最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

25 / 114
第十七話デュロの地獄

煉獄作戦より3日後 工業都市デュロより380kmの海域 第一揚陸艦隊旗艦『出雲』作戦室

 

「現在我が第一揚陸艦隊は、第三主力艦隊の要塞空母『瑞鶴』、戦艦『出羽』『近江』、対空巡洋艦『高雄』と合流を果たし順調に攻撃目標のデュロへ向かっております」

 

「ルバイル航空基地からも、空挺部隊が出撃準備に入ったそうです。予定通りに行けば、我々がデュロに上陸する頃に合流します」

 

出雲の艦内では、これから発動されるデュロ攻撃作戦である「鎌鼬作戦」に関する会議が行われていた。幕僚達が司令官である本間中将に報告を行なっている。

 

「潜入中のICIBエージェントの報告によりますと、デュロには現在、神聖ミリシアル帝国より密輸して来た、型落ち品の魔光砲が研究の為に配備されているそうです」

 

「魔光砲とは何だ?」

 

本間中将の問いに、情報参謀の少佐が答える。

 

「平たく言えば機関砲の機構を魔導に変えた物です。つまり対空機関砲を数基持っている、と考えていただければ大丈夫です」

 

「わかった。ならば航空参謀、航空隊には魔光砲とやらを確認次第、最優先で破壊するように厳命しろ。もし空挺降下中に撃たれでもしたら、目も当てられんからな」

 

「了解であります」

 

一方その頃、デュロ防衛隊の司令部庁舎でも会議が開かれていた。

 

 

「今回お集まり頂いたのは、他でもありません。大日本皇国についてです」

 

この単語が出た瞬間、全員の顔が引き締まる。

 

「ご存知の通り、大日本皇国はいきなり皇都エストシラントと近隣の皇都防衛隊基地を破壊し、皇都エストシラントの一部地区を爆撃した後に撤退していきました。情報を精査した所、大日本皇国が今回の攻撃に使用したのは、飛行機械である可能性が極めて高いものと推測されます」

 

司会役の情報将校ラッドが一呼吸置いて、また話し始める。

 

「また次の攻撃目標として狙われるのは、恐らくこの工業都市デュロと思われます。ここはパーパルディア皇国全体のドラゴンと艦船を除く様々な兵器を製造している為、敵としても最重要で抑えておきたい要所です」

 

「こう言っては何だが、我々だけで守れるのか?彼の国はワイバーンオーバーロードをも装備した、最精鋭の皇都防衛隊を打ち破ったのだ。此処にもワイバーンオーバーロードは配備されているが、たったの80騎程度だ」

 

デュロ防衛竜騎士隊の騎士長、ガウスが反論を述べる。ワイバーンオーバーロードは知っての通り、カタログスペック上ではあるがムーの最新鋭戦闘機であるマリンを倒せるワイバーンとされている。少なくともワイバーンロードよりかは、遥かに強力であるのは確かである。しかしそのワイバーンオーバーロードが倒されたのであっては、一個前の世代となるワイバーンロードでは歯が立たないのは火を見るよりも明らかである。

 

「ご心配には及びません。確かにワイバーンオーバーロードは敗北していますが、それは完全な奇襲であったからです。流石の皇都防衛隊にも「他の領土を占領せずに、飛び石作戦で攻め込んでくる」なんて発想は無かったでしょうからね。

しかし今回は、我々は警戒しています。となると敵発見の早さは此方が勝ることができ、もし不足の事態に陥ったとしても対応可能となるのです」

 

悲しい事にラッドの予想は大外れである。確かに前半部分は正しいが探知距離に関しては、完璧に間違っている。揚陸艦隊に随伴している浦風型の草薙武器システムに搭載されるレーダーは最大で800km以上の距離を探知可能な上、600個以上の目標を同時捕捉、追尾可能なのである。そして瑞鶴に搭載しているE3鷲目も600km以上を探知可能な上に、震電IIも40km圏内ならレーダーで探知できる。

一方でこれらの兵器は魔力を放出しない為、魔力探知レーダーに引っかかることはない。その為、目視圏内で発見するしか無いのである。しかし発見したところで、ミサイル撃たれて終わるのが関の山である。敵の姿も見られない可能性すらある訳である。

 

「ブレムよ」

 

「ハッ!」

 

「イクシオン20mm対空魔光砲の使用を許可する。敵襲来時に備えて、魔力充填を開始せよ」

 

「わかりました。直ちに準備に取り掛かります」

 

デュロ防衛隊の司令官ストリームが、デュロ防衛隊陸将のブレムに命じる。因みに対空魔光砲が何なのか、念の為説明しておこう。対空魔光砲とは、魔導成形砲弾を爆発魔法で射出する対空用の魔導砲である。名前から光学兵器のように思えるが、しっかりとした砲弾、正確には銃弾を発射する。つまり「対空機銃の機構を、そのまんま魔法に付け替えたもの」である。

この兵器はパーパルディアが自作したものでは無く、研究用で神聖ミリシアル帝国より密輸してきた型落ちのオンボロ品(・・・・・・・・・)である。そもそも魔光砲というか、機関銃自体が製作の難しい火器なのである。大砲の場合は「筒に装薬と砲弾ぶち込んで、装薬に着火する」という行為が出来れば、命中率等は度外視するが一応成立する。しかし機関銃は知っての通り、連射する火器である。

この「連射」という機構が厄介であり、中々に制作が難しい理由である。一応銃らしい見た目をしている火縄銃を起源とすると、生まれたのが15世紀。一方機関銃が生まれたのは、18〜19世紀頃である。ただしレオナルド・ダ・ヴィンチを始め、様々な人間がアイディア自体は出していたりするし、試作まで行くも使い物にならない、所謂「言う事聞かん銃」だったりは存在していたらしい。

 

「ガウス、哨戒騎の数を増やし、敵の早期発見に努めよ」

 

「ハッ!」

 

ストリームは次々に部下達へ命令を飛ばし、デュロの防備は固まっていく。だが彼らは知る由もない。敵が神聖ミリシアル帝国をも遥かに凌駕した、この世で一番敵に回してはいけない奴らであることを。

 

 

 

翌日 工業都市デュロより40kmの海域 対空巡洋艦『高雄』CIC

「レーダーに感。敵、ワイバーン180騎の離陸を確認。内60騎が本艦隊との進路と重なります」

 

レーダー手の兵士が艦長に報告する。

 

「全艦に対空戦闘を発令。本艦が最前列にて、対空戦闘の指揮を執る。機関、第四戦速」

 

「第四戦速、ヨーソロー」

 

摩耶に搭載されているガスタービンエンジンが唸りを上げて、他の艦よりも速度を速めて先頭に躍り出る。

 

「砲雷長、ミサイル兵器の使用を制限する。流石にワイバーン程度に信長は、幾らなんでも勿体ない」

 

「わかりました。では、主砲、副砲、機関砲で対処します」

 

旧帝国海軍の「対空番長」である摩耶の正当進化版である摩耶型の一隻が、今正にその力の片鱗を見せようとしていた。

一方その頃、ガウスは40騎のワイバーンオーバーロードと20騎のワイバーンロードを連れて偵察を行っていた。数でお察し頂けるが、艦隊に向かっているのはこの部隊である。

 

 

『竜騎士長。今日の海、何かおかしいです』

 

部下の一言に、ガウスは海を眺めながら答える。

 

『ほう。一体何がだ?』

 

海は至って普通の、綺麗な青色をしている。もしこれが仕事では無く単なる遊覧飛行なら、海面スレスレに降下して飛沫を浴びたくなる程に綺麗な海である。

 

『何かが、おかしいのです』

 

『そうか。まあ猜疑心を持つこと自体は、貴様が慎重である証拠で良いことだ。だが余り心配するな』

 

実際の所、ガウスも謎の胸騒ぎはしていた。だが部下がいる手前、士気の観点からも指揮官が何かに不安を感じていては駄目なのである。そんな訳でそんな不安は心の奥底に封じ込めて、平静を保つ。しかしこの予感は十数分後、当たっていたことを痛感する羽目になる。

 

 

「右対空戦闘。CIC指示の目標、撃ちー方始めー」

 

「トラックナンバー2950、主砲撃ちー方始め」

 

「撃ちー方始め」

 

砲術手がゲームの銃型コントローラーの様な白い物を机の下から取り出し、下についているトリガーを引く。

 

ダダン!ダダン!ダダン!

 

6発の230mm砲弾が発射され、ワイバーン編隊の真ん中で炸裂する。乗騎のワイバーンごと、十数人がバラバラになりながら海へと落ちていく。

 

『何が起きた!?』

『おい、ドロップキック!!ドロップキック!!』

『うわぁぁぁぁぁ!!!!!こ、ここここ、これ腕!!!人の腕だ!!!!』

 

謎の攻撃で仲間が落ちて行き、吹き飛ばされた仲間のパーツが他の生き残った竜騎士達に降り注ぐ。中には目玉が落ちてきた所もあったそうな。

 

『狼狽えるな!!!!!敵は近くにいるぞ!!高度を下げ、攻撃を開始するぞ!!!!全騎、我に続け!!!!ハァ!!!!!』

 

ガウスが先陣を切って、乗騎のワイバーンオーバーロードを一気に降下させる。海面スレスレの超ギリギリを飛行し、他の部下達もそれに続く。だがこれは、摩耶型に取っては思う壺である。

 

 

「副砲群、自由射撃開始。機関砲群も射程に入り次第、自由射撃」

 

「130mm、迎撃開始。撃ちまくれ」

「アイ・サー。撃ちー方始め」

 

ダン!ガシャコン ダン!ガシャコン ダン!ガシャコン

 

連射に優れる130mm速射砲が、次々に砲弾を発射する。近接信管を装備した砲弾はワイバーンの手前で炸裂し、破片と爆風で何もかもズタズタに引き裂く。

 

「ッ!?」

 

ガウスもその一人であった。初弾は運良く避けられたものの、続く次弾で正面で砲弾が炸裂。何かが来たことを感じた瞬間、この世から永久退場することとなった。

 

「竜騎士長!!竜騎士長!!」

『竜騎士長がやられたぞ!!!仇討ちだ、掛かれぇぇぇぇ』

「俺がやってやる」

 

仇討ちに闘志を燃やしているが、彼らは気づかなかった。今飛んでいる所は、機関砲群の射程範囲だと言う事に。

 

「CIWS、迎撃開始!!」

 

30mmと20mmの機銃砲弾が、まるでレーザービームが如く発射される。竜騎士達は何が起きたか理解すら出来ず、挽肉へと加工されていった。

 

「新たな目標無し。戦闘終了」

 

「ご苦労だ、砲雷長」

 

艦長は被っていた帽子を更に深く被り、一言心で呟いた。

 

(よりによって摩耶型に会うとは、運がなかったな)

 

実際摩耶型に会ったのは、本当に「不運」の一言である。摩耶型は対空に特化した巡洋艦であり、何重にも張り巡らせた対空迎撃網があるのである。今回はミサイルを使ってないが、本来ならミサイルで先制攻撃を行い、230mm砲で陣形をグチャグチャに破壊し、130mmと機関砲、それから短距離の艦対空ミサイルによる弾幕で殲滅する。

この戦いぶりは前世界でも有名であり、120機のF22とF35の編隊を一隻で相手取り、ダメージを一切受けることなく殲滅した記録を持つ。現用ジェット戦闘機相手ですら歯が立たないのだから、ワイバーン程度では倒すどころか攻撃を加えることすら夢のまた夢である。

 

 

 

数時間後 デュロ沿岸部

「諸君!いよいよ我々の出番だ!!今こそ日頃の猛訓練の成果を、存分に発揮してほしい!!!まあ敵が余り強くないから本気は出しづらいかもしれないが、決して慢心せず、足元を掬われないようにせよ!!」

 

本間中将の訓示に隊員達が鬨の声をあげる。本間中将がアイコンタクトで副隊長に合図を送り、作戦の概要が説明される。そして隊員達が装甲車に乗り込んだり、LCACや上陸用舟艇に戦車や装甲車の固定、歩兵の搭乗作業が行われていた。その間に沿岸部は、地獄と化していた。

 

「主砲砲撃戦!弾種、五月雨弾!!撃ち方始め!!!」

 

「距離4500、一斉射撃!!」

「諸元入力完了」

「撃てぇ!!」

 

ドゴォォォォォォン!!

 

現在デュロ沿岸部は大和型2隻による砲撃で、絶賛整地中なのである。51cm砲弾が雨の様に降り注ぐという、トンデモなくヤバい地獄が沿岸部では繰り広げられていた。沿岸部に配置されていた防衛用の魔導砲陣地は、時雨弾によって完膚なきまでに破砕されている。

時雨弾は対地上用に開発された特殊砲弾で、着弾後に地中へ小型爆弾を送り込み地中で起爆。砲弾の運動エネルギーと小型爆弾の爆発で、破壊力を爆上げさせるというヤバい兵器であるため、例え壕の中に砲があっても貫通して吹き飛ばす。砲撃要員以外の兵士達は壕の中に退避して、この砲撃をやり過ごそうとするが逆に悲惨な事態にしてしまっている。その間に要塞空母『瑞鶴』はじめ、各揚陸艦は艦載機を発艦させ、上陸部隊の援護準備を行っていた。

約30分にわたる砲撃の後、揚陸艦から艦載艇と水陸両用車が発進していった。

 

「敵さん撃ってこないな!!」

 

「そりゃそうだ!51cm砲の雨を食らって生き残れるほど、アイツらは頑強じゃない!!というか、51cm砲なんて端から想定すらされてないだろ!!」

 

「そうだな!」

 

今のところ、砲弾はおろかマスケット銃すら撃たれていない。まあ原因はお察しの通り、さっきの砲撃である。そんな訳で何にも阻まれることなく、すんなり上陸に成功した。

 

 

 

同時刻 デュロ都市上空

「お前達、デカブツを落とすぞ。おーい、ゲストさーん。準備はいいかな?」

 

『こちらアンヴィル1、早くこんな狭い空間からはおさらばしたいんだ。早いとこ落としてくれ』

 

「HAHAHAHA。OK!!ハッチ開くぞ!!!」

 

デュロでは丁度空挺部隊が降下しようとしているところだった。しかし下では、

 

「対空魔光砲、発射準備急げ!」

 

士官が命令しパーパルディア皇国陸軍の兵士たちは、大急ぎで対空魔光砲を回して砲身に仰角をかける。因みに見た目はソ連のZU23に近い。

 

「照準合わせろ!発射はもう少しだけ待て!」

 

「魔導エンジンと魔光砲の接続を解除しろ!発射に備えるんだ!」

 

慣れない対空魔光砲の操作に少しだけ手間取りつつも、発射準備はつつがなく進められた。そして発射準備が完了すると同時に、46式を搭載したC3屠龍が射程に入る。

 

「対空魔光砲、発射準備よし!」

 

射撃手が引き金に指を掛け、別の兵士が弾帯を持って連射に備える。次の瞬間、士官が手に持つ指揮棒を屠龍に向ける。

 

「対空魔光砲、発射!!」

 

「発射!」

 

トリガーを引いた瞬間、砲口内に赤い魔法陣が現れ、魔光砲全体が赤い光を発する。そして20mm弾が発射される。

 

ドカカカカカカカカカカ!!!!

 

 

「ん?うぇ!?嘘ォ!?」

 

機長は眼下に見えた赤い光に見覚えがあった。対空機関砲の発射炎そのものである。ハッチを閉じつつ、機体を左に傾ける。

 

「こちらコンボイ3号機!敵、対空機関砲を発見!!至急航空支援求む!!!」

 

『こちらギャッツ隊。こちらでも確認した。すぐに対応するから、もう少し待っててくれ』

 

偶々一番近くにいた、ギャッツ隊が即応する。その頃、魔光砲の動きは止まっていた。

 

「ど、どうした?故障か?」

 

 士官が叫ぶと、

 

「いえ、魔力切れです!」

 

 砲手からは、まさかの答えが返ってきた。

 

「何だと!?毎分350発をオーバーヒートするまで連射できるんじゃなかったのか!?」

 

「どうやら燃費が思ったより良くないようです!」

 

残念なことに、パーパルディア皇国の超非力な魔導エンジンでは魔力の充填は思ったよりもできておらず、しかもこの対空魔光砲の燃費も悪かったようだ。

更にいうと、実はこの対空魔光砲が発揮した性能自体も低くなっている。今回の砲撃では毎分200発の発射レートであり20秒も経たずに魔力切れになったのだが、本来であれば「毎分350発のレートで射撃が可能」で、しかもオーバーヒートするまで撃ち続けられるのである。魔光砲の運用に求められる「技術水準」が、パーパルディア皇国の技術レベルより高すぎたのである。そんな訳で今からの運命は、お察しの通りである。

 

「さあ、火遊びの時間は終わりだ。投下ァ!!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ

 

「た、退避ぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

士官が叫んだ瞬間、全員が弾かれたように逃げ出すが、爆弾が着弾すると魔力回路に使われた魔石、魔導エンジンの可燃性の魔力液、弾薬に引火して大爆発を起こす。それもまるでミサイルが爆発したみたいな、超特大の火球作って。

 

「フッ、汚ねぇ花火だ。こちらギャッツ隊。敵対空機関砲は、火山の如し。さあ、いつでもやってくれ」

 

『コンボイ3号機、了解。帰ったらビールと、スルメ奢ってやる』

 

そんな訳で、今度こそ戦車を投下する。一応なけなしの防衛線は構築しているらしいが、その一つの真上に戦車が落ちてくる。

 

「お、おい!!何か降ってくるぞ!!!」

「何だありゃ!?鉄の塊だ!!」

「逃げろぉぉぉぉぉ!!!!」

 

日本の空挺降下する戦車や装甲車というのは、基本的にパラシュートは最初の姿勢制御にしか使わない。最初出た瞬間は使うが、姿勢が安定するとパラシュートは外す。そして後は自由落下で地表付近まで降下し、下方のロケットモーターで速度を相殺して止める。その為下の人間は、ぺったんこである。

 

「あ、何か踏んだ?」

 

「車長、さっき見たらこの辺りは防衛線が張られてましたよ。多分、アレです。人、潰してます」

 

「オブラートに包めよ。想像しちゃったじゃん。絶対見たくないわ」

 

「ですね。じゃ、行きますよ」

 

ギュラギュラギュラギュラギュラ

 

 

「コンボイ1号機、コース良しコース良し、よーいよーいよーい、降下降下降下降下降下!!!!」

 

一方別の所では、空挺隊員達がどんどん降下する。その数、8000。更に都市の入り口からは海軍陸戦隊の部隊が群がっている。パーパルディアの兵士は完全にパニックである。

 

「魔導砲、撃てぇ!!」

 

ドガァン!

 

魔導砲が撃たれようものなら、

 

「後方確認よし、発射」

 

ボシュ

 

対戦車誘導弾が飛んでくる。それも一発二発ではなく、十発以上。はたまた

 

「一斉射撃、撃てぇ!!」

 

ダダン!!

 

戦列歩兵がマスケット銃を一斉射撃しようものなら、装甲歩兵、もしくは兵器で受け止めて

 

「撃ちまくれ!!」

 

ドカカカカカカカカカカカカカカカ!!!!

 

機関砲やら機関銃やらグレポンやらで、防衛線に置かれた遮蔽物ごと完膚なきまでにふき飛ばす。

 

「突撃、前へ!!!!」

 

魔導砲、マスケット銃も効かないならと古典的な突撃戦法を取り始める。騎馬兵、歩兵、地竜が突撃を仕掛けてくる。通り一帯が兵士で埋まる。しかしそれは、日本の思う壺でもある。

 

「仰角65、方位0。効力射、撃てぇ!!」

 

44式230mm自走砲が砲弾を撃ち込む。更にAH32薩摩のロケット掃射によって、パーパルディアの兵士達はあちこちにすっ飛ぶ。終いには46式が突撃する。

 

「お、おい鉄の地竜が来るぞ!!逃げろ!!」

 

誰かが叫ぶと全員が一目散に敗走を始める。しかし余りに人が多いのと、砲撃の残骸で思うように逃げれずにすぐに追いつかれる。

 

ギュラギュラギュラギュラギュラギュラ

 

「く、来るな、来るなぁ!!」

 

そんな叫びはお構いなしに、轢き殺す。

 

 

「司令、都市はもう地獄のようです。奴らの兵器に、我々の装備では太刀打ち不可能です」

 

「そうか.......。ブレムは?」

 

「ブレム将軍は既にもう.......」

 

「わかった。ならば私も、ケジメをつけなければな」

 

そう言うとストリームは鎧を纏って、愛剣を携えて敵の密集地に突撃する。しかしその姿は、スナイパーに捉えられていた。

 

ダァン!

 

駆け出した瞬間、頭に12.7mm弾を食らって前のめりに倒れる。この瞬間、デュロ防衛隊歩兵20,000、騎兵4.000、竜騎士60名、その他30,000名が戦死した。日本軍の被害は、勿論ゼロである。大半の兵は都市の治安維持の為に残り、一部の兵士が工場内部に入る。

 

「マスケット銃だらけだな。やっぱ、ここを無傷で抑えられたのは嬉しいな」

 

実を言うとここを砲撃で吹き飛ばさなかったのは、色々情報も得られて物資が大量に眠っているからである。戦争が終わったら外貨を得る為に、売り捌く商品として全部奪取するつもりなのである。

 

「ん?隊長、これを見てください」

 

「どした?」

 

「これ、記録によると3日前に皇都エストシラントにある物が輸送されているみたいなんですよ。で、そのある物っていうのが「イクシオン」という兵器なんですが、どうやらそれが例の対空砲みたいなんです」

 

「それヤバくないか?」

 

「ヤバいです。とにかく、司令部に連絡を!」

 

そんな訳で日本本国に連絡が飛ぶ。

 

「あー、結論から言うと放置していい。こっちで対処する」

 

神谷がそう言って、無線を切る。そして別の部隊に連絡を入れる。

 

「こちら統合参謀本部の神谷だ。お前達、ちょっと仕事を頼みたい」

 

『こちら水虎隊。何か?』

 

「ちょっと殲滅して欲しい艦隊があるんだが。頼んでいいか?」

 

『お安い御用です。完全に殲滅していいんですね?』

 

「ああ、新しいお魚さん達の住処を作ってあげて?」

 

後半はショタボイスで言うものだから、無線を聞いていたパイロット達が吹き出す。

 

『わかりましたw。ちょっと、殺ってきます』

 

という訳で急遽、仕事が追加される。因みに敵の編成は輸送艦5、ファイン級60門級戦列艦9、フィシャヌス級100門級戦列艦級4である。

 

「さあお前達、仕事の時間だ。いっちょ驚かせてやろうか」

 

『『『『『『おう!!!』』』』』』

 

 

 

数時間後 輸送艦隊

「よし、順調に行けば朝にはエストシラントだな」

 

輸送艦隊はもうすぐで航海が終わることによる安堵感から、緊張の糸が緩み始めていた。しかしその瞬間、目の前であり得ないことが起きた。

 

ザパァン!!

 

何かが海の中から数体現れる。その物体は手近の艦に飛び移った。謎の物体は鉄で出来ているのか、飛び移った瞬間に足場にされた艦がメリメリいいながら真っ二つに折れて沈んでいく。

 

「て、敵襲!!砲撃よー」

 

「砲撃よーい」と言った瞬間、機関砲弾の嵐によって蜂の巣にされる。

 

 

ギャオォォォォォォォォ!!!!

 

 

耳をつんざく咆哮に、水兵達が耳を塞ぐ。そして開いた口から、青白いビームが発射されて艦が細切れにされていく。

 

「な、何だ。何なんだ、あの鉄の巨人は.......」

 

そう司令官が言った瞬間、60mm機関砲弾に貫かれて意識を失った。そして数分の後、艦隊は完全に破壊され海へと沈んでいった。この事はパーパルディア戦後、長い間「幻の補給艦隊」として都市伝説と化した。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。