最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第六十五話バルーン平野迎撃戦

その日の夜 キールセキ 酒場

「おい、聞いたか?アルーの街はグラ・バルカス帝国の手に落ちたらしいぞ」

 

「あぁ。住民は兵士によって大変な目にあってるって話だそうだ。具体的に話すと、胸くそ悪くなるので言いたくねぇがな。飲まなきゃやってられねぇよ」

 

「もしも次に奴らが狙うなら、一番近くて、鉄道の重要拠点であるこのキールセキを狙うんじゃねえか?」

 

「そうだろうが、ムー国軍も、世界第二位って列強としての意地があるだろ?西部方面隊主力基地も近くにあるし、さすがにアルーとは防御力が違い過ぎる。このキールセキが落ちる事はねぇよ」

 

圧倒的で絶望的な力差があるグラ・バルカス帝国、奴らが目と鼻の先とも言える場所にいることを、誰もが不安に思っていた。酔っぱらい達は不安を取り払うかのように、強がりながら話す。

 

「違えねぇ」

 

「お前たちは何も解っていないな!!!」

 

不意に酒場に響き渡る大きな声、フードをかぶった1人の男が、酔っ払いどもの話を遮るように話はじめる。フードの横からは、尖った耳が出ており、おそらくはエルフ族の者と思われた。

 

「お前たちは、グラ・バルカス帝国の恐ろしさを何も解ってはいない!!!」

 

男の手は震え、手に持つコップからは酒がこぼれる。否応がな、酒場の者達は、その男に釘付けになった。

 

「俺は.......俺は、イルネティア王国海軍に所属していた事がある!!」

 

イルネティア王国とはムー大陸西部、約500kmに位置するパガンダ島北部に位置する文明圏外国家で、西方世界との交易拠点として栄えた平和な国家である。だが先進11ヶ国会議の開催よりも前にグラ・バルカス帝国の侵攻を受け、現在は植民地支配を受けている。

 

「帝国は、明らかに宣戦布告ととれる挑発活動を行った。イルネティア王はこれに激怒し、帝国外交官が帰る際、移動に使用した戦艦『グレードアトラスター』に乗り込んだ瞬間を狙って攻撃を開始した。砲撃は正確に着弾し、敵艦は爆煙に包まれたよ.......」

 

今まで伝説級の強さを誇ってきた恐怖の対象、超戦艦『グレードアトラスター』に文明圏外国家が、砲撃を着弾させていたという事実に場はざわつく。

 

「至近距離の射撃だったので、当たった。我が国は第二文明圏列強、レイフォルと同じように、着弾したら爆発するタイプの砲弾を使用した。

さらに魔法砲撃術のリミッターを解除することにより、砲身の寿命と引き替えに砲撃の威力を上げるといった我が国の秘術までもを使用し、グレードアトラスターに攻撃を続けた.......。しかしな.......奴は、奴は!化け物だ!!」

 

話しながら、恐怖を思い出しているのであろう.......語りだす男はの額からは冷や汗が流れ、手は震え始める。

 

「当たった.......。確かに当たったんだ!!我が国最強の技術と、我が国最強の砲撃が!!

でも.......でも奴らは、何も無かったかのように.......何も無かったかのように、我が艦隊を砲撃したんだ!!しかも1発で、魔導戦列艦が爆散するほどの威力で!!

とてつもなく重い1発。たったの1射で、魔導戦列艦が、粉々に粉砕されるんだぞ!!あんな攻撃見たことが無かった.......。俺は、古の魔法帝国の空中戦艦が、グレードアトラスターに落とされたと聞いて、不思議には思わなかった」

 

場が静まり返る。実際にグラ・バルカス帝国と戦った男の話は、とても生々しく自分達もそこにいたかの様に感じられた。だがその恐怖を認識しない為なのか、酔っ払いが口を開く。

 

「ま.......まあ、お前さんが、大変な思いをしてきた事は良くわかったしかし、このキールセキは、ムーにとっても絶対に落としたくない戦略的拠点だから、簡単には落ちねぇよ。ほら、知ってるか?ええと、何だったかな.......。大に、そうそう、大日本皇国もムーを救うために参戦するらしいぞ。なんとかなるって!!」

 

「認識が甘いと言っているのだ!!奴らの次元は、私の知る戦闘の次元を遙かに超えた位置にいる!!陸軍だってとてつもなく強い!!奴らの陸軍で使用された戦車という名の超兵器も、私は見たのだ!!鋼鉄の車に、高威力の魔導砲が取り付けてあり、我が方の魔導砲が直撃してもびくともしない。しかも、かなりの高速で動くのだ!!」

 

「まあまあ、お客さん、そう熱くなりなさんなって、お!?みてくださいよ、援軍が汽車で到着したみたいですよ」

 

酒場の横の線路を、ゆっくりと機関車が通り過ぎる。だが、そのシルエットはいつも見る機関車とは違う。一度も見た事がない。一瞬、首都方面にしか走ってない物かとも思ったが、明らかに大きさが違う。普通の機関車の2倍はある。他の酔っ払いも気付いたのか、扉を開けて外を見てみる。

 

「お、おいアレ!!なんだあの列車!!!!」

 

そこにいたのは、蒸気機関車なのは間違いない。だが全長が40mはるし、後ろの客車や貨車も明らかに戦闘用の車両もある。あんなのは見た事がない。

 

「で、デケェ!!」

 

「あんな列車、ムーは持ってたのか?」

 

「いや!!あんな車両、見た事がないぞ!!!!」

 

客の中に偶々、キールセキの鉄道管理局で働いてる奴が居たのだが、ソイツがそう叫んだ。その時、脳裏に昼休みに同僚から聞いた話を思い出した。

 

『そういや今日の夜、ここを大日本皇国軍の列車が通過するらしいぞ』

 

そう。目の前の蒸気機関車はムーの保有する物ではない。開発陣がふざけて銀河鉄道物語のビッグワンに似せて作った、蒸気機関車の見た目をした電気式ディーゼル機関車。装甲列車『アイアンレックス』である。

 

「お、おいアンタ!アンタの言う例の『戦車』とか言うのは、ひょっとしてアレか?」

 

客の1人がそう聞いた。現在アイアンレックスには客車の他、戦車を載せてる貨車や砲塔車両、対空戦用の車両も連結されている。このまま敵地に突っ込んで戦える装備なのだ。

 

「そ、そうだ間違いない!!だが…」

 

「だが?」

 

「あの戦車の方が強そうに見える。なんというか、こっちの方が大きい気がする」

 

実際強い。何せグラ・バルカス帝国の戦車はチハタンで、こちらは46式を筆頭に化け物揃い。なんならメタルギアなんかもいる。これで勝てと言う方がもっと無理だろう。

アイアンレックスはこの酒場のもう少し先にある、ムー陸軍キールセキ駐屯地に隣接している操車場まで前進し停車した。

 

「よくぞおいでくださった、神谷元帥殿。私は司令のホクゴウといいます。大日本皇国陸軍を我がムー国陸軍は歓迎いたします」

 

「痛み入ります。早速ですが、すぐにでも作戦会議を開きたい。準備をお願いします」

 

「分かりました。では元帥殿と.......後ろの方々はどうなさいます?」

 

「1人だけで大丈夫です。向上、来い。ワルキューレ、隊を宿舎に誘導しろ」

 

ここでワルキューレ達とは別れ、神谷と向上は作戦会議に向かった。のだが…

 

「何故です!!我々との共闘ができぬとは、我らへの侮辱ですぞ!!!!」

 

ホクゴウがキレた。というのも神谷と向上が安定の理由により「こっちで迎撃するんで、そっちはキールセキ守ってください」と言ったのだが、ホクゴウは面子の問題で、どうにかして何が何でも共同戦線を貼りたいらしい。その辺りの話をしている内に、これである。

 

「侮辱も何も、現実問題として不可能なんですよ」

 

「我が部隊の練度は充分、士気は旺盛!これの何が問題なのです!?!?」

 

向上が言葉に詰まるが、そうなれば神谷の出番である。こういう時の対処法もしっかり準備済み、というか多分こうなるだろうと勝手に思っていた。

 

「ホクゴウ司令。質問しますが、仮にこの世界中の軍隊の中で1番の練度と指揮を持った軍が、第三文明圏外の国家だったとしましょうか。その国が神聖ミリシアル帝国と共闘できると思いますか?」

 

「それは不可能でしょう!装備が違いすぎます」

 

「その通り。我々からしてみれば、それと同じなんですよ。我々の戦争の仕方は、其方とは次元が違う。例え1人でドラゴンを倒せる奴が大量にいようと、国の為なら命を捨てれる心持ちだろうと、こればかりはどうしようも出来ない」

 

だがホクゴウは尚も食い下がり「演習でどうにかなるでしょう?」と言ってきた。確かに演習でどうにかはなる。所詮は機械なので使い方さえ覚えてしまえば、極論だが猿でも操れる。だが皇国と肩を並べるとなると、年単位の時間が掛かる。これでは学んでる間にキールセキどころか、ムーという国家が亡国化して地図から消えてしまう。

 

「生憎と1日2日の一夜漬けじゃ、まず無理ですよ。確かに演習や研修で使える様にはなりますが、それに掛かる時間は物にもよりますが全部をそこまで引き上げるとなると年単位の時間が掛かります。何せ10教えるのに1からスタートではなく、事前知識を叩き込む所からのスタートですから実質100教えなくてはならない。

勿論、貸与した所で使いこなせる訳がありません。すぐに単なる置き物か、良くて鈍器でしょう。兎に角、我々が敵を潰します。ですのでそちらは、キールセキを守ってください。最後の砦が他の国じゃ、流石にカッコつかんでしょ。やっぱりそこは、自国の軍隊じゃいと」

 

「.......そういう事なら、従いましょう。ですがそれは、そちらの作戦を聞いてから判断させて頂きたい」

 

「良いでしょう。向上、説明して差し上げろ」

 

向上は素早く準備を整え、作戦を説明する。と言っても電気消して、立体映像に作戦地域の地図を投影するだけだが。勿論、ホクゴウからは驚かれた。

 

「我々がいるキールセキはここ。そして侵攻軍の主力が配備されているのは、恐らくこのFOB1。攻撃時にはFOB3と4、更に後方にあるレイフォルからの航空隊も予測されます」

 

因みにこのFOB1やFOB4というのは略称でFOB1はバルクルス基地、FOB2はバルクルスの後方にある物流拠点のウィザスター基地、FOB3はバルクルス基地とレイフォルの中間にあるメーバックス航空基地、FOB4はアルー近くにあるドーソン空軍基地である。

 

「侵攻ルートは幾つか予測されますが、どの様なルートを取っても確実にこの空洞山脈を突破する事になります。空洞山脈はご承知の通りスポンジの様に各所に穴が空いた特殊な形状の山脈であり、敵が何処から出てくるか予測するのは不可能なのです。

そこで我々は山脈とキールセキの間に広がるバルーン平野に陣地を構築し、接近してくる敵部隊を迎撃する事にしました。配置はこの様になります」

 

「こ、これは!」

 

「簡単にご説明致します。正面には戦車、中央後方に44式230mm自走砲、その後方に51式510mm自走砲。左翼と右翼には96式160mm榴弾砲、更に後方に53式多連装ロケット砲を配置。これに加えて空洞山脈内部にXMLT1土蜘蛛とWA2月光ロ型、付近の森には36式機動戦車を配置し、敵撤退時にはこれらが追撃。空洞山脈内部で敵を殲滅します。

また作戦中はAH32薩摩による近接航空支援もあります。キールセキには我々が乗ってきたアイアンレックスを配置しますので、万が一、この防衛ラインを突破した敵がいた場合は即座に戦闘行動に入る手筈です。敵航空隊については、リュウセイ基地にいる航空隊が対処します」

 

これはあくまで簡単にしか説明していないので、実際は更に色々と配置される。例えば空洞山脈の周囲と上空はOH8風磨が上空から監視するし、各砲撃陣地には44式装甲車を筆頭とした車両と歩兵が配備される。更に更に空洞山脈内部を偵察するべく39式偵察車、偵察バイク、WA1極光からなる偵察隊が警戒に当たる。オマケに白亜衆とワルキューレ、そして新たに向上が指揮する例の新部隊も空洞山脈内を飛び回り偵察、場合によっては攻撃する事になっている。

そして99%ないが防衛戦をグラ・バルカス帝国軍が突破した時を想定して、36式機動戦車と44式装甲車ハ型を中心とした機動力に特化した機甲部隊と、住民が素早く避難できる様に大量のトラックと護衛の40式小型戦闘車を配置してある。

 

「確かにこれならば.......」

 

「いかがでしょう?」

 

「.......よろしくお願いしたい」

 

どうにか丸く収まり、以降は詳細を詰めていった。そんな事をしていると、いつの間にやら夜が明けてしまい2人は遅い就寝となった。

 

「そういやお前の部隊、首尾はどうよ?」

 

「すこぶる順調です。名前も決めましたし」

 

「あー、名前まだ聞いて無かったな。結局今に至るまで『雑賀衆(仮)』だったし。流石に(仮)じゃ、色々示しつかんしな。早いとこ発表してくれ」

 

「私の指揮する部隊の名は『赤衣鉄砲隊(あかごろもてっぽうたい)』です。アーマーもカラーを真っ赤に変更して、さながら戦国時代の赤備えですよ」

 

今から3ヶ月前、向上は週刊誌に星宮との熱愛をすっぱ抜かれて大変だった。だがそんな状況の中どうにかこうにか作り出したのが赤衣鉄砲隊、『赤衣』である。当初は専用装備を開発して貰う予定だったが、もうそれどころじゃなかったので結局出来てない。

因みに星宮との関係公表は、取り敢えず今は見送る事にした。一応戦時下で向上は上級将校であり、軍の中のキーパーソンである。結婚してしまった場合、グラ・バルカス帝国の工作員が星宮を狙う可能性も0ではない。故に今は必死に隠しているのだ。

…と言いつつ、密かに向上はプロポーズを計画している。本来ならフラグで普通に死ぬヤツだが、口には出してないのでセーフである。

 

 

 

2日後 バルーン平野 皇国軍陣地

「団長!キールセキ侵攻軍と思われる航空隊を捕捉!リュウセイ基地の航空隊が会敵しました!!」

 

「奴等が来たってことは、こっちももうすぐって事だ。各部隊に伝達、警戒を強めろ。来るぞ」

 

今回、神谷は珍しく後方で指揮を取っている。偶には後方で指揮を取らないと、戦略眼が鈍ってしまう。前線は向上がいるので、現場指揮も問題ない。

さて、それでは今回の双方の参加戦力を解説しよう。

 

 

参加兵力

大日本皇国軍

迎撃部隊

・46式戦車 144両

・34式戦車I型 200両

・34式戦車II型 88両

・34式戦車改 288両

・XMLT1土蜘蛛 200機

・47式指揮装甲車 20台

・44式装甲車

※イ型 120台

 ロ型 80台

 ホ型 15台

 へ型 40台

・39式偵察車 20台

・40式小型戦闘車 258台

・51式510mm自走砲 24門

・44式230mm自走砲 72門

・96式160mm榴弾砲 128門

・53式多連装ロケット砲 76両

・49式対空戦闘車 30台

・WA1極光 800機

・WA2月光

※イ型 400機

 ロ型 600機

・AH32薩摩 15機

・OH8風魔 20機

 

防衛、避難民護衛部隊

・装甲列車『アイアンレックス』 1両

・36式戦車 144両

・47式指揮装甲車 5台

・44式装甲車 210台

※イ型 60台

 ロ型 20台

 ハ型 90台

 ホ型 40台

・40式小型戦闘車 180台

・高機動多目的車 534台

・中型トラック 453台

・大型トラック 387台

 

 

ムー

・105mmイレール重カノン砲 20門

・ガエタン70mm歩兵砲 89門

・迫撃砲 64門

・6.5mm重機関銃(車輪付き) 178基

 

 

グラ・バルカス帝国

・前線指揮車 4台

・軽戦車シェイファーII 836両

・中戦車ハウンド 418両

・自走砲アシッド(ホロに酷似) 189両

・対空戦車アウル(ソキに酷似) 35両

・トラック(九四式六輪自動貨車に酷似) 537台

・タンクローリー 130台

・バイク(陸王に酷似) 68台

・側車(九七式側車付自動二輪車に酷似) 8台

 

 

勿論3軍とも歩兵が大量にいたり、給弾車とか色々いたりするのだが、もうそこは表記しない。だが見て分かる通り、大日本皇国軍本気(マジ)モードである。今回、大日本皇国軍はアイアンレックスと航空隊を除けば、全て神谷戦闘団かと思うだろう。だが実際はトラックや53式、それから一部の榴弾砲部隊は、他の部隊から一時的に神谷戦闘団の隷下に組み込まれてるだけで本来は所属していない。

だが裏を返せば、他の戦車とか51式なんかは神谷戦闘団が元から基幹部隊として保有している兵力であり、これこそが『国境なき軍団』の所以である。

 

「空洞山脈内の偵察部隊より報告!間も無く、敵部隊の戦闘が平野に出ます!!」

 

「よーし、総員攻撃準備!!各砲撃陣地は初弾を装填し、狙いをつけろ。戦車隊も前進準備だ。だが!まだ動くな。空洞山脈は幾ら空洞と言えど、道幅は狭い。精々戦車2両が横並びで動ける位だ。恐らく平野で陣形を整えてから、こちらに進軍してくるはず。

それを見越して、こっちは砲撃陣地を鶴翼の陣になる様に配置して、中心に戦車を配置してんだ。まだ絶対撃つな」

 

「上空のバンディルン6(風磨)より続報!団長の読み通り、敵戦車は出口の少し先、ポイントH(ホテル)48で停止。後続を待っている様です」

 

「バンディルンはそのまま監視を続行。空洞山脈内の偵察隊は敵部隊に接近。状況を報告させろ」

 

ここまで神谷の予測通り。侵攻軍は空洞山脈を出ると後続を待ち、隊列を組んでキールセキ目指して侵攻する様だ。上空の風魔からも周囲を警戒するべく、歩兵が展開していると続報が入っている。内部に潜んでいる偵察隊からは、恐らく後1時間程度で全車外に出ると報告が入った。ならばこちらは、堂々と敵が準備を終えるのを待つのみ。

 

 

「あと少しで空洞山脈を抜けますね」

 

「あぁ。全く、冗談のような地形だったな.......」

 

上を見上げると、石が立体的な編み目のようになっていて幻想的な光景ではあった。だが長時間見続ければ、幻想的だろうが神秘的だろうが飽きる。

 

「それにしても、ホントきつい物でしたね」

 

「そうだなぁ。何せ見渡す限り延々と岩岩岩!中間地点位で大きな湖があったのは驚いたが、見所がそれしか無かったからな」

 

「しかも敵の警戒もせにゃならんので、早々そっちに意識を向けてられませんからねぇ」

 

因みに彼らはなんだかんだ、大体半日掛けて空洞山脈を抜けて来ている。一応、途中までは列車を使って前進したが、以降は陸路でノロノロ進んできた。流石にここまでの長丁場になると燃料も持たなくなるので、途中で給油と休憩を挟みはしたがやはり疲れも溜まる。

 

「そういえばボーグ師団長、例の大砲はどうやって回避するんですか?あの正面から戦車を破壊したっていう」

 

「あれか。ムーの大砲は基本的に口径からして、我が方の装甲を貫通できない。それに基本的に固定式の大砲だ。対してこちらは機動力がある。これを生かして立ち回れば問題ないし、何より多少の被害は覚悟の上だ」

 

「我々の得意な戦法ですね」

 

「それに最悪、ここに逃げ込んでしまえば向こうの砲は意味をなさないしな」

 

空洞山脈には上空には網目状の岩石構造があるため、放物線を描く榴弾砲も航空機による支援攻撃は意味をなさない。対して直線的な攻撃が主となるならば、戦車は圧倒的なアドバンテージとなりうる。だが現状、他国に戦車を運用している国は把握されていない。つまりは帝国が最強であり、他の国は敵ではない。そこから来る圧倒的な自信で、彼らは見事なまでに慢心していた。

 

「帝国はやはり無敵だ。この行軍を止められる者はこの世界に存在しないだろう」

 

ボーグの周囲には何百両という戦車とトラックが並び、例え軍事に疎い者が見ても圧倒するであろう光景であった。これだけの軍勢、キールセキどころかムーの首都であるオタハイトすらも落とせるかもしれない。そんな事を考えていた。

 

「師団長、全車、進撃準備完了!」

 

「全車、進撃せよ!!!!!目標、キールセキ市街地!!!!!」

 

ボーグの命令が下り、戦車を先頭に侵攻軍は前進を始めた。勿論その動きは、しっかり上空の風魔が全部見ている。

 

「バンディルン2より報告!!敵軍、徒党を組みて前進!!!!」

 

「よーし、よしよしよーし!!こちらも攻撃開始だ!!!!各砲撃陣地、砲撃開始!!戦車、突撃!!ヘリコプターも行けぇ!!!!」

 

敵が動いたなら、こっちも攻撃を開始するのみ。神谷の命令は即座に伝達され、各砲撃陣地から砲撃が開始される。

 

「本部より命令きました!!射撃開始!!」

 

「よしきた!砲撃開始ぃ!!撃てぇぇ!!」

 

「510mm砲の威力はエグいぞ?」

 

「月まで吹っ飛べよ?侵攻軍ちゃん!」

 

戦車というのは正面こそ装甲は厚いが、上や下は薄い。そこに数百門の、それも真正面から撃たれても防げないサイズの砲弾が降り注いでは、まず助からない。一度の砲撃で先頭にいた200両以上が、見事に消え去った。

 

「何事だ!?」

 

「わ、分かりません!!先頭が爆炎に包まれ、全車撃破されました!!黒焦げです!!!!」

 

「地雷でも仕掛けられていたのか!?クソッ、偵察隊を出せ!!」

 

まさかいきなり、戦車200両が一気に消し飛ぶとは思わなかった。恐らく地下に大量の爆薬がセットされていたのではと、ボーグそう考えていた。確かにこれだけの攻撃を、陸の砲撃のみで行うことはまず考えられない。物理的に不可能なのだ。

だが知っての通り、皇国軍には51式という大和砲を自走砲にした狂気の産物がいる。たかが軽装甲(・・・)の戦車を消し飛ばすなんて、余裕である。

 

「し、師団長!!上に何かいます!!!!」

 

「なんだアレは.......」

 

上空に機体上部にプロペラを持つ、謎の珍妙な航空機が居た。あんな航空機、見た事がない。しかもそれが16機居た。

 

「航空機発砲!!」

 

短い翼の下に装備されていた筒状の物体から、何かが飛んできた。その何かは戦車を正確に狙い撃ってくる。恐らく、誘導ロケットの類だろう。

 

「対空戦車前へ!!奴を堕とせ!!!!」

 

アウルが前衛に出て、装備されている25mm対空機銃を撃ちまくる。だがAH32薩摩は、40mm機関砲が直撃しても耐えられる様に作られている。25mmでは倒せない。それどころか、お返しにロケット砲をお見舞いされる始末である。

 

「対空戦車8両大破!!」

 

「前方より敵戦車、接近中!!判別、重戦車!!」

 

「重戦車だと!?!?」

 

「はい!それもコチラの戦車と変わりない数です!!」

 

グラ・バルカス帝国にはまだ、重戦車はまだそこまで配備されていない。開発はされているし最近配備されつつあるが、それはあくまで本土の精鋭部隊が少数運用しているだけに過ぎない。しかもそれが大量にくるとなると、シェイファーやハウンドでは太刀打ちできない。

 

「せ、戦車前進!!敵戦車を撃て!!!!」

 

ボーグはそう命じた。命令を受けた戦車隊は前進し、砲弾を込めて照準する。

 

「な、なんでデカいんだ!」

 

「おいアレ!連装砲を装備してるぞ!!」

 

だが戦車隊が遭遇したのは、陸上戦艦の異名を持つ46式戦車。そしてその随伴戦車として開発された34式戦車改だったのだ。

 

「アンヴィル6より全戦車に告ぐ。MI☆NA☆GO☆RO☆SI☆DA☆」

 

隊長の命令に、無線機からは男達の「おう」という短くとも頼もしすぎる声が返ってくる。

 

「いました3500m前方!!」

 

「やろうぜ」

 

「待て。もう少し引きつける」

 

皇国側は既に射程に入っているが、もう少し引き付けたい。だがレールガン装備で、何気に多分初登場の34式戦車II型は攻撃を開始している。その威力はもう言わなくても分かるだろうが、容易く正面装甲を貫通して後方の戦車すら破壊している。

 

「1500m!こちら攻撃準備完了!!」

 

「攻撃開始!」

 

「待ってましたぁ!!」

 

そして46式と34式改も砲撃を開始。容易く敵戦車の装甲を破るのだが、46式に至っては5両纏めて破壊した。なんと1発の砲弾が4両を串刺しにし、5両目まで届いたのである。

 

「増速だ!」

 

「はいっ!」

 

「右40、続けて行進射!」

 

中にはこんな奴もいた。岩と岩に射線が通る一瞬で、34式改の連装砲の別々の砲身で別々の目標を同時に狙って撃破する高い練度を持つ化け物である。

 

「はっはぁ!連装砲ってのはこうやって使うんだ!!」

 

そう言っているが、普通は出来ない。普通は別々の砲身で別々の目標を狙っても、順番に倒す。同時にそれをやってのけるのは、まずあり得ない。

こんな化け物搭乗員と、化け物性能の戦車、そして後方から降り注ぐ砲弾の雨に晒されてはグラ・バルカス帝国軍でも高い練度を持つ第四師団とて、どうにもならない。

 

「撤退だ.......」

 

「師団長?」

 

「撤退、撤退だ!!空洞山脈に逃げ込め!!!!全軍に報せろ!!!!!!」

 

ボーグは撤退を決断した。空洞山脈は砲撃しても意味をなさないし、航空機による攻撃も防ぐ。加えて皇国の戦車では、空洞山脈の狭い道を通れない。それを見抜いたのだ。

実際これは本当で、まあ頑張れば46式でも通り抜けれるが結構ギリギリである。少なくとも、進行速度はグラ・バルカス帝国の方が出る。

 

「敵軍、撤退を開始。空洞山脈に逃げ込む様です」

 

「見事に手の平の上で踊ってくれるなぁ。各陣地に山脈に逃げ込む様に砲撃させろ」

 

より逃げ込み易い様、各砲撃陣地と戦車隊が追い込み漁の如く砲弾を近くに降らせて良い感じに空洞山脈へと押し込む。最後の戦車が空洞山脈に逃げ込んだのを確認すると、すぐに追撃隊が活動を開始する。

 

『こちら引率、これより追撃に入る』

 

36式機動戦車が空洞山脈に突入し、内部から敵を狩る。しかも36式は足回りがキャタピラではなく、普通のタイヤ。機動力ではこちらが上だ。

 

「俺達もいるって、知っててくれよ。知らずに帰ると、おじさん達泣いちゃうぞ!!」

 

更に39式偵察車も追撃に加わる。武装が35mmなので普通にハウンドもシェイファーも倒せるが、念の為今回は別目標を狙う。この車列、タンクローリーとトラックがいるのだ。そこを狙う。

 

「あそこにも居るのかよ!」

 

「当たってくれるなよ.......。コイツにはまだ、大量の燃料が残ってんだ」

 

なんて言っているタンクローリーのドライバー二人組だが、これがフラグになったのか本当に当たってしまった。しかも爆炎で前が見えなくなり、制御を失った。

 

「おいこっちにくるぞ!!」

 

「来るな来るな来るな!!!」

 

「ハンドル切れ!!」

 

そのまま近くを走っていた歩兵を乗せたトラックにぶつかり、トラックは大破。更にその後方にいた別のトラックに衝突して爆発し、その爆発で一部が崩落。ハウンドに直撃し爆発。それに衝突し、シェイファーも大破した。

 

「山脈内部は地獄みたいです。月光も活動を開始していますからね」

 

「そうかい。なら、そろそろフィナーレを飾ろうか。なぁ、長谷川大佐」

 

「はい!ブラッディレジーナより各員、敵戦車隊が撤退を開始しました。迎撃を開始してください!!」

 

「向上、テメェの部隊の初舞台だ。精々カッコよくキメてくれ」

 

『『了解』』

 

因みに何故、長谷川が大佐になっているかというと、無理矢理大佐に神谷が捩じ込んだのだ。まず長谷川を部隊の指揮官から外して、人事局の新生部隊編成の担当官に就任させここで昇進。中佐として編成をやってもらい、その功績で大佐に昇進させたのだ。

また独立試験部隊の名前も『第86独立機動打撃群』に名前が変わり、通称『エイティシックス』と呼ばれてる。(二期来ないかなぁ)

 

「大尉、そちらはどう動く?」

 

『大佐の隊に初撃はお譲りします』

 

「あれ、いいの?」

 

『構いません』

 

「そう言ってくれるなら、お言葉に甘えて」

 

向上は38式携行式対戦車誘導弾を担いで、待ち伏せポイントまで向かう。丁度そのタイミングで先頭を走るシェイファーが来た。

 

「エリスさん、合わせてくださいよ」

 

「はいはい分かってますよ」

 

まず向上がシェイファーの天井目掛けてミサイルを撃ち、間髪入れずエリスが剣のアビリティである地割れを引き起こさせる。第四師団は完全に行き脚が止まった。

 

「今だ」

 

この瞬間を逃さず、エイティシックスと赤衣が降下。攻撃を開始する。

 

「ひゃっほー!」

 

「セオくん、楽しそうね」

 

「だって三次元機動は僕の十八番だもの」

 

土蜘蛛には機体中央部に2つのアンカー射出装備が搭載されており、こういう構造物が多い場所で真価を発揮する。戦車が立体機動装置付けてると考えて欲しい。

 

「クソッ、砲旋回が追い付かない!!」

 

「適当に撃て!」

 

多数いる土蜘蛛の中で、最も強いのがアンダーテイカーが操る機体。副武装には高周波ブレードを装備しているのだが、辻斬りの如く戦車の足回りと砲塔を斬り飛ばしていく。その様はパーソナルマークの首の無い死神の如く。

 

「とにかく全て破壊しろ。捕虜は積極的に捕らなくていい!」

 

更に赤衣鉄砲隊が38式や29式擲弾銃片手に飛び回り、下にいる戦車やトラックを破壊していく。

 

「全員降車!上にいる敵兵を撃て!!」

 

トラックに乗っていた歩兵達も降りて来て、空洞山脈の内部は乱戦の様相を呈していた。だが三次元的に素早く飛び回る目標を、ボルトアクションライフルで攻撃するなんて無理である。

一方の赤衣鉄砲隊は、神谷戦闘団の中でも特に射撃に秀でた者が入隊している。射撃面だけで言えば、白亜衆以上の射撃の名手で編成された射撃の玄人集団。故に空中を飛び回りながらでも、的確に敵を撃ち殺していく。

 

「おいコイツら、剣を持っているぞ!!」

 

「殺せ!!」

 

「ハイエルフを舐めると、痛い目みるわよ?」

 

白亜のワルキューレだって負けてない。アビリティを使いこなし、上手に立ち回っている。ヘルミーナが銃撃を防ぎ、アーシャとエリスが突っ込む。それをミーシャとレイチェルが援護する、お決まりの隊列だ。だがそれが強い。

 

「クソッ!クソッ!もう逃げんぞ!!」

 

こんな乱戦の中、ボーグは破壊された指揮車を飛び出して、腰の拳銃を撃ちながら前へと出ていく。勿論弾は当たらない。その時、空中を飛び交う歩兵の中で1人だけ違う装いの者がいた。向上である。

 

「うおぉぉぉ!!!!」

 

撃破されたハウンドの残骸から、屋根に取り付けている機関銃を構えて撃ちまくる。それに気がついた向上はスモークを投げて視界を遮り、背後へと周り込む。

 

「な、何も見えん!!何処だ、何処に行った!!」

 

カチャン

 

「ッ!?.......そうか、終わりか。最期に聞かせてくれ。アンタらは、何者なんだ」

 

「大日本皇国統合軍、神谷戦闘団。我らは隷下の赤衣鉄砲隊だ」

 

ボーグは思い出した。カルトアルパスに侵攻した部隊を殲滅した部隊があったと。レイフォルで捕虜を処刑する際に皇国の精鋭が殴り込んで来て、捕虜を奪還して悠々と去って行ったと。その名が『神谷戦闘団』という、皇国の精鋭部隊であったと。

 

「そうか.......。神谷戦闘団か.......。だが私はまだ、負けていな」

 

振り向きざまに拳銃を撃とうとした。だが、それよりも先に向上が頭を拳銃で吹き飛ばす。この日、キールセキに侵攻したグラ・バルカス帝国第四師団と、その援護に導入された航空隊は1人の帰還者も無かった。

 

 

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