最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第三十六話第75中隊暴走中

不時着より一週間後 カルズ地区

「えいよ!えいよ!えいよ!」

「オラオラオラオラオラ!!オラァ!!!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄!!無駄ァ!!!!」

「ホワタタタタタタ!!!ホワタァ!!!!」

 

C2が不時着して早一週間。既に全員が完全復活しており、村の手伝いを部隊総出でやっている。毎食出てくる食事の質からして、この村に余り余裕はない。しかしこの国で使える金品なんざ持っていないので、ならば「代金の代わりに労働でその恩義に報いよう」という考えの下、汗水垂らして働いている。

働きぶりはと言うと、前にも書いたのたが、大日本皇国の軍人は体育会系のノリと日本人特有の祭好きの遺伝子がフュージョンする事がある。これが存分に発揮され、元々畑と倉庫と住居程度しかなかったのに、新しい畑(元々あったヤツの3倍の面積)、住居2棟、倉庫3棟、壁&門、櫓4つが超スピードで建てられた。もうリフォームの匠もビックリである。

 

「我ながら、一週間未満で良くここまで発展させたな」

 

「ゲームでしか無理だと思ってたわ」

 

岡と澤部の2人は村人が持ってきてくれた差し入れの果実水を飲みながら、運び込まれた時とは大違いの風景を見ていた。因みにここまでの改造に、一週間使っていない。大体5日程度でここまで持っていている。

こんな現実離れした事ができた要因は、やはり隊員達の持つグラップリングフックだろう。このグラップリングフックは立体機動装置みたく飛び回る装備だが、ワイヤーの巻き取り機能とかを利用すれば木を伐採して、それを運んだりする事ができる。他にも元工兵部隊に居た奴とか、実家が代々大工の家系(なんでもご先祖を辿ると四天王寺、大阪城、江戸城、国会議事堂なんかを建てた大工がゴロゴロいるらしい)の奴が音頭を取ったのも大きかった。

 

「それじゃ俺達も用意しちゃいますかね」

 

「そうだな」

 

2人は広場へと歩き出す。今日は例のC2不時着の現場に、不時着以来初めて立ち入る。今回はエスペラント王国の応急科学庁の学者も同席するらしくて、現地で合流する事になっている。

 

「中隊長殿!第五、第七分隊、出発準備完了致しました!!」

 

副官が先頭に立ち敬礼すると、後ろに控える兵士達も敬礼する。流石に中隊全員で押し掛ける訳にもいかないので、物資の輸送役兼護衛に二個分隊と機長、それから装甲車のドライバーを連れていくこととなった。

 

「諸君、本日はいよいよC2の不時着現場に赴く。何も無いとは思うが、一応この国は戦争中ではある。最悪の場合は武器を使用する事態になっても、おかしくはないだろう。脳の片隅にでも、一応入れておいてほしい。以上」

 

兵士達は了解の代わりにまた敬礼し、それに返礼する。そのまま馬車に分乗し、不時着現場へと走り出す。

現場に近づくと、兵が数名と文官らしき人物が数名立っていた。岡達とついて来たバルサス、その娘サフィーネは馬車を降りる。

 

「こちらに来てくれ!!」

 

聞き覚えのある声、はっきりとした若い男の声が聞こえる。声の主は鎧を纏った騎士、ジャスティードであった。

 

「アイツ、いたのか。居なくていいのに」

 

やはり寝起き早々、真剣の剣先を首元に突き付けられたのだ。嫌いになって当然である。

 

「こっちだ!王宮科学庁の学者様が、貴様らに聞きたい事があるとの事だ!!それにしても兵の度胸はあっても、文化レベルは我々よりも低いようだな。

それにこの、謎のマーク。カッコ悪いというか、ダサい」

 

ジャスティードがそう吐き捨てた瞬間、岡と周りの日本兵達の顔が一気に怒りに染まった。

 

「テメェ、ふざけてんのか。あ゛?どのマークがカッコ悪くてダサいって?あ゛!?」

 

「うぇ、ちょ」

 

岡がキレるのも無理はない。ジャスティードが馬鹿にしたマークとは腕についた日本の国旗である日の丸と、銃に描かれた菊花紋であった。知っての通り日の丸は日本を、菊花紋は天皇家を表す紋章。それをよりにもよって、皇国軍の兵士の目の前で馬鹿にする。キレて当然である。

 

「いいか!お前が今バカにした紋章はな、それぞれ我らが祖国たる大日本皇国の国旗である日の丸と、皇国の主にして唯一の皇帝一族の紋章である菊花紋だ!!!!これを馬鹿にするとは、テメェは俺らに喧嘩売ってるんだな?そうだろ!?!?」

 

掴み掛かる岡の気迫と、その背後の兵士達から浴びせられる殺意にジャスティードは涙目になっていた。

 

「わ、悪かった!訂正してやるから!!」

 

「訂正してやるだと?訂正させてくださいお願いします、だろうがクズ野郎!!!!」

 

そのまま力一杯地面に叩きつけた。どうやら下が岩場か何かだったみたいで、鎧に当たったのか「ガキン!」という鈍い音が鳴った。そのままジャスティードを放置し、その学者の下へと向かう。

 

 

「おおー!!よく来てくれた!!君のその格好も、実にエキサイティングだ!!文化の違いを感じるよ。私は王宮科学庁のセイという学者だ。よろしくな!!」

 

細身で少し変人かかった彼は、岡に握手を求めながら話し掛けてくる。

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

「ところで、これは君の国が作り出したのかね?」

 

学者は不時着したC2を指さして、岡に尋ねる。

 

「え、ええ。国産機ですよ」

 

「ふぅ。すごいね!!何がどうなっているのか、全くもって理解が出来ないよ。そして空を飛んでいたほどの出力を発揮していたにもかかわらず、残留魔力が全く検出されない。全くもって意味不明の物だよ」

 

「いえ、それは魔力ではなくてでs」

 

岡が話そうとした時、突如として何かが爆発したような重低音が轟いた。皆が音の方向に振り返る。

振り向いた先、約2km先の城門付近に煙が立ち上っており、外から何かが侵入してきているのが確認できる。

 

「ま、魔物だ!!!」

 

誰かが叫び付近は騒然となった。城門付近にある兵舎からはすでに多くの兵が出てきており、侵入してきた魔物に対応し戦闘が始まる。剣とこん棒がぶつかり合う音に時折聞こえる魔物の断末魔の悲鳴が、付近の者たちをさらに緊張させた。

一方でジャスティードの部下が近づいて来て、雪の上に座っていたジャスティードに報告する。

 

「ジャスティード正騎士!門見張り員より連絡あり!!城街侵攻の敵兵、ゴブリン500、オーク30、オークキング5、漆黒の騎士4を確認との事です!!」

 

「ダ、ダニィ!?!?お、オークキング5に、漆黒の騎士4だとぉ!?!?!?!?」

 

ゴブリン、これは何とかなる。オーク、これも兵が組織的な動きをすれば、何とかなるだろう。

しかしオークキングはオークよりも2周りも大きく知能もある。その為、全身を鉄、者によっては別の金属、例えばミスリルの鎧で覆い弓矢や剣を弾く。さらに人間を遥かに超越する圧倒的な筋肉から繰り出される大斧の一撃を食らえば、人間の剣技など児戯に等しい。というか剣技云々以前に、下手に間合いに入ろうものなら馬に騎乗した騎士でも愛馬ごと吹っ飛ばされる。

現に過去にあったオークキングが混じった侵攻では、奴らを打ち取るために相当の犠牲を要し、スタミナ切れを誘う事くらいしか対抗する方法は無いとされる。

だが一番の問題は漆黒の騎士である。オークキングほどの筋力を持ち、体すべてを漆黒の鎧で覆い、人間では扱えぬほどの大剣を振り回す。しかもその剣技は達人の域を超える。数々の戦場に姿を現し多大な犠牲を出していたが、未だ討ち取った者はいない。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!」

「急げ急げ急げ!!!!」

「隊列組めぇ!!!!」

 

兵舎から出てきた兵たちが、前衛のゴブリンを蹴散らし、漆黒の騎士へ向かって突進する。魔物の特性か、一番強い者が討ち取られると他のザコは四散する性質がある。この特性を利用するべく、彼らは一直線に漆黒の騎士へ向かっていった。

 

「なんだ?祭りか何かか?」

 

「あー、真司さん?祭りってよりか、血の雨地獄じゃね?」

 

澤部が指差す方向を見ると、音の正体は戦闘時に発生する音だった。それを見た瞬間、岡は一瞬で勘づいた。この戦闘が、こっちにまで飛び火する事に。一応騎士や兵士が戦っているし、多分ゴブリンとオークと思われるモンスターは討ち取っている。

だが鎧を着た大きな魔物、恐らく強化種とか進化個体、ゲームならにオークロード」とか「ゴブリンチャンピオン」とか言われてそうなヤツには、文字通り刃が立たないように見えた。

 

(正当防衛として、他国の紛争に介入しても良いのか?いやいや。アレは、モンスター。あくまでモンスターは国家が運用しているのではなく、言うなれば獣。狼やライオンの群れと同義。

それに確か最近交戦規定が改定された筈!!)

 

岡はすぐにポケットから軍用のスマホ、戦闘用携帯情報端末を取り出して交戦規定のファイルをタップする。そこには、このように書かれていた。

 

 

第五項

・異世界に於いて敵対的な生物と遭遇した場合、その生物が武装、或いは攻撃意思があった場合は一部例外を除き「敵対性有害生物」と認定する。

 

第六項

・敵対性有害生物との接触の際は、如何なる武力の行使も許可される。

 

 

(やはり!この場合、奴らは敵対性有害生物だ。ならば攻撃できるな!!)

 

「総員、戦闘準備!!!!」

 

交戦規定を確認してからの岡の指示は早かった。そしていつも通り、兵士達もすぐに武器を確認する。

 

「HUD起動。ウェポンリンクチェック」

「残弾数、身体ダメージ、装備ダメージ表示システム、同期完了」

「各種戦闘支援システム、異常なし」

「現在長距離部隊間通信システム、構築できず。しかし短距離部隊間、兵士間通信システム、構築成功。感度も良好」

 

「戦闘準備、良し!!中隊長、ご指示を!」

 

「今は待機で良い。一応、ここはあの騎士共に華を持たせよう」

 

そう命令した瞬間、ジャスティードの部下が悲鳴のような声で叫んだ。

 

「し、漆黒の騎士が向かってくるぞ!!!」

 

あの誰も討ち取った事のない騎士、死と恐怖の象徴がこちらに向かってくる。誰の心にもどうしようもない気持ちがこみ上げるが、王宮科学庁の学者等を守護する最後の砦だ。

 

「うろたえるな!!向かってくる敵はたったの1騎ぞ!!突刺隊列を整えよ!!マイル、ケイロ、コウネルは、矢を射よ!!!」

 

恐怖の中、隊長であるジャスティードは隊長としてのプライドで恐怖に耐えて、的確な指示を出す。敵漆黒の騎士は、馬とは思えないほどの速度で彼らに迫る。

 

「来るぞ!!弓構えろ!!」

 

マイル、ケイロ、コウネルの3人が漆黒の騎士に狙いをつけて、弓を引き絞る。

 

「射てーーっ!!!」

 

限界いっぱいまで引き、放たれた弓矢は真っ直ぐに敵に向かって飛翔する。しかし騎士は大剣の一振りでそれらを叩き落とす。

 

「そんなっ!!」

 

兵の顔が恐怖に引きつる。兵は一斉に槍を突き出すも、敵の人間では達する事の出来ない圧倒的な筋力から繰り出される大剣の一撃をその身に浴びバラバラとなって宙を舞う。

ジャスティードと漆黒の騎士の一撃により飛んできた兵の破片が、顔に当たり吹き飛ばされた。

 

「ぬぉっ!!!」

 

無様に地面を転がり、白銀色に磨き上げた自慢の鎧、そしてマントが土にまみれる。敵は彼をその辺の石ころのように無視し、巨大な馬を駆使し王宮科学庁の学者へ1直線に向かう。

 

「ま、まずい!!」

 

ジャスティードが叫ぶ。それと同時に、事態を察した戦闘能力を持たない者達も叫んだ。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「もうだめだぁぁぁ!!」

 

「キャァァァァ!!!」

 

周囲に悲鳴が木霊する。だがまだ絶望していない男達がいた。彼らは非戦闘員の前に出て、漆黒の騎士の行く手を阻むように三列横隊で展開する。一番前は伏せて、2列目は立ち膝、3列目は立って其々の武器を構える。

ジャスティードは空から落ちてきたとされる、白黒のまだら模様の服を着た蛮族が黒い杖を敵に向けるのを確認する。

 

「剣で防げぬのだ。鉄製かもしれないが、今更杖を敵に向けてどうする?やはり、蛮族は蛮族か」

 

しかし考えてみれば奴にとっては今、手に鉄を持っているならば恐怖を克服するために手持ちの武器で戦おうとするだろう。仕方のない事、哀れな蛮族の最期。

 

「撃て」

 

様々な大きさと音の破裂音が一斉に重なった。腹に響く「ズドォン」という音だったり、乾いた「パン」という音だったり色々である。しかし音が鳴ったと同時に、鉄の杖の先が光って次いで小さな煙が立ち上る。

更に少しすると、ドサッという音がした。音のする方向を見れば、漆黒の騎士が倒れている。

 

「対象沈黙。クリア」

 

「流石に死んだ、よな?」

 

「いやいや。アレで動いたらゾンビだろ」

 

数人の兵士が確認に行くと、漆黒の騎士と呼ばれていた騎士は身体中に穴が空いて半分原型を留めていない。青い血と赤い臓物やら何やらを周囲に撒き散らし、ピクリとも動かない。

 

「うわぁ、グロー」

 

「ってか青い血って、何処のガミラス人だ」

 

最大だと32式戦闘銃に使用された13mm弾を食らったのだ。ちょっとグロくても仕方ない。そして漆黒の騎士と、ガミラス人を一緒にするな。デスラー砲に撃たれるぞ。

 

『中隊長。しっかり冥土に逝きました』

 

「了解」

 

後ろではどうにか生き延びた王国兵とジャスティードの部下が、勝ち鬨の叫びを上げている。そんな中ジャスティードは、岡へと近付いてくる。

 

「おい。今のは、何だ?どんな魔法を使いやがった?」

 

「テメェのような挨拶代わりに剣を突き付け、更には国家の象徴たる国旗と、その国家の王族の紋章を馬鹿にするような蛮族以下の雄猿に答える義理は無い」

 

ジャスティードが顔を真っ赤にして何か言おうとした瞬間、背後に控える兵士達が一斉にワザと銃をガチャガチャ触り出した。勿論銃口を向けたりとか、トリガーに指を掛けたりするような発砲動作はしない。

だが銃の構造を知らないジャスティードには、自分が攻撃されると勘違いして腰を抜かしてへたり込んだ。こうして細やかな復讐(ジャスティードは普通に死を覚悟したが)が終わったと同時に、学者のセイが完全にテンションが壊れているテンションで話しかけてきた。

 

「いやいやいやいや!!凄いね!君達!!!!君達が倒した魔物は1匹だ。しかしこの1匹は非常に困難を伴う1匹、君は王国の未来の希望となるかもしれない。王に会ってくれ!いやでも、流石に多いか。うーん、じゃあ君と君!」

 

セイが指名したのは岡と横にいた澤部だった。

 

「え!?いやしかし、我々は大日本皇国の一介の軍人に過ぎません。それが王に会うのは、流石にどうかと思うのですが」

 

「いや良いんだよ。とにかく王国の頭脳と言われるこの私は、君がいなかったら死んでいた。王がそれに対し、礼を言うのは当たりまえの事だ」

 

「いや、しかしこの服しか今私は持っていないんでs」

「良いんだよ!その服で!!文化の違いをエキサイティングに感じる事が出来るではないか!!心配するな。王宮ではその格好を嫌がる貴族もいるだろうが、私がずっと君のそばについて案内するから大丈夫だ」

 

「真司。多分この学者先生アレだぞ。一度決めたら正しい正しくない関係なく、地獄の底だろうが地平線の果てだろうが地雷原だろうが突き進んでいく、逃げると厄介になる奴だぞ」

 

セイの捲し立てるような勢いと、澤部の言に根負けした岡は「もう、好きにしてくれ」と呟いた。そんな訳で急遽エスペラント王国の中心部、王宮へ向かう事となった。その間に他の兵士は輸送機に残った物資と、載せていた装甲車を運び出している。

数時間の後、岡&澤部、セイ、バルサス、サフィーネ、ジャスティードの身は王都に着いた。街はカルズ地区とは異なり建物や行きかう人々には優雅さがあり、さすが国の中心部である王都とも呼べる地区であると岡と澤部は感心する。

 

 

「さあ、降りてくれ!!」

 

王宮に到着すると、セイが満面の笑みで岡に降車するように即す。岡が降りようとした時、馬車の外の異様な視線に気づく。

 

「まあ!あれが、漆黒の騎士を倒したと言われる異国の兵か」

「緑系統のまだら模様とは、なんという野蛮な格好!!優雅さの欠片も無い!!どんな野蛮な魔法を使って漆黒の騎士を倒したというのだ!?」

「漆黒の騎士は他の兵によって、すでに傷ついていたのではないのか?」

 

(だから王宮にはこの格好では行きたくないと言ったんだ)

 

(予想してたが、やっぱりこうなるか。あー、今すぐ帰りたい。ゲームしたい)

 

岡と澤部は内心ウンザリしているが、帰るわけにもいかないのでセイの後ろについていく。

一方で王であるエスペラントは、謁見の間で王国の頭脳、学者セイを救った異国の兵を待っていた。

 

「モルテス、どんな騎士が来ると思う?」

 

エスペラントは玉座の傍らに立つ騎士モルテスに話かける。威厳のある歴戦の老騎士モルテスは、少し難しい顔をしながら答えた。

 

「そうですな。報告から異国の兵の武器を推察するに、最近王国で開発された銃に近いものがあるのではないかと思います。銃士ザビル殿の方が、詳しいかと思います。」

 

「陛下、話に聞いた異国の兵は黒い杖を敵に向け、連続して発射された神速の光弾で敵を貫き倒したと伺いました。確かに「神速の弾」という意味では、銃に近いものがあるのかもしれません。しかし連続して発射というところと、光を放つ弾という所が良く解りません。

銃は威力の高い兵器ではありますが、連続で撃つ事はもちろん30秒に1回放つ事ですら難しいでしょう。また、弾は光りません。似て非なるものと私は認識しています。どんな兵が来るのかは解りませんな」

 

このザビルという男、最近開発された銃に精通し、その命中精度は王国一を誇る兵士である。尚、銃がフリントロック式マスケット銃なのはお約束。

 

「間もなく学者セイ様と、異国の兵が参りま――」

「陛下!!帰ってきました!!彼を通してよろしいでしょ?」

 

いきなり謁見の間に突撃して相変わらずの口調で語るセイに、王は笑いながら「よく戻った」と声をかけた。セイの言葉遣い&態度については全員諦めている。

 

「失礼いたします!!!」

 

白黒のまだら模様を着た汚らしい兵が、部屋に入ってくる。王都の謁見という格式高い場で、その汚らしい姿に居合わせた各々は顔を曇らす。

 

「な、なんと!!」

 

(デスヨネー)

(あー、なんでC2に儀礼用の制服積んでないんだろ)

 

皆、その優雅さの欠片も無い服を見て唖然とする。しかし、王は礼をもって話しかける。

 

「その方ら、名前は?」

 

「大日本皇国陸軍第7師団、第75歩兵中隊、中隊長、岡真司大尉であります!」

 

「大日本皇国空軍、攻撃誘導員、澤部彰です!」

 

2人は敬礼をして王に向く。そのキビキビとした動きに、彼らは少し感心する。

 

「そうか。私はこのエスペラント王国の国王、エスペラントだ。このたびは魔族の攻撃から我が王国の頭脳であるセイを助けてもらった事を感謝する。それで、その肩に背負っているのが漆黒の騎士を倒した兵器か?」

 

「はい。43式小銃と言います」

 

「こっちは32式戦闘銃です」

 

岡が43式を、澤部が32式を軽く叩きながら説明する。一方でセイも銃の説明を始める。

 

「陛下、これは銃ですよ。我々よりも高度な技術を使った銃です。それも、凄まじい力を発揮します」

 

王は、この銃と2人の異国の兵の力が見たくなった。

 

「岡よ、お前の力が見たい。」

 

「といいますと?」

 

王は自分の横に立つ緑色の服を着た者、銃士ザビルを指さす。

 

「こやつは銃士ザビルという。我が国で開発された銃に精通しており、この国一番の使い手と言っても差し支えない。

この者と遠当て。遠くの的に当てる競技があるのだが、それで競ってみてほしい」

 

「では何故、我々の力を見たいのですか?」

 

「実はな、我が国の北側にバグラという休火山がある。その火口付近に考えられない事ではあるが、魔物が街を作っている事が解ったのだよ。奴らはその数を増やし続け、明確な戦闘準備をしている。今回は過去の侵攻とは比較にならないほどの規模であり、戦力比を冷静に分析した結果、今回敵が本格的に侵攻を開始した場合、良く見積もって王国の8%は奪われ民は殺されるだろう。通常の見積もりであれば、王国は滅亡する。すべての壁は突破されるだろう」

 

「え!????」

 

岡と共に同席していた医師バルサス、そしてサフィーネが王の前であるにもかかわらず驚きの声を発す。

 

「しかし滅亡を回避するための光が、王国にとっての光が空から舞い降りてきたのだよ。岡殿に澤部殿。君はあの、とても手に負えない漆黒の騎士を倒したと聞いた。君が強力な魔物だけでも狙って倒してくれるなら我が国の被害は国民の半数、15万人で済むだろう。」

 

2人の顔色が一気に、戦闘時の物へと変わった。

 

「魔物と呼ばれる生物の侵攻経路の想定はありますか?」

 

「地形と状況、そして防御力から考えて、間違いなくカルズ地区が最初の標的となるだろう。

この地区については岡殿と澤部殿が強力な魔物を倒す事に協力が出来る出来ないに関わらず、戦力比から考慮して落ちる。この地区の国民は、残念ながら全滅するだろう」

 

サフィーネが居ても立っても居られなくなり、無礼であると解っていても王に意見する。

 

「へ、陛下!ではすぐにカルズ地区の住民を中心部へ避難させてください!!!」

 

「カルズ地区の娘か。すまない、心苦しいがそれは出来ぬのだ」

 

「何故ですか!?」

 

「食料だ。カルズ地区は農業地域、王国の食料生産地の1つ。しかしここは戦力比からして必ず落ちる。仮に同地区の住民を他の地区で保護した場合、戦える日数が激減する。

長期戦になった場合の被害はカルズ地区を国民ごと放棄した場合に比べ、2万人も増加する。つまり戦いが始まれば、非情なようだが門は閉められ再び開く事はないだろう。これはカルズ地区に限らず、最初の侵攻でおそらく3つの地域を放棄する必要が出てくるだろう。」

 

「そ、そんな!!!」

 

サフィーネが崩れ落ちる。だがしかし、ここで澤部が口を開いた。

 

「あのー、何か勘違いされてませんか?もしかして、我々の戦力ってこれだけと思ってます?」

 

「違うのか?」

 

「いやあの我が中隊は全員無事ですので、普通に撃退できるかと。それに我が第7師団は、設立当初より様々な困難な作戦に投入されてまして、陸軍の中でもトップクラスの実戦経験があります。

それに運が良ければ、この銃以上の戦闘兵器が使えるかもしれません」

 

この言葉に全員が息を呑んだ。岡と澤部の話は、とても魅力的である。うまくいけば、完膚なきまでに叩き潰せるかもしれない。

 

「なんだいなんだい?まだ凄い兵器があるのかね!?」

 

「え、えぇ。元々我々の部隊は実戦に近い訓練をするために空を飛んでおり、訓練メニューの中には実弾を大量に使った訓練も予定されていました。ですので銃の弾薬は勿論、装甲車と呼ばれる装甲を張り巡らせた機械式の馬車のような物も運んでいたのです。

まだ使用可能かどうかは分かりませんが、もし使用可能なら恐らく殲滅も可能になるでしょう」

 

セイがまた興奮したように捲し立て、それをウザいと思いつつも説明を入れる。この話を聞いた王は、決断を下した。

 

「わかった。では、岡殿に澤部殿。魔物討伐に力を貸して頂きたい」

 

「了解しました。では敵の状況、数、特徴、特性、侵攻予想ルート、何故そこを予想するに至ったのか等情報をすべて私にもいただきたい。また、現在王国の管理している我が国の墜落した飛行機に積んである装備品の全て、返却して頂きたい」

 

「良かろう」

 

「そして、この国には銃士と呼ばれる方々がいるのという事を聞きました。この銃の取り扱いに慣れた者を最低10名、私に貸してほしい。彼らを臨時で編入し、こちらの武器を貸与。現場の兵士との緩衝材となってほしい」

 

この言葉を受け、銃士ザビルの目が見開かれる。エスぺラント王国において大音量と共に煙を発し、敵を倒す圧巻な兵器は貴族のみが使いうる特別なもの。そんな選ばれし兵種でありながら異国の兵になど入りたくない、と思い銃士ザビルの血が沸く。

 

「異国の兵殿。我が国の銃士を「使う」つもりであれば、国王陛下が仮に許可したとしても力を見せていただかないと。失礼だが皆が言うように、君はすごいようには見えない」

 

「いいでしょう。で、勝負の内容は?」

 

ザビルは岡を見て不敵に笑う。所謂「勝者の笑み」というヤツである。

 

「勝負は銃の遠当てだ。1分間に何発撃っても良いが、指定した皿を割ると点数になる。この皿は徐々に遠ざかっていき、遠くの皿ほど高得点となる。

君は君の国の武器を使うがよい。私はもちろん、我が国の匠が生み出した最高傑作の銃を使わせてもらうよ」

 

そしてザビルは王の方に向き直ると、不動の姿勢で言葉を発した。

 

「陛下!岡殿と澤部殿、そしてその仲間が助けて下さる事は非常に喜ばしい事ですが、彼の実力が陛下の思われている想定以下であれば、彼らには魔族と単独、もしくは銃士以外の兵の貸し出しという形で対応したいと思います。よろしいでしょうか?」

 

「うむ、了解した」

 

その他話したい事は多々あったが、王の前で岡が力を見せた後に最後に謁見が開かれる事とし、その日の謁見は終了した。

 

 

 

2日後 王立新兵器実験場

「ねえ、あんな事引き受けて、本当に大丈夫なの?」

 

本日開かれる的当て大会、射撃場で銃士ザビルとの的当て対戦にサフィーネは不安を感じ岡に話しかける。最近は慣れてきたようで年齢が近い事もあり、岡もサフィーネも互いに敬語を使わなくなってきていた。因みに岡は最初、澤部に任せようとしていたが「空軍に射撃を任せるな。お前は一応、元中央即応師団のスナイパーだろうが」と言われて渋々受けた。

 

「大丈夫」

 

銃士ザビルの銃はマスケット銃である。実力以前に、銃の性能差で勝つだろう。

だがそれを知らないサフィーネは、普通に心配していた。何せザビルは天才と称され、銃も銃士の中では一番の業物を持っている。勝てるとは思えないが、岡が勝つとカルズ地区の被害が少しでも減ると考えていたため神に祈る。

 

「お願い!勝って!!!」

 

「ああ!!」

 

『間もなく御前試合が始まります。精鋭の戦士2名を紹介いたします。』

 

アナウンスが聞こえ、準備の整った岡は試合会場に向け歩き始めた。

約1万人は収容できようかという客席は満員となり、各種貴族の眺める中、王が登場する。

王は住民たちの息抜き、そして強力な成果を出した場合、異国の兵に対して協力する正当性を示す意味も込め同実験場を一般に開放していた。

 

『お集まりの皆様、選手を紹介いたします。

我が国の誇る最高の銃と呼ばれる新兵器、その最強の使い手、神の才を持つと言われた男!!銃士ザビル!!!』

 

「キャー!!ザビル様-!!!」

「ザビル様ステキー!!!!」

「結婚してー!!!!」

 

イケメンであるザビルに対し、貴族の娘&マダムの黄色い声が多数こだました。

ザビルは中央部まで進み、王に一礼する。歓声が最高潮に達した時、アナウンスが流れる。

 

『次に登場の者は異国の兵!その類稀なる力で、あの「漆黒の騎士」を単騎で倒した男!大日本皇国の誇りし兵、岡真司!!』

 

会場に歓声が沸き起こる。しかし姿を現した男の見た目によって、声は沈静化していく。

 

「な、何?あれが異国の兵!?」

「なんという汚らしい格好.......」

「本当に漆黒の騎士を倒したのか?」

「これは、ザビル様の圧勝ね!」

 

特に何の根拠もなく、観客たちは予想を開始するのだった。だが次の瞬間、観客達は思いも寄らない言葉を聞くことになる。

 

「中隊長ー!!!本気でやらないでくださいよー!!!!!」

「中隊長が本気になったら、勝てる奴いませんからねー!!!!」

「岡ー!良い感じに流していけー!!!」

 

第75中隊の兵士達が、口々に「本気を出すな」と言ったのである。流石の貴族達も、ポカーンとしていた。

 

「やあ。君とこの時を迎える事が出来て、うれしいよ」

 

「私も、他国との競技会が出来る事は光栄です。」

 

「私はね、ライバルという者がいなくなってしまった。強すぎるというのも孤独なものさ」

 

「そうですか。羨ましい、私はライバルだらけです」

 

「ハハハ、凡人は大変だね。」

 

とは言っているが、岡の射撃能力は馬鹿みたいに高い。北海道・東北地方の合同射撃大会ではトップ3に入るし、AASAMにも出場した事がある。

 

『それでは、競技を開始します!!』

 

約50mほど先に直径1mほどの皿が現れる。あまりの的の近さと大きさに、岡は唖然とする。

 

「え!?あれですか?」

 

「ハハハ。驚いたかい?殺傷距離220m、必中距離は50mと言われる名工ランザルの銃だが、的はたったの1mだ。

なに。君が凡人であっても、鍛錬をして達人の域に達していれば当たる距離だよ」

 

『それでは、競技はじめ!!』

 

約50m先の的に1分以内に当てればクリアとなる。射撃は1分ごとに当たり、はずれを判別され交互に行われる。

 

「行くよ」

 

エスペラント王国最高と言われた銃士ザビルが射撃線に付き、準備を開始する。

銃口から発射用の火薬と球形の弾を込め、火薬を火皿に注ぎしっかりと構え、引き金を引く。

 

パァン

 

大きな音と共に銃口から派手な白煙が上がり球形の弾が射出される。

発射された弾は空気でブレながら高速で飛翔し、50m先に設置された皿を一撃でたたき割った。会場にざわめきが巻き起こる。

 

「うむ!見事だ!!」

 

王も納得し、満足そうだ。

 

「は、初めて見た!!」

「なんて恐ろしい武器だ!!」

「スゲー!!」

 

まだエスペラント王国に多く普及していない銃、そのあまりの威力に人々は驚きの声を発する。

 

『続いて、異国の勇敢な兵、岡真司です。彼らの国、日本国にも銃があり、彼は一般兵との事ですが天才銃士ザビルにどこまで抗する事が出来るのか、皆様ご期待ください』

 

岡は射撃線に付く。

 

『では、はじめぃ!!』

 

一応今回は、一番得意とする48式狙撃銃の7.62mm弾仕様を装備してきた。だが余りに近すぎるので、一応サイドアームで携行している26式拳銃9mm弾仕様を使う事にした。

 

「ん!?」

 

ザビルは岡が火薬を入れていない事に気付く。

 

(おいおい。緊張しているのは解るが火薬を入れ忘れるって、そりゃないだろうう)

 

彼は岡が練度の低い兵と感じ、肩を落とす。「相手にならないな」と考えた時、会場に乾いた音が鳴り響く。勿論命中した。

 

『お見事です!さあ、次は70mだ!!』

 

70m先の位置に直径1mの皿が現れた。

 

「ほう、思ったよりもやりますね?しかし次は70m。さらにきつくなりますよ」

 

銃士ザビルが射撃線に付き、彼は火縄銃を構える。王国式の銃では難しいとされる距離での射撃、彼はこの距離においても皿を正確に撃ち抜く。そして、岡もあっさりと皿を撃ち抜いた。

 

「2人ともすごいな。」

「しかしザビル様の方が発射炎が多く、威力も高そうだ」

「お!?次は100m先だぞ!」

 

100m先に皿が出る。ザビルは緊張の面持ちで銃を構える。

一時的に呼吸を止め銃のブレを極限まで少なくし、引き金を引く際のブレも起こらないよう細心の注意を払ってゆっくりと指を絞り、射撃を行なった。

 

「ちっ!!」

 

ザビルの銃弾は的を外れる。しかし1分以内に撃破すれば点数は入るため、彼は迅速に銃口の中を掃除し次弾を装填。落ち着きをもって構え、射撃する。

 

パァン

 

乾いた音。弾は皿の右端に当たり、破壊する事に成功した。その光景を見て王はつぶやく。

 

「さすが天才だな。凡人であれば、あの大きさの皿、そして距離であれば10発に1発当てる程度がやっとだろう。たったの2発で命中させるとはな。さて、異国の兵はどうかな?」

 

流石に100mでは拳銃では届かない。というか70mですら、当たるのは難しい。その為今度は、本来使う予定だった48式を構える。

拳銃より大きい音がした後、たったの1発で皿が破壊される。

観客席ではエスペラント王国で1番の名工と呼ばれるランザルは岡の射撃を見て唖然としていた。横にいる彼の弟子が話しかけてくる。

 

「異国兵の銃は発射炎が非常に少ないですね。命中率は高そうだが、弾の威力は少なそうです」

 

「馬鹿者!!お前は何年儂の下で修行してきた!?お前はあの異国の銃がどれほど高性能か解らぬのか?」

 

「どういう事でしょうか?」

 

「まずあの兵、もう2発撃ったというのに全く装填作業をしていない。

火薬と弾があの中に内包されているという証拠だ。戦場においてこの圧倒的ともいえる装填速度の差は大きな兵力比となって現れるだろう。

それに、発射炎が少ないのは効率的に燃焼しているからだ。運動エネルギーへの変換ロスも少ない。ここから見えるかぎりでも、弾の威力も高い」

 

 

(くそっ!何とか150m先の皿を割ったが、はっきり言って運が良かった。岡と言ったか。異国の兵は未だ1発も外していない!!!)

 

名工ランザルの作りし銃に彼は絶対の自信を持っていた。異国の兵が火薬を装填しなくても良い銃を持っていた事には正直驚いたが、まさか命中率にこれほどまでに差があるとは思っていなかった。

しかし自分は天才、そして王国1番の使い手であり焦りを周囲に悟られる訳にもいかない。

負けるわけにはいかなかった。だが奴は恐らく最初は射程の短い物で射撃し、100m目から本来の銃を使っている。このままでは負けてしまうだろう。

 

『次は200m先です!』

 

司会は簡単に言うが、はっきり言って的は点にしか見えない。いくら正確に狙いをつけようが、球形弾の空気のブレだけで外してしまう可能性が高い。

異国の兵がもしもこれを一撃で当てたならば、弾道を安定させる技術が銃に施されているとしか思えなくなる。

 

「ぐっ!やはり小さいな。」

 

手振れで僅かに揺らめく銃口。1mmのズレで着弾地点は大きく外れる。

銃のブレを抑制するため彼は息を止め、ゆっくりと引き金を引いていく。

 

「当たれ!」

 

大きな炸裂音、そして煙が上がり彼の銃から弾が射出された。

 

「ぐっ!!!」

 

命中せず。ザビルはすぐさま次弾を装填して構え、そして撃つ。

 

「ちいっ!!」

 

2発目も外し射撃開始から1分が経過したため、時間切れ。命中無しの判定が出る。

 

『おおっと!さすがの天才も距離200mは難しかったようです』

 

「そんな。ザビル様が外すなんて.......」

 

「いくらザビル様でも無理よ、あの的点にしか見えないもの」

 

人々は様々な感想を述べる。岡の出番となり、彼は射撃線に付く。

近くの的と同様、彼は一撃で的に当て粉砕した。

 

『おおっと!!信じられません!!銃士ザビルが負けてしまいましたぁっ!!!』

 

場がどよめいた。

 

『ではこれは当たるか!?』

 

岡だけが競技を続ける中、的は300m先となり壊すと先がないとの事で、競技が終了してしまった。

 

『これにて競技は終了と』

「ちょっと待て」

 

岡は司会に向かって叫んだ。

 

「たった、たった300mってふざけてるのか?そのぐらいなら態々コイツじゃなくて、小銃か戦闘銃で良かったのに。まさか、コイツの真価を見せてないのに終わりとは言わないよな?」

 

『では何百mなら撃ち抜けますか?』

 

「俺とこの相棒なら、最大で6kmだな」

 

会場が静まり返った。因みに普通のスナイパーライフルなら、大体1.5kmぐらいが有効射程である。だが48式は技術陣がハッチャケた結果、何故か4kmでも余裕で撃ち抜けてしまう。熟練兵なら5km、精鋭や天才となると6kmまでは何とか届くという化け物狙撃銃なのである。

 

「あちゃー、始まった」

 

「大尉殿の悪い癖だ」

 

「アイツ、射撃にはうるさいんだよなぁ。あと怖い」

 

中隊の仲間からは、この言われようである。尚、第7師団では「半端な気持ちで岡に射撃の修練を頼むべからず」という裏ルールがある。

理由は一度タガが外れると、無理矢理にでも射撃を教え込もうとするからである。

 

「岡さん、すごい.......」

 

「まあ、アレくらいは当然だよサフィーネちゃん」

 

「そうなんですか?」

 

「大尉殿、岡の野郎はレンジャー教育課程を首席で卒業した後、中央即応師団に配属されてる。レンジャーとは陸軍にある精兵を養成する訓練で、山に数日間飲まず食わず、睡眠も無しで数十キロの荷物を持って歩いたりする、地獄みたいな訓練だ。

そして中央即応師団。陸軍には三大精鋭と呼ばれる部隊がある。中央即応師団、近衛師団、神谷戦闘団。そんな陸軍どころか皇軍の誰もが知ってる部隊に名を連ねていた、精鋭兵士の一角だ。アイツにとっちゃ、今のはお遊びだろうよ」

 

そんな事を話していると、いつの間にか王の話が始まった。

 

「会場に集まった臣民よ。知っての通り我が国は創設以来、魔物に怯え続けた生活を余儀なくされている。しかし!!我々は1人では無かった。そう、もう気付いた者もいるだろう。今銃士ザビルと戦った兵は、異国の兵なのだ。つまり外の世界にはこのエスペラント王国以外の国があるという事になる。

彼らの国の名は「大日本皇国」。日の本、太陽を国旗とした島国という事だ。我が国に迷い込んできたのは事故だが、少しの間、魔物退治に協力してもらえるとの約束を取り付けた。これは、我が国に伝わる救いの預言に酷似している。私は民が平穏な暮らしを取り戻せるよう、全力で国を導く事をここに誓う」

 

会場から大歓声が上がり、その光景に岡と中隊の仲間は呆気に取られる。もう何が何だか分からなかったが、何か握手やらハグされたりして、考える余裕もなかった。

 

 

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