最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第百二話夏先取り

1ヶ月後 東京都 神室町 神谷邸

「————んぁ?」

 

「お目覚めですか、旦那様。おはようございます」

 

「……爺ちゃん?ぁぁ、そうか。家か」

 

「えぇ。この早稲、流石に戦場のど真ん中にまでお仕えするつもりはございません」

 

この忠義があるんだか無いんだから良く分からない上に、この上なくくだらない会話。何より前線で使う簡易ベッドとは比較するのが烏滸がましい程に寝心地がよく、手足をバタバタ動かしても先に指先が届かない程に広いベッド。そして何より硝煙や鉄の香りではなく、甘い花の香り漂う掃除の行き届いた部屋。ここは戦場ではなく、麗しの我が家の寝室だ。

 

「あークソッ。まだ感覚が戻らねぇ。違和感やべぇわ」

 

「昨日の今日でございますからね。しかし流石は旦那様、08:00ピッタリで御座いますよ」

 

半年近くグラ・バルカス帝国相手に大立ち回りを繰り返し、歴史に残る戦争を行ってきた訳だが、炎の審判作戦によって終わりを告げた。あれから数週間は残党狩りと後始末を同時進行で行い、情勢に一定の区切りが付いてからは神谷戦闘団含め、皇国軍全部隊は撤退。入れ替わるようにして本土から小規模の部隊を配置して、半年間ずっと戦っていた派遣部隊は欠員なく帰還した。

兵から下士官、更には尉官くらいの階級は即日家に帰れたが、神谷を始めとする高級将校の場合は詳しい申し送りの作成やら報告書やら実際に報告に行ったりするわで、ある意味で実戦よりも面倒な戦いに身を投じる羽目になり、何だかんだで家に帰還できたのは帰国から3日経った昨日の夜であった。まあ、その代わりに1ヶ月間は休暇にして貰っているが。

 

「規則正しいのは軍人の職業病だな。あー……学生時代の朝方に寝て、昼時に起きる生活が懐かしい」

 

もう少しゴロゴロしていたいが、余りゴロゴロしすぎると今度はエルフ五等分の花嫁の誰か、若しくは全員がベッドに特攻(物理)して叩き起こされる未来しか見えないので起きる。

幾ら鍛えてようが、成人女性の質量がエルフの身体能力やら何やらで加速して突入して来たら、流石に応える。というか悶絶して、暫く動けなくなるだろう。

 

「着替えはどうされますか?」

 

「あー…いや、このままで良い。朝飯先に食いたい」

 

「畏まりました」

 

ダイニングへと移動し、朝食を摂る。本日のメニューはベーコンとサーモンのエッグベネディクト、スイカ、フルーツジュースだ。シンプルだが、だからこそ料理人の腕前が如実に現れる。

 

「おはよう浩三!寝坊している様では、部下に示しがつかないぞ?」

 

「言うて寝坊してねーよ。というか寝坊するんなら、もっとしっかり寝坊するわ!」

 

「それはアーシャ姉様が早いだけでしょう?浩三さんは、至って健康的な時間です」

 

「そもそもアーシャは朝から鍛錬する様なタイプなんだから、他の人と一緒にしないでちょうだい!」

 

ダイニングにはアナスタシア、ミーシャ、ヘルミーナが居た。残るエリスとレイチェルは、恐らくまだ寝てる。少なくともレイチェルは絶対寝てる。

 

「ミーナ姉様!日本にだって早起きは三円の徳とかいう諺があるし、学校には朝練というのもあるのだ!!だからこれは普通の事だろう!?」

 

「へぇー。素振り150回、腹筋と腕立て100回、スクワット50回、ランニング5kmが普通なのね。知らなかったわ。ねぇ、ミーシャ?」

 

「はい!それに朝から過度な運動は、身体に毒だそうですよ?」

 

アナスタシアは知っての通り武人気質。お陰で毎朝、基本欠かす事なく朝練という名のガチ鍛錬を行っている。まあ神谷も神谷で基本やっているが、こっちの場合は休日には基本やらないし、平日でも余りに疲れている時もやらない。

しかもアナスタシアが考える朝練とは、アスリートでもキツそうなメニューである。それを朝の寝起きと共にやると言うのだから、神谷を持ってして「俺でもできる気しない」と言わしめる。

 

「し、しかしだな!」

 

「はいはい、そこまで。折角の朝飯が冷めちまう。食べようぜ」

 

手を軽くパンパンと叩き、喧嘩とまでは行かない騒ぎを止める。このまま言い合っていたら、食事が不味くなってしまう。それだけは避けるべき事態だ。

 

「………美味い。美味いぞ料理長ー」

 

「…だそうですが?」

 

「イェーイ!!!!」

 

廊下で聞き耳を立てていた料理長は、ガッツポーズしながら自らの居城、キッチンへと帰っていく。毎回毎回、料理を作る度に現れては必ず反応を見る料理長だが、やはりそういう姿勢こそが料理を妥協しない精神に繋がっているのかと、早稲は考える。

そんな風に考えていると、廊下をエリスが歩いてきた。しっかりメイクとセットもしており、寝起きだとは思えない姿だ。

 

「おはよう早稲さん」

 

「おはようございます、奥様。既に旦那様とヘルミーナ様、アナスタシア様、ミーシャ様は朝食を摂られていますよ」

 

「そう。わかったわ」

 

「では、どうぞごゆっくり」

 

早稲は扉を開けて、エリスを中に入れる。エリスが来たとなれば、残るはレイチェルだけなのだが、中々来る気配は無い。メイドか誰か、女性の使用人に様子を見て来てもらおうかと思っていると、小走りでレイチェルがやって来た。

 

「はぁ…はあ…。あっ、おっはー早稲さん!」

 

「おはようございます、奥様。そんなに急がれてどうされました?朝食のお時間は、まだまだ余裕があるかと思いますが……」

 

「ちょっと思い付いた事あるから、早くそれを伝えたくて!あっ!私、リンゴジュースね」

 

「かしこまりました」

 

早稲が扉を開けるより前に、レイチェルが勢いよくドアを開ける。最早「開ける」というよりは、ドア自体を破壊せん勢いでぶち破る様なパワーであり、物凄い轟音がダイニングに響く。

 

「うおぉ!?」

 

「プール!!!!!!!」

 

「「「「「…………はぁ?」」」」」

 

ドアを開けてダイニングに入ってきた第一声が「おはよう」とかではなく、「プール」では意味がわからない。その場にいた5人全員が動きを止め、その後ろで早稲も顔や声には出さなかったが、頭の中は一瞬の内に?で埋め尽くされた。

 

「れ、レイチェル?プールがどうしたのかしら。プールなら、ほら。ここにもあるわよ?」

 

「違うよー!ねぇ、こーくん!!日本の夏休みはプールか海でしょ!?」

 

「あ?あー……まぁ、理想像はな」

 

確かに夏休み(理想)、つまりアニメや漫画等のフィクションではその通りだ。だがしかし、夏休み(現実)は違う。住んでる場所やじいちゃんばあちゃんの家の近くにある様な環境ならいざ知らず、最近の夏休み真っ只中の暑さは尋常ではない。水辺に言ってしまえば涼しくとも、その道中で身体がアイスよろしく溶けそうな熱さの中を突破しなくてはならず、かなりの頻度で家に引き篭もる事になる。

 

「だからほら、行こうよ〜」

 

「いやいや、あるから家に。下にあるだろ」

 

「だってあれ、普通のプールじゃん。私が行きたいのは、レジャープール!」

 

レイチェルの気持ちは分からなくもない。やはり"レジャー"プールである以上、その設備は普通のプールとは雲泥の差である。スライダー、波が出るヤツ、流れるヤツ、アスレチック、噴水etc。

この神谷邸にもプールがあるが、あくまで横15m縦25mの学校とかにあるプールであり、本当に泳ぐためのプールだ。一応隣に飛び込み様の深いプールがあったりもするし、何より家にプールとか日本では珍しい事ではあるが、遊ぶには何処か物足りなさはある。

 

「とは言ってもだなぁ……」

 

「予算は全部私のポケットマネーから出すからさー!!」

 

「違う違う。プールまだやってたり、やってなかったりの差があるし、何よりオープンしてすぐは人がヤバい。最早、人肌見に行くような地獄だぞ?」

 

本日は7月入って最初の土曜日。プール開き最初、或いは2回目の土曜日である。となれば、その来場者数は物凄いものになる。流れるプールに行けば、見えるのは水ではなく誰かの背中。しかも満員電車並みの近さな上、お盆の真夏日よりマシとは言え真上から降り注ぐ太陽の熱は、人という肉壁で逃げることなく留まる。その結果、水も心なしかヌルく感じる始末だ。こうなっては楽しいレジャーとは程遠く、態々高い金を払ってまでプールでヌルいサウナ体験とかいう訳の分からない経験をする羽目になる。

 

「やだ!絶対何が何でも行く!!!!だっていつ死んじゃうか分かんないじゃん!!!!!!」

 

「まあ、それは確かに一理あるな」

 

「強ち間違いじゃないですけど……」

 

「そう……かし…ら?」

 

「うーん………」

 

兵士とは戦場で死ぬ可能性があり、今は戦時ではある。だが生憎と皇国は、この戦争で死者というのを出してはいない。負傷はあるが、死者は出していないのだ。それもあって間違ってもいないが、当たっていない様な気もしなくはないという、なんとも微妙な空気感が流れてしまっている。

 

「って言ってもなぁ。人が多いプールとか嫌だし…………。あっ!」

 

「何々!?もしかして前に出した懸賞のチケットを思い出したとか!?!?」

 

「俺は懸賞とか信じないタイプだ。そうじゃなくて、簡単にいえばチートで突破しようかなと」

 

「チート?まさか、なろう系の?」

 

「そうだな。間違っちゃいない」

 

神谷は椅子の肘置きにあるタブレットを操作し、テーブルに立体映像の神室町を表示させる。今更だが、この際なので神室町について軽く解説しておこう。

神室町は大きく6つの地区に分かれている。北部には高度な医療センター、賃貸オフィス街、雑居ビル、安く住めるメガビルディング、本土に続く鉄道駅や高速、フルオートメーション化された物流拠点がある『歌舞伎』

東部には北部に港湾地区、発電所、町役場、警察署、消防署などの町の中核を担う施設、南部に中流層クラスのマンション群のある『紅蓮』

中心部には町の中で1番値段の高いタワマンが立ち並び、ご存知の神谷邸もある『荒坂』

西部には神谷グループのメインとなる参加企業のオフィス群が立ち並ぶ『神谷』

南部には一軒家が立ち並ぶベッドタウンの他、天下一通りと呼ばれる地上40階のビル群を歩道で繋げた空中歓楽街のある『阿頼耶』

南西部にはカムロモールやスタジアム、遊園地、リゾートホテル、人口ビーチのある『太平』と以上、6つの大きな地区から構成されている。今回は太平地区の地図が大きく表示された。

 

「ここ。このレジャープール、ウチの資本だ。しかもオープンは来週で、今日はまだクローズしている。連絡してみなくちゃ分からんが、場合によっちゃ貸し切りだ」

 

こういう時の神谷家直系子孫は楽でいい。普通なら出来ないことも、ある程度はコネと家の威光で何とかなる。連絡すると「テストがてら遊んでくれ」と管理者からも言って貰えたので、手早く朝食を平らげて準備を始める。

 

「あの、浩三さん?」

 

「どうしたミーシャ。もしかして、水着無くしたか?」

 

「いえ、そうではなくて。えっと、転移門(ゲート)を使うんですよね?なら水着を着てから行けばいいんじゃないかなーって」

 

「バッカヤロー!!」

 

どういう訳か隣で聞いていたレイチェルが叫び、ミーシャの肩を掴んでグワングワン揺らしながら熱弁する。

 

「敢えて私服で行き、更衣室で着替える!!この一工程を惜しまずに挟む事によって、気分が上がるんだよ!!!!ほら!!更衣室でお互いのおっぱい揉んで百合展開とかさ!!こーくんが覗きに来たりとか、それがバレそうになって狭いロッカーに隠れるとかさ!!!!」

 

「え?えぇ!?」

 

「……ねぇ、こーきゅん?」

 

「最初の部分は同意するが、中盤以降は断固として否定します。はい」

 

レイチェルのお陰で、隣のエリスが目が笑ってない満面の笑みを浮かべながら見てくる。男としては後半も認めなくはないが、流石に監視カメラとか収められでもしたら面倒な事この上ない。もし流出でもすれば、炎上からのスーツ着て正座して神妙な顔で「ごめんなさい」する事態になるだろう。君子危うきに近寄らずは権力者の基本だ。

 

「まあ、取り敢えずとっとと着替えろー。水着で行ったら、帰ってくる時にびしょびしょで帰宅だぞ」

 

という訳で、適当な私服に着替えてプールへと向かう。当然だがプールの敷地内には人は誰もいない。監視員すら居ない。ここのプールは基本的に全てAIが管理しており、安全上でも法律上でもオープン中は人を配置するが、それでも人が居なくても全て稼働できるように設計されている。

 

「やったー!!!!プールだよプール!!!!!」

 

「早く着替えるぞ!!!!私も早く泳ぎたいんだ!!!!!」

 

レイチェルは分かるが、まさかのアナスタシアまでもがテンション上がっているらしい。2人は我先に更衣室へと走っていき、その後ろを他の3人が追いかける。

 

「じゃあ、俺も着替えようかねぇ」

 

とは言っているが、神谷の場合は殆ど着替える必要はない。適当なロッカーにバックと着ている服とズボンを脱いで、適当に畳んで放り込んで終わりだ。何せちゃっかりパンツの代わりに海パンを履いて来ており、着替えは30秒で終わる。

 

「どうせ女性陣は時間かかるし、今の内に浮き輪用意しとくか」

 

防水リュックに詰め込んできた浮き輪の類いを、オープン中は浮き輪ショップとして使われる小屋に持って行き、業務用の電動ポンプにセット。爆速で膨らませていく。

 

「普通の浮き輪6個、屋根付きのヤツ2個と貝殻のヤツ2個、サメが3個、ボート型2個、ついでに戦車型2個と馬鹿でかい白鳥が1個と。

………………うん、我ながら持ってきすぎたな!」

 

幾ら何でも持って来すぎだが、仕方がない。金は腐るほど持っている上に、こういう時は全力で浪費するのが神谷という男だ。とは言え、膨らませるのは面倒臭い。物にもよるが、複雑な物は膨らませるべき場所が数ヶ所、物によっては10ヶ所近くあったりする。

今回は普段なら浮き輪の販売、レンタルをしている小屋の中なので、業務用の電動ポンプがあり、尚且つ数もかなりある。その為、意外と早く膨らませられるが、それでも全ポンプをフル稼働させて膨らませに行っている。だが15分もすれば終わる訳で、その後は更衣室近くの椰子の木か何かの下で待つ。

 

「7月だったのに、普通に熱ぃ……」

 

一応ここは日影の筈なのだが、それでも充分に熱い。持ってきたクーラーボックスからドリンクでも出そうかと思ったが、その前に5人が出てきた。

 

「おぉ。来たな、おま………」

 

そして時が止まった。ヘルミーナは光沢のあるサテン生地のディープVホルターネックビキニとハイレグボトム。アナスタシアはブラックのバンドゥビキニとジーンズ風のボトム。アーシャは水色のレースアップビキニとフリル付きのスカート風ボトム。レイチェルはストラップ多めのエメラルドグリーンのビキニとボトム。そしてエリスは紫の眼帯ビキニとフリル付きボトム。

何と言えばいいのか、真っ先に頭に浮かんだのがエロゲーのパッケージである。そもそもエルフがビキニ着てる時点で色々くる物があるのに、それが×5とか、オタク心が破壊されかね無い程に興奮してしまう。

 

「どうどう!?似合ってるでしょ!」

 

「レイチェル…お前まさか………」

 

「私監修ですッ!」

 

「よくやった!」

 

心の底からのサムズアップをレイチェルに贈る。流石、日本のサブカルに汚染………影響されていただけはある。オタクのツボというものを、よく理解している。

 

「ねぇ!早く泳ぎましょ!!それともスライダー!?」

 

「基本はスライダーが混むから先に行くべきだろうが、まあ今回は俺達だけだし。どっちでもいいぞ」

 

「ならまずは泳ぎたい!!こんなに澄んだ水が大量にあるのは初めてなんだ!!」

 

一応アナスタシアのキャラは一言で言えば武人。沈着冷静というタイプなのだが、どうやらプールが大層お気に召したらしい。目をキラキラさせている。

 

「なら行くか!このプールの名物、ビッグウェーブ!!」

 

「ビッグウェーブ、ですか?」

 

「まあ来たら分かる」

 

小屋から浮き輪を引っ張り出し、それを身体にはめる。このコースは普通の浮き輪こそが1番面白いので、ごく普通のドーナツの様な浮き輪だ。

 

「行くぞー!!!!」

 

神谷を先頭にプールに入る。流れに合流した瞬間、6人はかなりの勢いで流されていく。

 

「こ、これは!!凄いな!!!!」

 

「ちょっと流れが強いわよぉ!!!!!」

 

「確かにバランスが取りにくいですー!!!!」

 

「でも意外と楽しいわ!!」

 

「きぃもちい!!!!!」

 

アナスタシアは軽く驚きながらも楽しんでいるし、エリスは流れの強さに文句言いつつも顔は笑っている。ミーシャは流されるままとは言え、意外と楽しんでいるだろう、多分。ヘルミーナは普通に楽しんでいるし、レイチェルに至っては早速流れを掴んで器用に動いている。

 

「日本一流れが強いプールだ!!存分に楽しんでくれ!!」

 

神谷はそう叫ぶと流されるままにプールを進んでいく。他の5人も神谷の後を追っていく。

 

「あら?浩三くん!なんか前から波が来てない!?」

 

「ここは前からも来る!波に突っ込めぇ!!」

 

神谷が叫ぶと同時に、波同士がぶつかる。その波が他の波を巻き込み、大きな波となって6人を飲み込む。

 

「ひゃっふー!!!!」

 

「待って鼻に入っちゃった!!」

 

「げほっげほっ!」

 

「それ聞いてないですよ!?」

 

「参る!!!!」

 

「こーきゅんの馬鹿ぁ!!!!」

 

レイチェルとヘルミーナは鼻に水が入ったり、気管に水が入ったみたいだが、ノープロブレムだ。ここのプールはそういう場所である。

1周が2キロのビッグウェーブを3周してきた所で、今度はウォータースライダーへと向かう。まずは6人乗りの超大型浮き輪を使うスライダーだ。

 

「この浮き輪、でかすぎないか?」

 

「でも6人乗りでしょ?普通じゃないかしら」

 

6人が浮き輪に座る。だが今回は係員が居ないので、神谷が蹴って浮き輪を押し、そのまま飛び乗る様にして乗り込んで滑る。

 

「これは中々の物だな!!」

 

「角度が凄いです!!」

 

「きゃーっ、楽しー!」

 

「ちょ、ちょっと私バック!!バックなんだけど!!」

 

「大丈夫よ。後ろは……空が見えるわね!!」

 

「ミーナ姉さん!?全然大丈夫じゃないわよー!!!!!」

 

叫び声がトンネル内に木霊して、かなり楽しい。右へ左へと浮き輪が行き、やがてスロープへ突入。そして加速していき、最後は下のプールに着水だ。

 

「あっ…」

 

尚、神谷だけバランスを崩しプールはダイブ。その後の出てき方がターミネーターだとレイチェルに笑われた。

 

「さて、次は何だ?」

 

「ねぇ!次は私が気になってる所に付き合いなさいよ!!」

 

エリスを先頭に、子供向けのアスレチックプールに連れて来られた。大人には少し小さいが、それでもこういうのは楽しい。

 

「これは中々楽しいな!」

 

「でしょー?私こういうの大好きだから!」

 

「私も好きですよ。こういう所」

 

「というかこれ、森を思い出すわ」

 

「あっ、それだ!何かに似てると思ったら!!」

 

元々5人はクワ・トイネ公国のプランツァーリの奥地、ナゴ村に住むハイ・エルフと呼ばれるエルフの上位種。森や山を歩く事に関しては、レンジャー隊員をも上回る。

しかもエルフ自体が身体能力が普通の人間よりも上であり、そのエルフの上位種ともなれば尚の事。こういうアスレチックは上手い。

 

「よーし、ならば!!」

 

神谷は悪い顔をしながら、近くの高台に上り設置されている放水銃で5人を狙う。

 

「ファイ、いや!ウォーター!!!!!」

 

トリガーを引き絞り放水開始。まあまあの威力の水が、5人に襲い掛かる。

 

「ちょ、ちょっとこーきゅん!?何するのよ!!」

 

「ふふ、それぇっ!!」

 

「わっ!ちょっ!!こーくん危ない!!そういう裏切りは間に合ってるんだけど!!!」

 

「ふははは!!悪役万歳!ヴィランこそ至高!!!!」

 

神谷は続けざまに放水する。5人はアスレチックを駆け巡りながら逃げるが、神谷の巧みな射撃により逃げ道を失っていく。

 

「浩三め!なんと楽しい真似をしてくれる!!」

 

「でもそろそろ、お灸を据えないとね。ミーシャ!」

 

「はい!ウォーターボール!!」

 

次の瞬間、ミーシャの魔法が飛ぶ。戦場や訓練であれば避けただろうが、まさかの反撃に神谷は避けきれずにしっかり顔面にクリーンヒット。痛気持ちいい攻撃に、たまらず逃げ出す。

 

ガコン

 

「ん?ガコン?」

 

だが逃げ出したタイミングが良いのか悪いのか。巨大水バケツの放流とタイミングが重なっていた様で、今度は真上から大量の水が降ってきた。

 

「うそー!?!?!?」

 

上向いてたお陰で鼻に水は入るわ、目は地味に痛いわ、冷たいのが槍の様に皮膚に刺さるわで、かなり痛い目をみた。

 

「あ、こーきゅんがやられたわ!!」

 

「ちょっとミーシャ!やり過ぎよ!」

 

「何もしてないですよ!!」

 

「でも、こーくんなら大丈夫でしょ?」

 

「確かにな」

 

水浸しの中、ヌッと現れる神谷。まあ何だかんだで、こういうのは気持ちいいものだ。

 

「濡れた濡れた。よーし!次は何処だ!!」

 

「あっ!ならさ、またビッグウェーブに行きたい!!

 

「あっ!ならさ、またビッグウェーブに行きたい!!あれ結構楽しい!!」

 

「なら次はそれを攻めるぞ!!」

 

それからお昼まで、ひたすら遊んで過ごした6人。昼は持ってきた弁当で軽く済ませ、午後からはまた違うアトラクションへ。

その中でも一際目立ったのが、水上アスレチックだ。浮き輪で水上を漂う大型ボートやイカダを使いながらゴールを目指す物なのだが……。

 

「流石1番難しいコース。かなり歯応えがあるな」

 

「でも楽しいわ、こういうの」

 

「水上にアスレチックなんて、やっぱり面白い発想するわね!楽しくて仕方ないわ!!」

 

「私はもう無理ですぅ……。体力が……」

 

「ミーシャは魔法使いだからな。私はまだまだあるぞ!」

 

「私も木の上飛び跳ねて獲物に迫る、ハンターみたいな事してたら意外と余裕かも」

 

ミーシャは既に死に掛けているが、それ以外は神谷含め全員アスレチックに熱が入っている。

 

「行くぞー!!!!!!!!」

 

まずは神谷が突っ込む。最初に現れたのは、丸太の浮き輪渡り。水上なだけあって、濡れていて滑りやすい。なら、それを逆手に取るまで。

 

「スケート作戦開始ー!!」

 

取り敢えず神谷はスケートよろしく、足を器用に滑らせて無理矢理突破。途中落ちそうになるが、勢いに任せて強引に突き抜ける。

 

「こーきゅん!?」

 

「何今の!?水蜘蛛の術!?」

 

「武術の次は忍術か……」

 

「魔術でもないですし………」

 

「真似できないわよ!」

 

「いやー、偶然だ。出来るかなーでやったら、意外とできたわ。アハハ」

 

そのまま1人先にアスレチックをクリアしていく。連続ターザンに、ピラミッド越え。ボルダリングモドキに、網抜け、壁がないスライダーと、色々とあるが難なく乗り越える。

 

「ちょっ!浩三くん先行きすぎ!!!!」

 

「もう私………無理です…………」

 

「ミーシャー!しっかりしろー!!!!」

 

「アナスタシア殿、失礼。………死んでるな!こいつは!!」

 

「レイチェル!訳わかんないネタやんないの!!」

 

「俺は分かるぞー」

 

叫び散らかし絶叫し、アレコレ言いながらアスレチックを楽しむ。最後は馬鹿でかい、名前は知らないが片方が飛び降りて先端の人間を空中に打ち出すアレで遊びまくる。

 

「浩三さーん!良いですかー!?」

 

「いつでも来いやー!!」

 

神谷が先端、残り5人で飛び降りる。5人の体重があれば、神谷だって容易にぶっ飛ぶだろう。

 

「「「「「せーの!!!」」」」」

 

「うぉっほぉ!!?!?」

 

次の瞬間、感じたことも無い衝撃が背中に走り、そのまま空高く打ち上がった。抜けるような青い空に、わたあめの様にフワフワの雲。そして真っ白に輝く太陽が見えて、走馬灯の様に昔の子供の頃の夏が蘇る。

 

(あぁ………。夏はやっぱり楽しい……………)

 

なんて感傷に浸っていたが、もうその0.何秒もすると水面に背中から叩き付けられる。

 

ガボガボガボガボッ(いってぇぇぇぇぇ)!!!!!!」

 

上がってきた神谷の背中は真っ赤になっており、すぐにミーシャがヒールをかけた事で治った。結局この日は夜遅くまで遊び尽くし、早稲からの鬼電が来るまでプールを遊び尽くした。

 

 

 

翌日 神谷邸 ウォーキングクローゼット

「ん、よーし」

 

「お似合いでございますよ、旦那様」

 

プールから帰ってきた翌日、神谷は急遽皇居に出向くことになった。筋肉痛もあるが、そこは治癒魔法で無理矢理治し、暑いが江戸時代からある神谷家伝来の紋付羽織袴を着る。しかも今回は羽織を皇国剣聖の至極色羽織にしており、当然刀も帯刀する。本来なら不敬だろうが、その辺は問題ない。

 

「では行ってくる」

 

「お気を付けて」

 

神谷は迎えのセンチュリーに乗り込み、皇居に向かう。エルフ五等分の花嫁は留守番だ。

正直言うと家でまったりしたいが、主君の頼みとあらば行かざるを得ない。神谷は適当にソシャゲを回しながら、車に揺られる。

 

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