最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第五十七話突空

カルトアルパス戦より数週間後 大日本皇国 首相官邸

「なんか、また凄い事になったな」

 

「俺達の祖国は呪われてんのかよ.......」

 

「国自体を祓う場合って、何処の神社行けば良いんだっけ?」

 

カルトアルパスでの一件を受け、先進11ヶ国会議では、新たにパーパルディア皇国に代わって大日本皇国の列強入りを認め、正式にグラ・バルカス帝国への非難声明を発表した。

だが日本としては冗談ではない。現在、大日本皇国を除いてマトモにやり合える国家が存在しないのだ。なので先進11ヶ国会議で採択された=世界中の国を敵に回す、という状態であっても実質的には日本単独でやり合う事になる。しかも『列強国』やら『世界中』なんかが付きやがった以上、単独で好き勝手には出来ない。そしてこっちの世界のアメリカに該当する、みんなのお友達神聖ミリシアル帝国を筆頭とした各国への配慮、意向、プライドetcを考慮しないと絶対面倒事に発展する訳で、もう余計な仕事が増えて地獄でしかない。

 

「浩三。確か、グラ・バルカス帝国には勝てるんだよな?」

 

「あぁ。無論、こっちの世界に来てからで考えると最も強い相手だが、あくまでこの世界基準での話だ。旧世界基準で行けば、グラ・バルカス帝国と言えど最弱の部類だ。片やこっちは世界の軍事力ランキングでも堂々の一位を誇り、世界各国を敵に回しても殲滅できる位の武力を持った国家。余裕で勝てるんだが.......」

 

一色の問いに神谷は答えを濁した。その理由も軍事に疎い一色であっても、流石に察せる。

 

「外交、だな?」

 

「そういう事.......」

 

政治や外交はその場の判断が即効で人の生き死に反映される事はない。だが神谷の立つ戦場では、判断ミス1つが比喩表現無しに命取りになる世界。そんなただでさえ判断一つ一つが、想像し得ないほどに影響を及ぼす世界に、よりややこしくなる政治やら外交やらを突っ込まれては溜まったもんじゃない。勝てる戦も負け戦になってしまう。

 

「慎太郎、今の国家間でのやり取りで、何かしら問題は?」

 

「特にない。だが恐らく、世界連合軍でも作りはしそうだな」

 

「わかった。なら何か分かり次第、逐次報告を頼む。軍の方はどうだ?」

 

「取り敢えず全軍の警戒レベルは3、即時出動待機にしてある。念の為に各地の防衛艦隊、そして一部の主力艦隊所属艦艇も近海の防衛に回した。それから哨戒機の数を増やしてもあるから、潜水艦で来ようとも早期発見できるだろう」

 

一応統合参謀本部でのシュミレートと神谷個人の見解では、流石にいきなり飛び石で此処に攻め込む事は有り得ないだろうし、それ以前に恐らくだが比較的近い第一文明圏にも、最も近い第二文明圏にも国境線での小競り合い位はあっても大軍を動かす事はないと結論付けている。

だが戦争に於いて絶対は無いし、少なくとも第二次世界大戦相当の技術力があるのなら、核兵器の使用も視野に入れておく必要もある。そこで大袈裟かもしれないが、全軍を動かしたのだ。

 

「他に何か報告は?」

 

特段ないので解散しようかと思った時、神谷の電話が鳴った。そして電話で語られた報告内容は、耳を疑う物であった。

 

「あー、お前ら。どうやらグ帝の奴ら、本気で俺達を怒らせたいらしい。JMIBとICIBの諜報員が掴んだ情報だが、カルトアルパス戦で得た捕虜の処刑を決めたらしい。おまけに捕虜の中には、沈んだ『しきしま』の乗組員も含まれてる」

 

「「ッ!?」」

 

川山の脳裏には2年前に起きた、あの惨劇が蘇っていた。凡そ1世紀ぶりの全面戦争をしたパーパルディア皇国との、外交の席で起きた惨劇を。

知っての通り、パーパルディア皇国は日本との交渉前に拉致しておいた日本人208名を、外交の席で日本の使者たる川山と神谷の目の前で処刑したのだ。更に日本への属国化要求に天皇家への侮辱までした結果、パーパルディア皇国は地図から姿を消した。

それと同じ事を今、グラ・バルカス帝国はしようというのだ。

 

「心配すんな。絶対にそんな事はさせない。こうなった以上、部隊率いて奪還する」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「浩三!頼む、お前は行ったらまずい!!」

 

一色と川山は全力で止めた。何も神谷が死地に赴くからではない。もしかしなくても、処刑する場所はグラ・バルカス帝国の領内になる。そこに相手方の軍のトップが殴り込むなんてしたら、後々面倒な事になりかね無いのだ。

 

「お前達の考えもわかる。俺が行ったらややこしいかもしれ無いが、相手の領内への殴り込み任務を遂行する事ができる大部隊は我が神谷戦闘団を置いて他にない。俺達はこういう時の為に、存在するんだ。じゃなきゃ『国境なき軍団』なんて呼ばれて無い」

 

神谷戦闘団が『国境なき軍団』と呼ばれる所以は、練度や士気の高さもそうだな、1番の理由は神谷という絶対権力者が指揮を直接取っているからである。その恩恵である高い自由度は、デリケートになり易い他国への強襲や急襲任務の際に最大限のアドバンテージがあるのだ。

 

「.......本当にできるのか?」

 

「ちょっと奴らの領地に飛び込んで、捕虜を逆に拉致って帰還するだけだ。簡単簡単」

 

いや、普通はそれが難しいのだ。だがまあ、コイツとコイツの部隊の場合はさも当然の如くやってのけてくるのだから、多分全員人間やめているだろう。

 

「わかった。なら俺から言うことはない。川山の方は?」

 

「恐らくだが、向こうは此方にコンタクトを取ってから殺す筈だ。だからそれまでは、動かないでくれ」

 

「了解した。だが状況によっては、勝手に動かせて貰う。あくまで最優先は、捕まった連中の命。ここに異論はないな?」

 

「あぁ。俺の読みが外れて、いきなり処刑しそうになっていたら、やって貰って構わない」

 

 

 

同日夜 ムー 統括軍総司令本部

「それでは、これより緊急会議を開催します」

 

今回の一連の戦闘を受け、ムーを始めとした国々はグラ・バルカス帝国への対策を練る為に会議を開いていた。特にムーは自国がこの世界では珍しい科学文明国なのもあって、その力の入れようは他の国家より頭一つ飛び抜けている。

これまでムーはミリシアルを除けば、世界最強格の軍備を持っていた。大日本皇国に負けるなら兎も角、相手はグラ・バルカス帝国。しかもムー側は各艦隊から選りすぐった最精鋭の選抜艦隊であり、早々負ける事はない筈だった。にも関わらず、ロクな抵抗できずに負けた。というか一方的に殲滅されたのだ。どんなに頭が悪くとも、取り敢えず不味い事態なのは分かるだろう。故に今回は軍の重役は勿論、ムー統括軍内一の大日本皇国通のマイラスも出席している。

 

「皆様ご存知の様に、去る先進11ヶ国会議に於いて、会場のカルトアルパスはグラ・バルカス帝国による攻撃を受けました。これを受け各国の護衛艦隊と共に、戦艦『ラ・カサミ』を旗艦とした護衛の機動艦隊も出撃。迎撃にあたりました。敵味方の参加戦力の詳細については、資料をご覧ください」

 

こちらの詳細については前々回にて、既に書いてあるので割愛させて頂く。余り覚えてないという読者は「60隻以上の艦艇+ワイバーン、風竜、航空機の連合部隊」と考えて欲しい、

 

「しかし結果は、我が軍含め艦隊は全滅。唯一『ラ・カサミ』は座礁して沈没こそ免れましたが、とても戦闘に出れる状態ではありません。またグラ・バルカス帝国は、この戦闘の後に陸上部隊による上陸作戦も行っており、こちらは神聖ミリシアル帝国の現地部隊と大日本皇国軍の増援部隊によって殲滅されています。

それでは戦闘推移に関する解説は、戦艦『ラ・カサミ』副艦長、シットラスよりご説明致します。

 

「シットラスです。戦闘の状況についてご説明致します。グラ・バルカス帝国の航空機の接近を探知した我々は、すぐに艦上戦闘機『マリン』を発艦させましたが、敵の戦闘機との性能差は歴然としており、1機も堕とせなかった上に、短時間で全滅致しました」

 

ここで会議室に怒声が響いた。これまで世界第二位の強さを誇っている事に対して、胡座を掻き続けていた者は特に凄い騒ぎ様だった。彼らにしてみれば寝耳に水どころか、寝耳に放水レベルの衝撃なのだろう。

無論、そうでない者でもザワつきはした。なのですぐに議長が、大声で「静粛に!静粛に!」と怒鳴って落ち着かせ、会議を再開させる。

 

「敵戦闘機はこちらの機体を、一撃で破壊していました。それも1発でも銃弾が擦れば、機体が破砕されんばかりの威力でした。また機動性においても、まるでマリンとワイバーンの様に開きがありましたし、何より速度が500kmは出ていた筈です。

ワイバーンロードも参加していた様ですが、こちらはワイバーンが鳥を喰らうかの様に次々と堕とされていきました。唯一、エモール王国の風竜のみが互角に相手取っていましたが、それでもキルレシオは1対1と言ったところでしょう」

 

ここまで来ると、会議室は逆にしんと静まりかえった。どうやら皆衝撃的すぎて、言葉も出ないらしい。特に一騎当千と言われた、エモール王国の風流騎士団ですら歯が立たない事が相当にショックだったらしい。

 

「また大日本皇国ですが、こちらは明らかに互角どころか寧ろグラ・バルカス帝国を追い回さん勢いで、敵を殲滅していました。

艦隊による対空戦闘に関しては、我が方は13機の敵機を堕とせましたが、それでは焼け石に水であり、マトモに戦えたのは大日本皇国と神聖ミリシアル帝国、それからアガルタ法国の艦隊級極大閃光魔法のみです。それ以外の艦艇は、最早抵抗する間もなく沈められていきました」

 

もう完全にお通夜ムードであった。まるで負ける事が確定したかの様に、皆思っていたのだ。

 

「本艦はこの攻撃により、機関が暴走。制御不能となり、岩場へと座礁しました。我々はそのまま浮き砲台として、迫り来る上陸用ボートに攻撃を敢行。さらにこの上陸支援に当たっていたグラ・バルカス帝国の戦艦にも、主砲を発射し命中させるも、応射によって船体の亀裂が広がり浸水。艦を放棄しました。

その後来た大日本皇国の見た事もない大型航空機と戦闘機が航空隊を殲滅し、陸上部隊が降下して上陸部隊の迎撃に当たっていました。戦艦についても、砲弾とは違う何かを切り裂く様な音が聞こえると爆発したのち轟沈し、カルトアルパスの防衛に成功しました。これが戦いの全容です」

 

この場にいる誰もが、理解した。グラ・バルカス帝国には勝てないと。だが1人だけ、まだ諦めていない人間がいた。マイラスである。マイラスはこの話で引っかかる点が、多くあった。なのでまずは、シットラスへ質問するべく、議長に許可を取る。

 

「議長、シットラス副長への質問を許可願います」

 

「許可します」

 

「シットラス副長。あなたの見た、大日本皇国の艦艇はどの様な艦でしたか?」

 

「確か真っ白な船体に、武装が機関砲2門で、後部甲板に恐らく水上機格納庫を有していました。

 

「やはり.......」

 

マイラスは納得した。今回カルトアルパスに派遣されていたのは、大日本皇国海軍ではない。海上保安庁の巡視船だったのだから、この結果は必然であろう。もし仮に海軍が艦隊で派遣されていたら、航空機は即殲滅して、逆に敵艦隊にミサイルを叩き込むくらいはやる。

 

「皆様、今後の国の運営について、今回の海戦を参考データとして考慮されると思いますが、誤解により運営方法を誤ってはいけないので、ここではっきりと皆様にお伝えします。グラ・バルカス帝国と戦った艦艇は、皇国海軍ではなく、海の警察機関である海上保安庁の巡視船です」

 

この一言にまたしても、議場は騒がしくなった。議長が止める前に、マイラスが大声張り上げて「静粛に!!」と叫んで、全員を此方に注目させる。

 

「マイラス君、だがね、彼の国の艦は『ラ・カサミ』よりも遥かに巨大だったんだ。それを巡視船というのは、流石に。それに私も以前、演習に参加しているから強さを知っているが、アレは明らかに秘密兵器クラスを持ってきている。早々戦場で乱用できるものでは無い筈だ」

 

「まず、根本からお話ししましょう。あの演習に来ていた艦艇は、大日本皇国海軍の本気ではありませんし、秘密兵器でもありません。大日本皇国には八個の主力艦隊と呼ばれる実動部隊と、護衛艦隊という本土防衛専門の五個艦隊に分けられます。

その内、あの巨大艦が配備されているのは主力艦隊であり、この陣容は熱田型超戦艦を総旗艦とし赤城型要塞超空母2、戦艦11、正規空母10、軽空母3、対空巡洋艦24、巡洋艦20、駆逐艦136、潜水艦7の総数237隻という大艦隊が、一個主力艦隊を形成しています。そのどれもが高い戦闘能力を誇り、11隻の戦艦の内、8隻は大和型戦艦という『グレードアトラスター』と瓜二つの戦艦です。また空母を除いて、全ての艦艇は科学で作られた誘導魔光弾の進化形を多数搭載しています。1隻につき100発近く搭載し、そのどれもが敵艦を一撃で葬り去る威力を持っていたり、あるいは音速を遥かに超える飛翔体や成層圏の遥か高空を飛ぶ飛翔体を迎撃できる能力を持っていたりと、異次元クラスの能力を持っています。

もし仮に海軍が護衛に来ていたら、確実に敵航空隊は目視圏内に入る前に全機叩き落とされ、逆に敵艦隊に攻撃を仕掛ける位のことをやってのけていた筈です」

 

「まあ、そうだろうな」

 

「確かにあの国は、色々規格外だもの。やりかねん、いや。絶対やるよ」

 

マイラスの発言に賛同する発言をしたのは、余りに意外な人物達であった。海軍のトップであるジャブソニー・グラターナと、陸軍のトップであるホーストン・ウェスバイトである。この2人は合同演習の後に発生した、リーム王国との紛争の様子を見ている。故に、マイラスの発言が真実であると確信していたのだ。

軍のツートップであり、相当のキレものでもある2人がこう言うのだから、正しいのだろう。だがそれでもやはり、本当かどうか気になってしまう。それを感じたのか、マイラスは自分の持っているスマホを起動して動画投稿サイトに上がっている大日本皇国軍を素材にしたMADを見せた。

 

「これが大日本皇国軍です。彼らであれば、例えグラ・バルカス帝国であっても撃退できるでしょう」

 

「.......議長、発言よろしいか?」

 

「どうぞ」

 

手を挙げたのは外務省関係者の席にいた、初老の男性であった。この男は先進11ヶ国会議に参加していた外交官の上司であり、その外交官が報告してきたある事に疑念を持っていた。

 

「マイラス殿。本当に大日本皇国は強いのかね?私は部下から、刀を振り回して戦っていた者が複数居たと聞いておる。銃と刀、比べるまでも無かろう?」

 

「あー、それってもしかして、紫の羽織を羽織ってませんでしたか?」

 

「そのように聞いている」

 

大日本皇国軍において、刀を振り回す紫の羽織を羽織る兵士なんて1人しかいない。複数というのが気になるが、それは今度本人に直接聞けばいいだろう。

 

「その兵士は、大日本皇国最強の存在です。その人の名前は多分、神谷浩三。大日本皇国統合軍総司令長官であり、恐らく今回カルトアルパスに派遣された陸上部隊である神谷戦闘団の団長を務めています。銃弾を見切って切り裂いたりとか、正確に相手の急所を抉ったりとか、取り敢えず凄い人です。常識が通じないタイプの人なので、問題ありません」

 

「ん、ん?それは、問題ないのか?」

 

「無論、問題ありません。我々も保証いたします」

 

そう言グラターナが言って、ウェスバイトが横で頷いている。神谷の強さというか異常さは、言葉で伝えるより実際に見てもらった方が早い。というか言葉で言い表せないくらい、中々にぶっ飛んでいる。

この後も会議は続き、具体的な防衛策を練り始めたのであった。

 

 

 

数週間後 レイフォル地区 現地行政府

「さぁ、鬼と出るか蛇と出るか」

 

取り敢えず先進11ヶ国会議での宣戦布告を受けたものの、シエリアの「我が国に降れ」発言のように、未だその発言の詳細が分からないものも多く、さらに言えば各国も捕虜を取られてるので、その説明と捕虜奪還の交渉をするべく神聖ミリシアル帝国、ムー、アガルタ法国、そして大日本皇国が代表を送り込んだ。

彼らがレイフォル地区に入国して見た光景は、悲惨そのものであった。レイフォルは最初にグラ・バルカス帝国が侵攻した国家であり、戦艦『グレードアトラスター』による全力砲撃を受けている。かれこれそれは一年と半年は前の話なのだが、建物は未だ瓦礫の山だ。道は最低限治されているが建物の残骸が散らばり、市民は浮浪者となって生気のない目をしていて、紛争地帯にでも来たのかと思ってしまったという。

瓦礫の山で街だった物を抜けると、大きな堂々とした建物が目の前に見えた。これまで瓦礫の山で、その建物の周りも瓦礫であるので、すごく目立つ。この建物が目的地の現地行政府であり、グラ・バルカス帝国と世界を繋ぐ唯一の場所でもある。建物に入ると会議室に通されたのだが、まあ待たされる。30分位して、漸く担当の男が入ってきた。

 

「ほう、この世界の強国のみなさん、雁首そろえてこられるとはどういったご用件かな?」

 

外交官とは思えない非礼極まりない発言に、他国の外交官の顔が強張る。因みにこの外交官の名前はダラスと言い、グラ・バルカス帝国外務省内でも不人気の男である。

 

「大日本皇国政府は、あなた方グラ・バルカス帝国の行った武力攻撃に対し、遺憾の意を表明いたします。また巡視船『しきしま』の撃沈に関して、遺族への謝罪と賠償、そしt」

「ほう!あなたが我々と同様に転移国家である大日本皇国か!!」

 

ダラスは川山の話を遮り、話を始める。ここは外交という、国同士の話し合いの場所なのに、相手方の外交官の話を遮ってきた辺り、グラ・バルカス帝国の程度が知れる。

 

「我が方の戦艦のたったの一撃で沈んだと聞く。同じ転移国家でも、ここまで差があるものよのぅ。弱き国の外交官は辛いだろう。ところで、遺憾の意とはなんだ?具体的にどう対応するというのだ?」

 

ダラスの挑発にカチンと来るが、そこはプロ。怒りを理性と外交としてのプライドで抑えつけて、あくまで冷静に話す。

 

「あなた方の先進11ヵ国会議での発言は、世界に対する宣戦布告ととれる。あなたの態度は我が国にとっては、ある国を彷彿とさせるが、本気で世界を敵に回して戦って自分たちは勝てると思っているのでしょうか?」

 

「弱小国家がいくら連合を作っても強くはならんよ。弱者は弱者のままだ」

 

ダラスの発言を受け、流石の川山も身を乗り出す。このまま皇国が舐められたら、また先のパ皇の悲劇を繰り返す可能性が高い。ある程度強気に出る事を決意する。

だが彼が発言しようとしたその時、彼の前に神聖ミリシアル帝国の外交部長のシワルフが立ちあがる。

 

「神聖ミリシアル帝国、西部担当外交部長のシワルフです。我が国はあなた方が港町カルトアルパスで行った奇襲、そして蛮行を痛烈に非難し、直ちに謝罪と賠償、そしてレイフォル国からの撤退並びに今回の蛮行の責任者の引き渡し、捕虜の返還を行うよう通告に参りました。

我が国、神聖ミリシアル帝国は他国と違って交渉に来たのではない。お願いではない。これは命令だ。従わない場合は、敵になるのは我が国のみではない。先進11ヵ国のみでもない。これは中央世界の総意だ」

 

シワルフの発言には怒気が孕まれていたが、ダラスは意に返さない。

ダラスが返答しようとした時、部屋の扉が開き、扉の奥からつり目の美しい女性が姿を現す。川山は、この女性に見覚えがあった。

 

「し、シエリア様.......」

 

先進11ヶ国会議において、グラ・バルカス帝国の代表を務めていた女性、シエリアであった。まだ彼女の方が多分話は通じると思われるので、恐らく潮目が変わる。

 

「ダラス、ここからは私が責任をもって交渉を行う」

 

「しかし、この場合の担当は!」

 

「命令だ、相手はこの世界の連合と言っても差し支えない。お前の手には余る」

 

「ぐ、解りました」

 

ダラスはシエリアに席を譲り、隣の席に座る。どうやら、バトンタッチらしい。

 

「話は聞いていた。帝国の考えは先進11ヵ国会議で説明したとおりだ。変更は無い」

 

凛とした顔、曇りなき眼でシエリアははっきりと発言する。この年でここまでの発言を堂々と出来る辺り、相当のエリートなのだろう。

 

「グラ・バルカス帝国は何を望む?」

 

「我が軍門に降る事だ。当然、国家の主権は認められなくなるがな」

 

「具体的には?」

 

「植民地、と言えば解りやすいかな?」

 

「通告を、中央世界が飲むとでも思っているのか?」

 

「いいや、今は飲むとは思っていないよ。ただ、敗退を重ねた時、お前たちは我が国の案を飲む事になるだろう。どれだけお前たちの軍が悲惨な事になっても、外交窓口だけは開いておこう。自らの国民のためを思うならば、早めに決断を下すがよい」

 

これを聞いた中央世界の外交官達は、顔を真っ赤にして怒りを露わにしている。一方のシエリアは涼しい顔をしており、ダラスは相変わらず一発拳を叩き込みたくなる下品な笑みを浮かべていた。

 

「なめおって.......。捕虜の返還には応じないのか?」

 

「戦争が終わるまで、捕虜の返還は無い。我が軍門に降れば、捕虜は返還してやろう」

 

「捕虜の人権は当然認められるのだろうな?」

 

「それは.......」

 

ここでシエリアの目が泳ぐ。恐らく彼女としては、今後起こる捕虜の処刑には反対なのだろう。だが組織の歯車である以上、上からの命令に「NO」は言えない。

このことが武器になると悟った川山は、脅しをかけるタイミングを探る。

 

「それは、我が国が決める事だ。お前たちに答える義務はない」

 

「シエリアさん、大日本皇国は、海上保安庁職員の即時返還を要求します。」

 

「聞こえなかったのか?捕虜は戦争が終わるまで返還しない」

 

「軍人であれば、捕虜というのも理解できる。しかし、そちらが捕らえているのは軍人ではない。海の警察、海上保安庁と呼ばれる組織の職員だ」

 

「戯言を。戦闘機を多数落とした艦が、軍艦ではないと申すか?」

 

確かに普通に考えて、航空機を叩き落とす船が軍艦じゃないと言った所で信じられる訳がない。だが事実なのでそうとしか言えないし、そもそも技術の発展具合が一世紀は離れてるのだから、そうもなってしまうのだ。

 

「はい。彼らは軍人ではありません。船も他国でいうところの沿岸警備隊の巡視船であり、軍用船ではありません」

 

「沿岸警備隊だと?では何か?大日本皇国は先進11ヵ国会議に、軍艦ではなく、海賊対策程度の沿岸警備隊を遥々遠洋まで派遣したと言いたいのか?」

 

「そのとおりです。つまり、あなた方が捕らえているのはいわゆる軍人ではありません。よって、即時彼らの返還を要求いたします」

 

ダラスが川山を罵ろうをした瞬間、シエリアが手で合図をしダラスを押さえ彼女は話始める。

 

「貴国の軍人の定義など、どうでも良い。あれほどの対空能力を持っておきながら、軍艦ではないなどと、自国の軍が負けた途端に彼らを切り捨てるかのような言動、負け惜しみを国単位で言うとは、明らかにみっともないぞ。彼らは圧倒的な軍事力の差がある我らに、勇猛果敢に挑み、敗れ去った。

私個人としては、大きく評価している。彼らは軍人として扱う」

 

「彼らが警察機構という事は、今確かに伝えました。あなた方が軍人として扱うとの事ですが、彼らの安全は保障されるのでしょうね?」

 

「先ほど答えた。我が国が決める事だ」

 

ジュネーブ条約の様な国際条約が結ばれてないのだから、あくまでお願いという形にしか出来ない。筋は通っているので理解はできるが、納得はできない。だがこれを言われては何も言い返せないのも事実な訳で、川山は黙るしかなかった。

その会話の隙をついて、ムー国の外交官、ヌーカウルが質問を開始する。

 

「ムーの外交官ヌーカウルです。今の会話で、あなた方が捕虜の返還交渉に応じる気が無いのは解りました。そして雰囲気からは察したのですが、どうしても発言としての事実が欲しいので、質問します。あなた方は、現在我が国を含めた第2文明圏に宣戦布告をしています。

今回の先進11ヵ国会議で中央世界並びに、大日本皇国に対しても、宣戦布告を行った。これで間違いないですね?」

 

「ああ、間違いない」

 

「解りました」

 

ムーの魂胆は今の発言を盾に、皇国の参戦を打診してくるつもりなのだろう。別にそんな事しなくても、皇国は介入する。何せ捕虜を殺そうとする国なのだ、必ずボコボコにしてやらないと国の面子がズタボロになってしまう。

 

「もう良いだろう。グラ・バルカス帝国は、捕虜の返還に応じる気はない。そして世界そのものである我らに、自国の植民地になれと求めている。これが明確に判明した。事務レベルではっきりとした訳だ。シエリア殿、これで間違いないな」

 

神聖ミリシアル帝国、西部担当外交部長シワルフは、シエリアに問う。

 

「間違いはない」

 

答えは出た。

 

「では、最後に。あなた方グラ・バルカス帝国の民のために、発言しよう。神聖ミリシアル帝国の保有艦隊数は、貴国が戦った艦船の数を遥かに上回る。我が国の魔導工学に基づく工業力も他国を遥かに凌駕している。早めの降伏をお勧めする。

貴女が戦火に巻き込まれて死なないように祈っておこう」

 

「そうか、ではこちらも、交渉窓口だけは開いておこう。自国民を大切に思うならば、早めの降伏をお勧めしよう。」

 

会議は終了し、シエリアは退室する。

各国の大使が退室を開始しようとした時、グラ・バルカス帝国外交官ダラスが彼らに向いた。

 

「個人的な見解だが、お前達はバカだな。烏合の衆がいくら集まっても、我が帝国には勝てない。帝国は今後、全ての国々をその配下に治める事となろう。貴様らも、この世界の連合として、プライドはあるだろうが帝国に降るか、弱者連合で国亡ぶまで戦うか、本気で考えた方が良い。

まあ、お前ら蛮族に考える頭があるとは思えないがな」

 

各国の外交官の顔が曇った。だが会議も終わったので、これまでのイライラをぶち撒けるべく川山が話し始める。

 

「では、私も個人的な感想を述べましょう。あなた方は、現実が見えていない。今回の文明国とは思えない国際会議への武力での介入、そして我が国への宣戦布告。我が国、大日本皇国政府は既に参戦がほぼ決定事項としている。我が国の最強の軍が海に、空に、陸に現れた時がグラ・バルカス帝国の終わりの始まりとなるだろう。

貴国は第3文明圏のパーパルディア皇国が我が国にした事、そしてその後の展開を少しはお勉強した方がいいでしょう。外交窓口は開いておきます。早めに降伏するならば、ムーにお願いして入国し日本国大使館の扉を叩いてください。さもなくば、我々は貴国の存在が人の記憶と歴史書にしか残らなくなるまで、進撃を続ける事となるでしょう」

 

本来なら外交官としてあるまじき行いではあるが、今回ばかりは仕方がないだろう。ダラスも含め、その場の外交官達は川山の言葉に驚いていたし、何より皇国が本気である事を示していた。

代表団は行政府を出て、すぐにレイフォルを後にするべく、迎えの船へと乗って早々にグラ・バルカス帝国の支配領域の外へと向かう。そして外に出たと同時に、川山は神谷へと連絡した。

 

『交渉は決裂した』

 

「了解した。なら、大暴れするとしよう」

 

神谷は電話を切ると、格納庫へと歩き出す。彼は今、横田空軍基地にいる。ここの格納庫には、つい3ヶ月前にロールアウトした最新鋭機の、先行量産機が配備されている。その名も、AVC1突空。詳しくは設定集にて解説するが、簡単に言えば「テメェの様な輸送機がいるか!!」と言いたくなる変態である。というか輸送機の皮を被った何かである。

 

「浩三様、出撃かしら?」

 

「そうだとも。行こう」

 

格納庫の道すがら、たまたま会ったヘルミーナを連れて格納庫へと向かう。因みにヘルミーナ、オフの時や何もない時には敬語ではなく姉妹達と接する様な口調になった。曰く「こちらの方が可愛いでしょ?」らしい。

 

「長官、出撃準備完了しました」

 

「よし。お前達!!」

 

さっきまで自分の装備のチェックや仲間との談笑、スマホ弄りなど好きに過ごしていた兵士達は、立ち上がって不動の姿勢で神谷の方を向いた。

 

「知っての通り、今回の任務はかなり危険だ。だが俺の自慢であり、誇りであるお前達なら、世界最強の戦闘集団たる我が神谷戦闘団であれば、必ず成功できる物と信じている。長々と語るつもりもない。

お前達はいつもの様に、邪魔する存在を排除して任務を達成すりゃいい。さぁ、行くぞ!!!!」

 

世界最強の兵士達は突空へと乗り込み、皇国を後にする。上空で護衛の第二二三航空隊、火力支援を担当する第五八一航空隊と合流。途中、KC787による空中給油を受けてレイフォルの処刑場へと急ぐ。

 

 

 

翌日 レイフォル地区 処刑場

「捕虜たちよ。今からおまえたちの処刑を行うが、最後のチャンスをやろう。何か話したい事があれば、申し出るがよい」

 

この日、計画されていた捕虜の虐殺が行われようとしていた。しかも何故か、指揮を取るのはシエリアである。オマケにこの様子は世界中に生放送でお届けされており、今も画面の前で涙する捕虜の家族もいた。

だが例えそうであっても、彼女が幾ら嫌だと思っても、やるしかない。上からの命令とはつまり、帝国の主たる帝王の命令も同義。断る事はできない。

 

(頼む、全員手を挙げてくれ!!!)

 

シエリアの願いが通じたのか、パラパラと捕虜が手を挙げた。その者達は皆一様に、家族に最後の言葉を送っている。1人1人の前で話を聞いていき、最後の1人にして日本人で唯一手を挙げた者の前に立った。

 

「まず俺達は警察機構の乗組員だ。軍人じゃない。これまで何度も言ってきたが、信用してくれないのは分かっている。

だから最後に、お前達に警告してやる。俺達の祖国、大日本皇国はこの世界で一番強い国家だ。神聖ミリシアル帝国も、ムーも、やろうと思えば殲滅できる。この惨事を見れば、必ず皇国の主たる天皇陛下と三英傑が報復へと動く。2年前、パーパルディア皇国は拉致した民間人を、三英傑の川山特別外交官と神谷統合軍元帥の前で処刑して見せた結果、主要都市と経済基盤を破壊し尽くし、最後には首都を跡形も残らず破壊して報復した。お前達の国も、全く同じ未来を辿るだろう。

いつか、死ぬその瞬間で思い出すがいい。お前達が誰を敵に回してしまったのかを。そして後悔するがいい。そうだ、どうせならこの言葉で締めよう。グラ・バルカス帝国の全国民よ、小便は済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて、命乞いをする心の準備はOK?」

 

シエリアは恐怖した。まずこの期に及んでも、軍人じゃないと言い張るのだ。恐らく本当なのだろう。だが彼女に権限が無い以上、助ける事は出来ない。

そして何より一番恐怖を抱いたのは、この死の間際であっても相手に堂々と啖呵を切れるだけの狂人レベルの愛国心であった。仮にグラ・バルカス帝国の臣民が同じ様な場面にあったら、恐らく死に恐怖し泣き叫び、こんな事はできない。それが出来てしまう辺り、彼らにとって祖国の大日本皇国はそれだけ素晴らしい国家であり、誇りなのだ。国民性としては厄介極まりない。

 

「これで最後だな。今、画面の前にいる、これから帝国と戦う者どもよ!!捕虜になり、帝国に従わぬ愚か者たちの処刑をこれより行う。愚か者の末路をその目に焼き付けるがよい!!!そして、我が国が怖ければ、自国政府に、帝国に降るよう働きかけるがよい。降らねばこれからの光景は、未来のお前たちだ!!!

我が軍門に降れば、永遠の繁栄を約束しよう!!!」

 

殺したく無い。そう心で何度も念じるが、それでどうにか出来る訳もなく、身体は淡々と職務をこなそうとする。

 

「構え!!!!」

 

兵士達がライフルを構える。だが「撃て」と言おうとした瞬間、後方にあった対空機銃と歩兵達の立っている場所が爆発した。

 

「な、何!?」

 

ゴオォォォォォォ!!!!!

 

上空を高速で飛び去っていく航空機が見えた。低空だったのもあって、音と衝撃と風が凄い。見た事もない形状と、突然の事に兵士達は右往左往して処刑どころではない。

 

「はは.......」

 

ふと日本人の方を見ると、全員が笑顔を浮かべ、ある者は涙すら流していた。シエリアの頭は完全に恐怖とパニックに支配され、半狂乱になりながら「何がおかしいの!!」と怒鳴る。その問いに、さっき最後の言葉を言っていた男が答える。

 

「さぁ、逃げろ逃げろ。あれは俺達の祖国、大日本皇国の戦闘機さ!!」

 

男がそう叫ぶと、今度は兵士が叫んだ。「何か降下してくるぞ!!」と。空を見上げれば、輸送機が垂直に降下してくるではないか。すぐに兵士達は近くの対空機銃へと跨り、対空射撃を開始する。だが、その程度で突空の装甲は破れない。代わりに搭載している20mm、30mm、7.62mmのバルカン砲を乱射して殲滅していく。

 

「突撃!!」

 

10機の突空が降り立ち、カーゴドアが開くと同時に神谷戦闘団の兵士達が飛び出して処刑場は一気に混戦へと移行する。たかだか植民地の警備位しかしてない兵士の中でも素人の連中と、幾度の実戦を通して死線をくぐり抜けてきた歴戦の猛者では勝負にすらならず、瞬く間に倒れていく帝国兵達。

その混乱に乗じて棒に固定されていた各国の捕虜を解放し、突空の中に押し込む。周囲の一掃が完了し、撤退しようとした時、神谷はある事に気付いた。カメラが、偶々神谷の方を向いて回っていたのだ。それを見て、ちょっと面白い妙案を思い付いた。神谷は徐ろに天夜叉神断丸を掲げる。

 

「聞け!!この放送を見ている、世界中の人々よ!!!!グラ・バルカス帝国の兵士は悪魔でもモンスターでも神でもない!!殺せば死ぬ!!だから恐れるな!!!!何かを守りたい者、祖国や故郷を愛す者は武器を取り抗え!!!!奴等を叩き出すのだ!!!!

そしてこれを見ているグラ・バルカス帝国の国民よ、よく見るがいい!!!!お前達は最強ではない!!これは始まりにすぎない!!言うなれば、俺達からの宣戦布告だ!!!!これから我が国の国旗たる日の丸や、この大陸を背にしたアリコーンと銃と2本の太刀の紋章を見れば逃げるがいい!!この紋章はお前達にとっての死神だ!!!!世界の何処に潜もうと、降伏するその時まで我々は殺し続ける!!!!俺の名は三英傑が1人、神谷浩三・修羅!!大日本皇国の守護者の末裔にして、皇国剣聖を冠する者!!覚えておくがいい!!!!!」

 

そこまで言うと、カメラを剣で叩き斬って破壊。突空に乗り込み、レイフォルから逃げた。この放送は世界中、ありとあらゆる場所を駆け巡り、大反響を呼んだのは言うまでもない。

 

 

 

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