というわけで、新章突入Death!!
第百四話東京事件
「な、なんだぁ!?!?」
「タンクローリーから煙が出てるぞ!!!!」
「あれヤバいんじゃない!?」
2059年7月11日14時56分
東京都内 千代田区霞ヶ関、渋谷区渋谷スクランブル交差点、江東区豊洲市場、中央区銀座四丁目交差点、神室町神谷地区の各所にて、黄色い煙をタンクから放出する複数のタンクローリーが暴走。
14時59分
警視庁通信指令本部、東京消防庁通信指令本部への通報が相次ぐ。着信と同時に警視庁管轄下各方面、消防庁管轄下各方面に無線指令。
『管内千代田区霞ヶ関、渋谷区渋谷スクランブル交差点、江東区豊洲市場、中央区銀座四丁目交差点、神室町神谷地区にて、黄色い煙を放出しながら暴走する車両ありとの通報。G事案に発展する恐れあり!尚、1方面系6キロ圏配備を発令する。以上警視庁』
『管内千代田区霞ヶ関、渋谷区渋谷スクランブル交差点、江東区豊洲市場、中央区銀座四丁目交差点、神室町神谷地区にて、黄色い煙を放出しながら暴走する車両ありとの通報。化学隊、ハイパーレスキュー、即応対処部隊各隊は現場に急行せよ』
15時02分
東京都内全域に全国瞬時解放システム『Jアラート』発令。各報道機関に速報流れる。
同時刻 皇居 松の間
ウーーーーーーゥゥ!!ウーーーーーゥゥ!!
「うわっほぃ!?!?」
「ウッゲホッゴホッ!ウェッホッ!!!な、何事ですか!?!?」
この日、神谷は皇居に居た。呼ばれた理由は何ということはない。今回の戦争、そして戦ってきた個人的見解を聞きたいという理由だった。正確にはそういう理由を付けて、ゲームしたかったらしい。
今はゲームも終わり、2人で庭を眺めながらお茶を啜りせんべいを齧っていた。そのタイミングでのJアラートは心臓に悪い。
「な、何でしょうかね?……………ど、毒ガスだと!?」
「へ、陛下!!神谷殿!!!!と、都内で大規模な毒ガス攻撃が発生したと!!!!!」
普段冷静で物腰柔らかな、老紳士の執事を絵に描いたような侍従長が顔を真っ青にしながら、ノックも何も無く部屋に飛び込んでくる。そのまま転んで、ガラスを突き破り外に飛び出しそうな勢いだ。
「お、落ち着いてください侍従長。其方が慌てる気持ちも分かりますが、まずは落ち着いて」
「は、はっ、はい……申し訳……ありません。取り乱しました。コホン、陛下!先程も申し上げました通り、東京都内で毒ガスが撒かれているとの報告が入りました!!それも現場の1つは霞ヶ関ですよ!!」
その言葉を聞いた瞬間、神谷も天皇陛下も顔がサーッと青くなる。霞ヶ関は皇居の目と鼻の先。風向き次第では、簡単にガスが吹き込んでくる。
「陛下!今すぐお逃げください!!」
「しかし……いえ。そうですね、神谷統合軍総司令長官。朕は其方に聞きます。ここは、危険ですか?」
「危険です!今は風向きで偶々、こちらにガスが流れてこないだけの事!風向きが変われば、この皇居も容易く毒ガスに晒されます!!しかも報告によれば、今回の一件は同時多発的に東京各所で発生しています!!もし陛下の身に何かあれば、それこそ国が傾きます!!どうか脱出を!!!!」
天皇陛下は神谷含め三英傑を「朕の誇りたる忠臣達」と称した事がある程、信頼を置いている。その忠実な信頼できる臣下の言葉は、それだけで信用に足る意見なのだ。
「……わかりました。侍従長、準備を。シェルターに」
「陛下。お言葉ですが、シェルターはダメです」
神谷は天皇陛下の言葉に被せる形で言った。本来であれば不敬の極みだが、今回ばかりは大目に見て貰う他ない。
「今回の一件、ガスを撒いて終わりだとは思えません。恐らく犯人は何か別の目的があるように見えます。そうなれば、皇居とて危険です。一時的にでも京都御所への避難を!!」
今回ガスがばら撒かれた場所は霞ヶ関、渋谷スクランブル交差点、豊洲市場、銀座四丁目交差点、神谷地区。霞ヶ関は言わずもがな皇国の中枢であり、神谷地区は経済の中枢である。ここを攻撃するのは分かる。
だが豊洲、スクランブル交差点、銀座の3箇所は戦術的価値はない。あそこは人が多いだけであり、虐殺には向いていても国家的には他2箇所程のダメージはない。この3箇所を攻めるリソースを他2箇所に回した方が合理的だ。にも関わらず、それをしない。となれば考えられるのは、その3箇所も攻める必要があったという事。この3箇所を攻める利点は人が多い事から発生するパニックと、人員リソースの分散である。つまりは囮、陽動という事だ。
「……侍従長!京都へ向かいます!!」
「ははっ!!近衛兵!近衛兵!!」
侍従長の声に4人の白地に赤いモールドが入った軍服を着た、若く美麗な若者が入ってくる。天皇陛下の側付き衛兵達だ。
「直ちに陛下を天岩戸へお連れなさい」
「畏まりました。陛下!どうぞこちらへ!!」
近衛兵先導の元、皇居の地下へと向かう。かつて江戸城だった事もあり、皇居には幾つもの脱出ルートがある。国会議事堂、首相官邸、市ヶ谷駐屯地、東京駅丸の内地下中央口に繋がる地下トンネルや戦争地下鉄もある。
さらには皇族脱出用に伊1500型原子力潜水艦を改造した、専用潜水艦『八咫烏』が配備されている地下ドックも存在する。今回目指しているのは、この潜水艦だ。
「こちらです!お急ぎを!!」
通常の軍艦塗装だが、艦橋には菊の御門が描かれている他、船体中央部に白帯に赤のストライプが入っている。出港の準備が急ピッチで行われる中、天皇陛下は船に乗り込む前に神谷の方を向いて頭を下げた。
「神谷元帥。どうか皇国を、東京に住まう臣民をどうか……」
「何を仰います。私は陛下の忠実なる臣下。一言ご命じくだされば、如何なる任務もこなして見せましょう」
「……では、神谷元帥。直ちに帝都を襲った下手人に裁きを。そして臣民の生命と財産を、くれぐれも護りなさい」
神谷は片膝を突き、拳を地面に突き立て、真っ直ぐと目の前の主君を見つめる。
「ご尊命、伺いました。不肖!この神谷浩三・修羅、皇国剣聖の名に恥じぬ働きを致しましょうぞ!!」
直後「八咫烏』が動き出し、天皇陛下も艦内に戻る。それを見送ると、神谷は急ぎ皇居内の近衛師団本部に走った。
15時07分
一色総理以下各閣僚、内閣危機管理センターへ入室。神谷元帥、大日本皇国統合軍全軍に即応待機を指示。
15時10分
天皇皇后両陛下、並びに皇居内の全皇族、皇居地下『高天原』に入室。
15時12分
脱出潜水艦『八咫烏』出港。
15時20分
一色総理、本件をテロ事件に認定。東京都全域に非常事態宣言発令。
15時21分
警察庁長官、本件を
『警視庁から各局!本日14時55分頃、1方面麹町、丸の内、築地、中央、久松、新宿、渋谷、深川、神室管内にて爆発物を使用した、ゲリラ事件が発生をした。本件につき14時59分、6キロ圏配備を発令中である。全警戒員は、速やかに立ち上がり、G配備に定められた所定の警戒を実施されたい!
尚、以降は特別緊急配備とし人員配置は甲号*1とする。以上警視庁!!』
「ヴァンディクス・コマンデルより全ヴァンディクス。現時刻を待って、作戦をPhase2へ移行。バンボラ起動だ」
コマンデルの指示で、今度はトラックが動き出す。タンクローリーにはガスが充填されており、現在の惨状を作ったのはご覧の通りである。では、トラックの方には何が積まれていたのか。その荷物こそが『バンボラ』のコードネームを与えられた、ヴァンディクス達の秘密兵器である。
現在トラックはガス騒ぎに乗じて乗り捨てられた様に待機しており、トラックに乗っていたヴァンディクス達は後ろの荷台に避難している。その彼らが、荷台に設置されたレバーを引くとバンボラが動き出した。
「よーし、よしよしよーし!」
「全機、正常に起動。攻撃活動開始」
古の魔法帝国こと傍迷惑国家、ラヴァナール帝国の遺産であるオートマトン。それがバンボラの正体である。人間サイズでありながら、エルフ並みの身体能力を持ち、人1人を片手で容易く殺せる腕力を持った兵器である。
そのバンボラがトラック1台に付き、車両ごとの差はあれど最低でも一個小隊規模。それが20台もいる。そんな化け物オートマトンが、東京に放たれた。
15:32 皇居正門前
「「……………」」
皇宮警察と近衛師団。皇族と皇居を護る為に編成された、特別部隊である。皇宮警察は宮内省が完全に管轄し、近衛師団は全員が軍からの出向という形で宮内省管轄となる専門部隊であり、常日頃から皇居内のパトロールや訓練に励んでいる。
通常時は各門の右に皇宮護衛官、左に近衛師団所属の兵士が配置されており、24時間365日交代で警護にあたっている。その為、東京でガスが撒かれ、大騒ぎとなっている今もガスマスクを腰に下げた状態で立番に当たる。現在、中では護衛官と兵士達が完全武装で臨戦態勢に入っており、間も無くこの立ち番も兵士達に切り替わるだろう。そんな時だった。
「………」
「ッ……」
正面から近付くトラック。別に何という事はない、街中を走る普通のトラックだ。だが流石に今のこの状況で、何の通達もなく車両が近づいてくるとか怪しさ満点である。
護衛官はニューナンブM60、兵士は9mm弾仕様の26式拳銃に手を掛ける。怪しくとも、敵ではない可能性がある以上、撃つことはできない。軍人や公務員は、国民に武器を向けてはならないのだ。
「止まった………」
「本部、こちら正門警衛。正門前に不審車両発見。これより調査する」
護衛官が無線で本部に連絡すると、兵士とアイコンタクトでタイミングを合わせながらトラックに近付く。だがトラックに近付くよりも先に、バンボラ達が飛び出してきた。
「な、なんだコイツら!?」
「コンタクト!!正防射!!!!」
兵士の方が一目で手に持っている銃に気付き、正当防衛射撃と叫ぶ。護衛官の方も身体が即座に反応し、手に持っていた拳銃を撃つ。だがバンボラは大量にいる上に、動きが素早く、弾が全く当たらない。
「このや」
バンボラの腕が伸び、勢いよく護衛官の首に突き刺さる。血が吹き出し、ビクリと大きく震えると力無く手足がダラリと垂れた。
兵士は相棒の死を心配する余裕はなく、訓練通りに拳銃を正確に扱い弾丸を叩き込む。
「ッ!こちら正門警衛!!護衛官1名KIA!!現在所属不明の、恐らくロボットか何かの攻撃を受けている!!全ての門を閉ざせ!!!!」
一方的に報告すると、司令部の返答を待たずに無線を切り、バンボラに噛み付かん勢いで1人で果敢に立ち向かう。だが幾ら精鋭であろうと、所詮は普通の人間。全滅させるなんて不可能だ。
「ここから先は陛下の座す宮中!1人たりとて通すものかッ!!!!」
だとしても、誉れある近衛師団の兵士が撤退する等あり得ない。命ある限り戦い皇族と皇居を護り抜くのが、近衛の矜持という物なのだ。
パン!パンパン!カチン
「チッ!!だけどなぁ、まだ武器はあるんだよォォォ!!!!!」
拳銃をバンボラに投げ付け、腰に下げたサーベルを抜く。剣術なんざ知らない。剣道は訓練で散々やってきたが、かと言って強い訳ではない。何なら平均より弱いくらいだが、無いよりは遥かにマシだと言わんばかりにバンボラに斬りかかる。
「死ねェェェェェェェェ!!!!!!!」
だが、銃と剣では間合いが違すぎる。至近では剣が強いが、距離が離れていては強かろうが弱かろうが、銃の方に軍配が上がる。皇国剣聖たる神谷とて、戦う時は刀の間合いの中でしか戦えない。故に兵士が刀を振り下ろすよりも先に、バンボラのビームが腹を貫いた。
「カハッ!!!!!!」
激痛が走り、腹から大量の血と何かが溢れ出てくる。今まで感じた痛みが心地よく思える程の、そんな激痛が腹から頭に稲妻が走るかのように襲い掛かる。前に倒れそうになる。
だが、兵士は倒れ込む勢いをそのままに、尚もバンボラに襲い掛かる。オートマトンは恐怖心を感じる事はないが、それでも予想外の動きをすれば行動は一瞬でも遅れる。その隙を、兵士は付いた。
「首………獲った………………」
サーベルを胸に突き立て、そのまま倒れ込み、自らの体重で胸に突き刺していく。オートマトンは立ったまま機能を停止し、兵士もオートマトンに正面から寄りかかる形で戦死した。
結果として護衛官が2体、兵士が8体の合計10体を倒した訳だが、数が多すぎて10体程度ではバンボラ軍団はダメージとすら言えない。その位多かった。では、彼ら2人の戦闘と死は無駄だったのか。否。断じて否。彼らの死と引き換えに手に入れた情報と時間が、後続の近衛師団と皇宮警察の防衛体勢構築に大いに寄与した。特に兵士の閉門指示は大きく、この時間こそが最も多く時間を稼いだ。
は、彼ら2人の戦闘と死は無駄だったのか。否。断じて否。彼らの死と引き換えに手に入れた情報と時間が、後続の近衛師団と皇宮警察の防衛体勢構築に大いに寄与した。特に兵士の閉門指示は大きく、この時間こそが最も多く時間を稼いだ。
15時33分
皇居正門にバンボラを満載したトラック出現。バンボラ240体を解放。
15時34分
皇宮警察、中村一樹皇宮巡査部長 バンボラとの戦闘中に殉職。
15時36分
近衛師団及び皇宮警察、皇居内部に防衛ラインを構築。
15時39分
近衛第二師団、鈴原大河伍長 バンボラとの戦闘により戦死。
15時40分
近衛師団及び皇宮警察、神谷元帥の指揮下に移行。
15時41分
首相官邸との連絡、途絶。閣僚の生死、不明
15時43分
市ヶ谷駐屯地配備の神谷戦闘団各部隊が独自に、東京帝都一掃作戦を敢行するべく出撃。これに呼応し習志野の飛行強襲群、中央特殊武器防護隊、特殊作戦群、中央即応師団及び中央即応師団特別作戦班、国家憲兵隊が出撃。国民の生命と財産の保護と事態収拾を図る。
15時45分
神谷元帥、全軍に非常事態特別作戦命令第六号*2を発令。対象部隊は東京方面に出撃。
「中門、開放!!!!」
神谷の声が響き、宮殿と宮内省庁舎とを隔てる門が開く。ここからはアクティブ・ディフェンス、つまり前に出て積極的に戦闘を行う。
というのも、少し前に官邸との連絡が途絶えた。流石に敵に占拠された、爆破されたとかは無いだろうが、それでも現状下で官邸との連絡が取れないのは痛い。幸い最も重要な天皇皇后両陛下、並びに皇族は脱出している。最悪皇居が多少壊れようと、所詮建物なのだ。直せばいい。
となれば今最重要でやる事とは、最速で攻め込んできたロボットをスクラップにする事だ。
「近衛第一師団、前へ!!」
「近衛第二師団前へ!!」
「近衛第三師団、現場を死守せよ!!」
「皇宮警察特別警備隊、出動!!!!」
近衛師団の機甲戦力及び、皇宮警察特別警備隊所属の特型警備車や通常のパトカーやら何やらが総動員で中門から出ていく。神谷も47式指揮通信装甲車の屋根に掴まり、最前線へと向かう。
『こちら本部!!敵ロボットは現在、鉄橋付近!!!!』
「ジェネラルマスターより全部隊。聞いたな?鉄橋出口付近で陣形構築!戦車は後方、装甲車を前に!警備隊と装甲歩兵は前で盾になれ!!この際橋の近くが壊れようが知ったことか!!他が壊れるとか、陛下が凶弾に倒れられるなんて事態より何億倍もマシだ!!!!壊れようが汚れようが気にするな!!敵を排除しろ!!!!」
鉄橋の前に朱色の軍団が姿を現す。近衛師団は所属兵士が着用する甲冑から戦車等の車両に至るまで、朱色に染め上げられている。更に兵士達の右肩、車両正面、砲塔がある車両は側面にも菊の御門が輝いており、見る者全てを魅了する外見だ。
「総員、密集隊形!!」
「急げ急げ!!訓練通りにこなしてみせろ!!!!」
装甲車を等間隔に配置し、その間を装甲歩兵と盾を持った特別警備隊の護衛官が埋めるという、完全防御体勢を敷く。前の護衛官が膝立ちで盾を構え、その後ろに別の護衛官が盾を立て掛ける様に構える二段構成であり、前及び上からの攻撃を防ぐ隊列だ。
「閣下!敵が見えました!!」
「皆殺しだ。1人も生かして返すなッ!!!!」
神谷の命令により、一斉に攻撃が始まる。機関銃に加えて、当たれば爆発する砲弾やグレネードも中には紛れ込んでおり、それが着弾する度に爆発してバンボラが空中に吹っ飛ぶ。
かと思えば爆発で発生した煙ごと消し飛ばさん勢いで、銃弾の嵐が飛んでくる。一切の情け容赦なく、作業の様にバンボラを血祭りに上げていく。
「敵の陣形は崩れた!このまま前進!!掃討するぞ!!」
兵士と護衛官達は、少しずつ橋を前進する。隊列を崩さず、弾幕を絶やさぬ様に慎重に進んでいく。だがどうしても、弾幕に多少の隙間は生まれてしまう。その間隙を縫ってバンボラの1体が、まるで虫の様に両手脚を地面につけてカサカサと素早く這いつくばる様に接近し、軽々と先頭の兵士と護衛官の頭上を飛び越した。
「ッ!そっちに行ったぞ!!」
「殺せぇ!!!!」
「この野郎!!!!」
兵士達が銃を構える。一方のバンボラは兵士達が動くよりも先に、近くにいた兵士を掴み取り人質にしてしまう。余りに一瞬の出来事に、他の兵士達は動きが止まってしまう。
「ロボットが、人間様に逆らうなよ」
次の瞬間バンボラは頭を切り落とされ、そのまま崩れ落ちた。やったのは勿論、皇国剣聖たる神谷である。流石に神谷もそろそろ暴れたくなってきた様で、いつもの様に先頭に向かう。
天皇陛下へ謁見している時こそ家宝の紋付き羽織袴であったが、今は近衛師団から借りた朱色の機動甲冑をヘルメット以外全て着込み、紋付き羽織袴の時から羽織っていた至極色の羽織を上から羽織った姿となっている。その姿が見えるや否や、兵士達も護衛官達も目に見えて士気が上がっている。やはり例え皇宮警察や近衛師団であろうと、神谷浩三という存在はやはり大きいのだ。
「おう!お前とお前!!足場作ってくれ!!!!!」
指名された盾を持ちの護衛艦2人が顔を見合わせるが、どうやら流れがわかったらしく盾を斜めに構える。それを見ていた神谷はニヤリと笑うと、全速力で2人の方に走る。
「せーのっ!!!!!!!」
そして2人の前でジャンプし、盾の上に着地。その瞬間に2人が渾身の力で真上に押し上げ、タイミングよく神谷がまたジャンプ。自らの脚力と盾を押し上げた時の力を合わせて、そのまま高く飛び上がりバンボラ達の真っ只中に着地した。
バンボラは恐怖心こそ抱かないものの、いきなり背後に現れた敵に次の行動に移るのが遅れてしまう。その一瞬が命取りだ。
「遅い!!!!」
胸に天夜叉神断丸を突き立て、そのまま横に切り裂く。どうやらバンボラも急所は人間と同じな様で、基本的に胸部部分を破壊されると動きが止まる。頭はカメラユニットしかない様だが、恐らく安全装置か何かが働くらしく、頭を破損すると機能停止となる。
当然人型の二足歩行兵器である以上、足とか腕を切り落とせば戦闘能力や機動性が低くなる訳で、相手としてはこれ以上ないくらいに戦いやすい。なにより刀で切れるのが、何よりも大きい。
「さぁ、始めようや!!!!」
神谷はいつも人間相手にやる様に、バンボラの懐の中に飛び込んで自分の得意な間合いに持ち込んで暴れ回る。胸を突き、柄でカメラユニットや胴体を殴り、腕や足を切り落とし、背後や胸部を切り裂く。独壇場だった。
「しかしまあ、数が多い事!!」
「閣下ー!!危ないから!!下がって!!!!」
「アンタ本当に死にますよ!!!!」
いつもの事なのだが、やはり戦闘モードの神谷を見た事がない近衛師団の兵士達と護衛官からしてみれば心配でしかない。そもそも刀を両手に敵陣に突っ込んで、そのまま暴れ回るなんて真似自体、今の戦場では自殺行為どころか愚かすぎる行為に他ならない。
「僕は死にましぇーん!!!!!」
「ジバニャンかアンタぁ!!!!」
「余裕あるぞあの人!!!!」
余裕は無くもないが、それでも結構必死ではある。実際、360度全てを警戒する上に、今回はオートマトンという言うなれば機械相手である以上、人間程気配が読み取れないのだ。
そういう原因もあり、ちょくちょく危ない場面に直面もする。だが例え、そうなろうとこちらには切り札がある。
「極帝!!」
「サンダーバースト!!!!」
服の中に隠れている極帝である。本来であれば数十キロもの、生物としては断トツの巨体を誇るが、魔法により小さくなる事も可能である。というか皇国に住んでからは、もうこっちがデフォルトみたいになっている。全長数十キロの生物とか、資金以前に場所的にいくら何でも飼えない為ではあるが、こういう戦闘時には切り札的な使い方もできてしまうのだ。
「極帝!このまま時間を稼げ!!魔法をかける!!!!」
「心得た!!」
極帝が3m程度まで巨大化し、そのままバンボラに襲い掛かる。小さかろうと、その身は竜神皇帝たる極帝。全くダメージを受ける事なく、一方的にバンボラを破壊していく。
「
まずは
更に
「
「
「
そして神谷だけが使える魔法達。それが
今の神谷は魔王相手だろうと、一撃の元に消滅させる程に強いといえば強さが分かるであろう。そんな化け物に睨まれたバンボラはどうなるだろうか?
「そぉらぁ!!!!」
神谷が一薙するだけで、ソニックブームが発生し絶対刃が届いてない位置にいるバンボラまでもが吹き飛ぶ。それどころか、その奥の壁も崩落する始末だ。
「壁壊れた!?」
「よいしょぉ!!!!」
「うおぉい!!!誰かあの破壊神を止めろォォォォ!!!!!皇居が先に崩壊するぞ!!!!!!」
さっきまでの敵への闘争心は完全に消え去り、今は目の前の神谷とかいう破壊神をどうにかしようとしている。だが程なくして、バンボラが殲滅された為、神谷も止まった。
「………このロボットめ。皇居を無茶苦茶にしやがって!!」
「閣下。犯人、アンタ」
「はぁぇ?」
「だからですね、この始末。特に壁とかは、アンタがやったとです」
胴体とか腕とか足とかが切れたバンボラが散らばり、その周囲の地面は穴が空いたり焼け焦げている。だがそれ以上に、奥の城壁の方が悲惨で見るも無惨な姿になっていた。
神谷は信じられない様で、無言で壁の方を指差しては周りの護衛官や兵士が頷き、数秒経ったらまた指差して頷かれを繰り返していた。そんなギャグ漫画のワンシーンみたいな事をしていると、神谷に連絡が入った。
「首相官邸が占拠されて、健太郎と慎太郎が人質ぃ!?!?」
事件はまだ終わらない様で、神谷はすぐに官邸へと走った。
15時55分
皇居鉄橋にて戦闘開始。
15時58分
首相官邸が占拠された事が判明。関係各所に報告が上がる。
16時12分
向上六郎大佐、神谷戦闘団に合流。戦闘行動開始。
16時23分
皇居に侵入したバンボラを撃破。皇宮警察、近衛師団は掃討及び警備に移行。
16時25分
神谷元帥、皇居を離れ首相官邸へ向かう。