最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第三十九話殲滅戦

サフィーネは殺される事を覚悟したその瞬間、腹部を何かが貫いた。

 

「first shot、hit。崩れ落ち、膝で一瞬止まる。head shot aim、fire」

 

ズドン!!

 

「head shot.......hit」

 

そう。オークキングは塔の上に陣取っていた岡が、態々7.62mm仕様から12.7mm仕様に変更した48式の狙撃で殺したのである。

 

「中隊長より救援班。狙撃戦果を報告せよ」

 

『腹部が大穴開けて貫通。頭は、あー、貫通というより消し飛んでます。絶対12.7mm弾使ったでしょ』

 

「愛しのサフィーネを害そうとしたクズだ。本当なら澤部に頼んで710mm砲の支援砲撃で消してやりたいところだ」

 

『うわぁ.......』

 

久しぶりに見た容赦無しモードの岡に、部下達は少し引いていた。一方でサフィーネは無線で連絡中の兵士に「ありがとうと伝えてほしい」と頼んでいた。そこでその兵士は無線を端末に切り替えて、それをサフィーネに渡した。

 

「それに喋ってみな。狙撃。助けてくれた人に繋がっている」

 

「あ、え、えっと、助けてくれてありがとうございます」

 

『どういたしまして、サフィーネ』

 

茶目っ気たっぷりな声でそう答えた岡。サフィーネはまさか昨日自分がプロポーズした人だとは思っておらず、なんかワタワタしていて可愛い。まあ好きな男性がピンチの時に助けてくれるとかいう、確実に惚れてしまう状況なのだ。多分驚きよりも、照れから来るものだろう。

 

『見たか?これこそが、俺の実力の一端だ。俺の射程内なら、どんな時でもお前を守ってやる』

 

「フシューーーーー.......」

 

「うお!?サフィーネちゃんが恥ずかしさの余り、頭から湯気出してぶっ倒れたぞ!!」

「いやまあ、これ戦犯は中隊長だし」

「戦闘が終わったら、密室に二人を閉じ込めるか?」

 

サフィーネがオーバーヒートで倒れてしまい、救援班の皇国兵は笑いながら担いで40式のキャビンに乗せる。ジャスティードも乗ろうとしてきたが、ドライバーの「テメェは自分の馬で、早く持ち場に戻れ。お前の持ち場、ここじゃないだろ」と言われて、トボトボと自分の持ち場へと戻っていった。

 

 

「この距離と、あの狭さをクリアして当てたのか?」

 

「あぁ」

 

「な!?」

 

ザビルが驚くのも無理はない。1kmの狙撃でも普通に凄いのだが、驚いてるのはそこではない。岡は塔や建物との間にある、ごく僅かな隙間を通して狙撃したのだ。イメージで言ったら「針に糸を通す」と言った所だろう。

だがこの糸通しは、1ミリでも左右にずれれば着弾点は建物の壁である。そんな場所を難なく、それも弾丸としては巨大な物で狙撃したのである。こんな芸当はザビルとて、どんなに訓練を積んでも出来る気がしない神技である。

そんな事を考えていると、

 

「ゴウルアスだー!!!!ゴウルアスが来たぞー!!!!!!!!」

 

城壁の王国兵がそう叫んだ。確認すると角の生えた巨大な猛犬、ないし狼といった外見に翼が生えた化け物がいた。アレこそが今回の戦闘における天王山、ゴウルアスである。

 

「各員戦闘準備!!城壁に38式を配備!対戦車兵装を搭載した月光、極光、44式は討って出ろ!!砲撃仕様の月光は城壁内より、支援砲撃にて敵を牽制!!急げッ!!!!」

 

「俺達はどうする?」

 

「我々はこのまま、目を狙撃する。恐らく12.7mm対戦車徹甲弾なら、目くらいなら撃ち抜ける筈だ!」

 

「了解した!」

 

ザビルは自分の48式の機関部やバレルを変更して、12.7mm弾仕様に変更する。その間に城壁の王国兵を下げて、代わりに44式携行式対戦車ミサイルを装備した皇国兵が配置につく。

更に月光、極光、44式ハ型が城門の外に出て攻撃準備に入る。

 

「システム起動。メットとの同期.......完了。システム、スタンバイからアタックへ」

 

48式の最大の特徴は、照準装置が基本的に銃本体に搭載されていない事である。アメリカが使うFGM-148 ジャベリンは、馬鹿でかい装置が発射筒の横に付いている。だがこの48式は照準用のレーザーの出力以外の全てが機動甲冑で代替可能であり、メットと無線か有線で繋ぐ事で操作可能なのである。

勿論代替されてる全ての機能(例えばダイレクトアタックとトップアタックの変更)を、通常の照準装置を取り付けて使う事も出来る。だがこれは他国に供与する際や訓練、或いは甲冑が壊れた際にしか使われることはない。因みに威力は一撃で、あの46式をトップアタック限定だが破壊できる。

 

「発射モード、トップアタックに変更。ターゲット、ロック」

 

ピピッ、ピッピッピッピピィィィィ

 

「発射!」

 

ミサイルは筒から飛び出すと少し下にガクリと下がった後、エンジンに点火して一気に上昇していく。そしてある程度の高さまで行くと、そのまま急降下してゴウルアスの背中に突き刺さり起爆する。

 

グオォォォン!!!!!!

 

「ハハ、あのデカ犬。余りの痛さに、クソ野太い声を出して吠えてやがる!」

 

「車長!だったら、もっと吠えさせましょうぜ!?」

 

「よっしゃ!おい、操縦!前進だ!」

 

「アイアイサー」

 

操縦士がアクセルを踏んで、一気に加速する44式。そのまま狙いをつけつつ、ドリフトしてカッコ良く射撃を開始する。

 

「狙ってー、PON!!」

 

「待ってました!!」

 

ズドォン!!!!

 

何処ぞの巡洋戦艦のKAN-SENが言いそうなセリフと共に150mm徹甲弾が発射され、渓谷前の平原に展開しようとしていたゴウルアスの頭を撃ち抜く。どんな巨体であっても、所詮は生物。頭を吹き飛ばざれては、生きていられない。

あ、ちなみにドリフト射撃は全く意味がない。ただのカッコつけ兼見栄えをよくするためである。

 

「そーれ、こっちも44式に続け!!対戦車ミサイル、一斉発射だ!!!!」

 

極光と月光が対戦車ミサイル旋風を一斉発射してゴウルアスを屠る。ザビルと岡も狙撃で目を狙い、強力な目潰しを行なって殲滅の手助けを行う。そうこうしていると派遣していたロ型とヘ型も乱入し、援護射撃や牽制射撃で援護しつつ対戦車ミサイルで倒していく。

およそ一時間で、ゴウルアスの殲滅に成功した。そして皇国軍が合流し、第75中隊は日本へ帰国!岡はエスペラント王国に残りサフィーネと結婚して、なんやかんやで王位に着きましたとさ。めでたしめでたし。

 

 

〜完〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

となってくれたら、どんなに良かったことか。

現実はというと、後の歴史でエスペラント側では『地獄のウェルゾロッサ』と呼ばれ、日本側では『ウェルゾロッサ防衛戦』として記録されるこの戦いは、より激化する事となってしまった。というのも情報では「ゴウルアスは400体」とされていた。

だが蓋を開けてみれば、400体どころの数ではなかった。400体は確実に倒した筈なのに、まだ後ろには大量のゴウルアスがいた。そして流石に、そろそろ弾薬が底をつき始めていた。

 

「クソッ、偵察に出ていた兵は何を記録していたのだ!」

 

「こりゃ、いよいよ持ってヤバくなってきた。おい彰、聞こえるか?」

 

『なんだこのクソ忙しい時に!!』

 

岡は一つの決断を下した。一部の軍人を逃すことにしたのである。

 

「彰。頼みがある。この要塞から撤退して、援軍を連れてきてくれ」

 

『はあ!?何言ってやがる!!俺はテメェの相棒だ。お前が行く戦場に俺も行く!!願わくは、戦死するのなら共にだ!!学校でそう決めただろ!?!?忘れたか!!!』

 

「忘れちゃいないよ。だが現実問題、対戦車兵器が不足している以上、これ以上の迎撃は不可能だ。奴が戦車なら手榴弾とかグレポンで肉迫する戦法も取れるが、何処が弱点とかわからん以上は火力で押し切る他ない。

お前は空軍からの出向で、本業は攻撃誘導だろ?ならば俺が知る中で1番の練度を持ち、俺が最も信頼する奴であるお前に、俺達の命運を託したい」

 

このままでは、岡達もカルズ地区の皆も恐らく死ぬだろう。ならば指揮官としてすべきことは、出来る限りの手を打って仲間を、守るべき者を守ることである。

 

『軍は動くと思うか?』

 

「絶対に動く。俺達のトップは天皇陛下だが、実質のトップは天皇陛下ではない。我らが軍神、神谷長官だ。あの人なら、あの長官なら絶対に動かしてくれる!」

 

『.......わかった。死ぬなよ、真司』

 

「あぁ」

 

澤部は数人の部下を連れて、40式に乗り込もうとした。その瞬間、澤部の耳にはこの地では聞くことのない音を捉えた。雷とは違う、だが大きな重低音が空から聞こえた。王国兵は殆ど気付いてないし、気付いても雷かなにかと思って気にも留めていない。

だが澤部はこの音の正体がわかった。来たのだ。文字通り、ゲームのルールを書き換えて、盤上すらも根底からひっくり返す最強のチートが。

 

「なあ真司。やっぱりさっきの申し出、断らせてもらうぜ」

 

『なに!?ならば命令だ、援軍を連れて戻っ』

「勘違いすんな。どうやら神谷長官は動かない。そう。あの人は動かないさ。どうやら既に動いていた(・・・・・・・)らしい」

 

『どういうことだ?』

 

岡がそう言った瞬間、澤部の頭上と岡のいる塔の真横を燻銀の機体が横切っていった。ザビル含め、王国兵は何が通ったのか分からなかった。だが岡含む皇国兵はわかった。赤い日の丸を描いた逆ガルの得意な見た目のジェット機なんて、大日本皇国しか使っていない。

援軍が。助けが来たのだ。

 

「ターゲット、ロック!投下ァ!!!!」

 

「インガンレンジ、ファイア!!!!」

 

「対戦車ロケット弾だ。受け取りやがれ!!!」

 

「さあ、デザートはミサイルだ。行けぇ!!!!」

 

4機のA10彗星IIが、自機の様々な武装でゴウルアスを撃退する。だが援軍はそれだけではない。今度は東側の森林から、地響きがしてきた。見てみれば巨大な鋼鉄の塊、34式戦車が多数出てきた。それだけではない。44式の各型に加え33式水陸両用強襲装甲車、28式水陸両用装甲車もゾロゾロ出てくる。

海軍陸戦隊も到着したのだ。

 

『こちらは第7海兵師団。師団長、寺山だ。救援に来たぞ、本家』

 

「こちら陸軍第7師団。第75中隊、中隊長の岡であります。よかった、分家の皆様が来てくれたのなら心強いです」

 

『フフ。何を言うかね、岡くん。まさか分家だけとは思ってないだろうね?勿論本家、君達の属する陸軍の第7師団も来ているよ』

 

空を見れば無数の輸送機が飛来し、戦車やら装甲車やら自走砲やら、とにかく様々な兵器と多数の兵員が降下してくる。そしてそこに描かれる紋章は、赤地に北海道マークの紋章である。

この部隊こそ今尚北海道を守り続ける北鎮部隊。皇国陸軍第7師団である。

因みにさっきから出ている本家や分家というのは、軍内でのあだ名である。海軍陸戦隊の第7師団が陸軍の第7師団をリスペクトしており、ある時「自分たちは北鎮部隊の分家だ」と言った事から、いつの間にか陸軍の第7師団を「本家」、海軍陸戦隊の第7師団を「分家」と称するようになった。

 

『岡、大丈夫か!?』

 

「大迫師団長!?ハッ、第75中隊、総員無事であります!」

 

『いや、良かった良かった。こっちは「わい達が乗った機体が墜落した」て聞いて、おってん立ってんおられんでな(居ても立っても居られなくてな)いっき(すぐに)部隊を準備して、ずっと待機しちょったんじゃ。実はこん出撃も結構フレング(フライング)でな、無断で出撃した後に出撃命令が出た。ハッハッハッ』

 

因みにこの大迫師団長、鹿児島県出身である。お陰で薩摩弁をよく喋るが、偶に何言ってるか分からないことがある。

尚これは主の体験談なのだが、私の母方の祖父は長いこと鹿児島の下の方に住んでいた。でもって冠婚葬祭やらで親戚が集まっていて横で話を聞いていたが、最早何を言ってるのかさっぱりわからない。じゃっとん位はわかるが、それ以外はもうエイリアンの会話を聞いているようだった。都会の方はいいが、割とガチで下の方の鹿児島弁は全くの別物。

 

(この師団長、優秀なんだけど大胆なんだよなぁ。よくクビにならないなおい)

 

澤部は無線で聞こえてきた話を聞いて、心の中でそう突っ込んだ。本来なら軍隊としてあるまじき行為なのだが、神谷が結構その辺を無理矢理捻じ曲げたりとか規則の抜け道を使って無茶やるタイプなので、意外とその辺はある程度は許される。勿論、こういう筋の通った話の時だけだが。

 

「さてお前達。今この異世界の異国の地に、雪国を守る二つの北鎮部隊が揃った。陸軍第7師団!」

 

「第7海兵師団!」

 

「「攻撃開始!!!!」」

 

そこからは実に一方的な戦いであった。46式戦車やら51式510mm自走砲のような化け物が多数投入されたのだ。もうゴウルアスとて、ダメージは与えられない。だが、それだけではなかったのだ。

 

 

 

エスペラント王国 近海

「メインタンクブロー」

 

「浮上後、直ちに砲撃に移る!610mm電磁投射砲、砲撃準備!!」

 

「了解。航空機発艦用回路、切断。電磁投射砲への回路、接続」

「バイパスをカタパルトから、電磁投射砲に変更します。電圧安定」

「照準装置、観測機に接続。以降、照準はレーダーからリアルタイム目視照準にて行う」

 

北の極寒の海に、その巨体は姿を現した。最新鋭潜水艦『伊2000』である。アリコーン、と言えばわかるだろう。

 

「照準情報、確認した。砲塔ロック解除。展開」

 

船体前部が巨大な砲身に変形し、その砲身はウェルゾロッサ要塞の方へ向けられる。

 

「撃ちー方はじめー!!」

 

雷鳴の如き爆音を響かせ、榴弾が発射される。これに加えて第五主力艦隊の総旗艦、超戦艦『 建御雷神(たけみかづち)』による支援砲撃、更には第五主力艦隊と第三潜水艦隊各艦による、対艦巡航ミサイル桜島による支援攻撃による要因も大きい。

結果として、追加のゴウルアスはその殆どが文字通り消し飛んだのである。これを見て驚いたのは他でもない、無能のダクシルドであった。

 

「あり.......得ない..............」

 

(あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!!何故、何故こんなことに!!なんなのだ、太陽神の使いとてこんな魔導は使えない。奴らは、奴らは一体なんなのだ!!まさか、魔帝様なのか?いや、そんな筈は。だがしかし.......)

 

「ダクシルド様!早く逃げますよ!!」

 

「あ、あぁ。そ、そうだ。ちょっとまて!」

 

そう言ってダクシルドは檻のある場所に走る。そこにはボロボロになった、中川貴一郎の姿があった。

 

「おいお前、来い!」

 

「いや!いやだ!死にたくない!!!!金なら払う!!」

 

そう喚くが、ダクシルドは聞く耳を持たない。そのまま中川はどこかに引き摺られていった。

一方でウェルゾロッサ要塞内は、歓喜の渦に包まれていた。あのゴウルアスを、大量に倒したのだ。こうもなるだろう。だがその歓喜の渦は、少しして消沈する事になる。

 

「師団長!本部より、この渓谷の先に魔物の大群がいるとの情報が!!」

 

「岡!行ってこい。この地はお前達の方が詳しいからな。装甲車はこっちのを使え」

 

「ハッ!」

 

落ち着いて鹿児島弁の引っ込んだ大迫が、岡にそう命じた。だがその命令の直後、人だかりの奥から予想だにもしない人間が歌と共に現れた。

 

「もーも太郎さん、桃太郎さん。これからクズどもの征伐に〜♪助太刀するぜ、長官がぁ〜♪」

 

「えぇ!?!?」

 

「ちょ、長官!?!?!?」

 

なんとそこには、完全武装の白亜衆を従える最強の兵士、神谷の姿があったのだ。なんと神谷はあの命令を出した後、プロトタイプの輸送機に乗ってこの地にやって来たのだ。

 

「多分その軍勢の中に、ボスがいるはずだからな。この際、俺達もついていくぜ。こちとら最近、デスクワークで体が鈍ってるからな。あ、現地人部隊も徴用していいぜ」

 

「な、何故それを.......」

 

「ほら、早く早く」

 

岡達第75中隊と白亜衆は44式に乗り込み、渓谷の先にある平原に向かう。車内でザビルは、さっき出てきた男について聞いた。

 

「岡殿。あの男が、無線で言っていた」

 

「あ、あぁ。大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三大将だ。あの方は皇国軍の実質的なトップであると同時に皇国一の刀の使い手であり、世界最強にして皇国軍の中でも最精鋭の部隊、神谷戦闘団の団長だ。

さっき来た時、後ろに真っ白な鎧を着た連中が居ただろ?アレは白亜衆。最精鋭の神谷戦闘団の中でも、優れた兵士のみが配属される最強の戦闘集団だ」

 

「刀というと、剣の一種だろう?何故銃があるのに剣で戦うのだ?」

 

「知らないな。だが、あの方の刀捌きを普通の物と考えるな。機関銃だろうが砲弾だろうが斬り裂いて迎撃し、数十人を一気に殲滅する。たとえ戦車、ゴウルアスと戦ってた鋼鉄の塊であっても、すぐに行動不能にする」

 

「それ、人間なのか.......?」

 

「「「「「.......」」」」」

 

岡含む、装甲車に乗っていた皇国兵全員が口を閉ざした。

渓谷を抜けると、平原が広がっており魔物の大群がいた。だが神谷は、例の奴らにとある命令を命じた。

 

「突撃。轢き殺せ」

 

『ヒャッハーーーーー!!!!!!』

『やっぱり神谷閣下は狂ってるぜ!!!!ウラァァァァァァ!!!!!』

 

そう。アルタラス統治機構に装甲車で突撃したり、エストシラント攻略戦で城壁を爆走して人間野球していた狂った装甲車乗りである。

 

「そーら逃げろ逃げろ!!」

 

「ヒャッハーーーーー!!!!!撃ちまくれ!!!!!」

 

クラクション鳴らしながら、四方八方に鉛玉と対人グレネード弾を撃ち込みまくる。勿論生身でその苛烈な攻撃を防いだり、凌いだりする事ができる筈もなく吹き飛ばされていく。

 

「なぁ岡殿。これ、外はどうなっているんだ?」

 

「うん、絶対見るな。ホント、マジで。魔物も逃げ出すぐらいの地獄ができてるから」

 

「ど、どういうことだ?」

 

「今ぶっ放してる武器は、全てが少ーし掠っただけで絶命できるような武器だ。それが無数に、そして連続して射撃可能。この意味、わかるだろ?」

 

「.......わかりたくなかった」

 

ザビルは理解した。いや。理解したくなかったが理解してしまった、と言ったほうが正しいだろう。

だがそんな事も束の間。車両はいきなり急停止し、予想外の停車に兵員室の兵士達は一気に壁へ押しつけられる。

 

「おっと、コイツは不味い。長官、正面に例のデカイ戦車生物がいやがりますぜ!しかも背中に誰か乗ってやがる.......」

 

『そうか。なら、ちょっと撃退してくる』

 

「は?え!?」

 

次の瞬間、ハ型の頭上を完全武装の神谷が通過する。それに気付いた魔人、バハーラはゴウルアスに命じて爆裂魔法を発射させた。

 

転移(テレポーテーション)

 

だが戦車砲よりも発射に時間がかかる上に予備動作もあって、おまけに弾速も砲弾に劣る爆裂魔法を、砲弾を捉えられる上に刀で切り裂くことのできる神谷の前では対抗策を打たれて終わりである。

魔法によってバハーラの背後に回り込み、そのまま袈裟斬りにしてやろうと踏み込んだ。だがそれを背後に控えた赤い鎧を着用した4人に阻まれる。

 

「チッ。四天王、ってところか」

 

目の前のローブを纏った偉そうな魔人(バハーラ)はゆっくりと振り返った。アフリカ系黒人よりも黒い肌に、額には日本の角と謎の四角い宝石のような飾り。顔から言って、人間なら大体5、60の爺さんである。

神谷はここで1つ気付いた。この爺さんからは、何故か『意思』を感じない。勿論そんな物、神谷でも一目ではわからない。だが勘がそう言っている。そして額の四角い謎の宝石状の物体。大体こういうのはファンタジー系なら、操る為の宝珠的なヤツである。

 

世界時間鈍化(ワールドタイム・スロー)

 

取り敢えず時の流れが遅くなりそうな魔法を唱えて、時間を稼ぐ。ぶっつけ本番だがしっかり流れが遅くなっている、というか止まっている。

 

道具最上位鑑定(トップレベル・アプライザル・アイテム)

 

今度は宝珠的な何かの詳細が分かりそうな魔法で探ってみる。どうやらこの宝珠的な何かは本当に宝珠だったようで、名前を『広域支配の宝珠』というらしい。ゲームとかファンタジー系小説で言う所の精神支配を施す物で、この宝石を額に埋め込むと対象含める周囲の同じ民族に特定の人物への感情を抱かせる事が出来るらしい。

この感情というのは様々で友情、愛情、忠義心を筆頭に果ては憎悪や恨みまでも抱かせられるらしい。つまり今回の一件は、もしかしなくても背後に何かしらの第三勢力が文字通り操った代理戦争だろう。

 

「全く、お騒がせ勢力め。取り敢えず、この哀れな民族は解放しましょうかね。上位道具破壊(グレーター・ブレイク・アイテム)。あ、それから世界時間鈍化(ワールドタイム・スロー)解除っと」

 

時間の流れを元に戻したのと同じタイミングで、バハーラの額にあった宝石が砕けた。恐らく催眠というか、精神支配から解放されたのだろう。そしてその余波なのかは知らないが、ゴウルアスの背中の上で器用に転げ回っている。

 

「うがぁぁぁぁっ!!!」

 

「おーい、爺さん。転げ落ちるぞー」

 

「うぐっ.......。私は、一体、なにを.......」

 

「あ、復活した」

 

記憶が無いパターンか、今から記憶が蘇るパターンか、はたまた暴走するパターンの三択である。

どうやら今回は記憶が蘇ったパターンだったようで、顔が憤怒の表情に染まり「ダクシルドめぇぇぇ!!!!」と叫んだ。

 

「神降ろしの聖者バハーラ様、我々は一体何をしていたのでしょう?記憶が、ありません。他の部隊の者も、記憶が無いと申し立てております」

 

「ダクシルドに我等は操られていたのだ。エスペラント王国には、随分と悪い事をしたな.......。

よし!!これより我らは基地へ戻り、憎きアニュンリール皇国のダクシルドを捕獲する。姫様の幽閉位置については、拷問をして吐かせよう。最後に奴が本国に連絡を取ると姫様の身が危ないので、吐かせた後は、殺処分する」

 

「ははっ!!」

 

「って、ちょっと待て!!俺を無視するなよ!!!!」

 

神谷は完全にスルーされていた上に、なんか勝手に話も進んでいる。流石に突っ込まずにはいられない。

 

「何奴!!」

「バハーラ様お下がりください!!」

「我らの身に代えても御身を御守りいたします!!」

「名を名乗れ!!」

 

「遅いよ気付くの!!俺もう、アンタらが勝手に色々指示を聞いてた時から居たからな!?そのセリフは俺がこの背中に飛び乗った時にi」

 

ツッコんでいた最中に、急に足場が大きく揺れた。ゴウルアスが動き出したのである。

 

「そうだ、コイツ生物だった!!って、うおぉ飛行(フライ)!!」

 

急に動き出した事でバランスを崩し、地面へ真っ逆さまに落ちる。咄嗟に魔法で身体を浮かし、安全に着地する。

でもって着地した場所にはバハーラと紅四天王(仮)がいた。

 

「おいアンタら、ここを動くなよ!!!!」

 

紅四天王(仮)の1人が文句を言おうとした瞬間、神谷が魔法を唱えた。

 

三重最強化(トリプレットマキシマイズ)位階上昇範囲拡大魔法(ブーステッドワイデンマジック)多重究極(マルチ・アンリミテッド・)魔力障壁(マジック・シールド)!!」

 

「なんという.......」

 

「こんな魔法が!」

 

神谷の唱えた魔法は、たった今即興で創り出した防御魔法である。この魔法はゴウルアスの攻撃を受け止める物ではなく、とある攻撃を無効化するための魔法である。

 

「極帝!!!!」

 

グォォォォォォン!!!!!!

 

上空からやって来た極帝の炎に焼かれ、ゴウルアスは炭化する。その現実離れした光景に皇国兵達は口を開けたままフリーズし、バハーラと紅四天王(仮)は目の前に舞い降りた竜に固まっていた。

他の竜を寄せ付けない王者の風格を持つ、赤い巨大な竜。そして目の前の謎の男が言った「極帝」という名前。その名を冠する竜は、この世に唯1体。七大属性竜の頂点にして、全ての竜種の王。竜神皇帝の極帝しかいない。

 

我が友よ、焼き払ったぞ

 

「相っ変わらずエゲツない威力だな。それ一応、現代兵器じゃないと倒せない筈なんだが」

 

たしかに此奴は物理攻撃には滅法強い。だが炎や純粋な魔力には何故か弱いのだ

 

「ほーん。それで、こんな「ロースト・ビッグドッグ」とでも言うべき事になっているのか」

 

こんな軽い感じで会話しているが、バハーラらからして見れば正気ではない。我々のイメージで言ったら、タメ口で天皇陛下と会話しているようなものである。

 

「あ、あなた様はいったい.......」

 

「ん?あぁ。大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三大将だ。で、コイツは俺の相棒、極帝だ」

 

その言葉を聞いた瞬間、5人は土下座して平伏した。特に紅四天王(仮)はさっき武器を向けたのもあって、ブルブル震えている。

 

「これまでの数々の無礼、平に御容赦頂きたく存じます。偉大なる者よ」

 

「.......What?」

 

「どうか我等の姫をお救い下さい。偉大なる者よ。さすれば我等の全てを、この命も貴方様に捧げます」

 

唐突に始まった謎の忠誠の儀に、流石の神谷も頭が混乱する。こんなどっかの魔導王が、階層守護者達に言われてそうなセリフをいきなり言われるのだ。どっかの王族でもなければ、混乱するだろう。

 

「あー、取り敢えず落ち着こうか。うん。アンタらは一体何者で、何が目的でエスペラントを襲い、今はどんな状態なんだ」

 

「私めの名は、バハーラ。バハーラ・エングラム・パリンダと申します。我等は鬼人族と申しますが私達はアニュンリール皇国のダクシルドという者が、貴方様が破壊してくださったあの宝石を埋め込み、我等を支配下に置きエスペラントを攻めさせたのです。

奴らは古の魔法帝国復活のために、王城付近の地下に埋まるビーコンを確保したかったそうです。もし万が一にでも掘り起こされぬ為に、我々鬼人族や魔族を制御する実験も兼ねて戦乱が開かれました。

現在我等鬼人族は、ダクシルドの支配から脱却しております。最早あの者に我等を操る事は出来ませぬ」

 

(やはり第三国の介入、それもあの謎国家であるアニュンリール皇国か。にしてもまた根幹にはまーた傍迷惑帝国かよ!決めた。これから異世界での面倒事は、全て古のマジカル傍迷惑帝国が原因と考えよう)

 

このアンニュール皇国という国家、何が謎なのかは大半の読者諸氏は恐らく原作を履修済みなのでお分かりかとおもうが、ここは敢えて解説しておこう。

アニュンリール皇国は南方のブランシェル大陸にある文明圏外国家、の皮を被った神聖ミリシアル帝国を超える技術力を持つ国家である。この国家は何故か北方にあるブシュパカ・ラタンという島以外に外交官含む他国の人間は入れない鎖国国家であり、これまた何故か文明レベルが文明圏外国家相当なのである。だが一度その奥に入れば、ミリシアルをも凌駕する都市が広がっている。この事はミリシアルやムーを初めとする、どの国家にも気づかれていない。そんな謎の塊がアニュンリール皇国である。

 

「神谷様。どうか、我等をお使いください」

 

「お使いください言ってもなぁ。お前達の武器は剣とか槍だろ?そんなんじゃ、俺達の戦い方にはついてこれないぞ」

 

「我等の力であれば、人間なぞ鎧袖一触。脳天をカチ割り、貴方様の前に立ちはだかるどんな障害も破壊し尽くしてみせましょう」

 

正直言って面倒くさい。こんなどっかの主従のノリ、流石に疲れる。神谷も一応世界有数のボンボンであるが、別に普段の生活は普通とは合わないが基本的には一般庶民と変わらない生活であり、謎の舎弟やら子分を引き連れて闊歩したりもしていない。

軍人が上官に向ける忠誠とは明らかに違う忠誠に対応策が思い浮かばなかったが、そんな事を忘れさせるには十分な報告が飛び込んできた。

 

『長官!正面から敵、ゴウルアス含む魔物の大群が来ます!!』

 

「部隊を展開し迎撃準備にかかれ!!それからそうだ、75中にいた誘導士官を呼べ!!」

 

『了解!!』

 

向上に命令し、その命令が伝達されていく。直ちに部隊を展開し、戦闘準備に取り掛かる。月光で詳細を探らせると、結構エゲツない規模であることがわかった。魔物自体は少ないのだが、鎧を纏いより重装甲化したゴウルアスが20体ほど接近してきていたのだ。

 

「お呼びでしょうか長官!」

 

「よく来たな。お前は空軍の攻撃誘導士官、澤部彰大尉で間違いないな?」

 

「そうであります!」

 

「よし澤部。お前に、コイツらを貸し与える。存分に使え」

 

そう言いながら神谷はデバイスを操作し、あるデータを澤部のヘルメットに送信した。

 

「!?コイツは.......。なるほど、今回の戦闘にわざわざ長官が出てきたのはこのためか」

 

「頼むぜ大尉」

 

「お任せを!!」

 

澤部は無線の周波数をE787早期警戒管制機に繋ぎ、これを中継して目当ての飛行隊に繋げる。

 

『こちらは501攻撃飛行隊、第3小隊。ようやく出番か』

 

「イシスより501、3飛へ。悪いな、待たせちまった。ポイント、ヤンキー・61に敵戦車。頼めるか?」

 

『ウィルコ。任せな。1分後、攻撃する。ターゲットをマークしろ』

 

「オーライ。いっちょ、ドカンと頼むぜ」

 

澤部は周りにいた兵士達のヘルメットに標準装備されている赤外線誘導装置を起動させ、目の前にいるゴウルアスにターゲティングする。

すると頭上にA10彗星が飛来し、2機ずつに分かれ攻撃を開始する。先頭の2機は爆弾を投下し、続く残りの2機は機銃掃射を加えて飛び去っていく。

 

「今のお前か?」

 

「おうよ。長官がご機嫌な兵器をこっちに回してくれたんだ。まだまだあるぜ!」

 

「そりゃけっこ、ってうおっ!?!?」

 

突如、後方に爆裂魔法が着弾し澤部と岡は吹き飛ばされる。見れば後ろには、別のゴウルアスがいるではないか。

 

「回り込まれた。いや、別の場所に潜んでやがったか」

 

「心配すんな。もう五航戦の瑞鶴、翔鶴の飛行隊に攻撃要請してある」

 

「五航戦も来てるのか!?」

 

「それどころか、第五主力艦隊が雁首揃えて近海を航行中だ」

 

余りの大兵力に驚くと同時に、わざわざ数百名の為にここまでの大部隊を瞬時に動かしたであろう神谷に岡は感謝と尊敬の念が絶えなかった。

 

「ピンポイントで撃ってくれりゃ良いが」

 

「なんでだ?」

 

「オレンジの煙を狙えと言ったんだ」

 

モワモワモワモワ

 

岡は何故かオレンジ色の何かが視界の端に入ったので、チラリと横を見る。足元には「SMOKE(O)」と書かれた缶が転がっており、そこからオレンジ色の煙が出ていた。

 

「オレンジって、これか?」

 

「ちょいと投げ損ねてね.......」

 

瞬間、静寂が2人を包んだ。よく耳をすませば、澤部の無線から「ヴァイパー、オレンジスモーク確認」と言う声が微かに聞こえる。

2人は真顔のまま顔を見合わせると、次の瞬間同時に叫んだ。

 

「「はっしれぇ!!!!!!」」

 

2人が走り出した直後、F8C震電IIから多数のASM4海山が発射される。本来は対艦ミサイルだが、こういう時には巡航ミサイルとしても活躍するASM4は目の前のゴウルアスを焼き払った。

残るは後方の1匹である。

 

「おいテメェ、俺を殺す気か!?死んだらテメェの枕元に化けて出てやるからな!?!?」

 

「ハハハ。面白いな。だがな、さっきのヤツならお前が死んだ時、俺もほぼ確実に死んでるからな。俺の枕元に出るなら、俺も幽体として一緒に出ないと。それより、最後のヤツを倒すとしよう」

 

今度は上空を滞空し続けている、とある新兵器に連絡を入れる。

 

「イシスよりアイアンレイン。デカ物を倒してくれ」

 

『アイアンレイン了解!背中にデカい風穴を開けてやる』

 

上空には6発のターボプロップエンジンを搭載した大型の輸送機が飛んでおり、今は丁度ゴウルアスを軸に旋回している。この機体こそ第三十一話『極帝現る』にて聨合艦隊構想と共に進行している『皇軍増強計画』に於いて開発中の「重装甲、重武装のガンシップ」であり、今回神谷が来た目的の一つでもある。

この機体、正式名称AC180迅雷の詳細は設定集を見て欲しい。

 

「OK野郎共。地上部隊の頼れる兄貴、迅雷の初戦だ。これから作られる伝説の先駆けぞ!!気合い入れて撃ち込んだれ!!!!」

 

搭乗員達が拳を掲げて叫ぶ。だがその間も片手間にテキパキ攻撃準備を行い、要請から10秒で準備が整った。

 

「攻撃準備完了!」

 

「射てまえ!!」

 

「撃てぇ!!!!」

 

搭載されている250mm榴弾砲を筆頭に、大小様々な攻撃を以ってゴウルアスを穴だらけにしていく。

 

「うわぁ.......」

 

「我ながらエグいの要請しちまったな.......」

 

ゴウルアスは既にボロボロの肉片に加工されつつあり、なんか段々哀れに思えてきた。この後、全皇国兵が合掌して最後を見ていたのは言うまでもない。

 

 

 

数十分後 アニュンリール皇国秘密基地

「ここが基地のある場所です」

 

バハーラと合流した生き残りの鬼人族の案内により、アニュンリール皇国の秘密基地がある場所まで案内してもらった。

 

「ここか。突入するぞ」

 

二個小隊を周辺の探索と仮拠点となる装甲車の周りの警護に当て、75中隊と残りの白亜衆、それから鬼人族は中に入る。

外見はただの洞窟だったので中は人工的な物かと思いきや、中に入ると岩肌だらけで普通のザ・洞窟であった。しかもすぐに行き止まりにぶち当たる始末。

 

「行き止まり?」

 

「バハーラ、本当にこの道なのか?」

 

「えぇ。記憶が正しければ、この辺りからダクシルドを筆頭とするアニュンリール皇国の者共が住う場所になる筈なのですが.......」

 

そう言うので、試しにその辺の小石を正面の岩に投げつける。当たると音が奥の方に反響した為、この先には恐らく空間があるのだろう。

 

「どうやら逃げたらしいな。おい柿田!お前確か、アレを持ってたよな。ドアブリーチ用の」

 

「融解式C5.......。なるほど、確かにそれなら」

 

柿田はバックパックから枕ぐらいの大きさのシートを取り出し、岩肌に取り付けて展開する。

 

「点火します。離れて!」

 

全員が岩陰に隠れて、爆破に備える。シートは起動すると上から火花が散り出し、それが縁をなぞって下まで到達した瞬間、真ん中のC5が爆発し岩をぶち抜いた。

このシート、融解式C5はドアブリーチの際に使用するガジェットである。縁には金属酸化物、金属粉、燃料を調合した物質が仕込まれており、作動させると2,000℃の高音でドアや壁を焼き切る。最後に爆薬で吹っ飛ばせば、考えうるほぼ全ての物質を破壊できる。

 

「突入!」

 

神谷を先頭に内部に突入すると、中はバハーラの言う通り近未来的な空間が広がっていた。コンソール、モニター、メーターのような記録装置は元より、ベッドルームや風呂の設備もあった。

 

「まるで地球防衛隊の秘密基地だ」

 

「おい。取り敢えず、データがあるか見てみようぜ」

 

「おう」

 

そう言いながら1人の白亜衆の兵士がコンソールの前に立つのだが、流石に日本にあるキーボードとは訳が違った。

 

「.......って、これどう使うんだ?」

 

「適当に押せば?」

 

「うーん、じゃあ適当に。あ、ポチポチポチポチポチポチ…」

 

取り敢えず小学生がパソコンで「ハッキングー」とか言ってカチャカチャするように、気の向くままカチャカチャカチャカチャ押すが何も起きない。

 

「クソッ、動かねー」

 

「魔力がいるのか?」

 

「お前達、それ電源とかがあるんじゃないのか?」

 

向上がそう言った。確かに向上の言う通り、電源ボタンに相当する物は触っていない。

 

「とは言っても、どれだ?」

 

「わからん」

 

「お前達、覚えておけ。こういう時は、こうすんだッ!!」

 

神谷が後ろから現れて、力一杯コンソールをぶん殴った。壊れたかと思いきや、なんと何がどうなったのかは不明だがモニターに光が灯ったのである。

 

「ウソーン.......」

「力技すぎんだろ.......」

「ワイルド過ぎます長官」

 

「HAHAHAHA!動けばよかろうなのだ!!!!」

 

そんなどっか勝気なロリっ娘が言いそうなセリフを自信満々に言っている姿に、皇国兵達は苦笑いしていた。鬼人族は跪いたのは言うまでもない。

 

「長官!監獄に誰かいます!!!!多分、例の鬼姫では?」

 

「バハーラ!」

 

すぐにバハーラが駆け寄る。そこに居たのは黒い肌に小さめのツノを2本生やした、高貴な雰囲気を纏った女性であった。

 

「姫様!!バハーラにございます!!!!お迎えが遅くなりまして、お詫びのしようもありません!!」

 

「バハーラ.......。その者達は、いったい.......」

 

「あの太陽神の使いにございます!!姫様を救出するべく、手を貸してくださっていたのです!!!!」

 

バハーラが来て安心したのか、鬼姫はそのまま気を失ってしまった。すぐに外の装甲車に運び込み、一応簡単な検査を受けてもらう事になった。

 

「長官。この監獄、使用された形式があります」

 

「何?他にも誰か収容されてたのか?」

 

「なぁ彰?そういや、なんか俺達以外にも飛行機に居なかったか?」

 

「え?あ、言われてみれば確かに.......」

 

岡と澤部は記憶を辿っていくと、ある人物にぶち当たった。そして同じタイミングで、神谷もある人物の名刺を見つけた。

 

「「「中川貴一郎だ!!!!」」」

 

3人は例のクソ議員だった事を悟り、すぐに捜索を始めようとした。しかしまたもや問題が発生したのである。

 

『こちら本部!あの、巨人がこちらに向かっています!』

 

「巨人?巨人って、あの巨人?」

 

『はい。巨人軍の巨人です』

 

神谷含め、全員が困惑の表情を浮かべる。だが流石にふざけてこんな報告をするわけがないので、取り敢えず急いで外へ出てみた。すると本当に15m近くある巨人が、こちらに向かって歩いて来ていたのだ。

 

「マジかよ.......。総員、戦闘配置!!ありったけのミサイルと砲弾を浴びせてやれ!!!!」

 

命令に従い、対戦車ミサイルと砲弾を浴びせてみるが効果がなかった。それどころか怒らせてしまったのか、急に巨人が叫び出した。

 

「イッシキイィィィィィ!!!!!」

 

「!?今、一色って言ったよな。てことは、コイツ中川か?」

 

「いやそんな訳ないでしょ」

 

岡の推論に澤部が突っ込んだが、どうやら岡の考えは正解だったらしい。

 

「あー、岡?お前の考え、当たりだぞ。胸の辺り、よく見ろ」

 

メットのズーム機能を使うと、左胸、というより首の左下のあたりに何かが輝いていた。さらにズームすると、それは議員バッジであるのがわかった。

 

「確かに中川貴一郎ですね。ですが何が彼をあそこまで.......」

 

「復讐心じゃね?」

 

「澤部大尉、どういう事だ?」

 

「だって長官。確か中川は、元々総理確実と言われてた議員ですよ?なのに自分は議員にならないどころか、中川視点で言えば青二才のぽっと出のガキに自分が座るべき場所を盗られてしまった。しかもそのガキは三英傑とかいう、邪魔な存在の一員であった。

こんだけあれば、ああいう輩は復讐心くらい抱くでしょうよ」

 

澤部の推理に神谷は納得した。確かにこういう場合は大抵、敵に対する怨みや報復心を利用している。

このタイミングで仕掛けてくるのはアニュンリールの工作員しかいないので、捨て駒兼捕虜の掃除で改造されて放り出されたのだろう。

 

「最後の最後まで傍迷惑だな。進撃の巨人よろしく、うなじを削いでみるか!!」

 

神谷は飛び上がると華麗なワイヤー捌きで、中川巨人の首の後ろを取る。そしてそのままうなじを削いでみたが、全く効果が無い上に斬った所は修復され始めていた。

 

(航空隊はすでに弾薬を使い果たしている上に、この辺りはギリギリ砲撃の射程外。こうなったら、アレを出すしかないか)

 

「長官!指示を!!!!」

 

「部隊を後方に下げ、あの兵器を以って撃退する。アレにそう伝えよ!!」

 

「了解!」

 

向上が何処かに無線を入れている間に、兵士達を後方に下げて攻撃の巻き添えを喰らわないように配慮する。そして15分程すると、巨人は無数の青白い光に貫かれて絶命した。

この攻撃がどこから来たのかは敢えて語らないが、『海の真なる皇帝』とだけ伝えておこう。だが問題はまだ続いた。今度はこの世界特有の化け物、祟り神という魔物が現れてしまった。

 

「この化け物は現世と幽世の狭間の存在、歴史上1体で我が国の集落が消滅した事は何度もあります。その圧倒的な力と防御力から倒すのは困難を極めるとされており、過去の我が先祖たちは集団で1体に対応し命をもって封印する術を編み出し、幻獣封呪郷と呼ばれる場所に出現のたびに多大な犠牲を払いながら封印しました。

過去の歴史の中で我が鬼人族が「祟り鬼神」を倒した事は、1回しかありません。

祟り神は魔獣ゴルアウスよりも大きく、防御力、力、そして操る魔力も高い。古の魔法帝国も一時は使役を検討していたらしいのですが、成功には至らなかった化け物の中の化け物。いくら太陽神の使いでも、このそう存在には勝てませぬ。しかもそれが600体はいるのです!ここは我ら、鬼人族の誇りに懸け皆様の脱出の殿は務め上げてみせましょう!!」

 

バハーラと周りの鬼人族は咆哮を上げるが、神谷はそれを止めた。ある秘策を思い付いたのである。

 

「バハーラ。ソイツらは魔物、ではあるんだよな?」

 

「は、はい!その通りにございます」

 

「ふーん。なら、俺が倒そう」

 

「危険ですぞ!!どうか我らをお使いに」

 

「バハーラ。お前達の故郷はここであって、お前達が仕えるべきは鬼姫だ。それにお前達の先祖はその身を賭してこの地を護ったのなら、私もその心意気を継いでやる。

さあ、始めよう」

 

神谷の周りには巨大な青白い魔法陣が展開され、段々と立体的に大小様々な魔法陣が浮かび上がる。

 

「さあ、うけてみよ。超位魔法、失墜する天空(フォールン・ダウン)!!!!」

 

神谷の唱えた魔法はとある小説に出てくる主人公が、自分の友達の娘が操られて戦う事になった時に使用した魔法。この魔法ならば祟り神とて、倒せる筈である。そしてその予想は的中し、祟り神は蒸発したのであった。

この後、岡達は一度帰国。岡はその足で軍を退役し、サフィーネの下へと戻りエスペラント王国の王位を引き継いだ。バハーラ達鬼人族もこの地に残り、神谷と個人的な同盟を結んだ。曰く「もし何かあれば、このバハーラ。鬼人族を連れて、馳せ参じまする」らしい。

まあ何はともあれ、無事75中隊は日本へと帰還したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いつも本作品を見てくださり、本当にありがとうございます。
実はですね現在私が二つの作品を同時に書いてる事から、二週間に一本投稿なのはご承知の通りなのですが、恐らく4月からは投稿ペースが更に落ちる可能性があります。
というのも今年は個人的にリアルが多分超忙しくなるので、これまでの執筆時間が取れない可能性があるのです。それでもなるべく二週間に一本を目標に書いていきますし、書ける時に書いてストックも作る予定ですが、もしかしたら急に事前告知なくペースがガクリと落ちる可能性もありますのでご了承ください。
また現在の第三章がタイトル詐欺化してる上に、話数が思ってたより長くなったので少し訂正する事にしました。
本作品含め、どちらの作品も失踪するつもりは毛頭ありません。ですのでペースが落ちてしまっても、気長に待っていただけたら幸いです。今後とも楽しんで頂けるよう、変わらず書き続けるので次回もお楽しみに!
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