一応また隔週投稿、最強提督を含めれば毎週投稿で頑張りますが、もしかするとまた連絡なしで休む可能性があります。その時は「あぁ、土日消えたんだなー」とでも思って気長にお待ちくだされば幸いです。とりあえず、ドロンする事はないので、そこだけはご安心を!!
グランディス陥落より14時間後 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ ニブルズ城
「………状況を報告しろ。敬称その他、まどろっこしいのは全て外せ。とにかく状況を、簡潔明解に言うのだ」
港湾都市グランディスが陥落して14時間が経過した、1月10日深夜2時。帝都ラグナのニブルズ城には、各省庁の大臣又は代理人、各軍の将軍や高級将校、そして異例ではあるが情報を取り扱う尉官や佐官階級の士官達が集められていた。
「……それでは陛下、まずは私より2日前の状況よりご説明させて頂きます。何度か聞かれたやも知れませんが、ここは誤解や誤認の無いよう、共通認識を持ちたいのでご容赦を」
「構わん。話せ」
「ハッ。2日前の1月8日、午前6時よりグランディス港湾都市に程近い、ベストル海岸線に世界連合軍各部隊が上陸。6時間でベストル沿岸要塞陣地を占領し、同日に港湾都市グランディスへ侵攻。今より14時間前の昨日午後12時頃にグランディス司令部が占領された事を確認した為、グランディス周辺地域は敵の占領下に置かれたものと判断しております」
サンド・パスタルが述べた報告に軍関係者は青い顔をし、大臣や代理人といった文官達は青を通り越して土気色になっている。恐れていた悪夢が、現実となってしまったのだ。仕方がない。
「戦力はどの程度か?」
「偵察隊を送り出してはおりますが、その大半が未帰還です。ベストル要塞やグランディス守備隊の生き残りの証言を統合しますと、まず海を埋め尽くす程の大艦隊が5つのポイントにそれぞれ現れ、苛烈な砲撃を加えたと。装備から考えますに、5つのポイントはそれぞれ、ムー及びその他の各国が1、ミリシアルと大日本皇国が2という割振りかと。
戦力としましても未知数ですが、概算では恐らく20万人かそれ以上かと。当然戦車や装甲車の機甲戦力に加え、沿岸に待機している空母からの航空支援もあり、その戦力は計り知れません」
流石のルークスも顔をしかめ、項垂れる。そんな大戦力、いよいよ持って無理だ。ミリシアルとムー、それに有象無象の国家であればどうにかできただろう。だが皇国が入っている時点で、どうにかするなんて不可能に近い。
「サンドよ。……問おう。此度の軍勢、主戦力は何処の国か!」
「通信傍受の結果、そして各地からの報告から察しますに、大日本皇国が主力。そして総指揮についても、大日本皇国……もっと正確には、例の神谷浩三修羅でほぼ間違いないかと」
議場に落胆の声や諦めの溜め息が静かに増えていく。大日本皇国。最早その名は、帝国内共通の厄災という認識である。思えば全ては、皇国が介入して歯車が狂った。ムーへの侵攻当初は順調だったが、皇国が介入して勝てた試しがない。本来なら役立たずの筈の有象無象の国家の軍であろうと、例え騎士や無能な味方であろうと、戦わせてしまう冗談の様な戦略。分かりやすく言えば、負けを齎す貧乏神なのだ。
「陛下!」
末席に近い端の方の少尉が1人、手を挙げた。負傷しているのか頭に包帯を巻き、腕を吊るしている。本来であれば、この部屋にいる事すらあり得ないが、今はそんな事言っている場合ではない。ルークスが軽く手を挙げ、その者に話すように促す。
「恐れながら陛下!私はベストル要塞の生き残りであります!!私のような下っ端少尉が発言する機会をお与えなさった事に感謝すると共に、私の様な者がお話しすることを謝罪致します!!」
「よい。申せ。貴様は何を見たのだ?」
「ハッ!!私が見たのは、その、信じられないかも知れませんが、巨大なロボットです!!!!」
「は?」
静かな空気を打ち破り、何を言ったかと思えば、荒唐無稽な報告。次の瞬間、近くにいた別の士官からの鉄拳が飛ぶ。しかし少尉もそれを分かっていたのかガードし、拳を上手に防ぐ。
「おい貴様!!防ぐな!!!!」
「この報告する時点で殴られるのは分かってましたから!!しかしですね、あれは絶対にロボットですよ!!SFだと思うでしょうが、それはまた俺が1番よく分かってる!!でもあの皇国なら、やりかねないでしょう!?」
「そこまでにせよ。少尉の言う通り、皇国ならSFじみた兵器を持ち出してもおかしくはない」
ルークスの一声で、上官も拳を下げる。それを見計らっていたかの様に、情報局員の人間が手を挙げた。
「陛下。少尉の報告ですが、我々にも同様の報告が上がっております」
「何だと?」
「皇国が上陸したLポイントでは、多数の人型二足歩行兵器が確認されています。それもSF小説に出てきそうな、手と足のある空飛ぶロボットです。こちらをご覧ください」
情報局員が目配せで合図を送ると、後ろに控えていた部下達が参加者達に写真を配っていく。写真に写っているのは、何処か流線的な見た目の二足歩行型ロボット。子供が絵に描く様な、まさしくロボットという見た目の巨大兵器であった。
「情報を精査しますと、この兵器の名は戦術機。見ての通りの二足歩行型ロボット兵器であり、腕と足を持ちます。この腕に歩兵と同じ様に、ロボットサイズの突撃小銃……いえ、最早大銃とでも申しましょうか。この大銃を持って戦います。
銃の威力としましては、鉄筋コンクリート製のトーチカを一撃で破壊する物と連射できる物が揃っており、恐らく状況に応じて使い分ける物と思われます」
「ま、待ってくれ!まさかこれ、空を飛ぶとか言わないよな!?」
「法務大臣殿。その、まさかです」
「なんて事だ……」
この法務大臣、SF小説の類いが好きであり、よく読んでいる。故に取り敢えずSFどうのの、セオリーや王道は大体分かる。勿論これは現実だが、どうせフィクションみたいな現実なのだ。フィクション知識全開でも、案外役に立つ。
「法務大臣。どういう事ですか?」
「簡単ですよ。大体こういうSFロボットは、空を飛ぶんです。というか空を飛んで、空中で戦闘機みたいにロボット同士で戦ったりするんです。この写真のロボット、戦術機でしたな。腰の部分、明らかにそういう見た目のエンジンが付いてる。飛ばずとも、ジャンプ位するというのは簡単に予測がつく」
「大臣、その辺りで」
「あ、あぁ。すまん」
オタクというのは何処の世界でも変わらない物らしく、危うくオタク話全開になりそうだったが、秘書がそれを止めた。情報局員は苦笑いしながら報告を続ける。
「えー、この戦術機ですが、確認しただけでも数百機。それも幾つも種類がある様です。写真に写っていますのは皇国の機体でして、他にも世界連合軍の方でもムーの国籍証をつけた機体を確認しています」
「つまりそれは、ムーも配備しているのか!?」
「そう見るのが妥当です。しかしながら、自国生産ではなく皇国が製造したのを配備しているのでしょう。見ての通りのエンジンはジェットエンジンですから、未だレシプロ機が主力のムーが、いきなり過程を飛び越してジェットエンジン付きのロボットは作れないかと」
だとしても、十分に脅威なのには変わりない。もしこれが世界各国に波及すれば最後、ロボット同士の戦争が始まるだろう。
「…………違う」
「少尉?」
「違います。私が見た機体は……。この戦術機は複数、つまり部隊としてやって来た。そうですよね?」
「あ、あぁ。そう聞いているが?」
「私が見たのは単機でした。それも、この戦術機よりも見た目がゴツく、エンジンも中にある上に、動きが明らかに常軌を逸していた…………」
彼らが知る由もないが、少尉が見たのはご存知の通りACサンライズ。最強のパイロット、レイヴンが駆る機体だ。戦術機が量産を目的とし、他国のライセンス生産までも視野に入れた汎用兵器なら、ACとは予算だ量産性だというのは潔く全て取っ払い、ただただスペックだけを追い求めた化け物。性能も運用思想も、何もかも丸っ切り違う。
「少尉、全てを話せ。どんな兵器だったのだ?」
「はい……。私が見たのは、そう。大きさだとか、大体の見た目だとかは戦術機と同じでした。しかし兵装はショットガン2挺に、右肩に巨大な大砲、左肩には巨大な杭打ち機を装備していました。見た目も戦術機よりも、こう、言うなれば戦車の様に分厚く、エンジンは腰にはありませんでした。
一見すれば鈍重そうですが、奴は常に空中に軽く浮遊して、地面をまるでスケートするかの様に滑り、こちらが砲弾を打ち込めば軽やかなステップを踏むかの様に、真横に素早く移動して避けていました。
攻撃力も凄まじくショットガンの一撃でトーチカを穴だらけにし、右肩の大砲は着弾点に電撃が走り、戦車に乗っていようが何処かに隠れていようが感電させ、杭打ち機に至っては一撃でトーチカ以上の鉄筋コンクリートを破砕していました。そして最後は、奴の背中が光って、何か巨大な衝撃波を発生させて全てを破壊していきました…………」
再び議場が静まり返る。そんなの、どう相手しろというのだ。砲弾を打ち込んでも、避けられては全く意味がない。
「……サンドよ。その戦術機とやら、倒せると思うか?」
「情報が少なすぎて何とも。しかしジェットエンジンを搭載しているとなると、ほぼ間違いなくレシプロ機よりも速いでしょう。これに砲弾を当てるなんて芸当、まず不可能です。この戦術機の装甲が薄ければ可能性はありますが、これまで皇国の兵器をマトモに破壊できた試しがありませんからな。
しかし例え破壊可能だとして、恐らく機動力や兵器としての汎用性は我が方の如何なる兵器をも凌ぎます。例えばの話ですが、人と同じ腕を持つのなら近接戦闘も可能でしょう。殴る蹴るといった事はできずとも、例えば剣や槍といった道具を持たせるだとか、いっそその辺の巨大な瓦礫ですら武器となります。これがどう戦況に影響を及ぼすやら」
一応、破壊しようと思えば対戦車兵器で破壊は可能である。対戦車ライフルとかでは難しいかもしれないが、バズーカ砲や対戦車砲、或いは大口径の機関砲でも効果がある。特にエンジン部分は脆弱どころか、マトモな装甲を排熱の関係で搭載できていない。その為、破壊自体は見た目の割に簡単だ。
しかしそれを行うには、基本的に待ち伏せ一択。例えば遮蔽物の多い都市部だとか、偽装された塹壕や蛸壺といった場所に予め潜んで置く必要がある。戦術機が降り立ったタイミングで攻撃を加えるのだ。ただそれも、あくまで戦術機単機や戦術機のみの時でしか使えない。戦術機の弱点なんて、開発者たる皇国が1番よく知っている。戦術機の運用は基本的に、強襲や奇襲でのみ単独運用する。敵支配地域への侵攻作戦に於いては、弱点を補う為の通常機甲戦力や歩兵部隊を随伴させるのだ。尤も、戦術機甲部隊の中でも特殊な連中はその限りではない。
「そうか…………」
ルークスは一呼吸置き、天を仰ぐ。いつもの天井に、煌びやかなシャンデリア。グラ・バルカス帝国皇帝が会議を行うに相応しい部屋だ。そして、眼下の忠臣達を見つめる。ルークスは覚悟を決めたかの様に、玉座から立ち上がると静かに言った。
「……………我が忠臣達よ。我は統治者として、降伏すべきだと考えている。無論、帝国の皇帝としては失格やもしれん。だが皇帝ではなく、国民の命を預かる者としては、降伏すべきだと結論を出した。諸君らはどうか!!」
遂にルークスがそう言った。これまで少人数の信頼のおける者にしか言ってこなかった、ルークスの真意を大人数の目の前で言った。議場の反応は様々で、割合で言うなら肯定3、否定2、どっちとも付かない迷っている者5という辺りだろうか。そんな中、1人の女性が立ち上がった。
「……陛下、よろしいでしょうか」
「ミレケネスか。言ってみよ」
「ありがとうございます。陛下のお考えには、私個人としては賛成であります。しかし帝国海軍全艦隊を預かる艦隊総督の立場、更には一将軍としても反対です」
「何故か?」
「徹底抗戦派です。彼らは未だ、各軍の士官の大多数を占めております。更には政府内部にも居られるのでは?」
チラリと帝王府長官のカーツを見る。カーツは政府に顔が利く男であり、うんうんと頷いていた。ちなみに徹底抗戦派は主に3つあり、本当に現実が見えず帝国が勝てるとか妄信している連中と、単純に引くに引けず意固地になってしまっている連中、そして一番面倒なのが国どうこうではなく、己の利益の為に戦争を継続させたい連中及びそういう勢力に繋がってる連中である。
「この様な層がいる以上、例え降伏を陛下が唱えようと、無礼を承知で申し上げれば、最悪クーデターにも繋がりかねません」
「ではどうする?」
「もう少し負けるべきです。もっと正確には、被害を出すのです」
この発言に議場は凍り付いた。帝国三大将軍に数えられていなければ、確実に更迭だの不敬罪だのと言われる発言なのだ。だが一方で、事実かつ手段としては可能性のあるものでもある。
「…………ミレケネスよ。全く、其方は変わらんな。我の立場を考えよ」
「申し訳ありません陛下。しかし使いたくはありませんが、使う事も視野に入れて是非ご一考ください。その為とあらば、私を殺して頂いて構いません」
「………………………よかろう、覚悟はしかと受け止めた。無論最終手段ではあるが、考えておこう。して話は変わるが、例の艦隊は無事か?」
「はい。幸か不幸かグランディス方面への出港前に、機関トラブルで出港延期になりまして。お陰で全艦無事であり、現在は母港のドックに隠してあります。指示あらば、即座にギャラクシー艦隊は動かせます」
グラ・バルカス帝国海軍、第九艦隊。通称『ギャラクシー艦隊』。帝国がグレードアトラスター級の後継艦として建造していた、超大型戦艦A級ことアンドロメダ級5隻からなる秘匿艦隊である。一番艦たる『アンドロメダ』以下『アルデバラン』『アキレス』『アルファラッツ』『アポロノーム』からなる、現状最強の海軍戦力だ。
「そうか。今は休息を取らせよ。直に出番は来る」
「陛下。グランディス近郊の都市については、どうされますか?子供や老人を、南部に疎開させたいとの要望が入っておりますが……」
「構わぬ。疎開させよ」
疎開の許可を貰った直後、議場の扉が開け放たれた。ドア前にいる衛兵が直ぐに制止しようと動くが、制止できずに立ち止まって、寧ろ乱入者に敬礼する。誰しもがどこの不届き者かと振り返ると、そこに立っていたのは予想だにしない男だった。
「陛下。突然の参上、ご容赦ください」
「バルツ?貴様、謹慎を言い渡した筈だぞ!」
「確かに謹慎と言われましたが、どうか今だけは目をお瞑りください。国家存亡の危機なのです、どうか」
そう言ってバイツは国の中枢達しか居ないとはいえ、大人数の目がある中で頭を下げる。皇帝にしろ皇族にしろ、かつての天皇陛下の様な現人神だとか、そういう類いの伝説がある訳ではない。だがそれでも、大人数の目の前で深々と頭を下げるなんて殆どない。余りに珍しいどころか、生きていて目にする機会も早々ない光景に全員が言葉を失った。
「………よい。何か?」
「陛下のお考え、私も盗み聞きとはいえ、しかと拝聴致しました。そしてミレケネス総督の考えも。つまりは彼らを交渉の……いえ、会談のテーブルに付かせれば良いのでしょう?」
「そうだな。それが出来れば苦労はせん」
「であれば、こういうのはどうでしょう?我々のら圧倒的な力の一端を演出し、我々にはまだ力があると誤認させるのです」
バイツはそう言うと、手をパンパンと鳴らす。すると部屋に日本製のプロジェクターとノートパソコンを携えた、バイツ付きの侍従達が入ってきた。彼らは手早く設営すると、とある映像を見せた。
「今からお見せするのは、皇国の必殺兵器。その爆発を収めた、皇国の映像です」
そう言ってバイツが見せたのは、皇国初の核爆弾の映像であった。アメリカの核実験場で起爆した、皇国初の核爆弾。起爆すると巨大なキノコ雲を発生させ、爆発の物凄い轟音が周囲に轟く。そんな映像だ。
「バイツ!これでは、皇国が強い事になるではないか!」
「その通りです。しかし我々、いえ、私が独自に進めていたプロジェクトにより、この核爆弾と呼ばれる兵器の製造に成功しました。量産体制こそ整っていませんが、既に4発の製造に成功しています。内1発は、既に起爆実験で消費しましたので、残り3発です」
「じゃあ何か?これを、皇国に落とすか?」
「まさか。そんな事をしては、会談のテーブルになんて着いてくれません。寧ろ会談のテーブルに座った我が方の使者を殺す様な、その位の憎悪を向けられるでしょう。そこで私としては、皇国ではなくミリシアルに落とす戦略を提案いたします。
現在のミリシアルと皇国は、かなりの不仲な様子。言うなれば、敵の敵です。「敵の敵は味方」だとは申しませんが、少なくとも何か引き出せる可能性はあります。簡単に言えば、彼らに利用させてやるのです」
全てを知れば、かなり屈辱的な内容ではある。だがこれを各国の一般大衆は当然として、政府幹部ですら「戦争の最中、帝国がミリシアルに一矢報いた」という認識で止まる。戦争なのだから、何らおかしな話ではない。面目は保たれる。それに勘づいた連中、取り分け先の皇帝の発言にどっち付かずの対応だった層が、一気に否定派に合流。核を落とし、交渉のテーブルに付かせる方向で空気が固まってしまった。ルークスも、流石に無視はできない。
「…………よかろう。バイツ!貴様の謹慎を解いてやる。仕事に取り掛かれ」
「御意のままに、皇帝陛下」
会議は更に続くがバイツは「計画を詰めるため」と言って、さっさと城を後にし自らの居城へと帰る。城の前に寄せていた車に乗り込み、帰宅の途に着いた。しかしその車には、同乗者がいた。
「バイツ殿下。陛下へのご提言、いかがでしたか?」
「まだ確定ではないが、概ね貴様の要望通りだ。満足かな?」
「えぇ。とても満足です……と言いたいですが、今はまだノーコメントとさせて頂きます。まだ評価には時期尚早、というものでしょう」
バイツの対面に座る、スーツにボーラーハットと杖という初老の紳士。見た目の雰囲気こそ紳士だが、あくまでそれだけ。他は平々凡々で、顔も優しそうではあるが、印象に残りそうでもないという、何とも言えない男だ。
「しかし分からんな。ミリシアルは貴様の祖国であろうに、何故燃やす。Mr.アダムスカ?」
「何度もお話しした通りですよ殿下。我々貴族派にとっては、最早ミリシアル皇族は邪魔なのですよ」
神聖ミリシアル帝国の貴族、一般的に公爵家と呼ばれるセージ家。この家には、一族子飼いの非合法諜報組織ジャッカルというのがある。アダムスカはそこの工作員なのだ。そしてこのセージ家は、強力な貴族にして貴族派の筆頭貴族でもある。
「そこがよく分からんのだよ。君達の祖国も、皇族には敬意を払うと聞いたが?」
「無論、それはその通りです。実際、現皇帝は名君と言って差し支えないでしょう。しかしそれは、こと政治に関してです。お家問題はその限りではないのですよ」
「どういう意味だ?」
「ミリシアルの国民は長命なエルフ族が多いのはご存知でしょう?そして皇帝含め、皇族もエルフのみしかなれません。そしてまあ、寿命が長いと子孫が大量なのですよ。人間は精々がひ孫かその次位だと思いますが、現皇帝は4583歳。かれこれ168代先の孫までいらっしゃいます」
因みに町エルフというか、普通のエルフで大体200歳程度。ハイエルフで300歳から400歳である。4000歳というのは、かなりのレアケースだ。
「子沢山で良いと思うが?」
「子沢山は結構ですが、大半の孫達は帝王学を学ばされて無いんです。何処の家族もそうですが、孫には甘いでしょう?皇帝もその例には漏れておらず、その結果、大量のモンスターが生まれるのですよ。自らを高貴な血、何をしても許される特権階級だと勘違いした皇族方がね。
お陰でここ数十年は政治にも綻びが見え始めています。そこに加えて世界は、貴国と皇国という転移してきた国家で大混乱です。列強国が滅ぼされ、勢力図が大きく書き換わりました。あぁ、勿論貴国を攻めているのではありません。皇族を殺されたのです。あの対応は当然でしょう。
まあ、つまり、簡単に言えばとっとと皇帝や皇族の力が削がれて欲しいんですよ。その為には間引きが一番というわけです。そして弱ったところを貴族派が掌握し、真のミリシアルを作り上げる」
「つまり貴様ら貴族派は、畏れ多くも私を利用すると?」
「えぇ。しかしそれは、殿下も同じでは?あの兵器の開発には、我が国の技術者やコア魔法の提供無くして完成し得なかった。貴方様は私を通じて貴族派を利用して力を手にし、我々はその力を利用してミリシアルを真の姿に戻す………。お互いがハッピーで良いではないですか」
元々、バイツには自前の魔法技術者達がいた。占領地のマッドサイエンティストを確保し、好きなように研究させてきた。その成果がパガンダ島のゾンビや、皇国を襲ったバンボラと毒ガスである。しかしコア魔法だけは、存在を知るだけで止まっていた。
そんな時ジャッカルがアダムスカを通じて接触し、レイフォルに眠るとされるコア魔法を使った兵器の発掘調査を行い、コア魔法が見つかったのだ。それを貴族派かつジャッカルやセージ家の息がかかった研究者や技術者を秘密裏に派遣し、核兵器を作り上げたのだ。
「ふん。まあ、合理的ではある。それでミリシアルへの攻撃が終わったら、我々はさようならか?」
「それは何とも言えませんなぁ。しかし私個人としては、貴方様をお得意様やパートナーにしたら面白いと考えております。それに、我々はまだ利害が一致しますよ」
「皇国か?」
「ははっ。流石は殿下、質問するまでもありませんでしたか。その通り。帝国にとって皇国は敵であり、ミリシアルにとっては今は味方であっても、潜在的な敵である事には変わりありません。正直、ミリシアルと皇国にグラ・バルカス帝国という共通の敵が居なければ、戦争が起こっていても不思議はありません。実際、今も足の引っ張り合いは起きています」
「まあ、驚く事ではないな」
皇国でも予測されているように、ミリシアルもまた皇国を潜在的な敵や次の敵として認識している。しかし技術力から経済規模まで、魔導技術以外は大体皇国に軍配が上がる。しかも魔導技術も、基本的に科学技術で代替できる。
となればミリシアルにできるのは、好き勝手やって自分達の都合が良い方へ無理矢理持っていくしかない。その結果が今の惨状である。
「だからこそ、我々が手を組むのです。我が国の魔法技術と、貴国の科学技術。今はまだ科学で叶わぬ事、魔法で補いましょう。魔法では非効率的、或いは劣っている技術、科学で補ってください。さすれば皇国にも負けぬ、そんな兵器が生まれるでしょう。あの原子コア兵器の様に」
「しかしそれは、いつになる事やら」
「まずは発言力を手に入れなくてはな。ところで、投下するとしたら何処がいい?」
「やはりルーンポリスでしょうか。しかし航続距離が届くかどうか。青写真が描ければ、是非お見せください。我々も出来る限り協力致しましょう」
「そうか。貴様の働きに期待しよう」
バイツが運転手に合図し、車を止めさせる。アダムスカはそこで降りると、1人夜闇の中へと消えていった。それを見送ると、車も走り去る。アダムスカは埠頭まで歩くと、電話ボックスの中から魔導通信機で本国と定期通信を行う。
「アダムスカより、アビシニア局長へ。帝国製コア魔法、原子コア魔法は投下の予定で進んでいます」
『場所は?』
「まだ未定です。幾つか候補を挙げはしますが、航続距離の問題もあります。まだ何とも」
『よかろう。引き続き、殿下にコンタクトを続けろ』
「わかりました、局長。それでは」
アダムスカは通信を終えると、1人埠頭から海を眺める。後数十分もすれば、夜が明けるだろう。まだ朝日こそ昇っていないが、海の向こうが段々明るくなりつつある。アダムスカは葉巻を取り出すと、手早く火を付けて海を眺めながら色々と考える。
「…………全く、私はなぜこんなにも面倒な
紙巻と違い、葉巻は一度火を付けると長く持続する。それを利用しベンチで1人ゆっくりと時間を過ごし、暫くして自分の拠点へと帰っていた。
後日、ルークスから正式にバイツへの謹慎処分解除が言い渡され、正式かつ秘密裏にミリシアル報復作戦のゴーが出た。これによりミリシアルの運命は、悲惨な事になるのが決定したのである。