第三十一話極帝現る
一ヶ月後 統合参謀本部
「んで、どうすんよ。この派遣艦隊」
「どうしましょうか」
現在統合参謀本部の長官執務室では、海軍のトップである山本提督との簡単な話し合いが行われていた。話している内容は衛星が発見した、断崖絶壁に囲まれて周辺国家から物理的に遮断された謎の国家に派遣する艦隊について、である。
「そういえばワイバーンを用いて、派遣するという案はどうなったのですか?」
「あー、アレな。ロウリアには色々理由つけられて断られるし、パーパルディアはそれどころじゃないし、他の国家に関しては竜母を保有していない。態々この為だけに、うちの空母を竜母仕様に改造するわけにもいかんだろ。ってか予算おりねーよ、絶対」
「デスヨネー。しかしながら、ヘリコプターでお邪魔する訳にもイカンでしょうよ」
外務省からのオーダーとして「できるだけ現地民に不安を与えないようにしてほしい」と来ており、これがある以上ヘリや輸送機で飛んでいくわけにもいかないが、現実問題として飛んでかないと島に入れない。島の周囲を囲む断崖絶壁の山は、1500mクラスのデカい山で「登って降りて入る」というのは無理がある。
そこで候補に挙がったのがワイバーンなのだが、ロードにしろオーバーロードにしろ航続距離がどう足掻いても届かず、必ず竜母による支援が必要となる。勿論、空中で馬借みたいな事もできる筈ない。いや、竜だから竜借って言うべきだろうか?
(あれ、これってワンチャン俺の魔法で竜作ればイケるんじゃね?)
突如神谷に天啓が降る。ファンタジーのあるあるとして、大体魔法が使える悪魔とか魔族というのは使い魔とか何かしらの下僕、例えばアンデッドとか悪魔とかを召喚して戦わせたり、盾にしたりしている。
でもって神谷の魔力というのは、なんか魔王を一撃で倒せるらしいし、多分イケる筈なのである。
「まあ、考えても仕方ない。で、今使える海軍の戦力は?出来れば横須賀の第一主力艦隊から抽出したい」
「そうですなぁ。今回の任務なら居住性の良い艦が最適でしょうから、大和型の長門と陸奥をつけましょう。後は他の手空きの空母と護衛の駆逐艦、それから摩耶型をつければ良いかと」
「まあ妥当だわな。後は陸戦隊用の揚陸艦でも付けりゃ、最悪の緊急事態にも対応可能だし」
「では、取り敢えずそういう風に手配しておきます」
「頼むよ。こっちは妙案浮かんだし、中に入る秘策の準備をしておく」
「わかりました」
そう言って山本は退室する。神谷は軍の演習場に連絡して、さっき考えついた方法の実験の準備を始める。前も書いた通り、今のところは国家機密扱いなので見られないように細心の注意を払って実験を行う。
なんか適当に竜が出るイメージを頭に描いて、試しに魔法陣を展開してみる。
「うおぉ!!!!なんかスゲー!!!!!!!!」
適当にやってみた結果、大小様々な魔法陣がいくつも現れて如何にも大物が出てきそうな感じがする。ホント、ファンタジー系アニメとか映画の「最大最強の秘奥義最終魔術を使う瞬間」みたいなレベルの大量な魔法陣である。
こういうの大好き、いや好きじゃなくても男なら誰もが興奮するようなロマンの塊を前に神谷も大興奮である。
「おぉ!?!?!?なんかドラゴンっぽいシルエットが浮かんできた!!」
「我を呼ぶは貴様であるか、人間よ」
「あ、あれ?竜って喋るっけ」
一応ドラゴンっぽいのは呼び出したが、なんか様子がおかしい。これまで調べてきた竜の生態によると、まず竜種で喋るのはほぼ存在しない。ワイバーン、ワイバーンロード、ワイバーンオーバーロード等は人語を理解しない。精々、普通の動物と同じ程度である。
唯一喋る、というか念話を使ってだが、会話できるのは風竜等の「真竜種」と呼ばれる上位種のみである。しかし目の前の竜は、念話ではなく普通に喋ってる。
「どうした。我を呼び出しておいて、何も言わぬとは。良い度胸よのう」
「あのー、ドラゴンさん?なーんか見た感じ、超絶強そうな気がするんですけど、マジでどなたでございましょう?」
「ふん。知らぬのに、我を呼び出すか。矮小なる者よ。恐れと感嘆を持って、我が名を聞くが良い。我こそは世界に名だたる四大属性竜の頂点に君臨せし真なる竜。竜神皇帝、極帝である」
(なんかヤベェの来たぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?)
もう何が何だか分からないので、心の中で大絶叫である。顔には出してないが、内心では超絶パニックである。
(いやいやいやいやいや!ちょい待て!!なんで竜神だか皇帝だか知らんけど、見るからに竜のキング的な奴が来てんだよ!?俺、別にそんなの呼び出した覚えないぞ!?恐い、異世界恐い!ってか、それ以前にこの始末どうすんよ!?!?お帰り頂くのは、多分無理だし。ってか言った瞬間に)
「帰ってください」
「嫌だ。殺す」
ファイヤー
ボオォォォォォ
「おっぽいぽーい!!!」チーン
(って事になりかねん。ってかなる!)
「どうした、我が恐ろしいか?ふはは、いやそうであろうよ。だが、我も驚いておる。なにせ永い時を生きたが、人間はおろか、ハイエルフや竜人族にも呼び出された事はない。まさか、人間とはのう。その方、名前くらいは聞いてやろうぞ」
なんか思ってたより優しい(?)のか、案外フレンドリーな極帝さん。めっちゃ上から目線なのを指摘した瞬間にファイヤーされてローストされかねないので、スルーして自分も名乗っておく。
「お、おう。俺は浩三。大日本皇国、統合軍総司令長官、神谷浩三だ!」
「大日本帝国、ではないのか?」
「帝国は昔の国名だ。今は皇国となっている」
極帝から「大日本帝国」の名前が出てきたのは驚きだが、いつぞやのエルフの聖地で零戦もいたし、すぐに冷静になれた。しかし帝国の名を知っているのなら、ある程度は話が通じるかもしれない。そんな訳で交渉、というかあわよくば穏便に帰って頂く事にする。
「あ、あn」
「まあ呼ばれた縁だ、神谷とやら。我の額に手を当て、魔力を流すがよい。質と量を見てやる」
「あ、はい。って、デカッ!」
なんかいつの間にか魔法陣から出てきていたのたが、思ってたよりもデカかった。ワイバーンが大体15mぐらいなのに対して、どう見ても100mはある。色は赤いが、全身が並みのワイバーンよりも硬そうである。
例えリアルのワイバーンを見た事なくても、一発で強いとわかる程度には凄い強そうな見た目である。
「そんじゃま、行くぜ」
「存分にやれ」
とは言うものの、実際魔力の流し方なんて知らない。だからもう、半ばヤケクソである。脳内で体内に巡る血管を竜の額から竜に巡る血管に突き刺して、血液を直接送るイメージを浮かべてやってみる。
「こ、これは!?」
「ウオォォォォォォォォ!!!!!」
「いや、ちょ、待って!やめて!」
「ウオォォォォォォォォ!!!!!」
「まって、お願い。逝っちゃう。アッ.......」
5分程度の時間が過ぎただろうか?試しに極帝を見てみたら、
「アボガバゴボゴファ.......」
なんと泡吹いて白目剥いて痙攣してた。さっきから予想外な事しか起きてなかったので、もうなんか驚くのも疲れたのか「なんかもう、いいや」ってなった。
「神谷浩三殿。我と友誼の契りを結ばれたい」
「は?」
「先程の魔力量、感服した。是非、我を友としてお認め頂きたい」
てっきり「我と主従の契約を」と来るかと思ったが、まさかの妖怪ウォッチよろしく友達契約だったので「まあ竜の王様と友達だったら、この先異世界でも怖い物なしだろ」と考えて、契りを結ぶ。
てっきりメダルでもくれるのかと思ったが流石にそれはなく、特殊な魔法で契約を結ぶそうだ。
「今から貴様に友として、互いに魔法をかける。この魔法は言わば、互いの普遍の絆の証。貴様が我を、我が貴様を必要とした時に互いに助け合える力を施す物だ」
「魔法って便利〜。で、どうすれば具体的には良いんだ?」
「少し待て」
そう言うと、目の前に魔法陣を作り出した。なんかそこに自らの血を垂らすと、契りとして成立するらしい。
ポタッ
ポタッ
互いに魔法陣に自らの血を落とすと、魔法陣は血を飲み込んで消えた。
「契約完了だ。我が友よ」
「案外あっさりだな」
「友よ、いきなりだが一つ願いを叶えてはくれまいか?」
「言ってみろ」
「この国に我を住まわせてくれないか?」
自分の求めていた答えとは180度真反対の答えが出てきた事に、冷や水を頭からぶっかけられて、ついでにお寺の鐘をつくデカい丸太みたいなヤツで脳天をど突かれたような感覚に陥る。
「まさか「嫌だ」とは言わぬよな?嫌だと言うなら、友以外の民を殺す」
「いや、全然大丈夫です。はい。だけど、その姿はどうにかしてくれ。街中にアンタみたいなドラゴンが現れようものなら、大パニックになる。うん」
「ほう。ならば」
そう言うと極帝の体が魔法陣に包まれると、50cmほどの大きさにまで小さくなった。
「これなら問題あるまい?」
「うへぇ便利」
身体が小さくなったせいか口調は変わらないが、さっきまであった謎の威圧感は消えた。ぱっと見、翼の生えた赤いトカゲである。翼生えてる時点で、トカゲとは程遠いが。
「友よ、腹が減った。何か食う物はないのか?」
「食う物、ねぇ。ってかドラゴンって何食うんだ?」
「なんでも食べるぞ。魔物、人間、動物、野菜、草、木の実。普通の生物が食べる物は、我も食べれる。しかし一番は肉だな」
「頼むから、間違えても人間と動物でも生きた奴を食うのはやめてくれ」
「ふむ。残念だが、仕方なかろう」
なんか超残念そうなのが、超絶怖いがこの際気にしないでおこう。うん、気にしてはイケない。さてさて、時間は巡ってその日の夜。夕食を家で取ってる時に、嫁候補というか婚約者というか、未だ宙ぶらりんのハイエルフ五人姉妹(通称「五等分の花嫁」と従者間では呼ばれてる)に極帝について聞いてみる。
「なぁ、お前らって極帝って竜知ってる?」
極帝の名を出した瞬間、5人全員が固まった。その顔はまるで、何かを恐れているような顔である。
「えっと極帝って、あの極帝でしょうか?竜神皇帝の」
「うん。なんか知ってる?」
「極帝というのは、この世に存在する全ての竜の頂点に君臨する竜です。ワイバーンを超える強さを持つ真竜種を統べる4体の竜神を統べており、その咆哮は大地を、海を、空をも切り裂くと言われる竜です。
でも、どうして今になって極帝の話を?」
ミーナが答えてくれたが、逆に質問してきた。日本では竜は御伽噺程度の存在であり、極帝どころか竜神の話も知らない筈。それは軍の高官たる神谷とて同じ筈なのだが、どういう訳か聞いてきたのだから当然である。
「いやぁ、それがさ。その極帝と友誼の契りを交わしちゃった。ハハハ」
「アンタ、全然笑えないわよ」
「浩三様、流石にそれは笑えませんよ」
「面白くない冗談は嫌われちゃうぞ?」
エリス、ミーシャ、レイチェルから突っ込まれる。だかしかし、事実だから仕方ない。百聞は一見に如かずって事で、後ろに居てもらっていた極帝に声を掛ける。
「我こそが竜神皇帝、極帝である」
しかし出てきたのはチンマリした翼の生えたトカゲ程度。5人は偽物と思ったらしく笑っていたが、極帝がオーラを出すと一転して平伏しだした。
「えぇ。お前、マジでスゲーのな」
「フッ、我が本気出せばこんなものよ」
「その本気のせいで、ウチの嫁候補というか、婚約者というか、なんか未だ定まってない姉妹達が怯えてるんですが」
「そのような小さい事、我は気にせぬ」
「いや、気にしろ」
目の前で繰り広げれる普通の会話に、5人は内心気が気じゃなかった。だがしかし、一方で1つ思った事もあった。
(((((この人、本当に何者ですか(だ)(なの)!?!?)))))
普通に考えて、もう現実ではあり得ない事である。地球にエイリアンが攻め込んできて、ついでに地底人と悪魔も攻めてきて、神様が攻めてきて、何故か一緒にサムライが突撃してくるレベルのカオスである。
何を言ってるかわからないだろうが、本当にこんなレベルの謎度とカオスな状態なのである。因みに極帝は日本の食事に大満足だったらしい。
翌日 14:00 首相官邸
「よう。久しぶりだな」
「そうだな、浩三」
「やっぱりお前が最後か」
この日、三英傑の3人はいつも通り官邸に集まっていた。何気に集まったのは天皇陛下の御前にフィアームを連れていった以来である。でもって、今回集まったのは連絡会に近い。というのも現在の政治、軍事、外交に関しては実質的に動かしているのは、今いる3人なのは知っての通りだろう。
それ故に溜まる愚痴や問題の報告なんかを行う、別に誰かが言い出した訳でもない、なんか気付いたらそうなってた緩い会である。そんな訳で官邸でやる事もあれば、カフェや飲み屋でやる事もあるし、各々の家に遊びに行って、ゲームしながらやる事もある。ただ今回は、神谷の内容が国家機密の話なのでこうなった。
「さて、じゃあ取り敢えず俺から行くか。外交の方は特に滞りないな。ミリシアルもエモールも、既に別の者に引き継いで俺の手を離れてる」
「こっちは近々、衆議院選挙があるぐらいだな。応援演説やら何やらで俺は忙しいが、お前らには関係ないだろうよ」
「じゃあ最後は俺か。悪いが、俺の所はヤバいぞ。まずエモールに「聨合艦隊構想」がバレかけた」
「え?ヤバくね」
「うそやろ」
さてさて、いきなり読者諸氏は置いてけぼりを食らっているだろう。この「聨合艦隊構想」を説明するついでに「皇軍増強計画」について、説明しておかねばならない。「皇軍増強計画」とは呼んで字の如く、皇国軍全体の軍備増強計画であり、聨合艦隊構想はその中の計画の1つである。
元々は聨合艦隊構想のみだったが、まさかの異世界転移という予想できない大事件によって計画は大きく加筆され、結果として1つの計画に纏まったのである。では簡単に、どんな計画かを解説しておこう。
陸軍
・機動甲冑の防弾性能を現在の7.62mmクラスから12.7mmクラスへの強化ができる追加装甲の開発。
・多脚戦闘兵器の開発。
・本土防衛用の新たな部隊創設と、各地への兵器の固定配置
海軍
・聨合艦隊の総旗艦となる究極戦艦の建造。
・熱田型、赤城型、大和型への新兵装の搭載。
・新たに追加で十個遠征打撃群分の艦隊建造。
空軍
・特殊部隊の火力支援用ガンシップの開発。
・重装甲で重武装の「アサルトガンシップ」とも言うべき航空機の開発。
・マイクロ多目的ミサイルと発射機の開発。
海軍陸戦隊
・部隊の大幅増強。
・新型上陸用舟艇の開発。
・敵艦への海上での乗り込み、制圧を行える特殊部隊の創設。
特殊戦術打撃隊
・新たなメタルギアの開発
宇宙軍
・宇宙軍事基地の建造。
といった具合に、中々にヤバい具合の増強計画である。旧世界の頃は他国との協調の観点から、余り大々的に軍備増強はしていなかった。海軍だけは、日本が海に面している理由から大々的にやっていたが、メタルギアの新規開発やら宇宙軍事基地なんかは作るつもりはなかった。
だがしかし異世界転移で、何もかも状況が変わった。パーパルディア皇国戦ですら核ミサイル擬きすら飛んでくる始末であり、これに神谷は焦った。そこで元々水面下で進んでいた全ての軍備増強計画に大量の予算を投下して、開発を一気に加速させた。その結果が、これである。
では最後に「聨合艦隊構想」について、解説しておこう。聨合艦隊構想は、現在の八つの主力艦隊を統合運用するための計画である。現在皇国海軍が熱田型や赤城型を筆頭した艦を中心に、一個艦隊に237隻が在籍している。しかしこれらが何かしらの1つの敵に、一斉に攻撃を仕掛けるとしよう。こんだけの大艦隊を統率するのは並大抵の事ではなく、指揮に特化した艦が何かと都合が良いのである。そこでこの計画が生まれた。
「まあバレたって言っても、例の究極戦艦の存在だけだがな。適当にはぐらかしたし、詳細なスペックはバレてない。何か空間の占いとかいう、未来予知的な占いで視えたんだと」
「魔法スゲーな」
「それは防ぎようないわ」
理由が理由だけに、今回は誰が悪いというのがない。流石に魔法の、しかも未来予知で見られたんなら対策の仕様がない。そのため、3人は笑い飛ばしていた。まあ実際、スペックを知られても再現は出来ないだろうし、スペック自体も「五連装砲搭載の超大型艦」ぐらいしかバレてない。この程度なら、問題にならない。
「でもってもう一つ。めっちゃプライベートなんだが、俺多分結婚するわ」
「!?」
「マジ?」
「因みに相手はこれな」
そう言って、スマホの写真を見せる。ナゴ村で撮った写真で、5人全員が写ってる。
「エルフやん!」
「で、相手はどの娘だ?」
一色はエルフの写真に大興奮し、川山は誰かと聞いてくる。
「全員」
「「.......はい?」」
現実離れした回答に2人が言った言葉は同じで、同時であった。日本の常識で考えて、5人と同時に付き合うのは不倫や浮気である。ただのヤリチンクソ野郎で女泣かせの最低クズ男という扱いを受ける。まあ探せば奥さん公認で不倫OKという人も居るのかもしれないが、普通の我々一般人の捉え方では、ただただヤバい奴であろう。
しかし目の前の男は、長いこと親友として同じ志を持って戦ってきた同志でもある。少なくとも、そんなクズな行いはしない。だがしかし、目の前の写真の女性を「全員」と答えたという事は、つまり全員と結婚するという事になる。この事実が2人を混乱させた。
「まあビックリするわな。俺もこうなる事になった時は、マジで驚いた」
神谷は2人に経緯を全部話した。気せずして出来上がったエルフハーレムに、後半は爆笑していた。特に一色に至っては、一部から反発があった「郷に行っては郷に従え法」だったので、それを軍の高官であり国民からも根強い人気のある神谷に適用されているので、良い例として使える事にも喜んでいた。
「あ、それからな。例の絶海の孤島状態の国家に行くヤツ。アレ、ドラゴンを使う事にしたから」
「え?断られたり、それどころじゃなくて来る予定は無いって聞いたぞ?」
川山がそう答えた。今回の交渉は川山ではない別の外交官が担当しているので、詳しくは知らないが断られたのは聞いていた。
「その通りだ。そこで自前のを使う事にしてみたんだが、ちょっとヤバい事になった」
「じ、自前?」
「ウチにワイバーンは居ないだろ」
川山と一色が首を傾げる。因みにワイバーンは知っての通り、戦闘機よりも弱い。しかも武器である火炎放射と導力火炎団も使い勝手が悪いし、生物なので餌も必要だし糞もする。その為、日本では運用される可能性は限りなくゼロに近い。
「ほら。俺、魔法使えるだろ?「試しに魔法でなんか適当にやったら行けっかなー?」って思って、試しにやってみたら竜は出てきた。うん出てきたよ。しっかり空飛ぶヤツ」
「出たなら良いじゃん」
「出たのが子供だったとか?」
「いや。竜は竜でも、竜神皇帝「極帝」とかいうデカいのが出た上に、ミーナ、さっきの写真の一番右にいる奴曰く「世界中の竜種と真竜種を統べる4体の竜神を統べる竜」らしい。
でもって、成り行きで何か主従契約しちゃった」
「「.......はい?」」
もう後半から2人は理解が追い付かなくなってきた。何か親友がエルフハーレムを作ると思ったら、何か謎に凄そうな竜と主従契約をしちゃった。こんな状況、考えた事もなかった。いや、考える事自体おかしな話である。
因みにヘルミーナ曰く「竜神種とは主従契約が出来ず、対等の立場となる友誼の契りを結ぶ事が、他の魔獣との主従契約に当たる」らしい。
「いやいやいやいや、え?マジで言ってる?」
「マジで言ってる。ってか、こんな冗談を言う奴って厨二病を拗らせに拗らせたヤツぐらいだろ」
「お前は一体何を目指してんだ。世界征服でもする気か」
川山と一色からは、その後も色々言われた。まあ神谷自身も中々にビックリな事だったので、正直言って頭を抱えたかったが何か一周回って笑ってた。その頃、極帝は神谷邸で寿司を食ってた。
翌日 羽田空港
「態々お見送りありがとうございます、神谷さん」
「いえいえ。我が国の客人であり、私の同志が帰国するってのに、見送りに来ない訳にはイカンでしょう。本当なら一色と川山も来たがってたんですが、生憎どっちも仕事で」
「そうでしたか。是非、一色殿と川山殿にも宜しくお伝えください」
この日神谷は観戦武官の任務を終えて帰国する事になった、マイラスとラッサンの見送りに来ていた。
「そうだ。餞別代わり、と言っちゃ何ですがこれを是非お持ちください」
そう言って大量の本を入れたキャリーケースを差し出す。
「これは?」
「旧世界の各国の兵器のスペックや設計図、取り分け第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期、第二次世界大戦中の兵器に関する物を入れてあります」
この言葉に2人は驚いていた。普通に考えて、こういう設計図は金を積んでやっと一枚貰えるか貰えないかであり、こんな風にポンと渡せる物では無いからである。
「しかし、何故こんな物を?普通に考えて、ヤバいでしょう」
「いえいえ。だってスペックなんてネットで検索すりゃ誰でも見れますし、設計図だって流石に本屋には置いてないですが取り寄せれば誰でも買えますもん。ってか、この程度の兵器は使う事無いですし」
「確かにそうでしょうけど」
ラッサンが唸るが、その横でマイラスがキラキラした目で神谷を見つめていた。
「あ、あの。戦艦の設計図は勿論」
「入ってますよ。大和、長門、伊勢、扶桑、金剛などの日本の各型は勿論のこと、当時の同盟国であったドイツとイタリア、それに敵だったフランス、アメリカ、イギリス等々。とにかく大量に入ってます。
あ、後、絶対に作らない方がいい珍兵器や迷兵器の資料も入ってますから、偶に見てみたりしてください。多分、大爆笑ですよ」
この言葉にマイラスは狂喜乱舞していた。
「やっぱり」
「戦艦は」
「「男の浪漫!!!!」」
やっぱり安定の硬い握手をガシッとする2人。お約束である。
「さてさて。統合軍からの餞別はこれですが、もう一つ私が個人的に用意した物があります」
そう言って神谷は後ろに控える部下に合図を送ると、部下が二太刀の日本刀と、2本の小刀を持ってきた。
「我が国の職人が作り上げた品です。どうぞ、受け取ってください」
まさかの刀の登場に、2人とも興奮気味で刀を受け取る。少しだけ抜いてみると、白く輝く刀身に何でも切り裂けてしまえそうな刃。それに綺麗だがシンプルな飾り付けが施された沙耶と持ち手に、ただ感嘆の声を上げる事しか出来なかった。
「こういうのなら、正装時や儀礼の際に着けられるでしょう?折角日本に来たんですから、他の軍人に日本に来た証拠を見せつけてやってください」
「このような品を用意いただき、本当にありがとうございます」
「これなら他の奴らに自慢できますね」
「気に入って頂けたようで何よりです。さあ、そろそろ出発の時間だ。どうぞ、お気を付けて帰国してください。
ああ、そうだ。今度、プライベートで遊びに来てくださいよ。今度は軍関連でも観光スポットでも、日本中好きな場所を案内しますよ」
こうしてムーから来た2人は帰っていった。しかし、3人の再会は思ってたよりも早かった。実は今度行く絶海の孤島への国交開設の後、ムーと日本は合同演習を行う事が決まり、今度は神谷がムーに行く事になったのである。詳しくはまた別の機会で書くとしよう。
数週間後、神谷と川山は絶海の孤島へと艦隊を引き連れて旅立った。しかし、神谷は知る由もない。この地で色々修羅場に巻き込まれ、結構面倒な事になる事を。