最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第三十二話ヤベー奴降臨ス

さてさて。それでは今回は場所を一気に変えて、日本を飛び出して3000km北東方向に行ってみよう。そこにあるのは1500m級の山がカルデラの如くリング状に広がった地形であり、中にある物をまるで隔離するかのように天然の壁として機能していた。

山の中には大体本州の半分強の広さの島があり、カルアミーク王国、ポウシュ国、スーワイ共和国の3国が存在する。でもってこの3国は日本を除く他の国家には存在を知られておらず、またこの3国も山の向こうには国がある事を知らなかった。

 

 

 

マイラスらが帰国した数週間後 カルアミーク王国 王都アルクール ウィスーク公爵家

「エネシー、朝ごはんの時間よ!!早く降りてきなさい。」

 

「はーい」

 

母親に呼ばれてエネシーは、読んでいた本をベッドの上に置き食堂に向かった。読んでいた本の表紙には「英雄の伝説」と書いてあった。最近ハマっており、何度も何度も読み返している。そんなお気に入りの本であり、エネシーは20歳でありながらこの本に出てくる竜騎士の英雄に憧れていた。

 

「エネシー。あなた、小さい子が読むような本ばかり読んでないで彼氏の1人でも見つけてきたらどうだい?もう20歳なのだから」

 

「まだ早いよ」

 

「早いもんですか!女盛りの時期に男が出来なかったら、男なんて一生出来やしないよ!!

ちょうど1カ月後に、王国建国記念祭りがあるでしょう?カルアミーク王国の1大イベントよ。一緒に行けるような男はいないの?」

 

「うん、いないよ」

 

母親の「彼氏見つけろ」攻撃にウンザリしながらそう答える。なんとこのエネシー、20歳だというのに未だ本の中の英雄と結婚したがるような結構痛い子なのである。

両親としては「孫の顔を見たい」等の親心もあるが、もう一つ大きな理由として家を継いでもらう必要があるため、ここまで真剣に推してくるのである。ウィスーク公爵家というのは王国に存在する三つの大貴族の筆頭貴族であり、エネシーはその御令嬢だ。家を継いでもらわないと、色々面倒なのである。

 

「いないなら、建国記念祭で見つけておいで!」

 

「うーん、そういう出会いってなんだかなぁ」

 

「?」

 

「やっぱりこう、劇的な出会いがしたい!心が揺さぶられるような」

 

「あんた、劇みたいな事を言ってないで、現実を見なさいよ」

 

母親が割とガチで呆れながら突っ込む。本当に心の中で「我が娘ながら、ちょっとヤバいわね」と思っている。親からもそう見られるエネシーが、どんだけ痛いか分かるだろう。

 

「そうそう。最近霊峰ルードの火口付近に、魔物が集まっている事が確認されているんだ。王都からは遠いから問題は無いと思うが、念のために王都から勝手に出てはいけないよ。特にエネシー、気をつけなさい」

 

「はーい、ごちそうさまー」

 

エネシーはそそくさと自室に戻り、ベッドの上に置いてあった本を開く。先程書いた通り本にはエネシーの好きな英雄の他にも、王国の歴史の中で起きた様々な英雄的出来事が記されている。

エネシーが好きなのは本の最後に記された予言者トドロークの予言、王国の危機について記された1文だった。

 

異界の魔獣現れ王国に危機を及ぼさんとする時、天翔る魔物を操りし異国の騎士が現れ、太陽との盟約により王国のために立ち上がる。

王国は建国以来の危機に見舞われるだろう。しかし異国の騎士の導きにより、王国は救われるだろう。

 

意味のよく解らない文章であるため、一般的にはとんでも予言者として通っていたが、エネシーは信じていた。ただし、その信じ方が異常である。イメージ的にはカルト宗教にどっぷりハマって、教祖だとか主神に全てを捧げんばかりの狂信者レベルである。

 

「私の運命の人は、きっとこの騎士様よ!王国が危機になるのは困るけど、必ず私のナイトは現れる!!」

 

エネシーは少し、いや結構な邪気を含んだ笑顔で本を閉じた。その目はまるで、ヤンデレ彼女のソレである。スクールデイズの言葉と世界を想像してほしい。(niceboat.

 

 

 

同時刻 日本国北東約3000km洋上 原子力航空母艦『祥鳳』 艦内

「よお、眠れたか?」

 

「お陰様で」

 

神谷と川山は、空母の右デッキで海を眺めていた。現在2人の乗る瑞龍を旗艦とした特務使節団は日本から約3000kmの洋上、例のカルデラ状の断崖絶壁からだと大体10kmの洋上に停泊している。

 

「そんじゃ、そろそろ行くか」

 

「あぁ」

 

2人は飛行甲板へと登り、飛行甲板で極帝を本来のデカさに戻す。初めて見る竜に、兵士達は大興奮である。

因みに極帝は偶々神谷が捕獲した竜、って事にしてある。

 

友よ、準備できたぞ

 

「はいよ。じゃあ、いっちょ竜騎士になるとするか」

 

機動甲冑や装甲甲冑の設計を、神谷の得意とする接近戦に最適化した特注甲冑を装備し、安定の「皇国剣聖」の羽織を羽織る。

 

「よし、乗ったぞ」

 

では、参ろうぞ!!

 

極帝は飛行甲板を力一杯蹴り飛ばし、大空へとその巨大な翼を広げる。明らかに航空機とは違う機動と、飛ぶと言うよりは空を駆け抜けるような独特の感覚を感じながら天空へと舞い上がる。

 

「イーーーーヤッホーーーーーーーー!!!!!!!」

 

「ハハハハハハ!!!!これ楽しいな!!!!!!!!」

 

飛行機とは違い、吹き抜ける風や急流の如く流れる風景をダイレクトに感じられる極帝の背中に、というかそもそも竜に乗って空を飛ぶとかいう少年の夢とロマンを具現化した状態に、2人のテンションは最高潮を迎える。

 

友よ、楽しいか?

 

「あぁ!!まるで自分が空と一体になったようだ!!!!」

 

「同じく!!」

 

そうか。ならば良かった。だが、そんな楽しい空の旅も終わりのようだ。もうすぐ、目的地だぞ?

 

見ると既に断崖絶壁の山を越えて、島の中に入っている。それどころか、高度は段々と下がりつつある。今回の着陸地点は山を隔てた西側約10km地点であり、そこは王都からも山を隔てているため視界が遮蔽され、北側にある主要道路と思われる山道からも小さな丘を隔てている事から、恐らく人目に付かないと思われる場所である。そこに降り立つと、少しして護衛の隊員達を乗せたVC4隼も飛来する。

因みに今回の使節団の編成は外交官1名(川山)、護衛の皇国軍人40名(神谷と向上含む白亜衆10名と、海軍陸戦隊隊員30名)、竜1匹である。

 

「ん?極帝、なんか森の奥から気配を感じるんだが」

 

ほう、よく気付いたな。人間基準で強い魔獣が1匹、いるな、

それに女子もいる」

 

「あー、襲われてる系か?」

 

あぁ

 

そういう事なら助けておいて損は無いわけで、神谷は極帝に跨ってその魔獣と女性の下に向かう。

 

いたな。どれ、我が力を見せてくれようぞ

 

極帝は口を開くと安定の導力火炎弾を、ではなく。まさかの赤いビームを放った。極帝曰く「炎も吐けるが、魔力をそのまま出した方が強い」らしく、今それを放った。

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!誰かたすけてぇぇぇぇぇ!!」

 

「シュギャァァァァァ!!!」

 

女性に魔獣が襲い掛かろうとした瞬間、極帝の魔力ビームが魔獣を貫くというより包み込んで消滅した。

その光景に女性は、目を奪われていた。何故なら伝説の存在である竜に跨り、竜を操って魔獣を倒した神話の出来事が今、自身の目の前で起こったのである。

 

「って、おいおい。もう1匹いるじゃん」

 

ならば、もう一度攻撃するまで

 

「いやいや。俺にも獲物をくれよ。な?」

 

まあ、よかろう

 

少し不服そうだが、極帝は頷いた。神谷はそれを確認すると、極帝の背中から飛び降りて魔獣へと降下を開始した。

 

 

「もう1匹いた!?」

 

「シュギャァァァァァ!!!」

 

流石にもうダメだと思った瞬間、

 

「チェリャァァァォァァァァ!!!!!」

 

真上から竜騎士様が降ってきた。竜騎士様は見た事ない剣を魔獣の頭目掛けて振り下ろすが、弾かれてしまう。予想してなかったみたいだが、すぐに頭を踏み台にして後ろへと回避する。

 

「硬ェな、おい」

 

そう言って竜騎士様は剣を鞘に仕舞うと、懐から黄金に輝く謎の金属を襲ってきた魔獣、十二角獣へと向ける。次の瞬間、ズドォンという大きな音が何度か連続して鳴ると十二角獣は、体に穴を開けて血を吹き流しながらその場に倒れた。

 

「流石に12.7mm徹甲弾には耐えられなかったか。ってか、寧ろ耐えたらマジの化け物だわな」

 

魔獣なら喰らおうかとも思ったが、黒焦げでは食えぬな

 

「魔獣って食えんのか」

 

竜騎士様は相棒であろう竜と話している。すぐに話は終わったのか、周りをキョロキョロと見廻すと私を見つけてくれた。

 

「おう、嬢ちゃん。ケガは無いか?」

 

「は、はい♡」

 

とても勇ましく男らしく、それでいて何処か優しく透き通るようなお声で、私を心配してくれている。お顔もとてもイケメンで、目も慈愛に満ち溢れていながらも闘志を宿す「戦士」という言葉が一番似合う、とても凛とした佇まい。女性の心は完全に神谷に射抜かれた。

 

「おーい、浩三!!大丈夫か!?!?」

「閣下!!」

「長官!!」

 

右の茂みから、まだら模様の服を着た汚らしい格好をした男たちが数名やってきた。その格好は一言で言えば野蛮であり、「森の蛮族」と命名したほどだった。もう一人きっちりとした服を着た男が一人、息を切らしてやってくる。

恐らく最初の数人は従者であり、旅のお供なのだろう。旅とは1人で出来ぬとは言え、このような蛮族にすら配下として加えるなんて何と器の大きい御方なのだろう。

女性の暴走は止まらない。

 

「竜騎士様、それに配下の方々。私は王国3大諸侯、ウィスーク公爵家の娘、エネシーと言います。騎士様に助けていただいた事を感謝し、是非お礼に家でご一緒にお食事をと思っています。配下の方々も良ければご一緒にどうぞ」

 

「は、配下?」

「俺達の事じゃね?」

「竜騎士様は閣下か?」

 

助けられた女性、もといエネシーの発言に全員が困惑していた。まあ状況的に神谷が竜騎士に見えてもおかしくはないし、兵士達が配下に見えても分からなくはない。だがしかし、この後の言葉に全員が固まった。

 

「竜騎士様、お名前をお聞かせ願えますか?」

 

あ、俺の事か。あ、えっと。俺は神谷だ」

 

「カミヤ様。素敵なお名前.......。私の旦那様に相応しい御方ですわ」

 

瞬間、その場の全員が完全に凍りついた。神谷には知って通り、通称「五等分の花嫁」と呼ばれてるハイ・エルフ五人姉妹とコンヤクカッコカリな状態である。つまり人の旦那に対して知らぬとは言え、求婚してしまってるわけである。

流石にこれには神谷も驚いており、どう訂正しようか迷っていた。普通に「俺、婚約してるんですけど」とは言うわけにもイカんので、ほとほと困っていた。

 

「あぁ♡見れば見るほどお美しい。その顔、その肉体、その声、器の大きさ、一挙手一投足が洗練されていて美しいですわぁ♡さあ、早く屋敷に参りましょう?ベッドでは優しくしてくださいね♡

 

小声でこっそりボソッと言った言葉。エネシーは恐らく聞こえないと思っていたのだろうが、その場の全員は聞いてしまった。その瞬間、全員に液体窒素のブリザードが局地的に発生したのかと思う程に悪寒が走る。そして神谷の心情はと言うと

 

コイツ地雷女だぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

大荒れである。この地雷女のターゲットは現在神谷であり、被害を受ける可能性が一番高い。尚も神谷の動揺は止まらない。

 

(え?いや、待って。ちょ、待てよ。マジで一回落ち着け、神谷浩三。戦場では冷静さを欠いたものから死ぬんだ。よし、よし。よぉし!

まずは状況の整理だ。俺は新規国交開設の護衛兼、軍事系の解説のために派遣されている。日本から遥々ここまできて、極帝の背中に乗ってここに来た。で、なんか襲われてたから助けた。そしたら助けた奴が地雷女で、なんか好かれた。しかもさっきは「ベッドでは優しくしろ」という発言まで出た。

あっるぅぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?なんで!?どうして!?え????いやいやいやいやいやいやいや!!!何この不運の連続コンボ!?!?なに、何なの!?俺はここで殺されるか、この女とベッドインする羽目になるのか!?!?俺には一応、一生面倒見ると決めた妻達がいるのに、ベッドインして朝チュンコースに行くのか!?!?ってか正直、このエネシーって奴、俺好みじゃないんだけど。俺、ムチムチとした肉付き良い奴とか胸のでかい奴が好みなのに.......)

 

「(ちょ、浩三!!作戦会議だ!!)」

 

神谷が心の中で文句言いまくっていると、川山が神谷の腕を引っ張り、茂みの中に連れ込む。

 

「(よーし、浩三。念の為、俺達が同じ認識を持ってる事を確認するぞ)」

 

「(おう。あの女は、せーの)」

 

「「((絶対地雷女!))」」

 

まずは互いに同じ認識である事に安堵しつつ、今からの対策を考える。だかしかし、迂闊には動けない。しくじれば下手したらナイフでグサッ、である。

 

「(なあ、頼むからこのままお前が泥被ってくれない?)」

 

「(嫌に決まってんだろ!!!!)」

 

「(いや、だってよ?アイツ、公爵令嬢って言ったよな?ならよ、助けたのを口実に話をする事が出来る。ここであの地雷お嬢様の機嫌を損ねたら、マジでやばいぞ。もしかしたらアイツの親もイカれてる可能性あるし)」

 

「(.......俺の生命の保証は?)」

 

「(good luck)」

 

川山の理由には一理ある。確かに今の状況下で言えば、渡りに船である。こんな美味しい状況は、そうそう来る物じゃない。しかし代償が高い。神谷は自他共に認める最強の男ではあるし、最近は魔法やら極帝やらでチーターを超えるレベルの強さを持つ。小娘程度にナイフで襲撃されても、反撃して即鎮圧できるだろう。

だが、肉体的に強くても面倒だし、何より恐怖で精神的にアレである。出来るなら関わり合いになりたく無いタイプの人種である。

 

「(なんかもう、いいや。うん。腹ァ、括るわ)」

 

そう言った神谷の目は、完全に死んでいた。茂みから出ればエネシーが腕に抱きつき、デカくは無いが小さくも無い胸を押し付けてくる。しかし神谷の目は死んでいる。質問されても適当に話を合わせて答えていて、やっぱり目は死んだままである。

周りの兵士と川山は勿論、極帝すらも「友よ、目が死んでおるぞ」と指摘する程にヤバい目であった。尚、頭乙女御花畑のエネシーは気付いてすらいない。

 

 

 

数時間後 カルアミーク王国 王都アルクール ウィスーク公爵家

(一体何なんだ!?)

 

急遽帰宅したウィスーク公爵の脳内は、完全に混乱しきっていた。

なにせ娘エネシーはダメだと言ったにもかかわらず、王国の建国祭りの飾として花を、王都城壁の外側に勝手に取りに行った。この時点で、とんでもない問題だ。

そこで、この付近では活動が確認されていない12角獣と出会う。命の危険が生じたという事だ。もう護衛をつける以外に外出は認めない。いや、家から一歩も出さない。

そこに颯爽と竜に乗った騎士(神谷)が現れ、12角獣をあっさりと滅しエネシーを助けた。物語にしてもタイミングが良すぎる。出来すぎる。それが現実なら尚更。

そして目の前にいる緑のまだら模様をした汚らしい者たちである。一言でいえば蛮族。竜騎士の配下の者らしい。今、眼前でまともな格好をしているのは2人、娘が自信満々に説明したカミヤという竜騎士と、カワヤマという名の異邦人。

とまあこんな具合に、冗談で作った物語よりも凄いレベルのご都合主義すぎる物語が現実に爆誕しやがったわけである。

とは言えど、娘の命の恩人にきつくは当たれない。そこで食事に招く事にして、今に至る。

 

 

「という訳で、その時のカミヤ様は強く、素敵でとてもかっこよかったのですわ、お父様!」

 

「はいはい」

 

娘の話を聞き流す。本日、これで23回目である。23回もおんなじ話をされては、流石に覚え切ってしまう。もう8回目くらいからマトモに聞いてない。

 

「お父様、聞いてるのですか!?」

 

「ああ、何だったかな?」

 

「カミヤ様に庭のお花畑を見せて差し上げたいのですが、席をはずしてよろしいですか?」

 

「ああ、良いぞ」

 

そう言ってエネシーは安定の腕に絡みついて胸を押し当てる状態で外へと神谷を連行していく。

神谷は死んだ目をしながらハンドサインで「Help me. SOS」と送り、部下達はただ無言で敬礼するなり、サムズアップするなり、「頑張れ」とハンドサインを送るなりして見送っていた。

 

「娘を助けてくださって、本当にありがとうございます。さて、お礼をしたいと思うのですが、何かほしい物はありますか?」

 

「物ですか。物は特には必要ありません」

 

「ほう、なんと無欲な。しかし、知ってのとおり私はこう見えても、王国3大諸侯の1人です。娘の命を助けていただいた恩人に何もしなかったでは、ご先祖様に顔向け出来ません。

そういえば見慣れない服ですが、どちらの地区のご出身でしょうか?」

 

「ウィスーク公爵閣下」

 

川山は立ち上がると仕事モードの顔つきでウィスーク公爵に向き直り、自らの職務を開始する。

 

「あらためて、自己紹介させていただきます。私は大日本皇国外務省、特別外交官の川山慎太郎と申します。大日本皇国、日本はこの国から南西方向にある島国です。国交を開設する事を目的として、その事前の接触、ファーストコンタクトをとるために派遣されました。

もしよろしければ、この国の外交担当部署にご紹介いただければ幸いです」

 

「外交担当に取り次ぐ事はできましょう。しかし、国交がそれで結ばれるかの保証はいたしかねます。これは他国を排除しているという意味ではなく、国交開設のため貴国の出す条件や、貴国がどんな国かを理解しないと無理だろうという意味です。

それ以前に、海の先から使節団が来た事例が無いため、失礼ながら本当にあなた方の言われる国から来たのかの審査もあると思います」

 

大日本皇国がどんな国なのか知らず、そしてどんな条件を出てくるのか不明の状況下にあって、それはごく自然の発言だった。不平等条約を押し付けられたのでは、たまったものではない。

因みに相手を殆ど知らずに不平等条約を結んじゃったのが、幕末の日本である。

 

「はい、承知しております。」

 

「しかし海の先から使者が来るのは、本当に驚きですな。ご存知のとおり、この世界は海へ降りるためには崖をくだらなければなりません。

過去に何とか小舟を作り、崖を降ろして海に調査団が出た事がありました。ですが、かなりの距離を走った後、不毛の地で構成された大山脈が現れ、なんとか山を越えましたが、さらに広大な海が広がっていたと言われています。

海の先に人が住む土地があるかもしれないという指摘はされていましたし、現実的に考えれば居ると考えられています。あぁ、いや居たと言った方が正しいですな。ですが人が外部から来たという公式記録は1度も無く、まして軍や使節を送る事なぞ不可能。今我々が「世界」と言えば、この島の事を指します。」

 

「そうですか。我々と国交を結ぶ事が出来れば、その自然の壁を簡単に突破する事が可能になります。まずは公爵閣下にも、日本の事を知っていただきたいと思います」

 

そう言うと川山は鞄からタブレットと、立体映像を投影するプロジェクターを取り出して準備する。部屋の明かりを消してもらい、立体映像を持って日本の説明を開始する。

 

「我が国、大日本皇国は貴国より南西方向に約3000km進んだ位置にある島国であり、約378平方kmの面積を持つ国家です。先ず初めに———」

 

そう言って川山は様々な説明をしている。一方その頃、神谷はと言うと

 

「ハァ♡ハァ♡お待ちになってぇ〜」

 

「誰がお待ちになるか!!」

 

全力で庭を走っていた。何故かって?それは遡る事、数分前。

 

 

「見てくださいまし、カミヤ様!花が綺麗でしょう?」

 

「あ、うん。綺麗ダナー(棒)」

 

「私と花、何方が綺麗でしょう♡?」

 

「エネシーだと思うナー(棒)」

 

(あぁ。俺、なにしてんだろ)

 

エネシーのお守りで話を合わせながら、適当に返事をし続ける。幾ら国の為とは言え、段々何かが可笑しく感じ始めてきた。しかしまあ、一応仕事ではあるので自動運転で活動している。

 

「カミヤ様は、私のことをどう、思いますか?」

 

「あー、可愛いんじゃナイノ?知らんケド(棒)」

 

「フフフ、そう思ってくださっていたのですねぇ♡」

 

なんだか、エネシーの様子が明らかにおかしい。しかし上の空状態の自動運転モードである神谷は、それに気が付いていない。次の瞬間、エネシーは神谷に飛び付いてきた。

この行動に瞬時に意識が戻り、横に避けてやり過ごす。

 

「避けなくても良いじゃないですかぁ♡?一緒に、ラブを育みましょう♡?」

 

「おいおいマジですか」

 

完全に目が♡になっており、発情したような息遣いをしている。流石の神谷も冷や汗をかき、「これ捕まったら、アレだわ。ナニされるヤツだわ」と悟った。そうと決まれば、やる事は一つ。

 

「逃げるんだよォォォーーーーー!!!!!!!」

 

戦略的撤退を以て、ホットゾーンからエスケープをかました結果がこれである。

 

「逃げなくても良いじゃありませんのぉ!」

 

「逃げるわ!!自分の貞操の危機とか、冗談抜きで逃げるっつーの!!!!」

 

幾らクレイジーヤンデレのエネシーでも、所詮は温室育ちのお嬢様。普通に最前線の鉄火場をあちこち飛び回る現役最強兵士である神谷には、如何な愛の力を持ってしても太刀打ちできない。そんな訳で2人の距離は、みるみる内にドンドン離れていく。

 

「お、お待ちになってぇ.......」

 

流石にスタミナが切れたのか、エネシーはバッテバテであった。そのまま屋敷に戻ろうかと思った瞬間、神谷の無線が鳴った。

 

『閣下、ちょいと不味いことが起きました』

 

無線の相手は今回の使節団護衛艦隊の指揮官、黒崎からである。曰く「カルアミーク王国領内の地方都市にて、大規模な戦闘が勃発した」らしい。まだ他国からの攻撃か、内乱や革命の類いか、はたまたこの世界独特の魔物や魔獣による襲撃かは分からないらしいが、一応念の為に空母航空団と海軍陸戦隊は臨戦態勢に移行した、という報告であった。

 

「仕事早くて助かる。でも、まずは彼方さんの面子を立てる必要がある。分かってるだろうが、今はまだ手は出すな」

 

『えぇ。そこは一兵卒に至るまで、全将兵が理解しております。ですが戦争になれば、ヤバいですよ。何せ今回連れてきたのは、海軍陸戦隊の中でも荒くれ者が集まる、第四海兵師団ですから』

 

「あー、そういやそうだった。アイツら練度こそ高いし仁義に外れたマネはしないが、素行は良くないんだよなぁ」

 

第四海兵師団は海軍陸戦隊の中でも精鋭の一つに数えられる師団である。しかし1つだけ問題があり、何故か配属される隊員達は荒くれ者が多いのである。何も何処ぞの変態性欲ゴリラ兵士みたく、その辺の一般女性を拉致ってレイプしたりとか、略奪したりするような仁義に反する事はしないし、というかむしろ、そう言うのを見ると殺す勢いで吹っ飛ばしにかかる連中である。

確かに仁義に反する行いはしないが、今言った通り殺す勢いで仁義外れな奴には容赦しない。オマケに喧嘩っ早く、売られた喧嘩は片っ端から買うし、喧嘩に自ら突っ込んで殴り合う様な連中が勢揃いしている。お陰で軍内部からは「銃持たせるより、素手で戦わせた方が強い」、「本職のヤクザも逃げ出す」、「銃じゃなくて、ガントレットかメリケンサックでも持たせて戦わせた方がいい」とか色々言われてる。

 

「あぁ、マジでどうなるんだコレ」

 

今でさえ結構波乱だと言うのに、普通に地獄の大波乱への直通便の切符が発行されそうな事に神谷はゲンナリする。この後、マジの地獄になる事を神谷は知らない。

 

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