———夢を見た。遠い、遠い昔の。まだ純粋で世界が綺麗に映ってて、何にでもなれると思ってた少年時代の。
『おーい、こっちだ!早く早く!!』
『待ってくれよ!』
『俺達はお前みたいな体力バカじゃ無いんだよ!!もうちょい俺達を気遣え!!!!』
———3人の少年が走ってきた。俺は一人、この少年達が目的地にしている丘の上に立っている。
『ついたー!』
『スゲー!』
『街全部見えるぞ!!』
———少年達は街を見下ろしている。しばらくすると、1人が三枚の小皿とペットボトルの水を出し始めた。あの儀式だ。
『準備できたぞ!』
『それじゃぁ、俺達はここに!』
『日本を護り、より良くする為に!』
『この命を捧げる事を!』
『『『ここに誓う!!!!』』』
3人の少年達が盃に見立てた小皿に、酒に見立てた水を注いで掲げた。チンという音共に、3人は一気にそれを飲み干す。
———あぁ、そうだ。この日からだ。俺達の行き着く先と、その路が決まったのは。この日の誓いがあったから、きっと今があるんだろうな。俺達はこの誓いを果たせてるのかな?
2052年5月13日 神谷邸 自室
ピリリリリ ピリリリリ ピリリリリ
「ん.......。誰だよまったく.......。はい、もしもし?」
『司令、お休み中に申し訳ありません。至急、艦にお戻りください』
「今日と明日は非番だよー。誰が戻るか」
『ふざけてる場合じゃないですよ!!台湾、尖閣、与那国、竹島に中国、韓国、ロシアが軍を展開したんですよ!!!!』
この一言で、神谷の半分寝ていた意識は完全に覚醒した。そんな国防の危機的状況に、ウカウカ寝てられない。すぐに頭をフル回転させて、情報の整理を行う。
「状況は!?!?」
『台湾沿岸部は完全に封鎖され、既に上陸されています。与那国はレーダーサイトが破壊され、瞬く間に制圧されました。守備隊と住民は捕虜になったそうです。尖閣は資源採掘プラットフォームの全てと、本島の管理施設が占領されました。竹島にも軍が上陸しており、前線基地にする物と思われます』
「わかった。すぐに行く」
すぐに軍服に着替え、早稲に愛車を回してもらい、自分の指揮する艦隊のある横須賀へと愛車を走らせた。道中、あの二人へも連絡し、今後の対応を考えた。
『政府としてはまだ動くつもりはないらしい。というか動けない。何せ情報が殆ど入ってきてないし、声明も出てないからな』
「とすると、お前はどう考える?」
『今の総理は弱腰だからなぁ。どうにか発破を掛けるが、それでも最悪命令が出るのは夕方から夜になる可能性もある。なるべく、今日中に仕掛けられる様に努力はする』
「頼んだ」
首脳部は官房長官を務める一色がいるから大丈夫だろう。今度はもう一人の同志、川山に連絡して外交官としての見解を聞いておきたい。
『お前から電話が来たって事は、例の中韓露の侵攻だな?』
「あぁ。声明が出てないのは聞いた」
『恐らく奴さん達は、自国の領土内での軍事演習とでも考えてるんだろう。だから宣戦布告を出してない。だが多分、暫くすれば声明も出る筈だ。まあ向こうもあからさまの時間稼ぎをしてきたりする可能性は、いや。絶対やるな。
いずれにしろ、この一件は最悪全面戦争に突入する案件だ。軍の力を借りる外交になる。その時は、頼む』
「任せろ。あの日の誓い、忘れちゃいない」
数十分後 横須賀鎮守府 極秘地下ドック
「お疲れ様です、司令」
「あぁ。現状は?」
「今は半舷上陸中の人間を招集しています。出撃に備え、各部の点検と弾薬の搬入作業も進めています」
部下の参謀が今の状況を事細かに教えてくれた。喋りながら進む事数分。二人の目の前には世界最大クラスの艦艇にして、最大最強の戦艦である超戦艦『熱田』の姿があった。その両サイドには要塞超空母の『赤城』と『加賀』の姿もある。
この頃、熱田型と赤城型は秘匿兵器として地下ドックにて厳重に管理されていたのだ。各種戦艦も同様に厳重に管理されており、記念艦として存在する戦艦『大和』と『武蔵』は、それぞれ生まれ故郷の呉と佐世保にその姿を晒している。普段は見学可能だが秘密裏に改造されており、有事の際は旧版の見た目を脱ぎ捨てて、現代艦仕様にトランスフォームする仕掛けがある。
特殊戦術打撃隊の殆どの兵器も同じように秘匿扱いであり、その力の一端は隠されている。これらの政策は皇国が建国されてすぐの頃に決まった方針であり、国の有事の際の切り札を多く保有する様になったのだ。
「コイツらが日の目を見ずに生涯を終える事こそが、この国にとっては最良の事だ。なのに何故だろうな、今まさに使われようとしていることに、歓喜している自分がいる」
「私も、同じです。きっとこの艦に乗り込む乗員達も、全く同じ思いでしょう」
二人は目の前に聳え立つ鋼鉄の海の大要塞を見上げながら、そう話していた。その瞬間、神谷には目の前の鋼鉄の塊さがないはずの海の猛者から、「早く俺を暴れさせろ」という風に聞こえたという。
「さぁ、戦争の準備を始めよう。俺達は常に勝ち続けてきた。元寇、日清、日露、日中。アイツらはその事を忘れてしまっている。どう足掻こうとも、俺達には勝てない。それを思い出させてやる」
「そう言えばそうでしたね。アイツらは、一度も我々に勝てていない」
「そうだとも。今回も勝つ」
世界最強の戦力がそう闘志を燃やしていた頃、総理官邸では一色が総理の説得に動いていた。
「総理。今回の一件は、明らかなる我々への挑戦です!これを無視する事は、国を滅ぼしますぞ!!」
「そうは言うけどねぇ。そもそも、まだ声明は出てないんでしょ?なら対策の立てようが無いじゃないか」
(こんの弱腰オヤジが!!!!!)
現在の総理、玉野は悪い意味の伝説を数々残してきた人間である。小泉語録の様な迷発言は数知れず、何度かスキャンダルも握られた。そして彼自身、最近になって中国派の議員との繋がりも示唆されている。
「ともかく僕は、戦争なんて野蛮な事はしたくないんだ。場合によっては、あっちの要求を全面的に飲む事も考えている。勿論、まだそんなのは出てないから分からないけどね」
「あ、アンタ仮にも総理でしょう!?!?色々とすべき事があるでしょうが!!!!!」
「陛下はまだこの段階では出て来られない。今の軍の指揮権は僕にある。それを忘れないでもらおうか?全軍に下令。指示あるまで、待機せよ」
本来であれば統合軍におけるデフコンレベルは3の即時出動待機、なんなら4の臨戦体制の指示が出るのが定石となる。この侵攻が例え、三国の一部軍人の暴発によるテロ行為、つまり反乱軍の攻撃だったとしても、今日本固有の領土が占領されてるのには変わりない。それがセオリーである筈なのに、それをしない。これは明らかなる、国民への裏切りと言えるだろう。
「総理、今すぐにデフコンレベルを上げてください!!」
防衛大臣や一色らはそう叫ぶが、総理とその周りの派閥の人間は首を縦に振らない。一方その頃、中韓露側は今回の事態に関して連名で声明を発表した。
『魚釣島は中国、独島は韓国の固有領土であり、固有領土を奪還すべく行動した。そしてロシアは今回の件に、全面的に協力する』
要約するとこう言う事を言ってきたのだ。韓国は良しとして、中国とロシアという超大国二つに睨まれる形となった日本に、各国は固唾を飲んでそれを見守っていた。
だが特に動く事はなく、時間は刻々と過ぎていく。気付けばもう、翌朝になっていた。流石にこれには三英傑も黙っていられず、実力行使に出た。
翌日 皇居
「陛下、突然の訪問、誠に申し訳ありません」
「いえいえ。貴方がここまでするとは、何か良からぬ事が起きたのですね?」
本来であれば規則違反ではあるが、急きょ神谷は神谷家のコネを使って無理矢理、天皇陛下との面談を申し込んだ。
「えぇ。これを見てください」
「これは?」
「今の内閣危機管理センターでの様子です」
これまでの議事録のコピーを一色に頼んで送ってもらったのだ。これを前にすれば、陛下を引っ張って来られる。平時においては過去の大戦の反省もあり、憲法や法律上、天皇陛下はあくまで形式的な指揮権しか有していない。
だが、例外がある。今回の様に全軍の指揮権を持つ総理が職務に不適切と判断された場合や、何らかの形で公務実行が不可能な場合、例えば在任中に亡くなったり、行方不明になったり、倒れた場合、内閣からの要請があった場合は、旧憲法における天皇大権の発動が認められているのだ。
「これを私に見せたということは、私に大権を発動して欲しい、という事ですね?」
「はい。今回の一件、流石に見逃すことは出来ません。勿論外交ルートからの交渉を行うとの話は出ていますので、平和的に解決できるなら万々歳。ですが現状は、実力行使が最適解だと考えています」
「.......いいでしょう。天皇大権発動の準備に入ります。では神谷司令。統帥権に於ける指揮権を持って命じます。直ちに艦隊に帰還、出撃準備に入りなさい」
「アイ・サー!!」
この後の天皇の天皇大権発動までは、とてもすんなりだった。まず一色と川山に天皇大権発動の言質を取った事を知らせる符牒である『八咫烏来る』というのを、ネカフェのPCから送信。すぐに二人はそれに合わせた行動に移ってもらう。一色は自分の派閥閣僚と総理に不満を持つ閣僚と共に統帥権発動への準備を固めて貰い、川山は武力行使を背景にした外交への切り替え準備に入った。
昼過ぎには正式に、天皇の勅命として玉野の総理大臣の任を解き、その地位を剥奪。今後は事態解決までの間、天皇大権を発動し天皇が全ての決定権を握る事が正式に宣言された。
「皆さん、今日本は危機的状況にあります。今やれる事を、全力でやりましょう。まずは防衛大臣」
「ハッ!」
「何か具体策はありますか?」
「本職としましては、国家防衛策第666号の発動を進言致します」
この『国家防衛策第666号』とは、現在秘匿兵器となっている戦艦群を主軸とした主力艦隊と特殊戦術打撃隊の兵器群を大々的に使う作戦であり、今後の抑止効果も期待できる物である。
「わかりました。承認いたします。官房長官、何よりまずは臣民の安全確保に全力を挙げてください」
「お任せを」
「全軍に下令。国家防衛策第666号を発動すると同時に、レベル0を発令、、当該部隊への出撃を命じます。他部隊に関しても臨戦体制のまま待機してください」
この命令は皇国中の部隊へと駆け巡り、出撃準備に入った。まず一番に出撃したのは、神谷の指揮の第一主力艦隊。地下ドックの出撃口が初めて地表に姿を現し、周辺住民は周りに集まってきた。
「なんだありゃ!?」
「地盤隆起?」
「なんだなんだ?」
次の瞬間、中から勢いよく駆逐艦が飛び出してくる。一隻や二隻ではない。何十隻も絶え間なく。その内、巨大な艦影も飛び出してきた。
「あ、ありゃ大和だ!戦艦大和だぞ!!!!」
「んなアホな!?大和は呉、武蔵は佐世保だぞ。でもアレは.......」
「どう見たって大和だ.......」
そして最後に今までで一番巨大な艦が出てくる。まずは赤城型要塞超空母の『赤城』と『加賀』。そしてラストを飾るのは、勿論この艦。第一主力艦隊総旗艦、熱田型指揮戦略級超戦艦『熱田』である。
「で、デッケェェェェ!!!!」
「なんだありゃ!?海軍の秘密兵器か!?!?」
更に少し時を置いて、呉でも記念艦となっている大和が出撃準備に入った。出港ラッパが鳴り響き、外装を爆破。現代艦に改装された前衛武装戦艦『大和』としての姿を見せる。
佐世保でも同様に武蔵が同じ様に前衛武装戦艦『武蔵』としての姿を見せ、第一主力艦隊と合流。先島諸島近海の敵艦隊を目指して航行する。
「こりゃ世界中がビックリするぞ。在りし日の聨合艦隊が復活した様な物だからな。それも8個艦隊、全出撃だ。おまけに特殊戦術打撃隊の空中空母や空中母機なんかも出撃している。下手したら、アイツら尻尾巻いて逃げるんじゃね?」
「だったら万々歳ですね。そうは問屋が卸さない、なんてオチにならなきゃ良いんですが」
「どうせだったら陣形変えるか。各艦に伝達!陣形を変更し、戦艦を前に出す。中心は勿論、この熱田だ。サイドには赤城と加賀を付ける」
「アイ・サー。今の命令を伝達します」
一方その頃、第一、第四、第七海兵師団が与那国島奪還の為に出撃。これを援護するべく、空軍の航空隊と特殊戦術打撃隊の空中空母『白鯨』と空中母機『白鳳』が現場空域へと向かっていた。
「レーダーに感あり。機数60。いずれもステルス機ですね。空中空母の方へ向かっています」
「すぐに通報する」
通報を受けた白鳳は、直ちに航空隊を発艦.......させずに、敢えて敵をそのまま此方に引き込んだ。
『な、なんだありゃ!?』
『まるでクジラだ』
『おい、なんかデケェ全翼機もいるぞ』
『全機、ミサイル一斉発射だ!!撃てぇ!!!!』
航空機から空対空ミサイルが100発以上も撃たれるが、その程度で落とさない。何方も戦艦並みの防御装甲を持ち、巡航ミサイルを数十発一気に当てないと穴が開かない。まあ弱点もあるにはある。どっちもエンジンとかプロペラがやられれば落ちるし、白鳳ならレクテナという頭脳を破壊すれば落ちる。白鯨と黒鯨も艦橋をぶっ壊されれば制御不要になるので落ちる。
だがエースコンバットを見てもらえれば分かると思うが、そう簡単に出来る代物じゃない。おまけに白鳳に限っては、チート級のある物が搭載されている以上、攻撃は無効化される。
『なんだあの球体は!?』
『おい!あの丸いのに当たった瞬間、ミサイルが爆破したぞ!!!!』
『まさか、バリアなのか.......。そんなのSFの世界の話だろ!!!!なんで現実に存在してるんだよ!!!!』
そのある物とは、APS。つまりバリアである。こんなの実装されてちゃ、ミサイルだろうが機関砲だろうが、どんだけ撃っても無効化されてしまう。唯一破壊できるのは、熱田型の主砲とかだろう。
ミサイル攻撃が終わると「今度はこっちのターンだ」と言わんばかりに、白鳳から大量のMQ5飛燕が投下される。おまけに対空ロケットランチャーからも、大量の対空ミサイルが発射され、航空隊は大空を逃げ回るしか無かった。
『タリン3ー6、2ー9、ロスト!!』
『イワン、振り切れ!!』
『うぉぉぉぉぉぉ!!!!! ガッ』
空中には爆炎と、撃墜された航空機の残骸が無情にも散らばっている。仲間が堕ちている中、腕のある物は無理矢理下へと潜り込んでミサイルを叩き込もうとした。
だが下方にはTLSというレーザーと、パルスレーザー砲が搭載されている。翼を焼き切られた航空機達もやはり、堕ちていく。そして一部は攻撃目標を白鯨にしていた為、どうにか白鳳の攻撃を逃れた。
『仲間の恨みだ!!』
『ミサイル、発射ァァァ!!!!!』
だが此方には、盾となる支援プラットフォーム『黒鯨』がいる。ミサイルは空中で撃墜され、戦闘機も同様に堕とされた。ものの数分で60機の中韓露のステルス機は撃墜され、何事もなかったかの様に白鯨、黒鯨、白鳳は先島諸島を目指す。
空での攻防が終わった数時間後、赤城と加賀からAGM255銀河を搭載したF8C震電IIが発艦。与那国島に搬入された中国軍の地対空ミサイル、紅旗8とロシア軍の地対空ミサイルシステム、96K6 パーンツィリS1の破壊に動いた。
『アザゼル1より、オールアザゼル。スタンバイ』
『『『ウィルコ』』』
『レディ、ドロップナウ!!』
アザゼル隊の四機は銀河を全弾投下し、銀河は投下後一秒の時差を置いてエンジンに点火。亜音速で目標を目指す。
『アザゼル1より、オールアザゼル。お客さん歓迎のクラッカーは放った。帰還するぞ』
『迎撃機にでも来られたら、溜まったもんじゃないっすもんね』
『そういう事だ。アザゼル1、ミッションコンプリート。RTB』
『2、コピー』
『3、コピー』
『4、コピー』
アザゼル隊は任務を終えたので、さっさと帰還。その間にも銀河は中韓露のレーダーに悟られる事なく、極超音速で与那国島を目指す。
既に与那国島には各部隊に先んじて、海軍陸戦隊の戦艦陸戦隊、IJMが既に伊2590潜の援護を受けて、SDVを用いて一個分隊が上陸している。この隊員達の終末誘導する事により、地対空ミサイルを完全に破壊するのだ。
「来るぞ」
「!?来た、来ました」
「赤外線、照射。精密誘導開始!」
機動甲冑に装備された赤外線照射器が作動し、赤外線をパーンツィリS1へと照射。数十秒後、これを頼りにやってきた銀河は正確に命中。パーンツィリS1と周囲のミサイルにも誘爆し、操作担当の兵士ごと完全に消し飛ばした。
「やった!」
「他の場所でも破壊に成功しました!」
「浮かれるなッ!あくまで固定式の地対空ミサイルを破壊しただけに過ぎない。戦闘機は活動できるが、輸送機やヘリコプターにはまだ歩兵の携帯式地対空ミサイルがある以上、まだ脅威は残っている。我々が気を抜けば、今後やってくる本隊に損害が出る。いいな、浮かれずに次の任務に集中しろ。全てが終わったら、みんなで飲みに行くか」
隊長のこの一言に歓喜の声を上げそうになるが、そこはプロ。声を抑えて、静かに喜んだ。
この攻撃で地対空ミサイルは破壊したので、これから先の作戦がやり易くなる。次なる攻撃は与那国島近海に展開している、敵連合艦隊への攻撃。この攻撃には勿論、第一主力艦隊がむかうこととなった。
「さぁ、いよいよ現代の戦艦の力を振るう時が来たぞ。全ての猛訓練は、今この瞬間の為だけにあったと思え。対水上戦闘、用意ッ!!!!!」
「対水上戦闘よーい!!」
「各砲塔、弾薬陽弾用意!!」
「各艦に下令。大和型前衛武装戦艦は、我が艦を基準に鶴翼の陣をしけ!」
大和と武蔵を含む八隻の大和型が、熱田の周りに集結し鶴翼の陣を取る。この陣形のまま、与那国島へと突撃を開始。すぐにその姿は、近海に展開していた中韓露連合艦隊のレーダーに捉えられた。
「レーダーに艦影!敵艦、方位013。!?なんだこりゃ!」
「どうした?」
「いえ、あの。レーダーの艦影が明らかに大きいのであります」
「空母でも出張ってきたのか?」
現代の艦船は、大型艦といえば原子力空母程度。戦艦なんて発想は、端から存在していないのだ。だがレーダーに移る艦影は、八隻こそ空母と同程度の質量なのだろうが、中心の一隻だけは明らかに頭二つ三つ抜けてデカい。
というか軍民問わず、最大級の艦船を軽く超えてるのは明らかである。因みに最大級の艦船は448mである。だが知っての通り、熱田型の全長は約3倍の1500m。非常識すぎる大きさなのだ。
「いえ。周りは恐らくそうでしょうが、中心の艦は明らかに1kmクラスはあります」
「プラントでも引っ張ってきたのか?」
勿論そんな作戦は、事前計画にはなかった。取り敢えず航空機を上げて、目視での確認を取ることとなった。最初は衛星を使うつもりだったが、丁度近くに使える衛星がいなかったのだ。おまけに良い感じに艦隊のある辺りの上空が曇りで、これまでの記録映像も全く意味を成してないときた。こうなるともう、有視界での目視による観測しかない。
「偵察機、発艦します」
中国海軍の航空母艦『福建』から、殲20ことJ20が発艦する。J20にはカメラが内蔵された偵察ポッドと電子戦ポッドを装備しており、緊急時に情報が持ち帰られるように護衛まで付けていた。
知っての通り、J20はステルス機。故にレーダー反射断面積も小さく、レーダー波を吸収するので、低空で飛行すると結構な距離まで近付かないとレーダーには探知されなくなる。このセオリーに従い、偵察隊は偽装で適当な進路に向かった後、低空から第一主力艦隊を目指した。だがしかし、その程度で皇国海軍の目は誤魔化せない。皇国海軍、というより全ての皇国軍の対空レーダーには、標準でステルス機を看破できるレーダーシステムが導入されている。レーダー波が吸収されるかレーダー波が明後日の方向に反射されるのがレーダー波の流れから検出できる様になっており、ステルス機の意味を成さなくなったのだ。
そんな訳で、発艦してから低空で飛行して接近するまで、全部筒抜けなのであった。
「どうやら敵さん、我々の姿を見にくる様ですな」
「なら、見せてやろうじゃねーか。念の為、対空戦闘の準備もしておこう」
艦長の報告に、神谷は不敵な笑みで返した。程なくしてJ20は艦隊付近に到達し、一気に急上昇。艦艇の姿を見たパイロットは、言葉を失った。
「あり得ない.......。戦艦大和が動いてる.......」
「しかもこんなにいるぞ。史実じゃ確か、大和と武蔵と紀伊と尾張しか戦艦として建造されてないはずだ。信濃は空母になってるしな」
「というか、あの中心の戦艦はなんだ!?あんなバカでかい船、初めて見たぞ」
パイロット達はその威容に恐怖し、何よりこの時代に戦艦が復活した事に驚いた。因みに現実では「大砲を搭載した艦艇」と戦艦を定義した場合、最後の戦闘は湾岸戦争に於けるアメリカ海軍のアイオワ級戦艦三番艦『USS Missouri』と四番艦『USS Wisconsin』による1993年2月23日の陽動作戦に於けるファイラカ島への砲撃が最後となってる。
おいそこ!映画バトルシップを勘定に入れるんじゃない!!アレはまあ、カッコいいけど映画だ。やめなさい。あれは「物語」であって「現実」ではない。
「敵さん、驚いたでしょうな」
「そうだな。よし、じゃあこのまま全速前進。敵艦隊へ突撃せよ!ってな」
「アイアイサー、って所ですか?」
敵戦闘機4機が真上を通過したっていうのに、ここまで自由なのは一重に熱田の防御力の高さ故だろう。例え数千発の対艦ミサイルを喰らおうと、核が真上で炸裂しようと、この戦艦はビクともしない。大和型も核は流石に無理だが、対艦ミサイル程度では凹みと焦げを当たえるのが関の山だ。
そんな事を知らない3カ国の司令は、同時飽和攻撃での撃滅で満場一致した。すぐに空母を持つ中国海軍とロシア海軍から、対艦ミサイルを満載した艦載機が発艦。他の艦艇も対艦ミサイルの発射準備に入った。
「対艦ミサイル、全弾発射!!」
韓国海軍の海星II、ロシア海軍のPJ10ブラモス、中国海軍のYJ18Aが戦艦達へと猛スピードで飛んでいく。それだけではない。艦載機からも艦対艦ミサイルが一斉に発射され、総数280発の有り得ない量が襲い掛かる。
だがその程度で止められるほど、この戦艦達はヤワではない。
「敵ミサイル探知!!」
「弾幕で迎撃しろ」
「両舷、同時対空戦闘。本艦の両舷より、まっすぐ突っ込んでくる。目標まで15,000。撃ち方始め!!!!」
ズドドン!ズドドン!ズドドン!ズドドン!
ズドン!ガシャコン、ズドン!ガシャコン、ズドン!ガシャコン
戦艦の両舷に設置された速射砲群は、全てが駆逐艦の主砲に採用されている物ばかり。現代の駆逐艦の主砲は対空戦闘にも用いられ、その命中精度と連射性能はとても高い。そんな砲が、数千門も向けられたのだ。どんなに大量のミサイルを撃ったとしても、完璧に迎撃できてしまう。
「航空隊、発艦開始!目標、敵戦闘機隊。急げッ!!」
本来であれば、敵前での艦載機発艦など自殺行為に等しい。だがこの熱田に限っては、そればかりではない。熱田の発艦口は艦後尾に存在しており、さらに普通の艦載機よりも素早く艦載機隊を展開できる。
通常、飛行甲板から発艦するまでに3分程度は掛かる。それ以降は待機中にエンジンの回転数とかも上げられるので、もう少し短縮できるが、それでも1分から2分は掛かる。だが熱田型は10秒で一機を発艦させることが出来る。100機の艦載機を上げるのに掛かる時間は1000秒+αと言ったところなので、16、7分で全機発艦可能なのだ。
因みに今回は主翼下大型パイロンにAIM63烈風を満載したマルチパイロン、胴体内中型パイロンにAIM63烈風、胴体内小型パイロンにはAIM25紫電を装備している。
「急げ急げ!!」
「エンジン回せ!!!!」
「よし、こっちは行けるぞ!」
「機体移動させるぞ!」
「行け行け行け行け!!GOGOGO!!!!」
「っしゃぁ!!行ってくる!!!!!!」
格納庫内は整備兵と、パイロットの怒号が飛び交う戦場であった。準備が完了した機体から順次、大空へと上がって行く。その間にもミサイルは飛んできており、弾幕は絶えず張られ続けている。だがそんな危険な状態でも、パイロット達はお構い無しに発艦して行った。文字に起こすととても簡単そうに聞こえるが、この行為は自殺行為でしかないし、というか並みの練度ではすぐ海に堕ちるのがオチである。こんな馬鹿げた行為を可能としているのは、一重にパイロット達の強い度胸と高い練度を持った操縦スキル故である。
「全艦載機、発艦完了!!敵編隊への攻撃に向かわせます!!!!」
「よし、航空隊が敵を引きつけてる間にこのまま艦隊へ突撃するぞ。最大戦速!!!!全艦突撃隊形、砲雷撃戦、用意!!!!」
「最大戦そーく!!」
「全艦突撃よーい!!」
「総員、砲雷撃戦よーい!!!!」
艦隊は熱田を前にして、一列に並ぶ。そのまま敵艦隊向けて、突撃を開始した。
勿論この動きは敵には筒抜けであり、第二波の対艦ミサイル攻撃に移った。だが、こちらも撃退されてしまう。いつしか敵艦隊は主砲の射程距離にまで近づかれてしまい、対空戦闘を意識して対艦戦闘は元から殆ど想定してない主砲を撃ってくる。
「主砲、撃てぇ!!」
「全く。こんな非力な主砲で敵艦と砲撃戦とは、笑えねぇんだよ!!」
「擊ちまくれ!!撃ちまくれ!!」
最大口径130mmの砲弾では、例え特殊な弾頭を持った弾種を用いて口径以上の威力を手に入れたとしても、熱田は核爆弾に耐え切る装甲を備えているし、大和型も自艦の主砲である510mm砲を弾ける装甲を持っている以上、130mmでは豆鉄砲以下の威力にしかなり得ない。
「よーし、砲撃準備だ。弾種、榴弾。信管VT。目標、敵艦隊の前衛駆逐艦!」
「主砲砲撃よーい。弾種、榴弾。信管VT」
いよいよ熱田の主砲である710mm四連装砲と、副砲である510mm三連装砲に砲弾が装填される。実戦での砲撃は、勿論これが初めてであり、乗組員達にも緊張が走る。
「撃て!!!!!!」
神谷の号令と共に、CICで発射トリガーが弾かれた。砲弾は海面と空気をこれでもかと震えさせ、砲弾は着弾前に起爆。破片は船体を貫通し、内部を完全に破壊。すぐに沈み、轟沈した。
「両舷機関砲、速射砲群。撃ちまくれ!!!!」
現代艦というのは、ミサイル技術の発展により艦隊決戦、つまり数十キロまで互いに接近して、砲火を交えるという戦闘スタイルを設計の段階から想定していない。その為、装甲も必要最低限である。小型艇が衝突しただけでも、最悪沈んでしまうくらいに脆い。また精密機械の塊であり、その精密機械が晒されているのも特徴である。
その為、速射砲や機関砲も重要かつ強力な攻撃手段となる。船体を穴だらけにし、片っ端から沈めていった。キーロフ級や空母の様な大型艦には、こういう時に使う為に装備されてる近距離で使える対艦ミサイルを多連装発射機を使って一挙に大量に撒き散らす。20隻はいた敵連合艦隊は、ものの10分でその姿を海中に消した。艦隊は一度、他の第一主力艦隊所属艦と合流すべく転身。海軍陸戦隊についても、夜を待っての上陸となるので近海で待機となった。