最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第六章新たなる真友編
第四十話冷え切る関係と結び付く関係


「アンタなんか大っ嫌い!!!!!」

 

「.......そうか」

 

いきなりの急すぎる展開に、今、画面の目の前にいる全読者が「は?」という顔をしている事だろう。これは前回まで続いていた、エスペラント王国での戦いが一段落してから二週間後の話。

それではここに至る経緯を、振り返ろうと思う。

 

 

 

エスペラント王国での一連の戦争終結から二週間後 大日本皇国 首相官邸

「入るぞ」

 

「お、来たな浩三。で、どうなったんだ?」

 

「あぁ。口頭でも説明するが、その前に報告書だ」

 

この日、神谷は一色に呼ばれて首相官邸に来ていた。勿論、呼ばれた理由はエスペラント王国での一連の騒動に関する報告である。

 

「事が起きたのは12月15日の09:47。千歳航空基地所属の第942輸送航空隊所属の輸送機、C2鐘馗2機が陸軍第7師団隷下の第75歩兵中隊を乗せたまま、グラメウス大陸上空でレーダーからロスト。消息を絶った。

しかし現地住民に救出され、機体こそ完全に壊れたが幸いにも重傷者を1人も出す事なく、全員が無事だった。だが現地住民が属する国家、エスペラント王国は魔物との戦争状態にあり、エスペラント王国はC2の調査に動いた。

23日の昼頃。この調査に立ち会っていたところ、向こうの常識では歩兵だと太刀打ちできない魔人と遭遇。実際に交戦規定に従い、調査に立ち会っていた者達が応戦。これを排除した。だがこの戦闘をエスペラント王国の要人に見られ、国王直々に魔物との戦闘に協力要請が入った。

状況を踏まえ、これに応え第75中隊は中隊長の岡真司大尉の判断の下、参戦。1月3日に配置されていたウェルゾロッサ要塞に魔物の軍勢が侵攻し、これを倒した。とまあ流れとしてはこんな感じだ」

 

「それは表向きなんだろ?実際はどうだったんだ?」

 

知っての通り、今の報告に嘘はない。全て、正確な物ではある。だが今回の一件で、忘れてはいけない2つの要素が含まれていない。

 

「まずは国内の方だ。まず75中隊の同乗者である中川貴一郎は過激派で、同じく過激派の国防省の事務次官である鶴川徳一郎と結託し、捏造した記録を世間に公開。

三英傑と軍の信頼を地に落とす算段だったが、運が悪い事に飛行機が遭難。中川は例の連中に利用されたんだろうな。巨人化して俺たちを襲って、大海の皇帝によって屠られた。鶴川の方も事故に見せかけて、既に消した。今は一応残党がいないか確認しているが、どうやらいないらしい」

 

「全く、過激派連中には困ったものだ。この安寧の世を、なんでこうも壊したいんだろうか」

 

「知るかよ。だが日本では安寧の世も、異世界は戦国時代だからな。どうなる事やら。だがまあ、またこんな馬鹿をしでかす輩がいれば永久退場させるだけよ」

 

実を言うと、この過激派の殺害は今回が初めてという訳ではない。この三英傑が出来上がるまで、少なからず裏の手段も取っている。

例えば一色なら対立候補を精神的に追い込んで辞退させて選挙に不戦勝で勝ったりもしたし、神谷も日本に潜り込んだスパイやその手先を暗殺している。川山の場合は外交官になってから、脅しやら何やらを使って相手国の外交官を抱き込んだりもしている。

 

「話が逸れたな。もう一つ、今回のエスペラント王国の一件は全てアニュンリール皇国が糸を引いていた。さっき言った『強大な魔人』ってのが、鬼人族という皇国が寄越した連中に操られていた種族なんだが、そこの長的な奴から証言も得ている。

曰く、皇国がエスペラント王国に攻め込んだ理由は、古の魔法帝国が復活する際に使うビーコンが王国にあって、それを確保するためなんだと。魔物の軍勢は魔物を制御する実験だったらしいが、恐らく皇国の影を残さない為だろうよ」

 

「まーた古の魔法帝国かよ。ってことは何か?そのアニュンリール皇国ってのは、魔法帝国を復活させて世界をどうこうするつもりか?」

 

「さーな。奴らの秘密基地にあったデータベースを洗わんと、その辺はなんとも。だがまあ、そんなところだろうよ。差し詰め、魔王を復活させるために動く魔王軍幹部ってとこだな」

 

改めて聞くと、何が何だかわからない。この世界の伝承では全て「魔法帝国は破壊の限りを尽くした悪虐非道な国家」とされている。そんな国家を復活させるために動く、謎多き国家。訳がわからない。

 

「この辺は国民は勿論、他国にも漏らさない方がいいな。後で慎太郎にも伝えよう」

 

「慎太郎で思い出した。この後のエスペラント王国への対応はどうするんだ?」

 

「既に外交官を送ったから、取り敢えずは国交を結ぶだろ。それから資源探査して、いい感じに埋まってればあの手この手で掘る。まあその辺は、岡国王に要相談だな」

 

前回も書いた通り、岡は日本を出る事にした。どうやら向こうの言い伝えによると、岡は国王となる男だったらしい。そしてサフィーネは、その妻となるらしい。そんな訳で元の国王は嬉々として退任し半ば押し付けるように岡へエスペラント王国を渡してきて、サフィーネは既に王城で王妃としての振る舞いを仕込まれているとか。

因みに澤部も軍を辞めて、岡について行く事にしたらしい。そしてこの事を聞いた何処かのジャスティードは、本当に血の涙を流しながら軍を辞めて実家に引きこもったらしい。

 

「にしても言い伝えにあったからで結婚できて国王にまでなれる異世界って、マジですごいな。旧世界でやろうものなら、頭おかしい認定待ったなしなのに」

 

「ところでさ、浩三。なんでそんな凄い隈ができてんの?」

 

「ん?あぁ。なんやかんやで二週間、書類仕事で死んでたからな」

 

実を言うと神谷はこの二週間、ずっと書類仕事をしていた。年末年始の仕事、王国での一連の出来事の事後処理、対策本部の事後処理と色々やっていた。その結果、不規則な生活を送っており寝ても疲れが取れてないのである。

 

「過労で死ぬぞ」

 

「死にたくないから、今日はこのまま直帰する。久しぶりに家に帰るわ」

 

「お疲れさん」

 

 

 

数十分後 神室町 神谷邸

「お帰りなさいませ旦那様」

 

「ただいま」

 

「今回は、遅いご帰宅でしたな」

 

「今回のは結構面倒な案件に進化しやがったからな」

 

この一連の事件中、神谷含む本部にいた高官は一度も家に帰っていないのである。忙しかったのもあるが事態がどう動くか分からず何が起きても対応できるようにするためと、中川やら墜落した場所が場所だけに情報漏洩の可能性を限りなく無くすために無菌室状態にしたかったのである。

しかも事件が終わってからは仕事を片付けるのに二週間掛かっており、なんやかんやで一月ぶりの帰宅なのである。

 

「あ、そうそう。姉妹の皆様が、旦那様のお部屋にてお待ちです。恐らく文句の一つ二つは出るでしょうが、覚悟しておいた方が宜しいかと」

 

「実質、デートすっぽかしたようなものだからなぁ。機嫌を取ってくるわ」

 

恐らく、そろそろ察してくれた事だろう。この後、神谷はエリスよりビンタされるのである。

 

 

「あー、ただいま?」

 

入った瞬間、一目でわかった。目の前に5人が揃ってベッドに腰掛けているのだが、その顔は一様に怒っているのが見て取れる。

 

「神谷様、そこに座ってください」

 

「はい.......」

 

顔は笑ってるのに声と目は笑ってないヘルミーナが、目の前の床を指さす。こういった時は下手に反抗せず、言われた通りに動くが吉。床に正座する。

 

「神谷様、私達は怒っています。何故だか分かりますよね?」

 

「はい」

 

「何故一ヶ月も、いえ、ずっと仕事ばかりで家に帰らないのですか?」

 

因みに神谷、こんな馬鹿でかい屋敷を構えていながらエルフ五等分の花嫁が来てから結構家を空けていた。今回の件では一ヶ月程空けたし、その前のカルアミークでの一件でも半月は空けている。

更にはちょうど五等分の花嫁が来た辺りにミリシアルとエモールの合同使節団がくる話も上がったりした結果、休みなくずっと働き詰めだったのである。土日祝日関係なく、朝早く出て夜遅くに帰る。仕事の進捗によっては執務室に泊まる事もしばしば。

 

「本当に申し訳ない」

 

「神谷殿。まさか貴様、方々に女を作ってなどいまいな?今回の話、ニュースとやらでは遭難事故だと聞いたぞ。なのに何故、貴様が出る必要があるのだ?

仕事を言い訳に、他の女の下に行ったのではあるまいな?」

 

「私はデートすっぽかされたのが悲しいなぁ」

 

「.......最低」

 

アナスタシアからは浮気の疑いを掛けられ、レイチェルからは結構ガチめに悲しんでる声で言われ、ミーシャからは短いのに一番ダメージのくる発言をされた。

勿論こうなる予感もしていた。少なくとも怒られる覚悟は早稲に言われる前からしていたが、流石にここまで怒ってるとは思っていなかった。

 

(うーむ、これどうやって切り抜けよう。ヤバいな、寝不足で頭が回らん)

 

「何とか言ってください!!!!反省してるんですか!?!?」

 

ヘルミーナの雷が炸裂した。これで現実に引き戻され、反撃という程ではないが神谷のターンが始まる。

 

「いや、うん。怒るのも当然だと思うし、そこに関してとやかく言う事も出来ない。

まずはアーシャからの疑いを晴らそう。恐らく報道では「軍所属の輸送機が、訓練中に乗っていた兵士共々、消息を絶った」としか言われてない筈だ。違うか?」

 

「そうだ。なのに貴様が出向くのは、どう考えてもおかしいだろ」

 

「それなんだけどな、今回の遭難事故は中々に面倒な事態だったんだよ。報道であった通り遭難しただけなんだが、遭難した場所が魔物しかいないって話のグラメウス大陸の奥地だったから何がどう転ぶか分からない。

俺が行ったのは不足の事態が起きた時の対応策を、その場で提案して即決で指示が出せるだろ?だから俺は行ったんだ」

 

「では浮気ではないのだな?」

 

「証拠はないけどな」

 

少しの間、アナスタシアは神谷の目を見ていた。アナスタシアの目には、神谷の心の内を見極めんとする意志が宿っていた。嘘偽りがないと思ってくれたのか、すぐに視線を外して「わかった」と一言言った。

 

「次はミーナのヤツ。なんで俺が家を空けるか。それは簡単な理由だ。俺が三英傑に名を連ねる者であり、この世が戦国時代みたいな動乱の時代だからだ」

 

「また、三英傑ですか.......。あなたは仕事と私達の何方が大事なんですか!!!!」

 

「仕事だな。お前達含む、この国に住む人間が幸せな毎日を護るのが俺の仕事だ。俺にとって大事な人間を護る=自分の仕事なんだよ」

 

即答で「仕事」と答えた時は悲痛な顔になっていたが、理由を聞くに連れて理解はしてくれたらしい。少しだけ、顔が穏やかになった。

 

「後デートの件は、必ず埋め合わせはする。尤も、また明日から暫く家を空けるから直ぐには無理だけどな。もう少しだけ、待っていてくれないか?」

 

「わかった。今度は一週間くらい休暇とってよね!」

 

「.......少しだけ、期待してます」

 

レイチェルとミーシャも一応、怒りは収まったと見ていいだろう。で、問題なのは一番噛み付きそうなエリスが、まだ一言も喋っていない事だ。

 

「ねぇ、確かお父様は決まりに従う必要は無いって言ってたのよね?」

 

「あ、あぁ」

 

「そう。なら、私も答えが出たわ」

 

そう言うとエリスは右手で、力一杯神谷の頬をビンタした。勿論銃弾や砲弾を捕捉する常人離れした反射神経がある以上、すぐにどうなるかはわかった。

何よりエリスの纏う気配が最初から他とは違い、殺意に近い物だったのもあって何かしらあるのは予測が付いていた。なら避けるなり受け止めるなりすれば良いと考えるかもしれないが、こういう時は甘んじて殴られるのも一手である。

 

「アンタなんか大っ嫌い!!!!!」

 

「.......そうか」

 

「ちょ、エリス!やりすぎだって」

 

「エリス落ち着いて!」

 

レイチェルとミーナが止めに入ったが、エリスは姉達を置いて部屋から出て行ってしまった。それを4人共追い掛けるが、アーシャだけは引き返して神谷の傷の具合を見に来た。

 

「神谷様。その、大丈夫ですか?」

 

「いやまあ、ビンタされただけだし。特段、問題はねーよ。頬の中を切ったのか知らんが、ちょっとだけ鉄の味するけど」

 

「.......ごめ――」

「ストップ。その言葉を言うべきは、お前でもエリスでもない。この俺だ。俺はいいから、エリスの所に行ってやれ」

 

そう言っても気にはしているようで、やはり浮かない顔ではあった。だがそれでもアーシャは小走り気味に、エリスや他の姉妹の下へ行った。

それと変わるように、今度は早稲がやって来た。

 

「これはまた、手酷くやられましたな」

 

「まあ予感はしてたし、ビンタも想定の範囲内さ。早稲、もしアイツらが俺と別れるというか、まあ、ここから出て行く決断をしても止めないでやってくれ。何も言わず、コイツを渡してやってくれ」

 

「これは預金通帳、ですか?それもこんなにたくさん」

 

「アイツらがここに来た時、アイツら名義で都内に支店のある各社銀行の通帳を作ったんだ。もし出て行ったとしても、ある程度は人並みに生活できる基盤を作れるようにと思ってね」

 

試しに1人分の束の預金通帳を開いてみると、合計で一人頭3,500万円の額が入っていた。それが5人分だから、1億7,500万ある事になる。普通に人並み以上の生活が出来る額であった。

 

「他にもスマホに、ハンコに、各種クレジットカードまである。いつもの事ながら、旦那様は準備が良いですな」

 

「これが俺に出来る事だ。俺が居ない間、出来ればアイツらの気晴らしに付き合ってはくれないか?」

 

「承知しました」

 

早稲は通帳等が入った5つの鞄を受け取り、部屋を後にした。神谷は明日からは演習でムーに行くので、さっさと寝る事にして夢の世界に旅立った。

 

 

 

翌々日 ムー国 オタハイト空軍基地

「着いたな〜」

 

「だな〜」

 

五等分の花嫁とのゴタゴタの翌々日、神谷と川山の姿はムーのオタハイト空軍基地にあった。ここに来た理由は神谷の方は合同軍事演習に参加する為であり、川山の方はムー側からの指名で呼び出されたのである。

 

「あ、神谷さーん!こっちですこっち!!」

 

「マイラスさん!あなたが出迎えですか!!」

 

「えぇ。神谷さんが来ると聞いて、無理矢理付いてきました」

 

「そうでしたか。あなたも見かけによらず、結構大胆だ」

 

2人は再会を喜び合い、それを見て川山は「いつの間に仲良くなってたんだ」と驚いていた。

 

「少し取り乱してしまいました。改めまして神谷司令長官殿、川山外交官殿。ムーへの来訪、心より歓迎致します」

 

「歓迎痛み入ります。本日はムー側からの指名という形でお招きいただきましたが、私はこのまま会議場に行けばよろしいですか?」

 

「はい。こちらの者が案内します」

 

そう言うと、マイラスの背後に控える2人のスーツを着た男がお辞儀した。どうやら彼らが川山の案内人らしい。

 

「神谷司令長官殿は、私がある場所にご案内致します」

 

「ある場所?わかりました。では案内、お願いします。マイラス殿」

 

そんな訳で川山は会議の場となるムー国外務省に向かい、神谷はマイラスに連れられて車でオタハイト郊外に向かった。

 

 

「で、私は何処に連行されるので?」

 

「神谷さんには、今から我が国の兵器廠に来てもらいます。例の資料を基に試作品を製作しましたので、それを見て頂きたいのです」

 

「なるほど。因みにどのような兵器を?」

 

「流石に艦船や航空機は作れていませんので、銃や歩兵装備です」

 

「ちょっと楽しみだ」

 

車はそのまま郊外の工場地帯に止まり、神谷はマイラスに案内されて試作品という銃がズラリと並んだ部屋に通された。

 

「まずこちらが、我が軍正式配備の銃です」

 

「エンフィールドシリーズのSMLE MkVに、ヴィッカース重機関銃、ルイス軽機関銃、うお!ウェブリー&スコット セルフローディングピストルまである」

 

「そちらの世界での名前ですと、今言った物で全て当たっています。しかしグラ・バルカス帝国を仮想敵とすると、この武器では太刀打ちできないと考えました。そこで我が軍は、これらの銃器を新たに量産する事にしたのです」

 

そうマイラスが言うと、奥から作業着姿の男が様々な武器を積んだ台車を押して部屋に入ってきた。

 

「主力小銃はエンフィールド、こちらではローアルドと呼んでいるのですが、ローアルドをそちらのRifle No.4 Mk 2に変更したローアルド9と、M1ガーランドの口径をローアルドと同じ7.7mm×56mmとしたローランド小銃。軽機関銃はブレンMk2を元にしたグラン軽機関銃。拳銃はコルトM1911を9mmパラベラム弾使用に変更したゴルド拳銃を製造します。また重機関銃もM2を元にした物に変更する予定です。

さらにこれまでになかった汎用機関銃、短機関銃、突撃小銃を新たに製作する事にしました。

汎用機関銃にはMG42の改修モデルであるMG45、或いはMG42Vの設計を流用し、使用弾薬を7.7mm×56mmにしたグロスフス汎用機関銃。短機関銃にはMP40。突撃小銃についてはStG44を元に、7.7mm×56mm仕様にして頑丈な作りに変更した、このカラシ突撃小銃を量産するつもりです」

 

そう言いながら、様々な銃達を机に並べたマイラス。どれもこれも第二次世界大戦で、イギリスやドイツで使われていた傑作銃ばかりであった。

しかしその中で、神谷が震撼した銃があった。StG44をもとにして作ったという、カラシ突撃銃。だがその見た目はStG44ではなかった。カラシニコフ自動小銃として、今も尚派生型が存在する超ベストセラー銃。AK47であった。

 

「どうしました?」

 

「マイラスさん。まさかこのカラシ突撃銃って、パーツ同士の幅が広くて泥に沈めようが土砂に埋めようが、普通に撃ててしまうぐらい、超頑丈じゃないですか?」

 

「よく分かりましたね。この銃は汚れていても、撃った時の衝撃で泥なんかが落ちるんですよ」

 

完全に固まってしまった。確かにAK47は第二次世界大戦終結後の一年後にAK46として軍のトライアルに参加しているので、生まれてしまってもおかしくはない。だがまさか、こんな現代兵器と差して変わらない物が1930年代ぐらいの技術力しかないのに産んでしまうとは思わなかった。

 

「マイラスさん。これは、戦争を一変させる物ですよ」

 

そう言いながらネットでAK47の写真を見せた。スマホに同じ写真があった事で、マイラスは察してしまった。

 

「まさか、そちらの世界でも同じ物が?」

 

「えぇ。AK47カラシニコフ自動小銃。この銃は第二次世界大戦終結直後に生まれたにもかかわらず、今も尚進化系が作られる傑作自動小銃です。世界で最も使われた軍用銃として、世界記録になるくらいに」

 

「.......あの、他にもあるんですけど」

 

そう言って今度は対戦車兵器として、ライフルと擲弾発射機を持ってきた。ライフルの方はボーイズ対戦車ライフルっぽい見た目なんだが、問題は擲弾の方。この時代の擲弾となるとパンツァーファウストなのだが、持ってきた擲弾はどう見てもRPG2である。

 

(パンツァーファウストを飛び越えやがった.......)

 

「その顔を見るに、あるんですね。この擲弾」

 

「.......はい。RPG2と呼ばれるヤツと瓜二つ」

 

どうやらムーの技術力は、結構高いらしい。聞けば他にも色々、兵器を作っている真っ最中なのだと言う。ちょっと量が多いので、箇条書きで書いていこう。

 

陸軍

・装甲輸送車としてドイツのSd.Kfzシリーズを元にした半装軌車、所謂ハーフトラックを採用し量産中。

・他にもジープなんかも量産中。

・戦車が存在してなかった為、新たに軽戦車、中戦車、重戦車、駆逐戦車、超重戦車、対空戦車を開発する。軽戦車にはクロムウェル巡航戦車、中戦車にはM4シャーマン・ファイアフライ、重戦車にはM26パーシング、超重戦車にはマウス、駆逐戦車チャレンジャー巡航戦車を元に開発する。

・野戦砲にはドイツが生み出した万能砲の安里・アサト、じゃなかった。アハト・アハトを元にしたのを既に開発済み。現在鋭意量産中。

・都市部防空用に五式十五糎高射砲、三式十二糎高射砲を製造し、更には初期型のレーダーサイトも建設する。

 

空軍

・現在の主力戦闘機であるマリンの次世代機として、新たにホーカー ハリケーンを元にしたものを生産したい。

・出来れば艦上戦闘機としてF4Uコルセア、陸上戦闘機としてP51マスタング、急降下爆撃機兼雷撃機としてフェアリー バラクーダ、高高度迎撃機として震電、襲撃機としてP39QエアラコブラとIL2、爆撃機としてモスキートとB17を元にした物を生産、配備したい。

 

海軍

・現在は所謂『八八艦隊計画』を遂行中であり、金剛型、伊勢型、イラストリアス級、ヨークタウン級を元にしたのを4隻ずつ建造中。

・ガトー級を元にした潜水艦を建造中。

・駆逐艦にはギアリング級、軽巡洋艦にはエディンバラ級のベルファスト、重巡洋艦にはボルチモア級を元にしたのを計画中(一部は建造中)

・あきつ丸、神州丸、大鯨、間宮の様な特務船の建造を計画中。

 

「とまあ、こんな感じの戦力を揃えていく方針です」

 

(いやまあ、一応資料は与えたよ?うん。でもなんでこうも1930年代程度の技術力で、こんなにも冒険してるのかなぁ。作れなくはないだろうけど、絶対時間が掛かるだろ。

仮想敵は例の帝国だから、今すぐ戦争の可能性は余り高くない。それにしたって、何かまるで、そう。日本を当て(・・)にしているかのような開発計画だな)

 

「何か引っかかる点があれば仰ってください」

 

神谷が何か考えてる事に気が付き、マイラスがそう促す。向こうから振られたので、ここはこれを利用して聞いてみるのがいいと考え今考えついた事を質問してみる。

 

「気分を害すのを承知でお尋ねします。単刀直入に申し上げて、私はこの計画がまるでウチの国の支援を前提にして考えているように思えます。

資料を見たのですから知ってるとは思いますが、大戦期のアメリカは資本主義の名の下に兵器が量産されていました。年間に何百万台もの車を増産できる、圧倒的な工業力があったからこその物量や技術です。シャーマンとかマスタングとかガーランドとかB17なんかは正にその典型例だ。そんな兵器群をこう言っては失礼ですが、たかが第一次世界大戦か戦間期程度の技術力で作るのは、幾ら資料があって未来が見えているような物とは言えど些か自国で賄うのは無理なのでは?

なにより、貴国は永世中立国。対して我が国に対する全体的な世界的な目は、未だ『第三文明圏外国なのに、列強のパーパルディアを潰した謎多き新興国家』だ。実際のところは貴国の上を行く技術力があっても、国際社会はそれをまだ知らない。なのに我が国を頼りすぎるのは、国の信用問題に関わってくるのでは?」

 

ただ静かに神谷の言葉を聞いていたマイラスは、少しだけ笑みを浮かべながら「お見事です」と言った。

 

「やはり神谷さんの観察眼は素晴らしい。神谷さんの言う通り中立国である以上は、貴国に頼りすぎるのがバレれば信用を失うでしょう。それがもし、無くなれば?」

 

「.......マジか」

 

「気付いたんですね?川山殿が指名されて、今回ここに呼ばれた理由が」

 

「もしかて合同軍事演習の目的すら、それを前提に?」

 

「らしいですよ。私が演習を立案した訳ではないので実際は分かりませんがね」

 

 

 

同時刻 ムー国外務省 会議室

「永世中立国の撤回!?!?」

 

神谷が工廠である考えに達していた時、川山は神谷の達した考えをムーの外務大臣から聞かされていた。

 

「はい。我が国は現在、永世中立国なのは知っての通りだと思います。ですが来るグラ・バルカス帝国との戦争に於いては、永世中立を保っていては国が滅ぶと結論付けました。

ですが、これはまだ内々のお話。恐らく反発も出ると思います。国民にも軍人にも、どうしても列強国であるという驕りがあります。今この場で国民に向かって「グラ・バルカス帝国は我が国より強い」と言ったところで、信じる訳がありません。まずはこの空気感を変える必要があります」

 

「まさか、それで今回の軍事演習ですか?」

 

「その通りです。貴国の軍事力はグラ・バルカス帝国以上だと聞きます。まずは貴国の力を示し、国全体に衝撃を与えます。その上でグラ・バルカス帝国の事実を伝え、貴国と我が国の同盟を結ぶべきという世論を作り出すのです」

 

恐らく話がややこしいので、わからない読者もいるだろう。なのでムーがどうしたいのか、簡単に解説する。ムーは現在永世中立国で、永世中立国とは自国で自国を守らなければならず、他国との同盟とかこっちで言うNATOみたいな軍事条約に加盟できない。

しかし現在、第二文明圏で勢力拡大中のグラ・バルカス帝国と衝突すると、自国だけでムーを守れない。しかも衝突する可能性は極めて大。

となると軍備の増強や同盟を結んでおきたいのだが、永世中立国である以上それはできない。変えようにも、これまで平和だった上に列強第二位というのもあって国民からの理解は得られ難い。

そこで今回のグラ・バルカス帝国以上の軍備を持つ友好国である日本と合同軍事演習を行い、ムーがボッコボコにやられる事によってムー全体を震撼させる。そしてグラ・バルカス帝国の脅威を流し、国内世論に「日本との同盟を!」というものを作り出そうとしているのである。

 

「また現在、我が国はグラ・バルカス帝国を仮想敵国とし、軍備増強を図っております。それでその、一度貴国に観戦武官として行ったマイラスという者が計画を主導しているのですが」

 

「何か問題が?」

 

「私も意味は分からないのですが、川山殿には「装備が米帝プレイ&聖帝プレイみたいな感じです」と言えば分かると」

 

この一言で大体察した。念の為、武器の名前を聞いてみると「確かそんな名前でした」と答えたので、マイラスの願いも察した。

 

「それで川山殿。恥ずかしながら、その米帝や聖帝というのはどういう意味なのですか?」

 

「簡単に申しますと「ムーの工業力じゃ追い付かないので支援してほしい」といったところです。この辺りは総理とも話したいので今ここでは答えられませんが、きっと良い返事を貰えるでしょう」

 

「何故そう言い切れるのですか?」

 

「外交、経済、軍事の3つの面で利点があるからですよ。貴国と同盟を結んでおけば、国際社会への進出の際に良いアドバンテージとなる。経済面では例の米帝、聖帝プレイという事は、我が国の産業がメチャクチャ潤います。軍事面では我が国もグラ・バルカス帝国を警戒しており、何かあった際の駐屯地や前線基地の設置がやり易くなりますからね。

結構な旨味もあるので、少なくとも総理は良い顔しますよ」

 

その夜、急遽ホテルで川山、神谷、それからオンラインで一色の参加する緊急会議が開かれた。その模様は次回、お伝えしようと思う。

 

 

 

数時間後 オタハイトより8km スラム街の一角

「ほう。コイツが」

 

「えぇ。これが、我が国の誇る武器です」

 

神谷と川山が宿泊するホテルにチェックインをしたのと同じくらいのタイミングで、右目に傷痕が入ったスキンヘッドのマッチョな男が見た目としては普通の男性と変わらない格好をした男とスラム街で密会していた。

 

「機関銃にライフル、爆弾まで.......。で、アンタらは俺に何をしてほしいんだい?」

 

「オタハイトで殺戮を起こしてほしいのです。これらの武器を使って、際限無き破壊と殺戮を」

 

「いいね、気に入った。武器を用意してくれりゃ、後はこっちで勝手にやるさ。金も十分貰ってるし、いっちょデカい花火を上げてやるさ」

 

「期待していますよ。破壊者(デストロイヤー)バーチクスさん」

 

 

 

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