09:30 パークハビオ新宿イーストサイドタワー ロビー前
「……………遅い」
神谷が神谷邸から皇居に向かい出していた頃、その右腕たる向上は彼女である星宮の住むマンションの前で待っていた。だが、遅い。マジで遅い。よく「女の遅刻も笑って許せる男はモテる!」とか言うが、流石に30分はモテるとか以前に心配してくる。
「何かあったかな?」
向上が家を出る前にLINEを送ると、普通に「待ってるからね❣️」という返事が返って来ている。つまり、寝坊という訳ではない。起きてはいる。
だが30分前に送ったLINEには既読がつかない辺り、考えられるのは電話中か二度寝したか準備に手間取ってるかの3つ。このマンションは管理人が常駐している上に、コンシェルジュまでいるし、防犯設備も最新鋭の物を入れている。泥棒やストーカー対策は万全と言っていいので除外だ。
「………もう一度LINEしてみるか?」
なんて言っていると、ロビーからいつもの髪を結った姿ではなく、髪を下ろしキャップと透明度高めのサングラスを掛けた星宮が小走りで走ってきた。
「ごめんごめん!事務所から電話きちゃって」
「仕事の電話なら仕方ないか。あ、これ。買っといた午後ティー」
「あ、ありがと!しかもキンキンじゃん!!」
「冷蔵庫で冷やしといたからね」
向上はシフトをPからDに入れ、愛車のレクサスLXを走らせる。静かだが、確かなパワーを感じさせるエンジンの音を聴きながら本日の目的地であるショッピングモールへと走らせる。
『次のニュースです。本日、木下官房長官は会見にて第二文明圏からの皇国軍主力を撤退させると発表し、国民からは不安の声が———」
「ねぇねぇ。何で六くん達は帰還したの?戦争は終わってないんでしょ?」
「簡単な話、俺達が必要無くなったからさ。戦争は確かに続いてるけど、かと言ってもう帝国に戦争する余力は残っていない。もしまたムーやレイフォルを攻めるとして、その準備には最低でも5年、長く見積もれば15年は掛かる。
一方の世界連合も、まあ皇国は別として、各国にも余裕という余裕はない。お互い大量に血を流したし、金と資源と物資も使いまくった。これ以上、大規模な戦闘は無意味なんだよ」
「あははは……。聞いといてアレだけど、やっぱり戦争とか政治って、私には難しくて分かんないや」
今でこそ向上という現役将校の彼氏を持つ星宮だが、少し前までは軍事どころかミリタリー系統には殆ど興味が無かった。当然、余り分からない。正直、国が滅ぶまで戦争するものだと思っている。
だが向上としては、それが良いのだ。戦争の事がよくわからないというのは、裏を返せば国民が戦争の現実を知らずとも生きていけるという事でもある。平和な証拠だ。
「なら、もっと簡単に言おう。2人の時間がもっと取れる!」
「なにそれ最高じゃん!!」
「その通り!!」
そう言って2人は同時に笑い出す。職務中は基本的に冷静沈着だが、プライベートだとこういうワイワイ賑やかなタイプである。というかそれもあって、神谷の右腕をやっている。ワイワイできる奴でもないと、あの歩くキリングマシーンの真横につくなんて不可能だろう。
対する星宮もアイドルやっている時は清楚とお淑やか、でもたまに暴走するキャラで通っている。のだがプライベートは超がつく自由人。熱くなりやふくて冷めやすく、酒好きで、構ってちゃんの甘えん坊で、色々無頓着で、ショタ好きのロリコンでオタクとかいう、属性てんこ盛りの神谷とは別ベクトルでヤベェ奴である。結構お似合いなのだ。
「でもやっぱり、また行ったりはするの?」
「分かんない。俺は長官直属だから、何かあれば必ず動くよ。でも流石に暫くは大丈夫じゃないかな?だって当の長官が「何が何でも休む!嫁とイチャイチャして、ゲームして、アニメ見て、プラモでも作る!!自堕落なニートみたいな生活満喫する!!!!」って宣言してたもん」
「……………それ、あの神谷さんだよね?軍のトップで、三英傑で、六くんの上司の神谷さんだよね?」
「最強の戦闘団の指揮官で、刀で銃弾切れる化け物で、我が敬愛すべき上官殿の神谷浩三元帥閣下であってる」
「なんかイメージと違うんだけど………」
「結構こんな感じだよ?」
「え、マジ?」
「マジマジ」
一応、神谷に持たれている世間一般のイメージは固いもので正しいが、ちょくちょく字足らずの事が多い。義理人情溢れる人、サムライ、組織の枠組みに囚われないetc。間違いではないが、義理人情云々の所は普通にノリと勢いでやる事も多いし、サムライでありながら銃をぶっ放すし、組織の枠組みに囚われないではなく破壊しているだけだったりと、間違っちゃいないが綺麗でもないという何とも微妙に困りそうな認識を持たれている。
「結構大変なんじゃない?」
「なんかもう、慣れたよ。最近は止めないで、その流れに乗った方が楽だって分かったし」
「それ、かなり末期なんじゃ…………」
着任当初こそ、向上は神谷のお目付役の様な節があった。だが今となっては、共に馬鹿をやらかす方向にシフトしている。何故そうなったのかは、もう察して欲しい。
「あ!着いたよ!!」
暫く車を走らせると、お目当てのショッピングモール『シーサイドモール』に到着した。平日でありながら1階は満車で、2階の立体駐車場に車を停める。
「それで、今日は何をするんだ?」
「今日は服とかアクセかな。その後はゲーセンとかアニメイトとか、そういう所で適当に遊ぼうよ」
「よーし!じゃあ、まずは服を見に行くか!!」
「おぉ!」
2人は恋人繋ぎで手を繋ぎ、フロアに入っていく。このシーサイドモールは地下2階、地上3階の複合ショッピングモールである。
地下2階には隣接した東京湾の中を見れる海中パノラマと、休憩・談話スペース、それからカフェやジュース屋等の憩いの場となっており、地下鉄も隣接している。
地下1階には海が見えるレストラン街と広場があり、デートスポットに最適な場所となっている。
1階にはおもちゃ屋とファミレスやビュッフェ形式の大きめのテナントが入ったレストラン街、それからペットショップとペット関連のショップ、更には食料品店が並ぶ。
2階にはアパレル系からテーラー、美容院、コスメ関連。更には時計屋、カメラ屋、家具屋等の専門店までも立ち並んでいる。
そして3階には映画館、アニメイト、ゲームショップ、電気屋、本屋、プラモ屋、ホームセンターまで揃った専門店(オタク御用達)となっている。
「やっぱりここ、広いよなぁ」
「下の地下鉄に乗って二駅でアウトレットもあるから、本っっっ当に便利だよ。ここで大体は揃うし」
吹き抜けの通路を進みエスカレーターに乗り込むと、まずは2階にあるレディースファッションを扱う店に足を運んだ。
「それで、具体的に何用の服を探しているの?」
「私服だよ私服。でも芸能人の私服は、意外とメディアに映るから、ちゃんと選ばないと!」
「芸能人って大変だな」
「まあね。でも、それが私の楽しいお仕事だから!!」
そう言って笑う星宮の顔は、サングラスと帽子で隠していても、隠しきれないアイドルの顔を覗かせていた。周りに纏う雰囲気やオーラというのは、意外と服装や見た目を変えようと漏れ出てしまうものなのだ。
「やっぱりアイドルだなぁ……」
「ほら行くよ!」
星宮に手を引かれ、適当なお店に入る。まず入ったのは、まあまあの大きさのアパレルショップ。どうやら星宮イチオシのブランドを取り扱うお店らしい。
「いらっしゃいませ〜」
店員さんの挨拶を背中に受けながら、星宮が服を選び始める。あれこれ手にとっては、鏡の前で自分の身体に重ねて行く。気に入らない物は元に戻し、少しでも気になる物は片っ端から向上が預かる。こういう時、男は黙って動く衣紋掛けになるものだ。
「うーん、これもいいなぁ。あっ!こっちも可愛いかも!」
とは言うものの、流石に段々と腕の余裕がなくなってきた。重くはないが、ちょっと持てるキャパシティを超えつつある。
遠目から見ていた店員が、どうやらその辺りを察してくれたらしい。素早く2人の間に入り、試着を進めてくれた。
「それじゃ試着してくるね」
「行ってらっしゃい」
星宮は試着室に服を持って入る。だがカーテンを閉める前に、向上の方に振り返りイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「覗いたら、ダメだからね?」
「お約束だね、それ。流石にギャルゲー及びエロゲー、ないしハーレム物のテンプレは消化しないんでよろしく」
「冷静だねぇ。でも六くん、家ではやっていいからね?」
「Yes, Your Highness!!」
しっかりとした敬礼をする向上。オタクがネタでやる物とは違い、神谷という最高位階級者の横に控えている現役の軍人なだけあって、その立ち振る舞いはフィクション以上の迫力がある。
星宮は軽くウィンクするとカーテンをピシャリと閉め、試着室の中に消えた。そして暫くして、中に入っていた服を着て出てきた。
「どう?」
「似合ってるよ」
まず星宮が選んだのは、青い肩出しの袖にフリルの付いたトップスに紺色のスカート。色合いが大人っぽいが、フリルが可愛らしさを演出している。
「うーん、そうじゃなくて。もっとこう、なんかさ、ほら!具体的に?」
「えっとじゃあ……コホン。まず色。パーソナルカラーの青系統の色で全身が揃えているから、専用感がとてもある。
肩出しのトップスは色っぽさと大人っぽさを出している上に、青っていう落ち着いた印象の色がそこに拍車を掛けている。
袖のフリルはそんな大人っぽさには一見ミスマッチだが、逆に可愛らしさを演出するワンポイントになっている。結論!とてもお似合いです」
「おぉ!いいねいいね!!そんな感じだよ!あ、じゃあ次行くから待っててね」
「Yes My Lord!!!!」
またカーテンが閉まり、星宮の着替えが始まる。向上は、次の服に期待を寄せる。やはり女の子というのは、何を着ても似合うというのが男の性だろう。それがアイドルともなれば尚の事。言うなれば今の状況は、向上だけのファッションショーなのだ。オタクが聞けば咽び泣くだろうし、そんな栄誉を受け取った者は尊死するか他のオタクに呪い殺されてしまうだろう。だがそんな危険を犯してでも、見る価値のある天国なのだ。
暫くするとカーテンが開き、私服姿の星宮が現れる。今度は動きやすさを重視したカジュアルスタイルで、アクティブさが強調されるボーイッシュ系だ。
「どう?この服も結構自信あるんだけど」
「最高だよ。やっぱり動きやすさを重視したボーイッシュ系は、露出の多さから来るフェチズムと女の子の活発さというギャップが相まって、その魅力を何倍にも引き上げているね。それにすみれちゃんの可愛らしさも相まって、もうこれは無敵だね!」
「そ、そう?」
「うん!じゃあこれとさっきの、買っちゃおうか!」
「え!?そんな簡単に決めていいの!?」
「だってすみれちゃんがせっかくオシャレしたんだよ?こんなの着せ替え人形にする以外選択肢ある?」
「……それもそっか。よし、買っちゃおう!」
その後、何だかんだで合計10着、お値段68,900円の買い物を済ませると、また次の店に移動する。今度はコスメショップだ。
「あー、すみれちゃん?俺、コスメは戦力外だからな?」
「分かってるよ。六くんは、何なら外のベンチで休んでてもいいから」
「いや、まあ、一緒に見るくらいはするよ。荷物持ちとか」
「えー?うーん、じゃあお願い!」
コスメショップに入る。大手の化粧品メーカーらしく品揃えは豊富で、どれも高品質なブランド品だ。値段も学生にしては敷居が高く、1つ数万するものまである。
「六くん!見てこれ!」
「えっと………こんし……らー?」
「コンシーラーだよ。簡単に言うと、ピンポイント用のファンデーション!」
そう言って突き出してくる棒状の化粧品。反応から見るにレア物とか、何かしら良い商品なのだろう。だが生憎と向上には、謎の高そうな棒にしか見えない。だがどうにか、無理矢理知識を振り絞って会話を繋げる。
「コンシーラーって、シミとか隠したりできるやつだっけ?」
「え?よく知ってるね!簡単に言うとそうだよ」
「それ、意味あるの?全部隠せるならファンデーションで良くないか?」
向上が素直な疑問をぶつける。ピンポイントって言っても「わざわざ買わなくて良いんじゃね?筆かなんかで塗りゃ良いじゃん」と思ってしまう。
「それが、そうもいかないんだよ。ファンデーションはなんて言うのかな?厚塗りというか、こう、分厚く見えちゃうんだよ。化粧してまーすって叫んでる感じ。
しかも肌荒れの外因とかにもなるから、使うのは使うけど大量には使いたくないんだよ。でもこれがあれば、簡単に解消できちゃうんだよね」
「化粧って大変なんだな。まるでアートか何かだ」
「あながち間違って無いかも。美容とかオシャレって、やっぱりアートとか芸術とかのセンスは必要だし。ほら、ネイル"アート"とか言うしさ」
「なるほど。確かに、そうかもしれないな」
「という訳で、ちょっとこれ買ってくるね!」
星宮は早速レジに向かい、サクッとコンシーラーを買ってきた。買い物は終わったので、次はアニメイトに向かう。向上も人並み程度には好きだし、星宮はオタクを自称するくらいにはサブカル好き。というかアイドルには、ドルオタと呼ばれるファンがいるので、トークで合わせるためにも知識として持って置いた方がいいのだ。
「六くんはどのキャラが好きとかあるの?」
「まあ、やっぱり男ならこう言う時ヒロインは選ぶよな。俺は断然、メインヒロイン!いや、でもサブキャラも捨て難いし……」
「分かるよその気持ち!!私も最初はそうだったけど、結局推しが1人いれば十分だよね!」
「そうだな。俺もすみれちゃんと同じでメインヒロインかな。でもあのキャラもいいんだよなぁ……」
オタク談義に花を咲かせながらアニメイトに入る2人。店内は広く、ラインナップも豊富で、しかも品揃えがいい。オマケに日によっては、声優のサイン会や握手会などのイベント会場にもなっており、オタクにとっては聖地である。
「ん?ろ、六くん!パンドラズ・アクターのコス衣装あるよ!!」
「え!?マジで!?」
星宮が指を差す方に、向上も目を向ける。そこには確かにパンドラズ・アクターのコスプレ衣装があった。それを見ると、星宮はニヤリと笑う。
「おいちょっと!こっちに来ーい」
星宮は頑張って低い声を出し、向上の肩を抱きながら人気の少ない所に連れて行く。そして向上を、壁に押し付けた。
「はっドン…」
しかも星宮は、壁ドンの形で向上に顔を近付ける。いやこれ、ビジュ的には本来逆だろうというツッコミはやめて頂きたい。
「俺はお前の創造者だ。そうだなぁ?」
「その通りでございます、ンンアインズ様」
「だったらな、そんな主人からの命令でも頼みでも良いからさ!!敬礼はやめないかぁ…?」
「ヘェェ?」
「うん、ほら、なんというかぁ、変じゃないか?軍服は、まあ、強いから良しとしてさ、本気でその命令はやめようなっ!」
向上は心の中ではニヤリと笑いつつも、敢えて無表情のまま自分の胸に右手を当て星宮を見る。
「
次の瞬間、星宮が最早トキメキも何もあったもんじゃない、ガチパワーの壁ドンをかまし、顔を限界まで近付ける。
「ドイツ語だったかぁ!?それも俺の前ではしないでくれ!!」
そこまで一通りやると、2人は腹を抱えて笑い出す。これが何のネタかはお分かりだろう。オーバーロードのナザリック地下大墳墓、宝物殿の領域守護者パンドラズ・アクターとアインズ様の
「はー笑った笑った」
「お約束でしょ?」
「当然!」
今となっては神谷の魔法の元ネタがオーバーロードなのもあり、神谷含めた戦闘団の幹部は大体オーバーロードはアニメ、映画、原作全て履修済み。お陰でセリフの言い回しまで完璧なのだ。
因みに向上が1番好きなシーンは、聖王国編に出てくる振り回しているだけで周りの人間は攻撃できなくなる特殊能力を持つ聖棍棒を振り回すシーンである。本人曰く「趣味が悪い、コイツヤベェ、というツッコミは受け付けない」らしい。分からない、という読者は映画を見よう。開始15分くらいで見れる。
「さ、お買い物続けよ!次はフィギュアとかね!」
「その後はモデルガンも見たい!!」
「オッケー!じゃあ、行こう!!」
「おー!!!!」
2人は尚も楽しい時間を過ごす。アニメイトで色々と見て、買って、ついでにゲームセンターで音ゲーやらレースやらと、色々と楽しんだ。そうこうしていると、時刻は12時を周り、そろそろ13時に差し掛かろうとしていた。
「あ、そろそろお昼にしない?」
「そうだな」
「私、ちょっとお手洗い行ってくるね」
「あー、なら俺、一度車に戻るよ。荷物置いてくる」
「分かった。じゃあ、この辺りで待ってるから」
「了解」
2人は一旦別行動をする。向上は車に戻ると荷物をトランクに放り込み、集合場所へと向かった。すると、何やら集合場所が騒がしい。
「お姉さん、美人だね?僕とお茶どうかな?」
どうやらナンパらしい。星宮は女優であり、その容姿も優れている。例え隠そうと、こういう事も普通にあるらしい。だがかと言って、正直見ていて気分が良いものではない。ある意味で彼女が美人である事の証明ではあるが、にしたって嫌なものは嫌だ。
「私の彼女に何か御用ですか?」
向上は、星宮に絡んでいる男の肩を軽く叩く。男は振り返ると、その鋭い目付きで向上を睨み付ける。
「あ?なんだお前」
軽く凄んでくるが、その程度で皇国の鉄砲頭、あの三英傑が1人、神谷浩三の秘書官にして神谷戦闘団の副長、そして赤衣鉄砲隊の指揮官を退かせられるわけがない。何度も戦場で死線を潜り抜けたのだ、今更一般人如きに遅れはとるものか。
「彼氏です。何か御用ですか?」
「チッ!んだよ、彼氏持ちかよ!」
「………うーん、せっかく爽やかイケメンキャラで来たのに、最後でチンピラ出しては意味ないでしょ」
舌打ちをしながら、ナンパ野郎は去っていく。その後ろ姿を見ながら、向上はそう呟いた。
「六くん!」
「すみれちゃん、大丈夫だった?」
「うん。ちょっとしつこくて困ってたから、助かったよ!やっぱり六くん、こういう時は頼りになるよ!何せ皇国最強のガンマンでしょ?」
星宮の言葉に一瞬面食らったが、すぐに向上は笑みを浮かべて仰々しくお辞儀をした。
「えぇ。今はすみれ様だけの、最強のボディガードでございます」
元々、皇国軍のイケメン枠広告塔として活躍していただけあって、こういう所作は本物のキャラクター並みに似合う。場所がショッピングモールで、格好も私服だが、所作だけは凄腕イケメン執事がお嬢様にかしずいている時のソレだ。
「ヤバい、惚れそう何だけどぉ………」
「惚れてくれて構いませんよ?」
完っっっ全に2人だけの空間に突入しやがってる訳だが、ここはショッピングモールのど真ん中。通行人は普通にいる。ある者は微笑ましく見るし、小声でキャーキャー言っている者もいる。彼女いない系の男と彼氏いない系の女からは、呪詛の言葉でも投げつけられそうな物凄い怨念を感じる目で見てくる。
そんな2人の姿はバッチリ見られており、何ならネットにもアップされ、数日後には芸能誌にその写真が掲載される事となる。だがそのニュースが、世間を騒がせることは殆ど無かった。
13:30 首都高湾岸線 8tトラック車内
ピピピピピッ
「…………ヴァンディクス・コマンデルより、全ヴァンディクス。時間だ、これより作戦を開始する。祖国に勝利を」
『『『『『『『『祖国に勝利を!!祖国に栄光を!!』』』』』』』』
高速を走るトラック。何の変哲もない、普通のトラックだ。極々普通の、日本中何処でも見られる日常の一コマ。外を見れば普通の車が走っている。今日は平日であり、世の人間は仕事だ学校だと大忙しだ。お陰で乗っている者は私服とかよりも、スーツや作業服の割合が高い。もちろん中には、子連れの家族が乗っている車もある。そんな中を、他の車に合わせる様にヴァンディクス・コマンデルを名乗る男はトラックを走らせる。
「トウキョウ………。いつかSF作品で見た未来都市というヤツ、そのまんまって場所だ。仕事じゃなけりゃ、観光でもしたかったんだが」
『コマンデル。一応、観光はできるでしょう?短い区間かもしれませんけど』
「それもそうだな、ヴァンディクス8。だが私としては、スシにテンプラとやらを食べてみたいのだよ。ムーの本屋に置いてあった旅雑誌に、そんな料理があったのだ」
『まあ、食えそうなら食いましょうや』
このヴァンディクスと呼ばれる連中は、全部で30人程いる。その全員が現在トラックやタンクローリーに分乗しており、東京首都圏に散らばっている。ヴァンディクス・コマンデルの様に高速に乗っている者もいれば、既に下道を走っている者もいる。
『ヴァンディクス21、間も無く指定エリアに到着する。以降は予定通り、エリア内を適当に転がすとしよう』
「コマンデル了解。日本の警察は優秀だそうだ、決して怪しまれる事なくやれ」
『ラジャー』
トラックやタンクローリーは東京中に散らばり、着いた者は無意味に周回する。怪しまれないように、あちこち走り平静を装う。日常に溶け込み、他の国民と同じようにだ。
『カムロ町、準備よし』
『ナガタ町、いつでもどうぞ』
『シブヤ、人だらけだ』
『コウトウ区、配置完了』
『ギンザも同じく』
だが続々と報告が上がってくる。そして最後にヴァンディクス・コマンデルが、他の仲間達に報告した。
「チヨダ区、準備完了した。これにて全車、配置完了である。ではこれより、皇国への報復作戦である墓場の嵐作戦を開始する。総員、我らが祖国。
ヴァンディクス・コマンデルがそう指示した瞬間、東京の中心部に散らばったトラックやタンクローリーから黄色い煙がモウモウと吹き出す。その煙は街中を飲み込んでいく。
時に2059年7月11日、午後2:56。後に東京事件として未来永劫歴史に刻まれる、皇国の対グラ・バルカス帝国戦略が変わった日である。
——— その日、東京は血に染まった。
大日本皇国内閣総理大臣 一色慎太郎
はい、という訳で!次回より新章突入です!!なんだかんだで、もう2年もやってました。うん、我ながら長い。
それとですね、ここで読者の皆様に大事なお知らせです。現在更新中の本作『最強国家 大日本皇国召喚』ですが、誠に勝手ながら、この章を最後に更新を停止しようと思っております。というのもですね、読者の皆様もお分かりかと思いますが、原作に追い付いてしまいました。
実を言うとパーパルディア皇国編終わった辺りから、原作に追い付く事を懸念しておりました。そこで原作に於ける番外編及びオリジナルストーリーの展開という形で、どうにか約1年のバッファを確保。そして現在の帝国編に突入した訳ですが、当時は「いやまあ一年も余裕持たせたし、書いてるうちに原作もいい感じに進むだろ!」とか思っていました。
所が予測は大いに外れ、いよいよ持って原作に追い付いてしまった訳です。ぶっちゃけますと核の話だとか、バイツの要素を突っ込んだのも物語の進行を遅延させる苦肉の策だったりしますw。とまあ追い付いたのは仕方ありませんし、原作には原作のペースがありますので、当然ですが私に文句言う資格も無ければ、こんな感じで好き勝手二次創作書いてますので文句を言うつもりも毛頭ございません。
ただ私としては、そろそろ長年の夢に挑戦したいと考えています。その為にも今書いてる作品のエンディングをそろそろ作りたいと思っていまして、ちょうど良い機会ですので次章から始まる帝国との戦争の話を書いて、本作品の更新をストップさせる決断をした次第です。勿論、原作のストックが貯まれば恐らくまた続きを書くでしょうし、そもそも次章はかなり大暴れする予定でして、最終回みたいなノリですが多分まだ全然続きます。
また更新停止=そのまま引退という訳でも無く、先述の長年の夢となる構想段階の作品があります。速い話が、早くその作品を書きたい訳です。かと言って今の作品を放り出す気もない訳でしてw。とまあ、そんな訳で一応次章が事実上の最終章的な感じになりますので、皆様もう少しお付き合いください!