2日目 東京湾上空
「本日は午前中に空軍と特殊戦術打撃隊の視察、午後には我が軍の演習を視察して貰います。ですので案内は外交官の川山ではなく、私が担当となります。よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
神谷、堺、そして霧島の3人は早速、神谷邸からヘリコプターで横田空軍基地へと向かう。この基地には空軍機の他、海軍の艦載機も地上整備を受ける拠点でもあり、航空機の見本市ができる位には航空機が多くいる。視察には持ってこいだ。30分程度の遊覧飛行の末、横田基地にヘリは着陸する。
「お待ちしておりました」
「おう基地司令。準備は整っているか?」
「えぇ。どうぞ、こちらに」
流石に横田基地は広大である以上、徒歩で移動していては時間が掛かりすぎる。そこで先に基地司令に頼んで、車を用意してもらっていたのだ。3人は車に乗り込み、まずは滑走路横の格納庫区画へと走る。
「本当に広い基地ですね」
「えぇ。本基地は空軍の他、横須賀に本拠地を置く空母と揚陸艦の機体の整備基地としての側面もありますからね。規模で言えば大きい部類に入りますよ」
道中こんな事を話していると、すぐに格納庫区画に到着した。まず最初に入った格納庫には、F9心神とA9ストライク心神が格納されていた。
「右のがF9心神、左はA9ストライク心神です」
「ストライクとなると攻撃機ですか?それにしても、垂直尾翼も無いとは珍しいですね」
「そうですよ。元々心神は制空戦闘機として開発されたんですが、レシプロ機並みの旋回半径を誇る高機動機かつ推力にも余力があったたので、そのまま攻撃機に改造したんです。それがストライク心神になります」
「プロペラ機並みですか!?」
霧島が驚いた様子で、そう聞いてきた。本来ジェット機ではどうしても、旋回半径が広がってしまう。それ故に機動力だけで見れば、レシプロ機の方が遥かに良い。
だがレシプロ機並みの旋回半径に、ジェットの推力が加わるとなるとパイロットとしては凶悪なモンスターに他ならない。この後に神谷が「アメリカのF22ラプター8機を相手に単機で勝った」と説明したのだが、その理由がよく分かる。というか相手をした米軍パイロットは、おそらく生きた心地がしなかっただろう。
「このストライク心神には、どの程度の武装が積めるのですか?」
「大型パイロンが12、中型4、小型2ですから、まあ1機で一個艦隊余裕で潰せる量の武装は積めますね。勿論現代艦艇のペラペラ装甲かつ、1発も撃墜されないのが大前提ですけど。あ、あそこのミサイル。アレが対艦ミサイルのASM4海山ですよ」
「.......恐ろしいですね司令」
「あぁ.......」
堺と霧島の脳裏にはASM4海山が、自分の艦隊に突き刺さる情景が浮かぶ。幾ら艦娘といえど、流石にミサイル相手となれば撃墜は一部の艦を除けば絶望的。あんなのが何十発も飛んで来れば、すぐに艦隊が壊滅してしまう。それを考えるだけで、怖かった。特に霧島は、もしそうなった時にミサイルが飛んでくるのは自分。しかも艤装は身体の一部である以上、その限界を良く理解している。それもあって、堺以上に死の恐怖を感じていた。
「さぁ、次はこちらです」
次は基地司令が今いる格納庫の隣にある格納庫へと案内する。今度は規格外の超大型機と、時代錯誤な逆ガル翼を採用した機体が鎮座していた。
「この機体は、スヌーカですか!?」
「お、よく分かりましたね。この機体はA10彗星IIです。開発陣曰く「ヤマトのスヌーカとかいう機体、カッコいいから作りました」だそうで。逆ガル翼に旋回機銃とかいう時代錯誤な機体ですがね」
「何を言います!逆ガル翼はロマンですよロマン!!」
堺がここまでテンションが上がるのも仕方ない。堺は大のヤマトファンなのだ。こんな機体、興奮するなという方が無理である。
因みにそれを知っている霧島は「あー、また始まった」という顔で、その姿を見ている。
「その気持ち分かります!しかもこの機体、単にカッコいいだけじゃ無いんです!!音速で巡航し、戦車砲を撃ち込まれても生き残り、高火力の武装で地上の敵を一掃!!そしてカッコいい!!!!」
「戦車砲を撃ち込まれても大丈夫なんですか!?」
「というか隣の超大型機、超重爆撃機富嶽IIも戦車砲を弾きますよ」
普通航空機にここまで重装甲は施せない。にも関わらず、重装甲を施して音速を超えて巡航するだけのパワフルな推力。さっきから皇国の技術力には、ただただ驚かされるばかりだ。
「司令、見てください。この機体にも防護機銃が付いていますよ」
「コイツは主に敵地への強襲爆撃を念頭に開発された機体でして、これ1機にB52爆撃機10機分、B29なら約16機分を搭載できるんです。なのにマッハ1.5を叩き出す、我々から見ても変態機です」
霧島は驚愕し、堺は恐る恐る実戦でどうだったかを聞いてみた。
「.......あの、これって実戦で使っていたりしますか?」
「.......エストシラントを2回ばかし爆撃しましたが、最早都市の瓦礫ごと破壊する勢いで、爆撃というより爆弾を使った整地でしたねアレは」
流石にもう、ここまでくると驚きもしなかった。というか「爆弾を使った整地」というパワーワードに、一瞬笑いそうになってしまったのは内緒である。
次は少し離れた格納庫に案内された。しかも今度は外に機体が駐機されているが、どれもこれも巨大である。
「次は輸送機系の航空機を見て貰いますよ」
基地司令の一言で納得した。確かにどれも戦闘には向かない、ずんぐりとした機体が多い。だが、規格外にデカいのがある。
「あの大きな機体も輸送機ですか?」
「ん?あー、そうですよ。あれはC3屠龍です。後で見せる陸軍の大型戦車を積載可能な機体で、富嶽IIが出来るまでは
今何故か、神谷は「普通の航空機としては」という部分を強調していた。普通ではない航空機となると、一体何なのだろうか。霧島はそれを考えるが、すぐに機体見学の時間になってしまう。
見た所、意外と大きいが輸送機と考えれば、まあ妥当な機体サイズだろう。だが1機種だけ、他と違う毛色の航空機がいた。
「これはガンシップですか?」
「お、そうですよ堺さん。アレはAC180迅雷です。機関砲と大砲、それからパイロンも装備した機体で、陸軍からの要望で開発しました」
「というと?」
「最初は「彗星IIでは火力不足な場合は富嶽IIを使いたい」と言われました。しかしまあ、あの機体はコストがバカ高い上に離陸距離が長いので、即応性には欠けます。おまけにジェットなので整備性も悪い。
そこで「退役した輸送機に武装付けて、ガンシップにしてしまえ」という風になり、この機体が開発されました。整備性も良く、滑走距離も短い。お財布にも優しくて、戦車が相手でも充分に戦える対地戦闘能力。結構使い勝手は良いんですよ」
(の割には機体が巨大な気がするが.......)
実際その通りである。コスト的には富嶽IIの半分で運用できるが、同タイプの兵器となるAC130と比べると、迅雷の方が1.5倍のコストが掛かる。決して安くは無い。
次に向かったのは、今までいた格納庫区画とは離れた場所にある格納庫区画だった。どうやらこの区画は海軍機の区画らしい。
「次は海軍区画です」
「基地司令、アレも準備済みか?」
「えぇ。既に格納庫に入れてますよ」
一体「アレ」とは何なのか、堺には分からない。だが今までの機体を見て来た辺り、何か特殊な機体なのだろう。そんな事を考えていると、車は1つの倉庫の前に止まった。
「こちらです」
今までは格納庫の扉が開いていたが、今回は閉じている。横の通用口から中に入ると、そこには2機の戦闘機が鎮座していた。
「コイツが海軍の艦載機として採用されている、F8C震電IIです。基本となるA型を空軍、VTOL機能の付いたB型を海軍陸戦隊、艦載機用の改修を施したC型を海軍が保有しています」
「まるでF35のような機体なんですね。しかし.......」
霧島の目はその隣にいる、もう1機の機体に目が止まった。漆黒に金のラインが入っている、明らかに別格の機体である。
「どうした霧島?」
「あの機体を見てください。あの機体、今までの機体とは違いませんか?」
「流石は『艦隊の頭脳』と言った所か。あの機体はそこの震電IIを元に作った全く別の新たな戦闘機。F8CZ震電IIタイプ・
「た、タイプ・極ですか.......」
堺は今まで見てきた機体を振り返る。これまでの機体はどれもこれも、中々に凄い兵器が多かった。しかしこの機体は、他とは違って明らかに強いとわかるネーミングされている。知るのが恐ろしくも感じる。
だが逆に霧島は、知るのが恐ろしく感じはする。だが一方でそれと同じ位、知りたいという欲求もあった。霧島が性能を聞こうとした時、神谷が説明を始める。
「この機体は『日ノ本』、つまり初めて接触した時に私の乗っていた戦艦に載せるために開発されました。ミサイルを始め、60mm機関砲、レーザー、レールガンを標準搭載した機体で、最高速度はマッハ6を叩き出します。
現状この機体を倒せる戦闘機は、我が国には存在しません」
マッハ6という、異次元の速度に加えてSFでしか聞かない兵装の数々。『極』の名前に負けていない性能に、2人とも唖然としている。
この後、実際に動かすことになり、震電IIタイプ・極のエンジンに火が灯る。
「危険なんで、あんまり前には行かないでくださいね!!!!」
甲高いエンジン音と共に、ゆっくりと機体が格納庫の外へと動く。すると外の駐機スペースで止まった。するとそのまま、2基の縦列双発ジェットエンジンが真下へと曲がり、機体下部から蒼白い炎を噴きながら機体が垂直に上昇。そのままの高度で機体は垂直になり、翼を一気に変形。さっきよりもスリムな体型になり、そして
ゴオォォォォ!!!!!!
鼓膜が破れそうになる轟音と、目の前で爆弾でも爆発したかの様な風を撒き散らしながら一気に震電IIタイプ・極が上昇していった。
「司令!あ、あれを!!」
「もうあんな所まで行ったのか!?!?」
わずか数秒の内に高度5000m近くまで上昇してしまう性能に、ただただ戦慄する2人。もしあんな戦闘機と戦う事になったら、勝てる気が全くしない。
「そろそろ時間だな。ではそろそろ、次の場所に行きましょうか」
「は、はい!」
「わかりました」
軽く現実の世界から離れていたみたいだが、神谷の声で戻ってきてくれたらしい。今度はさっきまで震電IIタイプ・極がいた場所に、4発のジェットエンジンを搭載したVTOL輸送機らしき機体が降り立った。
「この機体は何でしょう?」
「コイツはAVC1突空です。何の支援も無い中でも敵地に強襲できる様に我が国の主力戦車と同クラスの装甲を持ち、戦車を含む凡ゆる地上目標を排除して着陸地点を確保できるだけの武装を施した、言うなれば『アサルトガンシップ』ですよ」
霧島の問いにサラリとそう答える。もう2人とも慣れたのか、余り驚かなかった。
「コイツで目的地まで行きます。快適な空の旅を、とまでは行きませんが楽しんでください」
そう言いながら、機体に乗り込む。3人が乗り込むと上昇を開始し、今度は小笠原と東京の間にある特殊戦術打撃隊の基地へと飛んだ。
「所で神谷さん、その特殊戦術打撃隊とはどんな部隊なのですか?」
堺の問いに、神谷は思い出した。そう言えば特殊戦術打撃隊に関する説明をほぼして無かったのだ。そもそも皇国独自の軍事組織である以上、予想すら付かないだろう。
「これは失礼。まだ詳細を説明していませんでしたね。我が国は基本的には陸、海、空軍、これと海兵隊に当たる海軍陸戦隊、特殊戦術打撃隊、宇宙軍が大まかな括りとなります。
特殊戦術打撃隊は簡単に言えば、異端すぎる兵器を運用する組織ですね。行けば分かりますが、まあ常識外れのぶっ飛んだ兵器が大量にありますよ」
「そんなにですか?」
「そりゃもう。ある意味、バラエティ性とインパクトなら皇国軍随一かと」
霧島の問いにそう答える。あそこの兵器は読者諸氏もご存知の通り、マトモなのが基本無い。ぶっ飛んでるヤツが多い。
「それこそ、この下にも特殊戦術打撃隊の兵器がありますよ。パイロット、ホバリングに変更してくれ!」
「ウィルコ。見るならカーゴ開けますか?」
「頼む」
一応現役の軍人と艦娘とは言えど、念の為に2人にハーネスを装着してもらい、天井部分に装備されているパラシュート降下用のレールに接続。安全を確保した上で、2人をカーゴのギリギリまで行って下を見せる。
2人の眼下に広がるのは、超巨大な要塞であった。全長15kmはある巨大な人工島には周囲に多数の砲塔やミサイル発射管を配置し、中心部に超長砲身の巨大な砲塔が鎮座している。
「な、なんですかあれは!?」
「少なく見積もっても、100cm以上はありますよ!!」
「流石霧島さんだ。あの兵器は『提灯』という、特殊戦術打撃隊の保有する移動要塞の様な物です。あの中心部にあるのは150cmレールガンで、あそこから様々な砲弾を発射します。これと同じ物が皇国をグルリと取り囲む様に300基程配置されており、さらに地上にある120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲、通称『ストーンヘンジ』、これから見せる空中母機『白鳳』と機動空中要塞『鳳凰』が連携し、皇国の防空戦闘の初動を務めます」
ここまで鉄壁の防空システムは、これまで見た事も聞いた事もなかった。皇国を攻めるにしても、まず空からは無理であろう。『提灯』以外の兵器を知らないが、少なくともかなりの物量がいる。
暫く周囲を旋回した後、突空は本来の目的地である特殊戦術打撃隊基地の方を目指して飛ぶ。
数十分後 特殊戦術打撃隊第1基地
「ここが、特殊戦術打撃隊の基地になります。少し急ぎますよ」
そう言って少し急ぎ足で建物の中にはいる。中は軍事基地という割には白を基調としていて、まるで何かの実験施設や研究施設の様に思える。
そのまま廊下を進むと、エレベーターに乗せられて上へと上がった。エレベーターが上に到着すると、何とそこは管制塔だったのだ。
「管制塔ですか?」
「そうですよ。堺さんに霧島さん」
エレベーターから降りてきた3人を、1人の中年男性が敬礼で迎えてくれた。何故か軍服に白衣という、少し珍しい格好をしている。
「当特殊戦術打撃隊第1基地の司令官、模試水と申します。お迎えできず、申し訳ありません。何分、あの子の面倒を見ないといけないもので」
そう言って模試水が指差す方向を見ると、驚くべき物が目に飛び込んできた。全幅が800m以上はあろうかという大型の全翼機が鎮座し、その先には長いレールが段々と空中に向かって伸びていて、途中で途切れている。
「これは、まさかマスドライバー?」
「そうだろうな。しかし、何だあの巨人機は.......」
あんな巨大な飛行物体は見たことが無い。というかアレが飛ぶのかも、正直分からない。
「これがさっき言っていた空中母機『白鳳』です。翼下に数百機の無人機を搭載し、有事の際には無人機を射出したり、或いは本機が現場に急行して、敵航空機を殲滅します」
「何人程度で運用するのですか?」
「無人機です。翼下の搭載機も、母機である『白鳳』自身もね。完全自律型のAI兵器であり、例えEMPによる電磁波攻撃等で制御を失っても、スタンドアローン状態で防衛を進行します。AI自体には自己進化プログラムを搭載していますが、必ずこちらのサーバーを通る必要があるので、よくある勝手に自己進化して暴走する事もありません。
それに仮に暴走したとしても、日本本土上空を飛ぶ際には必ずストーンヘンジか『提灯』の射程内に収まりますので撃墜できます」
しっかりと安全対策もした上での、この巨大機を運用するだけの国力。これまでで充分皇国の凄さを思い知ったが、どうやら更に先があったらしい。
「さぁ、お2人とも。こちらへ」
模試水が薦める先には、3つの椅子が用意されていた。それもマスドライバーを一望できる位置の特等席である。
3人が椅子についた時、模試水の腕時計のアラームが鳴る。
「定刻となった。これより『白鳳III』の打ち上げに入る」
「了解。マスドライバー、起動」
「『白鳳III』、エンジン始動」
後部に搭載された6機のサブプロペラと、2機の巨大な二重反転メインプロペラが始動し回転を始める。一定の回転数まで上がると、管制塔内にブザーが鳴り響いた。
「『白鳳III』エンジン正常、ミッションデータ、インストール完了。発射準備完了」
「マスドライバー、電磁加速カタパルトレール準備良し。電圧安定」
「最終カウントダウン開始」
模試水が自席の如何にもな赤いボタンを押すと、男声の機械音声がカウントダウンを始める。
『これよりカウントダウンを開始します。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0』
「リフトオフ!!」
マスドライバーのレールに無数の小さな稲妻が発生し、蒼白く光ると『白鳳III』が一気に加速していく。
「1、2、3。マスドライバー加速中。リフトオフ、今」
10秒と経たないうちにマスドライバーから『白鳳III』が射出され、青空へと白い巨鳥は消えていく。
「発射は成功しました。如何ですか、ご感想の程は?」
「まるでSF映画のワンシーンみたいでしたよ!」
「マスドライバーまであるなんて、皇国の科学力は凄まじいですね」
模試水に聞かれた2人は、思い思いの感想を述べる。特に堺の目はキラキラ輝いていて、こういうのが好きなんだと物語っている。
「それは良かった。ですが、驚くにはまだ早い。今からもっと驚きますよ。ただ私は少し会議が入っておりますので付き添いは出来ませんが、ぜひ楽しんでいってください」
そう言って模試水は管制塔を去っていった。ここからは基地の見学になる。まず最初に行ったのは、マスドライバーの隣にある超大型機の格納庫であった。
「こ、これはまた巨大な格納庫ですね」
「というかこれ、最早工場では?」
堺がそう突っ込むのも無理はない。全幅1.1kmの巨大機がそのまま入る様に作られているので、格納庫自体の大きさも1.5kmの横幅がある上に整備場として使えるように施設になっているので、どうしても巨大になってしまうのだ。
「あの機体に合わせると、どうしてもこうなるんですよ」
そう笑いながら中に入ると、そこには2機の鋼鉄の巨鳥が翼を休めていた。さっき見たとはいえ、間近で見るとその大きさがヒシヒシと伝わってくる。というかぶっちゃけ巨大すぎて、何が何だか分からない。
「こんな機体が列島の上空を飛んでいるんですね」
「1機だけでも凄いのに、こんなにもいるなんて」
霧島がそう言うが、それは間違いだ。確かにここに居るのは飛んで行った『白鳳III』に加えて1号機と2号機だが、『白鳳』は北海道と九州・沖縄に4機、四国に2機、本州に10機、列島を縦断する形で4機がいて、さらに陸上の基地に10機の合計34機いるのだ。
その事を伝えると、霧島は固まった。そして堺は倒れそうになった。
「この国あれだわ、絶対に喧嘩売っちゃいけないタイプの国だ」
「司令、私の計算では勝率3%です」
「霧島さん、其方が私の知る艦これと同等の威力の兵器だとするなら、恐らく0%だと思いますよ。
この機体の武装は何も数百機のUAVだけじゃない。対空ロケットランチャー90基、駆逐艦を一瞬で溶断するレーザー兵器が1基、パルスレーザー砲2基が搭載されており、更に機体自体の装甲も空対空ミサイルでは傷も付かない。これに加えてAPS、Active Protection Systemという電磁エネルギーを放出するバリアにより、通常兵器は基本的に全て無力化されます。ミサイルも砲弾もね。
其方は恐らく51cm砲が最大だと思いますが、APS作動中ならそれも余裕で耐えますよ。しかも効果時間は短いもののチャージの時間も短いので、割と早いスパンで使えるんです」
「.......司令、先程の計算修正致します。勝率は0%です」
霧島に言われずとも、この機体を前に勝てるビジョンどころか、自信という物がそもそも湧かなかった。これまで何度も深海棲艦と戦い、数多の戦いを経験したが、こんな気持ちになったのは初めてである。
「次はこちらの格納庫にどうぞ」
今度はその向かいの格納庫に通された。こちらの格納庫は『白鳳』のよりは小さいが、充分にでかい。さっきのが可笑しすぎたのだ。
「こちらは機動空中要塞『鳳凰』と『白鳳』、『鳳凰』に補給するサプライシップの格納庫になります」
中に入ると、またしても巨大な機体が2機とジェット機サイズの機体が60機程格納されていた。
「こっちの巨大なのが『鳳凰』で、向こうの小さいのがサプライシップです」
「まるで宇宙船の様だな.......」
「流石ですね堺さん。この機体は本来、宇宙空間で衛星破壊や隕石の破壊を目標に開発されたんですよ。しかし自由に行き来する技術がなく、泣く泣く成層圏と中間層を飛行する兵器になったんです。
しかしエンジンはなまじ良いのを積んでるので、この巨大でありながらマッハ4を叩き出します」
全長180mの巨大機がマッハ4を叩き出すというのは、流石に驚きを隠せない。だが段々と染まってきたのか「皇国だから仕方ない」で済むようになった。
「次はこのまま、この外に行きますよ」
そう言って外に出ると、次は3機の航空機が海に浮かんでいる。その様はまるで、鯨の親子の様に見える。
「これは飛行艇ですか?その割には巨大ですね」
「この機体は空中空母『白鯨』です。隣の少し小さいのは支援プラットフォーム『黒鯨』ですね。3機で一個の空中空母艦隊を形成し、世界中、凡ゆる場所に展開します」
「空中空母!?!?」
「こんな物まであるんですか.......」
堺は驚愕すると同時に目を輝かせた。空中空母とか、ロマン以外の何物でもない。これだけでここにきた意味があるというものだ。
「この機体にも多数の防空火器が搭載されていますし、何より『黒鯨』はハリネズミの如く至る所に武装が施されています。
この機体を戦闘機で倒すには、相当の物量が要りますよ」
「ある意味、この機体が一番恐ろしいかもな」
ふと、堺は我に返った。もし仮にこの機体に輸送機と歩兵を乗せれば、簡単に空中強襲揚陸艦にも早変わりする。使い方によっては、更に別のことも出来るだろう。例えば移動式の前線基地として運用もできる。空母という汎用性が比較的高い艦に、飛行能力が合わされば余計に汎用性と厄介さが上がる。
実際、輸送機としては何度か既に実戦で利用されてる。それを見抜いた辺り、流石現役の指揮官と言えるだろう。
「取り敢えず大型兵器はここまでです。次からは小さいですが、それでも凄い機体をお見せしましょう」
次に来たのは普通の戦闘機格納庫。目の前に滑走路もあるので、何か戦闘機が入っているのだろう。
中に入ると、3種類の機体がいた。1つは大型といえど一目で戦闘機と分かる。だが残り2種は、明らかに毛色が違う。コックピットの風防部分が無数の小さなカメラがびっしりついた物に覆われているのだ。
「ADFシリーズです。右からADF1妖精、ADF2大鷹、ADF3渡鴉です」
「実験機か何かですか?」
「やはり霧島さんの観察眼は凄い。そうです、どれもコンセプトがあります。妖精はそのまま、先進技術を取り入れた機体。大鷹は航空機用のTLSによる狙撃戦術と、この特殊な風防を取り入れた機体。渡鴉は無人機との共闘を視野に入れた機体なんです」
どの機体も万人受けるする機体ではなく、あくまでも試作機や実験機の色合いが強い。だがそれ故に、コスト度外視なので装備は一番充実しているのだ。
「堺さんはこういうのがお好きなのでは?」
「大好きです!!」
「では、ロボットなどは?」
「まあまあ、ですかね」
てっきり「大好きです」とか返ってくるかと思ったのだが、例えロボット好きでなくてもSFに興味あるのなら、今から見せる兵器は必ず興味を掻き立てる物なのは間違い無い。ここには、あのメタルギアがあるのだ。
「こ、これは!!!!」
「ロボットですか!?」
「その通り。二足歩行戦車、メタルギアと呼ばれる兵器です」
そこに鎮座していたのは、皇国の誇るメタルギアシリーズの機体達であった。ガンダムの様な完全な人型ではないが、それでもメカメカしさがあってカッコいい。
「これ、格闘もできたりしますか?」
「流石に完全な人型ではないのでパンチとか出来ませんが、一応格闘プログラムは入ってますよ。キックとか、タックルなら出来ます」
「こんな機体でタックルされたら、建物は粉々ね.......」
全高数十mの巨大機が建物にタックルすれば、それはもう地獄だ。一瞬で瓦礫の山にしてしまうだろう。
「実戦での使用は?」
「そうですねぇ。一番わかりやすいのは、クラールブルクでの戦闘ですかね。パーパルディア皇国の造船拠点なんですが、ここをメタルギア水虎が襲撃し完全に破壊しました。
船に腕を突き刺して、そのまま投げたりとかしたらしいです」
艦娘である霧島は、その一言で震え上がった。そんな事、一番されたく無い。それはそれとして、霧島はあることに気付いた。
「ん?司令、私たちが戦ったパーパルディア皇国に、クラールブルクなんて街ありましたか?」
「いや、ない。俺も初耳の名前だな」
(え、クラールブルクがない?)
意外な事に、向こうにはクラールブルクは無いらしい。まあバタフライエフェクトとか、歴史が違うとか、そういうのがあるのだ。世界線が違ったら、地理も変わるのだろう。そんな事を考えながらも、神谷は説明を続ける。
「因みに右からメタルギア零、メタルギア龍王、メタルギア水虎、メタルギア狼、メタルギア応龍ですね」
「メタルギア応龍には脚がないんですね」
「あの機体は基本、他の機体を運ぶ輸送機の様な用途で使いますからね。足はありませんが、分類上は一応メタルギア扱いですよ」
正直メタルギア応龍に限らず、『二足歩行戦車』と言いながらメタルギア狼は四足歩行もできるので今更ではある。
この後、ここの食堂で食事を摂った後、本日最後の目的地である千葉特別演習場へと飛んだ。
数十分後 千葉特別演習場併設飛行場
「ここが演習場ですか?」
「えぇ。この千葉特別演習場は東京の2.5倍大きさを誇り、核兵器を除くあらゆる火器の使用が可能です。演習場内にはジャングル、砂漠、山岳、岩山、森林、小規模な都市、平原、要塞陣地と基本的な戦場が再現されています。
さらにこの様に飛行場や簡単な整備基地も併設されているので、新兵器の実験なんかもここで出来ます。これに加えて各所にAR投影機能を持つ装置を配置しており、様々な敵を出現させて戦えます。まあ、詳しくは見てもらえれば分かりますよ。あ、そうそう。ここからは私ではなく、別の者が対応致します。柿田!」
「初めまして、統合軍大尉の柿田と申します。よろしくお願いします」
ここで神谷が柿田にバトンタッチし、神谷は格納庫内へと歩いていく。その間に3人は、簡単にここの訓練プログラムを教えてもらっていた。
「所で、長官からどの辺りまでお聞きしましたか?」
「ここの演習場の簡単な概要ですね。AR機能があるとか」
霧島がそう答えると、柿田もすぐに話す内容を脳内で決めて説明を開始する。
「分かりました。それでは、実際にどの様な訓練になるかを簡単にご説明致します。ここの演習場にはAR投影機能を持った装置が随所に配置されており、データさえあれば凡ゆる敵を出現させられます。歩兵、戦車、戦闘ヘリや戦闘機に至るまで。装備自体も仮想敵国は勿論、同盟国や我々皇国軍の者、やろうと思えばエイリアンやモンスターの様な現実に存在しない物まで、何でもです。
これに加えてコンピューターと連動しダメージを即座に計算し、すぐに反映してくれます。例えば足を撃たれれば行動が阻害されますし、死ねばヘルメット上に『DEAD』と表示されて退場になります。仮に瀕死の重傷だったとしても、間に合わなかったり適切な治療が施さなければ死亡判定になったりと、死なない事を除けば限りなく現実に近い戦場になっています」
これまで皇国の歴史を聞いてきたが、余り戦争には介入していなかった。それにも関わらず高い練度を誇っている理由が、これで分かった。言うなれば実戦を経験せずとも、実戦を経験しているのだ。
しかも例え死んでも、あくまでそれは判定に過ぎず生きている。となれば、その時の経験を元にした立ち回りや自分の戦闘スタイルを確立していける。それを部隊単位ではなく、個人単位のレベルで出来るのは大きなアドバンテージとなる。
「到着しました。今回は、ここで見学して貰います。
そう言って連れてこられたのは、よく学校なんかで使うテントが並ぶ場所であった。中には回転椅子と机がセットになってる物があり、その上にVRゴーグルの様な何かと双眼鏡がある。
「これはVRゴーグルですか?」
「違いますよ。これを装着して頂くと、個人の目線になれるんです。兵士1人1人にカメラがついてますので、例えば前衛を走ってる歩兵であったり、後方にいる装甲車、上空を飛ぶヘリの目線で戦場が見れます。
今回は小型のドローンも飛ばしますので、そのドローンのカメラで戦場全体を見る事もできますよ」
思ってたよりも遥かにハイテクで、2人とも驚いている。これなら戦場を間近に感じる事が出来るので、例えば新兵がベテラン兵の動きを体験する事なんかも出来るだろう。これも練度が高い秘密のひとつかもしれない。
「それではここで、今回の演習の想定をご説明致します。今回の演習では、上陸地点の確保と要塞の制圧が任務となります。間も無く演習が始まりますので、ご注意ください」
暫くすると、演習場にアメリカ兵が現れた。アメリカ製の兵器も出現したので、どうやら演習が始まったらしい。
「演習が始まりましたね。相手はアメリカ軍、総勢10000名。及び戦車500両、装甲車1700両、戦闘ヘリ20機という所ですね」
「........今から、そんな大規模な演習をするんですか?」
「いえ。こちらの規模は大体6000人位ですし、そこまでですよ」
今、聞き間違いでなければ相手よりも遥かに少ない数で攻略すると目の前の男は言った。普通に考えて、この差で防衛戦はともかく、攻撃は余程の事をしない限り勝てない。
「あ、早速来ましたね」
「て、提督!あそこ!!あそこに竜がいますよ!!!!」
見れば西の空から、竜が飛んで来ていた。だがワイバーンとは明らかに違う。大きさが比べ物にならない位大きいし、身体の色も赤い。あんなのは見た事がない。
「大尉、あの竜は一体.......」
「あの竜はこの世に存在する全ての竜の頂点に君臨する、竜神皇帝『極帝』です。唯一無二の存在であり、竜は愚か基本的にどんな生物よりも強い存在、らしいです」
次の瞬間、極帝の口が紫色に光り、地上にいたアメリカ兵たちを紫のビームが焼き払った。
「な、なんて威力だ.......」
ドローンの視点に切り替えて見たのだが、明らかに威力が桁違いだった。何せ地面が黒く焦げて、所々赤く光っている。あんなの、戦車でも耐えられないだろう。
「おっと、お2人共、あの竜をよく見ていてください」
言われた通り、双眼鏡片手に様子を見る。数秒後、誰かが背中から飛び降りた。パラシュートも何も付けずに飛び降りて、他上スレスレで腰の辺りから炎が噴いて着地する。
「大尉さん、もしかてあの方が極帝の主人ですか?」
「鋭いですね霧島さん。そうです。あの人が皇国で唯一、皇国で本格的に魔法を操れる人であり、皇国軍最強の兵士。そして天皇陛下より『皇国剣聖』の称号を与えられた、我々の上官」
「お、おい霧島。あれ、まさか.......」
堺は気付いた。双眼鏡で確認すると、何やら見覚えのある男が居たのだ。紫色(正確には至極色)の羽織を纏い、2本の刀を差した男。格好は違うが、あれは何処からどう見ても…
「大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三元帥です」
「やっぱりか!!!!」
「神谷さんが魔法を使える.......。本当、凄い人ですね.......」
堺も霧島も、魔法自体は見た事がある。だがそれでも、精々がファイアーボールとかその程度だった。どちらかというと、魔法を使った道具とか兵器の方が見慣れている。
だが知っての通り、神谷の魔法は格が違う。
「
直後、神谷の目の前に分厚い金属の板が現れる。どうやらそれで攻撃を防ぐらしい。
そしてその後方で、神谷が両手を掲げる。その瞬間、周囲に無数の水色の魔法陣が形成され、神谷の周りをグルグルと周る。
「超位魔法、
直後、アメリカ兵の上空に白く輝く球体が出現し、地面に当たった瞬間、眩い光を撒き散らしながら周囲にいた兵士も兵器も見境なく、文字通りに消し飛ばした。
ゴーグルに表示された敵の数は、一気に6894人にまで減っている。たった一撃で、3000人近くを焼き払ったのだ。しかも神谷自身は、何かの代償、例えば行動できなくなるとか血を吐くとか、そういった類もない。
「あ、あの提督。戦車が空から降ってきました.......」
「は?そんな筈.......」
上を見れば、本当に降ってきていた。それも普通よりも巨大な、明らかに主力戦車を踏み潰していきそうな巨大戦車である。それな何十両と降ってくる。オマケになんか謎の二足歩行兵器もいる。
これに加えて海岸線には上陸用舟艇やら水陸両用車がいつの間にか殺到し、歩兵部隊や機甲戦力を上陸させている。上空にも多数の突空が飛来し、歩兵部隊を下ろしている。だがその様子は、鋼鉄の壁に阻まれて向こう側からは見えていない。壁が消える頃には、全軍が神谷を中心に配置されていた。
「そう言えば、こちらの部隊の戦力を紹介していませんでしたね。まず上陸してきたのは、海軍陸戦隊の第四海兵師団です。そして突空によるヘリボーンで展開したのが、神谷戦闘団になります。その内、あの白いアーマーを着ているのは、その中でも特に強い者が選ばれる白亜衆、赤いのは赤衣鉄砲隊です」
柿田の説明は、全く耳に入ってなかった。目の前に集う戦力が、余りに強そうに見えて2人とも目が離せないでいたのだ。
どの位が経っただろう。見ていると、急に壁が崩れた。砕け散った、と言った方が適切かもしれない。とにかく鋼鉄の壁が消えると、一斉に突撃を開始した。
『歩兵部隊は俺ら戦車の後ろに隠れろ!!!!』
『行くぞ!!!!』
『演習だからって気を抜くなよ!!目の前の敵を倒すんだ!!!!』
戦車を先頭に、敵陣地への突撃を開始する。だが、アメリカ側もタダではやられない。後方の砲撃陣地から、無数の砲弾が降り注ぐ。本来なら歩兵に大ダメージを与えるのだが、ここに常識は存在しない。
「
「ダンシング・スピア!!!!」
神谷とミーシャの魔法で、まさかの全弾迎撃される。逆にお返しとばかりに、実際には居ないが居る設定の駆逐艦から、対艦ミサイル桜島II型による攻撃で陣地を破壊されてしまう。
ある程度要塞陣地に接近した所で、神谷がハンドサインを兵士達に送る。兵士達はそのまま腕に装備されたグラップリングフックと、腰のジェットパックで立体的な攻撃を開始した。
「歩兵が空を飛び始めましたね.......」
「もう何でもありだな。なんかさっき、謎の二足歩行兵器が十数mのジャンプしてたし.......」
因みに謎の二足歩行兵器というのは、WA2月光の事である。月光は脚部を人工筋肉にしてあるので、8mという身長でありながらジャンプもできるし、トラックに収まるくらいまで縮まる事もできるのだ。
「戦隊各位、歩兵部隊が立体機動に入った。こちらも援護に入る」
「シンに続け!!!!」
別の場所が見れば、四脚の脚を持って素早く動く白い機甲兵器もいる。中にはワイヤーを打ち込んで飛び回る機体もいて、こちらもこちらでぶっ飛んでいる。
「お!どうやらアメリカ側も、本気を出した様ですね。長官とワルキューレを、本隊から分断させてます」
見れば突出していた神谷と、その妻達で構成された白亜のワルキューレ、それに向上が孤立している。しかも周囲には一個小隊近くが取り囲んでいて、絶体絶命である。
「行くぞ!」
7人は協力して、バッサバッサと殲滅していく。神谷が前に出れば向上とレイチェルが援護し、ヘルミーナが盾で相手を抑えながらアナスタシアが攻撃し、ミーシャがエリスに強化魔法をかけてエリスが突っ込んだり、バラバラに見えて連携している。特に、この2人は別格であった。
ズドン!ズドン!
「!頼みますよ」
「おう!」
向上の背後に迫っていた敵を、神谷が目の前の敵に刀を突き刺す直前で方向転換して突き刺し、逆に神谷の前にいる敵を向上が射殺。まるでお互いの感覚を共有しているかの様な、そんか異次元の戦闘を行なっていた。
「あの2人、本当に凄いな.......」
「いや、提督。あっちもあっちで凄いですよ」
「え?うわぁ.......」
堺の目線の先には、何故か銃の代わりに拳、鉄パイプ、メリケンサック、刀、鎌、ドスで戦う集団がいた。何人かは銃を使っているが、明らかに近接戦闘してる奴の方が多い。
「ギガディーン!!!!人間で餅つきしまーす!!!!!!」
「無駄乃田無駄乃田無駄乃田無駄乃田ァ!!!!」
「今日の星占いは五位!!!人を殺せば運気アップ!!!!!」
「ハードグリングリーン!!!!」
「怒ったカンナァ!!!!許さないカンナァ!!!!!」
「ヒヒヒ。真島吾郎解禁や!!!!」
「セイヤァ!!!!」
「うぉらぁ!!!!次はどいつじゃぁ!?!?!?」
まあ何というのだろう。アイツら、人間じゃねぇ。そういう感想しか、頭に思い浮かばなかった。こんな人間やめた連中が、皇国軍にはどの位いるのだろう。
そんな事を考えている間に陣地は占領されており、演習が終わったのだった。
数十分後 射撃場内
「まさか、神谷さんが演習に参加するとは.......」
「HAHAHAHA。私の家系自体、代々武士ですからな」
「そうなのですか?」
豪快に答えた神谷に、霧島が少し意外そうな顔で聞いてきた。まあ確かに神谷コンツェルンという、国内最大手の大企業の子息なのだ。「代々武士」と言われても、余り実感はないだろう。
「私の家系は古墳時代の豪族に始まり、奈良時代では多数の健児を排出し、以降は源氏の武士となりました。更に室町時代中期になると、傭兵となり独立武装国家を建国。以来、織田、豊臣、徳川に雇われ、関ヶ原で西軍につき、江戸時代では歴史の表舞台から消えました。
しかし幕末に薩摩藩と共に攘夷志士の中核となり、明治政府成立後は海外に飛び出して日本の近代化に力を注ぎました。これ以降、軍の中枢に常に実力で成り上がり、第二次世界大戦中は私の高祖父は分裂していた大本営をまとめ上げて日本を勝利に導き、ついでにワシントンにカチコミしたりと、それは大暴れしたそうです。
そして曽祖父が神谷組を立ち上げて、祖父は軍人の道へ進み、父がコンツェルンへと成長させました」
神谷から語られた神谷家の歴史は、日本の歴史そのものでもあった。まさかそこまで由緒正しい家系の、それも直系の子孫だとは思ってなかったのか2人とも驚いている。
「さぁ、我が国の陸軍兵力を見て頂きましょう。まずはコイツ、46式戦車です」
そう言って見せられたのは、巨大な戦車であった。戦車というより、最早陸の戦艦と言った方が適切かもしれない。
「この砲身、砲口径300mm近くありますよ!?」
「300mmの戦車砲って、何と戦う想定だよ.......」
因みに敷島型(実質ムーのラ・カサミ級)の主砲塔が30.3cmなので、サイズ的には殆ど変わらない。それを陸上兵器の戦車に付けている辺り、かなり頭がおかしい。
「流石にこのサイズの戦車を市街地で戦わせよう物なら、移動の度に家屋を破壊して敵の攻撃よりも酷い有様になるので、この戦車はあそこの連装砲を搭載した34式戦車改と共に、基本的に侵攻用の部隊や沿岸部の部隊に配備されています」
見れば横に連装砲を搭載した戦車がいる。というか連装砲を搭載した戦車自体、中々に珍しい。というかほぼない。昔は多砲塔戦車とかはあったが、連装砲は自走砲位の物である。まあ某機動戦士や宇宙戦艦のアニメに出てくる戦車が連装砲を装備してるので見慣れている読者もいるかもしれないが、基本現実では存在しない。
「あ、そうそう。沿岸部に配備されていると言ったら、こんなのもありますよ」
そう言って、次に見せたのは巨大な自走砲であった。だが、普通の自走砲とは明らかに格が違う。隣の自走砲がまるで、赤子の様に小さく思える。
「このデカブツこそ、我が皇国の技術者が頭おかしい証拠。51式510mm自走砲です。大和型の主砲を何をトチ狂ったのか、そのまんま流用しやがったキチガイ兵器です。
アメリカの演習場の山を1つ消し飛ばし、出禁を食らった兵器でもあります」
そりゃ510mm砲を撃てば山1つ消える訳で、出禁になるのも頷ける。だが演習に出禁というパワーワードに、2人は苦笑した。
「次が34式戦車になります」
「おぉ、普通だ!」
「いえ、提督。もしかしたらロボットになったりするかもしれませんよ.......」
漸く普通の戦車らしい戦車が出て来た。だがまあ、これまでの兵器を見て来たのだ。警戒もする。
「ははっ。コイツは極々普通の戦車ですよ。別にロボットになったり、四足歩行したり、空飛んだりとかはしません。まあII型は主砲がレールガンだったり、コイツの車体を流用して、さっきの34式戦車改が生まれてたり、対空戦車になってたりはしますがね」
どうやら意外とぶっ飛んでいる方向に進化しているが、この国の兵器の割には普通だった。
「それに四足歩行とか二足歩行の戦車なら、もうありますからね」
「あ.......」
「確かに.......」
2人は演習の時に居た兵器を思い出した。虫の様に素早く動く四足歩行兵器と、どう考えても鋼鉄の塊の飛距離ではない高さまでジャンプする兵器が居たのだ。
「まずはWA2月光です。コイツの脚部は見ての通り、人工筋肉を採用した兵器となっています。カーボンナノチューブ筋繊維を使用した高出力の燃料電池一体型筋繊維を用いて製作されており、演習で見せた高いジャンプ力の他、垂直な壁であっても足を引っ掛ける場所があれば登ります。
そして隣にあるのは、WA1極光です。威力偵察、護衛なんかに良く使われますね。武装のバリエーションもたくさんあるので、強襲なんかにも使えますよ」
どうやら皇国のロボット工学技術は高いと、堺と霧島も察したらしい。メタルギアに始まり、この2つの兵器。何れもロボット工学が惜しげもなく使われている。
「そしてこっちのがXMLT1土蜘蛛です。見ての通り四足歩行の戦車になります。尤も装甲は『当たらなければどうという事はない』が前提ですので、対弾性能はそこまで高くありません」
「という事は機動性が高いんですか?」
堺の問いに、神谷は何とも言えない苦い表情を浮かべながら笑った。何せこの兵器、本当の意味で珍兵器なのだ。
「いや、高いというか何というか。ぶっちゃけ高過ぎて、試作の時は操縦者の半数が病院送りになりましたよ.......。お陰でお蔵入りにするつもりだったんですが、生き残ってる連中から残せと嘆願書が提出されまして。
まあ実際、人を選びはしますが乗る奴が乗れば無類の戦闘能力を発揮するのもあって、私の部隊にのみ配備させてます」
そう語った神谷の目は遠い目だったので、恐らく裏で色々やっていたのだろう。それも結構苦労したらしい。
「次は装甲車の方を見ていきましょうか。まずは33式水陸両用強襲装甲車と28式水陸両用装甲車です。両車共、歩兵を輸送でき上陸後は火力支援を行います。
そしてこっちが44式装甲車になります。様々なタイプがあり野戦救急車、NBC偵察車、対空戦闘車なんかもあるんですが、この装甲車には1つ、ヤベェタイプがありまして」
そう言いながら神谷はスマホで、とある記録映像をタップする。2人に見せたその映像の風景に、堺は見覚えがあった。アルタラスの、それもパーパルディア皇国統治時に統治機構庁舎が置かれていた建物である。
「よく見ていてください」
その映像は驚きの瞬間を映していた。なんと44式装甲車が、建物の2階と3階目掛けてジャンプして突っ込んだのだ。中からオレンジの光と煙が上がってるので、恐らく廊下や廊下の壁をぶち抜いて戦闘しているのであろう。
「かつてのパーパルディア皇国との戦争時に行った作戦で、アルタラス島奪還時の物です。私の部隊の者で、恐らく皇国軍で一番44式の操縦が上手い奴です」
「エゲツないですね.......」
「霧島さん、その反応はまだ早いです。コイツら、最終作戦の時はエストシラントの城壁で、人間野球しでかしたんですから。
空挺降下で城壁に降り立ち、隊長か誰かにドリフトして車体ぶつけて吹っ飛ばしたらしいです」
「「うわぁ.......」」
2人とも教科書通りのドン引きであった。というか、これでしない方が頭可笑しい。因みに神谷戦闘団の面々は誰1人として引かないどころか、大爆笑していた。つまり神谷戦闘団の人間は全員頭可笑しい。QED。
「最後に我が軍の歩兵装備を見て貰いましょう」
「そう言えば、神谷さんの率いる部隊。あれは一体.......」
「神谷戦闘団ですよ。我が軍には特殊な部隊単位として『戦闘団』という物があります。様々な部隊を統合し大規模に運用する為の制度で、普段は存在しません。有事の際に指定された部隊が集結し、1人の指揮官の元で戦います。
しかし例外的に、私の指揮する神谷戦闘団だけは常時編成されています。有事の際は最前線に殴り込み、更には敵の本拠地に大部隊で強襲する事も視野に入れた1つのキリングマシーンです。これに加えて内部に『白亜衆』と呼ばれる皇国最高峰の戦闘部隊と『赤衣鉄砲隊』という、射撃の名手で構成された部隊もあります。こんな部隊ですから、国民からは『国境なき軍団』とも呼ばれていますよ」
堺は思い出した。初めて大日本皇国と接触した時、神谷が最後に自らが率いている部隊に連絡を取っていた。つまり、その部隊というのが神谷戦闘団だったのだ。今日の演習を見る辺り、兵士1人1人のスキルも高く連携も良く取れた部隊で『キリングマシーン』という表現が適切だと感じた。
あの時、何か選択を誤り戦闘状態に突入していたら、あの部隊が『Iowa』の艦内に雪崩れ込んでくると思ったら身震いした。
「それでは銃の前に、まずはコイツらです」
そう言って見せられたのは、武器ではなく防具。正確には歩兵達の着るボディアーマーの類いだった。それも2種類ある。
「こっちのスマートなのが機動甲冑、ゴツくてデカいのが装甲甲冑になります。機動甲冑は通常の歩兵が装着し、装甲甲冑は重装歩兵が装着します。
まあ口で語るより、使ってみてもらった方が楽なので。取り敢えず、コチラに着替えてください」
そう言って渡されたのは、黒のボディスーツであった。流石にこれを霧島に着せたらセクハラになりかねないので、堺に着てもらう。
隣に用意した仮設簡易更衣室で着替えてもらっている間に、霧島には神谷の使うARコンタクトレンズを付けてもらう。
「着替えましたけど、これで大丈夫ですか?」
「.......よし、大丈夫です。じゃあ、装着してみましょうか」
脚から順に装備していき、最後にヘルメットを被る。ヘルメットを被ると、女性の声で音声が流れた。
『ユーザー認証、ゲスト。使用許諾確認、適正ユーザーです。システム構築開始.......、完了。リアルタイム戦術リンクにリンクします』
最初は単純に外の風景が見えていただけだったが、音声が進んでいくごとにFPSの画面の様に様々な情報が映し出されていった。機動甲冑の状況、恐らく電池か何かの残量、小型の地図等々。本当にFPSの画面を、そのまま表示しているようだ。
「霧島さんはこれを耳の間につけてください。耳小骨振動式のマイクロホンです」
霧島にはマイクロホンを装備させる。装備すると、堺と同じ様に音声が流れる。
「おぉ!なんだか動きやすいぞこれ!!」
堺はピョンピョン跳んでみたり、走ってみたりしている。重い装備を纏っているはずなのに、普通の肉体よりも軽やかかつ素早く動けている。
「司令、あんなに動けないはずなんですけど.......」
「甲冑にはマッスルスーツ機能が搭載されてますからね。おーい、堺さん。そろそろ戻ってきてくださーい」
軽く1人100メートル走していた堺を呼び、こちらに戻ってきてもらう。マッスルスーツだけが甲冑の機能じゃないのだ、他の機能を体験してもらう。
「堺さん堺さん、まさかマッスルスーツだけが甲冑の機能だと思いますか?」
「他にもあるんですか?」
「他にもなんて物じゃありません。まずは、見てもらった方がいいですね。柿田!!」
「ここに」
自分の機動甲冑に身を包んだ柿田が、何もない場所から現れた。何か隠れる場所もなく、普通の平地から現れたのだ。
「い、今のは?」
「ステルス迷彩という、簡単に言うと光学迷彩です。後は、カメレオン迷彩機能もありますよ。柿田ー」
「はい」
柿田は地面に大の字で寝そべる。元々の色は白なのだが、地面に寝そべると即座に地面と全く同じ色になった。近くで見れば流石にわかるが遠くから見たり、上空写真で見ればまず間違いなく見分けられないだろう。
「これが全ての甲冑に?」
「そうですよ。本来ならステルス迷彩一本の方がいいんですけど、結構な大飯食らいで連続12時間使用までしか出来ないんです」
「いや、12時間でも充分では.......」
霧島が引き気味で冷静にツッコむ。因みに機動甲冑は充電無しで、1週間連続使用できる。しかも生体電気、歩行、光で発電するので基本的に充電が0になる事は無い。
「堺さん、視点を右端のサークルに合わせて瞬きしてください」
「うおっ!サーマルゴーグルにもなるのか!!」
「隣のサークルは光増幅式のナイトビジョンになりますよ」
「おぉー!!」
さっきから興奮しっぱなしの堺。先に機動甲冑の機能を紹介したので、霧島の装備しているARコンタクトレンズにも装備してある機能は後回しになっている。故にそろそろ、霧島も暇になってきているだろう。
「さてさて、ここからは霧島さんも使える機能ですよ。堺さんはヘルメットの右側頭部のダイヤルを。霧島さんはマイクロホンのダイヤルを回してくてください」
ダイヤルを回すと、望遠機能が作動し最大15倍のズームを可能とする。他にもマップ機能や索敵機能、集音機能なんかを試してもらった。
「ここからは、私が実際にお見せします。まずはこれ」
そう言って神谷は右腕を伸ばす。そのまま指をクイッと引くと、腕から勢いよくワイヤーが飛び出した。壁につき刺さったワイヤーを高速で巻き取り、そのまま飛び上がる。
「立体機動そ…いやスリンガーじゃねえか!!!」
正確にはグラップリングフックなのだが、やってる事は進撃の巨人の立体機動やモンスターを狩るハンターたちのスリンガー機動である。
立体機動で空高く舞い上がると、今度は空中でジェットパックを起動させて、空中を自在に飛び回る。流石にこの辺になってくると、訓練無しだと危ない。なので地上から見てもらう形にはなるが、それでも堺も霧島も目をキラキラ輝かせている。
「とまあ、こんな感じですね」
「凄いですね!!これが兵士1人1人に?」
「えぇ。前線で戦う歩兵は、必ず装備しますよ。それに甲冑には負傷すると自動で圧迫止血し、自己治癒能力を活性化させる膜を形成する機能がついていますよ。
さて、次はこの装甲甲冑です。コイツは試着できませんが、代わりに間近でお見せしましょう」
神谷が手を叩いて合図すると、5人の装甲歩兵がノソノソと歩いてきた。装備された武器は全員違うが、どれも人間が持つには巨大すぎる武装である。
「装甲歩兵はその名の通り、重装甲を持って歩兵の盾となる兵種です。機動甲冑自体、12.7mm弾に耐える装甲を持っていますが、装甲甲冑は20mm弾をも弾く装甲を持っています。それ故に機動性は落ちますが、その分、マッスルスーツ機能を前面に押し出す事で銃火器を装備する事ができる装備となりました。
見ての通りガトリング砲に、ヒートブレード、スレッジハンマー、ガンランス、盾、そして大砲と明らかに人の装備ではありません。勿論、見た目通りの火力を発揮しますよ」
神谷が合図すると、まずは35式七銃身5.7mmバルカン砲を装備した装甲歩兵が的に向かって発砲する。
キュィィン、ブオォォォォォォォォォォ!!!!!!
思わず耳を塞いでしまう程の大爆音。たった3秒程度の発砲で、的はズタボロになっている。あんなのを人に向けたら、恐らく秒単位で人が挽肉に加工されていくだろう。
「次はオートライフル砲です」
ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!
1秒で4発連射する35式60mmオートライフル砲。これが両腕に装備されているので、秒間8発の連射速度で的を破壊していく。やはり60mm弾なだけあって、1発1発の威力が大きい。
次に動き出したのはスレッジハンマー、ガンランス、ヒートブレードの3人。3人はいとも容易く、戦車の装甲板を破壊していく。
「まるでSFの兵士だ.......」
堺がそう漏らす。確かに空を自在に飛び回る兵士と、歩兵の盾となる重装甲の歩兵。それに歩行戦車やら、巨大な戦車。確かにSFだ。
「次は銃の紹介です。こちらはどうぞ」
装備を外してから少し場所を移動して、屋外の射撃場へと移る。ここには既に、副官の向上とワルキューレ達が射撃の準備をしてくれていた。
「おう向上。準備できてるか?」
「えぇ。好きな銃を、好きなだけ撃てますよ」
「そりゃいい。あ、お二人共紹介がまだでしたね。ウチの副長にして、赤衣鉄砲隊の隊長。そして私の秘書でもある、『鉄砲頭』向上六郎大佐です」
「向上です。初めまして」
「堺です」
「霧島です。よろしくお願いしますね」
向上との顔合わせも済んだので、早速銃器の説明に入る。まずは最も基本的な装備となる、43式小銃を見せる。
「これが我が軍の正式小銃、43式小銃になります。機関部を変更する事で5.56mmと7.62mmの何方も射撃可能で、改造パーツも大量にあり、兵士個人個人が好きにカスタマイズできます。撃ってみますか?」
「え、よろしいのですか?」
「どうぞどうぞ。ちなみに射撃の腕に自信は?」
「拳銃、小銃は少しなら。狙撃銃はかじった程度ですね」
思ってたよりも銃には触り慣れているらしい。拳銃は護身用に携帯するだろうし、小銃位までなら分かるが、まさか狙撃銃もかじった事があるとは驚きだ。
「海兵隊でもないのに狙撃銃にまで慣れているとは、珍しいですね」
「そりゃあ、提督は艦娘を指揮する立場にあると同時に、いざとなれば彼女たちを守らねばなりませんからね。私の場合、その思いを拗らせて物理的に艦娘たちを守ろうと考えてしまっただけですよ」
「司令、そこまで考えていたのですか.......」
しっかり艦娘の事を考えている辺り、恐らく艦娘からの信頼も高いだろう。何より指揮官が兵士を守ると考えている時点で、その組織は手強い組織となる。トップ率先は、組織の士気を上げるのには手っ取り早い手段なのだ。
簡単に操作を教えて、シングルで数発撃つ。
「じゃじゃ馬だなこりゃ」
(これでじゃじゃ馬ときたか。恐らく、あっちの世界はかなり反動制御が進んでいるんだろうな)
「リコイルが大きい.......。89式7.7㎜自動小銃に比べたら、じゃじゃ馬ですよ、これ。でもまあ、今使ってる有坂ライフルやStG-44よりかは大人しい。これなら」
バーストに切り替えて、さらに数回撃つ。最後に仕上げと言わんばかりに、フルオートでマガジンを撃ち尽くした。
「こんなもんかな」
(スゲーな。大概ちゃんと命中してる。下手な一般兵より射撃の腕が良いぞこれ)
静止目標とは言え、その命中精度は一般兵よりかは当たっている。まあ基本的に戦場での的は動いているので戦場だとどうかは分からないが、それでもこの精度ならそれなりに戦場でも使い物になる部類であろう。少なくとも、素質は充分にある。
「次はコイツ。32式戦闘銃です。どうぞ」
「うおっ、さっきよりも重いんですね」
「まあ使用弾薬が12.7mmですからね。反動もまあまあ大きいので、しっかり踏ん張ってください」
マガジンを入れて、撃ってみる。ズドンという重い音と共に、結構な反動が肩にくる。7.62mm弾より少し大きい位に収まっているので、弾丸の大きさにしてはかなり小さい。だがそれでも、43式よりかは重い。
「次は霧島さん、撃ってみますか?」
「よろしいんですか?」
「どうぞどうぞ。37式短機関銃辺りなら、撃った事が無くても簡単に扱えますから」
そう言って37式短機関銃を渡す。マガジンを差し込んで、撃つ。軽快な音共に9mm弾が放たれて的に当たる。意外と精度が高いので、恐らくスナップ射撃の才能があるであろう。
この後も色々な銃を撃ち、携帯型ミサイルの紹介も行った。最後に、神谷の魔法の能力についての話となった。
「所で、神谷さんはどの程度の魔法が?」
「この世界の魔法と、私の扱う魔法が系統が恐らく違いますからね。詳しくは分かりませんが、なんか魔王を一撃で葬れる位には強いらしいです。取り敢えず、実際に見せましょうか。
そう言って霧島へと手を向けて、魔法を掛ける。飛行魔法を掛けられた霧島は、身体が20cm位浮かんだ。
「え?え?えぇ!?!?」
「霧島が浮いた!!」
「一応もっと高くまで飛ばせますが、あんまり高すぎると、スカートの中が全部見えてしまいますからね。
そんな訳で堺さん、行ってらっしゃいませ」
「へ?」
「
そう言って魔法を掛けられた堺は、一気に50m位の高さまで飛んだ。そのまま適当に空中を飛ばして、地面へと降ろした。
「空中散歩のご感想は?」
「.......次からは先に言ってください。楽しかったですけどね」
「すみません。先に言うと、断られそうだったのでつい。
じゃあ次は、攻撃魔法でもお見せしましょうか。
神谷が繰り出した魔法は、白い半透明の剣撃の波を打ち出した。そのまま目の前にあった、古い戦車が何かの鉄の塊を真っ二つに斬り裂く。
「すごい威力ですね.......」
「神谷司令、先程のトリプレットマキシマイズブーステッドマジック、というのは?」
「よ、よくそれを一発で覚えましたね。艦隊の頭脳と呼ばれるだけはあるわ。
魔法の説明でしたね。最初の部分は全て、簡単に言えば強化魔法です。トリプレットマジックは魔法を三重で発動させ、マキシマイズマジックで威力を最大に上げて、ブーステッドマジックは位階を上昇させます。最後のリアリティスラッシュが、攻撃魔法の名前です。強化魔法には他にも効果時間を長くさせるエクステンドマジック、発動を遅らせるディレイマジック、効果範囲を広げるワイデンマジックなんかがあります」
「位階、というのは?」
「簡単に言うと魔法のランクです。第零位階から、第十位階まであります。さらにこの魔法に属さない物としてスキル、超位魔法なんてのもありますよ」
思ってたよりも深い魔法の話に堺は軽くついていけてないが、霧島はしっかりついて行っている。
「では演習最初の魔法はもしかして、そのスキルか超位魔法ですか?」
「そうですよ。あれは超位魔法の
そう言いながら神谷は、懐に仕舞っている金の26式拳銃を構える。そして、そのままスキルという名の魔法を発動させる。
「メガ・
空へと銃を掲げると、そこに稲妻が落ちた。次の瞬間、銃がレールガンと思われる4つの加速レールを持つ物へと変化し、銃身に無数のオレンジに輝く稲妻が走っている。
それを撃つと、オレンジのビームが進路上一帯の全てを破壊した。1発撃つと戻るらしく、すぐに普通の26式へと戻っている。
「他にはこんなのもありますよ。
そう言ってまずは、何やら強そうな槍を作り出す。それを手に持ち、構える。
「ライトニングランス」
手に持った槍をそのまま高速回転させると、腕と槍が蒼白く光る。それを前に押し出すように放つと、光がそのまま槍状のビームとなって前へと放たれた。その威力もまた、的の鋼鉄の塊を破壊し尽くす程に強力である。
「他にも色々あるんですけどね」
「一体どの位あるんですか.......?」
堺が恐る恐る聞く。それに対して、神谷は笑いながらこう答えた。
「正直、無限大にありますよ。これまで使った魔法は、全て私の知るアニメやゲームの魔法です。どういう訳か私は、この世界にある魔法は勿論の事、アニメやゲームの魔法、或いは必殺技を強くイメージするとそのまま使えるんですよ。しかも自分で考えた物と組み合わせる事も出来るので、人の想像力が無限である以上、私の魔法もほぼ無限にある事になります」
文字通りのチートっぷりに、堺と霧島は絶句した。というか堺に至っては「この人1人で世界滅ぼせるんじゃね?」とか考えていた。
こうして驚きっぱなしだった皇国軍の視察は、最後の最後まで驚かされて終わった。