最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第百一話炎の審判

「そっちはどうだ!?」

 

「ダメだ!何処にもいない!!!!」

 

「なんでレイフォリアでかくれんぼしてんだよ俺達は!!!!!!」

 

レイフォリアを完全に攻略して約2時間。本来なら未だ要塞の攻略が残っているとはいえ、一応の勝利を祝うべく戦闘糧食では無く温食、それも海原主導の物を振る舞うとか、お菓子等の嗜好品を配るとか、そういうちょっとした平和な時間を謳歌する筈だった。

所が、いざレイフォリア中心部に位置する司令部に乗り込むと人っ子1人、死体すら無い。それどころか周囲にある帝国が置いた統制府の庁舎だとか迎賓館だとかの施設、或いは恐らく元々は貴族か何かの邸宅を接収し政府施設にした建物、例えば外務省の出張所の施設に至るまで、帝国の人間は何処にもいなかったのだ。

 

「こんな事態、前代未聞である………」

 

「マリオリル、上から見た感じはどうでした?」

 

「どうもこうもあるかよ。空から見た感じじゃ、特段異常なしだ」

 

「うぅむ。支配の中枢とすら言える施設から、恐らく全員が忽然と姿を消す……。こうなると、最早「臆病風に吹かれた」という言葉では片付けられないだろう」

 

各国の将軍達も急遽設置された臨時司令部に集まり、情報共有を行っている。参加しているのはアガルタ法国よりゴウン魔導将、ドラッペン将軍。マギカライヒ共同体よりマリオリル竜騎長、トラマリ将軍。ニグラート連合よりエクニオール将軍、ペネッション筆頭竜騎士長。そして皇国より神谷が参加している。

ムー、ミリシアル、エモールの将軍は、今も捜索の陣頭指揮を買って出てくれており会議には参加しない。

 

「……神谷殿。貴殿のご意見をお聞かせ願えるか?」

 

「彼の皇国であれば、何か思い当たる事も或いは……」

 

「いや。生憎と、こちらとしても何も分からない状況だ。最初は尻尾巻いて撤退、いや、敗走したと思っていた。だがゴウン魔導将の言う通り、他の中枢からも綺麗さっぱり人員が消えた。

戦闘中も含めて、これだけ街中を引っくり返すかの如く、まるで野盗の様に目に付く建物に飛び込んだんだ。隠れてるなら確実に1人2人は見つけてる。だが見つかったのは、どれもこれも下っ端の兵士。数人士官もいたが、それでも根っからの戦闘要員。後方の制服組や幕僚でもない。

となれば、これは恐らく敗走ではなく撤退。それも単なる破れかぶれの思い付きや反動からの撤退ではなく、事前に用意されていたプランに従った計画的な撤退。つまり奴らは、まだ何か策があると考えるのが妥当だろう」

 

そう言う神谷だが、ひとつ疑問があった。一体、彼らはいつ撤退したのだろうか。状況を整理してみよう。

状況としてはレイフォリアの帝国政府施設からは、軒並み人が消えている。死体等もない。だが少なくとも、朝までは司令部には幹部達がいた筈である。というのもレイフォリアから残存部隊の一部が要塞に向けて移動しており、これを先に降下していた空挺部隊が叩いている。撤退していた可能性として1番高いのが、この後方に移動していた部隊に紛れ込んでいたというもの。なのだが、現在に至るまで高級将校が大量に発見されたという報告はない。誰が誰かまでは分からないが、少なくとも星の数とか線の数とかモールドとかで、殺した奴の立場を予測するくらいは出来る。

また知っての通り海には艦隊及び海軍陸戦隊、空には相当数の航空部隊、陸には攻略部隊と、逃げ道は後方の山岳要塞にしかない。勿論数人単位であれば逃れられる可能性はあるが、流石に施設にいた人員を限りなく少なく見積もっても数百人はいる。それだけの人間が例え数人単位で逃げようと、確実に何組かは発見、確保できている筈だ。

 

「ゴウン魔導将。無知で申し訳ないのだが、念の為にお聞きしたい。転移魔法、ワープ、瞬間移動といった魔法は存在するのだろうか?」

 

「あり得ないな。確かに伝説や神話には、その手の魔法が存在していたとされる。存在しているしていないは未だ議論されているテーマではあるが、仮に存在していたとしても、現在では確実に不可能な失われた魔法だ。断言しよう、転移系統の魔法の使用はあり得ない。

だが唯一、可能性があるとすれば、今やお馴染みのラヴァナール帝国の遺物だろう。尤も、その帝国ですら使ったという記録も存在していたという記録もない以上、確率は限りなく0だろうがな」

 

まあ、当然だろう。そんな便利な代物があれば、態々兵器を作る必要はない。転移魔法で軍隊を移動させるなり、大砲の砲口と目標の真上を繋げて直接、砲弾を目標に落とすなりで、簡単かつお手軽に戦争が出来てしまうのだから。

 

「海には艦隊、陸には大軍勢、空には航空部隊に衛星もある。この状況で大人数で逃げるなんざ、どう足掻いても無理ゲー。転移も無理。

ならば光学迷彩系統か?いや、技術的に不可能だ。たとえ魔法でも、光の屈折率云々なら熱を探知する。ステルスか?いや、そんな訳がない……」

 

ブツブツと独り言を言いながら、目の前のレイフォリアの巨大地図が敷かれた机の縁を掴む。街を精確に表した地図を見つめ、とにかく考える。だが段々と思考がループというか、堂々巡りを始めた。これじゃダメだと切り替えた時、神谷に天啓が降る。

 

「…………あっ。そうじゃん、何も敵の目に晒さなくて良いんだ」

 

「ん?ちょっ、神谷将軍!?アンタ何処に行くんだ!?!?おぉい!!」

 

「あ、そこの騎士!!」

 

マリオリルの静止をガン無視し、多分近くにいた多分マギカライヒの学院守護軍所属の騎士を呼び止める。騎士を呼び止めるというは、本来であればかなりの不敬行為であり罰則もある。それ故に騎士は見るからに不機嫌になりながら振り返ったのだが、呼び止めたのが神谷とあっては態度も改まる。それも大量の冷や汗を、瞬間的かつ滝の様に全ての汗線から噴射しながら。

 

「こ、これは将軍閣下!!」

 

「騎士!名前は!?」

 

「は、ハッ!学院守護軍、スカリッツ騎士団所属!ヘンリー正騎士であります!!」

 

「よろしい!ではヘンリー騎士!貴様に我が部隊、神谷戦闘団幕僚天幕への伝令を頼みたい!幕僚に「X線透視装置と音波測定器をありったけ用意し、建築関連の知識がある兵士を動員して、各政府施設を調査せよ」と伝えてくれ!!この伝令は、現在の状況を即座に動く可能性があるものである!是非とも最優先で行ってもらいたい!尚、この伝令で生じた諸問題や懲罰処分が発生した場合、俺の名を存分に出していい!!!!」

 

「ハッ!伝令任務、確かに拝命致しました!!」

 

ヘンリーは愛馬に飛び乗ると、神谷幕僚団がいる天幕へと馬を飛ばす。当然、警戒中の皇国兵に止められるが、神谷の名前を出すや否や皇国兵付き添いの元、幕僚団の天幕へと通された。

いつもなら多くの幕僚が詰めている天幕だが、ヘンリーが入った時はよりにもよって強面の連中しか居なかったのである。これで麗奈とかヘルミーナが中に居れば良かった。だが居たのは装甲歩兵の遠藤と権田川。どっちもガタイが良く、顔も強面で威圧感も半端ない。

 

「なんや。ここはアンタの来るとこちゃうで」

 

「わ、私は学院守護軍、スカリッツ騎士団所属!ヘンリー正騎士であります!!神谷閣下からの伝令をお伝えに参りましたッ!!!!」

 

極度の緊張感の中にいようと、ヘンリーは立派に勤めを果たした。ただ伝令しただけだが、目の前の強面のデカい奴相手じゃ恐怖が先に出てしまう。しかもただの軍隊ではなく、皇国の、それも神谷戦闘団となれば余計にだ。

 

「団長から?」

 

「何や言うてみい」

 

「X線透視装置と音波測定器をありったけ用意し、建築関連の知識がある兵士を動員して、各政府施設を調査せよ、と仰せつかっています!!」

 

「X線に音波測定器やと?何する気や……」

 

権田川は顎を触りながら考える。だが遠藤はすぐにピンときた様で、無線で手早く指示を出していく。

 

「なんやゴリラ、自分分かったんか?」

 

「あぁ。建物にX線と音波測定器だったら、多分団長は隠し部屋を探すつもりなんじゃないか?」

 

「成る程、そら見落としとったわ。よっしゃ、すぐに準備すんでぇ!!!!」

 

2人は天幕を飛び出し、適当な部下を数人引き連れて倉庫になっている天幕に向かい、片っ端からトラックに機材を積み込んでいく。準備自体は15分ほどで終わり、そのまま中心街の庁舎があった場所にトラックを走らせ、建物中を虱潰しにスキャンしていく。

 

「お前達!!見つけたはいいが、伏兵が飛び出して来たりトラップがある可能性もある!!気を抜くんじゃないぞ!!!!」

 

「「「「「「了解です!!!!」」」」」」

 

「ゴリラん言うた通りや!テメェらも注意せぇ!!!!」

 

「「「「「「おう!!!!」」」」」」

 

とは言え建物も大きい為、そう簡単には見つからない。そう思っていたが、探し始めて5分後。早速当たりを引いた。

 

「ここだぁ!!!!ここに空間があるぞぉ!!!!!」

 

「誰かハンマー持ってこい!!ぶっ壊せ!!!!!!」

 

隠し部屋、正確には隠し階段があったのは講堂か何かだったであろう、だだっ広い大きな部屋のステージの下であった。流石に人力でどかすのは無理だが、幸いハンマーとかであれば破壊は容易い。

 

「ハンマーがいるのか皇国兵?」

 

「え?あ、あぁ」

 

「なら俺に任せろ。ここを破壊すれば良いんだな?」

 

筋骨隆々の胴体、所謂チェストプレートと腰のスカート状の鎧しか着ていない大男がハンマーを構える。しかもそのハンマー、かなり大きく大人の男位の大きさがあった。

 

「後ろに下がってな」

 

「おう。任せるが、破壊したらすぐに後ろに下がってくれ。トラップや伏兵の可能性があるからな」

 

「へいへい。んじゃ、いくぜぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 

大男はグルグルと手首使って巨大ハンマーを回しながら飛び上がり、空中で体制を整えて素早く力一杯ステージに振り下ろす。ジャンプによって発生する落下スピード、単純な筋力と素早さ、それに重力が合わさって、見た目以上の破壊力を発生させた巨大ハンマーは一撃で隠し扉どころか、その下の階段の一部をも破壊せしめる。

爆発音にも似た轟音が鳴り響いたのを合図に、皇国兵が素早く大男の周りを固めるように展開し、中に自らの武器を向けて構える。3人程、天井にグラップリングフックを打ち込んで、そのまま天井に立つようにして構える者すらおり、もし伏兵が現れようと簡単に殲滅できるだろう。

 

「…………クリア!!」

 

軍曹がそう叫ぶと、全員が銃を下ろす。どうやら伏兵もトラップも、扉付近には配置されていなかった様だ。

 

「中はどうだ?」

 

「だ、団長!取り敢えずはクリアです!!」

 

「よろしい!ではお前達はこのまま、ここを見張っていてくれ。突入部隊を編成し、中に乗り込む」

 

これより数分後、他の建物からも隠し階段が見つかったとの報告が相次ぎ、最終的に発見されたのはレイフォリア統制府庁舎、軍の本部が設置されていたラルス・フィルマイナ統合基地、外務省出張所、レイフォリア軍港の計4箇所であった。

各国将軍協議の結果、突入隊を一斉にさせる事となった。編成は以下の通り。

 

統制府庁舎(指揮官:神谷)

・オーレンファング 一個分隊

・アルマゲドン 一個分隊

・赤衣鉄砲隊 一個分隊

・白亜の戦乙女(ワルキューレ)

・ムー統括軍 一個小隊

・ミリシアル陸軍 一個小隊

・アガルタ法国騎士団 魔導士20名

・学院守護軍 騎士30名

 

ラルス・フィルマイナ統合基地(指揮官:アンザール)

・装甲歩兵 一個小隊

・歩兵 一個小隊

・ムー統括軍 二個小隊

・ミリシアル陸軍 二個小隊

・アガルタ法国騎士団 歩兵80名、魔導士40名

・学院守護軍 騎士50名

・護学騎士団 歩兵100名

 

外務省出張所(指揮官:エクニオール)

・装甲歩兵 一個分隊

・ムー統括軍 一個分隊

・ミリシアル陸軍 一個分隊

・護学騎士団 歩兵60名

 

レイフォリア軍港(指揮官:カサダラ)

・装甲歩兵 一個小隊

・歩兵 一個小隊

・ムー統括軍 二個小隊

・ミリシアル陸軍 二個小隊

・アガルタ法国騎士団 歩兵150名、魔導士30名

・学院守護軍 騎士30名

・護学騎士団 歩兵200名

 

エクニオール、カサダラは何度か登場しているが、アンザールとは何者なのか。アンザールはミリシアル軍の将軍であり、空挺団が暴発した結果の尻拭いをする羽目になった可哀想な男である。因みに階級は中将。

階段の発見から30分もしないうちに突入準備が完了し、タイミングを合わせて階段を降る。

 

「これより内部に突入する。さぁ、地底探査の時間だ!!」

 

「行くぞぉぉぉ!!!!」

 

「しっかり後ついて来ぃ!!!!」

 

まず最初に突入するのは、皇国の装甲歩兵。これは何処の建物でも同じだ。装甲甲冑を持ってすれば、帝国が保有する対戦車ライフルをも耐える。つまり事実上、歩兵が倒す事は不可能なのだ。言うなれば歩く人間戦車であり、こういう時にこそ真価を発揮する。勿論装甲歩兵の指揮は、遠藤と権田川が取っている。

装甲歩兵の後ろには近接戦を行う騎士団や歩兵が続き、その後ろをミリシアル、ムー、皇国の順で降りて行く。統制府組の場合は変則的で、歩兵の後ろに神谷、ワルキューレ、赤衣が続き、その後ろにミリシアル、ムーの順で続く。

 

「案外、造りはしっかりしているのだな」

 

「ゲームなんかだと、もっとボロっちいイメージだよね」

 

「恐らく緊急時用故に、しっかりと作られたのでしょう。……だとしたら長官、山岳要塞は思っているよりも手強いかもしれません」

 

「向上ー。それは言わないでくれ、やる気が無くなる」

 

一応今は作戦中だが、神谷戦闘団の場合はかなり緩い。1番先頭を歩く遠藤と権田川も、普通に趣味話で盛り上がっている。どうやら権田川が今度の休みでリキバニアを作るそうで、テーマが変態だそうだ。どんな変態ポーズがあるかを聞いている様で、それに遠藤がえらく熱く答えている。作戦中だとは思えない程だ。

 

「なぁ、皇国兵さん?アンタらって、いつもこうなのか?」

 

「割とこんな感じだぞ」

 

「特にウチの場合はな」

 

騎士や歩兵達は、余りに信じられない光景にあんぐりと口を開けながら呆れていた。やがて最下層に到達し、そのまま周りの探索が始まった。

 

「電灯はあるが、電気が切れてるな。配線には異常ないし、大元がやられたか?」

 

「総員!警戒しながら探索開始!!伏兵、トラップに注意しろ!!!!」

 

神谷の指示が飛び、自然と皇国兵を中心にして探索が始まる。というのも装甲歩兵は頭に、通常の歩兵は銃にフラッシュライトを搭載しているが、特に騎士や歩兵は松明やランプを使っており、明るさの度合いが全く違う。見えなくはないが、やはり皇国兵の方が明るいし熱くなくて動きやすいのだ。

 

「ッ!こーきゅん!!!!」

 

「どうしたエリス!何を見つけた!!」

 

「レール!!レールがあるよ!!!!」

 

エリスが見つけたのは、地面に敷かれた無数のレール。しかも今、突入隊の大半が立っている場所より一段下にある。更には騎士か誰かが、奥にトロッコがあるのを見つけた。

 

「決まり、ですね。長官」

 

「そりゃ探知できねーわ。こんなモグラよろしく、地下に穴掘って地下鉄通してんだから。恐らくこの先は要塞に繋がってるんだろうが、まあ既に道は塞がれてるだろうな」

 

「ですね。まあ一応、確認位はさせましょう」

 

案の定、トンネルの先は爆破されて壁と天井が崩れており、流石にこれを突破するのは難しいと判断され、別に考えていた訳ではないが地下からの侵攻は諦める事となる。

地上に戻ると山岳要塞の詳細や、この撤退に関する計画書が発見された様で将軍達による会議が始まった。

 

「何だこりゃ!!要塞自体は、最低でも鉄筋コンクリート2m!?!?」

 

「なんて事だ………」

 

「我が極みの雷炎龍とて、これは………」

 

鉄筋コンクリートの厚さ2mが最低値とか、皇国の兵器を持ってしてもかなり難しい。バンカーバスターをありったけ動員するとか、そういうレベルの事をしないと無理だ。

 

「えっと、何だそのコンポタージュって?」

 

「はぁ。マリオリル、それじゃスープです。コンポタージュじゃなくて、コンクリート。硬い石みたいな物です」

 

「なら掘ればいいんじゃね?」

 

マリオリルの荒唐無稽な意見に、全員が呆れ返る。まあ確かに、掘ればいつかは穴が開くだろう。その前に死体の山が出来上がり、掘る前に死体の山を退かす所から始まり、その内に死体の山脈と化して掘る以前の問題にはなるだろうが。

 

「マギカライヒの若いの。それができれば、我らとて苦労はせぬわ」

 

「左様。しかも今回は鉄筋も付いている。これが何なのかは知らないが、それでも普通のより厄介なのは確かだろうて」

 

「………神谷閣下。皇国であれば、どうにかできるのでは?」

 

カサダラが神谷の方を向いて、そう聞いてきた。他の将軍達も、皇国であればという希望を持った目を向けてくる。だが生憎と、答えは無理なのだ。

 

「流石に無理だ。一応バンガーバスターっていう爆弾を使えば可能性はあるが、これだけの山どころか山脈を全部丸ごと要塞にしている以上、局所破壊しか叶わないだろう。これだけ距離が離れてると、艦砲射撃もギリギリ届かないしな」

 

「そ、そうだ!皇国には確か、波動砲なる兵器がある筈!アレは使えないのですか!?」

 

アンザールの言葉に、波動砲の存在を知る将軍は「その手があった!」とか「確かに彼の兵器であれば」と声をあげる。実際神谷も一瞬打開策が降って湧いたかと思ったが、それでも不可能だと地図を見て思い出す。

 

「単純な威力であれば、確実に破壊できる。ただこの要塞、メインはここにあるだろ。この位置だと他の山に遮れて威力が減衰する上に、そもそも山崩れでレイフォリアすら危うい。ちょっと現実的じゃないな」

 

「うぅーむ。帝国め、こんな要塞を建てるなんて聞いてないぞ!」

 

ドラッペンが椅子にドカッと座りながら、水をまるでヤケ酒を飲むかの様に煽る。他の者も見るからに疲れや憔悴が見て取れており、ここに来て士気は下がりつつある。

設計図を確認した辺り、少なく見積もっても弾薬、食料、水、医薬品といった物資は数ヶ月は持つ備蓄があり、要塞は皇国の火力を持ってしても攻略には骨が折れる重装甲。更には斜面に砲やら機関銃が据えられており、ここを破壊しようと被害は最小限に抑えられる構造だ。

 

「いっその事、爆弾でも仕掛けられたら楽なのにな」

 

「それができれば苦労せんわ」

 

マリオリルの意見にエクニオールがツッコミを入れる。国は違うのに、この2人はかなり仲がいい。だがマリオリルの言葉で、神谷は思いついてしまった。

 

「それだぁ!!!!!!!」

 

「おぉ!なんだなんだ、また何か思い付いたのかよ!!」

 

「マリオリル竜騎長マジでナイス!!そうだよ、爆弾を仕掛けんだよ!!!!」

 

「し、しかしどうやって忍び込むんですか?」

 

アンザールの言葉に、神谷はニヤリと笑う。何せ神谷の思いついた方法とは、忍び込む必要はない上に火薬もいらない。自然の力を借りるだけだ。

 

「忍び込む必要も、火薬もいらない。必要なのは、今目の前に広がっている」

 

「は?」

 

「諸君!天幕を出ろ!!そして前を見ろ!!!!」

 

言われた通り、天幕を出て前を見る。眼下に広がるのは半分廃墟のレイフォリア。そして各国の兵士。それから海くらいな物だ。これといった物はない。

 

「いや、何も無いじゃねーか」

 

「ゴウン魔導将。確か魔法を使えば、水を生み出せたな?」

 

「は?あ、あぁ。こんな具合に生み出せはするぞ。水生成(クリエイトウォーター)

 

ゴウンの手のひらから、水道の蛇口くらいの水がチョロチョロと出る。この世界では良く行軍中の水確保なんかで使用される、極めて基礎的な魔法だ。

 

「確かそれ、威力を上げて人1人を吹っ飛ばす位にもなったな?」

 

「その通りだが……。それだけだぞ?」

 

「それだけが、ものすごく重要なんだ。自然の恐ろしさ、奴らに教えてやるとしよう」

 

神谷はドス黒い笑みを浮かべると、早速色々と手を回す。決行は明日となり、その日は準備だけに留まった。

 

 

 

翌日 ダイジェネラ山岳要塞 第三客員室

「いつからだ。いつから歯車は狂っていた………」

 

レイフォリア出張所の実質的なトップとなっていたシエリアは、1人割り当てられた部屋で考える。思えば動きが早すぎた。異常だった。僅か3日で、レイフォリアは占領された。しかも奇襲ではなく、戦線を押し上げながらの3日だ。まだピンポイントで奇襲されたのなら分かるが、最前線から始まり幾ら各国の連合軍とはいえ、この侵攻速度は異常なんて言葉ですら言い表せられない。それは外交専門の彼女にでもわかる事だった。

 

「失礼します、シエリアさん」

 

「ランボール大佐……」

 

「シエリアさん。先程、会議で決まりました。非戦闘員、及びVIPにはこのまま本土に撤退して頂きます」

 

先程の会議で、レイフォリアに展開する全軍の指揮権を有するファンターレは決断を下した。現在この山岳要塞に撤退してきた統制府職員、そしてシエリアの様なVIPを潜水艦で本土に撤収するというものだ。

因みに引率と本土への伝令役として、ランボールも同行する事になっている。以降はこの要塞に立てこもり、何ヶ月でも徹底抗戦し続け味方の救出を待つ事になる。

 

「しかし海には、例の皇国海軍が展開している上、そもそも軍港は敵に押さえられているのでは?」

 

「ご心配には及びません。本要塞には緊急時の脱出に備え、潜水艦が地下に配備されています。それも試験的に開発された潜行深度と、潜行時間を向上させた改良型が。

流石に要塞の人員全員は乗れませんが、現在収容している非戦闘員とVIPの方々だけなら、どうにか乗せられる程度の数が揃っています。私も伝令のために同行しますので、何かありましたらお声掛けを」

 

「……わかりました」

 

「では後程、案内の者をこちらに寄越しますので、どうぞご準備を」

 

斯くして、シエリアとゲスタ含む外交官組とランボール、それから非戦闘員の統制府や出張所の職員だった者達は8隻の潜水艦により脱出。内7隻が皇国とムーの対潜哨戒網に探知され撃沈されるも、シエリア、ゲスタ、ランボールの乗った潜水艦だけは1ヶ月間の航海の末、帝国本土への帰還に成功する事となる。

だが一方のダイジェネラ山岳要塞は潜水艦が出港したのと、ほぼ同じタイミングで総攻撃に晒される事となる。

 

「敵軍接近!!!!戦車数百両!!装甲車……クソッ!!敵が多すぎて、地面を覆いつくさん勢いです!!!!!」

 

「戦闘用意!!!!」

 

分厚い耐爆シャッターが重苦しい音と共に開き、中から大量の火砲がせり出してくる。その数、上は41cm下は10cmまで選り取り見取りの268門。更には頂上部分に高角砲が241門と25mmの単装機銃169基、連装機銃205基、三連装機銃290基の計664基。勿論、対歩兵用の12.7mm機銃が890基ある上、各所に銃眼もある。本国の施設をも上回る帝国軍史上類を見ない、レイフォリア最後にして最強鉄壁の無敵要塞。それがこのダイジェネラ山岳要塞なのだ。

 

「チンタラするな!!」

 

「砲撃用意!砲門、開け!!!」

 

兵士達は遂に訪れた実戦に心を躍らせつつも、訓練通り素早く準備を整える。自分の受け持つ大砲に仲間を伴って配置につき、相棒である大砲をチェックする。ラックから分隊支援用の機関銃を取ってきて、銃眼の前に設置し初弾を装填する。負傷兵に備え、担架や救急キットを自分の近くに置いて備える。どの兵士達も要塞での実戦では初めてでありながら、もしかしたら訓練よりも良い動きで準備を整えた。後は攻撃の合図を今か今かと待つだけだ。

だが、彼らは知らなかった。この攻撃準備こそが世界連合の、否。神谷の狙いなのだ。

 

「ありがとよ帝国……。沖田さん!教官!!」

 

『撃てぇぇぇぇぃ!!!!!!!』

 

『ミサイル撃ち方始めぇ!!!!』

 

神谷が無線に叫んだ瞬間、野太く威厳のある2つの声が響く。1人は第二主力艦隊の提督、沖田十蔵。もう1人は第三主力艦隊提督、麦内誠光の声だ。何れも経験豊富かつ、神谷に取っては学生時代の恩師でもある。

この両名が放ったのは、対艦ミサイル桜島II型。通常の弾頭ではなく内部に特殊な数千℃のドロドロとした液体が封入されおり、着弾すると液体が周囲に流れ出す代物になっている。しかもそれが全艦合計で600発も放たれたのだ。

 

「さて、連合軍の将兵諸君。まずはショーの開幕を告げる、派手な号砲を聞きたまえ」

 

神谷が無線でそう言った瞬間、ミサイルが次々に着弾。斜面に設置された大砲を悉く破壊していき、それに合わせる様に皇国、ムー、ミリシアルの爆撃隊が頂上を焼き払った。このたった一度の攻撃で、帝国は抵抗する手段を殆ど失ってしまう。

 

「全砲、及び頂上の対空陣地は完全に沈黙!!」

 

「火の手が各地で上がっています!!」

 

「よーし!ヘリボーン部隊、及び工作部隊突入!作戦の第二段階を始めるぞ!!!!」

 

ゴウン率いる各国魔導士を乗せたヘリボーン部隊は、要塞の頂上に着陸し魔導士達と皇国兵を展開。そのまま手近のハッチを全開で開け放ち、その中に魔法で生み出した水を流し込む。

 

「魔法って便利だな」

 

「アホ!優雅に見学してる場合じゃねーだろ!!」

 

「そうだったそうだった!俺達もスペシャルアイテムを突っ込まねーと!!!!」

 

皇国兵達は大型のポンプを設置し、そのままレイフォリアの海まで連結したホースで水を汲み上げ、魔導士以上の速度で水を流し込む。ついでに言うと、こっそり神谷も海と要塞内部を転移門(ゲート)で繋げ水を流し込んでいる。

 

「上が水を流し始めた!!栄えある騎士団諸君!!泥遊びの時間だ!!!!!!」

 

「野郎共!!水を親の仇だと思え!!!!固めるんだ!!!!!!」

 

「土木工事も兵士の仕事だ!!やるぞ!!!!!」

 

下に展開していた各国の歩兵は、大半が銃の代わりにピッケルやシャベル、或いは防水加工された注入剤を吐き出す特殊な装備を持ち、斜面を登って水が出ている所を片っ端から人海戦術で埋めていく。

 

「ここから出てきてる!!!!」

 

「土と注入剤で塞げ!!」

 

「こっちもだ!!!」

 

「そこは石でいいだろ!!」

 

「あっヤバっ。足じゃ無理だこれ」

 

一応作戦中だが、心なしか兵士達は楽しそうである。だが中にいる帝国兵は溜まったものじゃない。

 

「どぅわぁぁぁぁ!?!?!?!?」

 

「助けてくれーーーーー!!!!!!」

 

「何で水が!!!!!」

 

大量の水は濁流となり、人を簡単に押し流す。要塞という閉鎖的な空間は、沈みゆく船にも良く似ていた。だがここは帝国の作った大要塞。内部は侵入者対策の観点から入り組んだ作りになっており、兵士達に取っては急に流れが変わるわ、流された勢いのまま壁に激突するわ、狭くて逃げられないわで地獄だったが、奥の司令部区画や居住区画にいた人員にとっては逆に時間稼ぎとなり、更には非常時には耐爆扉にもなる分厚い防火扉を閉めることで、どうにか生き残る事に成功する者も多くいた。

 

「おい開けろ!!開けてくれ!!!!」

 

「見捨てないでくれよ!!おぉい!!!!」

 

「水が来たぞ!!!!」

 

「ま、待って……ゴボゴボゴボゴボ」

 

勿論、中には尊い犠牲となった者達もいる。だが散った帝国兵達よ、どうか安心して欲しい。生き残りもすぐに其方へ行く事となる。

 

『水満水でーす』

 

「極帝、行くぞ!盛大な花火を打ち上げよう!!」

 

「心得たぁ!!!!」

 

神谷は極帝に飛び乗り、大空に舞い上がる。空には既に他のワイバーン達も展開しており、まるで作戦の初めにノーベース要塞を焼き払った時のようだ。

 

「竜騎士諸君!!我々は共にこの作戦の幕開けを行っただが、ならば幕を引くのもまた俺達の役目なのは道理だろう!?という訳で全騎、最大火力をぶち当てろッ!!!!!!!!!!」

 

次の瞬間、竜騎士達と相棒のワイバーンは咆哮を上げる。その声は各々の祖国にまで轟かん勢いだ。そのままワイバーン達は最大火力の導力火炎弾を発射するべく口を開き、炎の球を口内で生成して周りの魔力やら何やらを掻き集め赤黒い炎を作る。

風竜は炎の代わりに、圧縮空気弾という導力火炎弾の上位互換を使う。だが極帝の加護を受けた風竜は、その空気弾に極みの雷炎竜の様なプラズマを纏わせる。

各国のワイバーンが一堂に会するばかりか、その中心に極帝が立った上で極帝の加護を受け取る。それ光景は文字通り神話の1ページの再臨であり、見るもの全てを圧倒した。この世界に関しては無知の皇国兵も同様に、その神々しさを目に焼き付ける。

 

「全騎、撃てぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

「掃滅せよ!オメガエレメンタルフューリー!!!!!!!」

 

無数のワイバーンが放った炎の塊は、ダイジェネラ山岳要塞の頂上に降り注ぐ。そして開け放っていたハッチや扉から内部に侵入し、やがて水と触れる。そうすると何が起こるか。火災が鎮火される様に、この炎も消えるのだろうか?

否。断じて否。確かに火災程度なら、酸素を遮断された炎は消える。だが今、要塞内に入り込んだ炎は数万℃単位の地獄の炎と言って差し支えない温度だ。そんな温度であれば、水は触れたそばから一瞬で気化していく。当然だが気化した水蒸気は体積が増えるのだが、今この要塞内には中を埋め尽くす水で満たされている。そんな水が一瞬で蒸発し、一斉かつ大量に気化すればどうなるだろうか?

 

ズゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!

 

幾らコンクリート製だろうが関係なしに破壊し、言うなれば火山が噴火した時の様に一切合切区別なく要塞その物を吹き飛ばす。というかこの水蒸気爆発という現象自体、そもそもが火山の噴火時に良く観測される現象だ。だが科学を知らない者達が多い連合軍の兵士達からすれば、今目の前で起きた出来事は神が起こし給うた奇跡に見えてならなかった。

この日、レイフォリア奪還と第二文明圏からの帝国軍駆逐を目的とした『審判の炎作戦』は、ダイジェネラ山岳要塞の完全消滅という盛大なフィナーレを持って、連合軍の勝利という形で終結した。これでようやく、世界地図は中央暦1639年9月8日以前に戻る。

 

「我が友よ。これで終わり、なのか?」

 

「あぁ。これで俺達、皇国の出番はおしまい。ここからは裏からアレコレやるから、こんな感じで表立って動く事も極端に少なくなる。後は他の各国が勝手にするだろ」

 

「そうか。もう少し暴れたかったがな」

 

「そう言うな。久しぶりに家に帰って、ゆったりまったりやろう。お前の好きな肉料理も食えるぞ」

 

「ならば良かろう!!」

 

そう。これで皇国の介入も最後なのだ。グラ・バルカス帝国は第二文明圏から駆逐され、更には人も物資も何もかも失った。以降は向こうも防衛戦にシフトするだろうし、一色と川山の予測では講和交渉の可能性もある。

となれば神谷戦闘団も、大手を振って皇国に帰還する事となる。となれば他の戦闘団や部隊も解体や規模の改編が為され、主力は帰還する流れになる。これで漸く、戦争は終わる。勿論残された課題も大量だが、今はこの勝利を祝っても良いだろう。

 

 




はい。という訳で長かった帝国との戦闘も、完全とは言えませんが一先ず終わりです!うん、長かった。マジで長かった。何せこの審判の炎作戦だけで3ヶ月半。単純に皇国が本格介入した部分から考えると約1年半とちょっと。
ホント、ここまでお付き合い頂いた読者の皆様には感謝しかありません。なんか後書きのノリが最終回とか「ここで更新を終わります。ありがとうございました」とか言いそうな感じですが、ご安心を。一応まだ話は続きます。
とりあえず次回、場合によってはその次も軽く日常パートを書こうかなと思っていまして、それが終わると2年ぶりの新章突入です!というわけでみなさん、次回もどうぞお楽しみに!
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