その夜 神谷と川山の部屋
『で、緊急会議をしようと言ってきた辺り、絶対面倒な事が起きたんだろ。何が起きやがった?』
予定通り、一色のみテレビ電話で参加する、うーん。便宜上、緊急三英傑会議とでも名付けようか。この緊急三英傑会議が始まった。
一色は夕方にLINEで会議やる事を聞いただけで、何が起きたのかは聞いてない。が、川山には今回、外交は勿論、ある程度の政治経済に関する取り決めに関しても自由裁量を与えてある。そうそう連絡が来る事は無いのだが、それがこんな形になっているという事は、面倒事が起きてしまったという事である。それがわかったので、一色の表情も引き締まっているように見える。
「まずは俺からだな。今日の会談なんだが、最初こそ予定通りだった。技術関連の法規制緩和の打診とか、日本企業の工場や店の建設なんかに関する具体的な案が出た。これは帰国してから報告書を出すが、もう一つバカでかい爆弾があった。
まだ水面下で動いている計画だが、ムーは永世中立を破棄して日本との同盟関係締結を計画している」
『マジか!?』
「あぁ。今回の演習、お前もおかしいと思わなかったか?幾らなんでも、ムーと皇軍とじゃ戦力差がありすぎる。これでは練習にならんのは、軍事に弱いお前でも分かるだろ?
どうやらムーの計画としては今回の演習でムーが大敗する事によって、今のムー国民にある列強第二位というプライドや過信を破壊。そしてグラ・バルカス帝国の脅威を流すことによって、国内世論に「ムーと日本の同盟を。中立の破棄を」というのを作りたいらしい」
一色は思ってたよりもムーに行動力がある事に驚いていた。ムーが永世中立を破棄すれば、周りの国との軋轢が生まれてもおかしくはない。
『それはアレか。対グラ・バルカス帝国を意識してか?』
「らしい。そこら辺は、浩三に報告してもらおう」
「現在のムー軍の仮想敵国は、言わなくても分かるだろうがグラ・バルカス帝国だ。知っての通りムーの軍事力は1900年~1910年代、日露戦争くらいだ。戦略に関しても、やはりその程度。戦車すら存在しないから、見る場所によっては第一次世界大戦以前の面もある。
対してグラ・バルカス帝国は戦艦大和を始めとする、第二次世界大戦相当の軍備を備えた国家。艦艇も大和を始め、ゼロ戦なんかもいる。第二次世界大戦相当となると、核やミサイル、Me262のようなジェット機の存在すら浮上してくる。現代兵器の礎は、第二次世界大戦で多く生まれているからな。こんなんじゃ勝てないからムーは軍拡路線に走り出した。で、その結果」
神谷はスマホで写真を見せながら、前回マイラスが語った計画を説明した。アレを長々と書くのは面倒だし、文字数もエゲツない事になってしまうので今回は省略させてもらう。
とは言っても中には忘れてしまった読者もいるかもしれないので、簡単に説明しよう。装備が第二次世界大戦程度のアメリカ、イギリス、ドイツ、ソ連、日本の各種のソレになる。以上!
『念の為に聞くけど、グラ・バルカス帝国との戦争には間に合う訳?』
「正直、グラ・バルカス帝国に関しては殆ど分からんからなぁ。幾ら装備が良くても、軍隊動かすのは金が掛かるからな。だがまあ、ぶつかると仮定したら5年以内ってところだろ。
だが一方でムーの技術力じゃ開発できても、量産には時間が相当掛かる。果たして5年で間に合うかどうか」
『この際だ、お前達にも俺の構想を話しておきたい』
そう言うと一色は一拍置いて、いつにも増して真剣に自分の計画を語り出した。
『俺は、この世界を導くリーダー国に日本を、大日本皇国を置きたいと考えている。旧世界に於いて日本はアメリカには軍事力以外では、ほぼ全て劣っていた。だがこの世界に於いては軍事、経済では遥かに上回る。後は影響力があればミリシアル以上の国家にもなれる。
だからまずは国際社会に参入する必要があるのだが、そのための知名度と好感度アップに同盟や経済関連でムーを利用したいとずっと考えていた。この話、何が何でも通してみせる。だから俺の計画、お前達も手伝ってくれないか?』
この話を聞いた時、神谷と川山は顔を見合わせた。そして、笑った。
「なんだそれ、メッチャ楽しそうじゃん!!!」
「なんかアレだわ。厨二病臭いのに、本当に現実にできてしまえそうなのが良いわ。どうせなら、平和的に世界征服でもやるか?」
2人の反応はどちらも好意的と言うか、超ノリノリであった。正直『三英傑』なんて呼ばれちゃいるが、ここまで上り詰めた理由こそ子供の頃に誓い合った約束だったのだが、その誓いをしたキッカケ自体は単なる子供のノリである。
『ハハ。毎回思うが、俺達って三英傑ってガラじゃないよなー』
「だって全部俺達がやりたいようにやった結果、なーんか良い方向に行ってるだけだしな」
「未だ男子のノリで国家運営してるし」
勿論国の安全保障みたいな、直接国家の存亡に係るようなのは真面目に吟味して決断を下す。だがそれ以外に関しては
「こんなんどー?」
「うーん、いいんじゃね?」
「そんじゃ、さいよー」
こんな感じで結構軽い。こんな明らかに国家が破綻しそうなノリなのに例えば国内政治なら第一次産業の立て直しに成功して、経済面なら国民の所得が平均して3倍近く上がって、軍事面ではアメリカを遥かに凌駕する軍備になり、外交面では国際社会に於けるリーダーに躍り出たりと、もう化け物みたいな偉業を成し遂げている。
「そういや、最近の国民の流行知ってるか?」
「国民の流行?」
『海外旅行だろ?確か第三文明圏が一番人気で、ムーとかミリシアル、あとフェン王国も人気の上位ランカーだっけ?』
会議も終わったので、また適当な雑談が始まる。今回は国民の流行である。
ここ最近は日本も転移後の世界に慣れ始めたので、様々な分野での交流が行われている。特に『異世界』というだけあって、国ごとの世界観はまるで違う。あっちの国は中世ヨーロッパ、こっちの国は戦国時代の日本、そっちの国はスチームパンク、みたいな感じにバリエーション豊かである。旅行先には困らない。因みにこっちの世界でも日本のアニメ、漫画、ゲームといったサブカルは超大人気。
「そういやよ、お前はいつになったら貸してた漫画返すんだ?」
『あ!ヤベェ、忘れてた。どっかで神室町方面に行くから、その時家に寄るわ』
「全く。次遅延したら、100円貰うからな」
「お前はTSUTAYAか!」
こんな感じの雑談は、なんやかんやで一時間くらい続いた。
翌日 オタハイト 国防省
「おーい、そろそろ時間じゃね?」
「あ、ホントだ!」
「うおっ、スゲー人だかり」
この日、国防省にある講堂ではある紙が貼り出されていた。その紙の内容、というか題名は『合同軍事演習戦力表』という物である。名前の通り、日本とムーが今回出す軍の戦力をまとめた表である。ムーの方から見てみよう。
※現在ラ・カサミ級以外のスペックが判明していないため、主が同等のスペックの艦や同じ頃の年代の兵器を元に勝手に判断して設定しています。あしからず。また駆逐艦2種類については、私が勝手に創作した物になります。
《海軍》65隻
○首都防衛艦隊 33隻
内訳
・ラ・カサミ級戦艦 1隻(旗艦)
・ラ・ヴァニア級空母*1 4隻
・ラ・デルタ級装甲巡洋艦*2 8隻
・ラ・グリスタ級重巡洋艦*3 6隻
・ラ・シキベ級軽巡洋艦*4 4隻
・ラ・ヤハテ級駆逐艦*5 10隻
○第一艦隊 32隻
内訳
・ラ・カサミ級戦艦 1隻
・ラ・ヴァニア航空母艦 2隻
・ラ・コスタ級航空母艦*6 6隻
・ラ・デルタ級装甲巡洋艦 4隻
・ラ・グリスタ級重巡洋艦 2隻
・ラ・ホスト級重巡洋艦*7 4隻
・ラ・シキベ級軽巡洋艦 2隻
・ラ・ヤハテ級駆逐艦 3隻
・ラ・グラデ級駆逐艦*8 8隻
《陸軍》61,000人
・首都防衛師団 16,000人
・第一、第五、第八師団 45,000人
これがムー側の戦力であり、数も凄いが練度もムー統括軍の中でトップクラスの部隊である。
「スゲー!首都防衛艦隊に、最強の第一艦隊だ!」
「陸軍だって首都防衛師団に最精鋭の第一師団、そして防衛戦では負け知らずの『最硬』第五師団、それに攻撃力随一の第八師団だぜ!?こりゃ我が軍の圧勝だ!!」
「おいおい、大日本皇国のを見てみろよ!戦艦1、空母2、駆逐4、揚陸艦5、特殊艦1だけだってよ!ギャハハ」
「しかも陸上戦力も二個師団と一個大隊と一個分隊程度だってよ!!」
そう言いながら、若い士官達は日本の戦力を見て笑っていた。確かに彼らの言う通りの戦力である。戦艦1、空母2、駆逐4、揚陸艦5、特殊艦という名の潜水艦1に二個師団規模と一個大隊、一個分隊規模の陸上戦力だ。(正確にはこれに加えて、幾つかの輸送航空隊と演習には参加しないが護衛の戦闘機隊もいたりはする)
だが戦艦は主力艦隊の総旗艦たる熱田型指揮戦略級超戦艦に海軍最高の練度を誇る最強の航戦一航戦の赤城と加賀である。しかも陸軍戦力も極道顔負けの第四海兵師団と安定の最強集団、神谷戦闘団白亜衆が師団の正体である。一個大隊の方は頭のおかしい蛮族特殊部隊の飛行強襲群で、一個分隊の方はCrazy demonの先遣陸戦隊である。
そんな訳で弱い皮を被った、最強の面子なのである。因みに真実を唯一知る、マイラスとラッサンのコメントがこちら。
「oh.......ウチの艦隊、負けたな」byラッサン
「神谷さん、ガチで殺しに来てる.......」byマイラス
絶望である。ただでさえ勝てる訳のない兵器群を持つ皇国軍なのに、その中でも最強の部類の兵器と最高練度の最精鋭兵士が来るのだから、もう未来は何が起きてもムーの敗退しかあり得ない。
「君達、何をそんなに項垂れているのだね?」
「ぐ、グラターナ大将閣下にウェスバイト大将閣下!?」
マイラスが振り返ると海軍のトップであるジャブソニー・グラターナと、陸軍のトップであるホーストン・ウェスバイトが立っていた。何方もムーの誇る名将であり、若くして中佐となっているマイラスとラッサンでも雲の上の存在である。
勿論2人とも、バネじかけの人形のように椅子から立ち上がって敬礼する。その体は緊張のあまり、プルプル震えている。
「確か君達は技術士官のルクレール中佐と、戦術士官のデヴリン中佐だね。さっきジャブソニーが聞いていたが、若手最優秀の君達が何をそんなに項垂れている?何か問題でもあったのかね?」
「いや.......」
「それは、えっと.......」
言える訳がない。目の前の男達は、海軍と陸軍のトップ。そんな人間の目の前で「ムーが日本にボロ負けする未来しか見えないので、こうして項垂れてました!」なんて言おうものなら、即刻クビが社会的にどっかへ飛ぶ。
「そう言えば、君達は例の大日本皇国に観戦武官として参加していたね。特にルクレール君の報告書、まだ見れてないが大日本皇国の軍備について書かれていたと聞き及んでいる。
そうだ。今度演習があるのだから、君が直接私達に報告してくれたまえ。デヴリン君も戦術面について、詳しく聞きたいと思っていたのだ。今かいいかね?」
「「了解しました.......」」
まさかのグラターナが2人をご指名の上で、報告しろと言ってきたのだ。他の士官からしてみれば、大変栄誉な事であろう。だが今の2人にとっては、今すぐ回れ右して全力で逃げ出したいぐらいである。
だが無視なんてできる訳ないので、一度資料を取りにデスクへと向かった。
「なあ」
「なんだよ」
「俺達、クビ飛ぶのかな」
「.......懲戒解雇より、自主退職の方が経歴の傷は浅いぞ」
2人は胃がキリキリ痛むのを通り越して、なんかもう、雑巾を固く絞る時みたいにすんごい力で捻られてる様な痛みが胃を走っている。だがそれでも歩みは止められず、気付けば指定された部屋の前にいた。
もうここまで来ては引き返せないので、意を決して扉を叩く。
「失礼します!ルクレール中佐、参りました!」
「デヴリン中佐、参りました!」
「うむ。では、早速頼むよ。まずはルクレール中佐から」
「ハッ!」
ウェスバイトの命令に従い、2人に資料を渡す。今までの人生の中で一番のプレッシャーと緊張に押し潰され掛けながら、説明を始めた。
「大日本皇国軍は合計で六つの軍隊からなります。陸軍、海軍、空軍、海軍陸戦隊、特殊戦術打撃隊、宇宙軍です。
陸軍には「戦車」と呼ばれる装甲を施した兵器があり、イメージとしてはパーパルディア皇国の保有していた地竜を機械式にした物です。この戦車には様々な用途に合わせた物があり、基本タイプの巨大な主砲を載せた物、対空機関砲や対空ミサイルという誘導魔光弾を搭載した…」
「ちょっと待て!誘導魔光弾とは、あの誘導魔光弾か!?」
「はい。信じられないかもしれませんが、大日本皇国軍は様々な誘導魔光弾を使用します。サイズも大小様々で小さい物だと歩兵が使う程度の物から、大きな物なら国を一撃で滅ぼすものまで。用途も航空機を撃墜するもの、戦車や装甲車を破壊するもの、艦艇を撃沈するもの、国家そのものを破壊するもの。本当に様々です」
この時点でグラターナとウェスバイトの口は半開きであった。既に自分の知る戦闘とは遥かに離れていて、全くもってイメージがつかない。
「航空機はどうなのだ?」
「航空機は多数の種類がありますが、率直に申し上げます。ムーどころかミリシアルの航空機すら、圧倒的に凌駕する性能です」
「ははは。そんな訳が」
グラターナがそう笑うが、マイラスはそっと一枚の写真を差し出した。F9心神の写真である。
「これは?」
「これが空軍で運用される戦闘機でして、F9心神と言います。簡単に性能を紹介しますと最高速度は音速の2倍で飛び、開発中のレーダーに映らない機能があり、航空機が溶けるかのように撃墜できる機関砲を持ち、射程数百km相当の誘導魔光弾を12発搭載できます。
またこれと同程度の航空機が、海軍の航空母艦にも搭載されています」
「待て待て待て待て!音速以上だの、レーダーに映らんだの、航空機が溶けるだの、そんな事ができるのか!?」
「音速以上の速度を叩き出せるのは、ミリシアルの魔光呪発式空気圧縮放射エンジンを科学に置き換えたジェットエンジンと呼ばれるエンジンを更に発展させた物を使用しているためです。
レーダーに映らないのは、レーダーが探知するために放つ電波を吸収してしまう塗料を全身に塗り、機体形状自体もレーダー反射断面積を最小限にする形状になっているためです。
航空機が溶けるのは20mm弾を毎秒数百発ばら撒ける機関砲を搭載しているからです」
一応発想自体は、とても簡単な物ではある。だがそれを成し得るのに、どれだけの時間、労力、技術力が掛かるのかは予想がつかない。
「個人的に海軍と海軍陸戦隊というのが気になるのだが、それも教えてくれるかね?」
グラターナからのリクエストも出たので、今度は海軍と海軍陸戦隊の紹介に移る。
「まずは海軍陸戦隊からご説明します。海軍陸戦隊は水陸両用作戦や強襲作戦など陸海空の兵力を連携した統合作戦を主任務としており、簡単に言えば今回の演習のような『敵地への上陸任務』を専門的に行う部隊です。
陸上兵器に関しては水陸両用戦車、装甲車を除けば基本的に陸軍と変わりません。しかし兵器を揚陸するために専用に開発された艦艇や、揚陸を支援する艦艇を保有します。強襲揚陸艦という航空母艦の特性を持った艦艇、ドック型揚陸艦という内部に水を溜めて上陸用舟艇の母艦となる艦艇、駆逐艦で艦隊を組織し有事の際は武力介入できる軍です」
こちらは意外とマトモというか、ぶっ飛んだ物は出てこなかったので安心した。だがその安心は、次の瞬間ぶち壊されるハメになる。
「続いて海軍ですが、海軍には有事の際の艦隊戦力となる八個主力艦隊と国防を専門とする五個防衛艦隊が存在します。主力艦隊の方は全て同じ規模なのですが、一個主力艦隊=237隻です」
「「.......はい?」」
グラターナとウェスバイトの声がハモった。今マイラスは聞き間違いじゃなければ、他国の全海軍艦艇の合計数と同等の艦艇数が一個主力艦隊と言ったのだ。
「この艦隊にどのような艦艇がいるかと言いますと、自分で沈んだり浮上したりできる潜水艦と呼ばれる艦艇、飛行目標の探知と破壊を重点に置いた駆逐艦、潜水艦の探知と破壊を重点に置いた駆逐艦、航空機の破壊というより殲滅を得意とする重巡洋艦、突撃艦と呼ばれる70ノット以上で航行可能で船らしからぬ挙動が可能な艦艇等です」
「ルクレール君。既に化け物しか居ないのは分かったのだが、戦艦と空母はいないのかね?」
グラターナもウェスバイトも、なんかもう慣れてしまった。というか、この程度で驚いていちゃ身が持たない事を悟った。
「勿論います。ですが戦艦と空母に関しては、先程の艦艇で化け物と呼ばれてしまっては立つ瀬が無いぐらいに化け物です。
戦艦ですがグレードアトラスター級が、8隻」
「「ゴフッ!」」
同時に吹き出してしまった。無理もない。格下の列強第五位とは言えど単艦で滅ぼした仮想敵国の化け物戦艦が、日本に8隻もいるのだから。
「グレードアトラスター級の主砲を2基搭載し後部を空母にした戦艦、そして今回の演習でも参加している真のバケモノが各艦隊に1隻ずつ配備されています」
「もう驚かないぞ!!」
「ウェスバイト大将閣下、これを聞いてもそう言ってられますか?
その戦艦の名は『熱田型指揮戦略級超戦艦』と言うのですが、全長が1500m、全幅が150m、速力が80ノット」
「待て待て待て待て!!!!!!」
「今ラ・カサミ級の11倍の全長、4倍の全幅と速力と言わなかったか!?!?!?」
驚かない方が無理である。ムーの威信を掛けて建造したムー海軍の象徴たるラ・カサミ級が、足元に及ばないどころか天と地程の差があったのだ。
「驚くのはまだ早いです。主砲が710mm四連装砲9基であり、それ以外にも大小様々な砲塔を装備しています。側舷の速射砲群の一斉放火にすら、ラ・カサミ級では耐えられないでしょう」
「空母の方も化け物か?」
「グラターナ閣下の仰る通りです。普通の空母ですらグレードアトラスター級より長いくらいで、艦載機も7、80機は載せられます。しかし今回の演習に参加する赤城型、正確には『赤城型要塞超空母』と言うのですが各主力艦隊に2隻しか配備されていない、全長が1200mで艦載機も600機以上搭載できる化け物空母です」
もう驚きすぎて無である。口を半開きに、体がプルプル震えていた。如何なる戦略と戦術を立て万全の装備で臨んだとしても、強いと思っていた自軍が確実に負けてしまうのが分かったのだ。それも圧倒的大差が付いていると来れば、もう感情なんて消えてしまうだろう。
「あの、驚愕しているところ大変恐縮なのですが、まだ化け物っぷりはありますよ?」
「もうこれ以上何があると言うのだ.......」
「特殊戦術打撃隊というのがありまして、今回の演習には参加していませんが、もし演習に出てきたとしましょう。勝負の土俵が違いすぎて、絶対に勝てません。
何せこの軍隊には空を飛ぶ超大型の航空母艦、2本の足で大地を踏みしめる鋼鉄の巨人、大量の無人戦闘機を積んだ無人の大型空中母機、遙か高空を飛ぶ大要塞といった兵器群が存在します。しかも防御力は爆弾や砲弾をぶつける事が出来たとしても、ありったけの数を撃ち込まないと倒せないぐらいには頑強です。というかそれ以前に、我が国の兵器では届く事すら出来ないのですがね」
そうマイラスが語った直後、2人が椅子から落ちた。驚愕しすぎて脳がオーバーヒートしたのか、気絶してしまったのである。マイラスとラッサンは顔面が真っ青になり、すぐに衛生兵と軍医を呼んでグラターナとウェスバイトは医務室に担ぎ込まれたのであった。
数時間後 大日本皇国 神室町 神谷邸
「ねぇ、今頃神谷様はどうしているのかしらね?」
「きっと仕事に仕事で、私達のことは忘れているわ」
そうヘルミーナとミーシャが趣味となったお菓子作りをしながら、愚痴というか神谷への文句を語っていた。日本に来てから自然が恋しいのはあるが、自分の村は勿論、これまで「都会」と思っていた街よりも遥かに発展した技術と文化、そして生活に不満はない。
特にこの家での生活は、とても快適なものである。朝起きればモーニングティーをメイドが用意し、とても美味しい食事が出る。午前中はマナー講座や日本での最低限の一般常識を学ぶ講座こそあれど、終わればまた豪華な昼食が振る舞われる。
午後は基本自由で、各々の趣味をしたり姉妹で集まってのガールズトークが始まる。因みにヘルミーナとミーシャがお菓子作り、レイチェルがアニメ鑑賞、読書(漫画やラノベ)、ゲーム、アナスタシアが最近ハマった戦国武将関連の作品鑑賞(最近は葵徳川三代が好きらしい)エリスがドラマや映画鑑賞なんかをして過ごしている。
夜になればやはり豪華な食事が出て、スーパー銭湯並みの巨大浴場やサウナなんかに入って体を癒し、風呂から出ればマッサージ師の資格を持った者からのマッサージだって受ける事が出来る。寝る時も大きなベッドで眠れるし、寝心地は言わずもがな極上である。
だが一つだけ不満がある。一応の婚約者である神谷と会う事が、極端に少ないのだ。殆ど家に帰らず、帰ってきても深夜で早朝には出ていく。しかも内容が仕事であるため、怒るに怒れない。早稲を始め使用人も「仕方ない」で片付けてしまっているので、この事に文句は言わない。それでずっと溜まりに溜まったイライラがこの間噴火し、それがあの結果である。
「ミーナ姉様、ミーシャ姉様。いる?」
「あらエリス。どうかした?」
「お菓子はまだ出来てないから、試食できないわよ」
2人が使っているキッチンにエリスが入ってきた。偶に試食やつまみ食い目的に、エリス含めちょこちょこ姉妹が来襲する。だか生憎と、まだ生地を混ぜている最中でつまみ食いも試食もできそうにない、
「今日は違うわ。あのね、私、この家を出る事にしたから」
「そう。って、え?」
「出て行くって、この家を?」
「そうよ!」
そう言ってエリスはデカイ胸を張っているが、普通に考えて愚策である。幾ら日本に関する最低限の常識を知っているとは言え、根本的にクワ・トイネとは文明レベルが違う。江戸時代や戦国時代の人間がタイムスリップして現代で生活できるかと言えば、恐らく無理だろう。
今は神谷に仕える人間が居るから生活できているのであって、出て行くという事はその庇護を受けられないという事なのだから生活はできる訳ない。
「出て行くっていうけど、お金は?生活は?家は?私達が頼れる所なんて、神谷様以外いないでしょう?」
「それは.......」
「それに村に帰っても、掟破りとして殺されるだけよ。掟破りがどうなるのか、あなたも知っているでしょう?」
村の掟を破った者は程度にあった刑罰を与えられるのだが、処刑の場合も立場や罪の程度によって処刑内容が変わる。焼殺、斬殺、絞殺、獣殺辺りが普通だ。処刑自体が極稀、というか10年に1人いるかいないかなのだが、五等分の花嫁は一度だけ極刑にあたる罪を犯し最も苦痛の大きい社会を持って殺された者を知っている。その殺され方も。
「エリス様、先程のお話お聞きしました」
今度は早稲が入ってきて、いつものように優しく声を掛けてきた。出て行くと聞いたのに、まるで対応は決まっているかのような感じがする。
「なに?私を止めるの?」
「いえいえ。旦那様より、皆様が出て行くという決断を下しても止めるな、と仰せつかっております。ですが先程ヘルミーナ様が言ったように、行く宛や生活の宛はあるのですか?」
「.......」
黙ったところを見る辺り、怒りか何かで冷静さを欠いていて後先考えていなかったのだろう。
「もし出て行くというのなら、こちらをお持ちください。旦那様より、これだけは何が何でもお渡ししろと言われておりますので、何が何でも受け取って貰います」
そう言って例の封筒を差し出した。早稲から引ったくるように受け取ると、中を確認した。エリスとしてはこれまで掛かった経費なんかの請求書が何かと思っていたが、中身は知っての通り各種通帳、ハンコ、スマホ、クレジットカードなんかである。
「.......なんで、なんでこんな事してるのよ!出て行こうとする人間に、こんな大金渡すなんて頭おかしいんじゃないの!?」
通帳を見たエリスはそう怒鳴った。どういう事かと2人も通帳を見てみると、そこには前回も言ったように合計3,000万円の預金がある事が示されていた。
「エリス様が旦那様をどう思っているのかは分かりませんが、あの人はこういう事をするお方なのです。特に今回の事に関しては掟にあって破れば皆様のお命の危険があるとは言えど、所詮はこちらの勝手な都合で故郷から引き離し慣れない土地で過ごさせる事になってしまったと嘆いておりました。その気持ちだけは、お受け取りください」
「.......」
「早稲さーん」
振り返るとそこには、総理大臣の一色が立っていた。その手には、神谷から借りていた漫画の入った紙袋が握られている。
「おぉ、これはこれは一色様。どうなさいました?」
「浩三から借りてた漫画を返しにきました。ん?もしかして、あの子達が例のエルフ花嫁?」
「左様にございます。皆様。こちらは大日本皇国の総理大臣、一色健太郎様です」
なんか雰囲気的に何かあった後なのだが、その状況で自己紹介に持っていく辺り本当に困っているのだろう。
「あー、総理大臣の一色です。アイツとは親友で、同じ三英傑やってます」
三英傑と聞いた瞬間、3人の表情が変わった。さっきのゴタゴタを知らない一色にとってはなんでから分からないだろうが、3人にしてみれば神谷の素顔を知る相手が目の前にいるのだから当然である。
ここでヘルミーナが、行動を開始した。
「あの、一色様。三英傑という事は、神谷様のお仲間なのですよね?」
「まあ、そうなるのかな?」
「私達は今現在、神谷様に不信感を抱いています。私達を愛しておらず、浮気をし、仕事を笠にしている。そういう風に考えています。ですが従者の皆さんは、それは無いと仰ります。あなたから見て、神谷様がどのような人物かを教えてください」
普通なら親友がこんな風に思われてるのだから、怒るのが当然だろう。だが一色の場合は、見事なまでに勘違いされてる事に笑いそうになっていた。
「そうだなぁ。まずアイツは同じ志を持つ人物で、俺の大切な真友で、俺が政治をする上での盟友だな。今言ってた浮気とか仕事を言い訳にしてるとか、そんな事は絶対に無いと断言できる。
アイツは転移する前から、エルフが大好きでな。君たちのような子達が、好みのど真ん中だ。だから浮気は絶対にあり得ないし、ここ最近は本当に国家的にも忙しかったから仕事だったんだと思うよ。それ以前にアイツは今の軍のトップ、いや軍人という職に誇りを持っている。仕事言い訳にしてどうこうするような男なら、三英傑なんて呼ばれてないさ」
「.......本当ですか?」
「あぁ。この間もここに帰る前に俺の所に寄ったんだが、アイツは殆ど眠らず二週間ずっと仕事してたからな」
ここに帰る前という事は、あの日エリスが神谷にビンタかました日である。実を言うとあの後、そのまま眠っていた神谷にエリスは人知れず怒りを覚えていた。
しかし蓋を開けてみれば、二週間殆ど眠らず仕事をしていたという。段々とエリスの顔も影が見え始めた。
「私達はなんて事を.......」
「神谷様.......」
(この表情を見るに、喧嘩でもしたな。それにアイツの評価を聞いてきた辺り、一方的に怒っちゃったパターンだな)
表情を読んで心を見透す力は三英傑は、全員身につけてはいる。だが、その実力は一色の方が一歩リードしているのだ。何せ一色は首脳会談なんかをする中で、やはり独裁者との会談もあった。そういったヤツを前にして、その場で取り決めをする際の腹の探り合いや、政界の中でも駆け引きで鍛え上げた結果、その力だけは最早神の領域に入っていると言ってもいいだろう。
ほぼ確実に相手の考えを完璧に言い当て、その上で行動する。武力を封じられた上で敵に回すと、一番厄介な相手と言える。
「何があったかは知らないけど、喧嘩したぐらいなら笑って許すと思うぞ。アイツ、仲間や身内には優しいから」
「.......姉様、私やっぱり止めるわ。さっきの」
エリスは決断を下した。もう少しだけアイツを、神谷を知ってからでも遅くはないのだから。口では「お金はどうするの?」とか言っていたヘルミーナとサーシャも内心では心配していたため、その言葉に安堵しているようだ。
「じゃ、俺は帰ります。早稲さん、あの妻達を頼みます」
「勿論でございます」
15cm単装砲 10基
8cm単装高角砲 8基
8.8mm連装機銃 12基
8.8mm単装機銃 9基
艦載機 30機
20.3cm連装砲 4基
15cm単装速射砲 10基
8cm単装速射砲 8基
8cm単装砲 12基
8cm単装高角砲 4基
8.8mm連装機銃 30基
8.8mm単装機銃 10基
8cm単装高角砲 8基
8.8mm連装機銃 10基
8cm単装高角砲 8基
8.8mm連装機銃 12基
8.8mm単装機銃 9基
艦載機 25機
15.2cm単装速射砲 14基
8cm単装速射砲 12基
8.8mm連装機銃 8基