最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第二十六話神谷の休暇

観艦式やら観閲式やらが終わって、早二ヶ月。戦後処理も式典の事後処理も終わり、幕僚陣も休暇をとれるようになっていた。つまり戦争前と同じような状況に戻ったのである。

 

「失礼します。長官、こちらの書類に.......。って、長官どこだ?」

 

一人の士官が神谷の執務室に、書類の束を抱えてやってきた。しかし中には長官たる神谷どころか秘書や部下の姿もない。少し中を探索するが、人のいる気配がない。

 

「アレぇ?」

 

「おや、君。どうしたんだ?」

 

「ん?あ!むむ、村今閣下!!」

 

背後からの声に振り向くと、そこには前回のパーパルディア戦役でも大活躍していた村今が立っていたのである。急に声をかけられた事と、まさかの雲の上の存在である村今だった事に驚き軽く声を裏返らせながらも挨拶と敬礼をした。勿論村今も返礼する。

 

「で、どうしたんだ?」

 

「ハッ。神谷長官に書類を渡しに来たのですが、ご覧通り誰も居なくて」

 

「あぁ。神谷長官は今、クワ・トイネ公国に仕事兼休暇で行っているよ。秘書の向上くんは、確かライブに行くとか何とかで今日から二週間、休暇を取ったらしい」

 

そう。神谷はとある仕事でクワ・トイネに行っており、これが決まった神谷は「どうせならついでに休暇も合わせて取って、仕事終わらせたらそのまんまクワ・トイネを回ろう。生でエルフとかの亜人族みたいし」という事を考え、無理矢理休暇を捻じ込んだのである。

因みに向上は先述の通り、ライブの為に岡山まで遠征に行っている。今回のライブは福岡、岡山、広島、大阪の五つを約一週間で回るライブらしく、その全てに向上は参加している。しかも最終日の会場である大阪のライブでは、入場券の番号抽選があり、当たった者は楽屋に二時間招待されるという、ファンにとっては天国への切符が手に入ってしまうらしい。

この告知が出た後の向上は凄まじく、「全ての神々の力を借りてきます」と言って神社、寺、教会、モスク、シナゴークと最早「異世界の神」となってしまった神様に頼んで、当たるよう祈願しまくっていた。

 

「そうでしたか。ならこの書類、どうするかなぁ」

 

「どれ、私が判子を押そう」

 

「あ、じゃあお願いします」

 

「はいはい。あ、そうだ。孫がこの間のど飴くれたんだ。よかったら一つ、食ってみんか?」

 

「ハッ!頂きます」

 

 

 

同時刻 クワ・トイネ公国 リーン・ノウの森

『で、今回の研究対象というのは?』

 

『えぇ。クワ・トイネ公国を始めとする、ロデニウス大陸各地に伝わる伝承の中で登場する「太陽神の使い」に関する研究です。これから向かうエルフ族の聖地の森林には、その太陽神の使いが使った「空飛ぶ船」があるとかで』

 

神谷の問いに考古学者の中村が答える。神谷と中村、そして中村の助手数人はヘリでエルフ族が「神森」と呼んでいる聖地、リーン・ノウに向かっているのである。

 

『にしてもまあ、そんな神話の遺物が存在するんですな』

 

『魔法とかいう、ぶっ飛んだ物があるんですから。なにも特別不思議ではないでしょう』

 

『それもそうですな』

 

二人は雑談しながら、リーン・ノウの森を目指す。一方、リーン・ノウの森の前に広がる平原では、ハイエルフ族の少女ミーナと少年ウォルが神谷達を待っていた。因みにエルフあるあるでお馴染み、2人とも見た目こそ少女と少年に見えるが実年齢は100歳以上である。

 

「聖地にヒト族を入れるのは、嫌だな」

 

「ウォル!お客人の前ではそんなこと言っちゃダメよ!今日来るのは人間族といっても、転移してきた日本の人なんだから!!ロウリアとの戦争でもエルフ族を助けた恩人で、あのパーパルディア皇国をも打倒した、凄い国なのよ!!変に怒らせでもしたら、殺されてしまうかもしれないわ!!」

 

「わかった、わかったよ」

 

勿論そんな事はしないが、まあ当然の反応であろう。程なくしてヘリが二人の前に姿を現し、テンプレ通り「太陽神の使い!?」という反応をされる。

 

「どうも初めまして。大日本皇国文部科学省、歴史文化研究所、異世界担当部、ロデニウス大陸方面担当課、課長の中村です。本日は聖地であるリーン・ノウの森への来訪許可、並びにガイドまでして頂けるとの事で。日本を代表して、御礼申し上げます」

 

そう言って頭を下げる中村。てっきり横柄な態度でくると思っていたので、少し面食らう。後ろから神谷も出てきて、同じく挨拶を行う。少ししてから、いよいよリーン・ノウの森に入っていく。

 

 

「ほう。どうやらこの森、ただの聖地って訳じゃないな」

 

「あら神谷様、では何だというのですか?」

 

「要塞、それも最後の砦とも言える物では?」

 

神谷の解答に、二人の足も思わず止まる。

 

「なぜ分かったんだ?」

 

「この地形、一見平地に思えるが実は違う。緩やかに斜面になっており、しかも登り降りを小刻みに何度もするようになっている。さらに足場も体重が掛かると悪くなり、除去したのか作動したのかは分からないが、トラップの痕跡もあった。と言うか何なら、あっち側の方には多分まだある。更に木々の間隔も狭く大軍での行軍は不可能な上、アンブッシュしやすい草木が所狭しとある。これを要塞と言わずして、一体なんと言う?」

 

神谷の言っている事は全て当たっていた。この森は要塞として、戦争時に改造してあったのである。しかもそれはミーナとウォルの部族にしか伝わっていないことで、門外不出とされている事なのである。

 

「驚きました。あなた、本当に人間族ですか?」

 

「これまで何度か人間や他の種族の者を入れた事はあるらしいが、この事に気付いたのは一人もいないぞ。というか同じハイエルフやエルフの他の部族の者も、気付いた奴なんてそういったことに長けた者しかいなかったのに」

 

ミーナとウォルが神谷を驚きと羨望の目で見ていた。まあ神谷は本当に神の加護(主人公補正)を受けているから仕方ない。一向は更に最深部へと進み、やがて草で覆われた蒲鉾とドームが合体したような形状の物が現れた。ここで神谷は蒲鉾型の建物に、何か既視感を覚えた。それも何度も目にしたような物である。

 

「この中にあるのは、エルフ族にとっての文字通りの宝です。神話の時代、グラメウス大陸から出現した魔王軍はフィルアデス大陸の大半を侵略し、逃げ延びた人類を追ってロデニウス大陸にまで侵攻してきました。各種族は魔王に対抗するべく「種族間連合」を組織し、協力して魔王軍に戦いました」

 

そう言いながらミーナは蒲鉾型の建造物に手を添え、何かを唱えると草が生きているかのように蠢き、ガサガサと音を立てながら入り口が開く。

 

「しかし魔王軍は強かった。種族間連合軍は敗退を繰り返し、遂にこのエルフの聖地である神森にまで撤退しました。魔王軍もこの森を焼き払うべく侵攻し、いよいよ最期の時を迎えようとしていました。

エルフ族の滅亡に危機感を募らせたエルフの神は、自らの創造神である太陽神に祈りました。神は願いを聞き届け、この地に使者を遣わせたのです」

 

そう言いながらミーナとウォルは中に入っていく。神谷達もそれに続き、さっきまでの疲れが全て吹っ飛んで少年のようにドキドキしていた。そりゃあエルフから神話を聞きながら、その神話の遺物を見るとかもうそれはファンタジー以外の何物でも無く、そのファンタジーが現実となろうとしているのだから少年のようにもなる。

 

「太陽神の使者は空飛ぶ神の船を操り、雷鳴の如き轟きと共に大地を焼く強大な魔導をもって魔王軍を焼き払いました。使命を終えた使者達でしたが、神々の世界に帰る時、一つだけ故障して動かなくなった神の船がありました。私達の祖先達は今では失われた時空遅延魔法を使い、この先に保管しました。因みに伝承では「神の船はガラガラと大きな呻き声を上げて、動かなくなった」とあります。さあ、この先です」

 

ミーナの神話の話も終わり、いよいよ対面する時が来た。みんなどんな物かを想像していた。しかし神谷達の目に入ったのは、予想どころか考え付きもしなかった物があった。

 

「な!?」

「嘘だろ!?」

「待て待て待て待て!!なんでこれがあるんだ!?!?!?」

 

「そんな.......ありえない.......」

 

中村とその助手達が思っていた驚き方と違う驚き方をしていて、ハイエルフの二人もキョトンとしていた。

 

「(なあ、ミーナ。なんかこの驚き方、まるで知っていた物が此処にあるみたいだよな?)」

 

「(ウォルもそう思う?)」

 

「あの、何をそんなに驚いているのですか?」

 

「神谷さん、これは」

 

「ああ、間違いない。大日本帝國海軍の零式艦上戦闘機だ」

 

そう、目の前にあったのは紛れもない。先の大戦で連合国パイロットに恐怖を植え付けた、大戦時の名機にして日本の技術力の象徴の一つ。「ゼロファイター」の異名を持つ、ゼロ戦だったのである。

 

「アンタ、神の船を知っていたのか?」

 

ウォルが神谷にそう聞くと、神谷が「あぁ」と答えた。

 

「お前達の言う神の船。これはな、我々の国がかつて使っていた兵器だ。詳しく確認したい、近付いていいか?」

 

「お、おう。構わねーぞ」

 

ウォルに断りを入れ、神谷が零戦に近付く。まるで今にも飛び立ちそうな程にきれいに残っており、もう見られないだろうから、しっかりと目に焼き付けておく。

 

「ご苦労だったな」

 

手をエンジンの辺りに当てて、そう呟いた。そのまま各所を見て回ると、色々な事がわかった。

・着艦フックの存在とエンジンおよび翼端の形状から二一型である事。

・エンジンオイルのパイプが吹き飛んでいる事。

・パイプ以外の状態は非常に良く、そこさえ直せば多分普通に飛べる事。

・弾薬も使える事(検証済み)

・識別番号の部分が塗りつぶされて、所属がわからない事。

本当なら日本に持ち帰って詳しく解析したいが、流石に持ち帰る訳にもいかないので写真と映像をありったけ撮って帰る事になった。

 

「なあ、神谷さん。神の船、いや「レイセン」ってのは一体何なんだ?」

 

「我が国が今から遡る事、およそ120年前。大日本皇国の前身に当たる国家、大日本帝國が海軍用の戦闘機として開発した、当時世界最強の強さを誇った飛行機械だ」

 

「では何故それがこの地に?」

 

「そんなの俺達が聞きたい。だが一つ分かったのは恐らく俺達の国の先祖はこの地を訪れていて、空母機動部隊を含む大軍勢がいた事だ」

 

この後「もっと詳しく教えろ」とせがまれたので、掻い摘んで大東亜戦争について語った。この後計画している特別回にて、大日本皇国の辿った大東亜戦争の歴史は解説していくので、今回は解説を見送らせてもらおう。

さて、神谷の仕事は終わり一度マイハークにある駐屯地に帰還した。一日そこで兵士達に混じって訓練をしたり、兵員食堂で食事を取って兵士達との交流を深めた。因みに訓練には無断参加だったため、安定の鬼軍曹が「貴様は何者だぁ!!」と怒鳴った相手が神谷で、顔面が真っ青を通り越して抜け殻みたく真っ白になったりしたのは別の話。

 

 

「それじゃあ行ってくる」

 

「お気を付けて」

 

神谷は翌朝、40式小型戦闘車に乗って冒険に出発した。向かうはマイハークから車で二時間ほどにある街で「プランツァーリ」という場所を目指す。ここは冒険者に仕事を斡旋し、冒険者の管理を行う組織である「冒険者組合」の本部が置かれており、此処で周辺の地理情報を得ようという訳である。ファンタジー系ゲームの定番である。

まあ普通の冒険者と違って馬車は装甲車、剣は銃、鎧は機動甲冑と「最強でニューゲーム」状態であるが。

 

 

 

二時間後 プランツァーリ 冒険者組合本部

「へぇー、イメージ通りな建物だな」

 

目の前にはレンガ造りの二階建ての建物があった。看板には「冒険者組合」とある。面している通りには、明らかに衛兵や騎士とは違う鎧や武器を身につけた者が多くおり、異世界ファンタジー系のゲームやアニメで見る世界、そのまんまであった。

 

「あ、初めて見る顔ですね。冒険者組合への加入ですか?それとも、別の街の冒険者さんですか?」

 

中に入ると列が幾つかあり、適当な列に並んだ。どうやら冒険者に登録する側の列だったみたいで、事務員のような見た目の職員から声を掛けられた。因みに今の神谷の格好は機動甲冑を脱いでいるので、まさか現職の軍人とは思わないだろう。

 

「あ、いやいや。俺はこの辺りの情報を知りたいだけだ。何分、こっちの方は初めてでね。近付かない方がいい場所とか、見ておいた方がいい場所とか、簡単な略地図とか。そういうのが欲しいんだ」

 

「そうでしたか。少々お待ちください」

 

裏から大きめの地図を取ってきて、丁寧に色々教えてくれた。魔物の出る森とか、きれいな泉のある山とか、珍しい花々がさく平原とか、聞くだけで心が躍る情報だらけだった。

 

「まさかこんな丁寧に教えてくれるなんて。ありがとう、助かったよ」

 

「いえいえ。これも我々の仕事ですから」

 

「ところで、隣のアレは飯屋か?」

 

実は神谷達のいるカウンターの隣には、食堂のような物があるのである。そろそろ飯時で、しかもめっちゃいい匂いでお腹が空いてくる。さっきから気になって仕方がなかったのだ。

 

「えぇ。冒険者御用達の食堂でして、ここの職員と冒険者の皆さんは無料、或いは割引が利くんですよ。あ、勿論一般の方でもお金さえ払えば食べられますよ」

 

「ほお、なら昼飯は此処にするかな。オススメとかあるかい?」

 

「牛鹿の骨付きステーキに、トマトのチーズ煮、アップルピーのジュース辺りですかね?」

 

「よっしゃ!ならそれにするか。ありがとよ、姉ちゃん」

 

「はい。楽しんでくださいね」

 

そんな訳でちょっと早目の昼ご飯を取る事にした。で、いざ頼んでみたのだが想定以上の量が来てしまったのである。見るからに五、六人前はある。流石の神谷も2.5人前ぐらいが限度であり、残す訳にもいかないので困っていた。

 

(うわぁ、どうしよー)

 

「それでは我ら、太陽の短剣の結成を祝って!!!!」

 

「「「「かんぱーい!!!!」」」」

 

ふと後ろを見ると、たった今冒険者パーティーが誕生したようだった。少し耳を傾けていると、とある妙案を思い付いた。

 

「にしてもまあ、旗揚げだってのにジュース一杯ずつじゃ侘しいよなぁ」

 

「そうぼやくなって」

 

「うむ。お金は今から稼げば良いのであーる」

 

「僕達ならすぐ稼げるって」

 

とまあこんな感じで、旗揚げだというのに金欠でご馳走が無いそうなのである。でもって、こっちは食事が有り余っていて、おもしろい話が聞けるかもしれない。こんなの、声を掛ける以外の答えはない訳で。

 

「あのー、アンタら今日が旗揚げなんだよな?」

 

「え?えぇ」

 

「なのに飯が無いのは寂しいだろう?で、アンタらに依頼なんだが、飯を食うの手伝ってくれねーか?想定以上の量が来て、残すのも勿体無いし。どうだい?」

 

「おぉ!!お兄さん、いいのか?」

 

「いいぜ。食え食え」

 

そんな訳で楽しいランチタイム、スタートである。因みになんかリーダー格の男が遠慮しそうだったので、有無を言わさず席につかせた。

 

「それではもう一回乾杯しようか。ウォーラン、音頭を頼む」

 

最初に神谷の話し掛けた革鎧を身に付けた金髪の男、ウォーランにリーダー格の男が頼む。

 

「よしきた。えぇー、それでは!我ら太陽の短剣の結成と、この心優しきお兄さんとの出会いを祝して!!!」

 

「「「「「かんぱーい!!!!」」」」」

 

全員がグラスを掲げて「キン」という、いい音が鳴る。やはり宴会というのは異世界だろうと、ファンタジー世界だろうと楽しい物みたいで色々な話に花が咲く。今更だがパーティーのメンバーを紹介しよう。パーティーのリーダーで茶髪の双剣使いカーベー、さっきも紹介した野伏(レンジャー)ウォーラン、魔法使いの黒髪少年ペーター、回復系の魔法や大地を操る魔法を使う大男の森祭司(ドルイド)カロンの四人である。

 

「そう言えばさ、お兄さんの名前はなんて言うんだ?」

 

「ああ、そういや名乗るのが遅れたな。俺はアインズって言う。普段は小さなレストランをやっているんだが、偶にこうして旅をするんだ」

 

ウォーランの問いに、念のため偽名で答える。そりゃあ馬鹿正直に「日本軍の総司令やってます。神谷浩三です」なんぞ言える訳ないので、某死の支配者で至高の御方の頂点に立つ人物の名前を拝借する。

 

「アインズ殿、これまで旅してきた中で一番面白かったのは何であるか?」

 

今度はカロンが旅の話を聞いてくる。勿論こっちの世界なんて、戦争か政治交渉でやって来ただけなので適当に作り話を話す。

 

「そうだなあ、やっぱ温泉かなぁ」

 

「温泉、とは何ですか?」

 

パーティーの参謀でもあるペーターが新たな知識を得るべく、聞いた事もない温泉について質問する。

 

「簡単に言うと火山とか地中とかで温められた地下水が吹き出した泉なんだが、この泉は不思議と疲労が取れるんだ。肩凝りとか腰痛とかにも効いて、中には万病を治す物もあるらしい。まあ最後のは流石にデマだろうがな」

 

「そんな泉が.......」

 

「アインズさんは、その泉に入られたのですか?」

 

「おう。メチャクチャ気持ちよかったぞ」

 

他にも色々な日本の事を異世界風に言って、適当に話を合わせる。その後も故郷の話やバリエーション豊かな話題で盛り上がった。そして話題は太陽の短剣の結成に関する話へと進んでいった。

 

「そう言えば、なんで「太陽の短剣」ってチーム名なんだ?なんか伝説の短剣にそんなのがあるのか?」

 

「違いますよ。僕達はみんな太陽神の使い、日本軍に助けられた経験があるんですよ」

 

カーベーがそう答えた。聞いておいてアレだが、一応薄々勘づいていたので「あー、やっぱり」と思ってた。

 

「私とペーターはエジェイで守ってもらい、ウォーランは遭難していたところを助けてもらって、カロンは弟を魔物から守ってくれたんです。僕達はまだ弱いけど、いつか日本軍のように困ってる人を助けられたら良いなと思って、この名前を付けたんです」

 

「そうか。嬉しい限りだ」

 

「「「「え?」」」」

 

(あ!ヤベッ!!!!やらかした!!!!!)

 

「い、いやな。俺のとこのレストラン、近くに日本の基地があるんだ。お陰で常連さんには、多くの軍人さんが居るんだ。その人達に今の話を聞かせたら、絶対喜ぶだろうなってな」

 

「そういうことであるか」

 

「てっきり日本軍の関係者かと思ったよな」

 

そう言って四人が笑ったので、ノリで笑っておくが内心では「っぶねーー!!乗り切ったぞヒャッホーーーー!!!!!」と狂喜乱舞状態であった。「隠し事が下手」と思うかもしれないが、神谷はあくまでも兵士(ソルジャー)であって、諜報員(エージェント)ではないので仕方ない。

段々と料理も減ってきて、名残惜しいが宴も終わりが見えてくる。そこで、一つ問題が発生した。

 

「きれいに残ったな。それも一切れ」

 

「食べたい人ー」

 

ウォーランの問いに、神谷以外の人間が手を挙げる。

 

「全員欲しいんだね。なら」

 

「ジャンケン、であるな」

 

そんな訳で最後の肉一切れを巡る、男達の別に熱くもなければ仁義がある訳でも無い訳でもない、普通のジャンケンが始まった。まあ結果としてウォーランが勝ったのだが、別にこれと言って取り沙汰する事でもないので省略する。

太陽の短剣は簡単な討伐依頼の準備の為、拠点の宿へと帰っていった。一方神谷は受付のお姉さんに教えてもらった場所を巡るべく、街の外にステルス迷彩で隠してある40式の下へと向かった。しかし異世界というのは暇しないもので、ふと路地裏を見るとエルフの女性が男3人に連れ込まれていくのが見えた。なんか嫌な予感がしたので、後をつけてみるとちょっと見過ごせない事が起きた。

 

「さあ、服を脱ぎたまえ」

 

「あの、これで本当に村は救われるんですか?」

 

「ああ、我ら太陽神の使いたる日本軍が救ってあげるさ。だから、な?」

 

「代金は貰わないと、なぁ?」

 

まず皇軍たる日本軍人が強姦をすること自体あり得ないのだが、多分読者の方もご存知の事だろうから、今回の論点はそこではない。何を隠そう、この辺には日本軍の基地はおろか、出張所や派遣されてる兵士は一人もいないのである。一応男達は迷彩色の服を着てはいるが、どう見ても日本軍で採用されてる制服では無い。というか迷彩の色が若干違う。

つまり考えられるのは、休暇中のバカ兵士が日本軍を勝手に語ってヤらかそうとしているか、何処ぞのチンピラが日本の紋章を傘にヤらかそうとしているかの二択である。まあどっちにしろ許されざる行為であるが、どっちかによって少し対応も変わってくる。ならやる事は一つ、証拠を集める事である。

 

「アンタら、日本軍なのか?」

 

「あん?なんだ、テメェ」

 

「俺はアインズって言うんだが、何を隠そう日本軍のファンなんだ!」

 

普通に素顔で登場しているので日本軍の関係者、というか日本人なら誰もが神谷だと気付く筈である。しかし気付く気配はない。今度は鎌掛けを行う。

 

「所属は何処なんだ?」

 

「あ、え、えぇーと。り、陸軍第一師団だ」

 

「へぇー!なら、あの「北鎮部隊」か!!」

 

嘘である。ご承知の通り北鎮部隊とは、北海道を守護する陸軍第七師団、あるいは海軍陸戦隊第七師団の別名である。第一師団は関東方面が管轄であるため、最早「北」ですらない。こんな事も分からないようでは、どう見たって後者である。

 

「引っかかったなクズ共」

 

さっきまでの興奮したような声色から、一気に殺気の混じった低い声になる。チンピラ三人も「え?え?」と、状況を理解できていない。

 

「お前ら、誉高き天皇陛下の指揮する日ノ本の守護者が背負ってる代紋に、クソを塗りたかったんだ。どうなるか、分かってんだろうな?」

 

「え?何、アンタ日本軍なのか?」

 

「そうだとも。そこらの虫けらよりも愚かな能無しのクズに、学習の機会を与えてやろう。俺の言った「北鎮部隊」とは北海道を守護する陸軍第七師団、もしくは海軍陸戦隊第七師団の異名だ。第一師団の管轄は首都を始めとする、関東方面で北ではない。よう覚えとけ」

 

この辺になってやっと能無し性欲丸出しゴリラ三人衆も自分達が不利になった事を理解したのか、懐に隠していた短剣で一斉に襲い掛かった。だがしかし相手は日本軍のトップでありながら、最前線でもバリバリ現役で戦う男。しかも刀で弾丸を切り裂く程の反射神経と動体視力を兼ね備えた、最強の将軍。そんな奴がレミール&ルディアスと同レベルの性欲丸出しクソ野郎に負ける筈もなく、メタルギアのBIG BOSSみたく連続CQCで無力化してロープで縛っていた。

 

「あ、あの!助けてくれてありがとうございます!」

 

軽く存在を忘れていたエルフの女性が頭を下げて、お礼を言ってきた。

 

「気にするな。俺はコイツらが日本の代紋を勝手に使って、好き勝手やろうとしていた事が気に食わなかっただけだ。日本軍の人間は弱者を痛ぶるような、蛮族みたいな真似は決してしない。というかする奴がいたら、問答無用でぶっ飛ばすような組織だ。だからこれからは、日本軍を騙るクズについていくなよ」

 

「は、はい!」

 

「じゃ、俺はこれで。コイツらを衛兵の詰め所に送りつけてやらねーと」

 

そう言って三人を無理矢理担いで、衛兵の詰所へと向かう。

 

「あ、あの!せめて、お名前だけでも」

 

「神谷だ」

 

そう言って神谷はその場を去った。だが神谷は知らない。この出会いが、この後の休暇を台無しにする出来事の前兆になるとは。

 

 

 

 

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