最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第四十五話アトラン民族解放戦線

神谷とエルフ五等分の花嫁との喧嘩より5日後 神室町 カムロモール

「やっぱりみんなで買い物は楽しいね!」

 

「はい!」

 

「アイツが居ないから荷物持ち役が居ないけど、まあ楽しいわね」

 

この日、エルフ五等分の花嫁の姿は神室町にある国内最大級のショッピングモールである『カムロモール』に姿があった。

神谷とのバトルがあってから、流石に皆一様に良い気分ではなかった。そこで早稲が「気晴らしにショッピングに行かれてみては?」と提案し、試しにショッピングに来たらハマってしまったのだった。因みに戦果はと言うと…

 

ヘルミーナ

・新しい料理本

・女性向けファッション誌

 

アナスタシア

・MP5とUSPの10禁電動ガン

・宇宙戦艦ヤマトのプラモデル(2202の最終決戦仕様ヤマト)

 

レイチェル

・RDR2と3

・BF8

・攻略本

 

ミーシャ

・スイーツの詰め合わせ

 

エリス

・ブランド品のバッグと服

 

とまあ色々購入したのだが、どうやらカムロモールでは福引きキャンペーンをしているらしく、福引き券が大量にあった。

 

「どうせなら、一つ運試しだ」

 

アナスタシアのこの言葉で福引きをしたのだが、なんとエリスが最初に回した結果…

 

「大当たり〜〜!!」カランカラン

 

なんと一等のムーへの旅をゲットしちゃったのだ。もう姉妹全員、唖然としている。とまあ当たってしまった以上、行かないのは勿体ない。すぐに荷物を纏めて、ムーへと旅立ったのであった。

因みに最大参加人数が大人は5人までなので、神谷も入ると誰かの分は自腹を切る必要があった。

 

 

 

神谷の演説の翌日 オタハイト オターハ百貨店

「まるでタイムスリップしたみたいだなぁ」

 

この日、向上は久しぶりの休暇でオタハイトを歩いていた。向上の趣味はアイドルの追っかけなのだが、ショッピングも好きだったりする。こんな時でもないと、ゆっくり他国の店を回る機会も無いので、この休暇で回る事を決意した。因みに神谷はお留守番。

 

「ただいまタイムセール実施中でーす!!全品15%オフとなっておりまーーす!!ぜひご覧くださーい!!」

 

(そろそろライブ用の服も新調したかったし、ちょっと見ていくかな)

 

何の気なしに入ってみたUNIQL○みたいな服屋。名前こそ『ウォーニクロン』とか言うが、売っている品や値段設定はそっくりである。

 

(上は後からブランド品を合わせるとして、下はこういうのでいっか)

 

色々服を漁ってズボン2枚と靴下を購入。そのまま本屋へと向かい、面白い本がないか探してみる。

一方その頃、彼等も活動を始めていた。

 

 

「おーい、止まれ止まれ」

 

百貨店の地下搬入口に10台近いトラックが入ってきた。すぐに警備員が止めて、運転手の男に事情を聞く。

 

「なんだこの車列は?商品の搬入なんて、こっちは聞いてないぞ」

 

「我々は建設会社の者だ。この百貨店が建てられた5年前後の建物で、立て続けに問題が見つかっていてな。その確認と、念の為に補修用のパーツとか交換用のパーツを持ってこさせてもらった」

 

「じゃあなんで事前通告なしに?」

 

「本社の調べでここが一番、確認する箇所が多い事がわかってな。昨日いきなり言われて、連絡する暇が無かったんだ」

 

警備員は怪しいとら思っていたが、確かここ最近のニュースでも「建物の老朽化がどうたら」というのを言っていたので通すことにした。だがそれは、間違いだった。

察しの良い読者は勘付いたと思うが、彼らの正体は建設会社の社員なんかでは無い。彼らはムーのテロリスト集団である『帝政復古戦線』の構成員である。

 

「案外早く潜り込めたな。よし、お前達。手筈通りにな」

 

「OK、ボス」

 

ボスと呼ばれる男。この男こそ、第四十話『冷え切る関係と結び付く関係』において「破壊者(デストロイヤー)バーチクス』と呼ばれていた男である。彼がアトラン民族解放戦線の首領であり、懸賞金まで賭けられている本物のテロリストである。

バーチクスは部下のテロリストに命じて、行動を開始させる。今回の作戦は、とても簡単。予め爆弾を各所に設置しておき、地下の制御室と変電設備を制圧。電気を遮断し電子機器をダウンさせ、取れる限りの人質を確保。百貨店を持ってきた重火器で要塞化させ、無差別攻撃を行う手筈なのだ。暴れるだけ暴れたら人質を身代わりに投降させて、その間のゴタゴタに乗じて自分達は武器を提供した国家に亡命する手筈になっていた。

 

「おい、止まれ。入館証を見せろ」

 

建物の中へ続くドアの前で、警備員から入館証の提示を求められる。精巧に作った偽物の入館証を見せて、中へと入っていくテロリスト達。ここでも事情を話して、中に入れてもらった。

 

「あ、おい待て!」

 

全員が止まり、恐る恐る後ろを振り返る。警備員に最も近いテロリストが懐のナイフを握り、攻撃態勢にすぐ移れるように構えた。

 

「そっちじゃなくて、こっちだ。頼むぜ」

 

「.......ご丁寧にどうも」

 

警備員はテロリスト達の入っていく方向とは逆の方向を指差しながら、何処か呆れているような半笑いの顔で言った。テロリスト達は警備員の言葉に従い、その方向へと進んで入っていく。

 

「デイモン、サーベはここで出入り口を確保。ビル、ハマーン、ベラル、ガラン、モービー、チャッキーは設置作業。ダラーズ、ベインは偵察。チェインズ、ヤード、ソービアンはマリーナの確保。ヴェイン、カテゴ、バサッべは変電室の占拠。プラーク、ゼゴック、ハーベインは俺と制御室を押さえるぞ。行け」

 

テロリスト達は分かれて、各々の場所へと向かう。一方、向上はそんな事なんて知る由もなく本屋で立ち読みを楽しんでいた。

 

(ほぉー。ムーじゃ、今日本ブームなのか。なんか、旧世界の時みたいにトンデモJAPANが生まれそう.......)

 

読んでいた雑誌をレジへと持っていき、他数点も購入。本屋を出た瞬間、女性とぶつかってしまった。

 

「キャッ!」

 

「あ、す、すみません!おケガありませんか!?」

 

「だ、大丈夫です」

 

そう言って顔を上げた女性。だが向上は、彼女に見覚えがあった。

 

「星宮すみれ、ちゃん?」

 

「え?あ!」

 

女性はワタワタしながら、帽子を目深に被って下手な演技で嘘をつく。

 

「ほ、ほほほ星宮すみれちゃんって何方ですか?」

 

「いや、あなたでしょ?それに星宮すみれといえば、日本を代表するトップアイドルグループ、『J.P.スワン』のリーダーですよ。というか、お願いですので握手して下さい!大ファンです!!」

 

目の前の女性は何が何でも認めないつもりらしいが、デビュー以来の最古参クラスのファンである向上には無意味である。紫色の髪に、アニメのキャラのようなプロポーション、そして艶のある美声。見間違えようがない。そこで向上、鎌をかける。

 

「プリン」

 

「へ?」

 

「ここのデパート、限定品のプリンあるんですよ」

 

「え!?」

 

そう。このアイドル、超がつくスイーツ好き。特にプリンが大好物で、ラジオやテレビで度々「多分、日本のプリンは粗方食べ尽くした」と豪語し、他のメンバー達が「スイーツ、特にプリンへの情熱は執着と言って良いくらい」と語るほど。

こういう話に食い付かない筈が無い。

 

「しかも日本の旅雑誌は勿論、こっちでも超有名で売り切れ御免のレア物」

 

「えぇ!?」

 

「そしてそして、その実物がここに」

 

向上は下げていた紙袋からプリンを取り出す。

 

「これ、差し上げますよ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「えぇ。ですが!私と握手と、ついでにサインもください」

 

「お安い御用です!!」

 

すぐに握手とサインをくれて、代価にプリンを差し出した。そして嬉しいおまけで、なんとお茶する事になったのだ。と言っても休憩スペースで向上はコーヒーを、すみれはプリンを食べるというものだったが。

 

「ほいひぃ〜!」

 

(チョロい!ってか可愛い!S(すみれたん)M(マジ)T(天使)!!S(すみれたん)M(マジ)T(天使)!!S(すみれたん)M(マジ)T(天使)!!)

 

すみれ、顔面崩壊中。とにかく可愛い。向上にとっては推しの姿を、この超至近距離で見れるのは本当に嬉しい限りだった。表情にこそ出してないが、心の中と脳の思考回路の全ては現在すみれたん一色である。

 

「あの、もしかしてあなた、ロクロリンさんですか?」

 

「え?あ、はい。SNSではそう名乗っていますよ」

 

向上はJ.P.スワンがデビューした頃から、足繁くライブへ通っていた。そしてライブの感想を常に投稿していて、成功している点も失敗している点も忌憚なく書いている。

その意見は全て的を射ていて、ファンの中でも「辛甘口のロクロリン」と呼ばれているのだ。

 

「やっぱり!メンバーの中でもロクロリンさんの投稿は話題になっているんですよ。特に私達がデビューしたての頃は、ロクロリンさんの投稿が励みにもアドバイスにもなっていたんです!」

 

「そうでしたか」

(個人的には黒歴史なんだよなぁ。なんか複雑.......)

 

2人はその後も他愛もない、というかファンとアイドルの思い出話で一時間ぐらい盛り上がっていた。そして2人がそんな事をしている頃、地下では作戦がいよいよ始まった。

 

「時間だ、始めるぞ」

 

プラーク、ゼゴック、ハーベイン、バーチクスの4人はFN ブローニングM1910に似た自動拳銃にサイレンサーを装着したピストルを構える。

 

「GO」

 

バーチクスが短くそう命じると、彼らは静かに、だが素早く入る。そして背後から一切の躊躇なく、鉛玉を頭にぶち込む。

 

「なんだきさ――」

パシュッ!

 

「おい警ほ――」

パシュッ!パシュッ!

 

「10秒」

 

一方、変電室の方も制圧が開始された。だがこの変電室、分厚い扉がある上に頑丈な鍵で中から閉じられているのだ。

 

「緊急安全点検だ、開けろ!」

 

だったら中にいる警備員に開けてもらえばいい。ちょっと大胆な手段だが、中にいる警備員は所詮は民間人。なんの疑いもなく、すんなり開けてくれた。これが軍事基地なら、こうも上手くいかないだろう。

 

「なんだどうし――」

パシュッ!

 

こちらもサイレンサー付きFN ブローニングM1910モドキで射殺し、変電室も制圧。またマリーナや警備員の詰所も制圧し、オターハ百貨店のコントロールを完全に掌握した。

作戦は次のステップである、人質の確保へと移行していく。さらに客に変装して紛れ込んでいた他のテロリスト達とも合流し、その姿を公衆の面前へと晒した。

 

「動くんじゃねぇ!!!!」

 

「騒ぐな!!大人しくしろや!!!!!」

 

テロリスト達は銃を屋根やら壁やら至る所に撃ちまくった結果、客も従業員も皆一様に外へ逃げようとし出した。だがそれを許してくれる程、彼らは甘くない。出入り口のシャッターを下ろして、退路を完全に遮断してしまったのだ。

 

「さあ、我々の指示に従え」

 

「なんなんだ!お前達はなんなんだよ!!」

 

そう言って、青年は手近の箱をテロリストの1人に投げ付けた。箱は当たる事なく逸れたが、代わりに青年には鉛玉がプレゼントされてしまった。

 

「お前達。抵抗すれば、コイツと同じ運命を辿らせる。指示に従え」

 

人質は1箇所に集められて、集中管理される事になった。勿論その中には向上もいる訳で、向上は早速こっそりスマホを起動させて神谷に連絡を取る事にした。

 

 

 

テロリストの襲撃より30分後 オタハイト空軍基地

「向上?もしもーし」

 

『.......』

 

「え?おーい」

 

向上の携帯から電話があったのだが、一向に言葉が聞こえない。というか周囲の音も聞こえない。

 

『コツコツコツ、コツッコツッコツッ、コツコツコツ』

 

暫くすると、マイクを床か何かに軽くぶつけているのか「コツコツ」という音が聞こえる。だが偶然にしては音が周期的で、何より何回も聞こえる辺り何か意味があるらしい。

 

「なんだ、一体........」

 

『コツコツコツ、コツッコツッコツッ、コツコツコツ.......。コツコツコツ、コツッコツッコツッ、コツコツコツ.......』

 

「短音3回、長音3回、短音3回。!!SOSか!?!?」

 

向上がさっきから鳴らしていた音は、モールス信号だったのだ。これ以降、向上はモールスで状況を伝えてきた。

 

『オターハ、テロリスト襲撃。数30以上。全員SMGで武装。HMGあり』

 

「OK、わかった。すぐに助け出してやるからな!」

 

神谷はすぐにマイラスに連絡を取り、事実確認を行う。恐らく初動で動いた警官は死ぬか重傷を負い、ある程度のタイミングでムー軍に応援要請が来ると踏んだ。

 

『神谷さん、どうかされました?』

 

「マイラスさん。オターハ百貨店で、どうやらテロ事案みたいです。ウチの向上から連絡が来ました」

 

『は!?』

 

マイラスにとっても青天の霹靂だったのだろう。素っ頓狂な声を上げていた。

 

 

「あーらら、シャッターが降りてるぞ」

 

「なんなんだ一体。これじゃ、呼ぶべきは俺たち警察じゃなくて消防だな」

 

テロリストの襲撃から辛くも逃げ延びた1人が警察に通報したのだが、ムーにはまだテロ事案の概念が存在しない。その為、初動で動いた警察官達はイマイチ、事の重要性を理解していなかったのだ。

 

パァン!

 

「なんだ!?」

 

「ガッ.......」

 

「おいマイケル!」

 

相方が撃たれたことに気付き、すぐにもう1人の警官、ウェバーはパトカーの陰に滑り込み無線で本部に連絡を取る。

 

「こ、こちらウェバー巡査!犯人はただの不審者じゃない!!ライフルで武装した、ギャングか何か.......だ.......」

 

『おいどうした!?ウェバー巡査!!』

 

「は、ははは。そんなの、そんなのアリかよ。奴ら、不審者でも、ギャングでもない。奴らは、そう」

 

ウェバー巡査は見てしまった。無数の機関銃の銃口が、こちらを向いている事を。窓の全てが塞がれるか、土嚢などの遮蔽物で即席の銃眼としている事を。

そして悟った。奴らはギャングみたいな、そんな生易しい者じゃない。奴らは…

 

軍隊(・・)だ.......」

 

次の瞬間、無数の銃弾がパトカーごとウェバー巡査の身体を貫いた。一度に10発近い弾丸を浴び、更にはパトカーのガソリンタンクにも着弾して大爆発。

いつもは大人から子供まで多くの人間が行き交うオターハ百貨店の前は、一瞬で戦場と化してしまったのであった。

だが問題だったのは、寧ろここからであった。ムー警察もここまでの事態でしかも軍隊並みの装備を持ったテロリストの概念が無い以上、対応が全て後手に回ってしまっていた。一般人の避難誘導すら出来ておらず、最初近くにいた市民は逃げ出しているが、後から来た何も知らない市民が周囲を彷徨い歩いている始末。しかも近くの警官を総動員した結果、撃たれて制御不能になったパトカーが近くの建物に突っ込むわ、大炎上しながらオターハ百貨店の壁に激突して爆発するわ、警官が20人近く一気に殉職するわで、大惨事となっていた。

流石にこの辺になってくれば市民も完全に逃げ出したが、報道規制を完全に忘れてしまい、今度はメディアが近くをウロウロしている状況という、日本じゃ考えられない事になっていた。更に驚くべき事に、一連の出来事がたった2時間のうちに起こっている。

 

「本部長、如何しますか?」

 

「やむを得ん。首都防衛師団に出動要請だ!」

 

「了解であります!」

 

流石に警察の手に負えないことを理解した対策本部長も、首都防衛師団に応援を依頼する事にした。

だがそんな事はテロリスト達もお見通し、というかテロリスト達は元より軍隊と戦うのが主目的であるので予想通りであった。

 

 

 

12:00

「ニュース12のお時間です。本日は予定を変更致しまして、現在オターハ百貨店周辺で発生している襲撃事件についてお送り致します。現場のフェアチルドアナウンサー!」

 

「はい、こちら現場のフェアチルドです。つい30分前くらいまでは銃声や爆発音が響いていましたが、今は落ち着いています。しかし先程から、首都防衛師団と思われる軍人達が集まってきています」

 

TV局がレポーターを派遣して生放送まで始めちゃう始末で、現場の人間からしてみれば邪魔でしかない。正直、退かす時間もないので首都防衛師団の軍人達は粛々と準備を進めていく。だがそれを、テロリスト達はそう簡単に見逃してはくれなかった。

 

「ようやく、このデカブツが撃てる」

 

そう言ってモービーは、黒い布に包まれた巨大な機関砲を構える。この機関砲、ただの機関砲ではない。本来は航空機搭載用の物であり、それを陸上用に改良した代物なのだ。おまけに口径が37mm。人間どころか、装甲車すら破壊しかねない超強力な機関砲の銃口が今まさに、首都防衛師団に向けられた。

 

ズドンズドンズドンズドンズドン

 

37mm弾は首都防衛師団の輸送トラックに直撃し、タンクのガソリンや荷台の弾薬に引火。付近では兵士達が機関銃の準備なんかで密集しており、一個小隊近くが吹き飛んでしまった。

 

「退避!退避ー!」

 

「死人に構うな!負傷者を下げろ!!」

 

「足!俺の足がぁぁぁぁ!!!!!」

 

吹き飛んで死んだのなら、ある意味まだ良かったかもしれない。足や腕を吹き飛ばされた者達は、激痛が身体中を貫き悲鳴を上げ続ける。

テロリスト達はダメ押しの攻撃で、更に死者や負傷者が増え続ける。

 

「オターハ百貨店付近で現在展開中の首都防衛師団の兵士達が攻撃を受けています!トラックが3台ほど爆発し、兵士達も巻き込まれて悲鳴が響いています!国民の皆さん!今は絶対に、オターハ百貨店周辺には近づかないで、キャァァァァァァァァ!!!!!!」

 

「フェアチルドアナウンサー!?どうしましたか!?!?」

 

「音声さん!音声さん!!」

 

その流れ弾はメディア陣にも牙を剥き、音声担当の男性スタッフが腹部に被弾。それに気付いた兵士がスタッフをそのまま引きずって、仮設救護所まで運んでいった。

 

「た、たった今、音声さんが撃たれました.......。私達もこれ以上は危険なので、後方に下がります」

 

「わかりました。また動きがあり次第、報告をお願いします」

 

 

「.......報道規制とかしろよムー」

 

だが幸い、このニュースのおかげで最前線が思ってたより地獄なのが分かった。ならば今、神谷が下す決断はただ一つ。

 

「野郎共!!状況は思ってたより最悪だ。まだ要請どころか軍事作戦の許可なんて出ちゃいないが、俺達は仲間は決して見捨てない。そして傷付き、戦闘の空気に恐怖し、困っている者がいるのなら、俺達が必ず救い出す。それこそが『国境なき軍団』の所以であり、我らが神谷戦闘団の使命だ。行くぞ野郎共。いつものように俺の背中についてこい!!!!!」

 

神谷戦闘団の兵士達は装甲車やトラックに乗り込むと、外に繋がるゲートへと走り出した。因みにゲートにあった踏切の遮断器みたいなバーは、無理矢理ぶっ壊して突破した。(後で神谷が自腹を切る羽目になりました!)

 

 

「あの、ロクロリンさん.......。私達、殺されませんよね.......?」

 

「反抗しなければ、恐らくは。彼らにとって、どうやら我々はまだ人質としての価値がある様子。恐らく後、数時間は大丈夫でしょう」

 

「そっか。その頃にはムーのお巡りさんが助けてくれますよね」

 

「いえ。旧世界のこの時代にはまだ、テロ等の概念がまだ浸透していません。ですのでこういった、人質解放を目的とした特殊部隊は創設されていない筈。しかもテロリスト達は、明らかに重機関銃などの重火器を保有している。これでは、警察では太刀打ちできないでしょう」

 

現在向上含む人質達は、数フロアに分けられて監禁されている。腕も足も目も口も、全て自由に動くので抵抗しようと思えば普通にできる。

だがテロリスト達は必ず試製一型モドキや一〇〇式モドキで武装しており、無鉄砲に抵抗しては死ぬのは明白だろう。

 

「ですが、既に外の仲間と連絡は取ってあります。さっき、1時間程度で到着すると来てますので、すぐに出られますよ」

 

「仲間、ですか?」

 

「えぇ。仲間達がくれば、彼らもすぐに制圧されるでしょう」

 

向上とすみれが話していた頃、白亜衆達はオタハイトを爆走していた。信号なんて守っていられないので、偵察用のバイクとか陸自の高機動車的なのを先行させて、無理矢理道を封鎖させた。え?ムーにも道路交通法的な法律があるだろって?命を救うためには、時に法律を破る事も必要なのだよ。

また先頭を走る神谷の乗る高機動車モドキの後ろには、安定の旭日旗、神谷家家紋の旗、菊花紋の旗、そして本来は式典にしか使用しない部隊旗を掲げさせている。しかも車列上空には乗り切れなかった兵士達がグラップリングフックで飛び回っており、ムーの国民達はその姿に釘付けであった。

 

「お、おい!なんだありゃ!?!?」

 

「人が空飛んでるぞ!!」

 

「なんだあの車!?」

 

大量の軍用車両が列をなして、車道を爆走する姿は圧巻の一言である。しかもその車両達は全て白一色に塗装され、車体には二振りの刀をクロスさせ、その中心に一挺の拳銃。そしてその上にはこの世界とは違う、五つの大陸が描かれており、その前には有翼の一角獣(アリコーン)の紋章が刻まれていた。

軍隊の中でこんな派手な塗装やマークを刻んでいるということは、今目の前を通っている兵士達は精鋭だという事になる。それに気付いた者はいなかったが、だがそれでも、何故か安心感が湧いたのだと言う。

 

 

「ここからはムー軍事大学の名誉教授、アーノルド・シュルワ氏に事件の見解を述べて頂きます。シュルワ教授、よろしくお願いします」

 

「えぇ、よろしくお願いします」

 

所変わって、今度はニュース12。本来なら今日は熱愛が発覚した芸能人と女優のスクープとか、ファッションチェックとか、そういう平和な内容のはずだった。だがオターハ百貨店での惨状を伝えるべく、予定を全変更して、教授も呼び出しての報道となった。

 

「早速ですが教授、今回の武装勢力の武装についてはどうお考えですか?」

 

「まずライフルや拳銃は持っているでしょう。ですが、それ以上に厄介なのはこれです」

 

シュルワは2時間ほど前に撮影したオターハ百貨店の写真のパネルを取り出し、数ヵ所の窓を指差した。

 

「今指を差した場所には、設置型の機関銃が配置されています。これが厄介です。まず歩兵は弾幕を張られては近付けませんし、たとえ装甲車を投入したとしても、装甲車は上からの攻撃に弱く弾丸の角度によっては貫通する場合もあります」

 

「では、どのように制圧するのですか?」

 

「人質がいなければ、正直爆撃するのが一番手っ取り早い手ではあります。ですが流石に過激すぎますので、例えば地下のマリーナから侵入するとか、装甲車を高速で移動させて無理矢理死角に入るとかですかね?」

 

「あ、フェアチルドアナウンサーからの続報です。画面切り替わります!」

 

スタジオからオターハ百貨店前のフェアチルドに変わり、地獄の惨状が映されるかと思っていた視聴者とスタジオのスタッフ達。しかし映し出されたのは、見た事もない軍用車両群と航空機であった。

 

「こちら現場のフェアチルドです!先程からムー陸軍とは違う、所属不明の軍用車両が多数、続々と到着してきています!!」

 

だがしかし、到着したのは白亜衆ではなかった。やって来ていたのは第四海兵師団である。勿論第四海兵師団に出動の命令も出ていないし、神谷も要請していない。では何故来たのか。

 

(あの人なら。神谷長官ならきっと、白亜衆を動かしている筈。あの人にだけ、楽しみを独り占めされてたまるものか!)

 

という、何とも褒められたものではないものであった。まあ対外的、というか神谷へは「長官1人にだけ行かせられません」的なスタンスを取るが。

 

「あ、また来た!ご覧ください!!今度は純白の軍用車両と、あれは.......部隊長でしょうか?先頭に4つの旗を従えた男性がいます!」

 

神谷の乗る高機動車モドキがフェアチルドのすぐ近くに止まり、その後ろから続々と純白の機動甲冑に身を包んだ最精鋭の猛者達が走ってくる。

 

「あ、あの!」

 

「誰だ、アンタは?」

 

「ニュース12のアナウンサー、フェアチルドと申します。一体、貴方がたはどこの軍隊なのですか?」

 

「.......俺達は大日本皇国統合軍、神谷戦闘団白亜衆だ。アンタらのとこのニュースで惨状を知り、不躾ながら応援に参上した次第だ。あ、そっちの部隊は海軍陸戦隊所属の第四海兵師団だ。

それから報道もいいが、もう少し奥でやりな。俺達は今から、ちょっと本気で暴れるからよ」

 

そう言うと神谷はスマホを取り出し、向上へと電話を掛ける。

 

「俺だ。今現着した。そっちも、行動を起こすなら好きにやれ。20分後、突撃する」

 

返事はない。そんなのはわかっていたので、一方的に電話を切る。

 

 

「わかりましたよ、長官。

さて、すみれさん。貴女はここでじっとしていてください」

 

「し、ロクロリンさん?」

 

「私は彼らに、私達を敵に回すとはどういうことか。敵に回した者はどの様な末路を辿るのか。それをその身に刻んできます」

 

そう言って向上は静かに歩き出す。しかしすぐに立ち止まり、少しだけ顔を後ろに向けた。

 

「そうだ。私の本当の名前、まだ名乗っていませんでしたね。私の名前は向上六郎。皇国の守護者達を率いる、最強の御方。神谷浩三大将の秘書で、私自身も陛下より『鉄砲頭』の役を賜る者です」

 

「ロクロリンさんが、あの鉄砲頭の向上六郎少佐.......」

 

三英傑で皇国剣聖の称号を持つ神谷も有名だが、この向上もまた鉄砲頭や元々イケメン広告塔として使われていた事もあって、とても有名でファンも意外といたりするのだ。そしてすみれも、そのファンの1人なのである。

 

「お、おい!貴様、何勝手に動い――」

 

「臭い口を閉じなさい」

 

向上は近くにあった家具ショップの店頭に並んでいた包丁を手に取り、一挙動のウチに一切の躊躇い無く、テロリストの喉に包丁を突き立てた。

 

「試製一型とはまた、中々に珍しい。サイドアームは.........ワルサーP38か」

 

「き、貴様!!」

 

「なんだ、銃を向けて。君達、それを抜いたのなら命懸けなよ?」

 

テロリスト達はトリガーに指をかけるが、それよりも先に向上が動いた。遥かに速い動きでトリガーを引き、高い発射レートを誇る試製一型の弾幕をテロリストに浴びせる。

そして向上が行動を開始した頃、外にいる白亜衆と第四海兵師団も行動を開始しようとしていた。

 

「目標、正面。約1,500。敵、重機関砲手」

 

「OK、センターに捉えた」

 

「風向きは南南東より風力5。aim」

 

「OK」

 

「fire」

 

ズドォン!!

 

白亜衆のスナイパーコンビ、通称E&Fコンビは正確に12.7mm弾を撃ち込んだ。37mmの機関砲を操っていたテロリストのチャッキーは、首から上が吹き飛ばされ絶命。一番の脅威が排除された。

 

「こちらスナイパー。高脅威目標は排除した」

 

『了解』

 

E&Fの報告を受けた突入班は、いよいよ突入の準備に入る。

因みにE&Fが何の略称かと言うと、EyeとFingerである。つまり、目と指。勿論観測手が目で、スナイパーが指である。

 

「エンジン始動!」

 

ブォン!ブォォォォン!!ブォォォォン!!

 

「ヒャッハーーーーー!!!!」

 

「シャッターを体当たりでぶち抜けとか、やっぱ神谷閣下は狂ってるぜ!!!!」

 

安定の突撃隊長、ヒャッハー装甲車ドライバーコンビがシャッターに向かって突撃する。勿論、上階のテロリスト達が機関銃を撃つが全く効いていない。

それどころか逆に44式装甲車ロ型の20mm機銃の弾幕に晒されて、すぐに肉片へと加工されていく。

 

ドンガラガッシャーーーーーン!!!!!

 

44式がシャッターに突っ込み、そのままぶち破った。所詮、ただのシャッター。100km近い速度で鉄の塊が衝突する事なんて、全く想定されていないのだ。

 

「ここで左にターン!!」

 

「インド人を右に!!」

 

ギャリギャリギャリギャリ!!

 

ぶち破った後はドリフトしながら、壁ギリギリで止まる。しかも後続の装甲車とトラックも同様に車体をドリフトで横にしながら綺麗に止めていく。神業の一言である。

 

「なんだコイツら!?!?」

 

「車が突っ込んできたぞ!!」

 

テロリスト達も流石に車の突入は想定外だったらしく、見るからに慌てている。その隙を見逃さず、白亜衆と第四海兵師団は攻勢に移る。

 

「野郎共、行け!!」

 

神谷の号令で、兵士達が飛び出して走っていく。

 

「5.7mmバルカン砲を食いやがれ!!」

 

「グレネードもな!!」

 

「60mm砲弾もオマケだ!!」

 

白亜衆に出会えた方が、ある意味まだ良かったかもしれない。大体一撃で死ねるから。

だが第四海兵師団に出会ったものは、ステゴロ系ならよかったよ。コイツみたいな。

 

「ほないくで?オラァ!ォウ!オラ!ウォラ!死に晒せやオラ!!オゥラ!ウゥラ!ヨイショォ!オラオラオラオラオラオラオラオラ!!オルルルルァ!!ボコボコボコボコボッカーンってか!コイツで、終いじゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「ウラァ!フンッ!ウゥゥラァ!せいぃやぁ!!!!」

 

渡瀬とか桐生ならまだ、どうにか生き残れる可能性がある。だが例えば、この辺の奴らに会った奴らは最悪だ。

 

「グリン!グリーン!青空は二度と見れないー♪!!」

 

「うっしゃぁ!イカ飯になっとけ!!」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄、乃田ぁ!!」

 

「噛むタイプのデビルマンです!悪夢をどうぞ!!」

 

「兄ちゃん、人間としての背骨がねぇようだ。腹掻っ捌いてやるから、背骨作れぇ!!」

 

元々傭兵をしてたグリングリンして体内をスムージーにする古林とか、剣術免許皆伝の人でイカ飯作ろうとする輪田とか、アイスピックで人を刺して遊び出す乃田とか、ドスで腹を掻っ捌い背骨を作る機会をくれる宮藤とか、この辺の奴らは大体ロクな死に方をしていなかった。

そして、コイツも暴れていた。

 

「な、なんだコイツは!!」

 

「銃弾を斬ってるぞ!化け物だ!!!!」

 

「こっちは演習であまり戦えなかったんだ。少しくらい、俺の相手を務めてみろ!!!!」

 

今回の演習で全くと言っていいほど、活躍がなかった神谷。ここぞとばかりに大暴れしており、テロリスト達は全くその動きについて行っていない。

 

「これは、長官が来てるな。さーて、まだまだ暴れるとしようか!!」

 

向上はそう言いつつも、少し遊ぶために敢えて自分が追い込まれるように立ち回る。ワザと吹き抜けになっている通りまで自分から追い込まれていき、周囲をテロリスト達がグルリと取り囲むように仕向ける。

 

「ゲームオーバー、だな」

 

「冥土の土産だ。名前くらい聞いてやる」

 

「そうだなぁ。名前は.......今だッ!!!!」

 

次の瞬間、下から白亜衆達が飛び出して銃撃を加えながら着地する。

 

「向上少佐、ご無事で?」

 

「健在だ。状況は?」

 

「下から上へ、殲滅を開始しています。少佐も攻勢には」

 

「勿論、参加させてもらう」

 

「ではこちらを」

 

白亜衆の兵士は腰に装備していた、グリップに「鎧袖一触」の文字と「天下無双」の文字が刻まれた二挺の26式拳銃を渡す。向上専用の拳銃である二挺を握った瞬間、向上の目つきが一気に変わった。

 

「よくも仲間を!!」

ズドン!

 

「このや――」

ズドン!

 

「ちくし――」

ズドン!

 

殆どノールックで、弾を正確に心臓や頭に命中させている。無駄のない、洗練された動き。それはまるで、芸術とすら言えるだろう。百戦錬磨の一騎当千の猛者達である白亜衆の兵士達も、流石に「スゲー」と任務中にもかかわらず声を上げた。

 

『こちら5階制圧班。ちょっと問題が起きた』

 

「了解、すぐに向かう。少佐!5階でアクシデント!」

 

「了解」

 

向上らが5階へと上がると、丁度窓際で3人のテロリストが人質を取って「来るな!殺すぞ!」というテンプレ通りのセリフを吐きながら立っていた。

 

「この女がどうなってもいいのか!」

 

「おら!もっと下がれ下がれ!」

 

人質の女性というか、金髪のエルフが踏ん張って抵抗するが無理矢理引き摺られていく。これ以上刺激すると、本当に殺しかねないのでそれに合わせて白亜衆達も下がるしかない。

 

「そうだ、それでいい」

 

テロリスト達も少し安心したのか、少しだけ緊張の空気が弱まった。

 

「後ろがガラ空きだ」

 

ザクッ!!

 

だが次の瞬間、密かに近付いていた神谷が背後から胸に刀を刺した。貫通した剣先が血に濡れて、ポタポタと地面に血を垂らしている。勢いよく引き抜き、右にいるテロリストの首を掻っ切る。そしてそのまま左足を軸に180°回転して、左のテロリストの腹を掻っ捌き内臓を掻き出していく。

 

「クリア」

 

涼しい顔で一言、そう言ったが恐怖でしかなかった。返り血で赤く染まった純白の装甲服と刀とか、ヤバい臭いしかしない。

 

「た、助けてくれて、ありが、え!?」

 

「ん?は!?」

 

人質に取られていた筈のエルフの女性は他でもない、神谷をぶん殴ったエリスその人であった。流石にこれには、お互いビックリである。

 

「待て待て待て待て!!なんでお前がここにいるんだよ!?」

 

「そ、そんなのアンタに関係ないでしょ!?というか、そう言うアンタこそなんでここにいるのよ!!」

 

「こっちは仕事だ!!」

 

厳密に言えばぶっちゃっけ仕事ではないのだが、まあこの際、そこは敢えてツッコミは入れないでおこう。

だがここで気になるのは、他の姉妹の所在である。

 

「って、んな事はどうでもいいわ。で、他の姉妹は?」

 

「みんないるわよ!」

 

「そうじゃなくて何処かって話!所在は何処だ!?無事なのか!?」

 

「ヒッ.......」

 

色々ありすぎてイライラしてるのと、一応ここ最近の心労の原因の一つでもあるエリスが目の前にいるのだ。やはり口調が強くなってしまう。エリスも目の前で躊躇なしで人が殺されてしまい、流石に恐怖心があるのだろう。詰め寄られると、少し悲鳴が出てしまった。

そんな事をしている頃、ヘルミーナが走ってきた。

 

「エリス!無事だったのね!?って、神谷様!?!?」

 

「ミーナは無事か」

 

「神谷様、大変なんです!レイチェルが、レイチェルが奴らの人質に!」

 

「え?人質は全員解放済みなは」

「団長!ヤバいです!!地下のマリーナから、例のテロリストを乗せたボートが出たと!しかも奴ら、人質に銀髪のダークエルフの女を連れてやがる!!」

 

このタイミングで「銀髪のダークエルフの女性」となれば、もうそれはレイチェルしかいない。

 

「長官。ウチの部隊が既に手を回してあります。丁度、奴らの進路上に武装ボートを進出していますので、挟撃させましょう」

 

「頼むぜ、会長さん!」

 

堂島の提案により、挟撃作戦が始まる。神谷は陣頭指揮の為に別の武装ボートに乗り込み、追跡を開始する。因みにエルフ五等分の花嫁も無理矢理乗ってきた。

 

「長官!そろそろでーす!!」

 

「進出部隊の状況は!?」

 

「間もなくポイントに到達します!」

 

神谷は拡声器の電源を入れると、警告の為に色々言っておく。これで止まったら良いのだが、それで止まればそもそもここまで大変じゃないだろう。

 

『テロリスト共!そこまでだ!直ちに武器を置いて下がりやがれ!!』

 

案の定、ガン無視である。

だがテロリスト達は、それを後悔する事になった。目の前から後ろから追ってくるボートと同じボートが4隻、接近してきていた。それだけじゃない。上空にはスナイパーを乗せた何故かプロペラを天井につけた謎の飛行機(UH73天神)が3機、そして目の前の橋には兵士を満載した20台の40式小型戦闘車がやって来て、上の重機関銃の照準を合わせていた。

 

「お前達!!抵抗し、我らが意向を示すぞ!!!!」

 

そう言って息巻くテロリスト達。自分達には人質がいるのだから、簡単には撃てないと思っていたのだろう。確かにその通りである。実際、人質に流れ弾が当たっては本末転倒なので撃てない。

なら人質を奪還してしまえばいい(・・・・・・・・・・)

 

転移(テレポーテーション)

 

神谷は魔法でテロリストの乗るボートに乗り込み、レイチェルの手錠の鎖を握っている男の手首ごと切断して、もう一度武装ボートに転移する。その間、僅か3秒。

 

「レイチェル、大丈夫か?」

 

「う、うん」

 

「よし。さーて、じゃあ俺達にとっての枷も外れたし、仕上げと行くか!」

 

神谷は武装ボートの船首に立つと、右手をデリンジャー型の鉄砲の形にしてコメカミに押し当てる。そして…

 

「BANG!」

 

撃った。次の瞬間、正面から来てテロリストのボートを包囲していた武装ボート、上空のヘリコプター、目の前の橋上の兵士達が一斉に撃ち始めた。

反撃する間なんて存在せず、肉片へと加工されていくテロリスト達。それに合わせてボートも穴だらけになっていき、最後は爆発して川の中へと沈んでいった。

因みにオターハ百貨店の方も、地下駐車場からトラックと盗んだ車で強行脱出を図った奴らがいたらしい。が、こっちの方が酷かった。

 

ブォォォォォォォォォォォ!!!!

 

装甲歩兵の5.7mmバルカン砲で蜂の巣にされたり、終いには…

 

ズゴォォン

 

第四海兵師団の34式戦車の主砲、200mm速射砲の餌食となった。

こうしてムー首都、オタハイトのオターハ百貨店で起きた惨劇は民間人に32名、警察に82名の殉職者と73名の負傷者、首都防衛師団に103名の死者と28名の負傷者という、決して小さくない犠牲を払って終結を迎えた。

 

 

 

数時間後 オターハ百貨店前

『あ、もしもし浩三?悪いんだけどさ、帰りにちょっとリーム王国とマオ王国を潰してきてくんない?』

 

「なにその「帰りに卵買ってきて〜」みたいなノリは。少なくとも国二つを攻め込むときの頼み方じゃないだろうが」

 

事件が終結し警察やムー政府高官への説明と、メディアからのインタビューとかをこなしていると一色からぶっ飛んだ内容の指示が来たのである。

 

『いやだってさ、正直滅ぼしても良さげな弱小国なんだもん』

 

「アホ。どんな国でも、そういう事は言うもんじゃない。パーパルディアばりのクソじゃないと」

『それ以上だぞ?』

 

「え、マジ?」

 

詳しくは今後書くので今は伏せておくが、まあ中々にヤバい事をしていたので急遽、帰り品にサクッと滅する事にした。そしてこの戦争が、また別の厄介事を含むとは知る由もなかった。

 

 

「あの、ロクロリン、いえ。向上さん!」

 

「なんでしょう?」

 

「助けてくれて、ありがとうございました!!」

 

そう言ってすみれは頭を下げた。推しに頭下げてもらえるという状況に頭が追い付いてないが、どうにか頭を上げてもらう。

だが更に驚く事が起きてしまった。

 

「それで、あの。わ、私とお付き合いしてください!」

 

「.......ゑ?」

 

「私、ずっとファンだったんですけど、好きになっちゃいました。ダメ、ですか?」

 

ここで「ダメですか」を可愛い声でしかも上目遣いでするという、必殺技を出された結果、向上は断ることができなかった。

 

「は、はい。こちらこそ.......」

 

こうして、ようやく向上にも春が来たのである。

 

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