最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第百六話(みなごろ)

「動くな!!」

 

首相官邸に1人で突撃した川山であるが、中に入るや否や手荒く拘束され、そのまま有無を言わさずボディチェックさせられた。ボディチェックが終わると、リーダー格と思われる男が近付いてくる。

 

「…………神谷浩三は何処だ。何処にいる」

 

「その件ですが、神谷は現在九州に出張中で」

 

「キュウシュウ?」

 

「この日本列島の南にいるんですよ。ジェット飛行機でも2、3時間は掛かる距離、と言えば距離がお分かり頂けるかと」

 

川山は外交の時と同じ様に笑顔かつ、礼節と気品を持って対応する。ここで変に刺激して人質を殺されるわけにはいかない。相手を刺激せず、寧ろ褒めたり相手に寄り添い調子に乗らせて判断力を鈍らせる。忍術でいう『喜車の術』だ。

 

「なぜ、そんな場所に居るんだ!!」

 

「そう言われましても、仕事としか……」

 

「ふざけるな!!!!」

 

リーダー格の隣にいた兵士が怒鳴るが、ふざけるな言われても無理である。そもそもこれは奇襲。そんな今日この日に攻撃するなんて知らないし、そんなに早く神谷が欲しかったのなら事前通告して欲しいものだ。

当然そんな事をすれば、まず間違いなく皇国軍が速攻で殲滅に移るだろうが。

たがこういう反応がある以上、貴車の術はリスクがある。あまり喜ばせすぎると、今度は調子に乗って色々な命令を下してくるかもしれない。それがエスカレートでもすれば面倒だ。となればプランを変える必要がある。

 

「落ち着け。事前通告通り殺すまでだ」

 

「いえ!どうかお待ちください!!」

 

川山がリーダーの目の前で土下座をする。どうやら帝国には土下座文化は無いのか、いきなり座って頭を地面に擦り付ける川山に周りの兵士達は銃を向ける。

 

「どうか、どうか今暫くの猶予を!!私がここに参上したのは、我が国が見せられる最大の誠意!!どうかこれ以上、無関係な民間人の殺害だけはおやめください!!!!」

 

「…………なら貴様は代わりに何を差し出す。というかその前に、あー、その、なんだその格好は」

 

「土下座です!日本にある最大の謝罪、或いは請願を示すポーズです!!他にも「首を切り落とされても文句はない!」という意味もございます!!!!」

 

全力で対応し、相手を軽く引かせる。一応『恐車の術』となるだろう。この術は簡単に言えば、相手の恐怖心を煽るタイプのやり方だ。

 

「ちょっと待て。首を切り落とす?」

 

「古来、我が国では戦争を終わらせる際、相手方の将軍の首を掲げる事が勝利を内外に示す一つの手法でした!!更に武士と呼ばれる騎士階級者の様な立場の者の首を切り落とし持ち帰る事が、その者を討ち取った証拠でとありました!!!!その頃の慣習の名残です!!」

 

殆ど勢いで話した結果、リーダーの方も引き始めてる。如何にも「コイツやべー」という顔をしてくれている。狙い通りだ。

 

「わ、わかったわかった。待つから。そのポーズやめて?ね?」

 

「あっはい」

 

「…………素直だな」

 

因みにこうやって川山がふざけてるのは、単純に余裕が無いからである。こうやってふざけて、少しでも気を紛らわせたいのだ。

リーダー格の男に連れられて、川山は一色の執務室へと通される。中には勿論一色がいた。拘束はされておらず、暴力を振るわれた感じもない。取り敢えずは無事だった。

 

「慎太郎!!」

 

「よう。来ちゃった」

 

「来ちゃったかー。来るなよー。というか来るなら、外にいる警察とか軍を連れてきてだな、俺を助け出すノリで来いや」

 

「いやいや。俺そういうキャラじゃないし。そういうのは、前から浩三のジョブだ。まあその浩三は九州だけどな」

 

そう言って川山はウィンクする。一色は目線だけで頷くと、適当に話を盛り上げて雑談し出す。その内、見張り役の帝国兵が痺れを切らして2人の間に入ってきた。

 

「お前達!何故そう平然としているんだ!!死ぬんだぞこれから!!!!」

 

「それが?」

 

「まだ死んじゃいない」

 

2人はあっけらかんとして、そう言い放つ。帝国兵は化け物でも見る様な、怯えた目で2人を見る。帝国兵には目の前の2人が、得体の知れない何かに見えてならないのだ。

 

「私はこの国の総理大臣。法律上では私の上に天皇陛下が存在しておられる訳だが、我が国は特殊でね。国を運営する権力というのは、私の立場である内閣総理大臣が持っている。因みに法律を作るのは国会、司法に関しては裁判所が持つ。

つまり私はこの皇国のトップだ。その私が、たかが死ぬ直前くらいでワタワタする訳が無いだろう?この立場を引き継いだ時より、職務の果てに死ぬ事も覚悟している」

 

「私もだ。私は外交官。私に権力は無いが、外交という戦場に於いては他国に真っ先に赴く皇国の尖兵。この世界にやってきてからは、何処の国も覇を唱える国家ばかり。聞けば帝国も、転移してすぐの頃に外交に赴いた皇族諸共処刑されたらしいね。この世界での外交は、そんな事が平気で起こってしまう。起こってしまうんだよ。

当時はグラ・バルカス帝国なんて国を知らなかっただろうし、この世界の事だ。知らない国だからと、野蛮人だなんだという発想になっていた事だろう。この世界の常識なのだから無理はないだろうが、その発想の元で皇族という王に近しい血筋の者も問答無用で殺す世界だ。私の様なしがない外交官なんて、殺される可能性が高い。それに三英傑に名を連ねているんだ。皇国の為、皇国に住う臣民の為に、己の命なんて簡単に捨てるさ」

 

2人とて伊達に三英傑とは呼ばれていない。一色は皇国という最強国家の首相。立場上、前の世界でも今の世界でも必然的に狙われる存在だ。オマケに一色は若手のやり手で、これまで何度も皇国を良くする政策を打ち出した。その結果として怨みも相当買っている。逆恨みから、政策の皺寄せで生まれた被害の恨みまで。恨みを買いすぎて、メルカリで売りたくなる程にだ。

一方の川山も外交官である以上、時には皇国と仲の悪い国や滅ぼしたいと思っている国にも赴く。外交官は必ず、会談の際は相手と面と向かって会う。もしかしたら、そこを拉致され人質になるかもしれない。それどころか見せしめに処刑されるかもしれない。そんな仕事でもあるのだ。

故に2人とも、神谷と同じ様に覚悟は決まっている。そもそも「三英傑」なんて言われ皇国の顔役となっている以上、栄誉と名誉は溢れんばかりに手に入る一方で、裏では同じかそれ以上の恨みを買うものだ。今更死を恐れて、部屋の隅でガタガタ震えるものか。

 

「狂ってるよ、アンタら………」

 

「そりゃ良かった。聞いたか健太郎?俺達の狂気は、この兵士が証明してくれるとさ」

 

「証明書でも発行してもらおうか。という訳で君、証明書を作ってくれ。で、俺達を殺したら証明書を同封して焼くなり引き渡してくれ。あの世で神様とかに見せるから」

 

「……………はぁ。なんか頭痛くなってきた」

 

そう言って帝国兵は部屋を出た。実を言うと、川山はこれを狙っていたのだ。正直賭けだが、こんな風に訳の分からん狂気を見せられれば、一度は席を外したくなる。その瞬間が欲しかった。

 

「全く、首の皮1枚繋がったぜ。浩三の野郎は、こんな時に九州の高千穂町に突撃してるんだから」

 

「高千穂町!?」

 

「あー、心配すんな。(ひじり)ちゃんにはちゃんと京都行きを渡して、その上で動いてる。浮気スキャンダルにはならないって言っていたさ。

まあ、こんな事になってるんだ。旅行も程々にアポカリクスがトゥネル通ってるさ。すぐに来る」

 

謎の話ではあるが、一色はニヤリと笑う。最初は意味はわからなかったが、途中から分かってきたのだ。

 

「それはそれは………。なら待つしかないな。後数時間は掛かる」

 

「あぁ。そうだとも。ラストホープでも歌って待つとしよう」

 

さて、ではそろそろ解説しよう。川山が何を言っているのかと言うと、これは当然、神谷のことである。一つ一つ、解説していこう。まずは「高千穂町に突撃」これは「皇居に敵が来た」という意味である。高千穂町は天皇家に縁のある場所なのだ。その後の聖ちゃんとは、これつまり天皇陛下の別名。京都行きも「京都に脱出している」という意味である。浮気スキャンダルは単純に違和感を少なく繋げるための言葉で、特に意味はない。続くアポカリクスは神谷戦闘団。白亜衆のアルマゲドン、ラグナロクというコードネームを実際の意味にすると、どちらも神話の最後の審判とかそういう終末の話であり、アポカリクスも厳密には違うが同じ終末の話である。最後のトゥネルはドイツ語でトンネルだ。

これを直すとつまりは「皇居に敵が来た。天皇陛下は京都に脱出。神谷戦闘団がトンネルを通っている」という意味になる。トンネルというのも、総理である一色であれば地下の極秘通路の事だと分かる。最後の「ラストホープでも歌って待つ」なんて、そのまま「最後の希望」なので、要は「希望を捨てるな。浩三が動いてる」という意味だ。

 

「お前達、何も変な事はしてないだろうな?」

 

「いえ何も」

 

「あー兵士さん、俺お茶飲みたい。飲んでいいか?」

 

帝国兵は2人の行動に、もう驚く気も失せて、一言「好きにしてくれ」と言うだけだった。

 

 

同時刻 国会議事堂前駅 1番出口

「行くぞ」

 

駅前には最早人1人居ないとは言え、神谷含め兵士達は全員、ステルス迷彩を作動させて中へと入る。SATは仕方ないので、そのままだ。改札まで降りたところで、迷彩を解除し装備を手早く取りまとめる。

 

「SATチーム!」

 

「はい、何でしょうか元帥」

 

「これから君達は、出動するのでは無い。出撃するんだ。いいか!警察のこれまでの訓練、そんなのは忘れろ!!逮捕、捕縛、そんなのは必要ない!!ただただ眼前の敵を排除するんだ!!臆するな!!!!銃を持った相手は、一切の容赦なくぶっ殺せ!!!!これから突入するのは、戦場のど真ん中だ!!!!!自分が!仲間が!!生き残る為にトリガーを引け!!!!!!」

 

SATの隊員達の顔が強張る。SATは日本の警察には珍しく、犯人の射殺が許可される部隊でもある。そもそもが「事と次第によっては射殺もやむを得ない」という判断が下った時に動く部隊であり、訓練でもそれを前提に行う。

だが運が良いことに、この皇国はそういう事件は少ない。早々、そんな現場を体験する事はない。故に実戦では、トリガーを引き絞る力が緩む。彼らの任務は本来、戦争ではないのだ。

 

「長官。赤衣、準備完了です」

 

「こっちも出来たわ!」

 

「……SATチーム、準備完了」

 

「よし。行くぞ!!」

 

神谷を先頭に、誰も居ない地下鉄の駅を走る。目指すは地下鉄丸ノ内線のホームだ。改札をジャンプで突破し、階段を駆け下り、ホームから線路に飛び降りる。

 

「すげー地下鉄の中ってこんな感じなのか」

 

「ホラゲーみたいだよな」

 

「バイオになかったっけ?」

 

赤衣の隊員達は普通に軽口を叩くが、SATチームはそれどころでは無かった。というか任務中に車内とかならともかく、こんな状況で私語をすること事態、彼らからしたらあり得ない事である。

 

「止まれ」

 

神谷が一言そう言うと、ヘルミーナが「止まって」と叫びながらハンドサインで後続に伝える。神谷はしゃがみ、目の前にある点検用のハッチを開ける。

 

「こっちだ」

 

「こーきゅん、ここ何?」

 

「連絡通路だ。他の路線とかに繋がってる。普段は普通に作業員が、なんかしらの移動の時とかに使うな。こっちだ、着いてこい」

 

5分ほど、道なりに進むとT字路に差し掛かる。神谷はそこで止まると、壁にある電灯を捻り、その後に横のパイプを中に押し込む。すると壁が重苦しい音共に下に下がっていき、地下通路への道が開かれた。

 

「これだ。皇族と一部の政府要人しか知らない、極秘の地下通路。お前達、HUDに一応地図を表示しておけ」

 

SATの隊員と兵士達はHUD、もしくはARコンタクトレンズを使い、内部の地図を表示させる。薄暗い地下道をルート通りに進むが、度々神谷がルートを変える。

 

「こっちが近道だ」

 

「え!?」

 

「……続きましょう」

 

この行動には流石の赤衣やミーナ達も困惑していた。その後もルート通りには一切行かない。しかもこの地下通路、まるで迷路の様に張り巡らされている上、行けども行けども同じ様な光景で、正規ルートを通らなくては迷ってしまう筈なのだ。

 

「長官!迷子になりますよ!!」

 

「なーに、心配すんな!お前達、この地下通路を作ったのって誰か知ってる?」

 

「いやいや。知るわけ無いでしょうが!」

 

「元大日本帝國海軍元帥海軍大将、神谷倉吉 修羅。俺のひいひいじいさん、その人だよ」

 

神谷倉吉。神谷浩三のご先祖様にして、先代の修羅でもある。喧嘩ばかりの帝國陸海軍を力技で統合し、滅びかけてる日本を立て直し、アメリカ本土攻撃まで漕ぎ着け、本土攻撃の際は戦艦『大和』に乗り込み、決死隊を率いてワシントンに騎馬突撃を敢行。そのままホワイトハウスを占領した男である。詳しくは番外編2在りし日の皇国編、第五十二話『大東亜戦争』を見て頂きたい。

 

「そりゃ知ってるわ…………」

 

「昔の大英雄の子孫だもんな」

 

「神谷元帥っていつもこんな感じなのか………」

 

「元々ここの地下道は、本土決戦を見越して大本営が作ってた。それを大本営統合した後にひいひいじいさんが計画を引き継いで、緊急時に使える様にと整備してたらしい。

第二次世界大戦後、特に冷戦期に再整備と拡張が行われ、その結果がこの蜘蛛の巣だ。一部ルートは冷戦期の再整備で抜け落ちてるが、その辺も含めて俺の頭に大体入ってる。ってか何度か三英傑で、廃墟探検がてら歩き回った。あ、後少しで目的地だぞ」

 

サラッとヤバい事を言っているが、驚くのはSATの隊員だけ。他の兵士達は「あー、そりゃアンタだもの。やるわ、それくらい」という、諦め切った目をしていた。

 

「あの、エルフのお姉さん。あの人って…………」

 

「はい。いつもあんな感じです…………」

 

「どんな思考回路してんだ………」

 

猪名寺含め、周りのSATチームも三度、言葉を失う。そんな状況ながらも歩みを止めず、遂に目的地に到着した。そこだけは真新しい扉になっており、指紋と網膜とパスワードを入力。すると壁が開き、何処かの部屋に出た

 

「………ここは何処なのだ?」

 

「なんか執務室みたいね」

 

「官邸地下2階(・・)、国家危機対応統合司令室。それがこの施設の名前だ」

 

国家危機対応統合司令室。通常『NCRICC』。皇国が有事に備えて設計した核シェルターであり、行政、軍事、国政を統括する司令拠点。災害、戦争、テロ攻撃などあらゆる危機対応を可能とするよう、最先端の設備と防護技術を有する施設だ。

 

「ここは総理執務室だ」

 

「確かに言われてみれば………」

 

「付いてこい。こっちだ」

 

執務室を出ると、すぐ目の前にエレベーターの扉があった。本当に目の前、数歩前にある。

 

「このエレベーターが内閣危機管理センターの総理執務室に繋がっている。恐らく、ここから上は敵の巣窟。他の突入隊と合わせる。装備チェック!」

 

神谷の一言で、空気が変わった。いよいよ、本格的な戦闘である。兵士達はいつもの事なので、チャージングハンドルを軽く引いて薬室に弾があることを確認し、ワルキューレ達は剣を抜き、矢を握り、杖を構える。

SATチームも兵士たちと同じ様に薬室を確認するが、何処か辿々しいというか、不慣れさが見え隠れしている。

 

「赤衣、問題なし」

 

「……SATチーム、スタンバイ」

 

「ワルキューレも行けるわ」

 

「向上。他部隊に連絡を」

 

「既に確認済みです。現在、最後の扉前にて待機中。号令あり次第、即時に行動可能」

 

神谷はその報告を聞くや否や、ニタリと笑う。獰猛な肉食獣が獲物を見つけた様な、そんな笑みだ。生憎と薄暗い場所なので表情は見られてないが、その顔は一方で修羅にも勝るとも劣らない憤怒に満ち満ちた顔でもあった。

 

「結構。大いに結構!ジェネラルマスターより、全突入部隊へ」

 

無線を繋ぎ、いつもの声色で語り掛ける。いつもの声だ。いつもの作戦前の、真剣な声だ。だが次の瞬間、声色が変わった。

 

「鏖しだ!1人も首相官邸から生かして返すなッ!!奴らに祖国の土を踏ませるな!!!!俺達の皇国に!!俺達が護る皇国に!!攻め入って臣民を殺し、あまつさえ官邸を占領した()帝の雑兵共にテメェの仕出かした事を仕返してやれッ!!!!!

奴ら全員斬り捨てるッ!!!!端から首を!胴を!脚を腕を!!全部ぶった斬って、企みから心まで、何もかも破壊し尽くしてくれる!!!!!突入ッ!否ッッ!!!!突撃しろッッッ!!!!!!!!!!」

 

聞いたこともない怒声を張り上げ、突入部隊に命じる。命じるや否やエレベーターの扉を刀で破壊し、そのままジェットパックで上へ上へと駆け上がる。

余りの光景に、全員が唖然とし出遅れた。いつもなら一瞬遅れてでも着いていく連中だが、彼らを待ってしても着いて行けなかったのだ。

 

「………ワルキューレ!!それから一個分隊はエレベーターシャフトを登って、先に言ってください!!!!他は階段を探して上がります!!!!!」

 

「は、はい!!みんな、行くわよ!!!!」

 

「姫様達に続け!!!!」

 

ワルキューレと赤衣鉄砲隊より一個分隊20名が、エレベーターシャフトを伝って上に上がる。知っての通りワルキューレことエルフ五等分の花嫁は、全員がエルフの上位種族たるハイエルフ。この手の高低差がある場所での行動は、まるで忍者やパルクール選手の様に素早く熟す。

一方の赤衣の兵士達は、そんな真似は出来ないので素直にジェットパックで上がる。因みにエルフ五等分の花嫁のスカートの中が見え放題なのだが、そもそも薄暗い上にピョンピョン飛び回ってるので見る事はできない。

 

「しっかしよぉ!上がるはいいが、どうやって中に入る!!エレベーターが邪魔で入れねぇぞ!!」

 

「空間がサイドにあればいいが、無けりゃ最悪、エレベーターのワイヤーを切るしかないぞ!」

 

「大丈夫!床下見て!!」

 

元々、ナゴ村では狩猟やRPGゲームで言うレンジャーをレイチェルは、一足先にエレベーターへと着いていた。エレベーターの床下がポッカリ空いており、中に入れる様になっている。多分、神谷が刀で破壊したのだろう。

 

「さて!じゃあ中を……」

 

レイチェルが穴から中に入ろうとした瞬間、その上を何か黒い物体が物凄いスピード飛んでいき、バギィッという轟音と、何か硬い物同士のぶつかる鈍い音が響いた。その直後、何かが壁沿いに火花を散らしながら落ちていく。

 

「ケーブル側の壁!何か落ちていく!!!!!」

 

下にいた赤衣の兵士達が慌てて離れると、落ちていったのは例のロボット兵器ことバンボラだった。どうやらエレベーターの中に物凄い勢いで放り込まれ、そのまま壁を突き破り下に落ちていったらしい。

 

「レイチェル!」

 

「アーシャ姉!行ける!?」

 

「無論!!私が先に行く!援護を!!」

 

アナスタシアの武器はレイピア。こういう閉所戦では、同じ剣を持つヘルミーナとレイチェルよりも戦いやすい。こういう時の突撃は最も得意とする所だ。身を翻し、穴から素早く中に入るアナスタシア。しかし目の前に広がるのは、地獄そのものであった。

 

「…………ァァ…………」

 

「カヒュー…………カヒュー……………」

 

壁やモニターが血飛沫に塗れ、死体が、身体のパーツが、肉片が部屋中に散らばり、死体とバンボラの残骸が至る所に倒れている。そればかりか首と胴だけになった奴とか、胴体が斬られて腕で這いずり回る者とか、何というか、地獄そのものだった。

 

「何だこれは…………」

 

「アーシャ………姉……………」

 

上がってきた2人も堪らず立ち尽くす。元々が文明圏外の、野蛮な考えを持つ連中が大自然の中で生きてきた2人。血生臭いのにも慣れてはいるが、それでこれは酷かった。

 

「……タノ……ム………タ………ス………ケテ…………………」

 

まだ辛うじて息のある、腰から下を斬り捨てられた兵士。2人を見つけると、最後の気合いを振り絞り腕を懸命に動かして這いずり回りながら、2人に近づく。だがその後ろに、奴はいた。

神谷は脚を大きく上げると、そのまま勢いよく首と後頭部目掛けて脚を落とす。ゴシャッという音ともに、カエルが潰れる様な声を出して、血が吹き出し倒れた。

 

「散々殺しまくった挙句、テメェの番は命乞いか。そんな道理は通らねぇ。通さねぇ。テメェらに生きる資格は無い」

 

誰がどう見てもキレている。ブチ切れだ。上がってきた他のワルキューレと、赤衣の隊員達もこの惨状には言葉を失った様で、その場で立ち尽くしていた。

 

「…………おい、向上とかSATは?」

 

「は、はいっ!階段を探しております!!」

 

「そうか。おう向上、今何処っていうか、何が見える?…………あぁ、そこか。ならそのまま行け。すぐに階段だ。そこから登れば、ここの会議室に出る」

 

神谷は向上に無線で指示を出しながらも、腕と脚を切り落としダルマ状態の兵士の頭を引っ掴む。最早悲鳴を上げることすらできないのか、顔を苦痛に歪めるだけで、何も抵抗しない。というか出来ない。今や首と胴体しかないのだから。

神谷はそのままエレベーターまで持って行くと、頭が下になる様にして胴体へ持ち変える。そしてそのまま、何の躊躇いもなく、勢いよく真下へと腕を振り下ろした。床は穴が空いている上、このエレベーターシャフトは核爆弾に耐える地下シェルターへ続くシャフト。深さもかなりある。落ちれば、まず助からない。まして腕と脚がないのでは、姿勢を変えることが出来ない。数秒後、シャフト下から重苦しい音が反響してきた。もしかしなくても、死んだだろう。

 

「…………どうしたお前達。まるで俺がヒドイ事をしたような顔だな?コイツらがやった事を仕返してるだけだ、心配すんな」

 

そう言って笑う神谷。だが笑っているのは声だけで、顔は一切の無表情。まるで能面だった。部屋の暗さ、血に塗れた部屋で、血まみれの男が無表情で笑う。ホラー映画だ。

 

「長官!先走ら…………これ、長官ですか?」

 

「そうだとも」

 

「そうだともって………。はぁ………。まあ、そうなりますよね。どうぞ暴れてください。後ろは守ります」

 

「おう」

 

一行は階段を駆け上がり、そのまま地上を目指す。途中、バンボラの歩哨が居たが振り返る前に、神谷が縦に両断した。横ではなく縦、頭から股までバッサリと。

 

「横じゃなくて縦かよ!!」

 

「ええ…………」

 

「我が夫ながら、本当恐ろしいですね……………」

 

階段を突破し、扉を刀で切り刻んで1階廊下に出る。あちこちから銃声が聞こえて来る。他部隊も交戦を開始しているのだろう。ならばこちらは人質を救出し、奴ら全員を鏖殺するのみ。

 

「2階レセプションルームを目指す!!突撃!!!!」

 

神谷を先頭に階段を駆け上がる。途中にバンボラが来ようが、ぶった斬り突撃。とにかくレセプションルームを目指す。多分数十体は倒していると、いつの間にかレセプションルーム前に到着。SATがレセプションルームの扉の前に立ち、突入準備とハンドサインで会話する。だが……

 

「オラァァ!!!!!!」

 

「ちょっ!!えええ!?!?」

 

そんなのお構いなしに扉を刀で切り刻みながら体当たりし、中に無理矢理突入。案の定中には大量の人質と、その警備担当がいる。素早く数を数え、叫ぶ。

 

「殺害5ぉ!!!!破壊30ぅ!!!!!かかれぇぇぇ!!!!!!!!」

 

叫ぶや否や、天夜叉神断丸をぶん投げる。凡そ刀から鳴っていけない風切り音が鳴り響き、目の前にいた兵士2人の腹を貫通。そのまま壁に突き刺さる。空いた左手には愛銃である黄金の26式拳銃ドラムマガジン装備 50口径マシンピストル仕様を素早く抜く。

 

「生かしては帰さんッッッ!!!!!!!!」

 

そこからは一方的な鏖殺であった。最優先で兵士とSAT隊員がバンボラを破壊し、帝国兵の方は神谷が懐に入り込んで斬り結ぶ。首を切り落とし、胴を切断し、腹を掻っ捌く。突入から僅か1分と32秒で殲滅してみせた。

 

「向上。任せる」

 

「お気を付けを」

 

「お前達、ついて来て欲しい。俺の友達を助ける!!」

 

ここで神谷は離れ、ワルキューレ達を連れて5階の総理大臣執務室を目指す。だが当然、そこまでには大量のバンボラと帝国兵が待ち構えている。ならばそれを破壊し尽くすのみ。

 

「ミーナ。先導しろ!盾で俺達を守れ!!」

 

「任せて!」

 

「ミーシャ。剣と槍を展開し遊撃準備!」

 

「はい!」

 

「他は取り敢えず、俺の後ろに。行くぞ!!!!」

 

とにかく階段を駆け上がる。途中、バンボラが現れて行く道を塞ぐ。だがそんなのお構いなしに突っ込み、無理矢理突破する。

 

「ロボット野郎も破壊あるのみ!!!!!!!!」

 

「邪魔よ!!!!」

 

突破時によろめいた所を、エリスと神谷が潰す。エリスの大剣はリーチが長いので、遠心力で破壊力は何倍にもアップする。切るというより、叩き切る感じだが、それでいい。

 

「なっ!?!?奴は神谷浩三!!!!!」

 

「ミーシャ!!!!!!!!」

 

「はっ、はいっ!!!!」

 

報告しようと無線に伸ばした帝国兵は、ミーシャが操る空中に浮かぶ槍と剣が串刺しにし、そのまま突破。こんな調子で4階まで登れたが、今度は下から追いかけてきていた。

 

「レイチェル!!!進路を絶ってやれ!!!!!!!!」

 

「オッケー!!!!請求書はそっちに回す、よ!!!」

 

レイチェルが階段を爆発魔法を込めた矢で吹き飛ばし、物理的に進路を遮断。勿論他にも階段はあるが、時間稼ぎになる。そのロスタイムで、恐らく奴らは下の突入隊に捕捉、殲滅されるだろう。

執務室へ続く長い廊下を走っていると、バンボラ達が100体近く壁を作って待ち構えていた。その後ろには恐らく敵の首領及び部下。それから一色と川山がいた。

 

「神谷浩三…………。いつの間」

「お前達ッッッ!!!!!!!!」

 

リーダーが何かを言う前に、ワルキューレ達が動く。レイチェルが弓を放ち、エリスが剣を突き刺して剣の山を廊下に作り出し、ミーシャが空いている剣と槍を操作しながら魔法を撃ち込み、ヘルミーナとアナスタシア、それから神谷が突貫。目の前の敵は……

 

「最後列には当てぬ!!!!だが他は殲滅するぞ!!!!!!」

 

極帝が全て焼き払う。ものの10秒程度で懐に飛び込んでしまった。あまりの出来事に、帝国兵達は言葉を失う。

 

「蛇よ!!喰らい付け!!!!」

 

「人切り鋏、舐めないでよね!!」

 

「全員黄泉の世界へ送ってくれるわッッッ!!!!!!!!」

 

その瞬間を見逃さず、リーダー以外を全員殺した。余りの出来事に、リーダーの男も口をパクパクさせて動かない。そんなのお構いなしに、神谷は鳩尾に蹴りを入れて無力化。ついでにアナスタシアのレイピアで麻痺毒を入れてもらい、完全に無力化させる。

 

「悪い。遅くなった」

 

「間に合わせたな、浩三!!!!」

 

「まだ喜ぶには早いが、一先ずは!!!!」

 

3人はハイタッチを交わす。これで三英傑が揃った。これでこの事件も、一先ずは収束するだろう。今回の事は倍返しなんて、そんな生易しい物にはしない。必ず兆倍にして返す。そう心に誓「ところで!」

 

「ん?なんだ、健太郎?」

 

「浩三。お前、これどうすんの?」

 

「これって…あっ……………」

 

目の前に広がるのは、死体と残骸の山。よくよく考えるとここに来るまで、この男は怒りに身を任して好き放題暴れ散らかして来た。ここはまだマシな方だ。危機管理センターなんかひどい状態にしている。

 

「…………請求は軍の」

「もう一度、大きな声で?」

 

「私のポケットマネーから出させて頂きます。はい」

 

因みに清掃及び修理などの諸々含め、後日数億単位の金がすっ飛んで逝きました。

 

 

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