最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第十四話ジパング作戦

神谷が日本を出立した翌日 パーパルディア皇国属領アルタラス(旧アルタラス王国)

「属領」とある通り、元は平和な王国も今は見る影もない。道行く人々は暗い顔をしており、アルタラス統治機構と呼ばれる現在のアルタラス王国の中枢である組織の職員や、そこに所属する属領統治軍の軍人なんかが通れば直ぐに目を逸らす。実際、パーパルディアの連中はやりたい放題にしている。

 

「お止めください‼︎娘は関係ありません!!」

 

「何を言うか。お前の娘には反政府組織所属員、つまり皇国への反乱分子の疑いがかかっている。事実かどうかは、アルタラス統治機構でしっかり調べれば分かることだ」

 

アルタラス統治機構の職員が1人、若い女性の手を引っ張り連行しようとしていた。それに対し、娘の父親である壮年の男性が言い返す。

 

「しかし!あなた方統治機構は、このル・ブリアスで若い女性ばかり連れていくではありませんか‼︎しかも、その全員が反乱分子の疑いで処刑されている。全員が有罪なわけがないでしょう!?」

 

「なんだと?それだけ統治機構の情報収集能力が優秀なだけではないか‼︎どけ!!」

 

「お止めください!!!」

 

何が何でも娘を連れて行かれまいと職員の足に縋りつくも、持っていた棍棒でボッコボコにされ、遂には動かなくなる。

 

「いや、お父さん‼︎いやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

抵抗も虚しく、娘は職員に連行された。こんな光景が連日ずっと続いている。今まで統治機構に連行された女性で、生きて帰ってきた者はいない。全員が反乱分子と見做され、処刑されている。もちろん、彼女たちが反乱分子でないことは明白である。アルタラスの民の間では、「アルタラス統治機構長官のシュサクが変態で、若い女性ばかりを狙って連行させ、散々もてあそんだ後に口封じとして処刑している」という噂が流れていた。実際のところ、これは事実である。

上も上なら下も下で統治機構の職員連中、属領統治軍の軍人達も、そこらを歩いてる目ぼしい若い女を見つけては片っ端から攫い、そのまま犯して殺す。はたまた金が欲しくなれば、金持ちの家、例えば元貴族とか大商人の富豪なんかの屋敷に赴き、金をせびる。念の為言っておくが、勿論重い税金を既にかけられた上である。でもってこれらの事に少しでも反対すれば「ほう。もしかするとこの家は、反乱分子に肩入れしているやもしれんな?」の一言で黙らせる。ついでに言うと、他の属領も大体こんな感じである。

 

「にしてもまあ、まるで世紀末だな」

 

「だな」

 

目の前のカフェでコーヒーを飲む、スーツの男性二人組がいた。実はこの二人、皇国中央諜報局「ICIB」の工作員なのである。既にパーパルディアの属領と本土には相当数のICIBのエージェントや、統合軍諜報局「JMIB」の工作員が潜伏しており、様々な情報を集めているのである。目的は勿論、属領への反旗を翻させるためである。確かにパーパルディアは属領からして見れば雲の上の存在であるが、もし日本製の武器を渡せばパワーバランスは一気に崩れ、たとえ少数の反乱軍であっても独立させられるのである。

 

「そしてここのコーヒー、意外に美味しい」

 

「ケーキもいけるぞ」

 

側から見ればただのティータイムであるが、二人はしっかり職務中である。会話こそしているが、その視線や意識は全て道行く人に向けられている。現在二人は、反乱軍の指揮官クラスの人間を探しているのである。

 

「おい、アレ」

 

コーヒーを褒めていた男が、一人のローブを着た人間を指さす。

 

「確かアイツはリストに載ってたな」

 

ケーキを食べていた奴が新聞に偽装した端末でデータベースを調べたところ、一人の男がヒットした。

 

「アルタラス王国軍第1騎士団長ライアル、か。確か反乱組織と関わりがあると3班が言っていた。付けるぞ」

 

「おう。お兄さん、ご馳走様。美味かったぜ」

 

「はい。又のご来店、お待ちしてます」

 

直ぐに会計を済ませ、他の班とも連絡して尾行を行う。映画やドラマだと多くても2、3人で尾行する事が多いが、実際の尾行、特に国家機関等の尾行は大人数で行うのである。やり方も後ろから付いていくだけではなく、様々な角度から対象の後を尾けるのである。更に尾行する人間も定期的に変えるし、服装も変化させる。

そんなガチ尾行の甲斐もあり、相手に気付かれる事なく反乱組織の根城を遂に突き止めたのである。

 

「ここか。一見、ただの倉庫だな」

 

「だな。そりゃあパ皇連中も探すのに一苦労する筈だ」

 

「さて接触は明日にして、今日は宿に帰って早めに休もう」

 

「了解」

 

 

 

アジト内部

 

「くそが‼︎今日も胸糞悪いものを見た。パーパルディアのクソ野郎共、ただではすまさんぞ!今に見ておれ!」

 

帰ってくるや否や、ライアルはテーブルのコップを叩き割りながら怒る。ちょうど彼がコップを叩き割ったタイミングで、同志の1人が部屋に入ってきた。コップを粉々にし、手を赤く染めたライアルにビックリする。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「今日も統治機構に連れて行かれる娘を見た。早くあのクソ野郎どもを血祭りに上げ、国を取り戻したいものだ。ルミエス様は、大日本皇国との交渉には成功したのだろうか?」

 

「軍長、それに関してちょっといいニュースがあります。こちらをご覧ください」

 

そう言うと同志の男は一枚の紙を差し出した。そこには詩のような文章が書かれていた。

 

明けなき夜はなく、長い夜には必ず朝が来るものなり。遥か東の日出づる神の子孫が束ねし地より、ムーカランが振り下ろされん時、タスの花は咲き誇らん。

 

この手紙を読むに連れ、ライアルの手は歓喜に震えていた。一見謎の文章だが、アルタラスの民からしてみれば反撃の狼煙に他ならない。

ムーカランというのは、かつて強大な外国軍からアルタラス王国を守った救国の英雄が持っていたとされる伝説の剣であり、ムーカランの名の語源、「ムー・カッラ」には「反撃の時」という意味がある。そしてタスの花にも大きな意味がある。タスの花というのはアルタラス王国にのみ咲く希少な花で、ツボミをつけてから一週間後ピッタシに咲く不思議な花なのである。つまり詩の文を分解して解読してみると

 

『パーパルディアの蛮行もいずれ終わる。大日本皇国から反撃の狼煙が上がるのは一週間後』

 

という意味になるのである。

 

「各部隊に伝達‼︎「今日より1週間後以降、いつでも戦えるよう準備せよ」以上だ‼︎」

 

「はい!」

 

同志は通信室に走り、ライアルの指令を伝えに行く。アルタラス再独立の目処が立ち、強い希望が芽生えた。

 

 

 

翌日 深夜

「さあ、接触しに行くぞ」

 

ケーキを食っていた奴が相棒に声をかける。

 

「つったって、どうやって行くんだ?」

 

「正面から堂々と」

 

「なら、コイツの出番だな」

 

コーヒーを褒めてた奴が懐から、ピッキングの道具一式をチラつかせる。ケーキ食ってた奴が頷くと、倉庫の中に入っていく。しかし中には箱しかなく、出入り口の類はなかった。

 

「隠し扉もないな」

 

「あ、待てよ.......」

 

コーヒー褒めてた奴が一際大きな箱の前で立ち止まり、軽く箱を叩く。叩いた音は奥に響き、この奥にも空間が続いている事を示している。

 

「ここが出入り口だ」

 

「お前、よくわかったな」

 

「前に小説で読んだ事がある。まあそっちのは八本指って、悪の組織の施設だったけどな」

 

因みに元ネタ、というかその八本指なんかが出てくる作品はオーバーロードである。(アニメ版では二期、小説版では第五巻にて描かれてる)

 

「で、どうやって開ける?流石に「開けゴマ」が通じる訳な――」

 

ギギギッ

 

何と重苦しい音を上げながら、箱の正面が開いたのである。流石に冗談で言っていたため、言った本人のケーキ食ってた奴も目を点にして固まっている。

 

「通じた.......」

 

「ええ.......」

 

まあ何はともあれ一応開いたには開いたので、中に堂々と侵入する。勿論扉を閉めるのも忘れずに。道なりに廊下を進むと、作戦室のような場所に出る。中を覗くとライアル始め、幹部クラスの人間が集まって会議をしていた。

 

「よお。反抗作戦の立案は順調か?」

 

聞き覚えの無い声に反応し後ろを振り返ると、見た事もない男二人か手すりに腰掛けていたのだから驚きである。全員がギョッとするが、さすが元軍人。即座に剣を抜いて、剣先を二人に向ける。

 

「貴様ら、何者だ⁉︎」

 

「おっと申し遅れた。俺達は皇国中央諜報局「ICIB」のエージェントだ。あ、皇国つっても、クソ野郎の巣窟であるパーパルディア皇国じゃなくて、遥か東の日出る国、大日本皇国の方な。俺の事はマクロス、そう呼んでくれ」

 

コーヒー褒めてた奴が名乗り出る。でもって相棒のケーキ食ってた奴も名乗り出す。

 

「俺はブックソー。マクロスと同じ、ICIBのエージェントをしてる」

 

「まさか貴様ら、他の同志を手にかけたのか?」

 

「してねーよ。というか今から協力関係築こうってしてんのに、殺したりしたら逆効果だっつーの‼︎」

 

マクロスのツッコミに、取り敢えずは一安心の反乱組織。

 

「取り敢えず、俺達、というかウチの国からの伝言を話したいんだが、いいか?」

 

ブックソーの提案に、幹部達が顔を見合わせる。少し考えた後、ライアルが許可を出して椅子に二人を座らせた。他の幹部が同志の兵を数人呼び出し、出入り口を固め、二人の後ろにも剣を抜いた臨戦態勢の状態で3人が待機している。

 

「それで、大日本皇国の伝言とは?」

 

「この間の魔信を拾っているのなら話が早いんだが、タスの花とかムーカランとかの詩の魔信は拾ったか?」

 

「傍受しているし、粗方の解読もしてある」

 

そう言うと二人はニヤリと笑い、話を続ける。

 

「なら話が早い。我が大日本皇国統合軍はアルタラス島解放のため、最強の精鋭部隊を主軸とした部隊を派遣する事を決定した。大規模な市街戦が確実に起こるが、民間人の被害は最小限、できれば0に抑えたい。その為、君達の持つ情報の内、地理関係の物を提供してもらいたい」

 

「悪いが我々はまだ、君達を信用していない。おいそれと情報は渡せない」

 

「そりゃそうか。なら味方の証拠代わりに、コレを提供しよう」

 

そう言うとブックソーがマクロスに合図を送り、マクロスが一枚の封筒を差し出す。開くと中には、統治機構庁舎の詳細な見取り図が描かれていたのである。

 

「こ、これは!!??」

 

「信じてもらえたかな?」

 

「何故この情報を手に入れられた!?」

 

「大日本皇国の諜報力を舐めない事だ。「情報を制する者は戦いを制し、戦いを制す者は戦争を制す」戦争をする上での、基本中の基本だ」

 

他の幹部達にも見取り図が回り、全員が驚愕する。それは2人の渡した見取り図がただの見取り図ではなく、部屋の机の数や武器の種類、果ては収用可能な人数に至るまで克明に書かれていたのである。

 

「いいだろう。君達を信用する。お前達、剣を降ろせ」

 

そう命じ、兵士達が剣を鞘にしまう。

 

「それで、作戦開始の合図は?」

 

「派遣される部隊の長が、「花」を咲かせることになっている。どんな花かは、見てからのお楽しみだ」

 

「わかった」

 

その後、諸々の詳細を詰めて2人はアジトを後にした。この事はすぐに本国と移動中の神谷にも連絡が入り、作戦開始日を今か今かと待ち望んでいた。

 

 

 

6日後 アルタラス島 旧首都

『長官、神谷戦闘団、上空にて待機中です』

 

「了解。開始の合図を待て」

 

現在神谷は一般人に変装し、旧首都をぶらついていている。目的は勿論、「花」を咲かせるためである。因みに戦闘団の部隊はと言うと大部分は上空にて待機中で、一部の神谷直轄部隊のみアルタラス島に潜入している。

 

「やめてください!!!!」

 

「いいじゃねぇか、なぁ?逆らうんなら、お前の家族は反乱軍だなぁ?え?え?」

 

「どうか、どうか娘だけは.......」

 

「後生です、どうか御慈悲を.......」

 

パーパルディアの軍人だか統治機構の職員だかは判らないが、老夫婦の娘を大の男3人が連れ去ろうとしていた。周りの人間は遠巻きにこそ見ているが、助けには入らない。正直、最早日常となってしまった光景だし、何より助けに入れば今度は自分や自分の家族が娘と同じ目に遭ってしまうのが分かっているからである。しかしその中に1人だけ、前に進む者がいた。

 

「面倒だ、いっそここでヤるか」

 

そう言って娘の腕を掴んでいる男が、自分のズボンのベルトを緩めようと金具に手を掛けた瞬間、

 

ザシュッ!!

 

後ろから何かが男の首元を掠めた。それと同時に男の首が空高く舞い上がり、本来頭部のある場所からは真っ赤な鮮血が噴き出し、そのまま力なく体が倒れた。

 

「イヤァァァァ!!」

 

さっきまで腕を掴んでいた男が、いきなり倒れれば誰だって驚く。老夫婦、周りの男たち、遠巻きに見ていた人達全員が悲鳴を上げた。

 

「やはり、クズで咲かせる血桜は汚ねぇや」

 

男の首を飛ばしたのは誰でも無い、神谷浩三その人なのである。神谷は作戦開始の合図である花を咲かせるため、男の首を斬り飛ばしたのであった。「花」というのもタスの花なんて綺麗な物ではなく、「クズの血桜」という汚い物である。

 

「貴様ぁ、反乱分子か!?」

 

「反乱分子?それなら良かったな。お前達のような哀れでクズの臓物が腐り切った、人間の皮被った性欲ゴリラでも勝てたかもしれない。だが残念でした。周りを見てみろ」

 

そう言われて周りを見廻すと、建物の屋根に何人もの白い鎧を着た兵士達がグルリと取り囲み、前後からも同じ服装の兵士達が杖を構えながら退路を塞ぎ、4種類の旗を掲げていたのである。

白地に真ん中に赤い丸のある旗、白地に赤い太陽の意匠を象った旗、赤地に金の十六葉八重表菊が描かれた旗、黒地に白で丸と揚羽蝶の描かれた旗である。

その旗の意味はお分かりであろう。日本の国旗、旭日旗、天皇旗、神谷家の家紋である。

 

「まさか貴様は.......」

 

「大日本皇国統合軍、神谷戦闘団、推して参る!!!!」

 

この声を合図に後ろに控えていた直属の部隊、白亜衆が残っていた2人を血祭りに上げる。そして上空では輸送機から兵員と兵器がドンドン降下していき、ダイナミックに着地する。あ、勿論兵器の中には陸上戦艦の46式戦車や月光も含まれる。

 

「さあ、野郎共!!パーパルディアの人間を血祭りに上げてやれ!!!!」

 

そう言うとさっきまで着ていた服を脱ぎ捨て、中に着ていた「皇国剣聖」の羽織を露にする。右に刀、左に26式拳銃の50口径マシンピストルver(ドラムマガジン装備)を持って進撃を開始する。

 

「おお、神谷閣下が先頭に立っておられる!」

「我らも閣下に続くぞー!!」

 

「「「「「「「「天皇陛下、バンザーーーーーーーイ!!!!!!!!!!」」」」」」」

 

全員が銃剣を付けて、一斉に走り出す。勿論統治機構の方も対応を始め、適当な家屋から棚やらソファやらを道に並べ、バリケードを構築しマスケット装備の歩兵を並べて防御陣地を作り上げる。

 

「敵が来るぞー!!構えろーー!!」

 

指揮官クラスのパ皇兵が命じる。しかし現れたのは敵兵ではなかった。

 

「その程度で陸上戦艦の異名を持つ46式を止められる訳無かろうが!!」

 

「なんだアレは!!??」

「地竜だぁぁぁぁ!!!!」

「あんなデカい地竜が居るのか......」

「アハハ、もう終わりだ。俺達はもう死ぬんだ」

 

眼前に迫る46式を前に、一瞬で戦意を根底からへし折られるパ皇兵。予想通り、その巨体に載せられた350mm滑腔砲、ではなくその上に搭載された120mm速射砲で吹っ飛ばされる。また別の防衛戦では

 

ブモォォォォ!!

 

「なんだコイツは!?」

「おい、跳び上がったぞ!!伏せろ!!!!」

「来るなあ、来るなあ!!!!」

「お、おい待て。俺には故郷に娘が」プチッ

 

WA2月光が暴れまくっていた。戦車並みの装甲と武装を持っているが、脚部に人工筋肉を採用している恩恵で飛び跳ねたり踏み潰したりと、その巨体には見合わない機動性で敵を蹂躙していく。

通常タイプのイ型ならまだマシで、ロ型やハ型にあった奴らは「可哀想」の一言である。ロ型には140mm榴弾砲、ハ型には20mmや30mmのバルカン砲が搭載されており、撃たれれば一溜りもない。まあイ型含め他の型にも12.7mmの機銃が付いているから、悪夢以外の何物でも無いが。

 

 

 

アルタラス島西部 ダラス軍港

「司令!!統治機構からの通報です!!現在ル・ブリアスが大日本皇国の強襲を受け、陸軍と統治機構が反撃中!!戦況は我が方の劣勢であり、艦隊の支援を要請してきています!!」

 

「そうか。では全艦出港用意。目標、ル・ブリアス沿が――」

 

しかし命令を伝える前に執務室が吹き飛ぶ。それもその筈。この執務室には不運な事に第八主力艦隊総旗艦「倭建命」の主砲、710mm四連装砲の砲弾が命中したのである。

 

「初弾命中‼︎」

 

「よーし、敵艦に照準。僚艦にも伝えい!」

 

「アイ・サー‼︎」

 

今度は停泊中の艦船に砲が向き、発射される。巨大な水柱が発生し、周辺の港湾施設ごと破壊する。

最終的に

・ファイン級60門級戦列艦 25隻

・グローオン級80門級戦列艦 48隻

・フィシャヌス級100門級戦列艦級 15隻

・輸送船、その他 87隻

合計 175隻が姿を消した。

 

 

 

15分後 アルタラス島北部 メルーサ基地

「ワイバーンロード全騎出撃‼︎寝ている奴も叩き起こせ‼︎」

 

メルーサ基地は元々、アルタラス王国近衛竜騎兵隊の基地が置かれていた事もあり、敷地がとても広い。その為アルタラス島防衛の要としてワイバーンロード150騎、現在は殆どが予備役となったワイバーン840騎が配備されていた。既に初動でワイバーンロード全騎とワイバーン200騎が離陸済みであるが、ダラス軍港への応援として残りを向かわせる事になっていた。しかしそんな事は許されるわけなかった。

 

「な、なんだアレは.......。上空、約3000mに巨大なブーメランが飛んでいます!!!!」

 

「何ぃ?冗談を言っている場合か!!!!」

 

「冗談じゃないんです!!!!ホント、ブーメランとしか形容できない形状の飛行物体が!」

 

最初は戯言と思っていたが、監視員の完全に怯え切った表情に幹部連中が単眼鏡を覗き込む。そこには確かにブーメラン状の何かが、黒い粒を落としていた。

 

「何か落としたぞ?」

 

今度はその黒い粒を注視する。よく観察すると、あり得ない速度で近づいてくるのが分かった。

 

「対空戦闘よーい!!離陸した騎を呼び戻し、対空バリスタにて牽制しろ!!!!」

 

基地司令が叫び、命令が伝達される。対空バリスタ、更には弓矢とマスケットまでも使って牽制射撃を行い時間を稼ごうとする。しかしビビるどころか、何も無いかのように侵攻を続ける黒い粒達。

 

「接近中の黒い粒は小型の飛行機械です!!」

 

「飛行機械だと!!??ならばムーの兵器か!!!!」

 

もう安定の飛行機械=ムーの兵器理論。ご承知の通りムーではなく純度100%、安心と安全の日本製無人航空機である。

 

「おい何か落としたぞ?」

 

黒い物が小型の飛行機械から投下され、地面に触れる。その瞬間、大爆発を起こして辺り一帯を吹き飛ばす。

 

「爆弾だったのか!!!!」

 

基地司令が手すりを力一杯叩く。それに合わせたのかのように、飛行機械達が滑走路へと群がり爆弾を投下していく。数刻の後、滑走路や格納庫を完膚なきまでに破壊し尽くし、完全に基地機能を奪い去る。

 

「悪魔だ.......。超空の悪魔の翼だ.......」

 

この言葉を最後に周りが紫色の光に包まれたかと思うと、永久に基地司令が意識を取り戻す事はなかった。

アーセナルバー、じゃなかった。白鳳の機首に搭載されたレーザー兵器で焼かれたのである。

 

『皆の者!!!!基地司令以下、散って逝った仲間の為に、あの巨鳥を地面に墜とすぞ!!!!!!!』

 

竜騎士中隊の中隊長が魔信で叫ぶと、部下達から大きな雄叫びが上がる。それを合図に相棒であるワイバーンに拍車をかけ、巨鳥へと向かう。

しかし白鳳は「待っていた」と言わんばかりに、周りの無人機達を向かわせる。速力、機動力、武装、全てにおいて劣りまくってるパーパルディアの竜騎士が勝てる訳もなく、次々に堕ちていく。しかし数に物を言わせて、人海戦術で突破し白鳳へと肉迫する。しかし

 

シュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

巨鳥の翼から煙が出たかと思うと、部下達が爆発して堕ちていく。後ろに気配を感じ振り返ると煙、と光を発しながら何かが迫ってくるのを確認した。だが何か言葉を発しようとした瞬間、体がバラバラとなり相棒のワイバーンと共に墜ちていく体を見送ったところで意識が途切れた。

 

 

 

数分後 アルタラス島中央部上空

『竜騎士長、基地との連絡が途絶えました!』

 

副長の言葉に竜騎士長は驚くが、一言「わかった」と返してそれ以上言わなかった。

 

『騎士長、戻りましょう。仲間の仇を』

 

『気持ちは分かる。だがな、俺達の任務はル・ブリアスで暴れてる敵を倒す事だ。とっとと片付けて、仇をとりに行こう』

 

『はい.......』

 

だが彼らが基地の仲間の仇を取れることは無かった。

 

 

『FOX 4*1

 

ビーーーーーーーーー

 

赤いレーザーが竜騎士達を貫き、文字通り「消す」。

 

『何が起きたんだ.......』

 

そんな事を考える間もなく、四方八方からレーザーを飛ばし続ける。パニックになり浮き足立つ竜騎士達に、今度は上空から襲いかかる。

 

『FOX 1‼︎』

 

ADF1妖精に搭載されたMPBM燃料気化ミサイルが発射され、巨大な火球を形成する。中に飲み込まれても地獄だが、周りにいても爆風で吹っ飛ばされたり、熱で翼が焼かれて動かなくなり、真っ逆さまに堕ちていく。

 

「こんなの、戦争ではない。我が祖国は、一体どんな国に喧嘩を売ってしまったのだ.......」

 

この呟きを最後に竜騎士長もMPBMの火球に飲み込まれ、その生涯に幕を下ろしたのであった。

 

 

 

数分後 ル・ブリアス アルタラス統治機構

「局長はまだ出てこないのか?」

 

「それが未だ「お楽しみ」中でして.......」

 

アルタラス統治機構は現在、大混乱と未だ嘗て無い恐怖を感じていた。というのも、当初は「反乱組織が軍勢を成し、此処に迫っている」という合ってはいるが、一番大事な所が間違った報告が来ていたのである。その為、統治機構としては「まあ防衛線の2、3個、健闘しても4個程度が限界だろう」と舐め切って掛かっていたのである。

しかし蓋を開けてみたら、ほぼ同時にダラス軍港が襲撃を受け通信が途絶。念の為、メルーサ基地にも通信し部隊を動かしてもらっていたが、10分もしない内にこっちも通信途絶。そんでもって向かっている筈のワイバーンロード含む竜騎士隊は、絶叫が魔信で木霊し辛うじて「赤い光の槍に貫かれた」、「火球に仲間が飲み込まれた」、「翼が焼け落ちた」、「爆風で制御を失った」という悲痛な叫びを最後に、次々に魔力探知器から反応が消失。極め付けは現在の防衛線はこの庁舎を含めると、後3個しかないのである。

更に最悪な事に、統治機構の局長は地下室で攫ってきた娘と、両者とも媚薬キメてのハッスル中であり、中から鍵を掛けているため指示を仰げないのである。

 

「失礼します!!敵がわかりました!!!!」

 

統治機構の職員がドアを破壊せん勢いで入ってきて、副局長の前に跪く。

 

「申し上げます!敵は旧アルタラス王国の騎士団を始めとした反乱組織ですが、それは微々たる物であります。我々が基本的に相対しているのは、反乱組織ではなく、大日本皇国軍、神谷戦闘団と呼ばれる組織だと分かりました!!!!」

 

「おい待て。神谷戦闘団には、刀と小型の連射できる途方も無い破壊力を持ったピストルを持っている者は居なかったか?」

 

「居ました」

 

副局長が一気に脱力し、その場に崩れ落ちる。

 

「副局長!?」

 

周りの幹部や報告に来た職員が駆け寄る。

 

「君達、恐らく我々は死ぬぞ。神谷戦闘団に居た刀とピストルを持った男。その男は、恐らく第1外務局を血の海に変えた男、神谷浩三だ」

 

実を言うと副局長は、学生時代に第1外務局の幹部職員と同期なのである。あの後、本国で同窓会があり話を聞いたのである。正直、そんなのと対峙する羽目になるとは、副局長も思わなかった。さっきから悪かった顔色は白を通り越して土気色になり、まるでゾンビである。

 

「皆、覚悟を決めろ。武器を持ち、此処に立て篭もるのだ」

 

そう副局長が命じると、部下が伝達するため走る。しかし此処は統治機構庁舎、武器なんてある筈がない。剣、弓、マスケットを持たされた者もいるが、数はとても少ない。拷問用のムチ、ハンマー、斧、小刀、敢えて切れ味を悪くしたナタ、ナックルダスターを持たされたなら良かった方である。それでも足りなかったため、カッターやハサミ、なんなら分厚い本や観葉植物の植木鉢を持たされた者もいた。果ては「心理的攻撃」という名目で、トイレにあった臭い雑巾や四ヶ月前に牛乳を拭いて、そのまま放置された牛乳雑巾を持たされた者までいた。もう此処まで来たら舐めプどころではなく、何故か一周回って同情や憐れみの感情すら出てくる。

 

 

「此処が統治機構の庁舎か。地下には監禁施設があるから、そうだなぁ」

 

ふと正面を見るといい感じの平らな瓦礫が、斜めになって置かれていた。これをみた瞬間、神谷はぶっ飛んだ戦法を思いつく。44式装甲車ロ型2台に命じ、全速力で斜めになっている瓦礫に向かって走るように命じる。ドライバーの2人はニヤリと笑うと、ハイテンションで突っ込む。

 

「ヒャッハーーーーー!!!!」

 

「やっぱ神谷閣下は狂ってるぜ!!!!」

 

なんと神谷の考えついた戦法というのが、「瓦礫をジャンプ台にして、2階と3階の統治機構庁舎の壁をぶち破って突撃する」という漫画のような戦法である。

 

「ん?なんだあの素早い地竜は!!??」

 

2階でマスケットを構えていた職員が目を見開く。次の瞬間、2体の地竜が空中へと飛び、まっすぐ此処と3階に向かって飛んでくる。

 

「まず――」

 

 

バリーーーーーン

ドンガラガッシャーーーーーーン

 

 

「不味い」と思った瞬間、窓と壁を突き破り、44式2台が突き刺さる。音を聞きつけて、他の職員が様子を見に来るが、目の前の鉄の塊に唖然とする。

 

「一つ脅かしてやるか」

 

そう言うとドライバーがヘッドライトのハイビームを使って目眩しをかけ、ついでにエンジンまでフカして威嚇する。

 

「突撃ぃ!!」

 

そのまんま目の前の職員を轢き殺し、横から出てきた職員には側面に付いている30mm、20mm.、12.7mmの機銃で応戦する。端から戦闘を想定していない壁が、航空機をも破壊する機銃弾に耐えられる訳もなく後ろにいる職員ごと、挽肉を量産する。更には50mm擲弾筒まで使い、中の職員を吹き飛ばす。3階でも同様の事をしており、地獄絵図が広がっていた。

因みにその光景を見て、外では日本兵達は爆笑し、反乱組織と捕虜達はポカーンとしていた。ライアルも「日本人は慈悲という言葉を知らないのか?」と漏らしたそうな。まあ少なくとも、外道に持ち合わせる慈悲は無いな。うん。

 

 

「俺達も行くぞ!!1階の敵を一掃しろ!!!!」

 

神谷の号令に、重装甲歩兵を盾にして内部へと突入するべく入り口に向かう。しかし入り口は既に机か何かで封鎖されており、中へと入れない。だが重装甲歩兵の両手にマウントされた七銃身7.62mm機関銃の連射力で、完全に粉砕する。勿論、中の敵も巻き込んで。

 

「突撃!!」

 

中に入るとそこには、血を流して動かなくなった死体しか無かったのは言うまでもない。

 

『こちら2階。完全に制圧しました』

 

『3階も同じく』

 

「なら2台とも撤退しろ。白亜衆、地下を探索するぞ」

 

そう言うと突入していた部隊が引き上げ、代わりに白亜衆が中に入る。上階にいる2台は力一杯加速してから、2階と3階から飛び出して綺麗に着地を決めた。因みに2階にいた奴はそのままドリフトし、3階にいた奴はその場でスピンして遊んでたらしい。

 

 

 

地下

「おい、なんか臭いな」

 

「なんでしょう、お下劣ですが精液か何かの匂いに似てるような」

 

階段を降るごとに匂いは強くなり、下につく頃には血生臭い匂いまで入り鼻がねじ曲がりそうになる。

 

「此処が最深部だな。頼む」

 

神谷がバッテリング・ラムを持った兵士に頼む。無理矢理ドアを吹っ飛ばして中に入ると、目の前には檻が広がっていた。中には女性が入っていたり、血が溜まっていたりと中々にエグい空間が広がっていた。

 

「ホレ!此処が良いんだろ?ん?ん?」

 

男の声と女の喘ぎ声が響く部屋に向かうと、そこには赤髪の女性と金髪の太って頭を禿げ散らかした不潔なおっさんが合体し、ベッドをギシギシさせて絶賛ハッスル中であった。知らねえおっさんと、知らねえ女の情事を見せられるという、なんともカオスな空間に色々戸惑う。取り敢えず男の首をぶん殴って失神させ、髪を掴んで引き摺りながら外に連れ出す。女性の方は麻酔薬を投与した上で丁重に運び、他の女性達にも同様に丁重に扱いながら外に出す。外に出ると神谷は乱雑におっさんを放り投げ、スマホを構える。

 

「おい、見えているか?今から歴史的な瞬間を映してやる」

 

テレビ電話の機能で本国にいるルミエス達に、今から起こる歴史的瞬間を映す。その瞬間というのは、パーパルディアの国旗をへし折って燃やしながら地面へと落とし、代わりにアルタラス王国の国旗を掲げる瞬間である。

 

「革命成功だ!!!!」

 

神谷が叫ぶと周りから歓声が上がる。旗を持っている兵士達は旗を振り回し、他の反乱組織の兵士達はアルタラスの国家を歌い出す。

日本では川山と一色がハイタッチで喜びを分かち合い、ルミエスは余りの嬉しさに感涙の涙を流す。神谷は解放できた事に喜びつつも、別の事を考えていた。

 

(さあ、これで駒は揃った。後は、推し進めるだけだ)

 

そう心の中で言うと同時に、ニヤリと笑ったのであった。

 

 

 

*1
レーザー兵器使用のNATOフォネティックコード。本来ならFOX 1(セミアクティブレーダー誘導ミサイル、AIM7スパロー等)、FOX 2(赤外線誘導空対空ミサイル、AIM9サイドワインダー等)、FOX 3(アクティブレーダー誘導空対空ミサイル、AIM120アムラーム等)の3つしかないが、本作ではオリジナルで製作予定。

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