最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第四十六話リーム王国へ

合同大軍事演習より2週間後 リーム王国周辺の上空 空中空母『白鯨V*1

「これより最終作戦会議を始める。まずは状況の再整理からだ。

二週間前、マオ王国とリーム王国の連名で大日本皇国に宣戦を布告してきた。リーム王国は「日本が我が国の私掠船を不当に沈めており、その報復として宣戦を布告する」としており、マオ王国はリーム王国との同盟により参戦している。だが勿論、対応に当たった第三防衛艦隊の報告では全くの事実無根だ。スパイからの情報では、開戦理由はリームがパ皇との戦後処理でエストシラントが取れなかった不満でマオは日本を脅威と感じてたかららしい。

まあいずれにしろ、俺達への逆恨みみたいなもんだ。攻め滅ぼしても、こっちには大義がある。そんで持ってまあ、戦略だが簡単だ。熱田は単艦でリーム海軍を殲滅し、残りの艦艇はマオ海軍を殲滅。第四海兵師団がマオ王国に強襲上陸して、IJMと鎌倉ヴァイキングはリームの沿岸部を占領しろ。神谷戦闘団と白鯨IIはリームの首都を占領する。流れとしては以上だ」

 

この会議はリモートで山本や堂島といった、各部隊の長達が参加していた。だが2人だけ、スペシャルゲストが参加していた。ムー海軍のトップであるジャブソニー・グラターナと、ムー陸軍のトップであるホーストン・ウェスバイトである。

 

「神谷殿。部外者がしゃしゃり出るの生意気だとは思うが、流石に作戦無しは危険なのでは?」

 

「作戦は後程、データリンクで送信するのでご心配なさらず」

 

グラターナもウェスバイトも「データリンク」という言葉を知らないので、頭が全く追い付いていない。

と言うかそれ以前に何故ムーのトップ、皇国で言う神谷がここにいるのかと言うとテロ事件の翌日まで時間は遡る。

 

 

 

テロ事件の翌日 ムー参謀本部

「流石に不味かったかなぁ」

 

「いや、そりゃ不味いでしょ。だって他国の同盟国でもない国の首都で、許可なく戦車やら装甲車やら攻撃ボートやらで大暴れしてるんですから」

 

「デスヨネー」

 

この日、神谷は実質的な出頭命令が出されて、ムー参謀本部にやって来ていた。今回は全面的にこっちが悪いので、どのようにして乗り切るかを考えていた。

因みに昔は何度も命令違反&規則違反をしており、その度に穴や抜け道を突いてずっと不問にしてきている。勿論その全てが上官の仕事が増える以外で人を不幸にはしていない。だが今回は皇国ではなく、他国のムーが相手。流石にヤバい。

時間は無情にも進むので腹を括って会議室に入ろうとしたら、会議室の前でマイラスが立っていた。

 

「神谷さん、落ち着いて聞いてください。どうやらウチのツートップの将軍が両方とも揃ってるみたいです」

 

「おいおいマジかよぉ.......」

 

「一応諜報部にいる同期に頼んで、簡単に工作はしてもらっています。後は自力でお願いします」

 

どうやら裏で奔走してくれていたらしい。やはり持つべき物は友達なのは、どの世界のどの時代でも共通らしい。

 

「落ち着け落ち着け。.......失礼する」

 

重厚感のある豪華な扉を開けると、明らかに偉い人と1発でわかる凄みを持った老人2人と、その後ろに控える10人近い士官達。流石の神谷でも、冷や汗ものである。

だがここで舐められては、これから行う丸め込みに不利となる。相手に弱みをみせず、あくまでも毅然とした態度を心掛けて「私は何も怪しいことしてません」感を演出する必要があるのだ。

 

「神谷浩三さん、でよろしかったかな?私はムー海軍長官のジャブソニー・グラターナ。こっちが」

 

「ムー陸軍長官、ホーストン・ウェスバイトだ。早速だが本題に入らせてもらう。今回の始末、どうつけるのかね?」

 

「どう、とおっしゃいますと?」

 

「貴国では他国の首都で、軍隊を許可なく動かすのが普通なのか!?そんな事があって溜まるか!!そしてその結果、オターハ百貨店は大破。しかも貴様らがしゃしゃり出た結果、我が軍の威信は地に落ちた。この始末をどうするのかと聞いている!!!!」

 

取り敢えず、現段階で彼らが何処に怒りを覚えているのかが分かった。軍を許可なく動かした件については分かりきっているので一先ず置いといて、それ以外だと「皇国軍の横槍で美味しい所を総取りされ、軍の威信とかメンツがズタボロになった」というところらしい。これなら反撃は可能だ。

 

「結論から申しましょう。自分から始末は付けませんよ。何せ我々はムーの国民と、あなた方ムー軍の威信を守ったのですからね」

 

「ほう。貴様、私の言ったことを理解していないのだな?ふざけるな!!!!!!

 

そう言ってウェスバイトは拳で机を叩く。骨でも折れたんじゃないかと思う程の大きな音が、会議室中に響き渡り後ろに控える士官達も一瞬だけ肩をビクリとさせた。

 

「まあまあホーストン、落ち着け。神谷さん。私としても軍の威信を守ったという発言には些か怒りを覚える。その発言、責任を持っているのだろうな?」

 

「えぇ。我々が介入した理由は私の部下、つまり皇国の国民が囚われていたという理由もありますが、もう一つ大きな理由があります。

それはムーのどの部隊を用いたとしても、人質全員を無事に救出するのが不可能であり、また投入される部隊の人員の損耗も著しく高いと判断したからです」

 

「我が軍を愚弄するのか?貴様、外交問題にしてくれようか!?!?」

 

ウェスバイトが噛み付く。神谷の言ってることの対象となっているのは、ウェスバイトが管轄する陸軍の事となる。つまり自分の部下を馬鹿にされているのだ。ある意味、良い上司かもしれない。感情的だけど。

 

「何も「弱い」と言ってるのではありません。というかそもそも、対応しろというのが無理な話です。今回起きた事件は、我が国や我が国が元いた世界では「テロ」と呼ばれていました。

約110年前、世界大戦を経験した旧世界ではそれ以降、大国同士の全面戦争というのは少なくなりました。その代わりに増えたのが、特定の主義主張を武力で通そうという連中です。こういった連中は元々は一般人だったり、賊だったりするので行動の予測がつかない。しかも一般人だろうが、女子供だろうが無関係に殺してくる。そんな連中です。

旧世界で起きた事件だと旅客機のハイジャックや山荘を占領したり、人の密集する場所に強い毒を撒いたり、建物を爆破したりしていますね。特に有名なのは、こちらで言うミリシアル帝国のオフィスビルと国防総省にハイジャックされた旅客機が突っ込んだ事件と、とある大国の首都の様々な場所で自爆したり銃弾をばら撒いた事件ですね。そんなトンデモ連中と戦えますか?」

 

一応黙ったが、それでもまだ半信半疑といったところだろう。ここで懐から秘密兵器スマホを取り出して、当時のニュースを見せる。更にテロリストと正規軍の戦いも見せた。

 

「お分かり頂けましたか?もしもあのまま、ムー軍だけで事態の収拾を図っていたらどうなったか」

 

「.......理解はした。納得はしてないがな」

 

「私は理解も納得もしたよ。だがまあ、問題は別にもある。政治家達は今回の事を「皇国の侵略行為だ」と騒いでいてね。流石に君達を信頼は出来ない以上、擁護もできない。そこでだ。私としては君達の力と、それから考え方をみたい」

 

「なら、こんなのはどうです?」

 

なんか思いもよらない方向に進んでいるが、この波に乗っておく方が楽だと直感で判断したので、もう堂々と乗ってみる。2人に例の戦争の件を話し、誰か信頼できる側近でも観戦武官につけないかと頼んでみた。

 

「ふむ。なら、な?」

 

「我々で行くとしよう」

 

「そうそう。信頼できる側近をって、え?今なんと?」

 

「いやだから。我々2人で直々に、君達が信頼に足る人物か見ようと言っているんだ」

 

どうやら、この2人も神谷と同じようにぶっ飛んだ奴らしい。そして多分、これ断ったら更に面倒になるのでNOとは言えない。因みにこの数日後に神谷戦闘団を乗せた白鯨IIがムー上空に飛来し、神谷ら白亜衆と合流。一路、リーム王国へと進撃を開始した。

そして今に至る。

 

 

「長官、こちらを」

 

「例の報告書か」

 

会議が終わり自室に戻る途中、通信員から書類の束を渡された。表紙には『リーム王国偵察報告書』と書かれており、これはJMIBが偵察して調べ上げたリーム王国の非道行為と極悪非道の王族&貴族の一覧である。それではここで、リーム王国の非道行為の一部を列挙してみよう。

 

・何の罪もない家族を妻は夫と子の目の前で陵辱し、子は生きたまま動物に陵辱させ、夫は拷問に掛けられた

・自国民、他国民問わず奴隷化。勿論略奪も。

・奴隷となった者の運命はとにかく悲惨であり、両目を抉られるとか腕や足を切り落とされるなんてのは序の口。生きたまま動物に食わされたり、玩具にされたり、糞尿を食わせたり、毒を飲ませたり、謎の魔法でモンスターにさせられたりとロクな目には合わない。

・医者だろうが何だろうが、目の前を横切れば殺す。馬車や船なら、乗ってる人間ごと破壊。

・そしてこの悪逆非道の行為の被害者に、日本人も含まれている。

 

とまあ、こんな感じ。流石の神谷もこれには激怒した。パーパルディア皇国なみに。いや今回はもしかすると、あの時以上だったかもしれない。

兎に角、神谷は指揮官達に命令を下した。

 

「お前達、民間人は絶対に傷付けるな。それから悪逆非道を行なってるアホ貴族がいれば、必ずとっ捕まえろ。絶対に殺してやるな」

 

この命令に驚いた読者諸氏もいるだろう。殺さなくていいのか?と。甘い、甘すぎるぞ。殺してしまえば、それ以降苦痛は与えられない。ならば殺さずにとっ捕まえて、後から色々してあげた方が殺された者たちの苦しみも少しは理解できるだろう。

 

「長官!!」

 

下士官の1人がノックもなく、部屋へと飛び込んできた。本来なら懲罰対象なのだが、顔の焦りようから察するに重大な何かが起きたのだろう。

 

「どうした、取り敢えず落ち着け。ノックもなく飛び込んできた辺り、何か緊急事態なのだろう?」

 

「あ、いや!も、申し訳ありません!」

 

「あ、別に懲罰とかはしない。不問にする。それよりも、何があった?」

 

「そ、それが。信じられないでしょうが、この艦に密航者が.......」

 

流石にこの答えには驚いた。軍用機に密航者とか、前代未聞である。

 

「それは現地人か?」

 

「は、はい!エルフの女性が5人程」

 

「ご、5人のエルフの女性.......」

 

この時点で神谷の脳裏には、あのエルフ五等分の花嫁が浮かんでいた。いや、そんな筈はない。何故なら彼女達は既に日本行きの飛行機に乗って、帰国している筈なのだから。「そんな事あるはずがない」なんて思いながら、その密航者が待つ食堂に向かうと…

 

「なんでいるんだよ.......」

 

5人揃って手錠かけられた状態で、まず経験することのない形で再会を果たした。

 

「で、言い分を聞こうか?」

 

「えっと、あの.......」

 

ヘルミーナが狼狽え、他の4人もバツの悪そうな顔をしている。

 

「アンタ達を助けるためよ」

 

「は?え、ちょっと待て。エリス説明しろ」

 

エリスが説明するにはこうだ。リーム王国、正確にはリーム王国を支配する王侯貴族はとある兵器を隠していると。その兵器の名こそ判明していないが、古の魔法帝国が保有していた空中戦艦なのだと言う。

魔法を使える者が神谷を除いて居ない以上、魔法知識が必要になると考えてこっそり忍び込んだそうだ。

 

「どうします?」

 

「どうするもこうするも、その空中戦艦とやらを破壊するしかないだろ。それからお前ら、どんな理由であれ無許可で軍艦に忍び込んだんだ。罰は受けてもらう」

 

罰を受けさせると聞いて、5人の顔色が一気に悪くなる。牢屋か鞭打ちか、はたまた死刑か。だが与えられた罰は、全くの予想外なものだった。

 

「お前達も俺達と共に戦え。もしその空中戦艦とやらがいるのなら、魔法知識が必要な可能性も出てくる。俺も一応使えるが、それはあくまで使えるだけで原理とかの部分は全然わからん。密航した罪は、労働をもって償え」

 

「か、神谷殿。よいのか?それでは軍の規律g」

「規律どころか法を犯した奴がそれを言うか?」

「.......」

 

「あくまでこれは、今ここにいるのが俺の直属の部下達しか居ないから出来る事だ。普通なら家族だろうが何だろうが突き出さないといけないし、仮に突き出さなかったら他の奴が突き出すだけだ。実際、これも服務規程違反だし。

だが俺がお前達を必要と判断し、コイツらも俺の判断信頼してくれていて、なおかつコイツらもあのゴブリンとの戦闘でお前達の戦闘能力を見ているからこそ出来る、超荒技なんだ。そこを勘違いするんじゃねーぞ」

 

そう言うと神谷は五等分の花嫁の後ろに立つ兵士達に目配せし、手錠を外させた。彼女達が手首を摩っている中、神谷は大声を張り上げる。

 

「聞け野郎共!!この戦いの間だけ、コイツらのお守りもお願いしたいッ!!!!コイツらの戦闘能力は既にゴブリンとの戦闘で知ってるだろうが、規律やら皇軍の戦法やらは当然だが知らん!!!!だが彼女達の能力は必ず、この戦いでのカギとなる!!もしこの判断が裏目に出たら、それは俺の責任だッ!!!!お前達には類が及ばないようにはする!!だから、頼む!!!!!」

 

そう言って頭を下げた。たとえ絶大の信頼を置いてくれているとは言えど、この部隊でも軍のトップと言えども、私的な問題での無理難題である事には変わりない。しかも命のやり取りをする戦場での無理難題。一歩間違えば死に繋がる中での願いである以上、頭を下げるのは当然のことだ。

 

「頭を上げてください、長官。我々は正直、軍や国家よりもあなたに忠義を尽くします。多分、あなたが皇国を裏切ったとしても、その裏切りにスジが通っていれば共に裏切るでしょう。他部隊じゃ無理難題でしょうが、あなたの率いる我ら天下の神谷戦闘団ではイージーミッションですよ。

そうだろう、お前達!!!!」

 

「「「「「オウ!!!!」」」」」

 

大声を上げる神谷戦闘団の兵士達。彼らの強さは、戦闘技術だけではない。この連帯力と神谷への絶大な信頼である。今この時、元より強かった結束が更に強く、頑強なものになった。

そしてタイミング良く、艦内放送が鳴り響く。「上陸部隊は格納庫に集合せよ」つまり、出撃の時が来たのだ。兵士達はメットを被り、格納庫へと向かう。

 

「あ、お前たち。武器は持ってきてないよな?」

 

「当然でしょ!」

「空港の警察に取られた」

「アーシャ姉様、警察じゃないわ。えっと、麻薬取締員?」

「税関職員だよ」

「麻薬だったら、私達は今頃牢屋ね」

 

「だよなー。知ってた。それじゃ、お前達には魔法で武器を作るとしよう」

 

神谷が魔法『上位武具生成(クリエイト・グレーター・ウェポン)』を使い、色々と装備を生み出していく。武器以外は基本全員、同じ装備なので上から順に紹介していこう。魔法を使うミーナとミーシャは白銀のティアラ、他の3人は白い羽根の髪飾り。

鎧は二次元の女騎士と同じように胸元がザックリと開いており、下乳と横乳を覆う形で純白の装甲があり、腰回りにもある。そして肩にはスターウォーズのキャプテン・レックスの右肩のような装甲が両肩に施されており、右肩には日の丸、左肩には神谷戦闘団の部隊マークが描かれている。腕には腕甲と白い長手袋。

下は腰に革製の小物入れと純白のミニスカートにヘルミーナは薄いピンク、アナスタシアは薄い紫、ミーシャが薄いレモン色、レイチェルが薄い水色、エリスが薄い赤の腰巻。脚にも純白の装甲ブーツ。

武器はヘルミーナがサソリの装飾が施された二振の黒いブロードソード、アナスタシアが蛇の装飾が護拳に施された青のレイピア、ミーシャが雷の紋様が無数に刻まれた杖、レイチェルが雲とドラゴンの紋様が施された緑のロングボウ、エリスが黒に赤のラインが入った大剣である。

 

「適当にやってみたが、案外いけるもんだな。さてお前ら、簡単に説明するぞ。そのティアラと髪飾りはどちらも移動速度、跳躍力がアップする。ティアラは魔法行使時の魔力消費量が100分の1に減少させ、髪飾りは筋力が5倍にまで引き上げられて、疲れもすぐに発散される。

鎧は装甲車並みの装甲にしてあるから、剣撃や弓での攻撃どころかバリスタくらいなら軽く防ぐ。でも軽さは革鎧程度にしてあるし、元より軽装甲だから動きやすいはずだ。それ以外も剣撃や刺突、強力な弓矢の攻撃は防げる程度にはしてある。

ブーツには落下ダメージ無効化と空中歩行能力、それから移動速度上昇の魔法を掛けてある」

 

「ちょちょ、待って待って!これまさか、神谷さんがいま作ったの?」

 

「魔法でちょちょいと」

 

「そんな魔法、存在したんですね.......」

 

ファンタジー世界じゃよく、何かの物質を生成したりする。だがこの世界において炎とか雷とか水ならまだしも、金属や布などを生成したり、ましてそれを整形するなんて事は不可能とされているのだ。因みに一部金属には、強化魔法や魔力を流す事で特殊な金属に加工している物もある。

 

「さぁ、着替えろ着替えろ!」

 

そう言って神谷は一度、部屋に戻った。自分の装備を取りに戻ったのだが、ホルスターをさっきまでいた部屋に忘れた事を思い出して戻った。

戻ると5人は既に着替えを完了しており、臨戦態勢に入っていた。

 

「お、似合うじゃん」

 

「神谷殿。この紋様、左肩のは何だ?」

 

「あぁ。ソイツは、我が神谷戦闘団の紋章だ。下の刀と銃は俺、上の地図は旧世界の世界地図で、その前にいる馬はアリコーン。このマークには「世界中、何処へでも赴く」という意味が込められていたな、その結果『国境なき軍団』とか言われてる」

 

「これが神谷様の部隊の紋章.......」

「なんか、カッコいいよね」

「そうね。まるでそう、神谷様と心が一つになったような.......」

 

ミーシャ、レイチェル、ヘルミーナの3人が肩のマークをじっと眺めている。その間に神谷は今まで着ていた軍服を脱いでボディースーツ姿となり、その上から専用仕様の白い機動甲冑を装備する。

この際なので、神谷専用仕様の機動甲冑も紹介しておこう。装甲カラーは黒に金なのだが、右肩の装甲は赤色で、ヘルメットを装備せずにARコンタクトレンズを装備する。そして装甲服の上には『皇国剣聖』の文字が入った至極色の羽織を纏う。

因みに相棒の向上は黒と赤の装甲服である。そして勿論、上から旭日旗の刻まれた黒いロングコートを纏っている。

 

「グズグズするな、行くぞ」

 

部屋を出て格納庫へと向かい、白亜衆用に白い塗装と神谷家の家紋やアリコーンの部隊アイコンが描かれたVC5白鳥へと乗り込む。他の神谷戦闘団の兵士達は、塗装こそ普通だが神谷家の家紋と部隊アイコンが描かれたVC4隼、若しくは白鳥に乗り込んでいる。

 

「長官、御武運を!」

 

「「「「「「「御武運を!!!!」」」」」」」

 

「あぁ。勝利を期待しておけ」

 

誘導員の敬礼に答礼しつつ、笑顔でそう答える。機体へ乗り込み、ハッチが閉まると機体はエレベーターの方へと移動していく。飛行甲板に出ると、そのまま後部へ移動。そこでプロペラを展開し、大空へと飛び立っていく。

 

 

 

同時刻 超戦艦『熱田』 艦橋

「司令、間も無くです」

 

「よし。戦闘用意!」

 

「戦闘よーい!!!!」

「総員、戦闘配置。総員、戦闘配置。各班は戦闘に備えよ」

「艦隊増速、第三戦速」

「第三戦そーく!ヨーソロー」

 

艦隊の戦闘準備が着々と進む中、偵察の為に先んじて発艦していた要塞超空母『加賀』の早期警戒機、E3鷲目から敵艦隊発見の通報が入った。この報告に、艦橋はより緊迫した空気となる。

 

「一応だ。AEWに中継させて、降伏を呼びかけてみる。通信員!」

 

「アイ・サー!」

 

通信員が鷲目に搭載されている魔道通信の送受信と傍受もできる通信機を経由して、接近中の艦隊に「こちらは大日本皇国海軍である。直ちに武装解除し、我が方に帰順せよ。さもなくば殲滅する」というのを流した。

 

「これで降伏してくれれば苦労しないんですけどね」

 

「あぁ。だがこういうのは、する事にこそ意味があるものだ。たとえ回答が望み通りのものでなくとも、な」

 

なんて山本と副官が言っていると、返信が入ったらしい。思ってたよりもすぐに返信が来たので、通信員含む艦橋要員は驚いていた。

 

「いや、え?嘘」

 

「どうした?」

 

「返信が来たのですが、あの、これ原文通りですからね?ふざけてませんからね?」

 

やけに念押ししてくる通信員に若干の鬱陶しさというか、不快感というか、いずれにしろマイナスな感情を抱きつつも「わかったから、早く言え」と促す。で、その返信というのが『あー、別にいいぞー』だった。

 

「え、ちょっと待て通信員。それ、本当に言ったのか?」

 

「自分の耳か聴覚系の神経が壊れてるのを信じましたが、AEWのオペレーターも同じく聞いてるので.......」

 

「そんな軽い感じで決めていいのか?」

 

この最早『奇行』とまで言える回答に、百戦錬磨の艦橋要員も困惑している。だがレーダーを見るに、本当に艦隊は左右に分かれて道を開けている。

 

「あ!また通信です!!『そちらの指揮官と我々の身の安全の保証と、今後に関する提案の為、会談をさせてほしい』との事です!」

 

「ふむ。まあ、良かろう。お受けすると返信しろ」

 

「アイ・サー!」

 

この返信の後、すぐに会談場所に関する通信が送られ、急遽大海原のど真ん中でぶっ飛んだ司令との会談が行われた。

 

「か、艦影視認!大型戦列艦1。旧パーパルディア皇国のフィシャヌス級と同等の大きさです!!」

 

「左舷への接舷を許可しろ。航海、測距を厳に」

 

「アイ・サー!各部スラスタースタンバイ、起動チェック!」

「スラスタースタンバイ。水密隔壁、開放する」

「おい!左舷に一応クッションを準備しておけ!流石に横付けは仕切らんだろうがな。それから、艦隊司令用の内火艇(ランチ)も準備しろ!」

「左舷に防舷物展開。甲板作業員は準備にかかれ」

「艦隊司令用内火艇(ランチ)、スタンバイ」

 

「砲雷長。各兵装の照準を、接近中の戦列艦に固定。何かあれば、即沈めろ」

「アイ・サー!諸元入力開始!」

 

「戦術長。臨検隊と銃器の扱いに長ける者を武装させ、甲板上に配置。備えあれば憂いなしだ」

「アイ・サー!」

 

着々と中々に物騒な受け入れ準備が進む。一方のリーム王国海軍の旗艦と思われる戦列艦は、巧みな操艦でタグボート無しで熱田の左舷中央部に接舷した。

 

 

「フフッ。こんな巨大な鋼鉄の塊に、ワシらの砲が敵うわけないわい」

 

「ガイプ元帥!接舷、完了いたしました!」

 

「おう。今行く」

 

2mはあろうかというガッシリとした体躯の老人が、堂々と部屋の外へと出ていく。この男こそ、リーム王立海軍のトップに君臨する男。ガイプ・モンキー元帥である。

※元ネタは勿論、ガープ中将である。

 

「リーム海軍のトップですね。私は大日本皇国軍、超戦艦『熱田』副長の井田中佐です」

 

「ワシはリーム王立海軍提督、ガイプ・モンキー元帥じゃ。早速じゃが、そちらの指揮官とお話ししたい」

 

「えぇ。こちらにどうぞ」

 

ガイプを熱田艦内の応接室へと案内する。中には礼服に身を包んだ山本と、側近達が待ち構えていた。

 

「リーム王立海軍提督、ガイプ・モンキー元帥じゃ。まずは今回の降伏の受託、感謝する」

 

「えぇ。我々としても無用な争いは避けたいので、お互い、流す血は最小限がいいでしょう。自己紹介がまだでしたな。私は大日本皇国海軍、第一主力艦隊司令、山本磯忠と申します」

 

まだ出会って1分も経ってないが、どちらも目の前の相手が相当のやり手だと分かった。どちらからとも無く手が差し出され、固い握手が結ばれた。

 

「早速ですが本題に入りましょう。まずはそちらの提案というのをお聞かせください」

 

「回りくどいのは抜きじゃ。単刀直入に言う。リーム王国を潰し、民を救ってくれ」

 

「.......それはまた。現職の軍人、それもトップらしからぬ提案ですね」

 

そう言う山本を、ガイプは鼻で笑った。自嘲気味の笑顔で、その目は悲しみと虚しさの同居する目であった。

 

「逆に聞くが、アンタらはクソみたいな貴族や王族を守りたいと思うのか?自国民を人と思わず、そこらの獣と同じように扱い、そして無惨に死んでいく。そんな事を容認するような奴らを、それが使命だとしても、守りたいと思うか?」

 

「お気持ちはわかります。が、我々は貴国を潰さなくても良い。たとえあなたが艦隊に攻撃を指示しても、本艦の火力はそちらの如何なる艦艇をも上回るでしょう。

潰せというのなら、メリットを提示して頂きたい」

 

ぶっちゃけメリットなくても舐められてる時点で潰すし、というか山本の更に上のポストにいる神谷がノリノリなのでどう足掻いても潰されるのは確定事項なのだが、メリットが欲しいというのが本音でもある。

そして仮にも一国を滅ぼせと言ってきているのだから、それ相応の見返りがないと損である。

 

「メリット?そんなもん無いわい。ワシの出せるものは、命含めてお前達の自由にして良い。だから頼む。この通りじゃ」

 

そう言ってガイプは頭を下げた。正直、これをされたら弱い。だが、これで言質は取った。録音もしてある。なら答えは一択。

 

「我が国は奴隷制を遥か昔に終えました。ですので、あなたの身柄をどうこうする権利は誰にもありません。というか、我々が逆に処罰されます。

あなたには今後、必ずくる講和交渉時にその力を最大限振るってもらいます。それにリーム王国はたとえ、あなたが止めようとボコボコにされますよ。何せ、我が皇軍の事実上のトップにして、最強の戦力が作戦行動に入っていますからね。きっと、王侯貴族にとってはリーム王国史上最悪の日になるでしょう。あなた方、海軍の皆さんには特等席でその様を見届けてもらいましょう」

 

「感謝する.......」

 

また深々と頭を下げるガイプ。リーム王立海軍はこの日、大日本皇国に全面降伏。後の歴史において『リーム王立海軍最後の英断』として記録されるこの事件は、静かに幕をおろした。

 

 

 

*1
五号機、という意味のVである

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