一色の会見の翌日、世界のニュースでも大々的に取り上げられたことにより、世界各国にも日本が戦争をする事が広まった。殆どの国では「パーパルディアの圧勝に決まってんだろjk HAHAHA」となっていたが、第三文明圏外の国々は日本の勝利を確信していて、お祭り騒ぎとなった。
そんな中、列強二位のムーではどっちの国に観戦武官を送るかの会議が開かれていた。ムーは大体の戦争の勝てる側に観戦武官を送り込むのが通例であり、今回のような一大事な戦争には必ず送る。ただ、どっちに送ろうかで悩んでいるのである。要請すればどちらもOKが出るとは言え、負ける側に送る訳にもいかない。会議では何も知らない連中、日本をそこらの国と一緒と考えている派閥と、日本の隠された真の力があると主張する派閥、例えばマイラスを筆頭とした日本に来た人間とか、ムー大使の部下が会議で大戦争をしていた。
「パーパルディア皇国が勝つのは目に見えている。考えてもみたまえ、文明圏外国が文明圏の国に勝てる訳なかろう」
古臭い考えを持ってそうな太った将校が発言し、その取り巻き連中がウンウン頷く。
「いえ、それは間違いです。確かに他の国であれば、その理論で問題ありません。しかし大日本皇国という国は、我が国の最新鋭戦艦であるラ・カサミ級を遥かに超える、超大型艦を多数保有しています。音速を超えて飛ぶ飛行機を実戦投入し、戦車と呼ばれる装甲を張り巡らせた車体に大砲を載せた、我が国には無い兵器も保有しております。更にこれらは全て魔法技術ではなく科学技術であり、我が国の今後に活かせるかと思います」
「しかし証拠が無いではないか‼︎」
他の軍人も食ってかかる。しかしここで、日本に行った外交官から一冊の本を渡される。
「皆さん、これを見てください」
それは「皇国軍の兵器大全集〜海軍編〜」と書かれた本であり、中身はフルカラーの写真が貼られており、その横に詳細なスペックが書かれていた。
「こ、これは⁉︎」
「なんだこの化け物のような船は」
「これに比べれば、ラ・カサミなんて赤子だ」
現実離れした写真に、さっきまで反対していた軍人や政治家も一気に日本派遣に賛成し始めた。タイミングよく議長が多数決を取り、満場一致で日本に派遣される事となった。
因みに派遣されるのは、日本の軍司令と友達であり技術士官のマイラス、戦術士官のラッサン、その他外交部からも数名が派遣される事となった。出発は翌日であり、全員が大急ぎで準備を整えて日本への空の旅が始まった。
これより三日後、神谷&川山が賠償の交渉のためパーパルディア皇国に向かった。言うまでもないが、「賠償の交渉」というのは建前であり、真の目的はパーパルディア皇国を戦争の道へ引きずり込む事である。とは言っても、別にどっかのハルノートみたく(日本基準で)無理難題は吹っ掛けない。内容としては至極真っ当であるが「まあプライドの塊なら、まず通らんよなぁ」というのを一色と川山が作り、最後のチャンスとして軍事力の片鱗を見せる用意までしているのである。
「なあ、浩三?」
「なんだ?」
「俺達、殺されないよな?」
「無策で行く程、俺は馬鹿じゃない」
そう言って、手を叩く。すると周りに黒い戦闘服を着た、如何にも特殊部隊という出立ちの兵士4人が立っていた。
「おい、まさか」
「そう、義経の隊員達だ。今回は秘密裏に同行してもらっているし、なんなら皇宮の上空には白鯨だって配備してある。なんかあっても、余裕で逃亡できる」
「が、ガチ装備だな」
「欲を言えば主力艦隊とかも連れてきたかったが、流石にコスパがな」
(いや、白鯨とかいう空中空母持ってきてる時点で、十分コスパ悪いぞ)
そんなツッコミはさておき、二人はパーパルディア皇国を目指す。
五日後 パーパルディア皇国 首都エストシラント、皇宮パラディス城
第三文明圏の各地から集められた収奪された富で栄える皇都、その国力の象徴ともいえる皇宮に主として住まう男。皇帝ルディアス・フォン・エストシラント。
彼は現在、執務を一時休憩して私室で寛いでいるところである。その彼の前には、美しい銀髪の女性が1人。申すまでもなく、レミールその人である。ルディアスはレミールと雑談をしているところだった。
「レミールよ。この世界のあり方について、そしてこのパーパルディア皇国について、お前はどう思う?」
雑談中のルディアスからの質問である。
「はい陛下。多くの国々がひしめき合う中、我が国パーパルディア皇国は、第三文明圏の頂点に立ち、また世界5列強にも名を連ねています。
多数の属領を統治する方法として、我が国は恐怖を利用していますが、これは非常に有効であると思います」
レミールの答えに、ルディアスは満足そうに頷く。
「うむ、その通りだ。恐怖による支配こそが、国力増強のためには必要だ。
神聖ミリシアル帝国やムー国は、近隣の国々と融和政策を取っている。そんな軟弱な国よりも我が国が下に見られているということ自体が、我慢ならん。
我が国は第三文明圏を武力で統一し、大国、いや、超大国として君臨する。そしていずれは第一文明圏、第二文明圏をも支配し、パーパルディア皇国による世界統一を行なって、全世界から争いをなくす。それによってもたらされる真の平和こそ、世界の国々の人のためになるのだ。そうは思わぬか?」
レミールは、感動に身体が震えるのを感じた。陛下はなんと、器の大きい男なのだろうかと。
「へ、陛下がそれほどまでに世界の民のことをお考えだとは.......レミール感激でございます」
さて、色々突っ込んでいきますよ。
まず「恐怖を利用した統治」うん、馬鹿である。確かに一見すると問題無さそうだが、その恐怖の象徴が崩れると根底から瓦解する。つまり恐怖の象徴である軍事力が崩れた時、要はパーパルディア皇国軍が負けまくったりすると、属領に反旗が翻る。そりゃあ占領されて搾取されまくって、そこに住む住人は「搾るだけ搾ったら用済み」と言わんばかりに奴隷とかにされるのだから当然の事である。
次に軍事力、これについてもアホである。海賊船如きで前弩級戦艦と言えど、戦艦である三笠に勝てるか?勝てる訳ない。更には列強二位と一位の二ヶ国は、どちらも航空機を実戦投入しており空戦においても勝てない。陸においても、マスケットとボルトアクション式ライフルなんて比べるのも無駄である。
そんなツッコミはつゆ知らず、ルディアスは話し続ける。
「そのためには、多くの血も流れるだろう。だが、それは大事を成し遂げるための小事であり、やむを得ない犠牲だ。そして、皇国の障害となる者たちは、排除していかなければならない」
「はい!」
ルディアスの言葉に、レミールは勢いよく頷く。我々からしてみれば、野蛮もいいとこの考え方であるが。
「そういえばレミール、フェン王国と彼の国についてはどうなっている? そなたの口から聞かせてくれ」
「はい。皇軍はフェン王国の西部の都市、ニシノミヤコを制圧しました。その時に、彼の国の民を200人ほど捕らえ、彼の国との会談に役立てました」
ルディアスが疑問を呈する。
「役立てた、とは?」
「我が国の要求を伝えたところ、彼の国の外交担当者は曖昧な返事をしました。そこで、捕らえた民を殺処分し、その様子を映像付き魔導通信で中継して、外交担当者に見せました」
レミールの報告を聞いて、皇帝ルディアスは顔に薄ら笑いを浮かべる。
「ほう、それはそれは。相手はさぞかし慌てただろう。私の言った通り、教育の機会を与えたのだな。して、外交担当者の反応は?」
「蛮族らしく、大声を上げていました。あ、そうそう。担当者は二人居たのですが、外交官の方は蛮族どころかむしろ猿のように喚いていましたが、もう一人の担当者は面白い反応をしていました」
「面白い反応とは?」
「死に行く様を前に外交官が帰ろうとすると、もう一人が止めたのです。同胞達の最期を見届けろ、と言って」
「それは愉快な話だ。我は蛮族と言えど、等しく滅びを回避する機会を与えなければいけないと思っている。それでも気付かぬ愚か者たちであれば、滅してしまえばよい。そう考えていたが、そのような者は是非我が配下に加えたい。もし会う事があれば連れてまいれ。断れば、殺せ」
「承知しました。陛下、彼の国とはフェン王国の首都アマノキを陥落させ、現地にいる民を捕らえた後に再度会談を行う予定です。そこで、皇国からの要求を拒否するようであれば、捕らえた民を再度殺処分し、その後本格的に殲滅戦を実施するか否か、陛下のご判断を仰ぎたいと思います」
「うむ、分かった」
ルディアスがそう言った時だった。レミールの左腕に装着されているブレスレットが、音とともに淡い緑色の光を放った。どこからか魔信が入っている。レミールは怪訝な顔をする。
(誰だ一体‼︎今日は、この後特に外国の使節と会うような予定はなかったはず。私と陛下の時間を邪魔するとは.......)
レミールは、ルディアスの顔に目を移した。
「その魔信は公務だろう? 今は、公式の場ではない。私的に話をしていただけだ。そこの魔信を使って良いぞ」
「ありがとうございます」
レミールはルディアスに一礼すると、魔信に出た。
「レミールだ。何事だ?」
『第1外務局長のエルトです。大日本皇国の使者が、急遽話をしたいと申し出てきたのですが、如何致しましょうか?』
「わかった。すぐに行くから、待たせておけ」
レミールは魔信を切り、ルディアスに向き直る。
「陛下、ちょうど話題に上がっていた彼の国が、急遽会談をしたいと申し出てきました。教育の成果が出て、陛下の御慈悲に応えるのかもしれません。行って参ります」
「うむ。蛮族とはいえ、国の存亡が懸かっては必死なのだろう。アポなしの会談については、許してやれ」
レミールは再度ルディアスに一礼し、部屋を出ていこうとする。が、途中ではっとした表情で振り返った。
「陛下、今日は他にご予定がございますか?」
「いや、大きなものは特にないぞ」
「それでは、会談終了後に戻って参ってもよろしいでしょうか?」
「良いぞ」
レミールは満面の笑みを浮かべると、今度こそルディアスの私室を出ていった。
5分後、2人は第1外務局窓口から場所を移し、以前と同じ応接室でレミールと対面していた。もちろん、録画することを忘れていない。ゲスな笑みを浮かべながら、レミールは話し始める。
「急な来訪だな。まあ、国の存続がかかっているのだから、気持ちは分かるがな。皇国は寛大だ。アポなしではあるが、国の存亡がかかった者たちだ。今回は許して遣わそう」
(やっぱり上から目線か。コイツを提出した時のあの女の顔が見物だ)
レミールの話を聞きながら、川山は持ってきた国書を入れた鞄を握る。
「して、前回皇国が提示した条件について、検討結果を聞かせてもらおうか」
川山がゆっくりと話し始める。
「今からお伝えすることは、我が大日本皇国政府の正式な決定事項であり、大日本皇国の王にして、この世で唯一の
「ほう、やっと皇国の力を理解したのか」
(譲歩を引き出そうと交渉に来たか、小賢しい)
レミールが考えていると、
「それでは、まずあなた方パーパルディア皇国のために、以下のことを提案いたします。こちらの国書をご覧ください」
鞄を開けて国書を取り出し、レミールに手渡した。
レミールは渡された国書を読んで、目を疑った。そこにはこう書かれていたのだ。
大日本皇国政府は、天皇陛下の名の下にパーパルディア皇国に対し次のことを要求する。
一つ、 パーパルディア皇国は、現在フェン王国に展開している軍隊を即時撤収すること。
一つ、パーパルディア皇国は、フェン王国に対し被害を与えたため、フェン王国政府に対して公式に謝罪し、賠償を行うこと。なお、賠償額については、実被害額の5倍の金額を、金に立て替えた上で支払うこととする。
一つ、パーパルディア皇国は大日本皇国人の虐殺に関し、罪を認めて正式に謝罪するとともに賠償金を支払うこと。賠償額については被害者の遺族に対し、被害者1人あたり一兆パル(パルは、パーパルディア皇国における最上位の通貨単位。1パル10円)を金塊に立て替えた上で支払うこととする。
一つ、パーパルディア皇国は我が国に対する数々の無礼に対して公式に謝罪し、一億パルを金に立て替えて支払うこと。
一つ、パーパルディア皇国は今回の大日本皇国人虐殺に関して、大日本皇国の法律に基づいて処罰を行うため、本虐殺事件に関与した全ての人間の身柄、及び重要参考人の身柄を、大日本皇国に引き渡すこと。尚、パーパルディア皇国皇帝、レミール外交担当官もこれに含まれるものとする。
一つ、先日貴国より手交された要求文書については、大日本皇国政府はその要求の一切に応じない。パーパルディア皇国は、これを承知すること。
一つ、以上の条項全てが守られると確約できない場合、我が国がしかるべき措置を取ることを、留意願いたい。
予想の遥か斜め上の答えに、レミールは理解が追い付かない。しかしすぐに意識を戻して、怒りを露わにする。
「やはり蛮族だな。皇帝陛下の御慈悲が分からぬとは、戦争により自国を滅したいのか?」
「ウチの国を滅ぼす?馬鹿言っちゃいけない。ウチの国は貴様の国とは、月とスッポン程の差がある。いや最早、そこらの奴隷と神程の差といっても良いだろう。それに俺は言ったはずだ。
「かつて国力が100倍も離れていた大国に国土を焼き尽くされるも、その大国の首都をも占領した闘争の血を、110年振りに深き眠りより解き放つ事になる。覚悟しておけ」ってな。俺達の国を、舐めてると潰すぞ雌豚が‼︎」
威圧やら殺気やらを色々織り交ぜた物を発し、最大限の威嚇を行う。レミールも一気に顔が強張るも、プライドでねじ伏せて平静に戻す。
「さてさて、では回答をお聞きしましょうか?」
「勿論認めるわけがないだろ‼︎」
川山の問いに、堂々と即答するレミール。
「だが皇帝陛下は、貴様に興味を示しておられる。軍人、貴様は我が軍門に降れ」
「はぁ?下るわきゃねーだろ。アホが」
「残念だ。実に、残念だ」
そう言うとレミールは指を鳴らす。すると後ろの壁が回転し、5人の剣を持った兵士が現れた。
「皇帝陛下のご意志に背いた不届な蛮族である、殺せ」
そう命じると一気に襲い掛かってくる兵士達。しかし神谷は川山の前に立ち、振り下ろされる剣の全てを腕で弾く。
「腕甲はめてて正解だったな」
こうなる事を見越して神谷は、五十口径の弾丸にも耐えられる腕甲を嵌めておいたのである。
「こんな熱烈な歓迎してくれたんだからな、此方もお返ししないと」
そう言って神谷は手を大きく振り上げて、力一杯振り下ろす。
「ガハッ‼︎」
突如としてストトという音が鳴り、同時に兵士の一人が身体中に穴を開け、血を流しながら崩れ落ちる。
「な⁉︎」
「何が、起きた?」
レミールも兵士もこの反応である。
「さあ野郎共、コソコソするのは終いだ。哀れな蛮族共を可愛がれ。あ、女は殺すな。コイツには目撃者の役目があるからな」
「「「「ハッ‼︎」」」」
剣と銃。比べるまでもなく、兵士が行動する前に射殺され一掃される。
「さて、レミール。これで我が祖国とアンタの祖国は戦争状態となった。結果なんざ火を見るよりも明らかだが、精々お前が生き残ってるのを祈っておこう。それから宣言させてもらう。我が国は貴国、パーパルディア皇国が存在する事を許さない。この戦争の後、この国の名が存在していいのは歴史書と人々の記憶の中だけだ。あ、それから降伏の際は白旗を掲げてくれ」
「タダで返すと思うなよ.......」
何かのスイッチを押すと、皇宮中にサイレンが鳴り響く。
「これでお前達はここから生きて帰れない。精々命乞いでもするんだな。さっきの言葉も死への道を行く愚か者の戯言として、記憶に留めておこう」
「その言葉、そっくりそのまま返しておく。慎太郎、行くぞ」
「おう」
「閣下、得物をお持ちしております」
そう言うと義経の隊員の一人が、刀、五十口径マシンピストル仕様の金の26式拳銃、皇国剣聖の羽織を渡す。
「ありがとう。さあ、行くぞ‼︎」
右手に刀を左手に銃を持って、ドアを蹴破り出口に向けて進撃する。勿論、皇国の兵士、それも近衛兵が対応する。遮蔽物からマスケット銃を構えて、一斉射して倒そうとするが、
「効かぬわ」
「無駄な事を」
「撃ち返せ‼︎」
「撃て撃て‼︎」
機関銃に撃たれて遮蔽物ごとぶち抜かれて、バタバタと倒れていく。
「何故だ‼︎何故、俺たちのは効かないんだ‼︎」
「なのに向こうはこっちを一撃で倒す魔導を連発してくるぞ‼︎一体あいつらは、なんな、あ、おい‼︎」
横で共に戦っていた仲間の様子が変な事に気付いた、名もなき近衛兵。次の瞬間、前に倒れる。それが意味するのは、仲間の死である。
「おい‼︎死ぬな‼︎クソ、仇はかなら」
最後まで言葉を言う事を許されず、その場に倒れていく近衛兵。他の近衛兵達も同じように、自分が何に殺されたのかを理解する前に倒れていく。
「閣下、後300秒で迎えが到着します」
「このまま玄関まで押し切るぞ‼︎続け‼︎」
さっきまで義経の兵士達は神谷と川山を守るように布陣していたが、今度は神谷が前に出て、その後ろに一名の兵士が付き、残りの三人が川山を守るように布陣する。
「突撃‼︎」
遮蔽物を12.7mm弾の破壊力と26式の連射力に物を言わせて、強引に突破する。突破したら隠れていた近衛兵達を斬り飛ばし、後続の兵士達が掃討する。
一方その頃、皇宮近くの監視所の兵士は信じられない光景を目撃していた。
「なんだありゃ⁉︎」
巨大な「バタバタ」という爆音を響かせて空を飛ぶ、大きな羽ばたかないワイバーンと、その巨大なワイバーンを守るようにして、耳をつんざく様な音を発しながら飛ぶワイバーンである。
「防空隊は何をやっているんだ‼︎おいお前、住民の避難誘導を行なうぞ‼︎」
「はい‼︎」
隊長と思しき兵士が、部下に命じ行動を始める。彼らは知る由も無いのだが、そのワイバーンは神谷達を迎えに行っているCH63白鳥とF7震電IIである。
(にしても、あの機体は何処に向かっているんだ?この先にあるのは.......まさか⁉︎)
数分後、皇宮玄関口庭園
「そこ退けや‼︎」
神谷が玄関口の遮蔽物を破壊し、外に飛び出す。しかしそこには既に近衛兵と、衛兵達が待ち構えていたのである。
「撃ち方よー」
指揮官が命じようとした瞬間、後列の兵士が爆発に巻き込まれて空に吹っ飛ぶ。
「炸裂魔法か⁉︎」
「指揮官殿、空を‼︎」
「空がなんだと言う.......」
そこには巨大なワイバーン、もといCH67白鳥がホバリングしていたのである。
「ハッ‼︎皆の者、あのワイバーンを狙え‼︎」
ところが狙った瞬間、銃弾の雨を浴びて狙っていた兵士達は絶命する。CH67白鳥は機体底部にフックが装備されており、機外に物資を吊るして運搬できる。その為、フックへの取り付け作業などに使う大きな穴が空いており、今回はそこから機関銃を発射したのである。
下を殲滅したため、ゆっくりと高度を落とし周りの敵を機体横の機銃で薙ぎ払う。
「閣下‼︎外交官殿‼︎お迎えに上がりました‼︎お急ぎください‼︎」
「わかった‼︎急ぐぞ‼︎」
さながら映画のワンシーンのように、ヘリコプターに飛び乗る神谷達。それを確認すると高度を上げて、母艦である白鯨を目指す。しかし皇国もただの蛮族ではなく、しっかりと考える頭があったようだ。迎撃のワイバーン十数騎が上がってきたのである。
「閣下、機影捕捉‼︎数18‼︎現在、本編隊を追尾している模様‼︎」
「それは好都合だ。護衛機と適当にダンスしてもらう。但し、数騎は母艦の姿を見せてやれ」
「わかりました」
そんな訳でパーパルディア皇国の誇るワイバーンロードと、白鯨の搭載機である震電IIとの空戦が始まったのである。と言っても、完全なワンサイドゲームなのだが。
まず初手を仕掛けたのは震電II.......ではなく、ワイバーンロードであった。というのも
『レイピア1より全機。ご挨拶だ。編隊を維持したまま、奴等の頭上を飛んでやるぞ』
『隊長、いきなり舐めプですかw』
『悪趣味〜』
『奴ら、目ん玉回して落ちませんかねwww』
『長官からのご指示に「敵に絶望を齎してから、殺すように」ってあんだよ』
『そうなんすね。それじゃ、お仕事開始です‼︎』
『レイピア隊、行くぞ‼︎続け‼︎』
隊長の号令に合わせて、各機が加速する。
『隊長騎より全騎、敵騎に導力火炎弾を加え』
そんな事を言っている間に、頭上を超高速で飛び去る。それだけでも驚きだと言うのに、それにプラス衝撃波とか突風とかでワイバーンロードのバランスが崩れ、その制御に追われたりで混乱が広がる。
しかしそこは皇都に配備されている精鋭達。すぐに態勢を立て直し、攻める準備を始める。まあスペックが違いすぎて、立て直そうが立て直してなかろうが、精鋭だろうが新兵だろうが関係ない領域なのだが。
『レイピア1、FOX 2‼︎』
『レイピア2、FOX 2‼︎』
2機が日本製のサイドワインダーであるAIM25紫電を発射する。マッハ5で飛翔する高速体を、しかも背後から撃たれては航空機にあらゆる性能で劣り、誘導を邪魔するフレアやチャフも積んでいないワイバーンロードに回避する事など出来ず、4発全てキッチリ命中する。というか当の当たった騎士達はおろか、周りの騎士だって何が起きたか理解できていない。
『な、なんだ⁉︎』
『ヤバいぞ‼︎隊長がやられた‼︎』
『隊長‼︎隊長ー‼︎』
どうやら隊長騎に当たったらしく、指揮系統までもがグチャグチャになり完全に浮き足立つ騎士達。そんな隙を見逃す訳なく、続け様に第二撃、第三撃が加えられる。
『4番機、突っ込むぞ‼︎』
『ウィルコ‼︎』
太陽を背に、ワイバーンロードの編隊に突っ込む2機。機関砲とAIM63烈風を叩き込み、12騎が火だるま、若しくは肉片になって堕ちていく。
『レイピア1より全機、歓迎式典は終わりだ。後は適当にエスコートして、母艦にご案内だ』
『『『ウィルコ』』』
『残ったのは俺達だけみたいだな、ルーキー?』
『えぇ..............』
ワイバーンロード隊18騎の内、生き残ったのは2騎である。だが彼らは知る由もない。これからの余興のために、偶々
『おい、アレ見ろ‼︎』
先輩の方が、右斜め前を指さす。そこには4機のワイバーンが居たのである。勿論そのワイバーンは震電IIであり、態と姿を見せて誘導しているのだ。
『追いましょう‼︎』
『だな‼︎』
2騎は高度を上げ、遥かな空の高見へと飛ぶ。雲に飛び込み仲間達の仇を取るべく、グングン高度を上げ続ける。
そして雲を抜けた瞬間、そこにはダークブルーの空が広がっていた。そしてその空を、巨大な物が悠々と飛んでいたのである。
『なんだ、ありゃ.......』
『鯨だ.......』
余りに現実離れした光景に、言葉を失う二人。しかしそれを、本部からの魔信の通信が現実に引き戻す。
『こちら皇都防衛隊本部‼︎応答せよ‼︎』
『こちら皇都防衛隊、第七ワイバーンロード隊、18番騎』
『やっと繋がった。レーダーから部隊の反応が消失して、テッキリ全滅したと思ったよ。状況は?隊長にはカードでの貸しがあるからな。勝ち逃げで死なれちゃ困る』
『我が隊は皇宮に攻め入ったワイバーン6騎を追尾、内4騎が向かってきたため、戦闘に入りました』
『それで全騎落としたんだな?』
『いえ、落とされました。奴らは頭上を信じられない速度で飛び去り、後ろから何かを撃って、次の瞬間には隊長と副長、それに二人が火だるまに.......その後、太陽を背に突っ込んできた2騎に自分と16番騎以外の全て落とされました。何故か4騎は我々を倒さずに飛び去り、それを追尾しました』
『そうだったのか.......。今、その4騎は何処にいる?』
『何処にも居ません。居るのは、空飛ぶ巨大な鉄のクジラッ』
ここで通信が途絶え、皇都防衛隊の無線手が必死に呼びかける。しかしそれに答える事は二度と無かった。
通信が途絶えた瞬間、16番騎と18番騎のルーキーは黒鯨の弾幕によって、肉片へと加工されていたのである。
「閣下、終わりました」
「そうか。この姿が、あの女や皇国中にも届いているのを祈ろう。そうでなくては、コイツらの死は無駄になるからな」
艦長の報告に答える神谷。罪悪感はあるが「最後のチャンスを与えるための生贄だ」と言い聞かせ、その罪悪感を抑え込む。そして手を合わせ、死者達を弔った。