最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第百話レイフォリア陥落の日

数時間後 レイフォリア グラ・バルカス帝国軍統合基地『ラルス・フィルマイナ』 会議室

「………なぁ、一体なんなんだ。誰か教えてくれ………………」

 

この基地の司令にして、レイフォリア一帯の全軍を統括するファンターレ大将は部下達に呟く。その顔は青を超え、最早土気色の域に突入し、髪はボサボサ、頬はコケており、目の下にはマジックか何かを直塗りしたのかと思う程のドス黒い隈が浮かんでいる。

 

「何なのだ……。奴らの侵攻を確認して、まだ3日。たった3日だぞ!なのにこの有り様は何なのだ……」

 

「恐れながら閣下、まずは状況を今一度纏めましょう。よろしいですね?」

 

ランボールがそう尋ねるとファンターレは何も答えずに、ただコクリと頷いた。ファンターレは集まっている参謀や各部隊の指揮官達の前に立ち、これまでの戦況と現在の状況を纏める。

 

「今から約66時間前、大日本皇国、神聖ミリシアル帝国、ムーの主要3ヶ国に加え、エモール王国、アガルタ法国、マギカライヒ共同体、ニグラート連合の7ヶ国連合軍が、このレイフォリア防衛の前線要塞拠点であるノーベース要塞を文字通り吹き飛ばしました。

この報告を受け、警戒任務に当たっていた歩兵四個師団を派遣。更に本ラルス・フィルマイナ基地所属の第3機甲中隊及び、第486ロケット中隊、第608、609砲兵大隊を追加派遣し、ノーベース要塞稼働以前の旧ノルベルト塹壕線にて迎撃準備を行いました。レイフォリア近郊をパトロールしていた第8機甲大隊を時間稼ぎに急行させるも、皇国軍によって殲滅されました。

同時に同時刻シリウス型爆撃機60機、リゲル型雷撃機40機、アンタレス100機、アンタレス改60機、合計260機からなる航空隊を迎撃支援に向かわせましたが、これら全て迎撃され1機も帰りませんでした。命を賭して時間を稼いだ結果、ノルベルト塹壕線での迎撃準備が間に合い万全の態勢にて迎撃に当たるも、奮戦虚しく塹壕線は突破されました。これを受けて近郊の各駐屯地に点在する陸上戦力を当基地、もしくは後方のダイジェネラ山岳要塞に移動させています」

 

因みにこれ、戦力の移動以外は全て1日目の出来事であり、もっと正確には正午のノーベース要塞焼滅から夕方位までの事である。つまり侵攻開始から大体6時間程度しか経ってないのに、既にこの有り様なのだ。

 

「約47時間前、レーダーサイトがレイフォリア方面に接近する大編隊を探知。直ちにアンタレス110機、アンタレス改60機、対空用爆弾に換装した40機を迎撃に向かわせました。しかし結果は皆さんが知っての通り、飛行場及び隣接していた倉庫区画が破壊され航空機は回転翼機を除いて全滅しました。

爆撃より3時間後の約43時間前。訓練からの帰還途中だったレイフォリア守備艦隊は皇国、ミリシアル、ムーの連合艦隊を発見。第六機動艦隊、第十六潜水艦隊にも発見の報が送られ艦隊戦に移行しましたが、間も無く壊滅しました。

そして昨夜、ミリシアルの大部隊が空挺降下を敢行。かなりの数の輸送機を撃墜し、壊滅的被害を与える事に成功するも、沿岸砲台を破壊されました。以上が現在の状況です」

 

「……ありがとう、ランボール君。では我が軍の状況は、航空戦力と海軍戦力は文字通り全滅したが、陸上戦力は未だ残っている。この認識で間違っていないね?」

 

参謀の准将が聞く。ランボールは力強く頷いて答えた。

 

「その通りです閣下。「エアカバーと海軍が無い」この状況だけ聞くと苦しい限りですが、幸い今回は防衛戦です。対空砲も昨夜の攻撃で破壊されているとはいえ、まだ生き残ってる物は多くあり、移動式の対空砲を用いればカバーはできます」

 

「ふむ。では、敵方の戦力について詳しく聞きたいね」

 

「それについては私から」

 

今度立ち上がったのは、情報関連を扱うセクションの指揮官を務めている情報参謀であった。階級はランボールと同じ大佐である。

 

「敵軍の総数は未だ不明ですが、想像を絶する大部隊である事は確かです。ムーの最新鋭戦車群及び航空機も相当数確認されており、ミリシアルにも戦車に該当すると思われるクモの様な兵器を確認しています。

しかし他の国家に関しては騎兵や戦列歩兵等の、時代錯誤な兵種が多く近代的な装備は確認されていません。ですが例のドラゴン、ワイバーンが我が軍の航空機相手に互角の勝負を繰り広げたとの未確認情報もあります」

 

参謀達は一気にザワつく。ムーの戦車の脅威は、帝国に於いても「帝国製とも互角に戦える兵器」という認識が為されており、現状では皇国に次いで危険視されている。

そして1番驚かれているのは、ワイバーンの件である。帝国も転移以来、これまで幾度もワイバーンとはやり合ってきた。しかしそのどれもが機動性、速度、攻撃力、防御力といった全ての面で劣っており、戦闘機の敵ではなかった。導力火炎弾を撃たれた例もあるが、命中しても何らダメージはなく普通に帰還している。一応その後の調査結果では『継続して命中すると燃料引火の恐れあり』という風になっていたが、パイロット達からは「あんなの訓練兵でも避けられる。不意打ちでも無い限り当たらない」と言われており、結論として脅威としては認識されていなかったのだ。

 

「他国は分かった。で、皇国はどうなんだ?」

 

「当然ながら神谷戦闘団は確認さていますが、通常の部隊も相当数投入されています。戦列歩兵等の行軍が遅い部隊については、どうやら皇国が輸送を担っているようです。

また海上には例の総旗艦が投入されている上、航空隊については全機エース級部隊でした。少なくとも現状我々が確認しているリボン付きの死神達(メビウス中隊)青翼と赤翼(ガルム隊)、イエロー、不死鳥、ブラックファイターズ(ラーズグリーズ隊)サイレントキリング(ガルーダ隊)、3本線、ウィングハット(伯爵殿)は全て確認されました」

 

「なんて事だ…………」

 

「更に言いますと未確認ですが、昨夜の空挺部隊には皇国製の装備が配備されていたそうです。輸送機が皇国ではなくミリシアル製なのは確認されていますから、装備だけを貸しているのか、はたまた別ルートや昨夜の部隊に混じって降下しているのか不明ですが、最悪の想定ですと皇国の精鋭が既に近くに潜んでいる事になります」

 

その最悪の想定が今の状況である。昨夜、というか今日の夜中に降下したのはミリシアルだけではなく、別ルートで第一空挺団が降下しているのは知っての通りであるが、第一空挺団の降下は現在に至るまで認識されていないのだ。何せ死体も残さず、訓練の成果により自然と痕跡を、なるべく残さないように動いている。当然だろう。

 

「それは何とも……」

 

「早急に対策が必要だな」

 

指揮官達も頭を抱える。何せ皇国兵は同じ人間であり、異世界人に時折いる人外能力を持った民族ではない筈なのだが、銃弾を弾くアーマーを一兵卒にまで行き渡らせ、全員がマシンガンを装備するというSFの様な存在。たった1人いるだけで、帝国軍基準では一個小隊位の脅威である。

 

「とは言ったものの、今更何ができるという話だがな」

 

「そうですな。ここまで来ると、もう機甲戦力で遅滞戦闘を行い、その間にダイジェネラ山岳要塞に人員から本部機能に至るまで、全部移して籠城しかありますまい。

幾ら皇国とて険しい山岳を丸々使った、艦砲射撃すら耐えうる鉄筋コンクリート製の要塞は、そう容易く落とせぬでしょう」

 

「流石に不可能だろうな」

 

一応鉄筋コンクリート製だろうと、バンカーバスターを使えば破壊できる。とは言え流石に山岳要塞を全部バンカーバスターで破壊するのは、出来なくないが費用的に会計担当が発狂しかねないので、皇国としてもかなり面倒な相手なのは間違いない。

 

「司令、ご決断を」

 

「………もうこれしかあるまい。レイフォリアの全機能をダイジェネラ山岳要塞に移転。残存歩兵部隊は守備隊に合流し、レイフォリア市内で機甲部隊、機械化歩兵部隊による遅滞戦闘を行う」

 

ファンターレの決断は各部隊に伝達され、即座に動き出す。幸か不幸か、各地の拠点から引き揚げてきたばかりであり、移動は迅速に行う事ができた。しかしこの動きは、偵察中だったMQ4紫雲が偶然探知されてしまった。

 

「この動き…… 撤退やろか?」

 

「だろうな。流石に奴らもヤバいと分かって、後方の要塞に立て篭もる作戦に切り替えたんだろ。その証拠に、本来なら陸戦で外せない貴重な機甲戦力は動いてない」

 

報告を受けた神谷は、『日ノ本』に乗り込んでいる幕僚に件の偵察映像を見せた。と言っても現在共に乗り込んでいるのは、白亜衆の指揮官である槍河と権田川、それからワルキューレ達だけだ。いつもは隣に控えている向上も、戦闘団本隊の指揮を任せている為、ここには居ない。

 

「機甲戦力を動かしてへん辺りを見るに、向こうさんは市内に立て籠って時間稼ぎするつもりどすかね?」

 

「幾ら山岳を丸々要塞にしてようと、全員を収容した上で、長期間戦わせながら立てこもれないんだろう。まあ当然っちゃ当然か」

 

「そらぁ、これだけの部隊食わせ戦わすのは、どう考えても不可能っちゅうもんですわな。要は口減らし兼、撤退の時間稼ぎって事でっしゃろ」

 

どの時代のどんな規模の籠城でも、ネックになるのは資源の問題である。人は死なない限り食事、もっと正確には栄養を摂取して水を飲まなければならない。そして戦えば弾薬が必要であり、戦った結果負傷すれば治療の為の物資も必要だ。包帯や消毒の様なポピュラーな物から、手術器具や専用の薬剤まで。当然だがこの手の資源が底を付けば戦えず、傷も癒やされず、行き着く先は餓死や衰弱死である。

その為、籠城に於いては人は多すぎてもキャパオーバーで抱えきれず破綻するし、単純に立て篭もって耐え凌ぐ訳ではなく今回のように敵を迎撃するつもりなら、戦力は少なすぎても当然戦えない。恐らく司令部の人間は、人員を篩にかけているのだろう。

 

「………あ」

 

「何どすか、その碌なこと思い付いてなさそな「あ」は?」

 

「いや何、今現地に空挺団がいるだろ?コイツらにハンティングを楽しんで貰おうと思ってな」

 

神谷の思い付いた策というのは、何とも性格の悪い作戦であった。先んじてトラップを仕掛けておき、奇襲を持って山岳要塞に向かっている歩兵部隊を削ろうという物である。

策としては単純だが、実はかなり恐ろしい。要塞周辺の地形は『山岳』とあるだけあって、起伏の激しい斜面で森林だ。当然見通しは悪く、要塞は高所にある為、斜面を登って行かなければならない。山登りとまでは行かずとも、誰しもが足場の悪い斜面を登った経験位はあるだろう。相当にキツかった筈だ。そしてそれは、軍人であろう変わらない。例え幾ら訓練を積んだ軍人でもキツい物はキツいし、楽しいものでも無い。そんな中で奇襲されるのは、1番嫌な事態なのだ。

しかも相手は、第一空挺団という精鋭達。全員がレンジャー教育課程を修了しており、山登りや山歩きはお手のもの。通常部隊のレンジャー持ちが卒業後、日常的に過酷な訓練ができる環境ではないのに対して、空挺団の場合はレンジャー並みの訓練を通常の訓練として頻繁に行っている。そんな山のプロフェッショナルに追いかけ回されるとか、単なる悪夢でしかない。

 

「………なんや、敵が可哀想に思えてきたわ」

 

「御愁傷様どす……」

 

口ではそう言いつつ、2人もこの策には同意である。この作戦は空挺団に下令され、行動に移った。時を同じくして、白亜衆はAVC1突空に分乗し発艦。更に地上を進んでいた本隊、洋上に展開している3カ国連合艦隊と揚陸艦隊、そして基地から飛び立った近接航空支援の為の航空機編隊は作戦開始ポイントに到達した。ここに審判の炎は、遂にレイフォリアにまで延びて来たのである。

 

 

 

10:57 レイフォリア近郊 本部陣地

「砲撃用意!!!!」

 

「砲撃よーい!!!!!」

 

神谷幕僚団の一員にして『戦場の調律師』という異名を持つ海原が、全軍の砲撃を指揮する事となった。前時代的な大砲をも纏めて扱えるのは、全軍の中でもこの男だけである。

 

「全砲一斉砲撃だ。中川!調整はできておるだろうな!!」

 

「ははっ!抜かりはありません」

 

「よろしい。ヒトヒトマルマル(11:00)に撃つ!」

 

たった3分ではあるが、兵士達にとっては長く感じられた。どんな厳しい訓練よりも緊張し、3分が無限に引き伸ばされたかのように感じる。だが皇国兵だけは、その限りではなかった。実戦への慣れと、自国の兵器の圧倒的な信頼。この2つが兵士達の心を落ち着かせ、必勝の確信を持たせてくれたのだ。

 

「……撃て!!!!」

 

「撃てぇ!!!!!」

「てぇ!!!!!!」

「放てぇぇぇ!!!!!!」

 

一斉に榴弾砲が放たれる。砲弾は弧を描き、次々にレイフォリアの軍事施設に着弾。一部、というか皇国以外の砲弾はちょくちょく周囲の民間施設に当たっているが、どっちみちこの世界に国際法なんてのは無い。それに民間人の死者を0にするのは、まあまず無理だ。冷酷だが、割り切る他ない。

 

「このまま砲撃を続行。10分後からは、煙幕弾に切り替えて街をロンドンにしてやれ」

 

煙幕が街全体を覆い尽くすのと同時に、戦車を先頭に歩兵達が一気に雪崩れ込む。最も装甲の分厚い46式戦車が先陣を行き、その隙間を他の戦車で埋め、その後方には装甲車やトラック、或いは騎兵が続く。

 

「正面にコンクリート製防護壁!」

 

「主砲で破壊しろ」

 

「待ってました!!」

 

レイフォリアの海沿い以外は、帝国の支配以降、コンクリート製の防護壁が建設された。10m程度の高さがあり、上にはトーチカや対空砲、対戦車砲なんかも設置されている。だが46式の前では、単なる障害物にすぎない。350mm滑腔砲を持ってすれば、コンクリート製の壁だろうと問題にならないのだ。

主砲で吹き飛ばし、そのまま前方に搭載したドーザーで破片を中に押しやり道を作る。その道を通って、市街へと次々に入っていく。

 

「応戦しろ!!応戦だ!!」

 

「この煙じゃ何も見えませんよ!!」

 

「とにかく適当に撃て!!!!絶対に大部隊だ、撃てば当たる!!!!」

 

煙で視界は全く効かないが、エンジン音やキャタピラが回る音、他にも色々と敵がいると分かる音だけは聞こえる。それもかなりの大部隊だ。

対するこちら側、正確には皇国と戦車乗りは暗視装置によって良く見える。しかもそれは、ヘリコプターパイロットも同じだった。

 

「あららー?機長、奴ら動き出してます。砲撃を準備中ですね、これ」

 

「いくら時代遅れの代物でも、流石に脅威だ。排除するぞ」

 

「しかしスモークが爆風で晴れてしまうかと」

 

「なーに、どうやら仲間が来たらしいからな」

 

レーダー上に、続々と友軍を示す光点が増える。この方向と速度からして、ムーの航空隊だろう。

 

「そういう訳だ。やるぞ、ガンナー」

 

「ウィルコ!」

 

ガンナーは素早くスイッチを切り替え、機首の33式40mmバルカン砲と自分が被っているヘルメットを同調させる。これでガンナーが首を動かす方向と機関砲の方向、目の向きで角度を操作できる。

 

「目標探知。攻撃します」

 

バルカン砲から40mm砲弾が放たれる。これ程の大きさとなると、着弾と同時に爆発し周囲に破片を散らばらせる、言うなればグレネードの様になる。それがレーザービームのように薙ぎ払っていけば、砲台はひとたまりも無い。

 

「な、なんだぁ!?!?」

 

「こ、皇国のオートジャイロだ!!!」

 

さっきまで何も見えなかったのに、急に爆発が起きたかと思ったら、目の前には悠々と浮かぶ皇国の攻撃ヘリコプター。もちろんウィングにはロケットランチャーと対戦車ミサイル旋風を収めた4発ランチャーを搭載しており、そのフォルムは武装を詳しく知らずとも暴力的に映る。

 

「おぉ、皇国の連中が頑張っているぞ」

 

『なら、俺達も続くとしましょう』

 

「そうだな。行くぞ!!」

 

AH32薩摩が攻撃している中、間髪入れずにムーの航空隊が飛来した。しかも機体が襲撃機エアラコとアイーエ、そして急降下爆撃機ルーデルである。

 

「それじゃ先に行くぜ」

 

まず先に攻撃を仕掛けたのはアイーエ。ソ連が開発したIl-2、キリル文字ではИл-2と表される航空機を基準に作られた航空機である。原型機より装甲とエンジンを強化し、近接航空支援では無類の強さを誇る。今回はロケット弾を装備してきており、それが無数に襲い掛かる。

 

「今度は攻撃機かよ!!」

 

「た、対空戦闘!!」

 

「クソッ間に合わない!!」

 

「愚痴る暇あったら手を動かせ!!」

 

これが1人で扱う単装機銃であれば、まだ間に合ったかもしれない。だが壁の上にあるのは、三連装機銃か高角砲しかない。高角砲は当然近距離では、どう頑張っても照準が追いつかない以上論外。となると機銃だが、こっちもこっちで高角砲よりは早くともハンドルを回す必要があり、このハンドルがまあまあ重い。

しかも旋回用のハンドルと、仰角のハンドルは別々であり、当然別々の人間が操作する。お陰で二人三脚の様に2人の呼吸を合わせて扱う必要があり、まあまあ操作が面倒臭い。

 

「突っ込め野郎共!!ロケット発射!!!!!!!!」

 

モタモタしている間に、アイーエは懐に入り込む。そのままロケットを放出し、高度を上げて離脱していく。無誘導とはいえ、数十機が撃てば流石に当たる。下手な鉄砲数撃ちゃ当たるっていうのは、意外と馬鹿に出来ない。

 

「アイーエがやったな。次は俺たちだ!!」

 

続いて襲い掛かるのはエアラコ。P39Qエアラコブラを元に設計されており、機首の37mm機関砲は装弾数を増やし、更には12.7mmの代わりに20mm機関砲を搭載した対地攻撃機として誕生した。こちらは高速性が売りであり、アイーエがヘリコプターの様に歩兵部隊をじっくり援護するなら、こちらは高速を持って素早く駆け付ける現代の攻撃機の様な存在だ。

 

「ま、また来やがった!!」

 

「退避しろ!!退避だ!!!!」

 

最早、壁上からは兵士が逃げていく状況でありながら、エアラコは無慈悲にも攻撃を敢行。砲台を完全に破壊しにかかる。

 

「汚ぇ花火だな、ハハッ!」

 

砲弾に引火して爆発し、壁上は大惨事だ。これで安心して、地上部隊は中に攻め込める。

 

「市街に入った!!」

 

「後は頼むぜ、お客さん!!!!」

 

皇国のトラックがドリフトしながら派手に停車。止まると同時に扉を破壊せん勢いで蹴破りながら、各国の歩兵が飛び降りる。武器が剣や槍とは言え、市街地という比較的交戦距離が近く、尚且つ乱戦になる環境では寧ろ銃より有用である場合もある。

 

「おーい歩兵共!!こっちだ!!!!」

 

「俺達の後ろに隠れて進め!!俺達が盾になる!!!!」

 

「ッ!ありがたい!!総員、皇国の重装歩兵の背後に周れ!!!!」

 

勿論、何の援護もなしに戦わせる事はしない。装甲歩兵が先頭を行き、歩兵達をカバーする。マシンガンで撃たれようと、殆ど被害を出さずに近づけられる。

 

「エルダータイガーより全機甲戦力!!このまま進軍し、後続の道を作るぞ!!続けぇ!!!!!」

 

そして最前線で暴れるのは各国の機甲戦力。キャタピラで障害物を踏み締め、見つけた敵は建物や障害物ごと主砲で吹き飛ばす。しかしそれをやっているのは、皇国とムーの戦車だけ。ミリシアルのスパイダーとエイティシックスだけは、戦い方が根本的に違った。

 

『目標、重戦車ドーベル!装甲は厚いですが、ブレードでも切り裂けます!!』

 

「了解しましたレーナ。攻撃します」

 

戦車乗りでありながら、戦闘機パイロット並みの耐G能力が必要な人殺し多脚戦車。それを操る化け物。部隊名であり、パイロットの異名でもある。それがエイティシックスである。

そんな中でも飛び抜けて異質であり、神谷を持ってして「お前ヤベェよ」と軽くドン引かせるのが、総隊長の千葉真影だ。コイツの何が可笑しいかというと、普通なら副兵装に64式20mm機銃か8式40mm擲弾銃を搭載する所を高周波ブレードを用いている上に、機体の安全装置を解除して擬似的に性能を向上させながらも操っているのだ。

 

「な、なんだあれは」

 

「何か蜘蛛みたいなのが高速接近中!!」

 

「主砲で蹴散らせ!!」

 

車長の命令に砲撃手がスコープを覗くが、目の前の多脚戦車は右に左に素早く動いており狙いが全く定まらないどころか、そもそも目で追い掛ける事すらままならない。

 

「ダメです!!早すぎる!!!!」

 

「えぇい!!なら機銃だ!!!!」

 

機銃を乱射するが、全く当たらない。例え当たっても、幾ら軽装甲とは言えど戦車。流石に機関銃位は弾く。

 

「な、なんなんだ!コイツは一体!!!!」

 

車長がそう叫んだ瞬間、高周波ブレードが車体と砲塔の隙間を切り裂いた。バターのようにスルリと切り飛ばし、中にいる乗員ごと車体と砲塔を切り離して見せた。

 

「1両目撃破。このまま他も片付けます」

 

他のエイティシックス達も暴れだし、戦線はなし崩し的に崩壊していき道が出来る。その中を兵士達は突き進む。

 

「総員建物に突入!!中を調べろ!!!!」

 

歩兵達は官民問わず、とにかく建物という建物に押し入る。扉を蹴破り、机をひっくり返し、壁を突き破る。

 

「きゃー!?!?!?」

 

「な、何なんだアンタら!!!!」

 

勿論中には一般人がいるが、そんなのお構いなしに部屋を踏み荒らす。何も盗らないとは言え、下手な押し込み強盗より酷い有様にして出て行く。

一見すると戦争犯罪の様だが、これも一応作戦である。建物をこちらで抑え、上からの攻撃を許さないというものだ。実際、中に帝国兵が居たた例も少なからずある。

 

「な、なんだコイツら!!」

 

「こ、殺」

「遅ぇ!!!!」

 

「ぐぅぅ……神よ………」

 

流石に室内かつ、数mの距離なら長物のライフルよりも、歩兵が持つ剣とかの方が有利だ。しかも歩兵達は剣と槍の扱いに長けた、昔ながらの兵士。この距離であれば、必殺の間合いとなる。

ちなみに、この部隊に限っては最早間合いとか装備の質どうこうが、馬鹿らしくなる。その部隊というのが……

 

「即死と腹上死……お好みは?」

 

「ヒヒヒ、やったるでぇぇ!!!!!」

 

「死にてぇ奴だけ、掛かってこいッ!!!!」

 

第四海兵師団のヤクザ共である。もうコイツらには、物理法則も常識も何もかも通じない。銃をサブウェポンに、鉄パイプやらバッド、或いは拳で武装し敵を殴る。ある意味人道的っちゃ人道的だが、敵兵の方は恐怖で精神が死ぬ。

 

「な、なんだコイツら!!!!」

 

「て、撤退!!!てったーい!!!!!!」

 

だがたまーに、エグい奴らと出くわす場合がある。コイツらは拳の代わりに、刃物等で武装しており普通に殺しにかかってくる。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄乃田ぁ!!!!!」

 

「死を告げるタイプの聖人君子です。皆殺しにします」

 

「兄ちゃん、人としての背骨が出来てねぇようだ。腹掻っ捌いてやるから、背骨作れぇ!!」

 

こういう連中に会うと、生きて帰ることはない。第四海兵師団は第一空挺団の降下誘導小隊による先導の下、帝国軍の横っ腹から食い破る形で突入。戦場をよりカオスにし、敵の指揮系統を滅茶苦茶に混乱させる。

 

「クソッ!!なんでこんなにも追い詰められてるんだよ!!!!しかもこんなに早く!!!!」

 

「隊長!!司令部より後退命令です!!最終防衛線まで部隊を撤退させろと!!!!!」

 

「よーし!!後退だ!!後退しろ!!!!!」

 

帝国軍の各部隊はレイフォル統制府庁舎前の広場にある最終防衛線へと後退するべく、相互に援護し合いながら後退を進める。だがそれを許す程、こちらも甘くない。

 

ウウウウウウウウウーーー!!!

 

「て、敵機直上!!急降下ーーーー!!!!!」

 

急降下爆撃機ルーデル。かのJu87を元に開発された急降下爆撃機である。今回は皇国が供与した対人フレシェット爆弾を装備しており、歩兵に対してかなりの被害を出せる。

 

「と、とにかく後退しろ!!!!」

 

倒れた仲間を見捨てて、兵士達はとにかく下がる。だがその間にもサイレンは鳴り響き、その度に兵士がダース単位で消えていく。だがそれでも、どうにか最終防衛線まで走る。

 

「急げぇぇぇ!!!!!!」

 

「こっちだ早く!!!!!!」

 

兵士達が滑り込むと、即座に戦車で蓋を閉めるように入り口を閉ざす。この最終防衛線には生き残った移動可能な各種砲を備え、戦車も固定砲台として配置した強固な陣地だ。

帝国兵達は一安心だと言わんばかりに、少しばかり気が緩む。実際この強固な陣地を前に、連合軍も一度進撃を停止した。だがそれと同時に、よりにもよってコイツらが来てしまった。

 

「団長。どうやら敵はんは亀みたいに、足跡陣地に立てこもってるみたいどす」

 

「だったら中に降りれば良い。大空ぁ!!!!」

 

「かしこま!!!!」

 

神谷指揮の白亜衆が、レイフォリア上空に現れたのである。突空は陣地の上でホバリングしながら、下で右往左往している帝国兵達に、満載している火器を使って文字通り薙ぎ払う。

 

「こんな化け物を皇国は…」

 

「隊長がやられた!!!」

 

「や、やばい!!砲弾に流れ弾がぁ!!!!」

 

突空のコンセプトは敵支配地域への強襲輸送であり、機体には戦車並みの装甲と多数の重火器がハリネズミのように搭載されている。これを持ってすれば、ちょっと地上をお掃除する位なら余裕だ。

だが今の段階で既に陣地は大混乱であり、陣地から逃げようとして、よりにもよって連合軍側に飛び出して射殺されていたり、陣地内で戦車が暴れ出したりとカオス極まる状況であった。

 

「よーし、良い感じにカオスだな。行くぞ野郎共、殲滅だ!!!!」

 

このカオスを見逃す手はない。神谷を筆頭に、白亜衆の兵士達は突空から飛び降りて陣地内に降り立つ。

 

「白い……軍服…!!」

 

「皇国最強の集団、白亜衆!!!!」

 

帝国兵にも白亜衆の恐ろしさは、嫌というほどに広まっている。それ故に兵士達は絶望した。だがそんなのはお構い無しに、神谷が叫ぶ。

 

「その通り!!さぁ諸君、俺達を殺してみろ!特に俺とか良いぞ!!軍のトップだ!!!!俺を殺せば、ソイツはたちまち国の英雄だろうよ!!!!!尤も!!」

 

そう言いながら、神谷は手近な兵士の首を切り飛ばす。首から血を噴水の様に吹き出しながら倒れ、切り飛ばされた頭の方は空高く飛んでいる。

 

「殺せれば、の話だがな」

 

そこから始まったのは、最早戦闘ではなく一方的な虐殺とすら言える戦いであった。血飛沫があちこちで上がり、パニックになった兵士達は誰彼構わず銃を乱射し、色んな場所で爆発が起きる。

程なくしてレイフォリア統制府庁舎には、連合軍に参加した各国の旗と今亡きレイフォルの国旗が翻った。

 

 

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