最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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明日は最強提督を二話連続投稿します!また後書きでお知らせがあるので、ぜひご覧下さい。


第五十九話海の皇帝

「急げ!急げ!情報をかき集めろ!!」

 

「おい!首都防衛艦隊は!?!?」

 

「現在全力出撃中です!!」

 

戦艦『ラ・カサミ』が横須賀を旅立ってから約1ヶ月。本来なら世界連合軍によるグラ・バルカス帝国との戦闘結果を待つ筈だったムーの統合参謀本部は、現在職員達があちこち駆けずり回る事態となっている。何故か。それは今から1時間程前に遡る。

今から1時間前、オタハイト空軍基地から定期哨戒に出撃した機体が、偶然グラ・バルカス帝国海軍の艦艇を発見したのだ。それも輸送艦隊とか駆逐戦隊のような、そんな小規模ではない。オリオン級、つまり金剛型戦艦6隻を筆頭に、軽空母2、重巡2、軽巡3、駆逐8からなる18隻の大規模艦隊だ。報告を受けた統合参謀本部は直ちに迎撃を指示。現在、首都防衛艦隊とオタハイト空軍基地を始めとする近隣航空基地から、出せるだけの機体に積めるだけの武装を積んで全力出撃中であった。

しかもここに来て、更にとんでもない事態が発覚してしまう。

 

「き、緊急電であります!!マイカル沖にも敵艦隊が現れたとのこと!!!!規模は戦艦1、空母1、重巡3、軽巡2、駆逐10!!」

 

「なんだとッ!?!?まさか二正面、いや!世界連合軍と相対している筈の艦隊も含めれば、奴等は三正面で戦っていることになるぞ!?!?」

 

「だとしたらグラ・バルカス帝国の戦力は一体どれだけあるんだよ.......」

 

海軍本部長の考えに、他の部下たちも絶望していた。正直二正面作戦だろうが三正面作戦だろうが、そこは余り問題ではない。問題なのはムーが逆立ちしたって勝てない戦力を持った軍事組織が、二正面作戦、最悪の場合は三正面作戦を展開できるだけの戦力を保持している点にある。

例えばこれが陸海での二正面なら、まだ少しは望みがある。だが今回は艦隊、海軍のみで二正面をやっている。今のムーに駆逐艦はまだしも重巡や戦艦に対抗できる艦艇が、戦闘機に対抗できる航空戦力が、一体どのくらいあるだろうか。これだけの大部隊を相手取って勝つ事は、まず無理である。

だがしかし、この絶望の中でも少しだけ希望が持てる報告が上がってきた。現在オタハイトには『ラ・カサミ改』がいて、その護衛についてきた皇国の戦艦はまだマイカル沖を航行していたのだ。衛星で事態を把握した戦艦は、オタハイト防衛の為に戦う事を決定。この報告が統合参謀本部にもたらされたのだ。

 

「大日本皇国の戦艦より入電!『我、これより侵攻中のグラ・バルカス帝国海軍の迎撃に向かう』以上です!!」

 

「本部長、彼の国の戦艦なら或いは」

 

「そうだな。よし!その戦艦に感謝を伝えろ!!」

 

一方その頃、オタハイト港では2人の艦長が苛立ちを募らしていた。戦艦『ラ・カサミ』、いや。戦艦『ラ・カサミ改』艦長のミニラルと遂1週間前に慣熟訓練から帰還した、ムーの新たな戦艦。ラ・イーセ級戦艦一番艦『ラ・イーセ』艦長のラッサンである。

ラッサンはマイラス同様、ムー統括軍で最も皇国を理解している男である。この『ラ・イーセ』は名前でも分かる通り、旧大日本帝国海軍の伊勢型戦艦を元に、というか丸パクリして建造された。その為ムーにとっては、これまでになかった発想や新機軸が盛り込まれた代物となる。そこで皇国をよく知っているラッサンが、艦長に大抜擢されたのだ。

 

「なぜ、何故出撃命令が出ない!!」

 

「恐らく政治でしょうな」

 

ミニラルの叫びに副長のシットラスが、冷静な意見を言う。シットラスの言う「政治」とは、海軍本部の意向のことである。海軍本部としては『ラ・カサミ改』は大日本皇国との友好と同盟の有用性を示す象徴であり、『ラ・イーセ』はグラ・バルカスへの反抗と新たなるムー海軍の象徴として認識されている。どちらもまだ国民へのお披露目をしてない訳で、先に戦闘に参加してダメージを負ったり、もし沈みでもしたら全てご破算となってしまう。そんな訳で、この2隻にはこの期に及んでも出撃命令が出てないのだ。

 

「副長、ここは任せる!!」

 

「か、艦長!?」

 

「ちょっと統合参謀本部に殴り込んで、出撃命令貰ってくる!」

 

そう言うとミニラルは『ラ・カサミ』を飛び出して、統合参謀本部庁舎に走る。そのまま港の外の信号を待っていると、後ろから誰かが駆けて来た。見ればミニラルと同じ制服、つまり海軍士官であった。

 

「み、ミニラル艦長!?どうしてここに!」

 

「それはこちらも同じだぞ、ラッサン艦長」

 

その男はまさかの『ラ・イーセ』艦長のラッサンであった。どうやら、2人とも同じ理由らしい。

 

「それにしても、上には困った物だな!」

 

「えぇ!政治も結構ですが、国が滅べば政治も何も無いというのに」

 

「全くだ!人というのはどうやら、自分の死ぬ間際でも浅ましい事しか考えぬらしいな!」

 

夕方に国民が避難する中、海軍の真っ白な制服を着た男2人が走りながら上司の愚痴を言い合うというのは、中々にシュールな光景である。それ故に周りの国民からも、見世物の様に奇異の目で見られるがそんなのには構わない。

こういう急いでる時に限って、また信号に引っかかってしまう。無視する訳にもいかないので、また息を整えつつ青になるのを待つ。その時に不意にラッサンが、こう呟いた。

 

「ここが大日本皇国か、上官が神谷さんなら良かったのに」

 

「神谷というと、神谷元帥の事かね?」

 

「はい。あの人はあの若さで軍のトップに立つ位ですから、とんでもないエリートです。ですがあの人は、常に最前線や現場を気に掛けています。例え独断専行をしたとしても、それが必要であったり、その行動で人命が救われれば、何の咎もしない位に。

恐らくこういう場合でも、侵攻が判明すれば即座に動かしていますよ。何せ我々の艦を置いて、奴らの主力艦に対抗できる艦艇はムーには存在しないんですから」

 

ミニラルも一度、『ラ・カサミ』の改修工事で皇国にいた時に一度だけ会った事がある。定型文の挨拶であり、そんな長く話した訳でもない。だがやはり、あの若さで世界最強の皇国軍を率いている事に驚いたし、何より話していてとても好感を得たのは事実であった。それ故に、ラッサンの話で神谷に興味が出てくる。今度また、何かの形で会える事があれば少し話してみたいと思った。

だが今はそんな事を考えている暇はない。そんな考えは取り敢えず、頭の隅に避けて統合参謀本部庁舎目指して走る。暫くして統合参謀本部庁舎に着き、そこから階段ダッシュで海軍本部長の執務室に突っ込む。勿論、扉をぶっ壊さん勢いで。

 

「うわっ!?な、なんだね君たち!!」

 

「本部長、何故我々には出撃命令は出ないのでありますか!?」

 

「そうです!我々の艦を差し置いて、グラ・バルカス帝国の艦艇に真っ向から戦える艦は居ません!!」

 

「それは分かっているが、ダメに決まっているだろう。ラ・カサミ改は大日本皇国との友好の証であり、同盟の有効性を示す証拠だ。沈みでもしたら、大事になる。

ラ・イーセに至っては、取り敢えず1回目の慣熟訓練が済んだだけだろう?それを出して、むざむざ沈んで貰っては困る」

 

やはりこの本部長には、政治の事しかないらしい。これが本部長ではなく、トップの海軍長官のホーストン・ウェスバイトなら多分こんな事もしなくて済んだだろう。だが無い物ねだりしても、意味はない。

 

「本部長、『軍艦無くして勝利なし。我ら意思無くして国もなし』です」

 

ミニラルが言った言葉に、本部長は黙った。この言葉はかつて、ムーで起きた海魔戦争という戦争で英雄と呼ばれた機甲戦列艦『ラ・ベーダル』の艦長、ゴーゼルク・スコット大佐(最終階級は中将)が残した言葉である。この海魔戦争は海魔という、簡単に言うと海の魔物との戦いであった。

この戦争が終わって少しした時、まだ幼かったミニラルは初めて機械動力式の客船に乗った。その客船は運悪く、海魔に襲われた。初めて間近に感じた『死』にミニラルは震え上がった。その時、1隻の機甲戦列艦が海魔に砲撃を加えて撃退した。その艦こそ『ラ・ベーダル』であり、艦長のゴーゼルクはミニラルの父親だったのだ。今でも海魔の撒き散らした海水と恐怖で泣いた涙でぐしゃぐしゃになった自分を、父親の大きな手が撫でてくれたのを良く覚えている。その日以来、ミニラルは軍人を志し今がある。その父はもう随分前にこの世を去ったが、ずっとミニラルに言ってきた事がこの「軍艦無くして勝利なし。我ら意思無くして国もなし」という言葉だったのだ。この言葉は海軍内でも、金言として扱われており誰もが聞いたことのある言葉でもある。

 

「本部長、今我々が戦わなければ首都は火の海だ。私達に出撃許可を」

 

「しかし.......」

 

それでも尚渋る本部長に、ラッサンが更に怒鳴ろうかと思った時であった。ドアの方から、優しくも力強い声で「許可してやれ」と言われた。振り向くとそこには、海軍長官のウェスバイトが立っていたのだ。

 

「ウェスバイト長官!!」

 

「いや、敬礼はいいよ。それよりも君達、それだけの意志があれば負けはしないだろう。行ってきたまえ。そして、この国を護るのだ」

 

「「アイ・アイ・サー!!」」

 

そう言って敬礼し、大声で答える2人。2人はまた来た道を走って戻る。

 

「よろしいのですか?」

 

「あぁ。あの言葉を言われちゃ、私も弱いよ」

 

因みにウェスバイトは、かつて『ラ・ベーダル』の砲術長をしていた。海魔戦争に於いても、ゴーゼルクと共に修羅場を潜り抜けたし、なにより軍大学在学中は世話になった先輩でもある。その先輩の言葉を、それもその子供が言ったとなれば行かせてやる以外の答えはない。

 

 

「戦艦『ラ・カサミ改』!!」

「戦艦『ラ・イーセ』!!」

 

「「抜錨!!」」

 

勇者達を乗せて、黒鉄の城は敵を求めて巣穴を旅立つ。先発した首都防衛艦隊に追い付くべく、艦隊は速度を上げて海原を突き進む。一方の首都防衛艦隊はと言うと、その大半が敵航空機の空襲によって壊滅していた。

首都防衛艦隊は旗艦である戦艦『ラ・ゲージ』を筆頭に空母4、装甲巡洋艦8、重巡6、軽巡4、駆逐10からなる大艦隊である。今回は空母は置いてきているが、それでも少なくない戦力だ。だがいかんせん、航空機には滅法弱い。一応20mm機関砲を搭載してるっちゃしてるが、流石にそれだけで敵機を全部落とすのは無理がある。というかグラ・バルカス帝国のパイロット達は、かつて高射砲の爆炎とムーとは比べ物にならない弾幕を掻い潜って攻撃していたのだ。この位では逃げ帰らない。

 

「駆逐艦『ラ・エヒン』轟沈!!」

 

「航空機がこんなにも高性能なのか!!」

 

「て、敵機直上!!急降下ぁぁ!!!!!」

 

首都防衛艦隊司令のムレスは、監視員の指差す方向を見る。見れば敵の爆撃機が、こちらに突っ込まん勢いで急降下している。もうダメだと思ったその瞬間、その機体は爆散した。

 

「な、なにが起きた!?」

 

「提督!!無線入電!『ここからは我々に任せろ』識別、ラ・カサミ改とラ・イーセ!!!!」

 

「来てくれたのか!!」

 

次の瞬間、ムレスの乗る『ラ・ゲージ』の隣を2隻の巨大艦が通過していった。見間違うわけがない。戦艦『ラ・イーセ』と『ラ・カサミ改』である。

 

「まずは敵の掃討からだ。対空ミサイル、発射!!」

「対空ミサイル発射!」

 

『ラ・カサミ改』に搭載されたAIM63烈風が、突貫作業で艦載用に改造されたマルチパイロンから放たれる。チャフもフレアも持たないグラ・バルカス帝国の航空機じゃ、防ぐ事はできない。

 

「ミサイル全弾命中!!」

 

「よしっ、いいぞ!!」

 

「敵機直上、急降下!!」

 

この報告を受けた時には、既に49式対空戦闘車が自動迎撃に移っていた。元々の49式には和製イージスたる草薙武器システムが搭載されているが、流石にオーバースペックすぎるのでダウングレードされている。だがそれでもレーダー照準の対空砲である事には変わらないので、水兵達にとってもパイロット達にとっても常識外れの高い命中精度を叩き出す。

 

「ミニラル艦長、暴れてるな。こちらも負けてられん!主砲砲撃、弾種三式弾!!撃て!!!!」

 

ラッサンも試験的に開発した三式弾を用いて、敵航空機の排除にかかる。意外と敵が密集してくれているし、なにより『ラ・カサミ改』の攻撃で逃げ惑った結果、余計に密集しているので三式弾には良い的だ。

因みに三式弾こと三式焼散弾は弾頭にマグネシウムや焼夷ゴム弾なんかを詰め込んだ対空砲弾であり、発射すると円錐状に広がり敵を撃墜する。イメージしづらい人は、ショットガンみたく弾が広がると考えてほしい。あの子弾1つ1つが超高温になっていて、飛行機を貫くのだ。

 

「三式弾命中!敵機が8機、火だるまになって落ちていきます!!」

 

「よし!!もっとだ、もっと撃て!!対空砲も弾幕を貼り続けろ!!『ラ・カサミ改』を前進させ、敵艦隊にぶつけるのだ。本艦よりも、『ラ・カサミ改』の方が総合火力では上だ!!我々は首都防衛艦隊の撤退を援護し、『ラ・カサミ改』突撃の露払いを行う!!」

 

「アイアイ・サー!!」

 

この作戦は統合参謀本部から帰る途中で、ミニラルが考え出した策であった。通常の砲火力で限定するなら『ラ・イーセ』の方に軍配が上がるが、ミサイルやレールガンを装備した『ラ・カサミ改』の方が総合的な火力でも、また速力なども含めたスペックに於いても遥かに凌駕する。

そこでミニラルは先に『ラ・カサミ改』による突撃を仕掛けて敵主力の注意を惹き、その間に『ラ・イーセ』が首都防衛艦隊を逃す。撤退が完了次第、ロングレンジ砲撃で『ラ・イーセ』が援護砲撃を実施する形にしたのだ。

 

「今のうちだ!『ラ・イーセ』が惹きつけている間に、敵艦隊に向かうぞ!!最大船速!!」

 

『ラ・カサミ改』はウォータージェットは使用していないため60ノットではないが、それでもムーの認識では最速クラスの速度で敵艦隊に向かう。

 

「通信士、敵旗艦に通信だ」

 

この命令に通信士は驚いた。そんな事をすれば、自分の位置が相手にわかってしまう。大声で「私達はここにいるぞ!」と宣言しているような物になる。しかもそれは、出れば相手も同じだ。出る訳がない。

だがそれでも、命令は命令。命令された以上、粛々と無線を繋げる。出ないと思っていたが、相手は出たのだ。

 

「艦長、繋がりましたよ」

 

「こちらはムー海軍、戦艦『ラ・カサミ改』艦長ミニラルだ。そちらは?」

 

『グラ・バルカス帝国本国艦隊イシュタム隊、戦艦『メイサ』艦長のオスニエルです。いやはや戦場で無線を送ってくるなんて、狂ってますねぇ。降伏する気にでもなりましたか?』

 

聞いているだけで頭にくる言い方に、艦橋の全員が不機嫌になる。それもその筈。このイシュタム隊ことグラ・バルカス帝国海軍本国艦隊第52地方隊は、道徳心がないグラ・バルカス帝国の軍人からも「お前ら、人の心は無いんか」と言わしめる程に狂人共の吹き溜まり部隊なのだ。本来なら『本国艦隊』と名のある様に、本土防衛用の艦隊である。だがこれは、あくまで転移による影響で配置転換していただけにすぎない。

彼らの本来の任務、つまりかつての転移前の世界であるユグドに於いて、彼らは占領地護衛艦隊であった。『護衛』と名が付いているが、やってる事は真逆で、占領地で謀反が起こったり、誤報であっても「謀反の兆しあり」と報告が入れば即座に鎮圧する部隊であり、何なら『砲撃演習』として定期的に占領地に砲弾を叩き込む。その為配属された兵士達も弱者を一方的に破壊、蹂躙、嬲り殺しが趣味な連中が配属されているわけで、その凶暴性は更に拍車が掛かっている。その結果、現地人からは『死神イシュタム』と恐れられていた。

 

「その逆だ。私は警告の為、連絡したのだ。こちらは既にそちらの編成も陣形も展開位置も正確に把握しているし、ここにはムーの主力が展開している。全滅は免れないだろう。降伏を勧める」

 

『くふ、くははは!笑わせないでくださいよ。我々はまだ1隻たりとも艦を失ってはいないのですよ?そちらと違ってね。でも、我々にそんな口を利く度胸は褒めてあげましょう」

 

「その割には航空機は今、どんどん撃墜されていってるがね。君の様な通信兵の下士官では、話にならないな。オスメスなんとか君、艦隊司令か艦長に代わってくれたまえ」

 

『オスメスなんとかではない!!オスニエルだッ!!!!そして私がこの艦隊の指揮官であり、この艦の艦長だ!!!!!貴様ら如きに、我が艦隊は止められなァい!!!!首都を灰塵にしてあげますよぉぉ!!!!』

 

オスニエルは無線の向こうでヒステリックに叫んでいて、ミニラルとしては喉が潰れないのか心配であった。だが、ここまで怒っていては冷静な判断もしにくくなる。こちらとしては好都合だ。

 

「それができるかな?我々を、これまで相手にしたムーの艦艇と一緒にしないで貰おう」

 

『くふふ、では絶望を与えて差し上げましょう。こちらを食い止めようと無駄ですよ。何故なら、君達が総力を挙げて私たちに挑んでいる間に、マイカルが火に包まれるのでェェす!!!!』

 

「何だとッ!?そんな馬鹿な事があるか!!!!そんな事をされては、我が国が滅んでしまうぞ!!!!

なんて、いうと思ったかな?」

 

そんな事、もう知っている。それに、彼方にはあの戦艦がいるのだ。もう勝ったも同然である。

 

「確かにマイカルには、こちらの主力は展開していない。元々の防衛艦隊も、こちらよりもやはり少ない。だがな、向こうには彼らがいるのだよ。大日本皇国の、戦艦がね。私も一度しか姿を見ていないが、あの戦艦はそんじょそこらの、それこそ君達のグレードアトラスター級ですら足下にも及ばない。真の戦艦、戦艦の完成形とでもいうべき戦艦が、防衛態勢に入っているのだ!」

 

『その様な偽情報に我々が踊らされるとでも?くははは!精々、苦しんで死になさぁぁい!!!』

 

最後の最後まで人を小馬鹿にした様な物言いに、逆に絶対アイツぶっ飛ばすと言わん勢いで艦橋の人間の士気が上がった。

 

「諸君!今我々は、歴史に立っている。我らこそ歴史の魁だ!我らと、この『ラ・カサミ改』の後に何百、何千という兵士達と何十隻という艦艇が続く。この戦いに勝ち、ムーを、祖国を護れ!!総員、受け持ちの職務を全うせよ!!!!」

 

次の瞬間、乗員達から雄叫びがあがる。士気は充分なようだ。程なくして、敵艦隊も目視で見えた。砲撃にかかる。

 

「主砲砲撃戦、目標!前衛の軽巡!!」

 

「照準良し!」

 

「撃て!!」

 

30.5cm砲から、戦車砲とは言え40口径350mm連装砲に換装した新主砲。その威力は軽巡の様な、余り装甲の厚くない艦艇にとっては脅威となる。

 

「命中!!」

 

「いい、いいぞ!!」

 

しかも目測ではなく、レーダー照準と砲安定装置を併用した射撃システムである為、命中率は遥かに上がる。

 

「軽巡『グレイ』轟沈!!」

 

「ふむ、敵もやるようですねぇ。にしても40ノットとは速い。戦艦部隊、主砲をあれに向けなさい」

 

オスニエルは『ラ・カサミ改』の性能に驚きつつも、まだこちらの方が強いと思っていた。主砲を撃てばやれると。だがそれは、当たればの話だ。

 

「照準よし!」

 

「撃ちなさい!!」

 

オリオン級6隻が一斉に主砲を放った瞬間であった。なんと目の前のムーの戦艦は、一気に加速して砲弾を避けたのだ。

 

「ば、蛮族如きがあんな戦艦を持っているのか」

 

「おい監視員!速力は!?!?」

 

「んなアホな!?あの、いくら計算しても、目測で60ノット近く叩き出してます」

 

監視員の報告に、全員が唖然とした。60ノットは時速に直すと111kmにもなる。そんな速度をあんな巨大艦が叩き出すなど、この時代どころか現在に於いてもあり得ない。

 

「敵艦、ロケットの様な物を発射!!」

 

「ロケットぉ?そんな物で船が沈むわけ」

 

確かにグラ・バルカス帝国の時代に於けるロケットは、基本的に対地攻撃に使うという認識だ。現代だとハイドラロケットに当たる兵器という認識だが、知っての通り『ラ・カサミ改』が搭載する対艦誘導ミサイルは、基本的に駆逐艦位なら一撃で葬り去る威力を持つ。その為、もう次の瞬間には海が炎で赤く照らされていた。

 

「んなっ!?!?」

 

「敵艦更に接近してきます!!」

 

「えぇい!!撃って撃って撃ちまくりなさぁぁぁい!!!!!!数で押すのでェェす!!!!」

 

残存艦艇は『ラ・カサミ改』に向かって砲弾を撃ちまくる。だがそれを巧みな操艦で右に左にジグザグ航行で避ける。

 

「敵さん、いよいよ怒ったようだな」

 

「敵重巡、右舷と左舷に展開!挟まれました!!」

 

「怯むな!!近距離対艦ミサイル発射ァ!!!!」

 

両舷に搭載された三連装近距離対艦ミサイル片舷15基、両舷合わせて30基の発射管から対艦ミサイル家康が放たれる。1発の威力こそ弱いが、1隻に45発が一挙に襲い掛かれば轟沈させる事も出来る。

 

「命中!命中!敵艦大炎上しています!!」

 

「このまま押し切れ!!対艦ミサイル、敵戦艦に照準!!撃てぇ!!!」

 

更に追い討ちで6隻の戦艦の内、前方2隻に対して対艦ミサイル桜島を放つ。

 

「て、敵戦艦に命中しました!!すごい!!船体に巨大な破口が出来ています!!!!」

 

「やはり皇国の兵器は凄まじいですな艦長!」

 

「そうだな副長!この調子ならきっと」

 

誰もが勝てると確信した時、悲劇は起こった。敵弾の1発が後部主砲に命中。大破したのだ。

 

「後部主砲に命中弾!!火災発生!!!」

 

「ダメージコントロール!消火急げ!!」

 

すぐにダメコン要員が向かうが、続け様に駆逐艦の砲弾も砲列甲板に命中。負傷者が出る。

 

「艦長、不味いですよ。ミサイル系も対艦ミサイルはもうすぐ底が見えてしまいます」

 

「恐らく、もう少しで『ラ・イーセ』が到達する筈だ。それまでに、少しでも相手にダメージを与えるんだ」

 

「艦長、やるんですね?今、ここで!」

 

「あぁ。総員、艦首軸線砲射撃準備!!」

 

ミニラルは決断した。いよいよ、使う時が来たのだ。皇国が『ラ・カサミ改』に与えた、最強の決戦必殺兵器。50口径510mm電磁投射砲を。

 

「アイアイ・サー!砲撃回路接続、艦首隔壁、解放!」

 

艦首軸線部分が開き、砲身が少しだけせり出てくる。機関出力は半速にまで下がるが、それも数秒にすぎない。問題にはならない。

 

「照準線、敵戦艦に固定。いけます!!」

 

「電磁投射砲、正常に作動中。チャージ完了、いつでも撃てます!!」

 

「510mm電磁投射砲、発射ァァァァァァ!!!!!」

 

艦長がトリガーを引いた瞬間、艦首から青白い光が瞬くと、バシュンという砲撃音とは違う大きな音が鳴った。

そして目標の敵戦艦のバイタルパートに破口が出来たと思った瞬間、見た事ない光景が目に飛び込んだ。船体が赤黒い無数の気泡の様なボコボコとした物に変容し、その気泡が弾ける様に爆発したのだ。

 

「こ、これが510mm電磁投射砲.......」

 

「なんという.......」

 

ミニラル含め、全員がこの絶大な威力は510mm電磁投射砲による物だと思っていた。だがこれ、厳密にいうと全然違う。知っての通り、電磁投射砲、つまりレールガンとは、あくまで「火薬に代わって、電磁力で物体を飛ばす」というコンセプトで生まれた兵器。貫通力こそ上がるが、こんなよく分からん爆発は起こさない。では何故、こんな事が起きたのか。

それは何をトチ狂ったのか、東は使用する砲弾に月華弾を選択していたからである。月華弾はデモリッシャーガスという特殊なガスを注入した、所謂気化弾である。本来は対地、対空用砲弾だが一応対艦でも使えなくはない。しかし基本的に現代艦は装甲が薄いので、普通に榴弾で事足りる。なのでコスパ的に使う事は無かった。だが今回の艦は大艦巨砲主義の権化たる戦艦が相手。そこで東は1発で相手を確実に仕留められる月華弾を選択したのだ。この月華弾は起爆後に、本来なら数千度の高温を誇る火球を形成し、衝撃波と熱波で全てをもみくちゃにする。だが今回は艦内部の、それもバイタルパートという一番装甲の分厚い部分での起爆であった。その為、起爆で酸素を奪い尽くすが逃げ場を失った熱波と衝撃波はあちこちに広がり、まるで気泡の様に収束して、熱に耐えきれず融解した装甲材から一気に酸素が流入した結果、バックドラフト現象が起き一気に爆発したのだ。

 

「な、何なのですかあの爆発はァァァァァァ!!!!」

 

流石のオスニエルも、これは想定外だったらしい。今までで一番の叫びを上げる。しかしオスニエルは知らなかった。まだおかわり(・・・・)がある事を。

 

「次弾装填!発射ァァァァァァ!!!!!」

 

この砲弾、2発積んでるのだ。つまり、もう1発撃てちゃうのだ。そんな訳でもう1隻を同じ様に血祭りに上げる。ムー側は既に戦艦4、重巡3、重巡2、駆逐3を沈めており、残っているのは戦艦2、駆逐3である。空母と残り2隻の駆逐艦は、後方待機であり元々この戦闘海域までは進出していない。つまり『ラ・カサミ改』は、半数以上の敵戦力をたった1隻で打ち負かしたのだ。だが、この幸運も長くは続かなかった。

 

「うおっ!?!?」

 

「何が起きた!?!?」

 

『こちら機関室!破口が広がり、海水が流入中!!恐らく、例の魚雷とかいう水中を進む爆弾が当たってます!!』

 

沈んだ内の1隻が、置き土産に残した魚雷が運悪く命中したのだ。それも機関室をやられては、流石にもうあの機動力は叩き出せない。

 

「もはや、これまでか.......」

 

『こちら『ラ・イーセ』!戦闘海域に到着した。これより、支援に移る!』

 

ここで首都防衛艦隊を逃していた『ラ・イーセ』が海域に到達。ようやく『ラ・カサミ改』の支援に入ったのだ。すぐに現在の状況を伝え、撤退する事を話した。この報告を受けたラッサンは、直ちに主砲による砲撃を開始した。

 

「主砲砲撃戦、撃ち方始め!」

 

「第一射、撃てぇ!!」

 

搭載された35.6cm連装砲6基が発射される。因みに『ラ・イーセ』は1937年の大改装後の形となっている。その為、まだ瑞雲とか十二糎二八連装噴進砲は搭載していない。

 

「弾着、今!」

 

「今の諸元を元に、修正射に移ります」

 

よく映画なんかじゃ、簡単に初弾命中だの夾叉だのさせているが、実際は凄い練度が必要である。というのも同じ口径の同じ工場で作られた、製造工程も同じ砲身であっても、どうしても全く同じ性能ではないのだ。撃つと着弾点がバラつき、これを散布界という。夾叉とは着弾点で目標を挟むことであり、挟んでしまえば後はその中に当たるように撃てば当たるだろう、という事なのである。こう聞くと適当感が凄いが、実際に第二次世界大戦の頃のアメリカ海軍は200,000mの距離で命中率は3%くらいであり、帝国海軍も200,000〜250,000mで9%という命中精度であった。勿論現代艦や同じ大砲を扱う大日本皇国海軍には、レーダー照準と砲安定装置の導入によって命中率はとても高い。

因みに余談だがこれは大砲に限らず銃にでもいえる事であり、かつての狙撃銃はこの精度の差で作られた。例えばメタルギア3のボスキャラ、ジ・エンドの使うモシン・ナガン。この銃は元々はM1891/30ライフルという歩兵銃の製造ラインから、特に精度の高いものを選び出して、そこから光学照準器の搭載やチャージングハンドルを曲げるといった改造が施された物である。現代では狙撃の重要性が高まり専門性も増してきた為、狙撃専用として作られている。

 

「第二射、撃て!!」

 

まだ夾叉には程遠い。だが恐らく次かその次には、夾叉できる。そう考えた時、艦後尾に衝撃が走った。

 

「第五主砲、敵弾命中!大破!!」

 

「奴ら、もう当ててきたのか」

 

奴らは何と、一撃でこちらを撃ってきたのだ。まあ、これは偶々で本来ならもうちょい時間がかかる。だが彼等は少なくとも、何度も砲撃してきている。撃つ相手こそ無論褒められた物じゃないし、むしろクズと表現して余りあるクズ共だが、砲撃の命中精度には関係ない。

かたやこちらは、まだ出来立てほやほやの新造艦。しかも乗員もまだ完全に慣れきってないどころか、まだ慣熟訓練の途中。埋められない程に経験の差があった。だがそれでも…

 

「だがそれでも、俺達は後には退けないんだよ.......。砲術、何が何でも次で当てろ。俺達の後ろには、もう壁はないんだ」

 

「やって見せます!!まだ慣熟訓練の途中だがな、こちとら他の艦で撃ってたんだよ!!おい『ラ・イーセ』!!テメェも誉れ高きムー海軍の栄えある新造戦艦なら、当ててみせろ!!!!」

 

この叫びが聞こえたのか、次の第三射では、しっかり敵戦艦のど真ん中に5発とも当てた。ならここからは斉射あるのみ。

と思っていたのだが、その前にさっき当てた戦艦が大爆発を起こした。

 

「火薬庫に火が回ったのか?」

 

「いえ。幾らなんでも、あそこまで早くは爆発しないでしょ.......。まさか甲板に火薬を並べてたのか?いや、そんな事はあり得ないか」

 

その原因は、監視員の報告で分かった。黒い何かが高速で接近していると、報告が上がった。

 

「まさか、皇国軍の戦闘機か?」

 

12機の高速飛翔体は『ラ・イーセ』の前方を通過し、そのまま敵艦隊の方向に向かっている。そしてその後ろを、4発のジェットエンジンを装備した輸送機らしき何かが追い掛ける。

 

「艦長、不明機から無線が入っています」

 

「出よう」

 

無線のマイクを受け取り、不明機に乗っている者に向かって呼び掛ける。

 

「こちらはムー海軍所属の戦艦、『ラ・イーセ』艦長ラッサンだ。そちらの所属を答えられたい」

 

『艦長就任とは、大出世しましたなラッサン殿』

 

その声は聞き覚えのある声であった。だが一方で、ここには居ないはずの人間でもある。

 

「か、神谷閣下!?」

 

『そうです、神谷閣下です。例の『ラ・カサミ改』の護衛に引っ付いてきてて、取り敢えずマイカルのは消し飛ばしたんで、こっちの応援に来ました』

 

「か、神谷閣下って、あの神谷閣下か?大日本皇国のトップで、皇国剣聖、そんでもってグラ・バルカス帝国に強襲して捕虜奪還してきた神谷浩三・修羅」

「そういや艦長のサーベル、パーパルディアとの観戦武官の時に神谷閣下から貰った日本刀とか言ってたぞ?」

「つまり、俺たちの艦長は大日本皇国のトップと知り合い?」

 

なんかとんでもない艦長の下に着いてしまったと思った水兵達であった。

一方、神谷がなぜここに来たのかと言うと、どうせならグラ・バルカス帝国の戦艦を鹵獲してやろうと思い、神谷戦闘団を連れてきたのだ。

 

「よーし、降下して戦艦を奪取するぞ。まずは(きわみ)で上部を掃討しろ」

 

そう命令すると、先行していた戦闘機達は侵攻軍の旗艦『メイサ』の手前でVTOLモードに変形し、装備した機関砲で対空砲を潰していく。

だが皆さん、お気付きであろうか?艦載機であるC型震電IIにはVTOL機能はなく、B型は強襲揚陸艦にしか配備されていない。では何故、この機体はVTOL機能が使えるのか。

今攻撃中の戦闘機は、F8C震電IIではない。この戦闘機の正式名称はF8CZ震電IIタイプ・(きわみ)。皇国海軍が新たに開発した、次世代戦闘機、つまり第六世代ジェット戦闘機に分類される航空機である。

 

「対空火器、掃討完了しました」

 

「行くぞ!!!!」

 

神谷は妻達、向上、そして部下達を連れて『メイサ』へと降り立つ。こんな大航海時代の様な戦法は、元より想定していないのだ。流石に対応策はない。

 

「奴らはどうせ臨検用のライフルと拳銃位しかない筈だ!!仮に他にもあっても、その数は圧倒的に少ない!!こっちのが練度も装備も上だ!!数に任せて押し切れ!!!!」

 

今回の神谷戦闘団の装備は、37式短機関銃と36式散弾銃である。どちらも閉所戦闘や屋内といった、狭い場所での戦闘にこそ進化を発揮する。しかも空中にはAVC1突空と震電IIタイプ・極までいる。突空の装備は前々回に書いた通りだが、この震電IIタイプ・極だって戦闘機としては破格の装備を持つ。標準で30mm機関砲が4門と60mm機関砲2門、さらに七連装80mmロケット弾発射機2基、連装レールガン2基、TLS1基が標準搭載されている。駆逐艦とか軽巡位ならミサイル無しで、普通に沈められる。

でもって、これだけでは終わらない。甲板には突空から降りた神谷戦闘団が殺到しているが、艦底部にも刺客がいる。

 

 

「なんか上が騒がしいが、全く様子がわからんな」

 

「取り敢えず俺達は、釜の面倒を見なきゃならん。ボイラー圧もしっかり確認しとけ」

 

ギャリギャリギャリギャリ!!

 

「な、なんだこりゃ!?」

 

「ドリルが地面から突き出た!?!?」

 

そう。なんと艦底部にある機関室に、謎のドリル状の突起物が生えてきたのである。しかも結構デカい。機関士達がどうしたものかと考えていると、ドリルが勢いよく開いた。そして中から兵士達が飛び出してくる。

この新兵器こそ、皇国軍の定例ぶっ飛び兵器の一つ。特殊潜航突撃艇『回天』である。因みに、武装はドリルのみ。

 

「動くな」

 

「な、なんだてめぇら!!」

 

1人の中年男性が石炭を入れるスコップ片手に飛び掛かってくるが、普通に回し蹴り食らってボイラーの中に飛んでいった。無論、焼け死ぬ。

 

「抵抗しなければ、命までは奪わん。我々の命令に従え」

 

「あ、アンタら何者なんだ.......」

 

「大日本皇国統合軍、神谷戦闘団、白亜衆。お前達も捕虜虐殺の報道は知っているだろう?あの地に殴り込んだ部隊こそ、我々だ」

 

あの件は報道管制が敷かれており、グラ・バルカス帝国本土の国民も一般兵も知らない。だがやはり一部には広まっており、ここの人間達はその一部に含まれていた。さすがにそんな連中には抵抗できないので、黙って降伏した。

他の主要部分も神谷戦闘団の支配下に入り、突入から15分もすれば残すは艦橋だけであった。

 

「はーい、皆さん動くなよー」

 

「貴様らァァァァァァ!!!!このメイサに、よくもヌケヌケと乗り込んでくれましたねェェェェ!!!!」

 

ある意味、音波兵器的役割になってるオスニエルの叫び。だが、その程度では止まる彼らではない。というか約1名、じゃじゃ馬がいるのだ。

 

「ねぇ、おじさま?」

 

「ん?」

 

「さっきからうっさいわよ!!!!」

 

なんとエリスさん、大剣の腹の部分でオスニエルの頭をぶん殴り、そのままヒール付きのブーツで顔を踏んづけたのだ。

 

「むご!?むごむがむごごご!!」

 

「何言ってんの?聞こえないんですけど!?」

 

さらに踏んづけるエリス。それを止めようとしたが、神谷は気付いてしまった。奴の股間、膨れてる。

 

「長官?」

 

「向上ー、奴の股間を見てみろ」

 

「はい?.......うわ」

 

向上が本気のガチドン引きをした。多分あれ、踏まれて興奮してる。恐らく、神谷の言葉が聞こえたのだろう。4人も股間を凝視して、顔を赤くしている。

そしてエリスも、オスニエルが顔を下卑た笑みを浮かべてるのに気付き、偶々目に入った股間で全てを察したのだろう。

 

「女の子にこんなことされて悦ぶなんて、アンタ心底救いようのない変態ね」

 

「待ってエリス!そのタイプにその対応は」

 

こう言ったタイプをアニメで見たことあるレイチェルは、その発言を止めた。しかしオスニエルがまた、むがむが言う。だが神谷とエリスには、多分こう言っていると分かってしまった。

 

「むがむがむがむが♡」ニチャァ

(訳:むしろご褒美でェェェェす♡)

 

「コウくん」

 

「なんだ?」

 

「アイツ、殺していい?」

 

「.......半殺しまでなら許す」

 

流石の神谷も、救い様がなかった。この後5人の美女エルフに踏まれて、色んな意味で昇天したオスニエル。その痴態を見せられた艦橋乗組員達は、いつの間にか「こんな奴の部下になりたくないんで降伏します。というか、お願いですから降伏させてくださいお願いします」と土下座してきた。最終的に戦艦『メイサ』は拿捕され、ここにオタハイト沖海戦は終結したのである。

でば次は、時間を巻き戻して神谷達の話を見てみよう。

 

 

 

数時間前 マイカル沖400km

「長官、衛星が接近中のグラ・バルカス帝国海軍艦艇を捕らえました。戦艦1、空母1、重巡3、軽巡2、駆逐10。明らかにマイカルを狙ってますね」

 

神谷は自室で執務を片付けていると、向上が報告にやってきた。どうやら、優雅な船旅とはいかなくなったらしい。

 

「確かにマイカルは、戦略的に見れば重要地だからな。ムーや我が皇国を含め、あそこは第二文明圏に於ける経済の中心。なんなら第一文明圏に於いても、マイカルが第二文明圏経済のアクセスポイントだ。ここを攻撃されれば、流石にキツイだろうよ」

 

「またオタハイトにも、戦艦6を含む大艦隊が侵攻中です。こちらには『ラ・カサミ改』に例の伊勢型モドキもいますから、取り敢えずは問題ないでしょう。しかしこちらは」

 

「余り防衛兵力ないからな。よし、一番近いのは俺達だ。攻撃しよう。それに、この艦の力を知る良い機会だ」

 

やる事は決まった。神谷は艦橋へと移動し、艦を敵艦隊の近くにまで移動させて待ち伏せる。1時間程経つと、敵艦隊が此方の攻撃圏内、それも目視圏内にまで接近してきた。

 

「通信士、敵艦に無線をつなげろ」

 

「アイ・サー」

 

「こちらは大日本皇国海軍である。接近中のグラ・バルカス帝国海軍艦隊に警告する。この先は、ムーの経済水域だ。念の為言っておくが、我々はそちらの位置を完全に捕捉している。尻尾巻いて、とっとと逃げ帰れ」

 

ぶっちゃけ神谷としては、全く交渉する気はない。というかむしろ、戦いたい。かつては海軍にいたが、今はもっぱら地上戦しかしてない。久しぶりの海戦のチャンス、不意にはしたくない。

 

『経験の足りないお馬鹿さんですねぇ。我々の編成やら位置やらをどこで知ったのかは知りませんが、我々のほうが圧倒的に強いのですよ。戦力も練度もね。おっと、申し遅れました。私はメイナード、この艦隊の司令です』

 

「では私も名乗っておこう。大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三元帥だ。君達が一番わかりやすいのは三英傑が1人、神谷浩三・修羅と言った方がよろしいかな?」

 

メイナードは驚いた。目の前の男は、あの捕虜虐殺の現場に殴り込みを仕掛けた命知らずの男だったのだから。

 

『君の様な陸の人間が、海で戦うなんて馬鹿げてますねぇ。飛行機で飛んでくるつもりでちゅかぁ?まあ、精々抗うことでちゅねぇ!!』

 

そう言うと一方的に無線を切られた。別にこの程度でキレる事もないが、不愉快極まりないのは事実。売られた喧嘩は、喜んで買おう。

 

「総員、戦闘配置。ド派手に行くぞ」

 

「総員、戦闘配置!!」

 

この艦の副長、宗谷悠真は神谷の命令を復唱し、全員が戦闘配置に付く。一方のグラ・バルカス帝国側は、謎の音を聴音機が拾っていた。

 

「なんだこれは?艦長!」

 

「どうした?」

 

「水中から海底火山の噴火の様な、物凄い爆音がこちらに近付いています」

 

「潜水艦か?」

 

「にしては音が大きすぎます。潜水艦だとすれば何十隻単位が、一糸乱れず浮上するくらいの爆音です」

 

この辺には海底火山も、作戦行動中の友軍潜水艦もいない。にも関わらず、そんな爆音がするのは可笑しい。取り敢えずメイナードに報告しようかと思った矢先、この駆逐艦は空を飛んだ。

巨大な波が海中から現れて、先行していた駆逐艦2隻は空高く吹っ飛ばされた。無論、周りの艦艇も船内が右に左に上にも下にも揺れる。溜まらずバタバタと倒れるし、物の下敷きになる物もいた。というか音を拾った駆逐艦に至っては、そのまま重巡の上に衝突し重巡諸共爆発炎上した。

 

「い、一体何が起こったんですか!?!?」

 

「め、メイナード司令!!あ、あれを!!!!」

 

「なにがあると.......なんだアレは」

 

メイナードも他の乗組員も、いや。全てのオタハイトに向かうイシュタム隊の艦橋乗組員は、その場に固まった。目の前にいきなり、現れたのだ。全長が3000m以上ある、真っ黒な船体に金色で縁が塗装され、見た事も無い位巨大な五連装砲を筆頭とした大小様々な砲塔で武装した超特大の、戦艦と形容するのすら烏滸がましい巨大戦艦が。

この戦艦こそ『聨合艦隊構想』の中核を担う『仮称513号艦』である。いや、もう本来の名を語っても良いだろう。この戦艦こそ、大日本皇国海軍の新たな象徴にして、戦艦という艦種の究極の完成形。総指揮大戦略級究極超戦艦『日ノ本』である。

 

「奴さん驚いてるな。だが、驚くのはまだ早いぞ。主砲装填!弾種、旭日弾!目標、敵重巡洋艦!!」

 

「トラックナンバー2051、主砲撃ちー方始め」

 

「撃ちー方始め!!」

 

装填された旭日弾は、新たに皇国海軍が開発したビーム兵器である。簡単に言うとヤマトの陽電子砲であり、砲弾自体に陽電子を収束させる機能が付いている。着弾すると陽電子を増幅、放出し敵艦を破壊し尽くす。発射音こそ普通だが、発射後は蒼白い光を纏い、光の尾を弾きながら目標に飛んでいく欠点がある。だが見た目はかっこいいし、そもそも砲弾を避けるのが至難の業なので欠点とは余りなり得ない。

そしてこの『日ノ本』の主砲塔は50口径800mm五連装火薬、電磁投射両用砲である。しかも砲塔配置が宇宙戦艦ヤマトの春蘭の様になっているのだが、両舷の副砲は全部主砲塔になってるし、しかも背中合わせで搭載されている。しかもその隣に更に副砲の50口径510mm四連装火薬、電磁投射両用砲が3基ずつ搭載されている。

また艦前部側面にも、ヤマトのアリゾナやアマテラスの様に側面砲塔として熱田型の主砲である60口径710mm四連装火薬、電磁投射両用砲が背中合わせで搭載されていたりと、中々に化け物である。

今回は主砲しか撃ってないが、それでも800mm、つまり80cmである。そんな大口径砲で重巡を狙えば、最早装甲は卵の薄皮の如く装甲の意味をなさない。跡形もなく消し飛ぶ。それも3隻纏めて、それにプラス周りにいた軽巡2隻と駆逐艦5隻も巻き込んで。

 

「周囲の駆逐艦には両用砲で、蜂の巣をプレゼントしてやれ」

 

残りの5隻の駆逐艦も、両舷に搭載された250mm三連装速射砲を筆頭とした両用砲群によって10秒と持たず轟沈する。既に残っているのは旗艦である空母『シュアト』とオリオン級戦艦1のみである。しかも接敵から僅か3分で、ほぼ全ての艦艇が血祭りに上げられていたのだ。これにはメイナードも思考が止まった。しかしオリオン級の砲撃音で、その意識が戻ってくる。

 

「流石にオリオン級であれば!!」

 

だがしかし『日ノ本』は例に漏れず、核爆弾が真横で50回くらい連続で爆発しても余裕で生き残る化け物装甲。36.5cm程度では、傷一つ付かない。

しかも第二射に至っては、装備されたAPS、つまり電磁バリアによって塞がれる始末。もう泣いていいよ、グ帝。

 

「ここいらで新兵器を試す。プラズマ粒子波動砲、スタンバイ」

 

この艦には『プラズマ粒子波動砲』、略して波動砲という、新兵器が搭載されている。この砲は『ラ・カサミ改』同様に艦首軸線砲であるが、あちらとは比べ物にならない破壊力を誇る。

 

「アイ・サー。プラズマ粒子波動砲への回路開きます。非常弁、全閉鎖。強制注入機作動」

 

「艦首解放、プラズマ粒子波動砲展開」

 

普段菊の御紋がある場所に、波動砲は収められている。射撃時は上に御紋が移動するのだが、この『日ノ本』は三連装になっており、破壊力も通常の3倍である。因みに砲配置は春蘭の波動砲。

 

「安全装置解除」

 

「セーフティーロック解除。強制注入機の作動を確認。最終セーフティー解除。トリガー、艦長に回します」

 

艦長、つまり神谷に波動砲のトリガーは渡される。艦長席には波動砲のトリガーに良く似た物があり、ターゲットスコープも展開される。

 

「艦長、受け取った」

 

「薬室内、プラズマ化粒子圧力、上昇中。86、97、100。エネルギー充填、120%!!」

 

「波動砲、発射用意。対ショック、対閃光防御」

 

艦橋のガラスに防護シャッターが展開され、外の様子はシャッターに搭載されてるディスプレイに表示される。

 

「電影クロスゲージ、明度20。照準固定!プラズマ粒子波動砲、発射!!!!」

 

ギュゴォォォォォォ!!!!!!

 

プラズマ粒子波動砲は水色の眩い光を放ちながら、戦艦ごと『シュアト』を飲み込む。光が消えるとそこには、まるで何もなかったかの様に完全に消し飛ばされていた。

 

「このままオタハイトの援軍に向かう。艦載機、発艦!神谷戦闘団も行くぞ!!」

 

そしてこのまま、オタハイトの方に繋がるのである。斯くしてオタハイト沖、マイカル沖に於ける一連の海戦はムーと皇国の勝利で幕を下ろしたのである。

 

 




はーい皆さん。今年も、本当にありがとうございました。なんだかんだで今日は大晦日。一年どうでした?私はコロナになってぶっ倒れはしましたが、人生の大勝負に勝てましたので取り敢えずは良い年でしたよ。恋愛を除いてな.......。
そして、今年もやります。今年やった『最強提督物語〜海を駆ける戦士達』とこの『最強国家 大日本皇国召喚』を融合させた作品をまた書きます!!!!投稿日は未定!!!!(これと最強提督の執筆とゴタゴタで、今日の昼くらいに漸く書き始めたんですよね)
まあ多分、7日までには出すと思いますので気長にお待ちください。しかも今回、宇宙からのゲストも勝手に出しますからね。どうぞ、お楽しみに。それでは皆さん、良いお年を〜!
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