パーパルディア皇国への実質的な宣戦布告状を叩きつけて、早二日。神谷達を回収した空中艦隊は、日本への帰国途中の任務を消化している最中だった。
というのも、偶々ムーの観戦武官達が乗った旅客機の飛行ルートと、空中艦隊の航路が交差しており、合流する時間帯までも同じであったため、空中艦隊にムーの観戦武官達の乗る航空機を回収する事になったのである。そんな訳で、今回はムーの観戦武官達の視点をお借りして、物語を進めよう。
シオス王国 シオス空港上空
「や、やっと最後の経由地か.......」
片道21,000㎞という長い距離を、かれこれ五日間、様々な国の飛行場を経由してやって来たのである。使用機体であるラ・カオスは、見た目的にはアメリカの旅客機、ダグラスDC3に近い見た目(尤もDC3は双発で、ラ・カオスは4発である)であるため、中も快適っちゃ快適だが、勿論日本の保有する旅客機とは比べ物にもならない。
「流石に座りっぱなしは腰に来るな。イテテ」
同乗する他の人間もうなずく。流石に五日間もほぼ座りっぱなし、というよりは同じ姿勢なのはキツい。
「にしても、日本がこんな空港を作っていたなんてな」
日本を直に見た事がないラッサンは驚きを隠せない。逆にマイラスは、神谷の言っていた事の信憑性を上げており、これから見られるであろう兵器達への期待がより一層高まっていた。
程なくしてラ・カオスはシオス空港に降り立ち翼を休める。
「ムー国の観戦武官の方々ですね。お待ちしておりました」
ラ・カオスから降りた観戦武官らを迎えたのは、マイラスもよく知る人物であった。
「アナタは確か、神谷さんの秘書の向上さん、でしたか?」
「私の名前を覚えて頂けてましたか。光栄です、マイラスさん」
「おいマイラス、この方は?」
初対面であるラッサンを筆頭とした他の面々は、いきなり現れた男に疑問を持つ。
「申し遅れました。私は大日本皇国統合軍、総司令長官秘書官の向上六郎です。今回は皆様のお迎えをするよう、長官からのご指示で参上しました。長旅でお疲れとは思いますが、こちらの飛行機に御搭乗願います」
そう言って格納庫に案内する向上。「第二格納庫」と書かれた格納庫の中には、赤と白で塗装されたビジネスジェットが駐機していた。
「向上さん、コレは?」
「我が国の自動車メーカー、ホンダが開発したビジネスジェット機、HondaJet Eliteになります」
ラッサンの質問に答える向上。その横でマイラスは目を輝かせ、おもちゃを手に入れた子供みたいな事になっていた。
「これで日本まで行くのですか⁉︎」
「いえ、日本まで飛ぶなら貴国のラ・カオスでも問題ないのですが、今回はある余興を企画しておりまして、それをするにはラ・カオスでは少々出力不足なのですよ」
「その余興とは?」
お目目爛々のマイラスとは対照的に、冷静に質問するラッサン。まるで兄弟である。
「それは後のお楽しみです。時間も押してますので、そろそろ出発させてもらいます。どうぞ、お乗りください」
全員の搭乗が確認され次第、すぐに離陸する。目指すは空中艦隊との合流ポイントである。
因みに観戦武官達は機体に乗り込むや否や、そのシートの質の良さに驚いていた。フッカフッカで、ソファーにでも座っているようである。しかもラ・カオスより格段に速いが、揺れは皆無で乗り心地も天と地ほどの差である。さっきまでマイラス以外は、正直日本を下に見ていた。しかしこの技術を見せつけられては、「少なくとも特定の分野で見ればムーよりも格上」という認識に切り替わったのは言うまでもない。
十数分後 合流ポイント付近
『こちらは第二空中艦隊所属、ハムニビス隊。貴機の識別番号、飛行目的をお教え願う』
「こちらは外務省特別機、認識番号AG354-5555。現在、貴艦隊へムー国観戦武官の方々を輸送中」
『了解した。これより我が隊は貴機の護衛兼誘導任務につく。白鯨はデカイから、腰抜かすなよ?』
「それよりも、胴体着艦しそうで怖いですよ」
『まあ制御された墜落と思え』
「気休めになってないです」
無線での会話をしていた頃、客室ではマイラスの興奮した声が響いていた。
「うおぉぉ‼︎アレが戦闘機なのか⁉︎」
「なんだアレは⁉︎プロペラがついてないぞ‼︎まるでミシリアルの航空機のようだ.......」
興奮してるマイラスを尻目に、ラッサンは冷静に機体を観察する。技術体系的には、多分神聖ミリシアル帝国の天の浮舟エルペシオ3*1を発展させた物だと考える。実際正解っちゃ正解であるが、エルペシオ3はなんとも言えんヤバい異端児なため、厳密には一緒ではない。
「向上さん‼︎あの航空機は何と言うのですか⁉︎」
「あの航空機は我が大日本皇国海軍と特殊戦術打撃隊で運用しているF8C震電IIになります。最高時速マッハ2.2を誇る、我が国の主力戦闘機の一つです」
「IIという事は、Iがあるのですか?」
今度はラッサンが質問する。
「鋭いですね。そうですよ。今から約110年前、当時の我が国と100倍もの国力がある国と戦争していた頃、歴史上では太平洋戦争、若しくは大東亜戦争と呼ばれる戦争の最中、本土に飛来する高高度爆撃機を撃墜する本土防空の切り札として製造された航空機、それがJ7W1 震電です。そしてその生まれ変わりがこの震電IIとなります」
ラッサンとマイラスは質問の答えよりも、国力が100倍も開いた国家と戦争していた事に驚いていた。普通に考えて、100倍も差が有れば負けは必然。そんな自殺行為でしかない戦いに身を投じ、恐らく勝利なり引き分けなりにまで持ち込んでいるのだから、日本という国の恐ろしさを感じていた。
「ん?お、おい皆‼︎窓の外を見ろ‼︎」
一人の外交部所属の若い男が叫ぶ。周りの人間も外を見るや否や、驚愕の表情を浮かべたまま固まる。二人も何があるのか気になり、外を見た。眼下に広がる光景は、想像した事も考えた事もない光景であった。白と黒の鋼鉄の鯨が、雲海を悠々と泳いでいたのである。
「く、鯨だ.......。鯨が、雲を泳いでいる.......」
言うまでもない、大日本皇国特殊戦術打撃隊の空中艦隊である。
「これが日本の技術力なのか.......」
ついさっきまで格下の国家だとか、一分野でしか勝てていない国家だとかと考えていた自分を引っ叩きたい。この国が我が国より格下?そんな事はあり得ない。もしこの鯨達が祖国であるムーまで攻めてきたら、祖国に止める手立てはない。あの古の魔法帝国ですら防げないかもしれない。
ラッサンはこの光景を見てこう考えていたと、仲間達に語ったと言う。
十数分後 白鯨艦橋
「遠路遥々よくぞお出でくださいました。我が大日本皇国は皆様の来訪を心より歓迎致します」
川山が艦橋に登ってきた観戦武官らを出迎えて、定型文ではあるが挨拶を送る。
「いえいえ。我々としても強大な軍事力を持ちながらも、平和を愛し、武力では脅さぬ外交政策を取る貴国へ来訪できる栄誉に、心から感謝致します」
外交部の高官も返礼の挨拶を送り、一応の関係を築く。そんな中、神谷はと言うとフェンでの作戦を立てるために、一人部屋で色々資料やら何やらを広げて色々考えていた。まずはパーパルディア皇国の派遣兵力を確認していこう。
陸軍
・地竜*2 40頭
・魔導砲*3 80門
・騎兵 600騎
・歩兵 1万5千
・ワイバーンロード*4 40騎
海軍
・ペロチーノ級竜母*5 10隻
・ファイン級60門級戦列艦 30隻
・フィシャヌス級100門級戦列艦級 80隻*6
・フェルデナンテ級200門級戦列艦4隻
・ワイバーン、若しくはワイバーンロード 400騎前後
である。正直数は多いが、軍への脅威にはならない。しかし作戦目標として、「蛮族には絶望を持って、死へと誘う」というのがある為、結構ガチガチ編成で行くのは決めていた。しかも作戦後に、そのまま次の作戦に投入できるように進出する意味合いもあるため、一応はコストや戦略・戦術的にも考えられた行動である。それを踏まえて、日本側の戦力を見ていこう。
陸軍
・歩兵第83〜103師団
・重装歩兵第21〜35師団
・戦車第5〜7師団
・第32〜48対戦車ヘリコプター隊
空軍
・第201〜208制空航空隊
・第508〜514近接攻撃航空隊
・第606警戒完成航空隊
・第1201〜1232大型輸送飛行隊
海軍
・第七主力艦隊
・第三〜五揚陸艦隊
ご覧の通りガチガチ編成であり、パ皇絶対殺すマンである。
(さてさて、戦術はどうするかね)
今度は壁に貼ったフェン王国の地図に目をやる。しかし、扉がノックされ見知った顔二人と知らん顔一人が入ってくる。
「失礼します。長官、ムー国観戦武官のお二人をお連れしました」
「おう、ご苦労さん。出迎えもあって疲れただろ?本国に帰還するまでの少しの間くらい、休憩して疲れを取っておけ」
「ハッ‼︎」
そんな訳で向上を下がらせ、観戦武官二人に向き合う。
「まさかマイラスさんが観戦武官としてやってくるなんて、思いもしませんでしたよ。あの港での願いが早速叶いそうですね」
「私も驚きでしたよ。観戦武官としての内示が出た翌日には出発でしたし」
「うぅわ、キツ」
「ホント、役得ではありますがキツイです」
「心中お察しします」
まるで旧友との再会かのように話す二人に、置いてけぼりを食らうラッサン。
「あ、紹介します。我が国の戦術士官で、私の軍学校時代の同期、ラッサンです」
「初めまして神谷長官、ラッサンです」
「えぇ、初めまして。大日本皇国統合軍、総司令長官の神谷浩三です。長旅、お疲れでしょう。さあ、どうぞ自由に寛いでください」
そう言われて、手近のソファに腰掛ける二人。ラッサンは壁に貼られた地図に目を向け、書いている事を読もうとする。しかし言語が見た事もない字(日本語)であり、何もわからない。
「神谷長官、アレは何です?」
多分作戦計画なのだろうが、何か聞き出せる事を期待して質問する。
「あぁ、フェン王国での戦術ですよ」
「具体的にはどのように攻めるつもりですか?」
ダメ元ではあるが、一応聞いてみる。
「予定ではフェン王国沖に展開している竜母艦隊を第七主力艦隊の艦載機を以って奇襲、それに呼応して予め展開させる陸軍を以って、相手にとって有利な地形であるゴトク平野で戦闘を行います。その間にニシノミヤコ近海にまで艦隊を進出させて敵艦隊主力を殲滅、その後に海軍陸戦隊を上陸させて、最終的にニシノミヤコを陸軍と海軍陸戦隊で挟撃、解放します」
「私達は何処で観戦するのですか?」
マイラスが質問する。内示には「観戦する戦闘については、皇国の指示に従う事」と書かれていたため、まだ二人は知らないのである。
「一応は第七主力艦隊総旗艦、超戦艦
「おお、超戦艦という事は日本最強のアレですか‼︎」
「日本最強のアレです。今回はマイラスさんも来るとの事でしたし、どうせならという事で」
「お心遣い感謝します‼︎」
大興奮のマイラスである。
「最強と言えば、この兵器も強そうですね。空中から見た時はクジラかと思いましたよ」
「実際、名前にもクジラの字が入ってますから。ほら、アレが鯨という文字です」
そう言うと壁に飾られた、墨で描かれた「白鯨」の紙を指さす。
「あれで何と読むんですか?」
「「はくげい」と読みます。左側の文字で白、右側の字がクジラという意味の文字でして、その二つを合わせて「はくげい」と読むのです。因みに隣に居た黒いのは「こくげい」と言います」
「中々に難しいな」
ラッサンは初めて見る漢字に、覚えられる気がしないなと思った。まあ世界でもトップクラスで難しい字であるため、覚えられそうになくて当然である。
「我が国の言語である日本語、そちらでいう大陸共通語は前世界に於いても、特に難しい言語でしたからね。壁の文字である漢字が10万種以上あり、それ以外にも平仮名と片仮名という文字、50音ずつを使い分けて書きますからね。もし日本語を覚える気があるのなら、平仮名と片仮名を覚える事をお勧めしますよ」
「どうしてまた?」
「平仮名と片仮名は文字が違うだけで、基本的に同じなんですよ。それに字自体もシンプルで、最悪漢字が書けなくても日本人であれば、確実に筆談で意思疎通を図れますから」
「日本人誰でもですか⁉︎」
マイラスは日本人なら誰でも字が読める事に驚く。ムーにも独自の文字はあるが、貧困層と中流層の5分の1は読み書きができないのである。
「日本では昔から文字を書く機会が多く、その識字率は100%です。国民全員が7歳から小学校と呼ばれる学校で初等教育を6年、卒業後に中学校と呼ばれる学校で中等教育を3年受ける事が義務付けられています。その間に必要最低限の読み書きや計算を身につけられるのです。因みに、中学校卒業後は高等学校に進む事が可能で、その後は大学や専門学校に進む事ができます。最近では子供の大多数が高等学校にまで進んでいますね」
日本の進んだ教育制度に驚く二人。それ以降も様々な日本の話で盛り上がり、二時間の旅路を経て日本に帰還した。
観戦武官の二人と川山を見送り、神谷はその足で霞ヶ浦基地に向かった。
一時間後 霞ヶ浦航空基地
「お待ちしておりました閣下」
「空技廠長、早速だが例の物を見せてくれ」
「はい。では、こちらに」
恰幅のいい優しそうな眼鏡をかけた老人が、神谷を格納庫に案内する。格納庫が連立する中でも、一際大きな格納庫に通される。中は暗く何も見えないが、老人がスイッチを入れて灯りが灯る。
「うお‼︎」
「大きいでしょう?」
そこにはC3屠龍すらも超える、巨大な航空機が鎮座していた。
「我が航空技術廠が作り上げた至高の超重爆撃機、富嶽IIです」
富嶽。それは(我々の世界では)前大戦の最中、日本が計画したアメリカ本土空襲。それを叶えるため開発された航空機である。しかし戦局の悪化に伴い、遂には試作される事すらなく水泡になった航空機である。そんな機体が、今度は現代技術の結晶として爆誕したのである。
「模型で見てはいたが、ここまでデカイとは」
「全長120m、全幅130m。最新鋭の大型ジェットエンジンである噴式ネ350を16基搭載する事により、この巨体でありながら最高時速マッハ1.5を誇ります。さらにC3屠龍の生産ラインを、ほぼそのまま流用できるため、量産も簡単です。」
「ところで一つ聞いていいか?」
「はい?」
「なんで旋回銃座が付いているんだ?」
なんと富嶽IIには、最近では有用性が失われた旋回銃座が至る所に取り付けられているのである。因みに現在存在する爆撃機で銃座を搭載しているのは、B52とTu22くらいである。しかしそれらも後方のみであり、富嶽IIのように昔の爆撃機みたくはついていない。
「この機体は高い防弾性能を有しており、おそらく戦闘機では倒せないでしょう。ならばそれを利用して、爆撃以外にも地上支援や大火力を以っての制空戦、制圧制空戦とも言えるべき作戦を取れるようにしてあります」
「ほう、中々に面白い。量産はしているんだよな。数は?」
「現在、120機が最終試験を行なっています。おそらく一ヶ月あれば第一陣が配備できると思います。続く機体も続々と量産されており、来るパーパルディア皇国との戦では、問題なく実戦に参加できるかと。それも東京大空襲レベルの、超絨毯爆撃が出来るほどに」
「ハハ、流石にしないさ。今回は宣戦布告こそしてるが、我々はあくまで旧世界の国際法を遵守する姿勢だ。まあ彼方さんが「殲滅戦だ」とかと言う、馬鹿なことを言えばやぶさかでもないがな」
「ハッハッハッ、いくら矮小で我が国より遥かに下のパ皇と言えど、こちらでは列強と言わしめる程強いのですから、しっかり此方を調べて早期講和の道を模索するんじゃないですか?」
「だと良いんだが、プライドの塊が講和を望むかなぁ。俺の予想は負け続けのパ皇に不満を持つ権力者、民衆、属領の国家のいずれかが内乱を起こし、それに呼応して今言った3つの内の2つも蜂起。現政権を打ち倒して新政権を作り出し、その新政権がウチと交渉する。そういう感じになりそうだ」
「なるほど。では我が祖国の仕事は、奴らに恐怖を与えに与え、同時にパ皇の権威を失墜させて簡単に蜂起できるようにする、といったところですか?」
「正にその通りだ。だから今度の戦いは、主力艦隊も出すしな」
「敵さんの顔が見物ですな」
「あぁ」
翌日 フェン王国首都アマノキ
「おぉ‼︎アレが大日本皇国の兵器か‼︎」
剣王シハンが真夜中でありながらも天守閣の屋上から、続々と陸揚げされる日本の誇る兵器群を目を輝かせながら見ている。
「鋼鉄の地竜に鋼鉄の象、センシャとジソウホウなる兵器だそうです」
側近のモトムが兵器の説明をする。今回の戦いでは46式戦車を始め、34式戦車II型、34式戦車改、44式自走砲など、皇国陸軍を代表する兵器達が集っており、その殆どが初めて見る物ばかりなのである。
「あの鋼鉄の兵器達も良いが、兵士達も凄いのう」
「確かに強そうな甲冑ですね」
モトムの解答に、鼻で笑って返すシハン。
「そうではない。あの兵士達の動き、アレは度重なる訓練で体得した動きであろう。何より手足の動き方や止まる位置ですら、全員がピタリと揃っておる。そんな芸当ができるという事は、練度もそうじゃが士気も高いという事。お主も知っての通り、戦で大事なのは士気じゃ。士気が低ければ、勝てる戦も負ける。この戦、勝てるぞ」
モトムはシハンの言葉で気付かされる。モトムは日本軍の余りにかけ離れた軍事力に、戦いにおいて大事な事を忘れてしまったからだ。勿論装備や資金も大事だが、シハンの言う通り士気が勝敗が分けるのも確かである。
「村今将軍‼︎部隊の陸揚げですが、後三十分程で完了します‼︎」
「ご苦労」
村今 和寿(むらいま かずとし)
年齢 58歳
階級 中将
役職 村今戦闘団団長
日本の誇る名将の一人。仙台士族の名家の出で、義理人情に熱い男。指揮官としては有能であるが、プライベートになると酒をたらふく飲み、部下達も巻き込んで酒と自作のツマミを提供して、即席居酒屋を作り出す。そして酒豪であるため、翌日巻き込まれた部下達は二日酔いに悩まされ、本人はツヤツヤしてるという事が良く起きる。まあ一見、ただの飲みハラだが部下達の強制参加はさせないし、部下達も自ら進んでやってきて楽しんでいるため、黙認されてる。
「将軍、39式を偵察に出しますか?」
「頼む。まあ衛星で丸見えではあるが、やはり実際に見ておいて損はない」
「了解であります」
(装備の陸揚げも順調で、兵達の士気も申し分ない。後は作戦開始時刻を待つばかりだな)
「村今将軍殿‼︎」
「ん?どうした軍曹」
「ハッ、私事で恐縮なのですが、今回の戦を勝つためにこんな物を作らせていただきました。良ければどうぞ」
そう言って糧食班の人間が差し出したのは、串カツとソースである。
「ハハ、串カツで「勝つ」か。縁起がいい。貰おう」
ソースをつけて、豪快にかぶりつく。
「あ、そんな一息に」
「熱ッ‼︎」
揚げたてをそのまま食ったため、あまりの熱さに涙目にながら忙しなく動く将軍に、周りの兵士達や士官も爆笑する。
「閣下、何やってんすかw」
「ありゃりゃ」
「ってか、あの串カツ美味そうだな」
そんな中、大佐クラスの側近の男が軍曹に近づく。
「貴様ぁ‼︎」
「は、はい‼︎申し訳」
「良いぞもっとやれ‼︎」
「ってえ?」
「何をしてる。早く揚げたての串カツとソースを持ってきて、皆に振る舞わぬか‼︎」
「はい‼︎只今‼︎」
まさかの返答に驚く軍曹だが、直ぐに揚げたてのを持ってきて皆に配る。そして村今将軍の「これを食べて、必ず勝つぞ‼︎」の一言の後、全員がかぶりつく。そして勿論
「熱ゥ‼︎」
「美味いけど熱い‼︎口が死ぬ‼︎」
「アイルビーバック」ガクッ
「おい誰か‼︎カツが熱すぎて、人が死んだぞw」
戦場でありながら、少しばかり和やかな空気が広がる。これも勿論作戦の一つであり、更に兵士達の士気を上げて前線と司令部の関係性をより強固にする策である。
翌朝、アマノキにいる日本人を輸送船まで護衛し、日本へ帰還させるのを見送った後、決戦の地になるゴトク平野まで進み、陣を構築する。その頃、舞鶴では第七主力艦隊が続々と出港していた。
京都 舞鶴基地地下ドック
『定刻となった。第七主力艦隊、全艦出港せよ‼︎』
基地のアナウンスにより、前衛潜水艦隊が専用ドックから出港する。
「ドック注水一杯‼︎水密壁、開放‼︎」
「ガントリーロック解除‼︎」
「機関始動、微速前進」
前衛潜水艦隊の出港が確認されると、今度は第二部隊の前衛機動遊撃艦隊が地下からエレベーターで上げられ、レールガン技術を応用した出撃用加速機にセットされる。
「射出‼︎」
「ビーー」という警報音の後、風を切って艦が続々と出港する。他の艦隊も続々と続き、加速機の前は水飛沫が上げられ続ける。更には出撃を一目見ようとやって来ていた民間人には、巻き上げた水飛沫が容赦なく降り注いでいた。
因みにオタクや近隣の住民は、傘や雨ガッパを装備しており濡れることは無かったが、それを知らなかった人達はビッチョビッチョである。
「超戦艦素戔嗚尊、出撃する‼︎」
最後に一際大きな飛沫を上げながら、総旗艦たる素戔嗚尊が出港する。艦橋で出港するまでのプロセスを見ていたマイラスとラッサンの二人は、その男心擽る出撃の仕方とそもそもの技術に圧倒されていた。
「こんなにも揺れそうな動きだというのに、全く揺れていない。何故だ?」
「というか良く転覆しないな」
二人が驚いているのはお構い無しに、外海に出て陣形を組んでフェン王国近海を目指す。目標は唯一つ、パーパルディア皇国艦隊の撃滅のみ‼︎
富嶽IIは設定集にて詳細を書きます。