最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第四十二話日武合同大軍事演習(海戦編)

数日後 ムー国首都オタハイト オタハイト海軍基地 大講堂

「演習相手は皇国軍か。どっちが勝つかな」

 

「パーパルディアを滅ぼしたとは言えど、流石にムーには勝てねーよ」

 

「おいお前ら!そろそろ始まるぞ!!」

 

いよいよ合同軍事演習が始まろうとしているこの日、ムーの士官達は大講堂で観戦に興じていた。画質は粗いが、一応魔法による恩恵でムーでは既にカラー映像と生中継の技術がある。今回はそれを活用して両国の艦艇、そして一部の陸で戦う将兵には日本製のボディカメラを装備してもらっており実際の戦闘をリアルタイム観戦して貰う事になった。

それではここで、今回の合同軍事演習におけるルールを簡単に解説しよう。

 

・演習の想定は『オタハイトに大日本皇国軍が侵攻し陸上部隊を揚陸させようとしており、海軍が揚陸艦部隊の迎撃のため出撃。陸軍が万が一のために、オタハイトに防衛線を展開した』という想定。

・演習での勝利条件は、ムーは72時間の間、最終防衛ラインにあるフラッグの防衛に成功する事。日本は72時間以内に最終防衛ラインのフラッグを奪う事。

・実弾の使用は勿論禁止。

・戦略、戦術に関しては自由。

・実弾以外については、原則使用可能。しかし人に害があるものは使用禁止。

 

と言った感じである。因みに判定に関してだが、日本が対抗演習で使う装置を用いている。艦艇については艦に薄いセンサーシートの膜を貼り、演習弾の命中角、速力、選択弾種、被弾対象の装甲圧、被弾箇所をコンピューターが計算しダメージ判定を出す。更に周囲に特殊な煙も撒き散らす。この煙に触れると水兵たちの装備しているセンサーシールが反応し、それによって甲板上の乗員のダメージ判定も出せる様になっている。航空機の方も同様である。

陸上戦に於いてはセンサーシールを貼った服やベストを装備し、銃に装備されている赤外線照射装置で被弾箇所を測定しダメージを割り出す。因みにこれは使用される演習用の空砲と連動しており、音や発射炎も同じ様に発生するし、弾切れや弾詰まりの概念も存在する。

爆発物の場合は艦艇と同じく、特殊な煙を用いて判定する。爆発するとセンサーに反応する仕掛けが施された、黒い煙を撒き散らす。これによって被弾箇所とダメージが判定される。

平たく言うと『人が死ぬ事以外は全てがリアルな、実戦に最も近い演習』ができるのである。

 

 

「提督、間もなく時間です」

 

「そうか。わかった」

 

第一主力艦隊の司令兼、海軍のトップである山本五十八提督が腕に嵌めたロールスロイス製の時計を見つめる。現在の時刻は08:59。後30秒で09:00、演習開始時刻となる。

 

「負ける事は無いだろうが、慢心、ダメ、絶対、だな。諸君!同じ海に生きる水兵として、最大限の礼節を持って演習に励め!!」

 

「「「「「アイ・サー!!!!」」」」」

 

山本がそう言った瞬間、演習開始を告げるベルが鳴った。皇国海軍は勿論、ムー海軍の方も全員の顔が一層引き締まる。

 

「航空参謀!早速一手を打つ。赤城と加賀に鷲目の発艦を指示せよ!」

 

「了解であります。発艦機数は2機ずつで、ミッションは偵察兼警戒ですね?」

 

「その通りだ。その間に本艦は、上空警戒用の震電IIを上げさせろ!戦術長!」

 

「アイ・サー」

 

山本は次々に指示を飛ばし、取り敢えずの初動を終わらせる。命令を受けた赤城と加賀は、直ちに早期警戒機であるE3鷲目と護衛機を発艦させた。

一方で旗艦たる熱田は、後部甲板の発着艦口が開きF8震電IIの発艦準備に入っていた。

 

 

『第一飛行隊発艦せよ。第一飛行隊発艦せよ』

 

「行くぞ!」

 

「オウ!!」

 

当該パイロット達は待機室から格納庫まで伸びる滑り台に飛び込んで、格納庫まで一気に直行する。その間に整備兵達は機体の準備に取り掛かる。機体を駐機スペースから高速クレーンで移動させ、エンジンに火を灯し、各種空対空ミサイルの装填を開始。

また発艦担当の兵士達は発艦用信号機(ガミラス空母に付いてる電光掲示板みたいなの)を点灯させ、発着艦口の後方にシールドを展開させ、格納庫から発着艦口まで機体を上げ、そのまま発艦させる射出装置を起動させる。

 

「いい音だ。ご機嫌そうでなにより。エンジン、準備よーし!」

 

「ミサイル装填よし。機関砲弾装填よし。セーフティー・ピン・リング解除よし。攻撃装備、準備完了!」

 

機体の準備が完了した頃、パイロット達が格納庫に到着。機体に飛び乗りシステムの起動と、フラップなどの動作チェックを行う。チェックの完了したパイロットが各々の愛機の専任整備士に「問題なし」の合図、サムズアップとかコルナ(所謂ウィッシュのハンドサイン)のハンドサインを互いに送り合う。

それが終われば専任整備士が機体を発艦位置まで床ごと移動させる。発艦待機位置に到達すると、後は自動で最後の発艦シークエンスに移る。機体が下から持ち上げられて脚を畳み、機体を2本の支柱で固定させる発艦用の台座にセット。そのまま発艦位置に移動し、機体が斜めの状態で止まる。

 

『一番機、発艦する』

 

この宣言がパイロット口から出ると機体は勢いよく甲板上の射出レールの上まで持ち上げられ、エンジンをフルスロットルに瞬間的に上げさせてカタパルトが起動。最高速に達しながら、打ち出されていく。

因みにイメージとしては宇宙戦艦ヤマトの発艦シーンが近い。あれは上から下に下がってからバックで発艦するが、こちらの場合は下から上に上がってから、普通に正面を向いて発艦する。

一分で全機発艦し、艦隊の護りにつく。

 

 

 

数十分後 皇国海軍艦隊より150kmの海域 上空

「おっと、おいでなすったな」

 

「あ、ホントだ。機長!ムーの偵察機が艦隊の方に向かっています!!」

 

「すぐに通報しろ。我々はこのまま探知を続ける」

 

この情報は直ちに熱田へと送られ、山本は次なる一手を打ち出した。

 

 

「そうだな。まあ偵察機は対処しないでいいだろう」

 

「よろしいのですか?」

 

「ムーとは格差があるからな。最初私は慢心せずに礼儀を持って戦えとは言ったが、余り本気でやっては本当にワンサイドゲームと化してしまう。今回の演習では向こうは分からないが、此方はレーダーの関係で既に敵艦隊の位置も陣容も丸分かりだ。実戦ならミサイルを撃てば解決だが、それでは演習としては意味がない。

だが技術力を示す必要はある。敢えてムーに我々の位置を晒し、攻撃隊を誘導。全機叩き墜として、こちらは巡洋艦辺りを空対艦ミサイルで沈める」

 

今回神谷からは余り指示を受けておらず、全部自由にやれと言われている。だがある程度演習になる様な立ち回りをする事と、ムーに絶望と恐怖を与えて欲しいと頼まれている。

ただ技術格差を見せつけるのではなく、見せ方を工夫してよりリアルな脅威として映すのである。そしてこれは同盟を結んだ時、希望へと変わる。そのためにも出来るだけ大きな爪痕を残し、トラウマクラスの恐怖を刻みつける必要があるのだ。

 

「そう言う事なら二個飛行隊、40機によるミサイル攻撃でも仕掛けますか?」

 

「そうだな。じゃあ、ムー艦隊には適当に喰らってもらうか」

 

「アイ・サー」

 

すぐに赤城と加賀に下命し、空対艦ミサイル満載の航空機が発艦していく。航空隊の発艦が完了し、高度を取り切った辺りで偵察に出ていたマリンが大日本皇国の艦隊を発見した。

 

「なんだありゃ!?まさかアレが、大日本皇国海軍なのか?この距離であのデカさと言う事は、確実に1km近い全長の船が3隻はいるぞ.......。

取り敢えず、打電しなくては」

 

パイロットのギャッドラーはモールスで艦隊に情報を打電する。

 

——ワレ、敵艦隊発見ス。距離240、方位3-6-0。艦隊陣容ハ超大型戦艦1、超大型空母2、大型空母*11、巡洋艦*2ト思シキ艦艇4、判別不可能ノ艦*34。繰リ返ス…

 

勿論こんなモールス、すぐに傍受されてしまう。暗号化すらされてない平文なので、解読と言うか翻訳なんてお手の物。ある程度通報できたのを見計らって、上空から1機の震電IIが20mm機関砲を撃ちながら通り抜ける。

 

「な、何だ!?」

 

『機体、爆散。パイロット死亡。機体、爆散。パイロット死亡』

 

「は!?!?」

 

耳につけた無線機から機体が爆発して、ギャッドラー自身も死亡判定を喰らった事を機械的な音声が知らせてくる。

 

「そ、そんなバカな」

 

信じられずにいると、背後から物凄い音が聞こえた。マリンは構造的に風防のある正面以外は野晒しである為、無線用のヘッドフォンや耳栓をしててもエンジン音が普通に耳をつんざくレベルで聞こえてきて、基本周りの音なんて聞こえない。それなのに聞こえてくるほどの轟音に後ろを振り返ると、そこには水色と紺色の迷彩が施された謎の機体がギャッドラーの乗るマリンの左右に2機ずつ居た。

 

「まさかアレが、大日本皇国軍の戦闘機なのか.......」

 

『ムー海軍機、聞こえるか?こちらは大日本皇国海軍、第一主力艦隊総旗艦、超戦艦『熱田』艦載航空団、第一飛行隊所属、アザゼル隊一番機のレイカーだ。

信じられんだろうが、アンタの機体に20mmの雨を降らさせて貰った。その結果、アンタは機体諸共木っ端微塵だ。悪いが至急、現空域を離脱してくれ。さもないと、艦隊からの砲弾の雨まで喰らう羽目になるぜ?』

 

「りょ、了解した。離脱する。レイカー殿」

 

『レイカーでいいぜ兄弟』

 

「レイカー。演習が終わったら、話がしたい」

 

思いもよらぬお誘いに面食らうレイカーだったが、少しだけ笑うと無線に声を乗せる。

 

『いいぜ、青空を征く我が兄弟。陸で会おうぜ』

 

そう言い残すとレイカーは列機を引き連れて、ギャッドラーの背後から離脱。また上空支援に戻った。

この謎の邂逅の約一時半後。ムー海軍の戦闘機マリン30機と爆撃機ソルス(と言う名のソードフィッシュ)90機の計120機からなる攻撃隊が、皇国艦隊に到達した。勿論、草薙レーダーシステムにより発艦して高度を取った瞬間から探知されている。

 

 

「敵航空機、目視にて視認!!」

 

「やっと来たか。対空戦闘、各艦自由射撃。各個に攻撃始め!」

 

「アイ・サー!両用砲、機関砲、撃ち方始めぇ!!」

 

皇国海軍の各艦艇はリアルタイム戦術データリンクにより、レーダーで捉えた情報が即座に共有される。これは対空、対水上、ソーナーは勿論なのだが、射撃管制レーダーについても同様である。

どういうことかと言うと、目標が重複する事なく迎撃できるのである。コンピューターが最適な攻撃範囲を提案し、基本的にそれに合わせて迎撃行動が行われる。偶に極一部の乗組員で「コンピューターの反応遅いんで、マニュアルで照準して攻撃していいですか?」なんて言ってくる、人間離れの化け物がいたりするのでそんな時にはマニュアルであるが。

 

 

「で、でけぇ!」

 

「アレが皇国海軍なのか!?!?」

 

「まるでクジラだ」

 

初めて見る大日本皇国海軍の主力艦達の姿にムー海軍のパイロット達は驚愕し、恐れを抱いていた。やはり心の奥底には列強としての驕りがあり、皇国を無意識の内に見下していた。その驕りと慢心からくる油断は、しっかりと皇国海軍に衝かれることになる。

 

「総員、攻撃準備!!戦闘機隊は機銃掃射、爆撃隊は爆撃k」

 

指揮官機が命令を飛ばしていた時だった。先頭にいた浦風型駆逐艦の萩風が、主砲の130mm速射砲を撃ち始めたのである。

 

「指揮官機被弾!!以後の指揮は二b」

 

「二番機がやられた!!」

 

指揮官機が撃墜判定貰ったので二番機が指揮を引き継ぐのだが、その二番機も即撃墜。それに続く他の機体達も落とされていき、戦闘機隊があっという間に殲滅されてしまった。

その間に爆撃隊は前進し、中央の戦艦に爆撃をかますつもりだった。だがしかしその中央の艦、熱田の両舷と主砲、副砲塔の上部には、さっきマリンを百発百中の命中精度で撃墜していた速射砲が1000門、さらに大口径なのが900門、機関砲も1000門という『対空砲のハリネズミ』と形容するのすら畏れ多いレベルの砲が上空に向けられていた。

そして射程に入った瞬間…

 

ズドドン!ズドドン!ズドドン!ズドドン!

ズドン!ガシャコン、ズドン!ガシャコン、ズドン!ガシャコン

キュィィン、ブォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!

 

「うおぉぉ!?!?!?」

 

「弾丸の壁じゃねーか!!!!」

 

「こんな弾幕をたったの一隻で作り出せる物なのか!?!?」

 

数十秒の全力射撃で全機が火だるまになって撃墜された判定を喰らい、模擬爆弾を抱えたままソードフィッシュ達は熱田の艦上を通過。オタハイト空軍基地等の近隣陸上基地や、回収用の古い空母等に向かって虚しい遊覧飛行をするハメとなった。無論、護衛のマリンも同様である。

 

 

 

数分後 ムー第一艦隊 旗艦『ラ・エルド』 艦橋

「れ、レイダー提督!!」

 

「どうした?」

 

ラ・カサミ級の一隻であるラ・エルドの露天艦橋にいたムー海軍唯一の機動部隊である第一艦隊を預かっているレイダーは、血相を変えて艦橋に登ってきた水兵に問いかける。

 

「に、二時間前に上がった攻撃隊ですが」

 

「あぁ。そろそろ戦果報告の第一報が入る頃だろうと思っていたが、どうした?余りに大戦果すぎて驚いたか?」

 

「そ、それが、攻撃隊は.......、報告役に残っていたマリン飛行小隊4機を除いて、壊滅したと.......」

 

この報告にレイダーは耳を疑った。今回の攻撃に際し、第一次攻撃隊は129機も上げていた。途中エンジントラブルで9機が帰還したものの、それでも120機の大編隊である。

その内4機が報告役として攻撃には参加していないので、116機が参加している。だがしかし、壊滅したと報告が来ている。壊滅は部隊の80%がやれらた場合に使われる物であり、半分の50%であっても「全滅」となる。全滅ですら組織的抵抗はまず無理だと言うのに、壊滅という事は最早組織的抵抗云々の次元ですらない。そんな事があっていいものかと、レイダーは脳内が真っ白になっていた。

だが考えざるを得ない報告が更に上がる。

 

「レイダー提督!!第一次攻撃隊より続報入りました!!!!戦闘の経過について、詳細に報告が来ています!!」

 

「読み上げろ!!」

 

「ハッ!我が方の攻撃隊は敵艦隊に突撃せん時、敵艦の精密なる射撃に指揮官機が撃墜せらる。以降、マリン戦闘機隊が優先的に排除され一分で全機撃墜せらる。

マリン戦闘機隊壊滅せるも、ソードフィッシュ爆撃隊は敵戦艦に突撃せん。されど敵戦艦の猛烈な対空砲火にさらされ、数十秒で全機撃墜せらる。攻撃隊全機撃墜により、我らこれより帰還せんとす。以上です!!」

 

今すぐにでも考えるのをやめたかった。取り敢えずこの事を首都防衛艦隊に報告する事にして、無線兵に打電を命じた。

一方の首都防衛艦隊には既に、死神がすぐそこまで迫っていた。

 

 

「この辺りだな」

 

『にしても、ムーには同情したいですよね。魚雷の概念すら無い兵士達に、空対艦ミサイルASM4をお見舞いするなんて』

 

『まあ死ぬわけじゃ無いし、いいだろ別に。さっ。迎撃機にやられる事は無いだろうが、ムーにバレる前にさっさと退散しよう』

 

「そんじゃお前ら、ミサイル発射だ」

 

震電IIには1機につき、6発のASM4海山が搭載可能である。それが40機という事は6発×40機=240発。もう可哀想になってくる数のASM4が、ムー海軍の首都防衛艦隊に向かって飛ぶ。因みに空母、軽巡洋艦、駆逐艦が目標である。

重巡と装甲巡洋艦と戦艦に関しては、後で熱田との砲撃戦に参加してもらう事にした。流石に射程外から撃つのはアレなので、ムー側の射程距離にしっかり入ってからである。

 

 

「見張り!不審物はないか!?」

 

「えぇ、艦長。海も空も、綺麗な青色ですよ。この調子なら、後1時間は問題ないかと」

 

「そうか。だが油断s」

 

突如、艦内に衝撃が走る。艦長は座礁でもしたのかと考えたが、この辺り一帯の海は水深が深く岩が隆起してもいない。まして氷山がある程寒い海域でもないし、視界も良好。何か巨大な物体と衝突する前に、確実に発見できるだろう。

だがその予想は全て違った。

 

『駆逐艦ラ・エヒン、機関部と第二砲塔弾薬庫に空対艦ミサイル命中。機関停止の上、転覆。轟沈と判定。乗組員、全員戦死』

 

「な.......に.......」

 

艦長含め、全員が耳を疑った。あり得ないと。特に見張り員は周りには「航空機はおろか、鳥すらいなかったのに.......」と報告していた。見張り員が見落とすのは無理もない。

空対艦ミサイルのASM4海山は、直径0.40m、全長6.57mとミサイルの中ではデカイが、飛行物体としては小さい。しかも速度がマッハ4以上であり、目視にて発見するのは困難である。射程も300kmとレーダーに引っ掛かる前に発射でき、早期警戒機でもいれば話は別だが撃ったらすぐに逃げれてしまう。おまけに色も青色で海に溶け込んでおり、今回は関係ないがステルス性とECM性能もあるので、迎撃は非常に困難である。

こんな常識外の未知の兵器を投入された結果、首都防衛艦隊の艦艇は18隻が血祭りに挙げられてしまい、生き残ったのは戦艦、装甲巡洋艦、重巡洋艦の合計15隻である。

 

 

「て、提督ぅ!!!」

 

「今度はなんだ」

 

「首都防衛艦隊が.......、戦艦、重巡、装甲巡洋艦を残して全艦轟沈!!乗組員はその全てが戦死判定を貰い、艦隊は、全滅状態!!」

 

「首都防衛艦隊が轟沈!?あの艦隊がやられたのか.......。敵は、一体どうやって.......」

 

艦これユーザーなら聞き馴染みのあるが聞きたくない『轟沈』という言葉。この轟沈というのは、艦艇が攻撃によって1分以内に沈没した際に用いる。そのため、基本的に出る事の少ない言葉である。

それが起きたという事は、使用された兵器の威力は果てしない程に強力である事が分かってしまう。

 

「敵は空対艦ミサイルなる兵器を使用し、正確に機関部や弾薬庫等を破壊。喫水線付近に着弾したらしく、巨大な破口が形成され転覆。これにより乗員は逃げる暇もなく、艦と運命を共にした判定だと」

 

「なんという.......」

 

「お、おい水兵?それはお前が読み間違えたとか、壮大な誤報だとか、なんか無電装置が壊れてたとか、そんな事はない、よな.......」

 

幕僚も信じられず、普通に考えればすぐにあり得ないと片付けられる可能性に縋り始める始末。だが首都防衛艦隊はまだ、マシだったかもしれない。まだ彼らは航空攻撃という、普通に考えて全然あり得る戦法で撃退されたのだから。

今から第一艦隊を襲う攻撃は、ムーはおろか現代の我々の世界に於いても考えられない蛮族的戦法が用いられるのだから。

 

 

 

第一艦隊上空 高度1万5,000m

『後部ハッチ解放。降下準備』

 

「さーて、野郎共!!戦艦と装甲巡洋艦奪って、味方艦からの砲撃でムー艦隊を混乱させてやれ!!!!」

 

「「「「「「「ヒャッハーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」

 

艦隊の上空には3機のC3屠龍が飛来していた。その腹に収まるは、軍内でも蛮族特殊部隊として悪名の高い飛行強襲群隷下の部隊、対艦制圧強襲空挺隊、人呼んで『鎌倉ヴァイキング』である。

因みに名前の由来は鎌倉武士並みの攻撃のエゲツなさと、ヴァイキングと同じ様に敵艦を襲うからである。

 

「降下開始!!」

 

C3から飛び出すと、各々の割り振られた艦に向かう。普通の空挺がパラシュートとジェットパックで減速するのに対し、鎌倉ヴァイキングはジェットパックのみで減速する。本来は燃料の兼ね合いで余り推奨されないのだが、彼等の戦場が狭い艦艇の上である事からジェットパックの使用頻度が他部隊に比べて極端に少なく、この方が迅速に展開できるので推奨されている。

因みに一部の空挺団員もこの方式で降下する者もいたりするし、神谷戦闘団の人間は大体この方式で降下している。

 

「アレだな。お前達、やるぞ!!!!」

 

『『『『『『『ヒャッハーーーーーーー!!!!!!!』』』』』』』

 

あ、そうそう。彼等の中での了解の返事は全て「ヒャッハー」である。レンジャー訓練で「レンジャー!」が返事になるのと同じなのだが、この返事のおかげで鎌倉ヴァイキングが半公式の呼び名なのだが、これとは別に「空挺世紀末」なんて呼ばれてたりもする。ではここで、簡単に彼らがどの位ヤバいのか箇条書きにその戦果を書いてみよう。

 

・アメリカのジェレラル・R・フォード級の二番艦『エンタープライズ』に強襲した際は、戦闘機を艦橋に突っ込ませて艦橋をへし折った判定となった。(勿論、本当にぶつけちゃいない)

・同じくフォード級の三番艦『ホーネット』に強襲した際は、原子炉の放射能を艦内に充満させた判定をゲットした。(勿論判定なので、実際には放射能漏れはしていない)

・イギリスの空母、クイーン・エリザベスに強襲した際は、格納庫内で2機のF35をフルスロットルで移動させて艦尾に激突判定ゲット。激突時の爆発の判定で、機関室破壊の判定もゲット。艦を行動不能にさせた。

・タイコンデロガ級のシャイローに強襲した際は、制御奪った後に近くを航行していたチャンセラーズビルにミサイル全弾浴びせて撃沈判定。そんでもってアーレイ・バーク級のベンフォールドにラムアタック特攻して撃沈判定ゲット(勿論、本当にぶつけてはいない)

・上記の事をしでかしまくった結果、各国の演習に出禁をくらった。曰く「歩兵が乗り込んでくる事自体あり得ないのに、ここまで無茶苦茶されたら訓練にならない」らしい。

・そしてこの無双っぷりを知る乗組員の一部には軽いPTSDになる位トラウマになっており、各国の水兵に「Kamakura Viking」と言うと震え上がる程には恐れられている。

 

これですら輝かしい伝説の一部であり、内外問わずヤバい認定されている。しかしそれ以上にヤバいのが神谷戦闘団の白亜衆である。一度だけ見よう見まねで、アメリカの艦隊一つ(二個艦隊相当の艦艇数)を丸々手中に収めた事がある。真の化け物はこっちだったよ。

さてさて。鎌倉ヴァイキング達は各々がステルス迷彩を使用しながら艦に上陸?乗艦?して、艦を手中に収めるべく動き出す。今回はラ・エルドの方を見てみよう。

 

「お前達、今回は迷彩を解除してやれ。では手筈通りに」

 

鎌倉ヴァイキング達は野蛮なイメージ、というか野蛮ではあるが頭もいい。艦にあった占領手順を決めており、今回はまず副砲を制圧する事にした。

現代の艦は基本的に全ての火器が無人化されており、その操作は全てCICに集約されている。勿論機関銃なんかは有人操作だったりするが主砲やCIWSなんかは、人が真横で操作する事は基本ない。だがムーの場合、全ての砲塔には装填手やら砲撃手やらがいる。精度は現代艦とら比べるなくもないが、生存性は高い。

現代艦ならCIC押さえれば、武器管制なんかは掌握できる。だがムーの様に各砲に人間がいると一つ一つを丁寧に潰していく必要があり、実は結構面倒なのだ。

 

「いつになったら決戦なんだろうな」

 

「さーな」

 

「軍曹殿。私は早く撃ち合いがしたいであります」

 

「まあ焦るなって」

 

そんな会話を水兵達がしている後ろに、鎌倉ヴァイキングの一人がいた。

 

シュパパパパパパパパパ

 

背後からサプレッサー装備の37式短機関銃が火を吹く。至近距離からの連射によって、気付かれる事なく死亡判定をゲットする。

 

『背後より銃撃。死亡判定』

 

「は?無線が壊れたのか」

 

「軍曹殿。なんか死亡判定って言われたんですけど、通信機が壊れたんですかね?」

 

「お前達、背後位警戒するがいい」

 

気付かれてないので鎌倉ヴァイキングの兵士が声を掛けた。振り返ると真っ黒な鎧を纏った男が銃構えているのだから、驚きのあまり悲鳴を上げてしまう水兵。

 

「うわぁぁぁ!?!?」

 

「あ、ちょ」

 

こんな悲鳴を上げられては周りにバレてしまい、たちまち周りの水兵達が駆け寄ってくる。

 

「あっちゃー。まあ、殲滅の手間が省けたか」

 

一度後ろに下がり、機関銃手に頼んで駆け寄って来た他の兵士達を蜂の巣にしてもらう。

 

ドカカカカカカカカカカ!!!!

 

9mmライフル弾が貫き、死亡判定や重傷判定を上げていく。流石にこれだけの騒ぎになると、露天艦橋からレイダーの幕僚達も何事かと降りてくる。

 

「なっ!?貴様ら、何者だ!!!!」

 

「大日本皇国陸軍、飛行強襲群所属、対艦制圧強襲空挺隊。人呼んで鎌倉ヴァイキング、ここに見参!!取り敢えずお前は、死ね」

 

鎌倉ヴァイキングの大隊長が降りて来た幕僚の背後に立ち、ゼロ距離から26式拳銃の5.7mm弾を喰らわせる。勿論即死。

 

「よし。このまま艦を手中に収めるぞ」

 

一部の兵士が甲板上で大暴れしている間に、艦内も殲滅が進んでいく。機関室、主砲塔、艦内の副砲塔、食堂、医務室等々。要所を制圧し中にいる兵士達を殺して回る。本当なら死体となって動かないのだが、今回は演習なので生きている。

なので取り敢えず腹と背中に赤いスプレー塗料を吹き付けて死亡判定の印とし、機関室と各砲塔に最低限の人員を残してもらって兵員室に連行する。

 

 

「レイダー提督!下がっていてください」

 

「あ、あぁ」

 

レイダーは部下の幕僚達に戦闘指揮所から全部司令塔に移され、なけなしの装備で防衛ラインが構築された。と言っても相場が精々カトラスと拳銃程度で、超お粗末な物なのだが。

 

「き、来たぞ!」

 

幕僚の一人が叫んだ瞬間、26式が頭を撃ち抜いた。

 

「クッソー!!!!」

 

「おい待て!」

 

幕僚の中でも一番若い男が飛び出して、カトラスを構えて突撃する。だがしかし

 

「フンッ!」

 

「のわ!?」

 

振り下ろされたカトラスを腕の装甲板で受け止めて、そのままカトラスを絡め取る。カトラスは空中に放り投げられて、若い幕僚は背負い投げで甲板に叩きつけられる。

 

「グッ!」

 

「兄ちゃん、ゲームオーバーだ」

 

空中に飛ばされたカトラスをキャッチした兵士が、若い幕僚の首に剣を突き立てる。一応今回は演習なので、念のため全ての演習用カトラスは模造刀である。だがもしこれが真剣であれば、確実に突き殺されているだろう。

 

「はぁ.......」

 

そのまま若い幕僚は脱力し、甲板上に大の字で寝転んだ。そして残るレイダー提督と幕僚はと言うと…

 

「ドーモ、レイダー=サン。鎌倉武士ヴァイキングデス」

 

謎の鎌倉ヴァイキングニンジャの持つ36式散弾銃によって「アイエエエエ!」されました。

艦の殲滅は完了したのだが、今からの仕事こそが本番である。

 

「各砲塔、旋回!!目標、敵艦隊!!!放て!!!!!!!」

 

そのまま周りのムー艦艇に対し、無差別砲撃を開始したのである。これには流石の第一艦隊であっても、混乱待ったなしである。何せ味方艦からいきなり撃たれたのだ。混乱するなという方が無理だし、あり得ない事故に判断もモタついてしまう。

 

「撃って撃って撃ちまくれ!!!!最悪、ラムアタックして沈めりゃいい!!!!」

 

「無茶苦茶だ.......」

 

流石のレイダーも驚愕を超えて、もう呆れてしまった。そして砲塔に残っているムーの水兵達は、自分達が撃つよりも遥かに高い命中精度に舌を巻いていた。

 

「(軍曹殿。なんか、命中率高くありませんか?)」

 

「(.......言うな)」

 

「(本職の大砲屋が謎の兵士に負けるってどうよ)」

 

因みに彼等に残って貰っているのは、万が一に備えてである。流石にないと思うが、一応空砲とはいえど火薬を使っている。もし本当に自爆とか起きたら危険なので、危険行為をしていないかの監視役である。機関室なんかも同様である。

ラ・エルドとラ・デルタ級装甲巡洋艦2隻によってムー第一艦隊は、その全てが撃沈された。

 

 

 

同時刻 超戦艦『熱田』 艦橋

「提督。鎌倉達より報告が上がりました。「敵ムー艦隊、殲滅完了。フィナーレはお任せする」以上です」

 

「そうか。ではこれより、本艦は単艦にて突撃!敵残存艦に対し攻撃を敢行する。全艦、砲雷撃戦用意!!!」

 

「アイ・サー。全艦、砲雷撃戦よーい!主砲、副砲、両用砲、機関砲、砲撃準備!!」

「総員、砲雷撃戦用意。総員、砲雷撃戦用意」

「主砲、副砲、両用砲、機関砲砲撃準備」

「両舷両用砲群、機関砲群、スタンバイ。砲撃モードを対艦モードに」

 

各々が配置につき、戦闘準備に移る。そして熱田は首都防衛艦隊に向かって、最大戦速で突撃していった。

 

 

「ムレス提督、陣形整いました。どうしますか?」

 

「決まっている。奴らに一矢報いに行くぞ!!」

 

首都防衛艦隊の司令、ムレスはやられた僚艦の仇を討つべく進路を敵艦隊のいる方向へと取った。だがそれは、既に皇国側には捕捉されていた。

約一時間後、互いの距離は目視できる位にまで接近した。ムー側は熱田の姿に驚愕し、日本側はようやく終わると安堵していた。

 

「敵巨大戦艦、射程に入りました!!」

 

「主砲撃てぇ!!」

 

最初に撃ったのは首都防衛艦隊の旗艦、ラ・ゲージを筆頭とした残存艦15隻。数十発の砲弾は熱田に向かって飛翔し、その巨大さ故に結構な数が命中した。

 

「見たか!これで奴とて中破は確実!!!!」

 

『只今の砲撃、全砲装甲板にて弾かれた物と判定』

 

「な!?」

 

まあ装甲自体がツァーリ・ボンバが真横や真上で爆発しても沈まない位の化け物装甲なので、例えゼロ距離で砲弾を撃ち込んだところで全くダメージは入らないのだが、それを知らないムレスは冷静さを失った。

 

「撃ちまくれ!!とにかく当てるんだ!!」

 

ムー艦隊からの砲弾が雨の様に降り注ぐが、その全てが弾かれてしまう。

 

 

「そろそろこちらも決めるとしよう。主砲、副砲、砲撃開始」

 

「撃ちー方ー始め!」

 

ドゴォォォォォォォォォン!!!!

 

一撃だった。放たれた砲弾は正確にムー艦艇のバイタルパートを撃ち抜き、ムー艦隊はたったの一斉射に殲滅されたのである。

 

「判定届きました。全艦轟沈です。ムー艦隊、鎌倉が占領中のラ・カサミ級と2隻のラ・デルタ級を除き、当該海域より排除完了しました」

 

「通信兵。閣下に暗号を打電。『天乃岩戸、開く』」

 

 

 

同時刻 オタハイト空軍基地 神谷戦闘団テント

「長官、艦隊より暗号電を受信。天乃岩戸開く、です」

 

「そうか。ではこれより、上陸作戦に取り掛かるとしよう。先遣隊を動かせ」

 

「ハッ!」

 

演習はまだ始まったばかり。次回は神谷戦闘団や第四海兵師団の暴れっぷり模様をお届けしよう。

 

 

 

 

*1
ではなく強襲揚陸艦。全通甲板だから、仕方ないけどね

*2
こちらも巡洋艦ではなく、駆逐艦

*3
ドック型揚陸艦です。まあムーには存在しない艦種だし仕方ない


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