避難民救出より数時間後 レイフォル 帝国陸軍レイフォル駐留航空団司令部 会議室
「一体どうなっているのだッ!!!!」
そう叫びながら台パンする、初老の男。グラ・バルカス帝国陸軍、レイフォル駐留航空団の司令、キングスンである。彼が怒るのも無理はない。避難民を乗せた列車を破壊するべく出した航空隊の第二陣が全機未帰還となり、哨戒飛行に出ていたアンタレス3機も未帰還となったのだ。しかも何が起きたのか、殆ど全く分からないと言うのだからキレもする。
「我々としても、全く状況が掴めておりません。辛うじて繋がった無線から報告されたのは、大日本皇国の襲撃を受けている。化け物がいる。奴は3本線の化け物。と言った所でした.......」
「何がどうなったのかも、全く分かっていないのか?」
「何せ第一陣はこれよりも前に帰還しておりますから、彼等の姿は見ていないのです」
士官達がキングスンに報告していると、1人だけ制服の全く違う士官がキングスンに報告し出した。彼は陸軍航空隊ではなく、普通の陸軍の士官なのである。
「失礼致します。キングスン司令、我々陸上部隊も追撃隊が全滅しております。ですが、幾らかは無線で報告がありました」
「そっちは報告できたのか.......。是非聞かせてくれ!」
「はい。追撃隊が接敵した航空部隊は、何機かがアグレッサー塗装が施されていたそうです。恐らくは向こうの精鋭かと思われます。攻撃手段は噴進弾の様な物を使用しており、航空隊は手も足も出ないどころか逃げる事も出来ない様な状況だったそうです」
キングスン含めた会議室内の士官の顔は、みるみると驚愕の物へと変わっていく。噴進弾は最近漸く開発された兵器であり、まだ実験段階の最新鋭兵器。だがその実情は誘導兵器ではなく、あくまでハイドラロケットの様に無誘導で弾をばら撒くイメージの攻撃である。大型の爆撃機ならまだしも、ドッグファイトで使う代物ではない。
「なんということだ.......。おい、確か追撃隊の航空機は全て爆撃機だったよな?」
「ハッ。シリウス24機であります」
「爆撃機ではドッグファイトにならん。だが、一応慎重に調べろ」
「了解であります!」
調べようが何しようが、所詮グラ・バルカス帝国の兵器如きで皇国の兵器には全く歯が立たないのだが、それを知る術は無いのだ。
一方その頃、陸軍の最前線基地バルクルスでは、総司令であるガオグゲルが副官兼第4機甲師団長のボーグからアルー占領に関する報告を受けていた。
「ガオグゲル司令、アルーの街は敵国の駐留軍主力を全滅させ、ほぼ掌握しました。ゲリラ的な反抗はあるでしょうが、現時点、任務遂行に影響はありません。また敵ムー国の航空機の性能は、海軍からの資料のとおりの性能であり、帝国航空兵の敵ではありません。敵最新鋭戦闘機の速度は時速にして約380km程度であり、爆撃機であっても高度と最高速度を維持すれば振り切れるでしょう」
幾ら自国より弱いとは言えど、相手方のホームグラウンドである敵国本土での戦いには、流石のグラ・バルカス帝国にも懸念はあった。艦載機と陸上機では基本的には性能が異なる。艦載機は陸上で運用される機体に比べ、飛行機本体の強度を船からの発着に耐えれるように強化ないし改修しなければならないため性能が低くなる傾向にある。少なくとも着艦フックや翼の折りたたみ機構は、陸上機にとっては余計な重しである。
しかも相手は、仮にも世界第二位の列強を名乗っている国。もしかすると、ムー国本土では事前の情報よりも強力な機体があるかもしれない。
まだ辺境を落としたのみなので、この懸念が払拭された訳ではないが敵が情報通りの強さを見せた事でガオグゲルは安堵するのだった。
「しかしながら、歩兵の被害は予想より大きくなっております。塹壕突破時に、潜んでいた兵士に肉弾戦を仕掛けられ、かなりの数が戦死しました。しかし戦車は1両が大破しましたが、残りは精々が履帯が切れたり、エンジンの不具合で行動不能になっただけですので、今後は攻勢前に徹底的な攻撃を持って塹壕を破壊、もしくは火炎放射器などで焼き払う事で対応いたします」
基地司令ガオグゲルは満足そうにうなずいた。これで勝てると思っているらしいが、航空隊の件がまた報告できてない。
「ですが、懸念事項が1点あります。避難民の追撃隊が全滅し、航空隊も追撃第二陣が同じく全滅しております。詳細は不明ですが、どうやら大日本皇国が倒したらしく恐らく空軍が調査に乗り出すでしょう」
「ここは懸念事項だな。必要とあれば、空軍にも情報を共有せよ」
「分かっております。それでは、次の陸上作戦について説明します。アルーの街の東側に、空洞山脈と呼ばれる区域があります。空洞山脈の空洞内部は戦車でも通行可能との報告を受けておりますので、そこを突破し、さらに東側にある街を制圧します。
この空洞山脈東に位置する街は人口22万人です。ムー国陸軍及び増援軍との武力衝突が予想されます。この街はムーの大動脈とも言える南北を結ぶ鉄道のうち、西周りの鉄道拠点でもあります。ここを制圧することで、ムーへの打撃は相当なものとなるでしょう。
作戦の精度を高めるため、航空戦力による制空権の確保が必要です。一番槍は、我が第4機甲師団がいただきます。事前の空爆と、出てきた敵の殲滅は私たちが行いますが、市街戦となると……」
「ああ。もちろん市街戦までいくならば、増援部隊を派遣する」
「ありがとうございます。敵主力を誘い出すよう、策を練りたいと考えます。平野部での戦いであれば、我が機甲師団に敵はいません。
ムーだろうが、神聖ミリシアル帝国だろうが、蹴散らしてみせましょうぞ」
「豪儀だな、たのんだぞ!!ところでボーグ君、アルーはどうだね?」
「はっ!!軍団長の指令は、各兵に伝えられ、士気はこの上なく上がりました」
前回、グラ・バルカス帝国軍が「占領後は犯そうが奪おうが、何しちゃってもいいよ」という指令を出したという事を書いたのだが、それを出したアホはこのガオグゲルである。
「ボーグ君、私も味わってみたいものだよ」
「これはこれは。ガオグゲル軍団長、失礼いたしました。今夜3名ほど、ムー国人の手配をおこないます」
「ボーグ君、解ってるじゃないか、時にボーグ君、本国の人間には.......解ってると思うけど、極秘だよ」
「ははっ!!その辺はわきまえております!!して、どの様な
「ふむ。そうだな。無論、美女なのは大前提だ。後は、そうだな。全員、胸が大きい物がいい」
こんな事を言っているが、ガオグゲルは妻帯者である。だがここには妻の監視は無いのでバレはしないが、是非とも奥さんの目の前で今のを大きな声で言ってもらいたい。
一方のボーグも中々にエグい事を考えていた。ガオグゲルと別れた後、部下に巨乳を3人手配する様に伝えた。その時に、こんな事も指示したのだ。
「そうだ。それから老若男女、なんでもいいから人間を集めろ」
「は?いえ、それは構わないのですが、若い女ではなく、老若男女問わずでありますか?」
「あぁ。それを的に、演習を行う」
ボーグは性的にヤらない代わりに、生物学的に殺るタイプなのだ。曰く「的を鉄や材木の塊ではなく、人にする事で、兵士はリアルを感じる。戦闘時の恐れを消し去るのだ!」とか何とか言っていたらしい。それを聞いた部下は、ただただ恐ろしく感じたのだという。
翌日 ムー オタハイト ムームーチャンネル本社ビル
「すみませーん、本日出演予定の神谷ですけど」
「神谷浩三様ですね、お待ちしておりました」
この日、神谷は神谷戦闘団の面々とは別動し、首都のオタハイトに来ていた。因みに護衛でエルフ五等分の花嫁こと、白亜のワルキューレも付いてきている。
ここに来たのは昼の12:00から始まる、ムーの国民的ニュース番組。『ニュース12』にゲスト出演する為である。
「あー、神谷様!どうも、ご足労をおかけしまして。ささっ、どうぞこちらに」
今回神谷にオファーしてきた番組プロデューサーが、フロントからの連絡を受けて小走りでやってきた。
「台本は移動中に確認しましたが、何か他にやって欲しい事は?」
「特には。何かあれば、カンペで指示を出しますので。それでは、こちらの楽屋でお待ちください」
楽屋まで案内し終えると、プロデューサーは部屋を出ていった。取り敢えず楽屋の中を色々見てみるが、場所は違えど似た様な物らしい。
「楽屋って、私初めて入ったわ.......」
「まあ、普通は入る事ないわな。その辺のお菓子とか飲み物は、全部自由にやっていいヤツだから好きにやれ」
ムーの文字ではあるが、どうやら紅茶、コーヒー、水がある。お菓子も飴玉、クッキーとかビスケット系の何か、チョコレートなんかがある。しかも昼前なので、弁当まで用意されていた。きっちり人数分ある辺り、しっかりしている。
「凄っ、弁当まであるよ」
「確かお昼とか夜の収録の時は、こういうのが用意されるって聞いたことがあるわ」
「今回は昼から収録だからな。それに態々、人数分用意してくれてるんだ。食べようぜ」
こんな感じで用意されてた弁当、と言ってもサンドイッチセット的な物なのだが、それを食べる。そのまま6人でまったりしていると、メイクさんがセットに来てくれたので、そのまま撮影の準備に入る。軽くメイクというか、化粧水とかを塗りこんでもらう位なのだが、そういった事をして貰い、服も制服に着替える。勿論、愛刀も両方に腰に下げてあるし、その上から至極色の皇国剣聖羽織も肩掛けで羽織っている。
「それじゃ、行ってくる」
5人はこのまま楽屋に待機して貰い、神谷は1人、スタジオの方へと歩く。途中でディレクターと合流しディレクターの先導でスタジオに入ると「ゲストさん入られまーす!」という声が響き、スタッフ達が頭を下げてくれた。無論、こちらも頭を下げる。
「おーいチルドちゃんに、ヴィクちゃん!ちょっと来て」
プロデューサーがこのニュース12のメインキャスター2人を呼び出し、神谷との簡単な顔合わせが行われる。
「こちら、大日本皇国統合軍総司令長官、究極超戦艦『日ノ本』艦長、神谷戦闘団団長の神谷浩三様です。打ち合わせ通り、本日のゲストだからよろしくねー」
「神谷です。テレビは久し振りに出ますので、至らない点あるかと思いますが、どうかご容赦ください。本日は宜しくお願いします」
「メインキャスターのヴィクトリアムです。こちらこそ、宜しくお願いします」
「同じくメインキャスターのフェアチルドです。よろしくお願いしますね」
2人のメインキャスターが丁寧に挨拶してくれた。因みにヴィクトリアムが男で、フェアチルドが女である。そして神谷、ここである事に気付いた。
「あのー、もしかしてフェアチルドさんって、オターハ百貨店の時に取材に来てませんでした?」
「え?確かに居ましたけど.......、あ!あの時の!!」
そう。神谷とフェアチルドは、前に会ったことがあるのだ。ムーとの合同演習後にオターハ百貨店で発生した、アトラン民族解放戦線のテロ事件。あの時に最前線のレポーターとして取材していた女性アナウンサーこそ、このフェアチルドであり、その時にフェアチルドに下がる様に警告したのが神谷だったのだ。
「そう言えば、チルドちゃんはオターハ百貨店の時に現場に行ってたね。その時に会ってたのか」
「はい。それ以来、私、神谷さんの大ファンなんです!握手してください!後、サインも!」
「俺アイドルだっけ?」
ある意味アイドルよりも知名度あるので、こういう事は毎度のお約束である。サクッとファンサービスをこなし、ついでに記念写真も撮る。その後に神谷のスマホで出演者、及び関係しているスタッフの写真を撮って、それをインスタとTwitterにも投稿。広報活動もしっかりやる。
「それでは本番2分前でーす!スタンバイお願いします!!」
「それでは神谷さん、お願いしますね」
「えぇ、こちらこそ」
フェアチルドとヴィクトリアムの2人は、いつものアナウンサー席に座り原稿を机に準備。神谷はスタッフ側で待機して、出番を待つ。
「本番5秒前!4、3」
ディレクターが2と1は指で数えて、ゼロになるとニュース12のオープニングが流れて、画面がスタジオに切り替わる。
「ニュース12のお時間です。本日は新聞各社で報道されている内容を、こちらでも詳しくお伝えしていきます。
世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国海軍が衝突したバルチスタ沖大海戦直後の中央歴1643年2月7日、グラ・バルカス帝国艦隊が我が国の首都オタハイトを殲滅するため17隻からなる艦隊を派遣。さらに帝国は同時作戦のため、商業都市マイカルを火の海とせんとするために別働隊の空母機動部隊を派遣していたことが判明しました!!」
「今朝の新聞にも一面に載っていましたね。私も朝食を食べながら見ましたが、とても驚きましたよ。どうやって、これら帝国の脅威をムー国は排除したのでしょうか?」
「はい。『ラ・カサミ』と『ラ・イーセ』はご存じですね?」
基本的にはフェアチルドが質問して、ヴィクトリアムが答えていく形式らしい。台本や事前資料である程度流れは分かっているが、それでも書面とリアルでは感覚が違う。
「えぇ。『ラ・カサミ』はムー国の象徴的で最強とも言える艦ですね。大日本皇国で改良を施され、ムーに返還されたとニュースになっていましたね。『ラ・イーセ』は大日本皇国からの技術提供を受けて建造された、新基軸の戦艦ですよね?」
「実は、オタハイト防衛には首都防衛艦隊が出撃。『ラ・カサミ改』と『ラ・イーセ』は補給をしていたため、少し遅れて出撃していたんです!!」
まあ流石に「お披露目してから出したかったんで、出撃渋ってました!」なんて言えないので、そういう風にしたのだ。
「では首都防衛艦隊が、グラ・バルカス帝国による首都攻撃の脅威からオタハイトを救ったのでしょうか?」
「いえ、首都防衛艦隊はグラ・バルカス帝国の航空攻撃で壊滅的打撃を受けます。しかしまず『ラ・イーセ』と『ラ・カサミ改』が、戦闘海域に到着するんですね」
「ええ、それで?」
「『ラ・カサミ改』の対空能力は極めて上がっており、迫り来る帝国航空機をバッタバッタと落とします!!さらに『ラ・イーセ』が首都防衛艦隊の撤退を援護し、『ラ・カサミ改』が敵艦隊に突撃を敢行!!そのまま1対17という、艦隊決戦にもつれ込んだそうです!!!!」
「ええぇぇ!?!?」
何故だろう、フェアチルドのオーバーリアクションを聞くと「うわぁ、水素の音ぉ!!」が脳内再生されてしまう。
「グラ・バルカス帝国の超大型戦艦は、神聖ミリシアル帝国のミスリル級魔導戦艦にも匹敵する強さを持っています!!その超大型戦艦をも含んだ17隻相手に、『ラ・カサミ改』は死闘を繰り広げました」
「どうなったんでしょうか!!!」
「実は一部現場艦橋の、音声テープを関係筋から我が社の社員が入手いたしました。聞いてみましょう!!」
「はい!!」
てっきりニュースなんかに良くある、ICレコーダーだけが映し出されて字幕付きの音声が流されるかと思ったが、ヴィクトリアムが懐からテープを出して普通にそれを再生し出した。
『敵軽巡、距離25kmまで接近!!敵巡洋艦距離28、まもなく敵の射程に入ります!!』
『主砲砲撃戦、目標!前衛の軽巡!!』
『照準良し!』
『撃て!!』
『命中!!』
『いい、いいぞ!!』
『敵さん、いよいよ怒ったようだな』
『敵重巡、右舷と左舷に展開!挟まれました!!』
『怯むな!!近距離対艦ミサイル発射ァ!!!!』
『命中!命中!敵艦大炎上しています!!』
『このまま押し切れ!!対艦ミサイル、敵戦艦に照準!!撃てぇ!!!』
『て、敵戦艦に命中しました!!すごい!!船体に巨大な破口が出来ています!!!!』
『やはり皇国の兵器は凄まじいですな艦長!』
『そうだな副長!この調子ならきっと』
『後部主砲に命中弾!!火災発生!!』
『ダメージコントロール!消火急げ!!』
『艦長、不味いですよ。ミサイル系も対艦ミサイルはもうすぐ底が見えてしまいます』
『恐らく、もう少しで『ラ・イーセ』が到達する筈だ。それまでに、少しでも相手にダメージを与えるんだ』
『艦長、やるんですね?今、ここで!』
『あぁ。総員、艦首軸線砲射撃準備!!』
『アイアイ・サー!砲撃回路接続、艦首隔壁、解放!』
『照準線、敵戦艦に固定。いけます!!』
『電磁投射砲、正常に作動中。チャージ完了、いつでも撃てます!!』
『510mm電磁投射砲、発射ァァァァァァ!!!!!』
「入手出来た音声部分は以上になります」
「な、なんて凄まじい.......。私たちが平和な日常を享受している間に、命をかけた男達がいたのですね!!」
「ムー国政府関係筋によりますと、この後『ラ・カサミ改』は大日本皇国より付与された新兵器を使用し、敵戦艦及び巡洋艦を含む数隻を撃沈。更に『ラ・イーセ』の砲撃が開始され、その直後に大日本皇国が出した援軍により敵残存艦を拿捕したとの事です。
ムー海軍の被害としては、首都防衛艦隊が壊滅。『ラ・カサミ改』は大破、『ラ・イーセ』も中破し、現在ドックで修理中との事です」
「ではマイカルを攻撃していた敵部隊は、どうなったのでしょうか?」
「グラ・バルカス帝国艦隊は、マイカル攻撃を本隊としオタハイトよりも大規模な艦隊が差し向けられた模様です。マイカルには『ラ・カサミ改』を護衛してきた大日本皇国の最新鋭戦艦である、究極超戦艦『日ノ本』が付近を航行しており、迎撃行動を開始。こちらはたったの5分程度で敵艦を殲滅し、被害は全く無かったとの事です。詳細は、コマーシャルの後にゲストを交えてお送り致します」
ここで一度コマーシャルが入り、スタジオの映像が途切れる。その間に神谷のゲスト席が手早く準備され、そこに神谷も座る。2分程のCMの後、映像はまたスタジオに切り替わる。
「ここからはゲストと共に、究極超戦艦『日ノ本』の詳細と、昨日発生したアルー侵攻について見ていきたいと思います。
本日のゲストは大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三元帥です。神谷さん、よろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそ。よろしくお願いします」
「早速ですが、この究極超戦艦『日ノ本』とは、一体どの様な戦艦なのでしょうか?」
「そうですねぇ。一言で言い表すのならば『戦艦という艦種の1つの完成形』と言ったところでしょうか。百聞は一見に如かず、とも言いますので、こちらをご覧ください」
神谷は手元のスマホを操作し、立体映像をスタジオ内で再生させる。映し出された映像は、勿論『日ノ本』の立体映像である。
「これが私が艦長を務める、究極超戦艦『日ノ本』になります。主砲は50口径800mm五連装火薬、電磁投射両用砲9基。副砲には60口径710mm四連装火薬、電磁投射両用砲4基と50口径510mm四連装火薬、電磁投射両用砲20基を採用しております。その他、速射砲と機関砲で船体各所に装備しており、考えられる脅威に対して対応できる様になっています」
「電磁投射両用砲というのは?」
「本来大砲というのは、砲弾を火薬で加速させて飛ばします。魔法文明であれば魔法ですが、火薬か魔法かの違いで根本的な仕組みは同じです。電磁投射砲とは、この加速部分を電磁力の原理を用いる砲です。本艦含め皇国海軍の戦艦と要塞空母は、火薬式でも電磁投射式でも状況に応じて変更できる様になっていますので、火薬、電磁投射両用砲と呼ばれているのです。因みにどんな感じかと言いますと、こんな感じ」
『日ノ本』の映像を『熱田』で行われた710mm四連装火薬、電磁投射両用砲の発射試験の映像に切り替える。砲身が4つに別れ、砲身内に無数の小さな稲光が走り、「バシュン!!」という音共に砲弾が発射される映像だ。ムーの人々からしてみれば、SFの世界そのものである。
「この他、『日ノ本』にはミサイル、こちら流に言うなれば誘導魔光弾を装備しています。更に第六世代ジェット戦闘機に分類されるF8CZ震電IIタイプ・
「誘導魔光弾と申されますと、あの誘導魔光弾ですか?ラヴァナール帝国が保有していたとされる、伝説の.......」
フェアチルドが恐る恐る聞いてくる。やはりこの世界に於いては、ムーと言えど
「そうらしいですね。しかし我々がいた世界では誘導魔光弾、ミサイルは別に珍しい兵器ではなく、寧ろ最もポピュラーな兵器の1つです。戦艦1隻を余裕で沈める物もあれば、航空機を追いかけ回してほぼ確実に撃墜してくれる物、果ては国1つを一撃で破壊せしめる物まで。種類や性能を全て語っていたら番組の時間が終わってしまうので多くは語りませんが、『日ノ本』には10,000発以上の各種ミサイル兵器が搭載されています。航空機に搭載する物も入れたら、それ以上です」
「ここまででも凄まじい兵器で、我々も明確にイメージしきれない程の力を持つ『日ノ本』ですが、他の戦艦と決定的に違う物があると聞きました。それについて、教えて頂きますか?」
「勿論です。本艦最大の魅力は万能性と、類稀なる指揮能力です。本艦は凡ゆる戦場の局面に柔軟に対応できる様に、様々な設備を装備しております。砲撃、雷撃、航空攻撃、ミサイル攻撃、対空、対潜は勿論の事、強襲揚陸艦としても使用できます。本艦は広大なウェルドックを有しており、ここに上陸用舟艇や水陸両用車を積載。各火器で地上を攻撃しつつ、上陸部隊を展開。なんて事も出来てしまうのです。
そして指揮能力についてですが、これこそが本艦のルーツなのです。元々『日ノ本』は聨合艦隊構想と呼ばれる、大日本皇国が保有する全八個の主力艦隊を一個の艦隊として運用する計画に基づいて建造されました。一個主力艦隊で237隻という途方もない数になりますので、これを八個となると統括して指揮するのは物理的に不可能です。そこで専用の指揮システムを開発し、これを搭載。このシステムの導入により艦隊はおろか、陸上の末端の歩兵1人に至るまで統括管理出来るようになっているのです」
ヴィクトリアムが了解チラリとプロデューサーを見る。プロデューサーからは「次のコーナーに行って」という合図が来たので、次のコーナーであるアルー侵攻の解説に移る。
「神谷さん、ありがとうございます。それでは次のアルー侵攻について、神谷さんの見解をお聞きしたいと思います。本日未明の戦局報道で判明しましたが、昨日、グラ・バルカス帝国が国境の街であるアルーへ侵攻。守備隊は全滅し、アルーは陥落致しました。
さて、神谷さん。今回アルーが陥落してしまったのですが、これには何か特別な原因があるのでしょうか?」
「はい。これはですね、単純明快です。ズバリ、軍の経験と練度が足りないだけです」
「と言いますと?」
「別にこれは「ムーは弱い!」という訳ではありません。そもそもグラ・バルカス帝国には、ムー統括軍が保有してない『戦車』と呼ばれる兵器があります。この戦車という兵器は、まあ厄介な代物です。歩兵が持つライフルや機関銃どころか、大口径の大砲でないと破壊できない装甲に、装甲車を真正面から撃ち抜く大砲を持った兵器です。
兵器というのは基本的にイタチごっこ。何かが生まれれば、それを打ち倒したり防ぐ為の兵器が生まれ、今度はその兵器が通用しないような改良を施したり新たな兵器を生み出す。例えば昔は石や棍棒で戦っていましたが、その内剣などの武器に進化しました。これを防ぐ為に盾や鎧が開発され、これを貫く為に剣を鋭利な物にしたり槍を作ったりと、何かを超えるために兵器は生まれてきます。
しかし今回はいきなり知らない兵器が出て来ましたから、そりゃ何も出来ませんよ。一応やろうと思えば、手榴弾とか火炎瓶でも戦車は行動不能に出来るっちゃ出来るんですよ。しかしこれは危険が伴いますし、闇雲にポンポン投げ付けてもラッキーパンチはあるかもしれませんが、弱点を付けなくては意味がありません」
本当はムーにも戦車とか対戦車兵器はあるにはあるし、何なら普通に高性能の物が量産されている。だが前回書いた通り、量産が追いついておらず前線に配備できてないのだ。神谷だってそれを知っているが、敢えてここでは語らない。
「あのー、私としては皇国にも戦車があるのか気になるのですが.......」
「勿論!戦車は我々が居た世界では、大体130年前に生まれました。当時、第一次世界大戦と呼ばれる戦争がありまして、戦車は塹壕を突破し奥に機関銃と歩兵を送り込む為の兵器として生まれ、戦争や技術革新を経て進化しました。
現状、皇国では5種類の戦車を運用しており、そのどれもがグラ・バルカス帝国の物よりも強力です」
「具体的には、どの様に強力なのでしょうか?」
「全てです。装甲、武装、速度は勿論、使用する戦術に至るまで。例えグラ・バルカス帝国の戦車がゼロ距離で射撃したとしても、装甲を貫通する事は出来ません。その位強いのです」
ヴィクトリアムもフェアチルドも驚いた顔をしているが、内心では本当かと疑っていた。それはテレビの前にいるお茶の間の皆さんも同じである。それを神谷も分かっているので、しっかりパフォーマンスしてアピールする。
「と言っても、皆さん信じられないでしょう。しかしこれは事実です。
今から遡る事、約110年前。我が国がまだ皇国ではなく、帝国だった頃。大東亜戦争と呼ばれる大戦争が起きました。当時、皇国は国力が100倍もある国、そうですね。簡単に言えば神聖ミリシアル帝国に対して喧嘩を売ったのです。
その国はアメリカというのですが、アメリカには逆立ちしても勝てなかった。実際、年が進むにつれて本土は焼き尽くされました。東京だって大空襲に遭って、一面焼け野原。国土は破壊し尽くされ、それはそれは悲惨でした。しかし何だかんだでアメリカの西海岸を占領し、首都のワシントンすらも手中に抑えました。その時に使っていた兵器というのが、どういう訳かグラ・バルカス帝国の兵器と瓜二つなのです。110年もの差が、何を意味するのか。それは技術者や軍人でなくても、わかる事でしょう?」
最後に神谷は立体映像で、当時の映像を見せた。そこに映る兵器群は、グラ・バルカス帝国の兵器と瓜二つである。大和型も映っているので、兵器の事をよく分からなくても分かるだろう。
「さて、そろそろ、終了のお時間です。終始驚きっぱなしでしたが、どうでしたかフェアチルドさん?」
「そうですねぇ。驚きの連続でしたが、とても有意義でした。それに貴重な記録映像も素晴らしかったです。何だか最後の馬に乗っている軍人さんが、神谷さんに少し似ていたのが面白かったですね」
「あー、あれ、私のヒイヒイ爺さんですよ。神谷倉吉。先代の修羅です」
「え!?そうなんですか!?!?」
「私の一族自体、結構長い歴史がありましてね。日本という国が誕生した時とか、その辺りから続く家系です。修羅というのはヒイヒイ爺さん曰く、神谷家の中でも特に武勇に優れる者は分家のような扱いを受けていたらしくて、正確には戸籍としてではなく一種の称号らしいです。この刀も修羅を名乗る物が所有する、由緒正しい刀です。知り合いの鑑定家に幾らになるか聞いてみたら、「こんなの値段付けられるか!!国宝より価値あるぞ!!」と一目見ただけで怒鳴られたので、結構凄い代物ですよ」
最後の最後で爆弾をぶっ込み、ある意味の不完全燃焼で番組はエンディングを迎えた。本来なら「それでは、また次回」とか言いながら頭を下げるのだが、フェアチルドもヴィクトリアムもフリーズして頭を下げる事なくエンディングを迎えてしまったのだ。
この放送はムー中で大反響を呼んだのだが、もう1つ意外な所でも大反響を呼んでいた。グラ・バルカス帝国の支配地域、レイフォルである。レイフォルでは普通にムーの電波をキャッチできるので、レイフォルにいるグラ・バルカス帝国の人間にとってテレビやラジオは娯楽の1つなのだ。たまたま、シエリアとダラスは昼ごはんを食べながらこの放送を見ていたのだが…
『…… 中央歴1643年2月7日、グラ・バルカス帝国艦隊が我が国の首都オタハイトを殲滅するため17隻からなる艦隊を派遣。さらに帝国は同時作戦のため、商業都市マイカルを火の海とせんとするために別働隊の空母機動部隊を派遣していたことが判明しました!!』
「ブホォッ!!」
「き、汚いぞダラス!!」
「ず、ずびばぜん」
ダラスはコーヒーを吹き出した。というのもオタハイトとマイカルの攻撃を提案したのは、何を隠そうこのダラスなのだ。少し前、ダラスが本国の外務省に戻った事があった。その時に偶然にも外務大臣がお忍びで食堂に来ていて、そのまま一緒に食事をした時にこの案を語ったのだ。勿論「こんな事やりゃ世界も驚くでしょうねぇ」という感じの雑談程度だったので、まさか採用されてるとは思わなかったのだ。
『……本日のゲストは大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三元帥です。神谷さん、よろしくお願いしますね』
「神谷浩三・修羅!?!?」
「まさかムーで指揮を取るのか?」
「おい、すぐに大佐に報告に行くぞ!!」
そしてまさかの神谷登場に、他の職員や軍人達も大慌てである。現在のグラ・バルカス帝国、正確にはその最前線の現場である外交官や軍人達にとって、神谷浩三・修羅と神谷戦闘団は疫病神そのもの。そこに存在するだけで災厄を振り撒き、仕事や被害を際限なく増やす
「これは、荒れるな.......」
シエリアの脳裏には、この後起きる惨状が鮮明に浮かんだ。恐らく侵攻軍は壊滅的被害を受け、遠く無い内にここも奪還に来るだろう。まだ一度しか会ってないが、纏っていた雰囲気が常人とは掛け離れた化け物だったのは記憶に色濃く残っている。シエリアはすぐに本国に問い合わせるべく、執務室へと戻ったのであった。
「お疲れ様」
「おう。ミーナがスタジオの外で張ってたとなると、何か動きがあったな?」
「流石ね。
「そうか。まあ、あっちも短期決戦で決めたいんだろ。お楽しみもあるだろうしな。さーて、そしたら手ぐすね引いて待っていてやろうか。部隊の状況は?」
「戦闘団第一陣は予定通り、アイアンレックス2号で順調に輸送されてるわ。第二、第三陣も順調ね。今日中にはリュウセイ基地に到着するはずよ。航空隊については、さっき着いたって連絡があったわ。
それから村今戦闘団、下山戦闘団、栗森戦闘団も間も無く展開が完了するわ」
その報告を聞くと、神谷はニヤリと笑い刀に手を置いてミーナに命じた。
「ミーナ、ワルキューレを集めヘリを呼べ。最前線に殴り込もう」
「そう来ると思って、全部手配済みよ」
「はは。相変わらず準備がいい事で。それじゃ、行くか!!」
神谷はテレビ局を後にし、装甲列車アイアンレックスの元へと向かう。これ以降、第二文明圏は戦火に彩られる事になるのだ。