『敵機甲戦力の主力、中戦車レトリバーには75mm砲が搭載されている。これは問題ないが、沿岸砲の方はACでもダメージを受けるだろう。優先的に排除していけ』
『私達の初陣です。頑張ってください』
「了解」
汎用全域戦略戦闘機。通称『アーマード・コア』、略してAC。戦術機の開発と並行して開発された、最強の二足歩行兵器である。戦術機がある程度の量産性、機体性能、価格、汎用性のバランスを取っているのに対し、ACは完全なるワンオフ機体。量産性、価格を捨て去り、ひたすらに機体性能、究極的な汎用性、最高の戦闘能力のみを追い求めて製作された。読者諸氏にわかりやすく言うのなら、戦術機がノーマルでACがネクストである。尚、コジマ粒子は現在未発見。
たまに例外がいるが、基本的にACパイロットには強化人間と呼ばれる、適性がある上で神経系の光ファイバー換装や人工血液への置換等の外科的手術によって強化される。よくある「強化手術によって人格がー」なんて事はなく、適性があれば問題はない。ただこの適性者が少ない上、適性がない上で強化手術を受けると死ぬかナニカサレタヨウダしてしまう。簡単に言えば、SFの強化人間の末路を辿る事になる。
『システム、スキャンモード』
レイヴンが駆るサンライズが海岸に砂埃を巻き上げながら着地し、同時に周囲をスキャンする。
『中戦車62両、重戦車38両、沿岸砲23基。かなりの数です!気を付けてください!!』
『殲滅しろ621!』
「わかった」
C4-621、独立傭兵レイヴン。現状最強のACパイロットであり、数々の伝説を残したイレギュラーである。訓練プログラムのスコアを全て塗り替えた事から『壁越えの傭兵』と呼ばれ、さらにはムキになって用意したシールドを展開し続け、物理攻撃無効というチーターみたいな相手を何度も倒すヤベェ奴である。イレギュラーの所以はこれ。因みに脳深部コーラル管理デバイスは埋め込まれていない。
「……ここ」
右肩に搭載された
本来ならAPSのようなシールドを無力化する兵器ではあるが、この場合だとプラズマの加害範囲を作り出す兵器となる。そのプラズマは例え皇国軍の戦車であろうと、電気系統を一撃で破壊する。それが帝国軍の戦車なら、単なる棺桶となるだろう。
『敵戦車の無力化を確認した。この調子だ、621』
『……レイヴン。わかっていると思いますが、ミリシアル軍への誤射には注意してください。特にスタンニードルランチャーが命中すると、きっと悲惨な事になりますから』
『エア、グラ・バルカス帝国の戦車兵も悲惨な事になっているぞ』
『彼らは敵です。問題ありません』
『そうか…………』
ハンドラー・ウォルターとエアも、レイヴンと同じ強化人間である。しかし2人は現場で殴り合うよりも、基本的にレイヴンの指揮とオペレートを担当する。基本的に2人ともオペレートするが、一応はウォルターが指揮を行い、エアが電子戦や情報担当だ。
尚エアは、決して幽霊とかCパルス変異波形とか実態のないルビコニアンではなく、ちゃんと手と足とおっぱいのある人間である。
「ウォルター。ミリシアル兵の援護はどうする?」
『ミリシアル側はそもそも、援護は不要と言ってきていた。今の状況も、向こうにとっては都合が悪い。お前はお前で、好きに戦えばいい』
「なら……ミリシアル軍を助けてもいいよね?」
『……お前がそうしたいなら、そうしても構わない。俺達がサポートしよう。エア、構わないな?』
『レイヴンがそう望むのなら、私に否はありませんよ。………データリンクを更新、ミリシアル軍にとっての高脅威目標をマークします』
因みにウォルターもエアも、レイヴンにはものすんごい甘い。ウォルターにとってレイヴンは部下であり、よくある孫とか子供と重ねている訳ではない。ただその愛情の深さはもう凄まじく、あらゆる手段と伝手を使って、なんならポケットマネーをつぎ込んでまでレイヴンの福利厚生を手厚くする、もう親バカレベルでレイヴンに甘い。
一方のエアはレイヴンを半ば崇拝してるかの如く愛しており、ぶっちゃけ恋愛的な意味で大好きである。レイヴン全肯定、クソデカ激重感情を抱いており、しばしば仲間内ではネタにされる。そして2人してレイヴンの事となると暴走する事が多く、ウォルターは周りの友人達、例えば灰被りとか移動地獄あたりが止め、エアの場合はレイヴンが無意識で止めている。というかレイヴンの周りは、なんというか、レイヴン大好き人間が多いので大体暴走する。
『621、右のトーチカ群を破壊しろ。ミリシアル軍は既に戦車がいない。この際、機関銃を減らして弾幕を薄めさせた方がいい』
「見つけた。破壊する!」
今度は両手に握っている、
今回はトーチカ相手だが、このショットガンであれば真上から2個くらいなら一撃で破壊できる。それが2挺なので、4個同時破壊くらいなら可能だ。
『その調子だ。次はその奥の沿岸砲を破壊しろ。あそこの砲台は、お前の脅威となる。先に潰し、安全を確保しろ』
「了解」
左腕の重ショットガンを後ろのラックに仕舞うと同時に、
「行くよ」
パイルが容易く鉄筋コンクリートの防壁を突き破り、中の沿岸砲を破壊。爆発を起こす。その爆炎は普通なら戦車だろうと吹き飛ばす勢いだが、サンライズの場合は塗装が少し剥げる程度だ。
『レイヴン。そのまま一度、奥に向かってください。そこに前線指揮所があります。破壊すれば、帝国軍に隙が生まれる筈です』
「わかった。……ここだね」
レイヴンはサンライズのアサルトブーストを起動させ、一気に指揮所に肉薄する。前線指揮所と聞くとテント型の簡易拠点かと思っていたが、鉄筋コンクリート製のかなり大規模かつしっかりした代物だった。ショットガンとスタンニードルランチャーでは貫徹できないだろうし、パイルバンカーも貫徹こそできても穴を開けるだけだ。なら、もう1つの兵器を使うのみ。
背中の上部ハッチを開放し、強制排熱用の大型ラジエーターを露出させる。更にジェネレーターの出力を最大限上げていく。すると、ラジエーターの周囲に無数の赤い光が集まり出す。
「アサルトアーマー」
次の瞬間、サンライズを周辺に半径10mの球形パルス爆発が発生する。真っ赤なパルスが指揮所を押しつぶし、全てを瓦礫の山に変えた。
ACの目玉機能の1つが、このコア拡張システムである。機体を起点にパルス爆発を発生させるアサルトアーマー、機体を起点にパルス防壁を発生させるパルスアーマー、同じくパルス防壁を発生させるが、防壁がその場に残留するパルスプロテクション、またも同じくパルス防壁を発生させるが、より高密度かつ強力で自機が瀕死になった時に自動発動するターミナルアーマーの4種類がある。
『621。次の目標は……』
マイク戦域はレイヴンの手により、何とか防衛戦を突破。グランディス攻略を目指す事となる。これ以降、レイヴンの名は世界に轟いた。
作戦開始時刻 リマ戦域沿岸部 上陸用舟艇
「………行くぞ!!突」
「ぐはぁっ!!」
「伏せろ!伏せろおおお!!!」
「くそったれ……!こんなとこで……死んでたまッ」
「があっ!!」
上陸した瞬間から、ミリシアル軍将兵達は地獄だった。事前の砲撃が通じてないのか、はたまた単純に元の数が多いからか、真偽は分からないが、大量の機関銃陣地やトーチカが生き残っていたのだ。
上陸用舟艇が海岸に到着し、ハッチが開くや否や弾丸のシャワーを問答無用で浴びる羽目となる。鋼鉄の暴風雨というのが相応しい程の弾幕は、中に乗っている兵士達を容赦なく殺していく。
「よ、横から飛び込め!!着いた瞬間、横から飛び込むんだッ!!!!」
「急げぇ!!!!」
ヒュゥゥゥゥー……
「な、何か降ってくるぞ!!!!」
例え舟艇が着く前だろうと、真上から迫撃砲が降ってくることもある。他にも沿岸砲の砲弾という場合もある。何れにしろ、そう簡単には上陸させて貰えない。
「やべぇな。おい!スピードをもっと出せ!!」
『やってますよ!戦車重いんだから、これ以上出ないんです!!』
戦車を載せた舟艇も、とにかく歩兵に追いつけ追い越せと歩兵を乗せた舟艇を追い掛ける。戦車が重すぎてスピードが出ず、結果的に歩兵の舟艇に置いて行かれているのだ。
「車長!敵機来ます!!!!」
「はあぁ!!??クソッ!機銃だ!!」
「野郎ッ!!!!!」
そんな遅いボートは、航空機の良いカモだ。戦車側は車載機関銃だとか、乗員の護身用に載せてあるサブマシンガンを乱射するが、当たるわけがない。例え当たろうと、少々の被弾は問題ないのだ。
逆に真上に爆弾を落とされ、舟艇はどんどん水底に沈んでいく。どうやら帝国軍の方は、スピードが遅いのが戦車だと気付いたようで、執拗に遅い舟艇ばかり狙っていた。その結果、第一次上陸分50両のうち、大半の機甲戦力は早い段階で壊滅し、どうにか辿り着いたのは僅か4両。しかしその4両も、軽装甲高機動のスパイダーというのが災いし即撃破されてしまう。第一次上陸部隊は、その悉くが返り討ちとなった。
「いいかッ!第一陣が橋頭堡を確保している!!我々はそこに上陸するぞ!!だが気を抜くなッ!!」
「「「「「はい隊長!!!!」」」」」
「現に戦車は多くが撃退されているッ!!訓練通りにこなしてみせろ!!いいなッ!!」
「「「「「はい隊長!!!!」」」」」
当然、第一陣は大半が戦死。生き残りもいるが、とても橋頭堡なんて確保できていない。だがその情報は、第二陣の彼らには伝わっていなかった。
というか、何をとち狂ったのか、司令部がそれを伝えなかったのだ。将校達は自らの保身だとかのために、表向きは「失敗が伝わって士気を下げぬため」という、それらしいを理由つけて。それ故に、彼らは上陸した瞬間から地獄を見る事となる。
「おい誰か火」
兵士の1人が、隣にいた兵士にタバコの火を貰おうとした時だった。タバコを咥えた兵士は流れ弾が命中し、その場に倒れる。それが合図だったかのように、多数の弾丸が舟艇の周りに次々に着弾。舟艇にも命中する。幸い距離も遠く、威力もそこそこな為、弾が貫通することはなかった。それでも兵士達の不安を煽るには十分だった。
「ちくしょう!!」
「橋頭堡を確保してるんじゃないのか!?」
「後1分!」
「………えぇい!!橋頭堡を確保されてないと判断する!!俺達でこじ開けるぞ!!!!上陸したら遮蔽物を探せ!!無ければ死体でもなんで利用するんだッ!!!!!」
隊長のマクドネルは既に橋頭堡は確保されてないと判断し、舟艇にいる部下達に命令を飛ばす。ミリシアル軍の特徴として、基本的に現場主義の人間は結構有能なのだが、上や後方に行くと大体腐る。マクドネルは叩き上げなのもあって、この手の判断は早いのだ。
「いいか!!上陸したら横から降りろ!!!!前は掃射されて死ぬだけだッ!!!!!」
「海岸到達!!!!」
「行け行け行け行けッ!!!!!」
マクドネルがそう叫び、兵士達は舷側から飛び降りて上陸する。舟艇に乗っていた3分の1は死んだが、それでも一定数の兵士が上陸できた。それでも、あくまで上陸に成功しただけ。スタートラインにこそ立てたが、機関銃の弾幕や砲弾には未だ晒されている。
「ママー!!ママー!!!!」
「は……ははっ。腕みっけ………」
「あっ………がっ…………」
「あ"ち"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!だ"す"け"て"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!!」
「カヒュー……… カヒュー………」
つまり舟艇から飛び降りて上陸しようと、其処は地獄に変わりないのだ。盛大に腹を腸から何まで全部飛び出してぶち撒けてる者、恐らく爆発で腕を吹き飛ばされたのだろう。その腕を探して、運良く見つけ、それを衛生兵に縫い付けて貰うつもりか、隠れもせずに普通に歩き撃たれて倒れた者、足を吹き飛ばされて尚、立ち上がり戦おうとするも倒れる者、火だるまになって走り回ってる者、腰から下が全部消えて這いつくばってる者。
後の歴史で『血の浜辺』と言われるビーチであるが、その名に恥じぬ程にミリシアル兵の血で赤く海が染まり、更には砂浜までもが赤黒く染まった。
「進め!!進めぇ!!!!」
そんな地獄であろうと、中には突き進む者もいた。マクドネルも、その1人である。
「い、嫌です!!出て行ったら死んじまうッ!!!!」
「そ、そうだ!自分はここに残ります!!!!」
兵士達は口々にそう言う。実際、今いる対戦車用の障害物から出ると、そこから先は50m近く障害物がない。銃撃の的になるだろう。
「そうだろうな!!!!だが!!ここもここで、迫撃砲やら沿岸砲の砲弾が降り注ぐぞッ!!!!いいか!!ここより安全なのは、トーチカの下の斜面だ!!!!!!死ぬ気で行くぞッ!!!!!!!」
そうなのだ。確かにここは、射撃は防ぐだろう。鉄やコンクリート製な上、戦車を妨害する為の障害物なのだから頑丈でなくてはならない。一方でここは、砲撃のいい目標にもなる。その内、この辺り一帯は砲撃で整地される。何せ砲というのは、敵の密集時にこそ威力を発揮するのだ。
となれば、進もうが留まろうが待つのは死。しかも目の前の斜面であれば、まずトーチカの死角なので死ぬことはない。沿岸砲も死角となる上、迫撃砲も自陣が近すぎて狙えない。警戒すべきは敵の歩兵と機関銃陣地であり、危険なのは変わらないが、今までよりかは安全ではある。
「隊長に続けぇ!!!!!」
まずはマクドネル指揮下の兵士達が突き進み、それに触発され他の兵士達も釣られて走り出す。機関銃に晒され、真横で砲弾が爆発し、仲間の血と肉のシャワーを浴びながらも、どうにか斜面前の鉄条網にまで走る事ができた。幸い、ここも伏せれば弾丸を防げる程度の段差となっている。取り敢えず一安心できる場所だ。
「軍曹!現在地は分かるかッ!?」
「わかりません!しかしさっき、第一陣の死体を見ました!!恐らく集結地点近く!!でもみんなバラバラで、我々だけです!!!」
「クソッ!!」
「隊長!マクドネル隊長!!こっちにクリュガー中佐です!!!!瀕死ですが生きてます!!!!」
「そっちに行く!!」
マクドネルは横にゴロゴロと転がりながら、どうにか声のした方へと向かう。少し転がると、中佐の階級章と第27降下旅団のエンブレムを付けた兵士が横たわっていた。半身が吹き飛んでいるが、辛うじて息がある。
「…………マク……ドネル……」
「中佐!何があったのですか!?」
「戦車……にやられた……………。全……め……つ……だ……奴ら……は……帰っ………たが………、その内………戻って………くる。皇国……軍の………援護………も……貴……族……………派が潰し……………た……………………ッ」
「中佐!!クリュガー中佐ッ!!!!!」
「ダメです隊長…………」
隣にいた衛生兵が首を横に振る。クリュガーの瞳には光はなく、血の出方も漏れ出るような感じで勢いがない。死んだのが、素人目にも分かる。
「通信兵!!無線!!!!」
「どうぞ!!」
通信兵が背負う、昔のショルダーホンの様な魔導通信機をセットし、受話器を耳に押し当てる。
「……こちらマクドネル大尉!HQ、応答せよ!!緊急通信だ!繰り返す、緊急通信!!」
『こちら司令部。マクドネル大尉、状況を報告せよ』
まるでAIかロボットの様な、無機質で冷たい声が響く。恐らく大半の読者諸氏にとっては、確定演出だが可能性は捨てないでもらいたい。奇跡が起きて、ミリシアル側が動くかもしれない。
「状況!?……第一陣のクリュガー中佐の部隊は全滅した!繰り返す、第一陣は壊滅だ!!俺たちも上陸した瞬間から砲撃の雨だ!敵戦車は撤退したが……砲台の砲撃は止まらない!どこに隠れても、すぐに位置を特定される!!」
なんて言っている間に、近くに迫撃砲か何かが命中し砂が雨の様に上から降ってくる。爆発音はオペレーターにも届いているはずだ。
「……畜生……!今の聞いただろ!?俺たちは標的にされてるだけだ!! 残存兵力は30%以下!援軍を寄越せ!!繰り返す、支援を今すぐ寄越せ!!」
『第一陣の全滅は確認されていない。敵の戦車が撤退したなら、進軍を継続せよ』
「確認されていないだと!?フザけるな!!俺の目の前でクリュガー中佐は死んだし、その部隊は焼き尽くされてんだよ!!敵戦車は確かに撤退したが、砲撃が止まらねぇ! 何が進軍だ!!進めば即死だ!!」
一応爆発音は聞こえているにも関わらず、これである。だが少しオペレーターにも人の心があるのか、一度無線を切って上と相談するらしい。
『マクドネル大尉。司令部の命令を伝える。前進せよ。グランディス1番乗りの栄誉を目指し、神に祈って進軍せよ』
この解答にマクドネルは、遂にやる気が消え失せてしまった。だがそれでも、言わねばなるまい。
「……司令部、もう持たねぇ……。このままじゃ……このままじゃ……!兵士たちは一人ずつ削られていく……!俺たちはただの的か!?処刑台に送ったつもりか!?」
『現在、援軍は編成中だ。到着まで40分を要する。現地での奮戦を期待する』
「……40分!?フザけんな!!こっちは4分も持たねぇ!!このままだと全員死体になる!!あんたらはただ数字を眺めてるだけだろ!!こっちは人間なんだよ!!
……俺たちは捨て駒か……!?もう十分死人を出した……これ以上何をしろってんだよ……!」
最後の言葉は聞こえたのかは分からない。もういっそ、頭に銃突きつけて死んでやろうかと思ったその時、不意に魔信が鳴った。
『………こちら、世界連合軍総旗艦『日ノ本』。これより、ミリシアル上陸部隊の援護を開始する』
「は………?」
次の瞬間、トーチカ含めた帝国軍陣地が次々に爆発する。明らかに普通の爆発ではなく、これまでで1番派手な爆発が連続して、それも止めどなく起こった。
誰もが後ろのミリシアル艦隊の方を振り向く。大半の者は、ミリシアルが誇る秘密兵器、海上要塞『パルカオン』が来たのかと思った。だが背後に居たのは、他のミリシアル艦隊を圧倒する巨大な超戦艦。そして大量の、上陸用舟艇と思しき先進的なボート群。そして空を埋め尽くさん勢いの、大量のジェット機の群れだった。
『HQより全軍最優先通信!神聖ミリシアル軍、リマ、マイク両戦域のHQは
以降は混乱を避ける為、魔導通信妨害システムにより、通信を強制遮断。神聖ミリシアル軍全部隊は、暫定的に大日本皇国軍指揮下に編入。作戦を継続し、グランディス攻略を目指せ。尚、ミリシアル艦艇同士の通信については発光、手旗信号を使用。艦隊間通信については、世界連合軍の無線を中継し行うものとする』
次の瞬間、無線機から嫌な雑音が鳴る。恐らく既に通信妨害が行われているのだろう。だがすぐに無線が復活し、通信が繋がった。
『リマ戦域CCPよりミリシアル上陸部隊、第二陣へ。応答せよ』
「こ、こちら第27歩兵大隊!マクドネル大尉だ!!」
『状況はある程度、把握している。現在ミリシアルHQはクローズ状態であり、暫定的に我々、大日本皇国統合軍が諸君らの命を預かる。
早速だが、司令部の命令を伝える。現在行われている支援砲撃の間、上陸した第二陣は負傷者を収容。トリアージ、負傷の度合いを確かめ、軽傷者を優先治療せよ。重傷者については一度安全と思われる場所に纏め、現在急行中の部隊に引き渡せ』
「ま、待ってくれ!!砲撃支援が行われていようと、我々の戦力では無理だ!!とてもグランディスなんて目指せない!!死んでしまうッ!!」
『承知している。現在リマ戦域には、神谷戦闘団の一部が既に上陸間近だ。これと合流し防衛ラインを突破。以降は後続の本隊進出を待ち、グランディスに向け進攻せよ。
尚、我々には、以降、各部隊の状況、もしくは要請に応じて支援攻撃を行う用意がある。少しでも危険を感じれば、遠慮なく使って欲しい。諸君らは暫定的とは言え、既に我ら栄えある皇国軍の一員である。無駄な戦死は許されない』
ミリシアル軍と同じ様に、声色には感情をそこまで感じさせず機械的ではある。しかしその中身は、雲泥の差であった。もう指揮権どうのは、気にならなくなってしまう程に衝撃的であり、マクドネルは無意識に涙を流していた。
「た、大尉!!海岸に戦車ですよ戦車!!バカでかい戦車です!!!!」
海岸線には次々にホバークラフト、LCHHが接岸。装甲車や戦車、或いは歩兵を下ろしていく。更に上空からはAVC1突空が飛来し、歩兵を空挺降下させて去っていく。
「お前達!皇国軍だ!!大日本皇国軍が来たぞッ!!」
「騎兵隊の到着だぁ!!!!」
ミリシアルの将兵達の目に、生気が戻る。上層部の、というか貴族派の上層部は認めようとしないが、現場の人間は皇国軍は既に自国よりも強い軍隊である事は理解している。この戦況で、これ程士気の上がる事は無いだろう。
「ミリシアル部隊を目視確認」
「降下開始!降下後はトーチカとかの防衛施設に弾丸を打ち込んでやれ!!牽制しろッ!!!!!!」
突空から神谷らが飛び降りるや否や、即座に白亜衆の兵士達は動き出す。その後ろでは、奈良山の指揮でアサルトタイガーが上陸し陣形を整えていく。
『エルダータイガーより、オールタイガー。いつも通りだ!号令を待て!!』
『号令が来れば突撃ってか?』
『そりゃそうだ。突撃虎が先陣を切らねー事には、何も始まらないぜ』
更に各部隊に配属されている衛生中隊の面々は、ミリシアルの衛生兵と合流しトリアージと治療を行う。
「待って……たすけてくれ…………」
「大丈夫だ、安心しろ。よく頑張ったな。もう少し頑張ってくれ。運べ!!」
「コイツはイエロー!レッド!レッド!グリーン!レッド!レ、いやブラック!ブラック!レッド!イエロー!イエロー!レッド!イエロー!……」
叫んでいる色は、トリアージのカラーである。グリーンは自力歩行が可能な軽傷者。イエローは重傷ではあるが今すぐ死ぬ事は無く、少し待たせても問題ないレベル。レッドは急がなくては死ぬ可能性がある重傷者。そしてブラックが死んでるか、まず助からないレベルの重傷者である。ブラック宣告者の内、瀕死の場合は強力なモルヒネが投与されるか、皇国軍人であれば介錯措置が取られる。
「指揮官は何処だ!!」
「わ、私が指揮官であります元帥殿!」
神谷の声は轟音轟く、この激戦地であってもよく通った。軍人としての条件反射は何処の世界も同じな様で、マクドネルはバネ仕掛けの人形の様に素早く敬礼する。
「お前か!ここまでよく耐えた!!そろそろ諸君らも、一方的に殺され続けるのには飽き飽きしている事だろう!!!!これより防衛線を突破する!!合図と共に戦車が突っ込むから、俺達はその後ろから防衛戦を食い破る!!!!いいなッ!!!!」
「了解ッ!!!!」
「長官。間も無く、砲撃終了します」
「奈良山!!戦車殺しの死神の出番だぞ!!!!」
『任せてくださいよ!!』
間も無くして砲撃が終わる。砲撃が終わると、神谷の号令でアサルトタイガーが一斉に飛び出して、防衛線を轢き潰して進んでいく。あんな巨大戦車が現れれば、当然敵は塹壕だとかトーチカに隠れる。そこに隙が生まれるのだ。
「総員!塹壕に突っ込め!!!!」
塹壕やトーチカに隠れる以上、当然だが接近する者を監視する事はできない。その間に距離を詰め、中に入り込めばこっちのものだ。
「よくもやってくれたな!!!!」
「ぶっ殺せ!!!!」
「殺せぇ!!!!」
特にミリシアル兵は殺されたり、殺されかけたりと、かなりの鬱憤が溜まっている。嬉々として殺しにかかっている。一方の白亜衆の兵士達は、あくまでプロフェッショナル。マシンの如き正確さで、敵を殺していく。
「正面にトーチカ」
「任せい」
「隊長!?」
しかも神谷幕僚団の面々も当然先頭におり、戦公家こと槍河に至っては38式携行式対戦車誘導弾を担ぎ、ミサイルをトーチカにバカスカ叩き込んでいる。しかも偶に詩やら俳句やらを詠み、「たーまやー」と呑気に撃ちまくっているのだから恐ろしい。
これより数時間後、神谷戦闘団とミリシアル部隊は要塞陣地を攻略。そのままグランディスを目指し、次々に進撃していく。翌日にはグランディスを完全制圧。バビロン作戦は終了した。
「おう、俺だ。あぁ、プラン・オラクル発動だ。繰り返す、プロジェクト・サジタリウス、プラン・オラクルだ。いいな?」
神谷は半分廃墟と化したグランディスの市庁舎から、本国のJMIB本部に指示を出す。全ては予定通りではないが、ミリシアルのやらかしはプラスになるだろう。
「さーて、世界を引っ掻き回すとしよう。皇国よ永遠なれってな」