最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第五十話神谷一族

ディズニー行った一週間後 神谷邸 ゲーム部屋

「おい、左から来るぞ!」

 

「機関銃で牽制する!!」

 

「オッケー、なら私が狙撃で倒すよ!」

 

「戦車の火力支援です!」

 

「爆弾も投下しますね!」

 

「じゃあ私は、野戦砲を撃ち込むわ!!」

 

ディズニーから帰ってきて、休みの過ごし方を思い出した神谷。本日、というかここ三日間くらいはずっと六人でゲームしている。今はVR空間で、第二次世界大戦の世界で戦闘中である。2022年に発売されたVRMMORPGのSAOを皮切りに、色んなVRゲームが発売された。特に『初期四部作』と呼ばれるソフト群はこの作品が全てソードアート・オンラインの世界観が元になっている、というか原作者が監修して現実世界に降臨させたような作品なのもあって、特に人気が高い。勿論四部作の作品名はそれぞれ『ソードアート・オンライン』通称SAO、『アルブヘイム・オンライン』通称ALO、『ガンゲイル・オンライン』通称GGO、『プロジェクト・アリシゼーション』通称UW若しくはアンダーワールドである。

この後にも続々と様々なゲームが発売されていき、ドラクエやファイナルファンタジーといった日本が世界に誇る名シリーズ、エースコンバットやBFといった特定層に根強い人気のあるシリーズ、はたまたSAOシリーズの様に人気アニメに出てくるVRゲームを基にしたヤツ、例えばオーバーロードを元にした『ユグドラシル』なんかが開発されていった。

 

「あ!私たちMVPだよ!!」

 

「うぉ!マジだ」

 

「私達には現役の兵士がいるんですから、当然ですよね?」

 

ヘルミーナが誇らしそうに言うが、このゲームのシステム的には実際の戦争の経験とかは余り意味をなさない。戦略とか敵の動きを読むとかはまだしも、射撃精度とかに直結はしない。そのため神谷の顔は、なんとも言えない微妙な顔であった。

 

「おっと、早稲から呼ばれてる。一旦落ちる」

 

そう言って一人、ログアウトして現実世界に戻る。因みに言っておくが、SAOで「ログアウト不可能になってデスゲームに変貌した」とか、ユグドラシルで「異世界転移した」とかは勿論ない。まあストーリー上はそういう設定だったり、SAOに至ってはストーリーモード限定の難易度で『生還者(サバイバー)』を選べば死ぬと使用しているアバターのデータが消えるモードとかはあったりはする。

 

「旦那様、いきなり呼び出してしまい申し訳ありません」

 

「別にいいよ。で、どしたの?」

 

「賢介様がお見えになりました」

 

「え?」

 

「久しぶりだな。コウ」

 

そう言って早稲の後ろから現れたのは、オールバックの若い男。この男こそ、神谷浩三の実の兄である神谷賢介である。

 

神谷 賢介(かみや けんすけ)

年齢 33歳

役職 株式会社神谷組*1代表取締役社長

神谷浩三の実兄であり、建設会社を切り盛りするやり手経営者でもある。性格は神谷とは正反対のクール系であり、幼い頃より神谷のブレーキ役であった。頭の良さは神谷を凌ぐし、スポーツも万能である。お陰で学生時代は小中高大院、全てにおいて学校の王子様であったが本人が余りそういうのが好きではないのもあって、普通に男友達も多かった。因みにスポーツに関してはあくまでも「常人レベル」での話であり、神谷みたいに弾丸避けたり切ったりなんて、化け物超人な真似は絶対に出来ない。

結婚済みであり、5歳の息子に3歳の娘もいる。先程はクールとか言っていたが、唯一子供の前、特に娘の前では超デレデレになる。

 

「兄貴!なんだよ、来るなら一声かけてくれりゃ良いのに」

 

「悪いな。偶々、こっちに来たついでだ。この前帰った時、母さんからコウに伝言を頼まれてな」

 

「伝言?」

 

「あぁ。曰く「いい加減そろそろ結婚してほしいから、お見合いをセッティングする。一度帰ってこい」だそうだ」

 

これまで神谷は、なんだかんだ理由をつけて断ってきた。例えば「いつ死ぬか分からない以上、結婚はしたくない」とか「残された嫁が可哀想だし、なにより子がもし居ればもっと可哀想」とか言っていた。

だが、既に婚約(仮)をしているので、もうその必要はない。では何故、お見合いの話が来たのかって?別に神谷の母が子を道具とか所有物として見る、所謂『毒親』というヤツだからではない。伝えていないのだ、エルフ五等分の花嫁のこと。

 

「あー、兄貴。その必要はねーよ。俺もう、一応の婚約者いるから」

 

「そうか。おめで、は?ちょっと待て、聞いてないぞ」

 

「そりゃそうだ。言ってないぞ」

 

次の瞬間、本気のチョップが飛んできたが真剣白刃取りの要領でキャッチして防ぐ。

 

「受け止めるな!」

 

「いやだって、余りに遅いし。やるなら、フッ!」

 

そう言って神谷が「お手本」と言わんばかりに、軽いチョップを賢介の頭に寸止めで打った。神谷にとっては軽くでも、常人にとってはマジのヤツであり、賢介は目で追えなかった。

 

「これぐらいじゃなきゃ」

 

「いや、そうじゃなくて。というか、なんでそんな大事な事を伝えてないんだ?」

 

「伝える時間が無かったし、色々ややこしいんだよ。話せば長くなるが、この婚約自体が相手方の村にある掟から来るものでさ。別にアイツらが望んでいる訳でもなくて、父親も「少なくとも日本なら別れても部族にはバレない」とか言っているから、ぶっちゃけ完全な婚約でもなくてな。言うなら今は、試用期間的な感じなのよ。

それに婚約時期が丁度、ミリシアル使節団の件が重なっててその対応やら、カルアミークとの国交開設に関係する仕事だとか、例のC2遭難事故とか、この間のムーとの演習と戦争みたいな感じで仕事が怒涛の勢いで入ってきたんだよ」

 

「つまり関係が面倒な上に、忙殺されていたと。まあそれなら仕方ないが、しっかり二人に説明しておけよ?今すぐに」

 

「へいへー、今!?」

 

「ほら、婚約者も連れてこい。俺がヘリで送っていってやる」

 

どうやら今日はヘリで来たらしいが、一つ問題がある。婚約者、五人もいるのだ。これも伝えていない。

 

「乗り切るかな?」

 

「問題ない。二人くらい、余裕で乗せられるキャパシティだからな」

 

「あー、婚約者は五人いるんだけど」

 

今度は無言でガチのパンチが飛んできた。多分、ヤリチン五股クソ野郎と思ったのだろう。

 

「待て待て待て待て!話せばわかる!!」

 

「どんな理由があるんだ!?あぁ!?!?」

 

「その村の掟が、「命を助けられた者は助けた者が未婚で想い人がいなければ、兄弟、姉妹と共に婚姻関係となる」というものでな。その助けた子が、まさかの五人姉妹で.......」

 

賢介は頭を抱えた。昔からコイツは、言うなればトラブルメーカーであった。大体何かしらの事件が起きれば、基本渦中にいる。今回は多分、これまでの中でもトップクラスの事件だろう。

 

「お前、何?リアル・ハーレムを築くの?」

 

「マジでそんなつもりないんだけど、なんかな」

 

「はぁ〜.......」

 

「取り敢えず、ヘリポートに呼び出すわ」

 

賢介は考えるのが馬鹿らしくなったのか、片手をフリフリして答える。そのまま2人はヘリポートへと上がったのだが、どうやら他にもお客さんがいたらしい。

 

「おじちゃーん!」

 

「浩三おじさんだ!」

 

「おじさん言うな!まだお兄さんだっての」

 

そう言って寄ってきた2人の子供。賢介の息子、和樹と娘の成海である。特段紹介することも無いので、他キャラのような詳しい解説はしないが、簡単に紹介しておこう。

和樹は幼稚園の年長で、神谷に憧れて剣術を見よう見まねでやっている。いつかは神谷一族にのみ伝わる剣術を学びたいらしく、将来の夢は『浩三おじさん二号になる事』らしい。

成海は幼稚園の年少で、おままごとが大好き。将来の夢はプリキュアらしく、その修行の一環で何故かママと料理をしているらしい。プリキュアとの因果関係は不明である。

 

「おじちゃんおじちゃん!あのねあのね、成海ね、先生に褒められたの!おままごとが上手上手ーって!すごい??」

 

「そっか。なら演技の勉強すれば、もっと上手になるんじゃね?」

 

「わかったー!」

 

因みに今更だが、二人とも結構なおじさんっ子である。特に和樹は賢介と同等か、もしかしたらそれ以上に懐いている。

 

「おじさん!僕ね、新しい剣の技考えた!」

 

「お、やってみせろ」

 

「うん!」

 

そう言って和樹はヘリから木刀を持ってくると、意外としっかりとしたフォームで構えた。左手に持つ木刀は上下を逆さまにして、刃が下に来るように構えている。

 

「フッ!」

 

まず左の木刀を前に出して、勢いよく後ろに下げる。それと同時に右手の木刀で相手を斬った。

 

「鎌掛けって名付けた」

 

「説明してみろ」

 

「今のならまず相手の左肩に刀の切先を引っ掛けて、勢いよくこっちに引き寄せる。で、右手の刀で左脇腹を斬り裂く!これが鎌掛け!!」

 

「発想は面白いが、多分引っ掛けるのは無理だぞ。それだと唯でさえリーチの短い刀が、さらに短くなっちまう。それに一撃を見舞う前に、現代なら銃弾の雨を浴びて終わりだ。その技を使うなら、そうだな。貸してみろ」

 

取り敢えず木刀を受け取ったが、どうしたものか。少し頭の中でイメージする。今の技と実際の戦闘を合わせて、より合理的な技に昇華させるのだが難しい。だが三十秒もすれば、アイデアが浮かんできた。

 

「まず刀は、そのまま構える。そして想定は乱戦で、相手との距離が短い時だな。姿勢を低くして懐に入り込み、刀を背中に引っ掛けると同時に力一杯引き寄せて、もう片方で斬り捨てる。

引き寄せる事で生まれるこっちへ向かってくる運動エネルギーに、切る動作の運動エネルギーが合わされば威力も上がるだろうな」

 

「やっぱりおじさん凄いや!」

 

「そりゃまあ、現代戦を刀で戦う現役で頭のおかしいバーサーカー侍だもの」

 

和樹の相手をしていると、エルフ五等分の花嫁が上がってきた。メールで先に状況は伝えてあるので、賢介と五人は互いに挨拶を交わしてヘリに乗り込む。

 

「ってか兄貴、いつの間にヘリの免許取ったんだ?」

 

「昨日取った」

 

「.......」

 

「無言で降りようとするんじゃない」

 

昨日取ったというのに、乗ってるのがAS 332 シュペルピューマなのが怖い。普通に墜落させそうである。

 

「頼むから堕とさんでくれよ?」

 

「大丈夫。死ぬ時は一緒だ」

 

「いやそういう問題じゃないのよ」

 

どうにか墜落する事なく、目的地の神谷本邸に到着する。ヘリポートを完備したこの屋敷は、地上150階建ての屋敷というか高層ビルである。イメージとしてはサイバーパンク2077のアラサカタワー。

 

 

「おー、よく帰ってきたな!賢介に浩三。それにカズに成ちゃん!」

 

そう言って出迎えに来たのは、和服を着て眼鏡をかけた中年男性と同じく和服の30代くらいの女性であった。この二人こそ、賢介と神谷の両親の神谷英治と神谷智子である。

 

神谷 英治(かみや えいじ)

年齢 65歳

役職 神谷グループ*2二代目総帥

神谷家の家長にして、世界的大企業の神谷グループ総帥。見た目は40代くらいに見えるが実年齢は65であり、身体もガタが来ている。最近の悩みは趣味のトライアスロンをやるのがキツくなり始めた事。仕事にはストイックだが、基本は自由人。

父は軍人であったが祖父の思想に共感した事で神谷グループを継ぎ、規模を一気に拡大させた伝説の社長でもある。因みに祖父の思想というのが『商いや産業でも日本は護れる』という物。

 

神谷 智子(かみや ともこ)

年齢 58歳

赤子の頃から子役として活動し、トップ女優としてハリウッドでも活躍していた女性。22歳で英治と電撃結婚して引退し、こちらも色んな意味で伝説を残した。現在は英治の秘書として働いているが、街に出ると高確率でテレビのインタビューや取材にかち合う謎の体質を持っており、定期的にテレビに出ている。

性格は滅茶苦茶優しく、料理もできて、ピアノも弾けるし絵も描ける完璧女性なのだが、偶にミスを犯す。そしてそのミスがデカい上に、致命的な物が多い。例えばキャンプに行ってカレーを作るのに米とルーを忘れたりとか、海外旅行に行くのにパスポートを忘れてくるとか色々である。

 

「ただいま、父さん。母さん」

 

「また見ないウチに老け込んだかと思ってたんだが、なんでそんな若いんだよ」

 

「フッ、それはな」

 

「愛の力よコウくん」

 

「あー、はいはい。ラブラブなのは良いから」

 

夫婦仲は新婚のノリのまま今も続いているという、中々に珍しいタイプである。それを見せられ続けたせいか、賢介も神谷も6歳ぐらいで見飽きてしまい、イチャイチャし始めたらそっとフェードアウトするようになった。因みに無理な時は、空気を変えてイチャイチャ空気を破壊する。

 

「あ、そうだ!コウくんのお見合い相手なんだけど、写真が一杯あるのよ!!さっ、早く早く!」

 

「あー、それ全部廃棄しといて。俺、一応の婚約者的な奴がいるから」

 

「「えっ?」」

 

突拍子のない発言に、流石の二人も固まった。取り敢えず賢介同様に、全部説明したら智子のテンションがバグってしまった。

 

「そういう事なら五人ともこっちに来て。面白い物見せてあげるわ」

 

そう言って五人を何処かに連行していき、ヘリポートは男共と子供だけになってしまった。

 

「どうするよ親父?」

 

「取り敢えず、リビング行くか」

 

「爺ちゃん居るんでしょ?」

 

「居るとも」

 

残りの五人もリビングへと歩き出す。リビングに入ると、一人の老人が昼間なのに酒を呑みながらテレビを見ていた。この呑兵衛老人こそ、神谷家の長老、神谷実である。

 

神谷 実(かみや みのる)

年齢 82歳

役職 元・大日本皇国海軍大将

この世に神谷浩三という化け物を産み出した張本人。神谷は幼少期に才能を見出されて、以降はずっと剣術、格闘、サバイバル術、射撃、戦略、学問と様々な事を叩き込まれた。性格は神谷以上の滅茶苦茶な奴で、何にも縛られない『超スーパーウルトラフラダーマヒューマン』を自称している。

好物は酒とつまみで、隠居してから一層酒を呑むようになった。一応医者にも止められているのだが、堂々と診察室で酒盛りを始めた事で黙らせたりと、もう破天荒どころか老害に片足を突っ込んでいる。だが他の老害と違うのは、何故か不快感が無いことである。迷惑行為を仕出かしても、周りの空気を悪くさせるどころか笑顔にさせる才能を持つ。

 

「おー、賢介に浩三!よくヒック、帰ってきたなぁ」

 

「おいおい爺ちゃん、昼間から呑むんじゃねーよ。早死にするぞ」

 

「医者からも止められてるんだろ?やめときなって」

 

「はん!どうせ老い先短いし、もうワシの役目も終わりじゃ。神谷家の秘伝の剣技も伝えたし、孫の結婚式も見れて、ひ孫にも敢えて、もういつ死んでも問題ないわい。というか、ワシは100歳まで生きるぞ!」

 

このジジイは本当に100歳とかまで普通に生きかねない上に、何なら戦車の履帯に轢かれようが地雷踏み抜こうが、余裕で生き残りそうまである。

 

「はいはい。呑兵衛死に損ないさん、ひ孫達とも遊んでねー」

 

「親父に対して呑兵衛死に損ないはないじゃろ!?!?」

 

「(兄貴、間違いじゃないよな?)」

「(確かに)」

 

因みに家では完全なる弄られキャラである。隠居老人とか、元海軍大将とかの威厳はZERO。一方その頃、エルフ五等分の花嫁は奥の部屋で神谷の写真集を見せられていた。

 

「えぇ!?これが神谷様なんですか!?!?!?」

 

「そうよー。これがコウくんなの。今とは全然違うでしょ?」

 

五人に渡した写真には、三歳か四歳くらいの少年が写っていた。神谷の子供の頃というのだが、どう見ても今の神谷とは似ても似つかない。何せ顔が今のワイルド系の顔ではなく、中性的な見た目なのだ。正直、全然似てない。何がどうしたら、ワイルド系に進化するのかが謎といえるレベル。因みに昔、ふざけて将来の顔がわかるアプリで将来の顔を見てみたが、中性的な美青年の判定が出ているので突然変異とも言うべき顔の変化なのだ。

 

「でもね、この頃から破天荒っぷりは折り紙つきだったの。これを見て」

 

今度はタブレットで動画投稿サイトに上がってる、古いバラエティ番組を見せてきた。題名は『もしも初めてのお使いで、謎々があったら』というもの。

企画の内容を説明すると、初めてのお使いで橋を渡らせる。この橋に一休さんに出てくる「このはしを、わたってはいけません」という立札を立てて子供達の反応を見るというもの。この企画に賢介と神谷のコンビは参加していたのだ。

 

『さぁ、次の子は福岡県に住む兄の賢介くんと、弟の浩三くんだ。二人はどうやって突破するのかな?』

 

「にいちゃん、なんかあるよ?」

 

「えっと、「このはしを、わたってはいけません」だって。こまったなぁ」

 

他の子供たちはその場でグルグル回ったりとか、固まったりして色々考えて渡ったり帰ったりした。だがこの二人の場合、渡ったは渡ったのだがやり方が今までで一番ぶっ飛んでいた。

 

「にいちゃんにいちゃん!てつだって」

 

「どうするの?」

 

「そっちもって。いくよ」

 

そう言って立札を持つ二人。すると神谷の「せーの!」の掛け声でなんと……

 

ボチャーン

 

立札を下の川に投棄しやがったのである。これにはスタッフは大慌てで、ゲストやMCのタレントや芸人は大爆笑であった。

 

『なんと立札を川に捨てちゃいましたよ!?しかし!この後、さらに驚きの展開が!!』

 

「にいちゃん、ねんにはねんをいれようよ。ぼくがいくから、にいちゃんはおさえてて」

 

「わかった!しなないでね」

 

今度は近くにあった虎ロープを賢介が神谷の体に巻き付ける。そしてロープを賢介が握り、神谷は橋の対岸まで慎重に歩き出す。勿論なにもなく、無事渡り切りお使いも済ませて帰ってきた。智子から橋の件を聞かれたが、その答えもぶっ飛んでいた。

 

「あのねあのね、じいじがね!もししょうがいをみつけたら、けしちゃえばいいって言ってたの!だからかんばんをなくせば、もんだいないんだよ!」

 

「それにね、とおっちゃだめなら、コーンとかロープはるとか、あとはパトカーのピカピカ(赤色灯)をおけばいいのにね、それがないからねわたってもいいの」

 

神谷の爺ちゃんの教えと、賢介の常識的な意見に、完全に論破された智子。これにはスタジオも再び大爆笑だった。ちなみにこれは、賢介が6歳、神谷が3歳での事である。

 

「なんというか、神谷さんらしいね」

 

「この頃から、豪胆っぷりは健在だったのか.......」

 

この後、実にこの事を話したのだが、返ってきた答えが「やりおるわい。さすが我が孫達!!ガハハハ!」だった。言うまでもないが、神谷のドキュメンタリーとか人物解説動画では大抵使われるほどの、超有名なエピソードである。

 

「後はね、これも面白いわよ」

 

そう言って今度は、何故か警察に手錠をかけられて連行されてる時の写真であった。この写真は高校二年生で起こした、神谷が破天荒伝説の始まりとも言える話で、これも今や伝説となったぶっ飛んだ話である。

 

「これはね、コウくんが高校二年生の時の事件の写真よ。当時、コウくんの通っていた高校の生徒がね、リンチとかカツアゲにあっていたの。ある時、友達も被害にあってね。それを聞いたコウくんは、模造刀とかガスガンとかを持って、バイクに乗って何故か知ってた犯人グループのアジトに一人で乗り込んだのよ」

 

「そんな事したんですか!?」

 

「そうよ。アジトのガラスをバイクで突き破って、中で大暴れして。一応相手も後遺症が残らない程度にボコボコにして、しっかり全員病院送りにしたわね。そしたらグループのリーダーが通報しちゃって、警察に捕まったのよ。まあすぐにボコボコにしたのが一連の犯人だった上に、全員改造エアガンとかナイフとかで武装してたらしくて、どうにか不起訴のお咎めなしで収まったわね」

 

流石の五人も固まった。まさかこんな事を仕出かしていたとは思わなかったらしい。当時は学校でも「真面目で秀才のミステリアス優等生」として、生徒にも教師にも通っていたので今回の一件は『眠れる獅子の大暴れ』という名で伝説化した。

因みに何故、犯人グループを知っていたかと言うと、当時の神谷は他校の不良に知り合いが沢山居たため、その情報網でアジトの情報をゲットしたのだ。それからこれは誰も知らない事なのだが、改造エアガンとかナイフとかで武装していたのはほんの一部だけであり、武装してない者にはボゴボコにした後、こっそり忍ばせておいたり握らせたり近くに落としておいたりしたのである。これも作戦の内で、曰く「こうすりゃ、向こうが武装していた事で話ができる。実際幹部クラスは武装してた訳だし、リンチの時とかカツアゲの時もチラつかせてたから、否定しても意味をなさない。それに罪を犯した不良達と、品行方正で成績優秀な名家生まれの俺となら、どっちの証言を信じるかな?」らしい。

 

「コイツらにいらんもん見せやがって。何してくれちゃってんだよ」

 

後ろを振り向くと、神谷が部屋の扉の前で頭を抱えて「あー、めんどくせー」と言わんばかりの態度で立っていた。

 

「あらぁ、いいじゃない。コウくん伝説は、お嫁さんにも知る権利はあるでしょ?」

 

「お袋からしたら可愛い息子の話なのかもしれねぇが、当事者の俺としちゃ軽く黒歴史化してるのもあるんだぞ」

 

「減るもんじゃないでしょ?」

 

「恥ずかしさは増えるんだわ!」

 

その後、少し言い合うと神谷が折れてリビングへと戻っていった。その日はそのまま晩御飯までご馳走になって、そこでエルフ五等分の花嫁が本当に神谷の花嫁になる感じで話が進んでいて、大急ぎで止めたりとかはあったが、一応終始穏やかに終わった。

そして翌日、神谷とエルフ五等分の花嫁の六人の姿は福岡市から少し離れた山中にあった。

 

 

「神谷殿、ここは一体なんなんだ?」

 

「ここは旧神谷本邸だ。かつて神谷家が出来た時からある、言うなれば神谷家の聖地だな」

 

そこにあったのは、そこだけ時間軸が違うような錯覚に陥るくらい古い屋敷であった。見るからに古いのだが、神谷本邸に勝るとも劣らない位立派な建物であり、エルフ五等分の花嫁達は遺跡か何かに似た雰囲気を感じていた。

 

「ねぇ、ずっと気になってたんだけど、アンタらの一族は何者な訳よ?」

 

「いい機会だ。簡単に、ウチの家系について話しておくか」

 

神谷は屋敷へと入っていきながら、神谷家の起源について話し始めた。

 

「俺の一族である神谷家が興ったとされるのは、今から遡る事、約1700年前。古墳時代の豪族がルーツとされてる。まあ古すぎて実際はよく分かってないんだが、ウチにある古文書とかによるとそうらしい。実際遺跡から発掘された遺物とかに、偶にウチの家系らしき存在が見え隠れしているから、案外本当かもしれないな」

 

「あの、古墳時代とは?」

 

「その頃の歴史区分の話だ。当時は権力者の力の象徴として古墳と呼ばれる墓を作っていたからそう言われてる。平たく言うと、まだ日本が日本という国になってすらおらず、そっちの部族にも劣る文明レベルだったと考えてほしい。

話を戻そう。そこから何だかんだで貴族になったらしいが、奈良時代の末期になると、健児(こんでい)と呼ばれる当時の兵士を輩出していた。平安末期になると源氏側の武士として仕え始めて、そこからずっと武士として活躍していたらしい。

室町時代中期には、独立武装国家的なのを作って傭兵団として戦国時代に突入していった。織田家、豊臣家、徳川家といった天下人は勿論、時には武田家や上杉家といった東日本の武士にも雇われてたらしい。そして関ヶ原では西軍として参戦して、江戸時代では都の警備の他、教育者として活動し始めて一旦歴史の表舞台から消えた」

 

この時点で言ってることの大半は理解できてないエルフ五等分の花嫁だったが、一つ分かったのは神谷家が日本の歴史を動かしていた存在であったという事である。

 

「幕末になると薩摩藩と共闘して、攘夷志士の中核を担う一勢力として動き出す。明治政府成立後はいち早く海外に飛び出して、明治政府の顧問として活動しつつ、国内の反乱や混乱を鎮めるためにあちこちに飛び回り、軍の設立にも大きく関わったらしい。以来、俺に至るまで基本的に男は軍に入って、重要ポストに着くようになった。あ、勿論重要ポストには実力で成り上がってるからな?」

 

「ねぇ、神谷さん。時代区分とかが分かんないから全部は理解してないんだけどさ、何でいきなりここに来たの?」

 

「あー、それは.......」

 

正直言っていいものか迷う。何せ「幽霊に来るような言われた」とは言えないし、何より結構部屋とか廊下が暗くて雰囲気あるので話しづらい。だが、多分大丈夫だろう。無害だろうと踏んで、この間の一件を話し始めた。

 

「.......この間のディズニーで、見ちまったんだよ。幽霊」

 

無言で逃げようとする五人を全力で止めて落ち着かせて、経緯を全部話した。ホーンテッドマンションで刀を二つ携えた、旧海軍の軍服を着た幽霊を見たこと。その幽霊がその日の夢に出てきて、この家の蔵を指し示したこと。その蔵の中を確かめるためにきたこと。そして今は、その鍵を探索してること。

全部話し終える頃には、とりあえずは落ち着いてくれた。

 

「それで、その鍵は何処に?」

 

「確か前はこの部屋にあった筈なんだけどな」

 

「前、ですか?」

 

「あぁ。ガキの頃、ここで爺ちゃんと住んでたんだよ。で、剣とか格闘とか戦関連の事を叩き込まれた」

 

これは神谷家の伝統で、『養将』若しくは『養兵』と呼ばれる物である。特に戦に向いている者に特別な訓練を積ませて、一流の将軍や兵士にする物。神谷は記録上は神谷一族の中でもトップクラスの強さを誇るとされている人間で、幼少期よりここで実と暮らしていた。別に賢介や両親と会えなかった訳ではなく普通に会えていたし、特殊であったが普通の暮らしをしていた。

 

「あ!もしかして、これじゃないですか?」

 

ヘルミーナが棚から古びた鍵を見つけ出し、それを神谷に手渡した。多分構造的に、この鍵で間違いないだろう。

 

「多分これだな。よし、蔵に行ってみるか」

 

蔵の前でさっきの鍵をでかい南京錠に挿してみると、すんなり入り「ゴキン」という鈍重い音と共に南京錠が外れた。

 

「多分埃凄いから、覚悟しろよ?じゃあ、開けるぞ!」

 

重苦しい音共に扉が開いたのだが、まず六人を凄い量の埃が襲いかかった。全員咳き込み、一時撤退。マスクを着けて行くも、それでも無理なのでまた撤退。その後もスカーフとか三枚重ねとか試したがどれもイマイチだったので、保険で持ってきてた防塵マスクを装着して中に入った。

 

「く、暗いですね」

 

「なんだかんだで、数百年前の物だからな。懐中電灯を使えよ?」

 

神谷としては、今回の探索は結構嬉しい事だった。何せ子供の頃は大人も危ないので立ち入り出来ないし、何より鍵が無くなっていて鍵が開かな…ん?

 

「あれ.......。ちょっとおかしいぞ?」

 

「どうしたのよ」

 

「ミーナの見つけた鍵、あれおかしい」

 

「は?」

 

エリスが「アンタ、バカなんじゃないの?」というすんごい目で見てくるが、本当におかしいのだ。何せこの蔵は『開かずの蔵』とか言われるレベルで開けておらず、その原因は鍵の紛失による物だったのだ。

 

「この蔵は鍵を失くしたらしくて、爺ちゃんが記憶が曖昧なぐらいの子供の頃から開いてない」

 

「でも、鍵は私があそこで見つけましたし、あいてるじゃないですか?」

 

「それもおかしいんだよ。あの棚、いつも爺ちゃんが車の鍵とかを置いてて、使用頻度高い場所だったんだ。なのに俺含めて、誰も気付かなかったのは明らかにおかしい」

 

「まさか、幽霊じゃ.......」

 

ミーシャの一言で、全員がサーッと顔が青くなった。心無しか、温度も3℃くらい一気に下がった気がする。

 

「と、取り敢えずアレだ!一旦出よu」

 

出ようと言った瞬間、神谷はその言葉を引っ込めた。例の幽霊が蔵の扉付近に立って、首を横に振っていたのだ。

 

「おいアンタ!一体俺に何の用があるんだよ!!!」

 

いきなり叫び出した神谷に五人は驚き、そして神谷が叫ぶ方を見た。五人の視界には誰もおらず、鼠とかの類もいない。だがそれで、五人は確信した。今神谷には、幽霊が見えているのだと。

一方の神谷は、意識を何処かに飛ばされていた。いや。正確には、別の次元と言ったほうがいいのかもしれない。幽霊が刀を抜いて地面に刺すと、五人の体がピタリと止まった。というより、彫刻のように動かなくなった。でも自分は動ける。アニメとか漫画で、異空間に飛ばされた時のソレである。

 

「アンタ、何者だ」

 

「まずは驚かせた事を謝罪させてくれ、我が子孫よ」

 

「は?わ、我が子孫?」

 

「ここはあの世とこの世の狭間。互いの世界に住まう魂が唯一、声を交わし、互いに触れられる唯一の空間だ」

 

ここで神谷は思い出した。昔、この旧神谷本邸で見た写真に、この幽霊と瓜二つの物があった事を。

 

「どうやら、思い出したようだな。私の名は神谷倉吉。お前の高祖父に当たる。お前にこうして合間見えたのは、この刀を受け継がせるためだ」

 

「ここで渡して、現世で使えるのかよヒイヒイ爺ちゃん」

 

「無論、無理だ。授けると言っても、渡せないからな。私が今から見せる場所に置いてあるから、それを持っていくのだ。付いてこい」

 

そう言って倉吉は神谷を連れて、蔵の奥へと入っていく。道中で、なぜ刀を授けるのかを教えてくれた。

 

「我が神谷家の一部の人間の歴史は、常に戦と共にある。お前はその血を色濃く受け継いでいる。自分でもわかる筈だ。まるで本能や意識の奥底、根底の部分にある闘争心や戦闘する上での動きを記した、言うなれば書物が存在する事が」

 

「あぁ」

 

「それは私を含める、神谷家の中でも選ばれし者が持つ才能であり、一種の盟約のようなものだ。その血は常に自由であり、非道であり、冷酷であり、優しくもある。その血は飛び飛びだが脈々と受け継がれてきて、今はお前の中にその血が流れている。この刀は、我等の血の初まりから途絶え滅びるその時まで、常に共にある。

今この国は、予想もできない混乱の中にある。その混乱を打ち破り、日ノ本を護る強き相棒となるだろう。さぁ、ここだ」

 

そう言って指を差された所には、古びた木箱が置いてあった。一見普通の箱だが、その箱を前にすると血が沸き立つのが分かる。まるで箱が自分と引き合ったような、そんな気持ちになった。

 

「この刀はさっきも言った通り、初めから終わりまで共にある。つまり我等の前にいた血を引く先祖たちも握ってきたが故、刀には記憶が染み付いている。使えば使うほど、それがわかってくる筈だ。さぁ、我等が故郷、日本を頼むぞ、我が子孫よ。いや、我が修羅家の同胞、神谷浩三修羅(かみやのこうぞうしゅら)よ」

 

「しゅ、修羅?」

 

「神谷家の中でも、特に武勇に優れる者は神谷家とは別の扱いを受けていた。いわば分家のような物だな。これは戸籍としてではなく、一種の称号だが、その事を修羅と呼ぶ。お前には、この名を名乗る資格がある。

この血によって彩られた歴史は、常にこの国の糧となり、守護者となり、この世から神谷家が消え去るその瞬間まで描かれ続ける。精々、その彩りに華を添えろ」

 

「この身に流れる血は全て国家の為、仲間の為、友達の為、家族の為に使うさ。もしこれからも戦乱の中をこの国が突き進むなら、これまでの歴史を塗り替えるくらいに暴れてやるとも」

 

そう言うと倉吉は誇らしげに微笑み、そのまま一瞬で消えた。すると神谷の意識も身体へと戻り、時間が進み出した。

 

「そうか。戻れたな」

 

そう呟くと、五人を置いてさっきの木箱の所に向かう。さっきあった場所に寸分違わず、あの木箱が置いてあった。箱を開けると中には、倉吉の持つ二振りの太刀が納められていて、その横には白黒の倉吉の写真と手紙が入っていた。

 

「神谷様?」

 

「.......幽霊の正体だが、どうやら俺のヒイヒイ爺さんだったらしい。コイツを俺に渡したかったんだと」

 

五人は信じられないといった顔で神谷を見ているが、実際になんか起きちゃってるので嘘は言ってない。さっき話していた事を話すも、やはり殆ど信じてはくれなかった。

刀は引き継いだし、外も暗くなり始めたので旧神谷本邸を後にして神谷邸へと戻る。その道中に倉吉の手紙を読んだが、この刀について書いてあった。つまり、説明書といった所だろう。何方も作られたのは平安時代後期で、それ以来、倉吉が言うところの『血の盟約』を持つ者が受け継いだ物らしい。銘はそれぞれ『天夜叉神断丸(てんやしゃかみたちまる)』と『獄焔鬼煌(ごくえんきこう)』というらしい。

 

「天夜叉神断丸と獄焔鬼煌ねぇ。城の城壁やら戦車の装甲板やら大和に使われたバイタルパートの装甲を斬ったって、平安時代の鍛冶スキルはどうなってんだよ」

 

新たな力を得た神谷は、翌日から素振りをして刀の慣らしに入った。だが慣らしで一回振った瞬間に、自分に合ってる事が分かった。これまで使っていた刀よりも、遥かに使い易く手に馴染み、自分の思い通りに振り回せる。

この先、神谷はこの刀を持って数々の伝説を打ち立てるのだが、それはまだ知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

*1
所謂スーパーゼネコンの一つであり、大体なんでも建てる建設会社。これまで建てたのは家やビルは勿論の事、博物館、美術館、図書館、公民館、警察署、消防署、役所の庁舎、駐屯地や地下ドックなんかの軍事施設、高速、トンネルの掘削、鉄道の敷設、駅舎、空港、ディズニーを筆頭としたテーマパーク、東京スカイツリー、神社仏閣等の歴史的建造物etc。更には国際宇宙ステーションの建造にも協力しており、これまで建てた事のない建造物を探すのが難しい。

*2
旧世界に於いては世界的大企業の一つに数えられていた、日本を代表する企業。元は神谷組からスタートしており、現在は建設の他、金融、ホテルやテーマパークなどの娯楽施設の経営、病院の経営から医薬品や医療機器の開発、造船、鉄鋼業、大学の経営、衣服の製造と販売、第一次産業の促進と保護と卸売り、宇宙産業、ICT関連産業、芸能や出版といったメディア関連、更には兵器開発まで。とにかく幅広くやっている何でも出来る企業

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