少し特殊な見た目の男が前に出てきた。他にも何人かいるのだが、どういう訳かローブを纏っているのだ。その男は懐から短い杖を取り出して構える。

 

「魔法か!!」

 

「ご明察。ではお見せしよう、皇国兵の諸君。

我が手に集いし炎の息吹よ、我が眼前の障害に破滅を与えよ。ファイアーブラスト!!」

 

バスケットボール程の火球が扉にぶつかると、大きさに見合わない爆発をして扉を跡形もなく吹き飛ばした。間髪入れず、中に制圧射撃を加えた上でグレネードを叩き込む。

 

「魔法スゲー……」

 

「こればかりは皇国でも無理だわ」

 

「ふふん。これでも我が国は『世界最強』と呼ばれているのだ、魔法だけは君達にだって負けんよ」

 

そう得意気に胸を張るのは、トバイアス魔導中尉。ミリシアル軍の中でも特殊な、魔導歩兵という兵種の士官である。要は魔法使いであり、魔法によって兵士達をサポートする。トバイアスは攻撃型だが、この他にもバフを掛ける支援型がいる。どの魔法使いも治癒魔法は使えるので、緊急時には衛生兵としても活躍する。

 

「クリアー!!」

 

バンカーの中に雪崩れ込む兵士達。ここでそのまま地下に降りて砲台を破壊する部隊と、更に奥の第二陣地に攻撃を仕掛ける部隊に別れる。トバイアスは地下、対してジーツを縛り上げた勇敢な4人は第二陣地組である。

 

「中尉!扉を開けてください!!俺が弾幕で牽制します!!!!」

 

「待て!!」

 

佐良山が止める。佐良山のバイザーの情報を浪川に共有し、外の映像を送る。どうやら外には既に敵方の装甲車が待ち構えており、かなりの兵士が待機している。この状態で扉を開ければ、幾ら浪川の装甲甲冑でも持つか微妙なところだ。

 

「佐良山中尉、どうする?」

 

「……あっしと浪川くんで突破しましょうかい?」

 

トンガーとジャリノも佐良山を見る。だがこの程度なら、やり用はある。こちらにはアレがある。

 

「極光、頼む」

 

『任せておけ!』

 

外の塹壕からぐるっと大回りで進撃してきた極光が、全くノーマークだった側面から攻撃を仕掛ける。極光には対戦車ミサイル旋風を搭載したランチャーが搭載されており、46式をも破壊せしめる威力を持つ。こんなミサイルを食らったら、幾ら装甲車でも一溜まりもない。

 

「今だ!!」

 

佐良山が勢いよく扉を開けて、一気に兵士達が飛び出す。浪川の他、3人の装甲歩兵が素早く外に出て牽制射撃代わりに弾幕を貼り、その間に遮蔽物へ兵士達が駆け込む。

 

「浪川!!その調子で引きつけろ!!!!」

 

『了解!!!』

 

佐良山はその間にバイポッドを下ろし、地面に固定。そのまま狙撃で、高脅威目標から順に撃退していく。マシンガンナー、指揮官と思われる奴といった者を排除していけば、それだけで楽になる。

 

「俺が抑える!!トンガー頼む!!!!」

 

「おう!!突っ込むぞ!!!!」

 

「うっしゃぁぁぁ!!!!!!野郎共、行くぞーー!!!!!!!!」

 

トンガーとジャリノを先頭に、ミリシアル兵は塹壕を伝ってハンガー方面に突っ込む。団員達も負けじとそれについて行き、帝国側も兵士達が銃剣を装着して迎撃してくる。そんな訳で塹壕内で衝突し、そのまま接近戦や殴り合いに発展しつつあった。

 

「うおらぉぁ!!!!!」

 

「ぐっ!」

 

ミリシアル兵は防弾チョッキやアーマーを着込んでおらず、刺されれば致命傷となる。だが皇国の場合はというと………

 

「死に晒せぇぇ!!!!!!」

 

バギンッ!!

 

「んな小刀が通用するかよッ!!!!!」

 

追加装甲を装着し12.7mm弾にも耐えられる装甲板の前では、銃剣はマジで刃が立たない。それどころか、銃剣の方がへし折れてしまう。

しかも空挺甲冑にも装甲甲冑程ではないが、パワードスーツ機能が標準搭載されている。装着者のパワーを増幅させる為、骨を握り潰すくらい造作もない。そんなパワーで殴る蹴るの暴行を加える為、一撃で撲殺されてしまう。

 

「銃剣突撃なんざ効かん!!正面から叩き潰していけ!!!!」

 

団員達は銃剣突撃に怯むことなく、真正面から叩き潰していく。一方のミリシアル、というかトンガーとジャリノは凄まじかった。

 

「うりゃぁぁぁ!!!!!!」

 

トンガーに銃剣を構えて突っ込んでくる帝国兵が迫る。例え訓練を積んだ精兵だろうと、死の恐怖に一瞬反応が遅らせる位の気迫がある突撃だ。

だがトンガーは一歩前に踏み出し、自分の体に刺さる前に素早く帝国兵の首をナイフで切り裂き、逆に返り討ちにしてしまう。

 

「仲間の仇!!!!」

 

「避けんなよ!!!!!」

 

更に後方から2人突っ込んでくるが、落ち着いて素早くアンバーマシンピストルを撃つ。正確に眉間を撃ち抜き、トンガーは前へと進む。

 

「この程度で俺は止まらん」

 

トンガーがエリートの洗練された戦い方なら、専任のジャリノは野蛮な蛮族染みた物だった。

 

「おんどりゃぁぁぁ!!!!!!!」

 

「いやっふぅー!!!!!」

 

アサルトライフルのゾイサイトで、まるで野球でもするかの様にフルスイングで殴り飛ばす。あまりに力が強すぎて、帝国兵の頬はひしゃげている。多分これ、頬骨が折れたか破砕されている。

 

「ジャリノ選手ホームランってな」

 

得意そうに笑みを浮かべると、ジャリノは手近な多分元々柵か何かの柱だった木の棒を拾う。

 

「よっしゃ!お次は千本ノックでもやったろうか!!!!」

 

そう言うとジャリノは部下の兵士に、グレネードを投げてもらう。ただ方向が、まさかのジャリノの方向なのだ。

 

「娘はパパに優しくしろー!!!!!!」

 

そう叫びながら、グレネードを敵のいる方向に飛ばす。勿論グレネードは爆発し、陣地が吹き飛ぶ。やってる事は野球なのだが、ここは戦場のど真ん中。なかなかに狂っている。

 

「小遣いを増やせー!!!!!!!」

 

「髪よ頑張れー!!!!!」

 

「俺はまだハゲじゃないー!!!!!」

 

しかも愚痴を叫びながらフルスイングしているので、心なしか飛距離も長い。何度かグレネードを叩き込んでいるとバンカー前が一掃され、道が開かれる。内部に突入し、掃討しつつ目的の大砲に爆弾を仕掛けて起爆した。

 

「はーい!!たーまやー!!!!」

 

「汚ねぇ花火だな」

 

「芸術は爆発だぁぁぁ!!!!!」

 

これにて作戦は成功。後はこのまま離脱し、本隊と合流。レイフォリアの奪還あるのみだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。