最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第五十八話狼煙は上がる

捕虜奪還の翌週 神聖ミリシアル帝国 アルビオン城

「これより、皇前会議を開催いたします!」

 

世界の富が集まる、魔法文明の頂点に君臨する神聖ミリシアル帝国では、今後のグラ・バルカス帝国への対応を決めるべく、日本で言う御前会議にあたる『皇前会議』が行われる事になった。

その為、議場には現皇帝ミリシアル8世以下、各機関の長達が勢揃いしている。

 

「余は、許せない事がある。我が民を、愛すべき神聖ミリシアル帝国の臣民を、無差別に殺した挙句、カルトアルパスを攻撃し、世界の長たる神聖ミリシアル帝国の顔に泥を塗り、世界会議でさえ踏みにじったあの国!奴らは異世界より出現したらしいが、この世界を舐めきっている!!!

余はこの世界の長として、この世界を多大に侮辱したグラ・バルカス帝国に神罰を下す!!」

 

静かな会議室に、皇帝の怒りが響き渡る。別に自分達が怒られてる訳でもないし、寧ろこちらも相手に対して怒りを感じているのだが、やはり皆、内心ではビクビクしている。

 

「我が国を長として、中央世界及び第二文明圏で世界連合軍を組織し、旧レイフォル沖合に展開するグラ・バルカス帝国の艦隊を滅し、更にムーへ援軍を送り、第二文明圏から奴らを叩きだす!!!

その後体制を立て直し、奴らの本土を、帝都を焼き払え!!!」

 

帝国の長たる皇帝が「グラ・バルカス帝国滅ぼしてこい!!」と宣言した以上、もうほぼ決定事項となった。つまり会議の名目である『グラ・バルカス帝国への対抗策の議論』は、もう終わってしまったのである。なのでここからは、実際にどう戦争するかを考える議論へと切り替わる。

 

「陛下!すでに海軍は第1から第3までの艦隊の派遣準備が完了しており、陛下のお言葉を賜り次第、即座に出撃可能です。他の艦隊については現在準備中ではありますが、本土防衛用、あるいは陸上部隊派遣の際の護衛として残しておきたいと考えます。

陸軍は第二文明圏への派遣を視野に入れて、現在編成を行なっております。また同時に輸送船の整備点検と、民間船をチャーターする事も視野に入れての準備を行なっております」

 

国防長官のアグラが、現在の軍の状況を簡単に報告する。しかしここで、外務大臣のリアージュが苦言を呈した。

 

「アグラ殿、第零式魔導艦隊及び各国の護衛艦隊はグラ・バルカス帝国の空母機動部隊に敗れている。三個艦隊程度の戦力は足りるのでしょうか?

それに各国の戦力は実質的に形だけのものであり、あてにしない方が良い。次に敗れた場合、我が国の信用失墜につながりますぞ」

 

「第零式魔導艦隊は確かに新鋭艦で編成されていたが、数が少なかった。それに敵の航空戦力に対して、上空支援が無かった事が敗因と考えている。敵の航空攻撃による被害は甚大であり、航空戦力に関しては今回の戦訓を活かす必要があると感じているが、それらと敵のレイフォル沖の艦隊規模を考慮して、三個艦隊で十分に足りると判断したのだよ。

派遣する1〜3艦隊には、天の浮舟を運用するための空母もあるし、大型魔導戦艦も多数配備されている。

ところで、今回の作戦については中央世界と第二文明圏で編成され、第三文明圏は外すという事でよろしいのかな?」

 

「各文明圏といっても、実質的に我が国が主力となるでしょう。世界の連携という意味合いで連合軍は組織しますが、戦力として数える事は出来ない。

今回は早期殲滅という陛下の御意志もあり、早急に敵海上戦力を滅する必要性があることから、来るだけでも時間のかかる第三文明圏を除外しています」

 

確かに風力がメインの動力源である第三文明圏では、海戦にも間に合わないだろう。だがしかし、大日本皇国だけは違う。知っての通り日本の船舶は基本的に全て機械動力船である。帆船も存在してない訳ではないが、それはあくまで学術調査用や観光船目的であったり、何かしらの伝統として作られているにすぎない。しかも機械動力といってもガスタービン、ウォータージェット、原子力、核融合と多岐に渡る上にどれもこれも高性能。余裕で海戦には間に合う。

 

「そう言えば、大日本皇国は呼ばないのですか?」

 

「呼ぶつもりではあるが、果たして来るかどうか」

 

リアージュの質問に、アグラは苦虫を噛み潰した様な顔で答える。アグラの同期の友人は、駐在武官として大日本皇国にいる。その彼からの話で、多分来ない事を予感していた。

 

「アグラよ、どういう事だ?」

 

「これは私の友人からの話ですし、宴席での話ですので、些か荒唐無稽ではありますが、誤解を恐れず申し上げます。

大日本皇国は、恐らく単独でグラ・バルカス帝国を打ち破る兵力を備えています」

 

周りの高官達はザワつくが、ミリシアル8世は手を少し上げて鎮めさせる。

 

「続けよ」

 

「はっ!どの様な軍備かは、この際重要ではありません。重要なのは、彼らの持つ経験です。聞けば彼の国が転移してきた世界は、各国が連合を組む事も多く、頻繁に合同訓練を行っていたとのこと。

これは私見ですが、それ故に訓練を共にし相手側の戦略やドクトリンをある程度理解してからでないと連携が取りづらいのだと思います。ですので、恐らく派遣されないという風に思っております」

 

「そうであるか。だがアグラよ、我が祖国こそ世界の導き手なのだ。彼の国が軍を派遣したとしても、こちらが合わせてやれ。よいな?」

 

「仰せのままに!」

 

つまり「先輩風を吹かしてやれ」という事だ。だが生憎と、皇国の戦略は末端の兵士に至るまで合理的かつ高度な戦略が叩き込まれている。先輩風を吹かしても、単に面倒な奴認定されて終わりである。

この後も幾つかの質疑応答を経て、会議は終わった。そして外務省から、各国宛にミリシアル8世直筆のサインの入った国書が送られたのである。

 

 

 

翌々日 大日本皇国 外務省

「それで、これが送られてきた国書か」

 

「あぁ、そうだ」

 

本日は珍しく、神谷が川山のいる外務省に訪れていた。因みに川山は実質的には、外務大臣と同等の権力を持っている。その為、専用の個室が設けられていたりするのだ。

 

「こりゃまた、予想通りとは言えど思い切った事をやったな」

 

「あぁ。帝国からすれば、他の国は基本的に弾除け要員としか思ってないだろう。その位、軍事力に差があるからな。軍の実利よりも外交と見た目の方を取ったって事だ」

 

「で、そっちとしてはどうしたい訳?」

 

「軍を出して欲しい。パーパルディア皇国を滅ぼしたとは言え、まだこの国はこの世界にとっては侮られてる。それを払拭し、この国が強大な国だと示す為にも、軍を出して欲しい!」

 

神谷としては、願ってもないというか、出していいなら喜んで派遣する。だが問題は、派遣する規模だ。恐らく各国10隻以上、20隻未満位が平均となる。一方、こちらの一個主力艦隊は総勢237隻。多すぎる。かと言って防衛艦隊は22隻だが、こちらは戦艦の様な大物がいない。この世界は未だに大艦巨砲主義がある以上、戦艦は一目で軍事力の指標となる。となるとやはり、戦艦は外せない。

 

「規模についてだが、どの位を考えてる?」

 

「.......大艦巨砲主義があるん以上、戦艦入れておきたい。それに実質、派遣艦隊で全部相手取る羽目になる。となると熱田や赤城の様な、ゲームチェンジャー的兵器は送り出したい。だが流石に、そっちとしてもアレだろ?」

 

「流石にあの規模は、ミリシアルの顔を潰すだろうな」

 

「ならまあ、適当に考えるさ。大体水上艦を20隻程度で、秘密裏に潜水艦を付ける。勿論、熱田型と赤城型は無しだ」

 

「それで頼む」

 

この時、神谷は川山には見えない角度で悪魔の様な笑みを浮かべていた。今、神谷は確認した。「熱田型と赤城型は無しだ」と。だが皇国海軍には、まだ戦艦があるではないか。戦艦の代名詞であり、皇国海軍どころか旧世界の海軍で最古参の戦艦。大和型前衛武装戦艦がまだ、こちらにはいる。それをぶっ込めば、向こうは心底驚くだろう。

神谷は黒い笑みを浮かべながら外務省を後にし、その足で今度は横須賀にある地下ドックに向かった。

 

 

 

1時間後 横須賀海軍工廠 地下ドック

「これはまた、派手にやられてんなぁ」

 

「これを修理しろと言われたあっしらの気持ちが分かるかい?」

 

後ろから髭が伸び、汚れまくったツナギを着た60代位の強面の男が声をかけてきた。この男こそ、人間国宝との呼び声高き横須賀海軍工廠の工廠長(ドン)、東成雅である。

造船一筋50年。この世に熱田型と赤城型を生み出して、更には仮称513号艦すら建造した生ける伝説である。

 

「成雅のオヤジじゃねーか!!」

 

「おうよ浩坊。テメェ、この野郎。偶には顔見せんかい!」

 

「イッテェ!相変わらず力強いんだから」

 

「ガハハハ!!」

 

因みにこの2人、超仲良しである。というのも訓練生時代に神谷は、何度もここに足を運んでいるのだ。ここの作業員たちは表舞台に立つ事はないが、最強と名高き皇軍を支えるのには、こういったプロフェッショナルな職人達が必要不可欠である。それを理解しているからこそ、神谷は学生時代に各地の工廠や研究施設を見学に行っていた。

その考えを知った時、東は歓喜の余り大泣きしたのは有名な話です、以来2人は世代を超えての友人関係となっているのだ。

 

「で、ダメージはどんなもんよ?」

 

2人の目の前には、カルトアルパスで奮戦した武勲艦、ムーの戦艦『ラ・カサミ』が鎮座していた。

 

「聞いて驚け。まず右舷の前方2箇所、左舷中央部に魚雷による破口。座礁の衝撃で衝角、所謂ラムが潰れて、中央部の両舷に機銃掃射の弾痕やら破片による弾痕やらで酷い有様だ。フォアマストも折れてる。

中身はもっと酷くてな、多分41cm砲か何か食らったんだな。二番砲塔とその付近が丸々オジャンだ。弾薬庫が弾け飛んで、メインマストの根元はいつ折れたって可笑しくない。副砲塔はまあ取り敢えずは数門持ってかれてるがそれは良いとして、主機関のディーゼルも焦げ付いて動かねぇ上に、スクリューシャフトも左側のが曲がってやがる。タンクも水漏れしてるし、オマケに舵も座礁の影響か右に曲がってて折れかけてやがる。極め付けは竜骨(キール)がヒビ入って折れかけてる」

 

「なぁ、それってぶっちゃけ」

「一旦解体してスクラップにして、作り直した方が安上がりだ」

 

「だよなぁ」

 

神谷自身戦争屋であって、技術屋ではない。しかし叔父が技術者であり、学生時代の工廠行脚で各部門の触りの部分と偏りまくりではあるが、一部は専門家と同等の知識を持っている。故に、東の説明で目の前に鎮座する戦艦のダメージがどれだけ深刻か理解できた。

 

「だがお上からは、治して欲しいとのお達しだ。俺達は天下の横須海軍工廠の誉高き職人だ。治して、いや。前よりもずっと強くしてやるさ。それに、聞いちまったからな。久しぶりによ」

 

「まさか、声を聞いたのか!?」

 

「おうよ。コイツは確かに、俺に語りかけてくれたぞ。私に、祖国を守る力を貸してくれってな」

 

東には超能力とまでは言わないが、物に宿った霊というか魂というか、彼自身よく分からないが、とにかく物の声が聞ける能力がある。四六時中聞けたり、こちらが「声を聞かせろ」と言ったところで聞ける訳ではなく、対象物が沢山の人の思いを内包しているか、その物自体に何かしらの使命があって、東とチャンネルが合えば声が聞けるらしい。

 

「で、浩坊がここに来たって事は、何か頼みがあるんだろ?」

 

「あぁ。一応政府からのメッセンジャーでな、簡単にいうぞ。『コイツの主砲塔を流用して命中率上げろ。期日は変えずに』だ」

 

「.......なぁ浩坊、あっしが何言いたいかは分かるよな?」

 

「無理だよなぁ。あ、一応俺も止めたからな?最初は510mm砲やらレールガンやら載せようって言ってたんだから」

 

一言に砲塔といっても、その実は一個の超複雑なシステムである。同じ規格なら良いが、例えば別の砲塔に違う口径の砲身に取り付けたとしよう。そうすると内部システムの砲身安定装置から組み直さないといけない訳で、まして主砲塔流用で命中率あげろなんて不可能である。

それもマンパワーとか資金云々のどうにかできる次元ではなく、物理的に不可能である。第一次世界大戦の戦闘機にジェットエンジンを乗せたら機体が壊れて、使い物にならないのと同じである。それを知っているからこそ、神谷は渋い顔をしたのであった。

 

「だから、俺からもっと現実的な話をしたい。この戦艦、オヤジの自由に弄ってくれ」

 

東は片眉がピクリと上がり、顔も真剣だが少し笑みを浮かべている。これは興味が湧きまくってる時の顔だ。

 

「そいつぁ、つまり、この俺がコイツを好き勝手やって良いってことか?」

 

「そうだ。武装は勿論、船体形状や機関も変えてもらって構わない。ミサイルもガスタービンも、ブラックボックス化しておけば搭載してくれて構わない」

 

「.......やはり浩坊は、上に立つべき人間だ。人の動かし方、それも職人気質の頑固者の股開かせるのが上手だ。良いだろう、あっしらが責任持って改造してやる」

 

そう言うと、東はマイクを掴んで作業員全員を集めた。そして東の命令が飛ぶ。

 

「野郎共!!コイツの改造だが、全てあっしの自由になった!!!!ここにいる神谷長官が、あっしに全てを任せてくれた!!いつもの様に最高の仕事を慌てず突貫でこなすぞ!!!!」

 

作業員、いや。この工廠の誇り高き職人達の目の色が変わった。この人達ならやってくれると、一目で分かる。この日から約半年の歳月をかけ、ムー海軍の象徴たる戦艦『ラ・カサミ』は横須賀海軍工廠で大改装が行われたのであった。

 

 

 

数ヶ月後 沖縄南東400km上空

「平和だなぁ」

 

「転移してからこっち、一応対潜哨戒はしてますけど基本は船舶の監視ですもんねぇ」

 

この日も沖縄基地所属のPSU3、通称『三式大艇』は対潜哨戒を行なっていた。この機体は傑作機の二式大艇から派生していった素性の良い機体であり、対潜哨戒と救助が主任務となっている。

今日も何もなく終わるかと思っていた。しかし、レーダー員の1人が報告をあげた。

 

「!?レーダー、スモールコンタクト!方位310、40km!!」

 

この報告に機内は一気に緊張感が高まった。この報告で言うスモールコンタクト、とは「レーダーで小さな物体が海上を移動しているのが分かった」という事。海上で動く小さな物体となると、潜望鏡の可能性がある。

 

「機長了解。オールクルー、機長。レーダー探知を得た、12:23、調査に向かう。急降下旋回」

 

機体が左に大きく傾き、高度がぐんぐん下がっていく。だがしかし、すぐにレーダーから反応が消えてしまった。

 

「ターゲット、レーダーロスト!タイム24分!!」

 

「機長了解。オールクルー、機長。レーダーロスト、24分。潜水艦の可能性大!調査を継続する」

 

反応が消えたところを見る限り、恐らく潜水艦なのだろう。しかも探知から消えるまでの時間が短いので、もしかすると相手がこちらに気づいて隠した可能性もある。

 

「潜水艦捜索の為の、ソノブイを設置していく。投下準備」

 

機体下部の発射口から、ソノブイが投下されていき探知網を構築。潜水艦の発見にかかる。ここからが長丁場かと思いきや、ものの数分で潜水艦を発見してしまった。

 

「ソーナーコンタクト、これは潜水艦なのか?」

 

「どういう意味だ?」

 

「いやあの、明らかに音がデカすぎるんです。潜水艦っていうより、水中航行艦というか、とにかく全く隠れる気が無いような。なんかもう、普通に水面走ってるのと同じみたいな状態です」

 

機長自身、元がソナーマンだったのもあって、実際に音を聞いてみた。潜水艦のエンジン音なのは間違いないが、どう考えても音がデカい。というかうるさい。確かにこれでは忍べてない。

しかも何故か潜水艦が12隻もいたので、とりあえず応援を呼んで嘉手納基地からP1泉州4機、沖縄基地から三式大艇3機が飛来し、更に近海を航行中だった第五防衛艦隊が急行してきた。

 

 

 

1時間後 同海域 潜水艦『ミラ』艦内

「獲物がいたぞ。日本軍の艦船だ」

 

「彼らが哀れですね、艦長。彼らは何が起こったのかもわからず、いきなり撃沈される事となるのですから」

 

「皇帝陛下の御意志だ。仕方あるまい。我々は帝国の力を世界に知らしめる先方となる。同じ転移国家である大日本皇国に対しても圧倒的に強く、そして帝国にとってはこれほどの距離でさえ無意味なものという事を世界に知らしめるのだ!さあ、攻撃を行うぞ」

 

彼らは知るよしも無い。大日本皇国海軍は世界的に見てもトップクラスにぶっ飛んだ対潜能力を持っているのである。まず潜水艦を捕捉するのは旧世界の海軍なら出来るが、そこから正確にピタリと追尾する事が出来るのはアメリカと皇国海軍のみである。

更に言えば例え相手がデコイをばら撒こうが、マスカーという気泡を発生させて聴音能力を奪う装置を使われようが、問答無用で敵艦の位置を見破るアンチデコイホーミング機能と、最も破壊力の高い位置で起爆する磁気信管を標準搭載した魚雷が各艦に搭載されている。おまけに使う人間もプロフェッショナルとくれば、もう向かう所敵なしである。

 

「前部魚雷発射管、注水開始。僚艦にも暗号にて伝え!」

 

グラ・バルカス帝国の潜水艦には、鯨の鳴き声を元に開発した水中暗号通信機が搭載されており、音の高さで様々な命令を伝達することが出来る。今回は「敵艦に向け攻撃開始」という意味を持つ音を発生させた。

だが勿論、この音も魚雷発射管への注水音も全て筒抜けであった。

 

 

「ソーナー探知!アンノウン、魚雷発射管に注水を確認!!攻撃来ます!!!!」

 

「機関、最大船速!!回避運動始めぇ!!!!」

 

所属艦全隻が一気に加速し、デコイを発射して撹乱に入りつつ、舵をジグザグに切って回避運動を開始する。

だが、2本の魚雷が運悪く艦隊への衝突コースに入ってしまう。だが、海中にも刺客はいるのだ。第五防衛艦隊所属の潜水艦、『伊953』は直ちに魚雷発射管に注水し、発射。魚雷は『ミラ』へと向けて、進んで行く。そして『ミラ』が放った魚雷と交差した瞬間…

 

バシャーーーーーーン!!!!!!

 

魚雷が起爆し、『ミラ』の魚雷を破壊してしまったのである。なんと『伊953』は『ミラ』の発射した魚雷の進路上に向かって、寸分の狂い無くピタリと交差させた上で、半径数メートルで交差する瞬間に信管を作動させてしまうという、もう訳のわからない事をやってのけたのだ。

これには『ミラ』の乗員も驚いているし、なんなら味方である第五防衛艦隊と空中に展開している哨戒機のクルー達も驚いた。

 

「この機を逃すな!現時刻を持って、アンノウンを敵性潜水艦として判断。正当防衛攻撃、始め!!」

 

「アイ・サー!僚艦の信玄、敵潜水艦に照準します!!」

 

艦隊司令の屋島が命令を飛ばす。僚艦の浦風型駆逐艦から、一斉に対潜ミサイルの信玄が放たれる。時を同じくして空中待機していたSH13海鳥の対潜爆雷の一斉投下、泉州と三式大艇の対潜魚雷一斉投下も行われた。

 

「なんだ?あのパラシュートは」

 

「か、艦長!探信音が来ます」

 

「な、なんだと!?そ、それは対潜.......ソナーか?海軍で開発中の物を何故、皇国が」

 

ミラの艦長は驚いた。対潜ソナーはまだ実用段階には至っていないのだ。現在グラ・バルカス帝国の先進兵器開発局で開発されており、最近ようやく実用段階目前になりつつある程度の代物なのである。

 

「接近してくるのは魚雷です!!魚雷から探信音が!!!!」

 

「ね、寝ぼけるな!!魚雷が探信音を出しながら追いかけてくる訳」

 

この時、艦長の耳には確かに「ピコーンピコーン」という音が聞こえた。音が段々と大きくなる辺り、近づいて来るのも分かってしまう。次の瞬間、船体が激しく揺れ海水が大量に流入して来るのが目に飛び込み、ついで自分の身体を海水が包み込んだのが分かった。

こうしてグラ・バルカス帝国の潜水艦『ミラ』を旗艦とした第2潜水艦隊第4戦隊は永久にその姿を海中に沈めたのである。この事は神谷の耳にも入り、対潜哨戒機による対潜哨戒が増えたのであった。

 

 

 

更に数ヶ月後 横須賀海軍工廠 地下ドック

「こ、これが!」

 

この日、ミニラルら戦艦『ラ・カサミ』の乗組員達は、横須賀海軍工廠の地下ドックに居た。目の前には明らかに今までとは違う、新造艦の様な『ラ・カサミ』がその巨体を休めている。

 

「アンタが艦長さんかい?」

 

「あ、あぁ。あなたは?」

 

「あっしは横須賀海軍工廠、特別技官の東ってもんだ。今回アンタらの船を修復し、改装作業の指揮を取らせてもらった」

 

ミニラルが東に抱いた第一印象は、気難しそうな職人であった。実際正解である。だがあれだけボロボロで、素人であるミニラルからしても廃艦が妥当であると分かってしまうほど酷くやられた船が、ここまでピカピカになったのを見る辺り、職人としての技量は明らかにトップクラス。伝説の領域に足を踏み入れているのが分かる。

 

「取り敢えず船に乗りな。だが、先にアンタらに言っておく。コイツはもう、アンタらの知る『ラ・カサミ』じゃねぇ。外見こそ『ラ・カサミ』だが、中身はバケモンだ。覚悟しとけ」

 

一通り見てもらってから艦橋に向かった訳だが、ここだけでも訳がわからない。これまで露天艦橋だったのだが、それが屋根に覆われてるのは分かる。だが何故かブラウン管テレビの様なモニターが、そこら中にある。艦内も外も、何もかもムーの常識では分からない改造が施されていた。

 

「まあ見てもらった通りだ。船体は131.7mから185mに延伸したが、船体形状はバルバス・バウを始め、航海に最適な形へと変更してある。エンジンもウチの駆逐艦で採用されている、小型軽量大出力ガスタービンエンジンを4機搭載した。更に補機関としてウォータージェットポンプも搭載してある。通常で45ノット、ウォータージェットを使えば一時的に60ノットでぶん回せる」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!今、45ノットが最高で、一時的に60ノットまで加速すると言ったか!?!?」

 

「それがどうかしたか?」

 

ミニラルは口が空いたまま塞がらなかった。因みに元々は18ノットである。

 

「続けるぞ。戦艦の華たる武装だが、コチラも色々改造してある。まず戦艦の顔、主砲だが前部砲塔にもガタが来てたんでな。何方も降ろしてある。代わりに46式戦車の砲身を改造した40口径350mm連装砲を搭載してある。副砲も摩耶型の砲身を切り詰めた45口径260mm連装砲に変更してあるし、他の単装砲も一律60mm機関砲に変更してある。更に20mm単装機銃は全部下ろして、49式対空戦闘車の砲塔を4基そのまんま流用してある。

更にミサイルも大量に搭載したぞ。流石にVLS、つまり垂直発射装置を搭載するのは無理だが、あっちこっちから発射機を調達してある。対艦ミサイル桜島24発、短距離対艦ミサイル家康90発、AIM63烈風120発、舷側やら色んなところに搭載した。

そして極め付けは、船体を貫く形で50口径510mm電磁投射砲を搭載してある。エンジン4基の内、3基はチャージに回す必要はある。だがコンデンサーとスーパーチャージャーの併用で、チャージ時間は5秒と掛からない。威力はそれ一撃でグレートアトラスターだったか?アイツのバイタルパートをぶち抜いて破壊できる。しかもその弾が、2発付いてる」

 

取り敢えず、どんなものか分かりにくいと思うので、設定集の要目と同じ様に纏めようと思う。

 

 

ラ・カサミ級戦艦一番艦『ラ・カサミ(皇国Edition)』

全長 185m

幅 23.2m

最高速力 45ノット(ウォータージェット時60ノット)

機関 ガスタービン

   ウォータージェット

レーダーシステム 天照武器システム

武装 50口径510mm砲 1門

   40口径350mm連装砲 2基

   45口径260mm連装砲 6基

   60口径60mm機関砲 36基

   49式対空戦闘車砲塔 4基

   48式地対艦ミサイルシステム 4基

   三連装近距離艦対艦ミサイル発射機 30基

   マルチパイロン 20基

 

 

とまあ、こんな感じである。頭のおかしいレベルで武装が搭載されているが、この艦自体異端なので仕方がない。しかもこの艦、ミサイル発射管に限りパージできる。船体に埋め込まれてるのは無理だが、発射機が露出してる物はパージして海に投棄できる機能がついてる。因みに本来の目的は、整備性向上の為であるのだが。

 

「とまあ説明は以上だ。最後に、どんなに優れた兵士を持とうと、扱うのは他でもない人間だ。この艦を生かすも殺すも、アンタら次第。だがこの艦はアンタらが信頼すれば、それに必ず答えてくれるタイプの船だ。それだけは覚えておけ」

 

東は彼らに技術屋としての思いを伝えると、早々に艦から降りた。タラップから離れた瞬間、また声が聞こえた。

 

『ありがとう。これでまた、祖国を守れる』

 

「.......また傷付いたら、ここに来い。完璧に治してやる。ここはお前さんのもう一つの故郷であり、もうお前さんはあっしの子供だ」

 

そう言うと、東は作業員の詰所へと戻っていく。この1ヶ月後、慣熟訓練を終えた『ラ・カサミ』は、とある戦艦の護衛を受けつつ祖国・ムーへの帰還の途に着いたのであった。

 

 

 

 

数日後 カルトアルパス港

「トルキア王国、戦列艦21隻到着!」

 

「アガルタ法国、魔法船団17隻到着!」

 

続々と港に到着する中央世界という、文明圏の中でも最高レベルを誇る国々の主力艦隊。彼らはこの港に集結後、第2文明圏の艦隊と合流し、北上する予定である。

今回の艦隊は護衛艦隊ではなく、憎きグラ・バルカス帝国を滅するために主力艦。1国あたりの数も多く、港を埋め尽くさん限りの艦隊にブロンズのみならず港の者達は圧倒されるのであった。

 

「凄い光景ですね。奴らに神罰を下す時が来たのですね!

中央世界各国でこれだけの艦隊、しかも第2文明圏まで加わるのですからグラ・バルカス帝国も鎧袖一触、相手にならぬでしょう。」

 

入社5年目の若手社員がブロンズに話しかける。ブロンズは得意げに話し出した。

 

「そうだな。世界連合ともいえる今回の艦数は、第2文明圏も合わせると相当な数となろう。圧倒的な数はそれだけで力となる。それにこの艦隊には戦艦を含む地方隊が13隻付き、さらには別動隊として西部方面艦隊が付く。主力艦隊のうち、3艦隊もグラ・バルカス帝国討伐に加わるらしいぞ」

 

「なんと!!皇帝陛下が本気になられたのですね」

 

そんな事を話していると、湾外の監視所から驚きの報告が上がった。何とあの『グレードアトラスター』が現れたというのだ。それも1隻ではなく、4隻も。

 

「な、なんだとぉ!?!?」

 

局長のブロンズは一気に青褪めた。またあの惨劇が繰り返されるのかと、気が気ではなかった。だが続いて、またも驚きの報告が上がった。

 

『グレードアトラスターは大日本皇国の旗を掲げています!!今、無線でも確認が取れました。グレードアトラスター級戦艦4、戦艦2、空母1、巡洋艦1、駆逐艦8!大日本皇国海軍です!!』

 

「大日本皇国海軍だと!?!?」

 

ブロンズの脳裏には、約半年前に起こったカルトアルパスでの惨劇を思い出していた。確かにあの時、皇国は大型の航空兵器を持っていた。だが艦艇は対空戦にしか強くなかった。とてもアンバランスというか、良くわからない発展の仕方を遂げた艦艇だった筈だ。そんな皇国がグレードアトラスター級を4隻も連れて来るなんて、予想外すぎたのである。

 

「と、とにかく臨検だ!!兵士を集めてくれ!!!!」

 

ブロンズは守備兵を集めて臨検隊を組織し、グレードアトラスター級戦艦の1隻に乗り込んだ。艦橋へと上がり、艦長に簡単な聴取を行う事にしたのである。

 

「ようこそ、戦艦『扶桑』へ。歓迎します」

 

「歓迎痛み入ります。早速ですが、本題に入らせて頂く。貴官らはグラ・バルカス帝国の軍人ではありませんな?」

 

「えぇ。この戦艦『扶桑』は確かに、グレードアトラスター級戦艦と瓜二つでしょう。しかし!この扶桑を、グレードアトラスターと一緒にしないで頂きたい。この戦艦、正確には扶桑の姉となる同型艦の大和と武蔵は、約110年前に我々の居た世界で起きた世界中を巻き込んだ戦争を戦い抜いた正真正銘の古強者。年季も格も、グレードアトラスターを遥かに超えております。

それにこの艦の艦首には、黄金に輝く菊の御門があるでしょう?アレは我が国の王、天皇陛下の御一族の紋章。あの紋章が輝く扶桑は間違いなく、大日本皇国海軍の一翼を担う戦艦ですよ」

 

ブロンズはこの説明を、とても興味深く聞いていた。元来、軍人は何処も愛国心が高いが、ここまで愛国心に溢れ祖国を誇りに思う軍人も居ないだろう。少なくとも彼がこれまで出会ってきた軍人の中では、トップクラスだと思う。何はともあれ、大日本皇国の派遣艦隊は正式にカルトアルパスに入港することが出来た。では最後に、この堂々たる派遣艦隊の陣容を解説して話を終わろう。

 

世界連合軍特別派遣艦隊

・鳳翔型原子力航空母艦(旗艦)1

・大和型前衛武装戦艦4

・伊吹型航空戦艦2

・摩耶型対空巡洋艦1

・浦風型駆逐艦4

・神風型駆逐艦4

 

 

 

 

 

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