最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第四十八話栄光の日

リームとマオとの戦争終結より数日後 大日本皇国 首相官邸

「にしても転移してからこっち、戦争ばっかやってんな」

 

「平和国家今何処(いづこ)?」

 

神谷より一足先に帰還していた川山は、一色と首相官邸で簡単な報告会を行なっていた。神谷はまだリーム王国で事後処理に当たっているので、いまだ愛する祖国たる日本には帰還できていない。

 

「んで、ムーとの交渉は?」

 

「取り敢えず彼方さんからの要求とかは、えーと。あ、これこれ」

 

そう言って川山はタブレットで資料を見せる。因みに内容としてはこんな感じ。

 

・大日本皇国とムーの同盟締結

・予想されるグラ・バルカス帝国との戦争に向けた軍需物資の支援と、ムー国内での製造支援

・共同作戦を取るための具体的な連携方法の考案

・一部の軍事技術及び中核技術の移転やライセンス取得

・有事の際の難民支援を含む人道支援や、軍事支援の確約

 

「軍事面だけか?」

 

「経済面は後から送付する。まだ資料が出揃ってないんでな」

 

「OK。にしてもまぁ、ウチと同盟結びますって宣言したら荒れるだろうな。国際社会」

 

「旧世界風に言うなら、スイスがアメリカと同盟結んだようなものだからな。国際社会もそうだが、恐らく一部の各国にいる特権階級達は大慌て間違いなしだろうな。なんかムーの銀行はスイス銀行よろしく、そういう輩の表に出さない真っ黒い口座とかあるらしいし」

 

「まあ、俺たちの知ったこっちゃないがな」

 

よくドラマとかである「スイス銀行宛に送金」とかのヤツである。スイスの銀行は、とにかく秘匿性が高い。プライベートバンクを持つと、専属の担当者が1人1人に付く。振り込みも引き下ろしも、その担当者しか対応しないし口座番号も間違えて振り込めば、その振り込んだ金は返ってこないという、エゲツないレベルの秘匿性がある。

それと同じことがムーでもできるのだが、やはりこういうのは表裏問わず権力者達の汚〜い金が流れ着く。しかもこの秘匿性は、ムーの永世中立国という国際社会からは余り干渉されることがないという、絶対の理があるからこそ成り立つ。もし永世中立国でなければ、国際社会の流れによっては口座の凍結処分を喰らう羽目にもなる可能性がある訳で、権力者達からしてみれば溜まったものじゃないのだ。

 

「あ、それはそうと。本当は見せたらダメなんだけど、これ見てみ?」

 

「この紋章、陛下からの文書か。えーと..............」

 

文章を読み進めていくにつれて、川山の顔はみるみる驚愕の表情へとなっていく。

 

「驚きだろ?」

 

「あ、あぁ。まさか陛下がここまでするとは.......」

 

「まあ、アイツの働きや職務の性質を考えたら妥当っちゃ妥当ではあるが、結構な決断だったろうな」

 

どんな内容が書かれていたかは、神谷が帰ってきてから発表しよう。

 

 

 

戦争終結より二週間後 統合参謀本部前

「なんだ、あの人だかり」

 

「何でしょうかね?」

 

神谷と向上は一度統合参謀本部へと向かったのだが、何故かロビーがマスコミでごった返していた。そして神谷に気付くや否や、一斉にこっちへ走ってくる。

 

「え、ちょなになに?」

 

「神谷閣下!今回の発表のご感想は!?」

「今のお気持ちを!!」

「この決定は、今後どのような影響が!?」

 

「あー、えーとですね。今回の戦乱も無事、我々の勝利で終わりました。こちらの損害はないのは嬉しい限りですが、逆に我々は彼方の兵士を殺めてしまっている。そこは喜べるものではありません。

今の気持ちは、とにかく休みたいです。ぶっちゃけ最近休めていないのでね。

今後は私ではなく、健太郎や慎太郎のターンですからね。そこは何とも」

 

この神谷のコメントに、何故かマスコミ達は一様に「コイツ何言ってんだ?」という顔をしている。一方の神谷と向上も何でこんな反応なのか分からず、お互い微妙な空気が流れている。

そんな空気の中、また意外な人物が入ってきた。一色である。

 

「いやっほー、お帰り」

 

「お、おう。お前、この状況が何か分かるか?」

 

「あぁ、わかるとも。これがその元凶だ」

 

そう言って一色は川山に見せた文書を渡す。そこに書かれていたのは日本古来の言い回しの文章でとにかく長かったので、簡単に要約した物をお教えしよう。

 

最近神谷くん頑張ってるよね。そのご褒美に、統合軍内に新たな階級として『元帥』を作ることになったから、その『初代・統合軍元帥』に任じちゃいます!後、位階も従二位から正二位に上がるので、その辺もヨロ!

 

という感じである。まず『元帥』というのが異例だ。旧軍からの伝統で現在の皇国軍に階級としての『元帥』は、ずっと存在していない。唯一、明治時代に2年間だけ薩摩藩の西郷隆盛が持っていただけで、それ以降はあくまで『元帥陸軍大将』か『元帥海軍大将』という称号として存在していたのである。

また正二位とは7月8日に奈良市内の演説中に亡くなった第90、96、97、98代内閣総理大臣を担った安倍晋三氏に渡された従一位の一個下であり、有名どころだと藤原不比等とか冬嗣、岩倉具視や伊藤博文、最近のところだと岸信介辺りが持っている。

因みに三英傑は一色が神谷と同じく正二位、川山は従二位の位階を持っている。

 

「マジですか.......」

 

「マジです。なんか勲章も一緒に渡されるらしいから、式典とか諸々準備よろしく」

 

「ってかお前、こういうのは先に言えよ!!」

 

当然のツッコミである。受賞者本人よりも先にマスコミが知り、マスコミが来たタイミングの目の前で公開通知とか前代未聞すぎる。

 

「サプライズってヤツだ。さっ、今から忙しくなるぞー」

 

「うるせー!」

 

神谷からしてみれば、タイミングが悪すぎた。戦争というか演習の前に婚約破棄の危機になって、休みを取る宣言をしてしまっている。もしここで「休めない」なんて言えば、確実に婚約破棄は待った無しである。

 

「と、言いたいんだがな。天皇陛下から勅命が出ている。読み上げるぞ」

 

そう言って懐から紙、というか勅書を取り出しそれを広げた。その勅命というのが…

 

「勅命。休め!!」

 

「.......え、終わり?」

 

「終わり。ほら、見てみろ」

 

そう言って勅書をひっくり返して見せてくれた。確かに勅書の隣には、墨書きで太く荒々しい文字で『休め!!』と書かれていた。こんなに短い勅書が、これまでに存在しただろうか。

因みにこの一連のやり取りは全部生中継で全国民に筒抜けだったのだが、この一連のやり取りはしっかり伝説化&ネットのおもちゃになった。特に勅書は、中身を『働け!!』とか色々な物に変えて使われた。

 

 

 

数時間後 神谷邸

「お帰りなさいませ、旦那様。昇進、おめでとうございます」

 

「ありがとう。アイツらは今どこに?」

 

「姉妹揃って、広間にお待ちです。お帰り次第、旦那様をお連れしろと」

 

「そうか。さーて、ここからがある意味戦争だな」

 

そう言いながら、神谷は早稲を伴って広間へと向かう。広間ではエルフ五等分の花嫁が集まっているのか、既に空気が重かった。しかも部屋の外の扉の前でそれが分かるのだから、中は多分もっと重い。

 

「なぁ、爺ちゃん。魔王のいるボス部屋に乗り込む前の勇者ってさ、こんな感じの空気の中扉を開けるのかな?」

 

「この早稲、骨は拾います故、どうぞご存分にお散りになってくださいませ」

 

「よーし、死ぬの前提はやめようか」

 

「あぁ、旦那様。あんなにも素晴らしいお方だというのに、お迎えが余りにも早くて.......。この早稲、悲しい限りです」

 

「勝手に殺すなー」

 

どうやら既に早稲の中では、神谷は故人になってしまっているらしい。目の前に主人がいるのに、従者の中では死んでるとはこれ如何に。

取り敢えず広間の中に入り、目の前に揃っているエルフ五等分の花嫁と対峙する。

 

「神谷様、約束は覚えていますよね?」

 

「埋め合わせるってヤツだろ。しっかり覚えている。結論から言おう。来週ってか今日が金曜だから、もう実質今日から一ヶ月、全部休暇になった」

 

そう。天皇陛下の勅命という国内最強チートアイテムがあるお陰で、休暇はしっかり取れた。それも一ヶ月丸々。勿論、その間に何かしらの国家規模の何か。例えば熊本地震や東日本大震災規模の災害や、また性懲りも無く他国から宣戦布告された時といった国家存亡の機に直結する事案を除いて、神谷が呼び出されることはない。久しぶりの休暇である。そしてこの一言を聞いた瞬間、空気が一気に軽くなった。エリスとアナスタシアは表情には出していないが、他3人は顔が笑顔になっている。

 

「後な、俺昇進した。軍の階級も、それからあー、まあ日本に於ける貴族とかの階級的なのも両方とも」

 

「しかし日本軍は神谷殿の階級が最高階級なのだろう?」

 

「そうだったんだがな。なんか新しくこれまで称号だった『元帥』が、正式な階級として組み込まれることになった。そしてその初代元帥に選ばれたんだよ」

 

「なにそれ凄っ!!」

 

皆一様に驚いた。そのまま話は休みをどうするかとか、なにするかとかで盛り上がり、そこから夕食と相なった。因みにメニューはこちら。

 

・飯

旬のサケとイクラの炊き込みご飯

 

・汁

牡丹ハモの吸い物

 

・向付

真鯛の塩釜焼き

 

・煮物

松坂牛のすき焼き

 

・肉物

神戸牛のローストビーフ

 

・預け鉢(進め鉢)

海鮮サラダ

 

・甘味菓子

ショートケーキ

 

見て分かる通り縁起のいい物や、祝いの席で出される物を作っている。どうやらコック長も報道を見て、腕によりをかけて作ってくれたらしい。

 

「またいつになく凄いな」

 

「コック長さん達、張り切っていましたよ。今日はめでたいぞーって」

 

どうやらミーシャはキッチンで、コック長とその他のコック達がどんちゃん騒ぎをしていたのを見ていたらしく、その時の様子を真似してくれたが何か可愛い。

 

「さーて、じゃあもう食べるか。折角の飯が冷めちゃコック長達に失礼だし、何よりこんな美味そうな物を目の前にお預けは単なる拷問だ」

 

「そうですね!早く食べましょう!!」

 

実は一番食いしん坊なヘルミーナが同意する。そして他の姉妹達もすぐに食べたかったのか、食事が始まった。久しぶりの6人揃っての食事なのだ、話も盛り上がり……といきたいのだが、まだ数える程度しか一緒に食事を摂っておらず、なんか逆に気まずかった。

だが時間も経てばある程度なにかしらの話のネタも出始めて、30分もすればまあまあ賑やかな食事になってはいた。なんか何処か他人行儀ではあったが。その後は各々風呂に入り、何故か神谷の部屋に集まった。

 

「で、なんで集まったんだ?」

 

「私達、決めた事があるんです」

 

なんか改まって全員揃って言ってくる辺り、恐らく今後に関する何かなのだろう。神谷も背筋が伸び、正面から堂々と5人を見つめる。

 

「私達、神谷様の部隊に入りたいです!!」

 

「うん。うん!?ご、ごめん。もう一回言ってくれ」

 

「ですから、神谷様の部隊。神谷戦闘団、白亜衆に入りたいんです!」

 

どうやら神谷の耳や脳がバグって、よくわからない翻訳がなされた訳ではなかったらしい。

だが、そう簡単に「はい、そうですか」とは言えない。確かに5人とも、エルフ故に身体能力は並みの人間以上ある。体力だってナゴ村という人里離れた山の中の村に居て活動してただけあって、普通にこれもある。そして全員が魔法か剣か弓を使えて、戦力としても問題ない。

だが白亜衆は早々入れるものではない。普通は他の兵士同様、幹部候補生や兵卒として訓練を受けて、更にそこからレンジャー訓練を受けて、実際に特殊部隊や精鋭部隊での実績があって初めて神谷戦闘団に入る。そしてそこで目覚ましい成績を上げた者のみ、白亜衆として白いアーマーに身を包むのだ。まあ一部は神谷が一本釣りでヘッドハンティングしたりもしてるのだが。いずれにしろ、簡単なことではない。

 

「悪いが、そう易々とは入れてやれる部隊じゃないぞ」

 

「どうしたら入れるのだ?」

 

「普通に訓練学校行って、卒業するしかないな。素質はあるが、まずは軍人としての心意気や規律を覚えないと」

 

エルフ五等分の花嫁達はちょっと前にテレビの特番か何かで訓練の様子を見たのか、見るからに顔色が悪くなっている。実際、皇軍の訓練は厳しいので分からなくはない。卒業さえしてしまえば、アットホームでカオスな部隊勤務となるが、いかんせんそこまでがキツイ。

 

「ねぇ、つまりその訓練学校に行きさえすれば良いわけよね?」

 

「あ、あぁ。本来ならそこから特殊部隊の経験とかが必要だが、中には俺がスカウトした奴もいる。それにお前達は既に、リーム王国でその力を示した。反対意見は出ないだろう」

 

エリスの質問にそう返すと「なら簡単じゃない」と言った。曰く、その学校に入れば良いと。だが勿論、試験もあるし今の学力で受かるか分からない。というか、どの程度の学力かが分からない。

 

「入るなら入るで、協力はする。だが質問に答えろ。一つ目、何故入ろうとしたんだ?」

 

「神谷様と一緒にいたいからです」

 

ミーシャがそう答えた。他も同じ理由らしい。

 

「二つ目、死ぬ覚悟はあるのか?軍人になり、俺の部隊にくるって事は危険地帯のど真ん中に突撃するような事もある。それでも良いんだな?」

 

「神谷さん、私達を舐めすぎだよ。私達これでも、何人か人殺してるんだよ?」

 

この発言には流石にビックリした。いきなりのカミングアウトに、神谷とて「はい?」という情けない声が出てしまう。どうやら昔、エルフの同胞を奴隷として拐おうとしてきた奴隷商の私兵と傭兵の混成軍が攻めてきたらしく、そこで初陣を飾り何人も血祭りに上げたそうな。

 

「.......今度、資料を取り寄せておこう。幸い時間はあるから、俺がみっちり鍛えてやる」

 

この後、5人はしっかり訓練学校に入って無事に卒業。伍長の階級を得た後、神谷戦闘団に入団。そのまま白亜衆に.......ではなく新たに部隊を新設して、そこに入ってもらった。5人だけの部隊だが神谷直属の部隊で、部隊名は『神谷戦闘団特殊戦闘隊』となっているが、通称『白亜の戦乙女(ワルキューレ)』と呼ばれることとなる部隊である。

それではここで一気に時間を飛ばして、一ヶ月と数週間が経った日にしよう。空白の一ヶ月間に関しては、次回から番外編として紹介していくのでお楽しみに。

 

 

 

一ヶ月と数週間後 統合参謀本部

「いよいよか.......」

 

「改めて、おめでとうございます。長官」

 

一ヶ月の休暇を終えて数週間が経った今日この日。神谷は正式に元帥の階級を、大日本皇国統合軍のトップである天皇陛下より直々に賜る事になった。ここから馬車に乗って皇居に赴き、元帥の証である元帥刀の下賜と勲章が授与される。

因みに大日本皇国では全権大使への信任状贈呈式の時以外にも、総理大臣の任命式の際も国会議事堂から皇居、皇居から首相官邸までの送迎には馬車が使われる。

 

「失礼致します!神谷浩三統合軍大将殿!!馬車の準備が整いましたので、正面玄関口にお願い致します!!!!」

 

統合参謀本部の警衛を担当している大尉が、正装に身を包んだ姿で直立不動の敬礼を取る。勿論神谷も綺麗な返礼を以って応え、大尉の先導の下、正面玄関へと降りる。

 

「なぁ、ぶっちゃけ緊張してる?」

 

「そりゃしますよ!だってこんな仕事、多分もう一生しませんからね。何より閣下の晴れ舞台なんですから、さらに泥を塗るわけにもいきませんもん」

 

エレベーターの中は大尉と向上以外いないので、ここだけはいつも通りのフレンドリーな空気で戯れ合う。これも神谷なりの配慮であり、見るからにカチコチの大尉の緊張をほぐすための会話なのだ。

 

「敬礼!!」

 

エレベーターが一階に着くと、統合参謀本部に所属する職員達が敬礼を以って花道を作り出迎えてくれた。中には掃除のおばちゃんや食堂のおばちゃんもおり、この辺りは軍人ではなく一般人なので普通に礼をしている。神谷はその作られた華道を、敬礼しながら馬車へと進んでいく。

 

「それでは、いってらっしゃいませ長官」

 

向上はここまでである。神谷は1人、宮内省の管理する信任上贈呈式にも使われる儀装馬車4号に乗り込み、警視庁騎馬隊と近衛師団騎馬隊の先導の下、皇居へと向かう。

 

「やっぱ総理や大使が乗るだけあって、乗り心地クソいいな」

 

乗り心地は揺籠に近く、板バネとC型バネによって縦揺れも殆どない。いつか乗ったパーパルディア皇国の馬車よりも、遥かに乗り心地は良い。

馬車は順調に進み、都内の街並みの中を進む。沿道には数多くの国民が詰めかけており、こちらに手を振ってくれていた。勿論手を振りかえして、それに応える。

 

「神谷閣下ー!!」

 

「神谷閣下万歳!!大日本皇国万歳!!」

 

「日本を護ってくれてありがとーー!!」

 

正直なところ、声が重なりすぎて結構聞き取りにくい。いろんな声と言葉が混じり合って、正確に聞き取れない。だがそれでも、国民達が好意を抱いてこちらに手を振り、言葉をかけてくれているのは分かる。なら出来るだけ、それに応じるのみ。神谷も最初は軽く手を振るだけだったが、段々大きく手を振り返したりしていた。

 

「って、おいおい。アイツらは.......」

 

国民を越えると、今度は見覚えのある軍人達が居た。白地に赤丸の旗、白地に赤い太陽の意匠が刻まれた旗、金の十六八重菊が刻まれた旗、黒地に白で丸と揚羽蝶の描かれた旗、そして黒地に白で二本の太刀をクロスさせて、交差している部分に一梃の拳銃の銃口を向けている絵が入っている上に世界地図を背にしたアリコーンが描かれた旗。もう何処の部隊か、読者諸氏もお分かりだろう。神谷戦闘団である。

彼らはただ、綺麗に整列して直立不動の敬礼を送っている。神谷はこの姿がとても嬉しかったらしく、少し笑って敬礼をしながらそこを通り過ぎていった。馬車は皇居の中に入り、松の間に通される。

 

 

(あ、来た)

 

介添役である一色は、神谷が来たのが見えた。最後にパッと自分の身だしなみを確認する。問題はない。

 

「陛下。神谷大将、お目見えにございます」

 

「そうですか」

 

天皇陛下に耳打ちする侍従を合図に、式に出る者は立ち上がる。そして部屋の前で神谷は敬礼し、部屋に入る。

 

「統合軍大将神谷浩三。貴殿を大日本皇国統合軍元帥に任じ、統合軍に於ける指揮権と特権を与える。令和三十九年四月一日」

 

そう言うと天皇陛下は侍従から元帥刀を手渡され、それを神谷は受け取る。

 

「統合軍元帥、神谷浩三殿。貴殿の功績を讃え、旭日大綬章を授与する」

 

今度はリボンのついた勲章が贈られて、実際に首から掛けられる。これを以って授与式が終わり、神谷は退室。そのまま馬車に戻り、皇居を後にした。そしてその夜、首相官邸に三人が集まった。

 

「おめでとう浩三」

 

「おめっとさん」

 

「ありがとよ。にしても、まさか旭日大綬章が授与されるとは思わんかった」

 

この旭日大綬章は基本的に、戦後は政治家や企業の社長なんかに贈られてきた。現役の軍人は1人も居ない。だが今回、それが授与された。それが意味する所はつまり、今後はそれだけ軍の役割が重要という事である。

 

「正直、貰いたかない勲章だったな。これを与えられるって事は、俺たちの祖国は戦国時代の真っ只中に居て、しかもその渦中に巻き込まれるって事だからな」

 

「そう考えたら、ある意味呪いの勲章だな」

 

川山の発言は、なんとも言えない重い物があった。何故だか本当に呪われてる気がして、ただただ怖かった。

 

「さて!じゃあ、安定の報告会を始めるか」

 

「だな。じゃあまず俺から。リーム王国は共和制を取るらしく、現在は暫定的に反乱軍の指導者だった、ドラグーンとかいうのが国内の安定を図っている。安定が取り戻され次第、選挙によって決まるそうだ。

マオ王国に関しては、向こうから勝手に自国に不平等な条約を締結しようとしてきたな」

 

ここで一色が待ったをかけた。「俺達に不利益な条約じゃなくて?」と。川山は微妙な顔をしながら答える。

 

「あぁ。それだけ皇軍が怖かったのか、自分から関税自主権を認めず、領事裁判権を持たないとか言い出してな。流石にビックリしたぞ」

 

他にも色々あるのだが、基本は開国時にアメリカが日本と結んだ不平等条約をイメージしてもらいたい。あんな感じの条約を、自分から自国に掛けたのだ。勿論、内部工作とかも一切やってない。なんかマオ王国が勝手にやったのだ。

 

「なんか、国際的な立場が無くなりそう.......」

 

神谷の呟きに、2人も顔が引き攣る。今回ばかりは本当に裏工作とかましてないのに、そんな条約を結んできた。しかし普通は自国を不利にさせる条約を自分から結ぶわけがないので、多分このままだと日本が悪者になってしまう。世界としては「日本が裏工作して、不平等条約を結ばせた」と見えてしまうのだ。

ここまで来たら、今度はもう少しマオ王国側に有利な条約を結ぶような裏工作の命令という、前代未聞の謎命令を出す必要すら視野に入れる可能性も出てくる。

 

「次は政治だな。政治は少しムー関連でゴタ付いてる感じかな。だが、議員への根回しは衆参共に完了済みだし、後はもう本会議の議決でどうなるかだな。まあ多分大丈夫だろうとは思うが。

というか寧ろ、経済関連の条約は少なくともウチに損はないし、一部の議員にしてみりゃ天下り先が繁栄しているのは良い事だろ?体裁や表面上で反対する奴はあるかもしれんが、ガチの反対はされんだろう。反対するメリットないし」

 

「次は軍事面、だな。例の皇軍増強計画は順調に進んでいる。甲冑への追加装甲は既に部隊配備を行なってるし、備蓄も並行して製造中。多脚戦闘兵器、新型メタルギア、新型上陸用舟艇、アサルトガンシップについてははプロトタイプが完成し、各種試験の真っ最中。新型砲塔の搭載は定期メンテの時期に並行しつつ換装作業を行うから、今ちょうど半分ちょいぐらいは終わったな。

新たな遠征打撃群と本土防衛用の兵器設置だが、全てが完了するまでには後一年は掛かるだろう。火力支援用ガンシップはAC180迅雷としてロールアウトしてるし、既に量産化に漕ぎ着けた。各部隊への配備も問題ない。マイクロ多目的ミサイルも先行量産型が配備されつつある。

最後に『仮称513号艦』だが、慣熟訓練と性能評価試験を兼ねた訓練を敢行している。既に一度、戦力として投入したが、その威力は絶大だったぞ」

 

ここで読者諸氏はこう思った事だろう。「『仮称513号艦』なんて艦は、一度も戦闘に参加してないだろ」と。確かに現在この名称が出てきたのは「第五話ムーとの国交と大波乱の軍祭」と「第三十話やって来た使節団」にのみ登場し、続く「第三十一話極帝現る」で少し詳しい情報が出てきただけである。というか姿を見せたのは、第五話で船体が建造されているところであった。

あの当時では再来年、つまり先進11ヵ国会議の手前位に完成する筈だったのだが、工員達の気合と熱意により昼夜を問わず働いて造り上げたのだ。結果として予定よりも大幅に早い時間で建造が完了し、全ての予定が前倒しになったのだ。そしてそして、運がいい事に第75中隊のエスペラント王国での戦いに於いて『仮称513号艦』は当時、戦場の近海を航行していたのだ。実戦データを手に入れる絶好の機会だったので、神谷は参戦を判断。あの中村貴一郎巨人を貫いた青白いビームの出所こそこの艦であり、参加兵力でerrorとなっていた物が実は『仮称513号艦』なのである。

 

「あー、そういや本土防衛用に特殊戦術打撃隊に兵器作るって言ってたよな?アレ、なんだっけ」

 

「ストーンヘンジと提灯か?」

 

「あー、それそれ。アレも完成したのか?」

 

珍しく兵器の名を言わなかった一色に、神谷は少しがっかりしていた。どんな名前が飛び出すか、最近はもう楽しみになっていたのである。

因みに提灯はまだしも、ストーンヘンジでもうお察しかと思うが、詳しくは設定集をご覧頂きたい。一応、元ネタよりも凄い事になっている。

 

「一応、な。一部は稼働してるし。仮に今、何処ぞの国が本土空襲仕掛けてきても大丈夫だろうよ」

 

「これで最強の盾と矛が揃ったな」

 

川山の発言に神谷は悪い笑みを浮かべながら、こくりと頷いた。その後は何故かゲーム大会に発展し、3人でグラセフしたりして夜明けまで遊んでいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回で漸く、第六章終わりです。次回からは番外編として五等分の花嫁とのデートとかを書いて、皇国の過去を書いて、それからグラ・バルカス帝国編に突入します。多分、入るのが今年の秋から冬の初めくらいでしょうね。いやー、長い。パ皇編終わってから、来月でもう一年ですからね。自分でもここまで長いとは思ってませんでしたよw
そして、ここでお知らせです。本来はグラ・バルカス帝国編スタート時に一新する予定だった設定集を、もう本日変更いたします。執筆中小説に溜まってまして、ぶっちゃけ邪魔なんですよね。丁度タイミングよく、ストーンヘンジとかの解説入れるので変えちゃいます。新版ではより詳しい兵器の解説や、新たな兵器に関してもちゃっかり入れてますので是非ご覧ください。旧版も残しますので、ご安心を。
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