ここまで音沙汰なかったのが、5月のゴールデンウィーク明けから教育実習に向けてのあれこれが始まり、スライド作りに追われ、6月からは就活が本格スタートし、就活とスライド作り同時並行。7月は就活で東京行きと教育実習と、書く気力なく完全に死んでおりました。ホント、すみません。再三言っておりますが、最強国家も最強提督も完結させますので、そこはご安心ください!という訳で、本編どうぞ!
数週間後 シャリオ統合基地 神谷幕僚団司令部
「お前達、いよいよ仕事の時間だ」
グラ・バルカス帝国本土上陸、そして港湾都市グランディスの攻略から1ヶ月と少し。この間に連合軍は戦線を構築し、港湾や海岸から陸軍の本隊を揚陸。本格反抗作戦の準備が行われていた。
神谷戦闘団に限っては、一部部隊と第141空中魔導大隊を後送。そのまま千葉県沖の千葉特別演習場にて、連日連夜、第141大隊に皇国のドクトリン、基本戦略、基本戦術、常識をスパルタで叩き込み、更には神谷戦闘団流のドクトリン、戦術も叩き込んだ。特にシモノフは兵士としても、指揮官としても、両側面で詰め込まれたので、かなり大変だったらしい。
「今より36時間後、2月13日〇六〇〇より中央戦区のコベルカ工場地帯、アークトゥリズム近郊に無差別戦略爆撃が行われる。これを持って一斉侵攻作戦『報復の嵐』が発動する。爆撃後、世界連合軍各部隊はグラ・バルカス帝国各地に同時侵攻。目標は西部戦区ウェトランゼ森林地帯及びウェトランゼ要塞、東部戦区アビーヤ山岳地帯、南部戦区経済都市グレムゲール及びゲルガメラード国際飛行場兼空軍基地を占領。然るのち、北部戦区にある帝国が『国家絶対防衛線』と呼ぶ要塞ラインの前面に位置する、シャリンゼ要塞を占領する。今回、我々は北部戦区が最も近い、南部戦区を担当する」
「彼我の兵力はどの程度ですかな、団長」
「こんな感じだ」
グラ・バルカス帝国軍
南部戦区
経済都市グレムゲール
・重装型高射砲塔*1 8基
・レーダー型高射砲塔*2 2基
・12.8cm連装速射高射砲 18基
・12.8cm速射高射砲 20基
・12cm高角砲 48基
・12cm連装高角砲 53基
・7.5cm高角砲 108基
・25mm機銃 108基
・25mm連装機銃 230基
・25mm三連装機銃 320基
・軽戦車ブル*3 420両
・軽戦車シェイファーII 539両
・中戦車レトリバー*4383両
・中戦車ハウンド 368両
・重戦車ドーベル*5180両
・自走砲アシッド*6 390両
・自走砲カプセル*7 480両
・自走噴進砲ポイズン*8 780両
・対空戦車アウル*9 193両
・シェパード装甲車*10 1089両
・シェパード対空装甲車*11 860量
・シェパードロケット装甲車*12 148両
・シェパード自走砲*13 286両
・トラック 1580台
・バイク 480台
・側車 289台
ゲルガメラード国際空港兼空軍基地
・拠点防空局地戦闘機スターダスト*14 80機
・ジェット戦闘機スターゲート*15 80機
・ジェット戦闘機スターゲート改*16 30機
・アンタレス改 120機
・アンタレス 240機
・シリウス型爆撃機 108機
・リゲル型雷撃機 98機
・アクルクス型双発爆撃機*17 30機
・ベガ型爆撃機*18 28機
・シュリアク型爆撃機*19 51機
世界連合軍
南部戦区攻略軍
神谷戦闘団
・三個歩兵師団『ファランクス』
・二個重装歩兵師団『オーレンファング』
・二個突撃機甲師団家『アサルトタイガー』
・六個特砲兵連隊『グラディエイターヴィー
ナス』
・三個対戦車ヘリコプター隊『ブラックスター』
・特別輸送航空隊『トランサー』
・第206戦術戦闘飛行隊『ラーズグリーズ』
・第86独立機動打撃群『エイティシックス』
・一個歩兵連隊『ラグナロク』
・一個重装歩兵連隊『アルマゲドン』
・赤衣鉄砲隊
・特別戦闘隊『
・第141空中魔導大隊
「団長、先に聞かせてください。ズバリ、投入戦力は?どうも最近、みんなで暴れ足りなくていけねぇ」
「安心しろ奈良山。今回は全軍一点投入だ!」
その一言で血の気の多い奈良山、権田川辺りは拳を掲げ喜び、他の幕僚達も見るからに喜んでいる。最近は作戦に参加しても、妙にバラけていたり、白亜衆だけとか、この部隊とこの部隊だけの様な、そんな事が多かった。みんなで暴れるのは、やはり大好きらしい。
「戦略概要はここまでだ。早速、作戦を説明しよう。先んじて空港にはインペリアルドラゴンズが、超低空で突入。場を賑やかす。
その後に白亜衆、141、赤衣、ワルキューレ、それから86のスピアヘッド戦隊が降下。空港を確保する。確保後、神谷戦闘団全軍は速やかに降下しつつ経済都市グレムゲールを占領する。あ、忘れていたが、南部戦区に限り、我々、神谷戦闘団のみで暴れる。他の援護は無いから喜べ」
「孤立無援での特攻作戦。「正気の沙汰ちゃう!」ちゅう所やけど」
「我らが軍団やったら、全く問題にならへん」
「この程度の戦術できずして、何が神谷戦闘団か、何が最強か。で、ありましょう」
本来なら絶望するところだが、神谷戦闘団は知っての通り全部揃っている。機甲部隊、装甲歩兵部隊、歩兵部隊、砲兵部隊、戦術機甲部隊、航空部隊が全てある以上、孤立無援の攻勢作戦でも簡単だ。
「まあ一ミリも心配してなかったが、それだけ士気が高けりゃ言うことはない。と、言いたいところだがな。一応、向こうとしても重要な都市だ。こっちで言う神戸とか大阪とか、そういう立ち位置になる。一大経済圏だ。お陰様で、見ての通り相当数の防衛兵力が警備に当たってる。極め付けはこれだ」
神谷がプロジェクターに、鉄筋コンクリートの要塞。高射砲塔の画像を見せる。屋上に大型の高射砲、その周囲にも大小様々な対空火器が並び、まさに小さな要塞に他ならない。
「な、なんだこりゃ?」
「見たところコンクリート製か?差し詰め、対空砲の要塞………といったところか?」
「……皇国の皆様でもご存知ないのですか?」
奈良山と海原を始め、幕僚団の面々も不思議そうに見つめる。シモノフとしても意外だった様で、寧ろこの反応の方に驚いていた。
「そりゃ俺達の技術レベルじゃ、まず使わない兵器だからな。ぶっちゃけ俺も知らんかった。コイツの名前は高射砲塔。その名の通り、そして先生の言う通りの、対空砲の要塞だ。鉄筋コンクリートで作られた要塞で、見ての通り大型のザ・対空砲と、対空機銃を大量に装備する。
しかもこれが街中にある上、武装は俯角も取れるそうだ。特に機銃な。流石に対空用の代物をこっちに向けられたら、俺たちだってひとたまりも無い。オマケに緊急時は民間人の避難シェルターとか、市街戦の際は立てこもって籠城までできるそうだ。一言で言うと、非常に面倒臭い」
「………ねぇ、浩三さん?これ、爆撃はダメなの?ほら、突空には爆弾積めるじゃない。誘導爆弾で破壊すれば……」
「ちょっと微妙だな。街中で入り組んでる上、いくら精密爆撃でも周りに被害が出たら、戦場が面倒になる。パニックになった民間人が逃げ回って、その中で乱戦とか、流石に誤射不可避だ」
「なら、俺達の戦車とか戦術機とか先生の大砲でぶっ飛ばすって感じですか?」
奈良山の少し期待した様な笑みに、満面の笑みで返しながら頷く。爆撃が無理なら、直接吹っ飛ばせばいい。とても簡単な話だ。
「イェース、その通りだ。46式で吹っ飛ばしてもいいかもな」
「ソイツは愉快痛快な命令ですぜぇ!!うっしゃぁ!!!燃えてきたぁぁぁ!!!!!!」
「純水おっさん落ち着け」
「これが落ち着いてられるかよ船長!!」
「そろそろ黙らぬか」
奈良山が暴走し、大空でも止められなければ、海原という、いつものお料理三人衆の流れだ。ちなみにお料理三人衆と呼ばれてるのが釣り好きでアイヌ民族の血も入ってる奈良山が釣り担当、
「まあ詳しくは各自、この後共有するファイルを確認してくれ。以上、解散!っと、そうだ。少佐」
「ハッ。何でありましょう、閣下」
「この後、大隊の連中を第六格納庫に集めてくれ。1時間後でいい」
「承知しました」
幕僚達が自分の執務室へと戻り、神谷は向上と共に今朝方、輸送機で届いた物品の確認に向かう。倉庫に積まれた黒いガンケースには、全て『神谷タクティクス』のロゴマークが入っていた。
「長官。私、何も聞かされてないんですが。これ、何です?」
「プレゼントだ。あの大隊への」
「はい?」
「まあ開けてみろ」
手近のガンケースのロックを外し、開けてみる。中には本来なら予備役として倉庫の片隅で埃をかぶってる筈の、20式小銃が完全整備された状態で収まっていた。
「20式?しかもこの口径は………」
「アイツらの使う7.92mm魔導カートリッジ弾仕様に改良してある。差し詰め、20式小銃M Editionってところか」
「こっちは……26式拳銃ですか」
「そっちもミリシアルEditionとはいえ、まさかの45口径で流用できた。だからそのまま」
今回、第141空中魔導大隊というミリシアルの部隊が参加する。それも協力ではなく、神谷の直下に直接配属だ。となれば武器や弾薬は同じ方が何かと都合がいいのだが、そうはいかない。空中魔導部隊にのみ配備される半自動小銃と特殊弾こと魔導カートリッジ弾が存在したのだ。魔導カートリッジ弾は魔導とある通り、皇国ではどうしようもできない。
そこで急遽、員数外かつ最悪持ち去られようと問題のない20式小銃を魔導カートリッジ弾仕様に改造し、141大隊に貸与という形で配備することにしたのだ。これなら例え何らかの理由で魔導カートリッジ弾が底を付いたとしても、基幹パーツさえ入れ替えれば5.56mm弾または7.62mm弾へ仕様変更できる。補給を皇国と一元化できる為、引き続き神谷戦闘団と共に前進できるというカラクリだ。
「しかし予備役で倉庫に積まれてた20式を、短期間でよくここまで………」
「俺を誰だと思ってる?皇国屈指の軍需企業を傘下に抱く、グループ企業の御曹司だぞ?」
「そうでしたね。長官、家もチートでした」
今回のこの再配備には、神谷の実家チートをフルで活用している。普通なら絶対無理だが、そこは経営者一族チートで段階をスルーして無理矢理ラインに捩じ込み、どうにかやって貰ったのだ。
向上に手伝ってもらい、どうにか装備を隣の部屋へと移し、141大隊の兵士達に配っていく。簡単に装備のレクチャーを行えば、すぐ使える様になるだろう。何せ短期集中で地獄の如き訓練を受けてもらっている。皇国製の現行モデル武器も問題なく運用できる。
「大隊総員、神谷元帥閣下並びに向上大佐殿にに敬礼!」
隣の部屋で待機していた141大隊の兵士達が一斉に立ち上がり、見事に揃った敬礼を見せる。世界最強の神聖ミリシアル帝国が、己の失墜した権威を回復させるために寄越す部隊なだけはある。まるで儀仗隊の様に、一糸乱れぬ敬礼だ。
「……楽にしろ。さて諸君、諸君らは我が皇国に渡り、我が親愛なる狂った軍団員達からの地獄の責苦の如き訓練を受けたわけだが……」
神谷の一言で、全員の顔色が変わった。あるものは顔を青くし、或いは青色通り越して白や土気色、見るからに震え出し、果ては頭を本当に抱えるものまで様々である。どうやら、かなり大変だったらしい。
「あーうん、OK。ごめんなトラウマ抉って。とにかくな?あの訓練のお陰で、とりあえず練度は問題なくなった。これ凄いからな?マイナスからのスタートで、ここまで持っていたのマジすげーからな?誇れ?な?うん」
「閣下。では、他に何か改善するべき点があると?」
「…………少佐、お前すげーよ。うん。1番最年少なのに、普通にしてんじゃん」
「いえ、軍人なら当然のことかと。それより、あの程度の訓練で根を上げる大隊員が情けなくてなりません。本音を言えば、この後即座に訓練を行いたいところですが………帰還してからにしましょう」
「や、やめたげて?」
「………ご命令とあらば」
どうやらシモノフ的には多少不服な様で、顔や態度には出ていないが、何となく分かる。一方の大隊員達からは、救世主の様に思われている様で、一部の隊員は本当に手を合わせて拝んでいた。
「長官。話を戻しましょう」
「あ、あー、そうね。うん。で、だ。練度は良いとして、もう一つ問題がある。武器の問題、もっと正確には補給・兵站の問題だ」
「我々の装備と、皇国の装備では互換性はありませんからな。まさか……」
「おっと、無断で改造していないぞ?というか魔導技術は、我が皇国には馴染みがないからな。
そこで倉庫の片隅で埃被ってた予備役の装備達を再整備し、諸君らの大隊に配備する事にした。我々の装備はミリシアル製以上に洗練されている。何せ、同格の相手と戦争が続いた世界で試行錯誤の末に進化していった武器だ。流れた血の量が違う」
皇国の兵器達が強いのは、何も基礎工業力だけではない。血塗られた歴史にも、その理由があるのだ。大東亜戦争終結後も世界は戦争が絶えず、皇国が介入した戦争も数多くある。その中で兵器は進化を続け、今日における『最強無敵の大日本皇国統合軍』を作り上げたのだ。
「7.92mm魔導カートリッジ弾仕様の20式。『20式小銃M Edition』と26式自動拳銃だ」
銃に加えて、オプションパーツのリストも渡す。20式にも26式にもピカティニー・レールが標準搭載されており、様々なオプションパーツを搭載できる。皇国の場合、全員に全てのオプションパーツセットが配備されるので、彼らにも同じ様に配備される。しかし量が多いので、この様にリストがいるのだ。
「そこのリストに載ってるパーツを好きに組み換え、自分に合った戦法とマッチさせろ。それからシモノフ、君にはコイツを渡そう」
「これは………」
シモノフに渡されたのは、20式とも43式とも違う、見た事のない小銃だった。というか小銃やアサルトライフルと言うのには、些か銃身長が短く思える。
「コイツはPDW、個人防御火器という。アサルトライフルとサブマシンガンの間、といったところか」
「こんな銃が皇国に……。勉強不足でした」
「ん?あーこれ、試作兵器」
「あぁ、なら見て無いのもって、は?」
サラッと試作兵器を渡す神谷に、141大隊の兵士達はポカーンと口を開け、タチアナは目を白黒させ、神谷の後ろの向上は天を仰ぐ。試作兵器をそんな簡単にポイっと、しかも他国兵士かつ同盟国でもない相手に渡すとかあり得ない。
「神谷タクティクス兵器開発部門、概念実証試製PDW。九尾と呼んでいる」
「は、はぁ………」
「電磁投射バレル、反動吸収機構を搭載し、フルサイズライフル弾でも、低反動での射撃ができる。君の射撃の腕は悪くないが、だがやはり、その体格だ。他の兵士と同じ銃で連戦はキツいだろう。そこで、この試作銃をテストがてらに使って欲しい。
あぁ、これは軍の銃じゃない。親父の会社の傘下の銃だ。ぶっ壊そうが問題はないぞ?だから安心して、存分に使って暴れて欲しい」
「タチアナ少佐。その人、日本の経済を単独でどうにかできる資本を持った家の御曹子です。ご心配なく」
タチアナとしては、全く安心できない。だがそれでも、皇国軍が関わっていないだけマシだろうか。いずれにしろ、恐ろしくて仕方ない。だがそれでも、どうにか言葉を発する。
「ご、ご高配に感謝します閣下。ご期待に沿う結果をお見せ致します……」
「ならなかった。よーし、じゃあ次は装備類を渡してくぞー」
装備として、かつて正式装備だった防弾チョッキ3型に、機動甲冑と同じ防弾プレートを採用した防弾チョッキ3型改、88式鉄帽2型、タクティカルイヤーマフ、そして「コンタクトは怖い」との要望から防弾バイザー型の多機能HUDを渡していく。
「行き渡ったな。まあ詳しい使い方は、後でマニュアルと適当な人員をこっちに寄越す。あとは小物類だが、その辺りもアイツらに任せよう。取り敢えずは、こんな所だ」
「閣下。かなりの重装備ですが、その、本当に問題ないでしょうか?」
「大丈夫大丈夫。お前達は既に、我が神谷戦闘団の駒。ミリシアルの軍隊ではあるが、この俺が率いる化け物軍団の一員だ。最前線が天国に思える、最前線の更にその先。地獄に孤立無縁で飛び込む、言うなれば決死ならぬ必死の軍団。それが我が戦闘団だ。
なら必死の戦闘に赴く以上、死装束くらいは少しくらい良くしたっていいだろう?だからこうして、武器と装備を整えているのだ。後まあ、ぶっちゃけそれ全部、整備こそしているが、基本的に予備役の武器だ。員数外の、別に壊れようが問題にならない武器達でもある。だからまあ、存分に使ってぶっ壊しても構わない」
タチアナは黙るしかなかった。正直気持ち的には、まだまだ言いたい。だがこれ以上は非礼になりかねないし、何より、他国かつ世界最高クラスの軍隊を指揮する遥か上の上官に意見するということは、そのまま外交問題に直結しかねない。
「………何思ってるか知らないが、安心して使え。明後日からは地獄だぞ?」
「……ハッ。申し訳ありません」
神谷もこういう事を上からされるのが、下の現場の兵士からすれば困る事である事は重々理解してはいる。だがこうしなくては、彼らが死ぬ。多少強引だろうが、下が嫌がる形だろうが、ここは何が何でも受け取ってもらう他ない。
「こちらからは以上だ。向上、後よろしく」
「お任せを」
「……閣下に敬礼!!」
タチアナからの号令に、141大隊の面々が敬礼する。神谷も軽く敬礼すると、司令部庁舎へと戻っていった。
そして翌々日、シャリオ統合基地は朝から大騒ぎとなる。神谷戦闘団が出撃するからだ。
「ハッチ閉めろ!!」
「うっしゃぁ!!!!」
「戦車固定完了!戦車殺しの死神、見せてくださいよ!!!!」
「おうよ!!」
今回は神谷戦闘団専属の特別輸送航空隊『トランサー』が全力出撃する。トランサーは神谷戦闘団専属の輸送航空隊である事から、その規模は戦闘団随一である。何せ神谷戦闘団全軍を空挺輸送できるとなれば、その規模は計り知れない。AVC1突空を筆頭に、C3屠龍、C2鍾馗、VC4隼、VC5白鳥、MH4雀、UH73天神、CH63大鳥が各数百機ずつ飛ぶのだ。
「これが神谷戦闘団の全軍か。いやはや、なんとも………」
「凄まじいですね少佐殿………」
「これ……ミリシアルでも滅ぼせるんじゃ……………」
「だな…………」
「お前達、滅多な事を言うな…………」
タチアナを始めとする141大隊の中隊長達は、初めて見る大規模部隊に戸惑いが隠せなかった。1つの戦区を単独で相手するだけの規模である以上、一応当然の規模ではある。だがこれが、たった1人の指揮官の為に常設で割り当てられた精鋭軍団というのが、あまりに信じられなかったのだ。
「俺達はそもそも、それが目的で編成されているからな。君の言う通りだ。あー……確かブラウンと言ったか?」
「は、ハッ!ブラウン・ノイマン中尉であります元帥閣下!!」
「………閣下。部下達が萎縮してしまいます」
「悪いが慣れてくれ、諸君。ここは、そういう部隊だ」
いきなり背後から他国の元帥にして、現在の最上位の上官に声かけられるとか、しがない中尉からすれば嫌な汗が凡ゆる所から吹き出す事態である。お陰でブラウンの顔は土気色になり、小刻みに震えている。一応、141大隊随一の巨漢、もとい恰幅のいい男なのだが、それが小さく見えてしまう程だ。
他の中隊長達も、ブラウン程ではないにしろ顔は真っ青だし、震えてはいる。唯一、訓練期間中によく一緒にいたタチアナだけが顔に出さない程度の緊張感で話せる状態だ。だがタチアナとて緊張していない訳ではなく、胃がキリキリと万力に絞られるかのような痛みが走ってはいる。
「さて、この際だ。疑問に答えておこう。我が戦闘団が最精鋭であり、唯一の常設戦闘団であり、俺の意思の下、世界中の凡ゆる地域へ殴り込む為に編成されてるのは説明している通りだ。
これを叶えるべく神谷戦闘団の面々はレンジャー教育過程、空挺教育、冬季戦技教育、特殊作戦教育過程と、様々な訓練を施され、今回の空挺降下及びヘリボーンの他、海中からの潜入、大規模部隊での上陸作戦まで幅広く行える。しかも空挺とヘリボーンについては、専用の輸送部隊を持っているからな。これだけの集団、ミリシアルとて防げる訳ない」
「確かに戦闘団の割には、軒並み装備が素人目にも高いことは分かっていましたが…………」
「なんか当然の帰結というか…………」
「そりゃそんな大それた事をする部隊なら当然か…………」
「お前達………!」
シモノフの圧にブラウンと、実質その相方みたいになってるケルリッヒ・オポートメント中尉がシモノフに睨まれビクリとなる。シモノフは可愛いロリではあるが、それは黙っていればのこと。喋ればザ・軍人だし、何より普通にロリボディの何処にそんな威厳があるんだと疑問になる程に、怒ると凄まじい圧を出してくる。
「おいおい、そんな目くじら立ててんでも。大体何処の国のどんな軍人に話しても、こういう反応しか返ってこないから」
「閣下がそう仰るのなら」
次の瞬間、真上から物凄い暴風とけたたましい轟音が鳴り響く。お互い叫ばないと、会話もままならない程だ。
「何ですかこれ!!!!」
「吹き飛ばされるなよ!!!!!」
「テメェに言われたくないよケルリッヒ!!!!」
「少佐殿!!!!!」
「なんだこれは…………」
竜巻でも起こったのか、はまたま何か強大な風魔法でも用いたのか。そう思うほどの風と、聞いた事ない轟音に軽くパニックになる。
『こちら冥人。我らこれより、先発として出陣致す。各々方、また
『こちらジェネラルディレクター!我々も先発し、本隊の到着を上空にて待機します!団長!!遅刻だけはせんでくださいよ!!!!』
上空を通過していく無数のヘリコプター群。先陣を切るのは、それぞれ漆黒に塗装し日の丸の他に三角形が二個重なりあった家紋を機首と横扉にあしらった天神と、水色に塗装し金色で盾型に葵紋と菊紋に似た花を後ろに添えたマークが描かれた大鳥。
それぞれ機動歩兵師団『ファランクス』師団長、『神谷の冥人』五反田仁と、前衛歩兵師団『オーレンファング』師団長、『不動明王』遠藤龍二の乗る機体である。
「閣下!何故あんなにもカラフルなのですか?」
「副官のアイーシャとか言ったな」
「はい!アイルシヤ・ジャリブリャー中尉です!!」
「あの機体は、それぞれの指揮官が乗っている。先陣を指揮官機が切る事で、兵の士気も上がるもんだ」
「それ、狙われませんか?」
茶髪碧眼のアイーシャがそう言いながら、神谷の瞳を覗き込む。まあ、正直言うとかなり狙われやすい。だが、今更である。
「それはそうなんだが、俺達の世界じゃ基本的に航空機は迷彩が役立たない場面も多くてな。だから割り切ってる。それに指揮官機を運用するのは、必ずエース級のパイロットだ。例えミサイル撃たれようと、避け切れる位のな。後、大体航空支援もつくしで、あんまり逃げ隠れする意味がない」
「そうなんですねー」
「閣下!では、他の指揮官機もその様に?」
今度は副長のバイス・マテリウスが、見ているこっちが恐縮しそうな位にカッチリした敬礼付きで質問する。因みにタチアナ曰く、考え方も固さも隊内随一の石頭らしい。
「その通りだ。アサルトタイガーは奈良山の戦車と同じ、ダークグリーンに赤のタイガーストライプ。それと部隊アイコンの46式が34式改2両を後ろに従え、その上に死神の鎌を咥えた虎が鎮座するマーク。
グラディエイターヴィーナスは、シルバーの機体カラーに白のライン。それから部隊アイコンの天照大御神の水墨画風マーク。
大神田の薩摩は深緑色の機体カラーに黄色のライン。それに部隊マークの黒い三連星。
エイティシックスのは白色に青、赤、白、黒、黄の五色のストライプが入った機体カラー。マークは赤いドレスを着た、銀髪の姫君。
ラグナロクは濃い青に白のライン。マークは上から無数の銃口を向けられた、ギャラルホルンを吹く男。
アルマゲドンは赤茶色に白のライン。マークは半身が悪魔、半身が天使のアイコン。
赤衣は真っ赤の機体カラー。マークは上に二振りの太刀、双剣、大剣、レイピア、弓矢、杖、竜が描かれ、額に照準が向くシルエットと、その下に二丁の拳銃。こんな所か」
「すごくカラフルですし、何より部隊マークもカッコいいんですね」
「奴らが嬉々として作ったからなぁ。で、俺が乗るのはこれだ」
最前列にたった1機鎮座する機体。いつもの漆黒に金のラインと金の旭日旗と部隊マーク。そして至極色のエンジンカウル。神谷戦闘団、団長専用輸送機。コールサイン『ジェネラルトランサー』である。
「俺の乗機であり、お前達が乗り込む機体でもある。行くぞ」
既に機内にはエルフ五等分の花嫁、141大隊の兵士達、そして専属パイロットの大空が乗り込んでいる。因みに普段一緒の向上は自分の専用機、コールサイン『ブラッドキャラバン』に乗り込んでいる。
「団長!」
「大空!状況は?」
「知っての通り、五反田と遠藤の部隊が先発。今は戦車や自走砲なんかの機甲戦力を乗せた、大型輸送機が離陸中!」
コックピットの窓から、続々と大型の輸送機たちが離陸していくのがよく見える。脅威の10秒間隔、滑走路3本を同時に使い次々に離陸させていく様子は、圧巻の一言だ。
「ラーズグリーズとサンダーヘッドも離陸してますよ。現在は上空に待機して、輸送機と合流予定です!戦術機も行きました!」
「俺達はもう暫くお休みか」
「突空ですよ?今飛んで行ったら、張り切ってデート1時間前に行くチェリーボーイみたいになっちまう」
「こればかりはなぁ………」
本来なら全員が同じ機体、同じ侵攻速度で進むのが望ましいだろう。というかそっちの方が楽である。しかし現実はそういかない物で、特に神谷戦闘団の様な大部隊かつ機甲部隊も入るとなると、基本は固定翼機こそが望ましい。
しかし固定翼機だけだと、戦場への迅速な展開が難しい。ヘリコプターなら直接乗り込めても、固定翼機だと再空間の確保が大前提となる。他にも色々な理由があり、神谷戦闘団では全軍一斉に動かす場合、特にこういう侵攻作戦の場合は色んな機体が入り混じるカオスな輸送編隊になるのだ。なので時間配分というのは、かなり重要になってくる。早く行きすぎれば奇襲が失敗、遅く行けば先発部隊がボコボコ。ちょうど良いタイミングでなければならない。
「とか何とか言ってたら、もうそろ時間です。準備を」
程なくして、突空の編隊も空へ舞い上がる。本来ならレーダーを気にするべきだろうが、レーダーに映ろうが全く問題ない。だからこそ、これだけの大編隊を堂々と動かせる。故に敢えて、大袈裟なくらいまで派手にしてあるのだ。
「やっぱいつ見ても良いっすねー」
「コックピットは特等席だもんな」
無数の機体が編隊を組み、グレムゲールを目指して突き進む。味方には希望を与えるが、敵には絶望を与える編隊だ。
・20式小銃
銃身長 330mm
作動方式 ガス圧作動方式
使用弾薬 5.56mm弾、もしくは7.92mm弾
全長 851mm (銃床最小 779 mm)
有効射程 800m以上
装弾数 30発、20発
神聖ミリシアル帝国陸軍、第141空中魔導大隊の神谷戦闘団指揮下への編入に伴い、神谷の判断で実家の神谷グループ、その傘下の神谷タクティクスに発注し急遽改造された20式小銃である。通常時は神聖ミリシアル帝国軍正式採用弾薬である、7.92mm魔導カートリッジ弾が使用できる様、バレルと機関部を改造。これを標準搭載する。戦闘の長期化等で魔導カートリッジ弾が不足した場合は、バレルと機関部を皇国の5.56mm用の物に換装すれば、皇国の補給ラインで戦闘が可能である。
ピカティニーレールとM-LOKは引き続き搭載されており、皇国製の各種オプションパーツを装備する事で、様々な局面への対応が可能である。また肉厚バレルと特殊機関部も開発された事により、軽機関銃仕様のM Editionも存在する。
・神谷タクティクス兵器開発部門 概念実証試製PDW
銃身長 266mm
作動方式 ガス圧作動方式
使用弾薬 5.56mm弾
全長 483mm
有効射程 1,500m以上
装弾数 40発
神谷タクティクスが概念実証の為に開発した、新世代の軍用銃である。愛称はキュウビ。PDWではあるが、その本質は試作故に「取り敢えず限界まで小さくしてみんべ」という悪ふざけの結果であり、対外的には「PDW作ってます」とは言っているが、別に作りたい訳ではない。
しかし内部機構は最新鋭の極みであり、バレルにレールガンシステムを搭載し、音は静かなのに貫徹能力と射程ははスナイパーライフル並みという化け物。他にも色々、新開発および新機軸の宝庫である。