最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第二十三話超絶大波乱な講和会議

地獄作戦終了より二日後、首相官邸の執務室では安定の三人が集まり、今後の計画について話し始めていた。

 

「さてさて、じゃあこれからの事について話し合うとするか。取り敢えず浩三、お疲れさん」

 

「おお、ありがとよ。つっても、健太郎の場合は今から忙しいだろ?いや慎太郎のが、遥かに大変か」

 

「浩三、言うな」

「あんな頭硬いだけの老害ジジイ共の相手とか考えたくない」

 

神谷の言葉に一色と川山が、今にも死にそうな顔をしながら答えた。確かにこれで戦争は一応終わったし、現在の日本軍の軍事行動はゲリラ化した一部のパーパルディア皇国兵の掃討と、支配地域での保安警務活動、そして各地の最低限のインフラ復旧作業のみであり、軍の大半も引き揚げを始めてる。

だが知っての通り、戦争はまだ終わってない。確かに兵器を使っての戦争は終わったが、ここからの戦場は「会議室」と「国会」という、これまでの普通の戦争よりも面倒なフィールドでの戦争が始まる。そんな面倒な場所に赴くのは、他でもない一色と川山なのである。

 

「そういや、あのレミールとルディアスはどうなったんだ?個人的にはメチャクチャ気になるんだが」

 

川山がそう質問し、その隣で一色も頷く。神谷は悪魔みたいな笑顔をすると「聞きたい?」と聞き返し、この瞬間に二人とも嫌な予感はしたが「聞きたい」と答えた。この判断がどんな結末かは、今からのお楽しみ。

 

「皇帝ルディアス、皇女レミールは共に地獄作戦の第二段階での戦艦群、51式自走砲群による砲撃に巻き込まれ死亡。死体は欠損が激しいもののルディアスは下半身、レミールは胴体の一部をそれぞれ発見した為、死亡したものと判断した。と発表する予定だ」

 

「なんか含みのある言い方だな」

 

一色がそう言うと神谷は懐からエチケット袋を取り出し、横にある鞄からペットボトルの水を取り出して机に置いた。

 

「いや浩三さん?これ何」

 

川山の質問に安定の悪魔の笑顔を浮かべ、言葉を続ける。

 

「今から言うのは歴史には記録されない、本当の最後だ。実を言うとだな、ルディアスとレミールは逃亡したんだ。俺が突入する前にな。勿論すぐに捕捉してとっ捕まえた。そしてな、アイツらにはちょっとした余興に参加して貰ったんだよ。これがそん時の映像なんだが、見るのは覚悟がいるぞ」

 

もうなんか察したが、一応見る事にしたらしい。意を決して差し出されたタブレットの電源を入れると、予想通りヤベェ拷問シーンが流れ始めた。

 

「うわぁ.......」

 

「これはヒドイ.......」

 

「俺がゲロ袋やら水やらを用意した理由がわかったろ?」

 

二人とも余りのショックに言葉を失い、ただ無言で頷いてた。長い付き合いな訳で神谷の恐ろしさ、取り分け本気でキレさせたらどうなるかは一番知っているが、今回の事は過去一番にヒドイ物であった。

因みに神谷は高校時代に、不良のアジトに一人で攻め込んで100人近い不良をボコボコにした事があったりする。お陰で高校時代のあだ名に「喧嘩漫画の主人公」と言うのがあったりする。

 

「慎太郎、先方からの講和会議への打診は来たか?」

 

「あ、あぁ。三週間後、パールネウスにて講和会議を開きたいとの連絡が来てる。で、相手は皇帝ルディアスの弟のマルビスクという男らしい。どうやら皇族の中では穏健派らしく、他国との融和や平和を主軸とした思想を持っているらしい」

 

場の空気を正常に戻す為、一色が川山に質問する。その意図を汲み取ったのか、少しもたついたが質問に答えて場の空気を変える事に成功した。

 

「なら俺達の今からする話し合いは、講和の条件出しだな」

 

その後会議は白熱し、中々にエグい内容の講和内容の案が纏まった。安定の左翼からの横槍が入りつつも無事国会も通過して、三週間後にはパーパルディア皇国の暫定首都であるパールネウスへ講和会議へ赴いた。

 

 

 

三週間後 パーパルディア皇国 クラールブルク航空基地

『まもなく当機は、クラールブルク航空基地に着陸いたします。シートベルトをご着用ください』

 

「ほお。マジでイタリアみたいな街並みだな」

 

一色は眼下に広がる街並みを見てそう漏らした。今回の講和会議には、三英傑が揃って出席する。考えてみるとこれまで、一応の国家元首が世界の表舞台に立ってなかったので、川山の「この際だから、どういう人間が元首か宣伝しておけ」という一声で、参加が決まったのである。

 

「着陸したら、今度は輸送機で行くからな」

 

「あー、何だっけ?確か、えーと。あ!!スーパーオスプレイに乗るんだろ?」

 

神谷、機内で盛大にずっこける。

 

「お前、マジで自国兵器の名前くらい覚えろよ!!それにスーパーオスプレイとか、マイナーすぎて読者の皆さん着いてこれんぞ!!!!確かに「ダークサイドムーン」とかさ「最後の騎士王」に出てはいたけど、どっちもすぐに落ちてんだわ。しかも前者に至ってはスタースクリームに「イナゴ共」とか言われながら、丸鋸でローターぶった斬られながら墜落するという、航空機らしからぬ攻撃で落ちたな」

 

このスーパーオスプレイというのは、ベル社とボーイング社が計画していた機体で制作はされてない機体である。見た目的にはオスプレイの胴体長くして、翼とローターが1セット増えてると考えて欲しい。多分ネットで「QTR 輸送機」とか入れたら出てくると思うので、気になる方は各自で調べて見てほしい。

因みにクソどうでもいいが、主が好きなトランスフォーマーの映画はダークサイドムーンと最後の騎士王である。(一応、バンブルビーを除いて全作5回ずつは見てます)

 

「浩三、お前メタ発言多すぎ。やめなさい」

 

「へーい」

 

取り敢えず川山が突っ込んで、これ以上のメタ発言は無くなった。あー、トランスフォーマーもそうだけど、俺はヤマト見たいよ。2202という時代と、2205どっちも。

 

「お前もやめんかい主!!!!」

 

ごめんちゃい。それじゃ話戻して、コホン。

クラールブルクに到着した3人は、待機していた大型輸送機のVC5白鳥に乗って講和会議の開催地であるパールネウスへ飛んだ。因みに乗っている白鳥は通常の制空迷彩や灰色の塗装から、紅白の政府専用機と同じ塗装に変わっている。

 

 

 

パールネウス陸軍駐屯地 ヘリポート

「一色総理大臣、神谷大将、川山特別外交官に対し、敬礼!!!!」

 

ザッ!!

 

ヘリポートに降り立ちカーゴ扉を開けると、駐屯している軍人達が揃って敬礼で道を作っていた。一色と神谷は式典やら何やらで慣れてはいるが、川山は余り機会が無いので最初、一斉に敬礼された時は「ビクッ!」ってなっていた。

 

(栄誉礼受ける時の要人達の心情って、こんな感じなんだろうか)

 

歩いてる最中もこんな事を考えながら、外の車に向かって歩いていた。流石に講和会議の会場に白鳥でダイナミックに乗り付ける訳にも行かないので、今回は事前に車を入れて置いたのである。車列の陣容はこんな感じ。

 

先導

・白バイ 6台

・警ら用パトカー 1台

 

本隊

・36式機動戦車 2台

・47式指揮装甲車 1台

・44式装甲車(イ型4、ロ型2、ホ型2、ト型1) 9台

・装甲リムジン 2台

・警護車(ランクル) 5台

 

後続

・40式小型戦闘車 8台

・36式機動戦車 4台

・白バイ 2台

 

見て分かる通り、アメリカ大統領バリのガチ警護である。しかも護衛する兵士達は全員、世界最強の精鋭部隊である白亜衆である。これに加えてバックアップ部隊が随所にいる。沿道には完全武装の兵士は立ってるし、建物内や屋上にはスナイパー。

さらに今いる基地にはAH32薩摩を保有する第4対戦車ヘリコプター隊がいる上、白亜衆の装甲歩兵部隊が常時空中待機。おまけにクラールブルク航空基地にはA10彗星を保有している第501航空隊、F9心神を保有している第203航空隊がいる。もし何かあれば、これらの部隊が即駆け付ける事になっている。

 

「指揮官車より各車。指揮官車より各車。三英傑搭乗確認。これよりパールネウス中心部の、パラネス城に向かう」

 

『先導、準備良し』

『後続よし』

 

『こちらパラネス城本部。受け入れ体制、並びに警備体制用意良し。いつでもお迎え可能』

 

「了解。これより出発する。全車、前へ」

 

車列はパラネス城目指して出発する。道中何の問題もなくパラネス城へ。と言いたかったのだが、途中で少しアクシデントが発生した。それは丁度、後半分でパラネス城に到着するという辺り。

 

「あの.......」

 

監視の為に沿道に立っていた兵士の一人が、市民の男に声を掛けられた。みると、その後ろには荷車があり兵士は「あぁ、大方ここを通りたいんだろうな」と察して、例文通りの答えを言った。

 

「申し訳ない。現在この道は通行不可能となっている。迂回路を指示するから、そっちの方から」

 

「お願いします!ここを通してください!!」

 

「いや、だからだな」

 

「家内が、材木の下敷きになって大怪我を負っているんです!!早くしないと死んでしまいます!!!どうかお助けください.......」

 

そう言って男はその場に崩れ落ちて、泣き出してしまう。すぐに同じ分隊に所属している衛生兵を呼んで、容体を見てもらう。

 

「これは不味いね。ってかこれ、多分この時代の医療じゃ治せない気がするよ」

 

「マジか!?って、おい嘘だろ」

 

間の悪い事に、丁度車列が目の前に来ていたのである。すぐに兵士は無線で、指揮官車に連絡を取る。

 

『こちらHotelポイント。傷病者を搬送中の荷車が、進行中の道を突っ切って通りたいと申し出あり』

 

「了解。車列進行を一時停止し、傷病者の搬送を優先させよ。各車、停車中は周囲を警戒し、襲撃時は適宜撃退せよ」

 

無線で指示を出して、車列が止まる。そのままでは格好の餌食なので、左右に44式が展開して武装のロックを解除し、いつでも発砲できるようにしておく。その間、荷車を動かそうとするが

 

「ゲボッ!!」

 

荷車に寝かされている女性が吐血し、いよいよ不味い事が分かる。

 

「あなた.......」

 

「ここにいるよ。大丈夫、僕がついてる。だから、死ぬな.......」

 

兵士達は助からないのを知っている以上、最後の別れかもと思うと動かしづらい。そんな中、コイツらが動き出す。

 

「止まったな」

 

「何だあの人だかり」

 

一色の言葉と同時に、川山も前の状況に気づく。

 

「よし。見にいくか」

 

「だな」

「気になるし」

 

神谷の一声に、即了承する二人。え?普通ならあり得ないって?そんな常識、コイツらに通じない。まあ警護側は溜まったもんじゃなく、大慌てで白亜衆の人間が三人の周りを固める。

 

「あなた.......。あの子に、よろしく、ね.......」

 

「そんな.......」

 

旦那が妻の体に抱き付きながら泣き叫ぶのを見て、兵士達も何とも言えない悲しい気持ちになる。この数分間に何度「救急車があれば」と思った事だろうか。

 

「おーい、お前達何やってんだ」

 

「この人の最後に立ちあっ、って?えぇぇ!?!?」

 

「神谷閣下!?それに一色総理に、川山外交官も!?!?」

「嘘だろ!?何でここに居るんだ!?!?」

「三英傑は車にいるはずだろ!?!?!?!?」

 

まさかの人物の登場に、兵士達はメチャクチャ驚いている。そりゃいきなり真後ろから、雲の上の人間に普通の友達みたいに声をかけられたら当然である。

 

「おい二人共。これヤバイ状態じゃないか?」

 

兵士達が驚いてる間に川山が荷車に寝ている血だらけの女性に気付き、二人の肩を叩いて教える。

 

「この出血量は確かに.......」

 

一色もそれをみて、直ぐにヤバイと気付く。そこからの三人の速さは凄かった。

 

「もしもし私だ。救急車の一台をこっちに回して欲しい。それから白バイ2台と、護衛の小さい装甲車も1台」

 

「白亜衆!!市民の誘導を行い、車の通り道を作るぞ!!!!」

 

「奥さん、血が少なくて寒いでしょう。これを被りなさい」

 

何と一色は後方に控える野戦救急車タイプの44式装甲車であるホ型と護衛の一部を付ける事を即決断し、それをする事を察していたのか神谷は自ら白亜衆を率いて市民の動きの誘導を始める。川山も自らの背広を血まみれの女性の上から被せ、旦那さんのケアを始める。

この普通じゃあり得ない対応に兵士達は困惑するが、すぐに手伝いを始める。そうこうしている間にホ型が到着し、中から医者と衛生兵が出てくる。

 

「総理、患者は?」

 

「こちらの女性だ。駐屯地の方に運んでくれ」

 

「わかりました。君達、ストレッチャーに移す。手伝ってくれ」

 

ストレッチャーに移し中に収容すると、ホ型は白バイ2台の先導で駐屯地に走って行った。旦那さんは36式機動戦闘車に乗せられ、子供がいるそうなので子供を迎えに行った。全てが終わると三人はまた車に戻り、パラネス城に向かって車列は進みはじめた。

 

 

 

パラネス城 大会議室

現在、この大会議室には様々な国家の代表が集まっている。我が大日本皇国の代表たる三英傑、パーパルディアの代表マルビスクを筆頭に、属領だった73ヶ国の代表、そして今回の73ヶ国一斉蜂起、後の歴史には「隷属の蜂起」と呼ばれる蜂起に参加したリーム王国、パンドーラ大魔法公国、マール王国、トーパ王国を始めとした周辺諸国&パーパルディアと仲の悪かった国家が参加していた。

 

「それでは定刻となりましたので、これより対パーパルディア戦役の講和交渉会議を開会致します。司会役は私、大日本皇国内閣総理大臣の一色健太郎が務めさせていただきます」

 

会場から拍手が上がる。まずは参加国の紹介があり、一国ずつ名前が読み上げられていく。その次にいよいよ、講和条件について発表される。

 

「それではまず我が国、大日本皇国より講和条件を提示させて頂きます。川山!」

 

「はい。大日本皇国からは、以下の事を貴国に提示させて頂きます」

 

 

・パーパルディア皇国は解体。領土を大幅に縮小し、パールネウスから半径75km以内の領有のみとする。

・今回の戦争にかかった費用は全てを負担する。

・エストシラントからデュロまでの南東海岸線の領有の承認。(因みにクラールブルクはこの二つの中間に位置する為、こちらも領有する事になる)

・全ての奴隷を解放する。

・日本人虐殺事件での遺族に対する公式に謝罪、及び賠償。賠償金額については、開戦以前の交渉時と同額とする。

・皇室への断絶宣言に対する謝罪。

・鉱物資源の調査権を承認する。

・講和条約の効力発揮後100年の内に、日本の調査で新たに発見された鉱物資源の優先的な開発権限を有する事の承認。

・上記以降に発見された場合は共同開発とする事と、割合の指定はこちらに権利がある事の承認。

・ただし上記の採掘権に関しては、貨幣の原料となる金、銀、銅は免除とする。

・皇帝の地位は「国の象徴」という形とし、儀礼的な行事を除いて如何なる政治的、軍事的権力を永久に剥奪する。

・軍隊に関しては、自衛できる最低限の軍備を認める。

・国防用の軍隊とは別に内部監査や政府、軍の監査を行う軍隊の創設、編成の承認。

・上記の軍隊は日本に指揮権がある事の承認。

 

 

「以上が我が国からの要求となります」

 

多分、これまでの日本国召喚二次創作の中で一番要求している気がする。とまあ、それはさておいて。マルビスクは直ぐに手をあげて、色々質問し始める。

 

「今回の戦乱については、明らかに此方に原因があるのは重々承知しております。しかしながら我が国は貴国の攻撃によって、その大半の経済基盤を失っており賠償しようがない、というのが現状です。どうか時間を頂きたい」

 

「その事に関しましては我が国が一番わかっております。我が国は貴国の軍事、経済、政治の基盤全てを根底から破壊し尽くしました。ですので、貴国に支払いが出来ない事は分かっております。ですので賠償金を安く、或いは無くす代わりに貴国への様々な事業展開を容認して貰いたいと考えています。

我が国はご承知の通り、高い技術力があります。その力や様々な制度を使用して貴国を大改造し、そこで得られた利権の得る優先権や商品の免税と言った特権を持って賠償の代わりとする事も可能です。其方をご利用しては如何でしょう?」

 

ザワザワザワザワ

 

「我が国としては願っても無い。是非、お受けさせて頂きたい!!」

 

そう。これこそが三人の考えた作戦である。実を言うと全ての基盤を必要以上に破壊したのもこの為であったりする。賠償金を払うとなると、例え支払い能力があったとしても今後の関係で影を落とすのは必然である。しかも今回の様に格下と思っていた相手から、再起不能な程にボッコボコにされていれば尚の事である。

だがここで「事業展開時の特権で許す」と言われればどうだろうか。一見、日本の方に損がある様に見えるであろう。だがしかし事業展開によって日本の産業は潤い、更に特権に含まれる免税権や利権の優先権が有れば安定的な収入と産業の発展が付いてくるのである。オマケに外交上の影は無くなるどころか「恩人」や「慈悲深き国家」みたいな超プラスなイメージも広がってくれる訳であり、一石二鳥や三鳥どころのメリットでは無いのである。

 

「一つ申し上げたいのだが、宜しいでしょうか」

 

「どうぞ」

 

会場内が騒つくなか、一人の男が手を挙げる。その男の所属している国家は、リーム王国であった。

 

「我が国はエストシラント近くに飛び地を有しておりまして、法令上エストシラントが我が国の支配領域となります。大日本皇国にはエストシラント編入権利を放棄して頂きたい」

 

このリーム王国というのは、良くも悪くも中世ヨーロッパの思想が強い国家である。つまりは帝国主義国家(・・・・・・)なのである。この飛び地というのも例の隷属の蜂起時にどさくさに紛れて掠め取った土地であり、世間的に言うところの所謂「火事場泥棒」と言うヤツで得た土地なのである。

リーム王国としてはエストシラントの富を搾り取りたいのと、大日本皇国に交換条件で提示する国交開設時の特権等で友好関係を築きたいのである。

 

「(ちょ、浩三!これヤバくね!?)」

 

「(慎太郎、何が何でもエストシラントは取られるんじゃねーぞ!!!!)」

 

川山と神谷はヒソヒソと話し合っている。エストシラントを手放したく無い理由とはもちろん、あのミサイルサイロの件に繋がっている。もしあれが他国に渡る様な事になれば最悪の場合、全面核戦争の勃発に繋がる可能性もあるのである。しかもこの世界には核の知識が無い以上「相互確証破壊による核抑止論」なんて物は、まあまず産まれることすら無いだろう。

まあ核抑止論自体が、仮定に仮定を重ねた幻想でしか無いのだが。

 

「では一つお聞きしたいのだが、貴国はエストシラントの現状を知っておられるのか?」

 

ここで神谷が対抗策を思いつき、行動を開始する。

 

「はい?エストシラントと言えば、元とは言えど列強国の首都。とても綺麗で美しい都市ですよね」

 

「確かにその認識は、最終決戦前までなら合っている。しかし、現在のエストシラントは決戦時の戦艦群による砲撃、爆撃、歩兵部隊による陸上戦、そして我が国の保有する決戦兵器による攻撃で大半が消え去っている。確かマトモに街としての原型を保っているのは、北部地区と中央区の一部だった筈。正直、貴国の技術力では再建には100年近く掛かりますぞ?」

 

神谷は最初の時点で、リーム王国の狙いがエストシラントの利権である事を見抜いていた。ならば統治する意味、つまり利権が存在しなければ諦めると踏んで、現在のエストシラントの状況を説明したのである。

 

「そう言うことなら、我が国は権利を放棄させて貰う」

 

利権が無いと分かると、超すんなり諦めてくれた。その後は元属領だった国家の本来の領土の返還が決定し、日本の資源調査の結果を待ってから領土の拡張が行われる事になった。

それも終わると講和条約の締結に関する調整の事が話し合われ、講和条約調印はエストシラントのパラディス城の前で一週間後に行われる事が決まった。

 

 

 

会議終了後 パラネス城 車寄せ

「あー、長かった。マジで長かった」

 

「でもこれで、ようやくゆっくりできるな」

 

「だな」

 

やっとゆっくり出来ることに、川山と神谷が喜んでいると一色が「え?お前ら何言ってんの?」と言う顔で、こちらを見てくる。

 

「浩三、お前は帰国したら観閲式と観艦式の準備をしてもらわないと」

 

「あ.......」

 

「慎太郎には、今度は第一文明圏を相手に外交をしてもらう。取り敢えず、エモール王国に行ってもらう。なんか選民思想の強い国家らしいから、まあ頑張れ」

 

「ウソやん」

 

二人して、絶望のドン底へとまっしぐらである。やっとデカイ仕事が終わったと言うのに、仕事のおかわりが来るのだから無理もない。出来ればこのまま逃げ出したい所だが、そう言うわけにもいかないので祖国に帰るべく車に乗ろうとすると横のパーパルディアの兵士達が慌ただしく動き回っていた。

 

「この、暗殺者共があぁぁぁぁ!!!!!!」

 

そう言いながら二人の少年と一人の少女、そして別のパーパルディアの兵士がパチンコで石をぶつけていた。

 

「イデ!いでいで!!っち、何処で計画が漏れたんだ」

 

そう言いながら、暗殺者呼ばわりされてる奴らが勇敢な四人を取り押さえようとしている。暗殺者呼ばわりされてる奴らは30人近くおり、多勢に無勢であった。

 

「なにやってんだろうな?」

 

「さあ?」

 

川山と一色は呑気に考えていたが、神谷と周りにいた護衛達は背後から迫る矢に気付き二人を守る為に動いていた。

 

「伏せろ!!!!」

 

幸い護衛の持っていたシールドで矢は弾いたので、誰も被弾はしなかったが中からワラワラと武器を構えた衛兵達が出てきた。

 

「不味いな。直ぐに二人を逃す!!!お前ら、早よ乗れ!!!!」

 

そう言って神谷が二人を車の中に叩き込み、屋根をバンバン叩きながら「GO GO GO」と叫んでいた。その間、周りの日本兵達も応援に駆けつけて勇敢な四人と神谷達の援護に入る。

 

「パーパルディア皇国を潰した、憎き日本兵め.......。目に物見せてやるわ!!!!」

 

「チッ。最後の最後まで手を焼かせてくれるな、ったく。おう野郎共!!!!このクズでろくでなしの襲撃者共を、生きて帰すんじゃねーぞ!!!!!!!!」

 

「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」

 

斯くして、戦闘の火蓋は切って落とされた。パーパルディア皇国兵達は建物を遮蔽物にして、クロスボウや弓矢で攻撃してくる。一方日本兵は、一度下がって応援の到着を待っていた。その間に神谷は、例の四人と会っていた。

 

「君達、一体なぜアイツらが暗殺者だって知っていた?」

 

「俺達、いつも遊んでる空き地があるんだ。今日もそこで遊んでたら、ここの衛兵の人を連れてきて殺したんだ。そのまま死体は埋めて、鎧を着てここに向かった」

 

「で、後を付けてきたと。お前ら、見かけの割に度胸あるな。で、そっちの兵士さんは何故?」

 

「俺はコイツらに頼まれて、お守り役で付いてきた」

 

因みに今更だが、この四人はそれぞれ例のアレン、カサミ、ヒロシの三人であり、もう一人は金髪の少年で名前はイルミンという。

 

「まあ事情はわかった。詳しい話は、後から聞こうか。まずはあのクズ共を、血祭りにあげねぇと」

 

そう言うと丁度、白亜衆の装甲歩兵を乗せたCH53大鳥が飛来。白い装甲甲冑を身に纏った兵士達が降りてきた。

 

「団長、お待たせしました。早速、突入しますか?」

 

「あぁ。野郎共、装甲歩兵を盾に突入する。続け!!」

 

「「「「「「ハッ!!」」」」」

 

装甲歩兵がゆっくりと前進し、門の前に壁を作り出す。中から毒矢やら火矢の熱烈な歓迎を受けるが、まるで通じない。お返しに両腕のガトリング砲で遮蔽物ごと粉砕していく。

 

「今だ!!対戦車ミサイル、撃て!!」

 

ボシュ! ボシュ!

 

しかも後ろから対戦車ミサイルまで使って壁を破壊し、更には飛来した薩摩による攻撃で正面玄関はボッコボコになった。だって普通に対戦車ミサイル旋風やらロケット弾やら、持ってる兵装全部ぶちまけてるんだがら当然である。

 

「内部に突入し、マルビスクの身柄を拘束する。続け!!」

 

そう言ってボッコボコの玄関から中に入り、マルビスクの執務室を目指す。ドアを蹴破って中に入るとそこには、衛兵に首元へ剣を突きつけられてるマルビスクの姿があった。

 

「くるんじゃねぇ!!!!コイツがどうなってもいいのか!?!?」

 

そう言いながら脅してくる。だかしかし、神谷は気づいた。衛兵の後ろは窓ガラスである事に。すぐに後ろの兵士にハンドサインで指示を出し、時間稼ぎに入る。

 

「因みにどうやったら解放してくれるの?」

 

「お前がこの場で自殺したら、解放してやる!」

 

「ふーん。まあいいや。そうだ知ってるか?地獄の直通便ってのは、トンデモなく足が速いんだ」

 

「はぁ?何言って、ゴフッ!」

 

そう言うと衛兵は前のめりに倒れた。今何が起きたのかと言うと、狙撃されただけである。要人警護で任務についていたスナイパーに連絡を取って、狙撃してもらったのだ。

 

「わーお。我が兵士ながら、中々の腕前だ」

 

「一体、何が.......」

 

「マルビスク殿、お怪我ありませんね?一応あの状況でしたから多分違うと思いますが、貴方には今起きてる一件の首謀者の疑いがかかってきます。駐屯地まで御同行願います」

 

「え、えぇ」

 

マルビスクを外に連れ出し、四人の勇者達も一緒にヘリで駐屯地まで連れて行く。

後の調査で今回の一件は、全てゲリラ化した残党達による物である事が判明し、この戦闘で残党の殆どが確保ないし殺害した事も判明した。四人の勇者達は、のちに日本に招かれ天皇陛下より金鵄勲章を受勲するのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 




この話を持ちまして、第二章は完結となります。次回からの第三章からはいよいよグラ・バルカス帝国戦、ではなくあんまりドンパチがない話を中心にお届けしていきます。
また大日本皇国版における大東亜戦争での話や、転移する前にあった中韓との戦争についても書いていくつもりなので、お楽しみに。

第二十七話ゴブリン戦争は前後編に分けた方がいい?

  • 前後編に分けて欲しい
  • いや別にこのままでいい

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