最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第三十七話戦闘前の日常

岡と澤部が王と謁見していた頃 大日本皇国 地下指令室

「生きてりゃ良いんだが」

 

「機体は無事ですし、最新の偵察では物資を動かした跡がありました。どうやら装甲車も動かしてるみたいでしたし、恐らくは生きているかと」

 

現在地下指令室は、C2遭難事件の対策本部と化している。本来は日本が戦争状態になった際に使用されるのだが、今回は救出作戦の際に戦闘が勃発する可能性を孕んでいたためにここに本部が設置された。

それではここで、今回の救出作戦に投入されている戦力を解説しよう。

 

陸軍(現在待機中)

・第7師団

・第4対戦車ヘリコプター隊

 

海軍

・第二潜水艦隊

・第五主力艦隊

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空軍

・第203制空飛行隊

・第501攻撃飛行隊

・第608管制飛行隊

・第1003輸送飛行隊

・第1205輸送飛行隊

・飛行開発実験団

 

海軍陸戦隊

・第7海兵師団

 

以上である。

 

「そう言えば例の件、調査の方はどうなっている?」

 

「その報告書はこちらに」

 

斜め後ろに控えていた向上が、10枚程度の紙の束を差し出してくる。表紙には「終始報告書」と書かれている。この報告書は長嶺配下の機密特殊部隊である「義経」の調査結果が記された、機密性の高い書類である。終始報告書になっているのは、万が一見つかったら見られたりしても「収支報告書の収支が誤字った書類」として誤魔化すためである。報告書には全てが記載されていた。

まず今回の事件の実行犯にして、現在囚われてる中川貴一郎の出生の事が書かれていた。公式には長野県の地方出身となっているが、実際は中国人であること。日本に来た目的は中枢へ浸透して、中国有利に日本を動かすためだったこと。

その次には、神谷の睨んでいた国防省の事務次官について書かれていた。名前は鶴川徳一郎。こちらは東京生まれ、東京育ちとされていたが、こちらも中国からの工作員だったこと。目的に関しても中川と同じであったこと。

さらに読み進めていくと、この事態に行き当たった流れも書かれていた。今から約5年前に、日本は中国と戦争をしている。といっても一方的に侵攻してきた人民解放軍を殲滅した、戦争とは名ばかりのワンサイドゲームでどちらかと言うと紛争だったが。この戦争により中国は国際的地位が無くなり、これによって国内で内戦が発生。共産党は潰れた。

一方で日本に潜んでいた工作員連中は、共産党を離れて独自の判断で動き出してしまう。ある者は足を洗い、ある者は中国へ帰り、ある者は独自に日本の転覆を狙うような過激派へと変わった。中川と鶴川はこの記述では最後の派閥で、日本を転覆させるために動いていたらしい。

中川が表立って日本批判して強い光となり、国を裏で動かす官僚になった鶴川がその影で動く。この方法で今まで鶴川は悟られずに動いていたらしい。しかし三英傑の存在によって、その企みの殆どが潰えていたらしい。そこで2人は短略的かつ無謀な策へと出た。それが今回の演習への同行である。訓練と称して非道な行いをしているのを捏造し、それを告発して軍の権威を地に落とす。そしてその指示を出していたのを神谷にしておいて、神谷も蹴落とすという中々にアホな計画を立てていた。

 

「超傍迷惑なクソ計画だな、おい」

 

「確かに穴しか無い計画ですし、それ以前に長官に喧嘩売ってる時点でヤバいことにならないのが分からないんですかね?」

 

「にしても、よく公安とかのマークが入らなかったな」

 

「なんか鶴川が裏から手を回していたみたいで、あの手この手で回避してたらしいです」

 

このクソ計画において評価できるのが今までバレなかった運と、ここまで我慢した忍耐だけである。神谷は後にそう語ったらしい。

 

「だがまあ、今更もうどうでも良い。鶴川と中川を、殺せ」

 

「承知しました」

 

これより一週間後、鶴川は東名高速の料金所に突っ込んで死亡した。原因はブレーキの故障による物として報道されているし警察もそう信じているが、実際は義経の兵士がブレーキに細工して利かないようにしたのである。

因みに死んだのは鶴川だけで、それ以外には怪我人すら出していない。大渋滞は起きたが。

 

 

 

射撃大会の翌日 王城

「これより、王前作戦会議を執り行います」

 

岡の化け物っぷりが証明された大会の翌日、円卓の間と呼ばれる王前会議用の部屋に岡と澤部は通された。王曰く「本来なら仮に異国が友好国であったとしても王前作戦会議には出席できないが、今回の事態は急を要し、中隊の働きで国民の死亡率が大きく変わってくるため特別に作戦会議にも参加してもらう」らしい。

既に円卓には地図が広げられており、色々と書き込まれているが全く読めない。というか、なんか謎のエイリアン言語にしか見えない。

 

「まずは魔軍の規模を説明させて頂きます。密偵からの情報によるとゴブリン等の雑兵の魔物20万、雑兵の上位種、例えばホブやチャンピオン等が8万、オーク15万、オークキング7万、漆黒騎士3万5,000です。

恐らく後一週間程で侵攻が開始されると予測されます」

 

「こちらが投入できる戦力は?」

 

「最前線となる砦、ウェルゾロッサ要塞に配備している兵力が弓兵5,000、槍兵6,000、重装歩兵3,000、騎士200です。動かせる兵力と動かして戦闘に間に合う兵力を総動員したとしても、弓兵2万8,000、槍兵4万3,000、重装歩兵3万2,000、騎士2,500です」

 

この世界に於いてゴブリンのような雑魚は、殆ど問題にならない程に弱い。しかし言うなればオークキングは吉田沙保里、漆黒騎士はヘルシングのアーカードみたいな認識なのである。

ヘルシングのアーカード、と言っても分からない読者もいるだろうから簡単に説明しておこう。平たく言うと「100万発入りのコスモガンを連射し、姿形を変幻自在に操り、並外れた動体視力と怪力を備え、殺傷できる攻撃を何十万回当てるか、何十万の亡者の群れを突破して殺傷できる攻撃を当てないと倒せない化け物」である。

 

「なんと言う事だ.......」

 

「そして何よりも問題なのですが、魔獣ゴウルアスを400体、確認いたしました。これは皆さん知ってのとおり、伝説級の魔獣です」

 

「な、なんだと!?ゴウルアス?あの魔帝の遺産と言われたゴウルアスが確認されただと!?」

 

「(澤部、ゴウルアスってなんぞや?)」

 

「(俺が知るか。ゴリアテの親戚じゃね?)」

 

「(なるほど)」

 

そんな訳ない。ゴリアテが400隻とか来たらたとえ皇軍の全戦力を投入しても.......、アレ?なんか嬉々としてミサイルを叩き込んでたり、ビームで撃ち抜いたり、砲撃を雨のようにぶち込んだり、果ては飛行強襲群と白亜衆が乗り移って内部から破壊していく様が浮かんでくるぞ?

 

「あのー、そのゴルゴンゾーラだかゴリアテだか知りませんが、その魔物はいったいなんです?」

 

「ゴウルアスは古の魔法帝国陸軍で過去に採用されていたとされる魔獣だよ。転移直前は別の兵器に取って代わっていたようだが全長が5mほどで、全高は2mと比較的小さいが、恐ろしいのはその放出する魔力だよ。

まず鋼のような体毛に覆われた肉体に、回復魔法がかかり続けるから疲れを知らない。主に使用される魔法は2種類あって、角から連射される爆裂魔法、これの連射力は相当なもので1騎で歩兵大隊を一瞬で壊滅させる事が出来るほどの魔力投射量だとされている。

そして口から放たれる球形の爆裂魔法。避ける事が困難な速度で飛翔し、当たればほとんどの物を破壊するとされる。おそらく城門など一撃で吹き飛ぶだろう。

現に神話によれば、魔帝亡き後に行われた種族間連合を滅亡寸前に追い込んだ魔王軍の進行に、このゴウルアスは40体も投入された。

ゴウルアスは太陽神の使いが使用していた鋼鉄の地竜でさえも、数騎がこの爆裂魔法によって怪我をし走る事が出来なくなったとある」

 

「その魔獣は太陽神の使いたちによって、破壊、殲滅されたのでしょうか?」

 

「そうだな。太陽神の使いが使役していた鋼鉄の地竜が放つ爆裂魔法も相当に強力で、何体かはそれで吹き飛ばしたと記載されている。だが大部分は魔王軍が決戦のために集結している時に、海に浮かぶ鋼鉄の神船による「カンホウ」と呼ばれた超大規模広域殲滅爆裂魔法の投射によって、一瞬で全滅したらしい」

 

「なら、普通に勝機は見えるな」

 

澤部がそう言った。円卓の間にいる全員が、驚愕の表情で岡と澤部の方を向く。

 

「皆さん、どうやら今回我々が遭難したのも何かの縁だったようです。未だ調査中な上、こちらには何の記録も残されていませんが、我々大日本皇国軍とは、貴方方の言う太陽神の使いです」

 

岡の言葉に円卓の間は「えぇ!?!?」という絶叫に包まれる。そりゃあ目の前に、伝説上の神が使わした軍の軍人が居るのだ。こうもなる。

 

「待て待て待て待て!本当に、その、太陽神の使いなのか?」

 

「はい。太陽神の使いとは、我が大日本皇国の前身に当たる大日本帝国の軍であると思われます。と言うのもとあるエルフの村の、太陽神の使いと関連のある施設に於いて、当時の帝国海軍主力艦上戦闘機、つまり空を飛ぶ兵器が確認されていますし、先ほど言った超大規模広域殲滅爆裂魔法「カンホウ」とは、恐らく洋上艦からの艦砲射撃という攻撃です」

 

「お、おい!すぐにあの魔写を持って参れ!!」

 

王が控えていた部下に命じると、部下は大急ぎで部屋を出て何処かに走っていった。数分後戻ってくると、手には一枚の封筒が握られていた。

 

「岡殿に澤部殿。もし本当に太陽神の使いなら、これが何かわかるか?」

 

そう言って王が見せたのは、一枚の写真であった。旭日旗を掲げた、巨大な戦艦である。

 

「や、大和!?」

 

「いや違う。大和じゃない」

 

違うと言った澤部はそのまま写真をじっくりと見ると、一言「あり得ない」と言って写真を机に置いた。

 

「澤部、大和じゃないのか?」

 

「あぁ。コイツは、大和じゃない。歴史では作られていない未成艦だ。恐らく1921年のワシントン海軍軍縮条約でポシャった、八八艦隊計画で建造予定だった紀伊型か八号艦型ってヤツだろう。

この2種類は建造されず、紀伊型の元になっている天城型も天城は関東大震災で廃棄になり、赤城は空母に改装されて後の一航戦になっている。従ってこの世には、建造すらされていない筈の艦だ」

 

「それなら、こっそり作ってたとか?」

 

「かもしれん。あの時代は大和型ですら隠し通していたんだし、建造されてはいたのかもしれない」

 

岡の予想が当たっていたかいないのかは、敢えて今は語らない。だがしかし、倒そうと思えば倒せなくはない事がこれでわかった。

 

「後で色々と聞きたいが、今は会議が先決だ。それで、本当にゴウルアスを倒せるのかね?」

 

「当時の戦車で倒したって事は、恐らく我々の基準で言えば軽装甲になります。一応中隊には150mm速射砲を搭載した鋼鉄の機械式魔獣だとか、対戦車兵器、つまりゴウルアスのような装甲を施した魔獣、兵器を破壊する為の兵器を搭載した歩行兵器等を保有しています。流石に殲滅できるかはわかりませんが、少なくとも善戦ぐらいならできるでしょう」

 

運がいい事に第75中隊は44式装甲車ハ型を2両装備しており、他にも対戦車ミサイルを搭載したロ型とへ型を一両ずつ、40式小型戦闘車を8台、WA1極光を100機、WA2月光を120機配備している。

ハ型はアメリカ陸軍のストライカーMGSや16式機動戦闘車のように、足回りを装輪装甲車にした戦車みたいな装甲車である。またロ型はいつぞやの人間野球やら庁舎にジャンプして突っ込んで大暴れしていた装甲車だし、へ型は89式走行戦闘車のような大口径機関砲と対戦車ミサイルを搭載した装輪装甲車である。極光と月光は色々武装バリエーションがあるが、対戦車ミサイルを搭載したモデルも多数ある。これならゴウルアスでも後れをとる事はないだろう。

 

「それに歩兵に関しても、全員が例の漆黒騎士、でしたか?あの魔物だか魔人だか知りませんが、その騎士も一撃で倒す事の出来る兵器を装備しています。

練度に関しても我が第7師団は、帝国陸軍時代からの精鋭師団。練度に関しても、エスペラント王国の精鋭に後れを取る事もないでしょう」

 

これらの情報に希望を見出すのは簡単であった。これ以降、会議は夜まで続き作戦も決まった。翌日、一部の隊員は先行してウェルゾロッサ要塞に向かい、残りは王国の用意した馬車に分譲して向かった。勿論持てる全ての装備を身に纏った、完全武装である。

現地で銃士ザビル率いる精鋭銃士部隊と合流し、武器の貸与が行われた。因みにザビルは先の勝負では負けたが、どうやら本当に天才だったようですぐにスナイパーライフルの扱いをマスターし、岡には及ばなかったが岡以外の中隊にいたスナイパーよりも精度が上であった。岡曰く「もしこのまま練習を続ければ、もしかすると俺以上になるかもしれない」らしい。

 

 

「野郎共!!早いとこ屠殺場を作り上げるぞ!!!!」

 

「「「「「おう!!!!!」」」」」

 

ウェルゾロッサ要塞について最初にやった事は、屠殺場作り、もといトラップ作りである。

ウェルゾロッサ要塞の正面大体5km地点には、巨大な谷が広がっている。そこに様々な仕掛けを配置し、少しでも数を減らす作戦である。本当に「使える物は何でも使え」作戦で、色々と突貫作業で作っている。また今回は相手が魔物、軍法上では「敵対性有害生物」なので法律や条約に縛られる筈がない。そこで岡の指示した作戦は、結構エゲツない物であった。

 

「よーし、上に丸太を仕掛けるぞ」

 

「C4もありったけ設置しろ。どうせC4はC5の予備とか訓練でしか使わないんだ。使ったところで、文句は言われん!寧ろ在庫処分に協力してると思え!!ケチケチするな、景気良く設置しろ!」

 

「ここにワイヤートラップでも仕掛けるか。何匹か吊るし首に出来る」

 

例えば谷の上に丸太や岩を設置し敵が通ると支えが外れて降ってくる仕掛けだとか、爆薬で崖の一部が崩れる仕掛けだとか、吊るし首や騎士の首をぶった斬るワイヤートラップだとかエグい物を仕掛けている。しかし一番やばいのは、絶対にこれだろう。

 

「ウゲッ!!臭ァ!!!!!」

 

「そりゃあ先端を尖らせた丸太に、大量の糞を塗りたくってんだ。臭いに決まって、オエェェェェ!!!」

 

「待って吐きそオロロロロロロロロロロロロロロロ」

 

そう。嫌がらせ目的兼遅滞戦闘目的で便所の糞を塗りたくった丸太を落とし穴の中に設置し、それに敵を突き刺そうという作戦である。糞には破傷風菌が含まれているので、傷口に糞が入れば破傷風となる可能性が高い。ただ症状が出るまで時間が掛かるし水で洗えば問題ないが、洗えば大事な水を使う事になる。かと言って洗わなければ、破傷風になり苦しみもがく事になる。

他にも出来損ない&壊れた槍、矢、剣などにキノコの毒を塗り、それを上から落とす仕掛けも作ってある。

また地中に油などの可燃性の物を仕掛けて敵が侵攻してくると燃えるような仕掛けも作ったし、C2のパーツを流用して即席電気トラップも作った。この魔の谷を抜けると今度は、一面に地雷とクレイモアが仕掛けられている。その後方には連射式グレネードランチャーやら重機関銃の十字砲火、更には迫撃砲や速射砲の砲撃に晒される。因みに後半の戦法は、安心と信頼のベルナドット隊長戦法である。

 

 

 

同時刻 アンニュール皇国秘密基地

「ダクシルド様、ご報告が御座います」

 

「なんだね?」

 

「それが、最初の攻撃目標であるウェルゾロッサ要塞に、そ、その、太陽神の使いが確認されました.......」

 

ダクシルドは部下の報告に耳を疑った。太陽神の使いと言えば、かつて魔王を打ち破った軍勢である。それが再臨したとなれば、一気に風向きは悪くなる。

 

「鋼鉄の地竜などの兵器は確認されてるのか!?!?」

 

「こちらに魔写があります」

 

そう言って部下は44式装輪装甲車ハ型の写った魔写を見せる。

 

「ふむ。これならまあ、問題なかろう。コイツだけか?」

 

「いえ。他にも数台いますが、巨大な砲を搭載しているのはこれだけです」

 

「ならば問題はない」

 

そう言いのけたダクシルドに、部下は驚いた表情している。この自信が何処から来ているのかと言うと、なんとも馬鹿げた話である。

 

「この鋼鉄の地竜、よく見たまえ。確かに装甲を施されているが、殆ど傾斜していない。つまり奴らの兵器は傾斜装甲を知らないのだ。ならばこの兵器は、ゴウルアスの攻撃で十分に破壊できる」

 

「し、しかし!複合装甲なら話が変わるのでは?」

 

「確かにそうだ。だがこの地にそんな高等技術があるわけ無いし、第一そんなのは憶測に過ぎない。というか、それを調べるなんて労力を使いたくない。

いいか?奴らは弱い。我が軍の前に平伏し、太陽神の使いすらも我らの前で命乞いをする運命なのだ。それから君、次の人事を楽しみにしたまえ。私に楯突いた事、後悔させてやる」

 

なんとこのダクシルド、部下の報告を更に調査するのを「面倒くさい」という理由で切り捨てたのだ。そればかりか普通にパワハラも働く始末。無能以外の何者でも無い。

 

「申し訳、ありませんでした」

 

「今更遅いわ。さて、私はティータイムにでもするか」

 

 

時は流れ、いよいよ侵攻の予測日を明日に控えた夜。中隊が間借りしている宿舎のドアがノックされ、1人の騎士が顔を出す。

 

「すみません。兵舎に町娘が一人、岡殿を訪ねてきていますが、どうされますか?」

 

中隊の面々とザビルら銃士隊は顔を見合わせると、途端にゲスな表情を浮かべる。

というのも、この町娘というのは恐らくサフィーネである。そしてこのサフィーネは、岡本人は気付いていないが側から見て明らかに岡へ好意を寄せている。決戦前のこのタイミングで、想いを寄せる男の所に来る。つまりイジり倒せる面白い事(・・・・・・・・・・)が起こる!!

 

「サフィーネだな。おい真司!!行ってこい!!!」

 

「まだ会議途中の筈だ。行くわけには」

 

「もうほとんど終わっていただろ?あとは時間の確認だけだが、極論明日朝準備が整えばそれで良い。

それよりも、お前は明日の今頃生きているかどうかも分かんねぇんだぞ!!そんな規律に囚われて、人生後悔して良いのか?良いから行ってこい!!」

 

誰も咎める様子は無く、岡は流れで兵舎の外へ向かった。そしてその後を、部屋にいた全員がこっそりと付ける。

兵舎の外には、一人たたずむ女性がいた。予想通り、サフィーネである。

 

「サフィーネ!どうした?もう夜だぜ」

 

「岡君。あの、その.......」

 

「どうした?」

 

(来るぞ、愛の告白が)

 

「お願い、死なないで.......」

 

僅かに下を向き、不安そうな顔で彼女は岡を見つめた。告白ではなかったが、まあまだジャブ。次が絶対にあると確信しつつも、どこか焦ったい。早く告白しちまえと、茂みに潜んだ戦友達は悶々としていた。

一方サフィーネは糸で作ったお守りを差し出す。

 

「これは?」

 

「お守り。女が想いを込めて作れば、死なずに済むんだって」

 

「ありがとう。死なずに帰ってくるから、またサフィーネのご飯が食べたいな」

 

「うん!絶対おいしいもの作るから、必ず、死なずに帰ってきて!!」

 

「ああ」

 

空気は少し寒く、澄んだ空に、月が2つ見える。物語の騎士と姫のようだが、戦友達は少し物足りなかった。

 

((((((((そこは告るかキスしろよ!!!!)))))))

 

流石にお守り渡してチャンチャンでは、ちょっと余りに味気ない。そこは告白かキス、出来れば軽くR18コースの手前まで行ってほしい。じゃあどうするかと言うと、中に割り込んで無理矢理やらせるまで。

 

「おいおい真司にサフィーネちゃん。流石にそりゃ無いだろ?」

 

「彰!?」

「澤部くん!!」

 

「だけじゃないよ」

 

そうザビルが言ったのを皮切りに、ゾロゾロと茂みと物陰から仲間達が出てくる。

 

「お前らな、そこは告白かキスするところだろ!?サフィーネちゃん。そこのバカは気付いてないがな、アンタが真司に恋心を抱いているの、バレバレだったぜ?」

 

「え///////」

 

「ウソ!?サフィーネが俺の事を!?!?」

 

「私は出会って日が短いが、その私でも気付く程だった」

 

「ほら、ザビっちもこう言ってる」

 

澤部がそう言うと後ろを向き、仲間達にゲスの笑みを浮かべながら合図を送る。

 

「はいせーの!」

 

「「「「「「こーくはく!!!」」」」」」

 

「そんなんじゃ聞こえな〜い!!」

 

「「「「「「こーくはく!!!!!」」」」」」

 

「もういっちょ言ってみよー!」

 

「「「「「「こーくはく!!!!!」」」」」」

 

告白コールである。流石のサフィーネも告白コールによる混乱と、バレていた混乱で正常な判断が付かなかったのだろう。いつもならブレーキが掛かるが、なんと告白する気になってしまった。

 

「おい!アレやるぞ」

 

「ほいほい。ちょっと待ってくださいよ」

 

澤部の指示に部下の1人がスマホを取り出して、音楽アプリを立ち上げる。そして良い感じのBGMを流す。

 

チャラララ、チャラララ、チャチャラララ。チャチャラー

中川に浮かぶぅ、夕日を目掛けてー

 

「こ○亀じゃねーか!!!!」

 

「あ、ヤベッ!じゃあこっち!」

 

ダメだね。ダメよ、ダァメなのよぉ

 

「今度はばかみたいじゃねーか!!文字通りバカみたいな事になってんぞ!?!?」

 

「ならこっち!」

 

Just give me the feeling, push my motor everyday

Gospel of the throttle, push my engine all the way

Sing it

 

「「「「Na Na Na Na Na Na Na Na Na Na。Na Na Na Na Na Na Na Na Na Na」」」」」

 

「じゃないよ!!!何だこれ、ドリフターズのオープニングじゃねーか!!!!」

 

「今度こそ!」

 

今のところ雰囲気にあった物は全く流れていないが、ようやくマトモなヤツが流れた。

 

「よーし、どうぞ」

 

「いや、どうぞじゃな」

「岡くん!」

 

岡が澤部に突っ込もうとした瞬間、サフィーネは岡の顔を無理矢理自分の方に向けさせた。

 

「あのね、私、岡くんの事が好き。だから、私と、結婚してください!!」

 

「よっしゃぁ!!カップルせいり、え?」

「今何つった?」

「結婚?」

「中隊長が、サフィーネちゃんと結婚」

「つまり?」

 

中隊の兵士達の動きは早かった。他の仲間を呼びに走り、澤部は適当なローブを着てメガネを掛けて、クソ分厚い辞書か何かを何処から持ってくる。

 

「ソレデハコレヨリ、新郎オカ・シンジト、新婦サフィーネノ結婚式ジャナイケド、ソレニ近イ謎儀式ヲ取リ行イマス」

 

「いや、彰?何してんだ?」

 

「だってお前、好きだろサフィーネのこと」

 

「いやまあ、そりゃそうだけど」

 

「ダッタラ、儀式ヲシマース。拒否権ハアリーマセン」

 

岡が振り返ると、なんといつの間にか中隊の全員が参列していた。しかもザビル達まで。

 

「新婦サフィーネ。汝ハ、健ヤカナル時モ、豊カナル時モ、病メル時モ、貧シイ時モ新郎ヲ愛スルト近イマスカ?」

 

「は、はい!」

 

「シンジ。オ前ハ軍人ナノデ、女ヲ守リマスネ?ナラバ、サフィーネヲ守ルト誓イマスカ?」

 

「いや、だから」

 

「誓イマスカ?」

 

「いやだか――」

「誓うかって聞いてんだコラ」

 

「はい.......」

 

「デハ、我々ノメシウマノ為、ジャナクテ誓イノ為ニ口付ヲ」

 

後ろからは「キース、キース」という男子学生のような野次が聴こえてくる。岡も腹を括ったのか、サフィーネの顎を持ち上げるとそのまま唇を奪った。

そして歓声が上がる。数秒後離れると、岡はそのまま澤部の肩を掴み肩を力一杯握り始めた。

 

「あ、あのー岡少佐?怒ですか?」

 

「ははは」

 

「あ、ヤバい。やり過ぎた」

 

「全く。君が責任を取ってくれ給え」

 

そう言ってザビルはそそくさと逃亡しようとする。しかし岡は「ザビルさん、アンタも同罪だぜ?」とドスの利いた声で言うと、ピタリと止まった。その間に他の兵士達も逃げようとするが、やはり岡のドスの利いた声で呼び止められる。

 

「さてさて。なんか妻が出来たわけだが、一体なんでここにいるのかな?」

 

「し、真司?見方を変えよう。俺達は、お前達夫婦の恋のキューピッドだ。な?」

 

「そうかそうか。ははは」

 

「は、ははは。ははは」

 

澤部は引き攣った笑顔で笑うが、次の瞬間空高く吹っ飛ばされる。

 

「ははは、じゃねーよ!!テメェら、全員ぶっ飛ばす!!!!」

 

「ヤバい逃げろ!!!!」

 

怒りで覚醒した岡は夜通し要塞中を走り回り、1人ずつ確実に関係者をボコボコにしていった。翌日、全員がタンコブを抱えて魔物と戦う羽目になった。

 

 

 

 

*1
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