大日本皇国訪問3日目、大日本皇国 帝都東京 外務省。
「し、心臓が未だに興奮してる.......」
堺の呟きも無理はない。というのも、今日からいよいよ正式な国交開設手続きを含めた、外交交渉に入る。なのだが、その前にやっておくべきことがあるということで、朝っぱらから天皇陛下に謁見したのだ。その名残が尾を引いているのである。
「まあ堺さん、霧島さん、お疲れ様でした。こちらをどうぞ」
そう言いながら、川山が緑茶を差し出す。例によってタウイタウイ側とファーストコンタクトを取った彼が、そのまま外交を担当することになったのである。
「ありがとうございます.......。正直な話、非常に緊張しました。こんなことを言うのも何ですが、私からすれば雲上人に会うようなものでしたので」
「私もですね。正直なところ、司令より高い身分の方にお会いする機会なんてそうそうありませんので」
「はは、まあ無理からぬことです。あの方に謁見するとなると私も緊張しますし。
さて、2日間我が国を見てきていただいた訳ですが、感想はどうでしょうか?」
「では、私から。泊地を預かる者として、また1国の代表として言わせていただくならば、貴国とは是非とも仲良くしたい、というのが正直な感想です。仮に敵対したとしまして、何もできずに1日で占領される未来が目に見えました。ですので、このまま国交を開設できるならそれに越したことはない、というのが私の意見ですね。霧島も同じ結論に達しています」
どんなに高性能なレシプロ機に神の如き操縦技術を持つパイロットを乗せても、レシプロ機で超音速戦闘機を相手するのはまず不可能。しかも相手となる皇国の航空機は、基本的に全て第五世代ジェット戦闘機に分類される高性能機。海で戦うにしても第二次世界大戦レベルの軍艦で皇国海軍の相手は不可能だ。駆逐艦位は倒せるだろうが『日ノ本』や熱田型相当の主力艦クラスには、傷をつけることも叶わず殲滅されるだろう。
「ですが、ファーストコンタクトの時にお話した通り、周辺国にあえて旧式の技術を供与したり訓練を行ったりする、ということであれば我々の方が向いております。私としては、各々の長所を生かして交流していくのが最善ではないかと思っております」
「私としても堺さんには同意します。さすがに今からレシプロ機や火縄銃の作り方を復習するなんて、金銭的にも技術的にも難しい部分がありますからね。また、貴国.......というのも少し妙な表現ですが、貴国には我が国にない技術もある。特に丸められるスマホには衝撃を受けました。
そういった点を総合して考えた結果、貴国とは国交を正式に開設して互いに協力し合いながら、双方揃っての発展を目指すのが良い、との結論が我が国上層部では出ております。一色総理や陛下のご聖断も仰ぐことができました」
「なるほど、そうでしたか。意見が一致したようで何よりです。
あとすみません、これはタウイタウイ泊地の一部で出た意見なのですが.......」
「どんなご意見でしょうか?」
「簡単にいえば、同じ日本をルーツに持つ者同士ということで、泊地を住人ごと貴国に編入し、ロデニウス連合王国ではなく大日本皇国の領土の一部になる、という意見なんです」
流石にこれには川山も驚いた。てっきり観光ビザの発行とか、皇国側にも出張所でも建てたいとかそういうのを想定していたのだが、まさか「皇国の一部に」とくるとは思いもよらなかった。
「ほう、編入ですか.......これはまたスケールの大きい話ですね」
個人的に、いや。一色と神谷もそうだと思うが、この提案は個人としては面白い。というか大好きである。だが流石に外交官として考えると「編入したい?あ、別に良いっすよ」とは言える訳ない。
「我が国への編入となりますと、私の一存で決めることはできませんね。健太郎、一色総理の判断や、天皇陛下のご聖断が必要になることは確実です。
検討のため、そのご意見は一旦持ち帰りたいのですが、よろしいでしょうか?」
「構いませんよ。ただまあ、私としては編入という方法には1つ、明確なデメリットがあると考えております」
「どんなことでしょうか?」
「簡単に言えば、軍の運用に関わる物ですね。ご存知の通りタウイタウイ泊地は、艦娘を主戦力としており、また技術レベルは貴国に大きく劣ります。そんな部隊は、貴国からすると扱いづらいでしょう。何せ性質が全く違うのですから」
なんか神谷ならちょっと研究したら、普通に皇国軍との統合運用くらいはやってのけそうだが、本人とも相談しない事には何とも言えない。
「ふむ、私は基本的に軍事は専門外ですが、仰りたいことの意味は分かりました。それも含めて浩三、神谷総司令官なども交え、一度相談してみようと思います」
「分かりました、よろしくお願いいたします」
これで外交会談は一旦終了である。堺と霧島は外務省を出てすぐに一度神室町に戻り、軽く旅仕度を整えるとリニア新幹線に乗り込んだ。目指すは神奈川県横須賀市。その目的は、横須賀鎮守府とそこを拠点とする大日本皇国海軍第一主力艦隊の見学である。
1時間後 横須賀鎮守府
「お待ちしておりましたぞ、堺殿。私が当横須賀鎮守府の司令、伊藤義久と申します」
「初めまして伊藤司令。堺です。こちらは霧島。本日は宜しくお願いしますね」
「えぇ、こちらこそ宜しくお願いします。ささ、立ち話も何ですからどうぞ中に」
3人は横須賀鎮守府庁舎へと入る。外観こそ建設当初の煉瓦造りのままだが、中は比較的現代チックになっている。そのまま応接室へと通されて、軽くお茶と海軍の歴史に関する講義が始まった。
「我々皇国海軍が成立したのは、今から遡る事111年前。大日本帝国海軍が大日本皇国に移行した際に、海軍の艦艇を引き継いで誕生ししました。当初はどの艦も傷だらけで、ボロボロだったと聞いています。しかし帝国時代に大本営総長として活躍していた神谷倉吉大将、現在の統合軍総司令長官、神谷浩三元帥の直系のご先祖による尽力で、世界有数の海軍国に返り咲きました。
時代は進み、湾岸戦争の終結頃、予備役と復帰を繰り返していた大和型戦艦が記念艦に改修される運びとなりました。世界情勢も反共から反テロへと切り替わったのもあり、大型兵器は軒並み姿を消しました。この頃には軍縮へと動き出し、多くの艦が予備役へと編入されたのです。しかし時代はすぐに戦乱へと突き進みました。
2010年頃より中国の脅威が増していき、2021年には第三次世界大戦前夜とまで言われたロシア・ウクライナ戦争が勃発。世界情勢は一気に不安定な状況となり、海軍のみならず皇国軍全体で軍拡の声が上がりました。各軍港に地下ドックを建設し、新たなる主力艦として大和型戦艦の改修と量産、これから見てもらう熱田型、赤城型といった空前絶後の大型艦艇の建造、特殊戦術打撃隊の創設など、秘密裏に軍拡を進めていきました。そして2052年5月13日、東亜事変と呼ばれる中国、韓国、ロシアによる侵攻が始まりました。これにより機密扱いであった主力艦隊を投入し、これを撃退。かつて『物量のアメリカ、練度の日本』と呼ばれていたパワーバランスは崩壊し、大日本皇国一強の時代へとなったのです」
伊藤は懐からスマホを取り出して、堺と霧島にとある動画を見せた。月夜に照らされた『大和』の姿なのだが、次の瞬間、周りの装甲が爆発。中から現代艦風になった『大和』が元の姿を脱ぎ捨てるかの様に現れる様子であった。
「こ、これは何ですか?」
「これが大東亜事変において、大和が出撃した時の映像です」
堺にとって『大和』は嫁。勿論普通の鋼鉄の城である『大和』ではなく、艦娘の『大和』だ。だが彼自身、『大和』という艦にも惚れている。故に現代に蘇っていく様子は単純に嬉しく感じたし、何よりそういう展開が好きなタイプなので、普通に興奮した。
「まるで映画ですね」
「ははっ。その通りですよ霧島さん。何せこの後、海外のメディアじゃ『SFを再現した』という見出しで大騒ぎになりましからな」
幾つかYouTubeにも上がっている映像を見せていると、部屋の扉がノックされ老齢の男性が入ってきた。
「おー、山本くん。待っていたよ。お二人共、彼がこの後のドッグ見学で案内を担当する第一主力艦隊司令の山本五十八君です」
「山本です。本日は宜しくお願いします」
そう言って頭を下げる山本。その姿は正に『海軍の提督』という見た目で、ここに来て漸くイメージ通りの指揮官を見た気がする。
山本の案内で2人は、地下ドックへと入る。エレベーターを降りた先に待っていたのは、現実離れした光景であった。白と灰色を基調とした、どのくらいの広さがあるのか分からないほどに巨大な空間。そこにまるで時間断層工場の様に、多数の艦艇が所狭しと並んでいる。
「これは.......」
「凄まじい数ですね.......。まさか、ここに海軍の全艦艇が集結しているのですか?」
霧島の問いに、山本は苦笑を浮かべながら答える。
「そう思われるのも無理はないでしょう。しかし、ここにいる艦艇は全て第一、第二主力艦隊の所属艦のみです。皇国海軍には全部で八つの主力艦隊が存在しており、一個主力艦隊には合計237隻の艦艇が所属しています。
更にこれに加えて補給艦隊、防衛艦隊、揚陸艦隊、潜水艦隊などがあり、海軍全体での艦艇数は大小合わせて恐らく3000隻程度はいますよ」
その圧倒的な数を聞いて、2人は愕然とした。特に堺は、その恐ろしさを瞬時に理解した。そんな数の艦艇が、もしタウイタウイ島に侵攻して来たら、自分や信頼する仲間の艦娘や妖精は勿論、下手をすれば島すらも跡形もなく消し飛ぶかもしれない。そう思うとつくづく戦争にならなくて良かったと、今になって冷や汗が出てきた。
「ここにいる艦は浦風型駆逐艦と、神風型駆逐艦になります。浦風型には『草薙武器システム』という、まあ簡単に言えばイージスシステムを搭載した駆逐艦になります。
一方の神風型は『海中のイージス』といったところで、我が国のソナーに搭載されている『探鉄波』という、鉄を探知して潜水艦を索敵する装置を最大限発揮するシステムが搭載されており、例え潜水艦が岩と岩の間に機関停止状態で潜んでいても特定する事ができます」
「それは、何というか.......」
「潜水艦の特性を殺しにきてますね.......」
ある意味で一番恐ろしいのは、浦風型より神風型かもしれないと思った堺と霧島であった。
「さぁ、次の区画に行きましょう」
そう言ってまたエレベーターに乗り、一個下の階へと向かう。さっきまでは駆逐艦が大量に居たのだが、今度は比較的小型の戦艦と何処か古めかしい見た目の艦艇が鎮座していた。
「この艦は確か、初接触の時にいた様な.......」
「摩耶型対空巡洋艦ですね。この艦は文字通り、対空戦闘に特化した艦艇です。ミサイル、主砲、速射砲、機関砲と対空に関しては鉄壁の布陣です。実際、余りに強すぎて他国の海軍から「お願いなので、摩耶クラスは出さないで欲しい。あんなのに出てこられたら、演習にならなくなる」と言われた事がある艦です」
そもそも演習に出禁を言い渡される時点で可笑しいのだが、そんな艦を皇国は何十隻と保有している事に恐怖した。しかも聞けば、出禁を食らった兵器はそれだけに限らないと言うのだから恐ろしい。
「山本司令、あの艦艇は何なのですか?」
「あちらは突撃艦という、我が国オリジナルの戦法を実行する艦艇です。其方に水雷戦隊があるでしょう?アレが使う魚雷をミサイルに換えて、水雷戦隊同様に敵艦隊に突撃し、ミサイルと砲弾をばら撒くという戦法です。
突撃艦は70ノットという快速、対艦ミサイルを避ける機動性、そもそも対艦ミサイルが命中しても耐える堅牢な装甲を併せ持った艦で、これも出禁貰ってます」
確かに突撃艦の様な特異な艦艇かつ、特異な戦法であればまだ出禁は分からなくもない。だがそれでも、ミサイルで水雷戦隊を作る発想がぶっ飛びすぎてて理解できない。だが川内や神通辺りは、現代にも水雷戦隊の血を引く艦艇がいる事に喜ぶかもしれない。
「次はいよいよ、戦艦と空母の紹介ですよ」
また一個下の階に行くと、宣言通り多数の戦艦が鎮座している。大和型が16隻もいて、それ以外にも航空戦艦、軽空母と原子力空母もいる。
「航空戦艦が伊吹型、軽空母が龍驤型、原子力空母が鳳翔型となります。戦艦は、もう説明は不要でしょう」
「ん?アレは潜水艦ですか?」
「えぇ。大きいのが伊1500型原子力潜水艦、小さいのが伊900型潜水艦ですね。あれらは艦隊の先陣として、又は尖兵として活躍します。また伊1500型に関しては、SLBM搭載タイプが常に日本近海に潜んでいますよ」
ここに来て漸く、普通というかなんというか、常識的な内容が聞けた。SLBM搭載艦を潜ませるのは、そこまで珍しくはない。やっと皇国の常識が、自分の持つ常識と合わさったと思っていた。次の階に行くまでは。
エレベーターを降りると、そこには明らかに今までとは格の違う艦艇が鎮座していた。四連装砲を備えた巨大艦、飛行甲板が二層になっている大型空母。周りにいる潜水艦と思しき兵器が、まるで小型艦に見えてしまうほどに巨大であった。
「こ、これは何という艦ですか?」
「あの戦艦が熱田型指揮戦略級超戦艦、空母の方が赤城型要塞空母です。主力艦隊に於いて熱田型は総旗艦、赤城型は航空戦力の要として運用されています。
周りにいる潜水艦もまた、最強ですよ。あの2番目に長いのが潜水空母でありながら610mレールガンを備える伊2000型、3番目に長いのがミサイルキャリアーの伊2500型、多目的支援船の伊3000型、双胴なのが伊3000型です。アレらは全て、潜水艦隊として様々な任務に従事します」
熱田型も赤城型も、文字通り規格外である。それだけでも凄いが、2人は艦自体よりも、あんな艦を何隻も保有し、その全てを運用し切るだけの兵站の強固さに驚愕していた。アレだけの兵器にさっきまで見てきた多数の艦艇を運用するには、大量の物資が必要となる。それを賄うだけの兵站線がある事は、とんでもない強みとなる。
仮に戦うとしたら、この兵站線を叩いて兵糧攻めする以外に効果的な戦法が思い付かない程である。
「次が一応最後の区画なのですが、最後の区画だけは私ではなく適任者を呼んであります」
「適任者ですか?」
「えぇ。宗谷!」
そう言って現れたのは170cm程の引き締まった身体に、銀髪を持つ若い青年であった。
「初めまして。宗谷悠真と申します。究極超戦艦『日ノ本』の副長を務めております」
「あの『日ノ本』の.......」
あれだけの超重要兵器をこの年で任されている辺り、相当優秀なのだろう。宗谷は2人をエレベーターに乗せると、一気に最下層にまで向かう。エレベーターを降りると、さっきまでとは打って変わって黒を基調とした内装に全体的な暗い印象を受けるが、その真ん中に鎮座する『日ノ本』の影響か禍々しく思える。
「これから、実際に外海で演習を見学してもらいます。こちらにどうぞ」
そのままドック内に降り、タラップで『日ノ本』へと乗り込む。乗り込んで暫くすると、艦が上へと昇り始めた。どうやら、出港するらしい。
「ドック隔壁、水密壁閉鎖。対水圧壁展開」
ドックが出撃位置まで上昇すると、ドックと外を繋ぐ通路が閉鎖。内部に海水が入らない様に二重でロックし、出撃時の水圧に備えて水圧を逃す特殊な板も出てくる。
「注水開始」
「水深、基準値を超えました」
「ガントリーロック解除」
「隔壁解放!」
正面の隔壁が開き、キラキラ光る水面が見える。次の瞬間、艦が一気に加速。海へと飛び出す。それに続いて『熱田』『赤城』『摩耶』『伊吹』『浦風』『神風』が飛び出し、演習海域へと進む。
1時間後 演習海域
「あー、やっと会議終わったわ」
「え!?神谷さん!!」
「ど、どうしてここに!?」
何とこれまで居なかった筈の神谷が、ひょっこり艦橋に現れたのだ。勿論、乗り組んだ所も見てない。
「どうしても何もねぇ。この艦の艦長は、この私ですから」
霧島の疑問に、少し悪戯っぽい笑みを浮かべながら答えた。つまり目の前の男は大日本皇国統合軍総司令長官で、神谷戦闘団の団長で、究極超戦艦『日ノ本』の艦長の元帥である、という事になる。ここまで兼任してるとは2人とも思わなかったのか、フリーズして動かない。
「.......はっ。ならどうして、最初からここに居なかったのですか?」
「ここで会議に参加してました。元々艦の整備関連の報告とかが今日来る予定で、それを確認してから今までずっと会議だったんですよ。そして今から、演習に参加する訳です」
どうやら、結構なハードワークだったらしい。だが神谷に取ってみれば、今から久しぶりに演習とは言え海戦が出来る。こんなにも嬉しい事はない。
「演習海域に到着した事だし、副長。お2人に今回の演習について説明しろ」
「アイ・サー。今回の演習の想定は一部の部隊が反乱を起こし、それを鎮圧する物となっております。敵兵力は空中母機『白鳳』2、空中空母『白鯨』1と『黒鯨』2、熱田型1、赤城型2、大和型4になります。尚、全てARによる立体映像とします」
こういった演習海域は皇国の領海に幾つか点在しており、普段は演習で敵を投影する。だが敵軍が皇国に攻め入った時は、このAR機能を用いて偽物の艦隊を投影し敵を騙す防衛兵器としての側面もあったりする。
「さーて、それじゃ久しぶりにやりますかねぇ。全艦、対空、対水上警戒を厳となせ!直掩機発艦開始、同時に鷲目も発艦させろ」
「アイ・サー」
命令を受けて『赤城』からはE3鷲目、『伊吹』からは直掩機の震電IIが発艦する。
「前衛の『浦風』より入電!敵ミサイル探知!方位351、機数1500!!」
「いきなり撃ってくるな。対空戦闘用意!!ECM、アクティブモード!!」
「アイ・サー。全艦対空戦闘用意!ECM戦開始!」
ECM、つまりジャミングをかけてミサイルに目潰しを行う。これにより20発程度は落とせたが、流石に全弾撃墜とはいかない。それどころか、この規模のミサイル群で20発程度だと焼石に水どころか、ぬるま湯くらいの効果しかない。
「ミサイル、依然接近!!」
「VLS開放、信長を放て」
「トラックナンバー0200から0300、信長発射始め!サルボー!!」
前甲板に配置された垂直発射装置から、100発の艦対空ミサイル信長が一斉発射される。その噴煙により、一時的に艦橋の視界が奪われる程であった。
「砲術長、主砲砲撃戦。敵ミサイル群を指向せよ」
「それなら、時雨弾を装填しときますよ」
「頼む」
この命令に堺と霧島は驚いた。何せ戦艦の主砲でミサイル迎撃なんて発想が無いのだ。タウイタウイ泊地に所属する艦娘は、とあるマッドサイエンティスト艦娘が開発した『四三式弾』という燃料気化砲弾がある。だがその手の砲弾はコストが掛かるので、ミサイルをミサイルで迎撃せずに初っ端にミサイル群に叩き込むのがセオリーとなってくる。
だがさっきの戦闘では、普通にECMによるジャミングの後に対空ミサイルを撃っている。訳が分からない。
「あの、神谷さん。時雨弾、というのは?」
堺がそんな事を考えている中、霧島が先に神谷に質問してくれていた。
「簡単に言えば、三式弾の進化系ですよ。あの砲弾は子弾を抱えて、砲撃後に起爆。周囲に子弾をばら撒く、言うなればクラスター爆弾の砲弾版です。
時雨弾はその発想を元に、砲弾内部の子弾を焼夷弾から小型ミサイルに取り替えています。まあ、撃てば分かりますよ。さぁ、お二人共。前にどうぞ」
「前?」
「えぇ。ガラスの近くまで寄って、砲塔をよく見ていてくださいな」
言われた通り艦橋のガラスの近くまで寄ってみる。眼下には無数の砲塔があり、その中で最も巨大な五連装砲がミサイルの接近する方向に照準をピタリと合わせている。
「砲術長!」
「アイ・サー!主砲塔、電磁投射砲モードへ!!」
次の瞬間、砲身が4本に割れて、割れた砲身内部に小さな稲妻が迸り始める。まさかの光景に、2人とも驚きの声を上げた。
「砲身が割れた!?」
「まさかアレは.......。司令、ひょっとするとアレってレールガン砲塔なのでは?」
「その通り。あの砲塔の正式名称は『50口径800mm五連装火薬、電磁投射両用砲』と言います。その名の通り、レールガンとしても普通の火薬式でも撃てるハイブリッド砲塔です」
「艦長!砲撃準備良し!!」
「撃ちー方始め!!」
神谷からの砲撃命令が出た直後、砲塔から普通の砲撃の時よりは静かだが、それでも巨大な「バシュン」という音が鳴る。放たれた瞬間に、一瞬だけ砲身は蒼白く輝いた。
「お二人共、今度はレーダーをよく見ていてください」
そう言われたので2人ともレーダー画面を見させてもらう。レーダーには砲弾の位置が正確に記されており、ミサイル群に向かっているのが分かる。
「砲弾起爆まで3、2、1。起爆、今」
さっきまで1つしかなかった砲弾の光点が消えると、周囲に数十個の光点が現れた。
「これはつまり」
「砲弾が起爆しましたので、砲弾内部のミサイルが放出されたという事になります。あ、ほら。敵ミサイルの反応が消えていくでしょう?」
確かに数十個の光点が、敵ミサイルの光点に重なると消えていっている。撃墜されている事の表れだ。
更にこれ以降も続けて砲撃が続き、ミサイルの数は半数近くにまで減った。
「敵ミサイル、半数にまで減りました!!」
「やっぱ母数が多いから、削りきれないか。近接戦闘開始!!片っ端から撃ちまくれ!!!!」
「アイ・サー。両用砲、機関砲群、各個に砲撃開始」
左舷側を見ると、無数の砲煙が立ち昇っている。イージス艦の様な現代艦の主砲は高度な砲安定装置と速射性能によって、対空に特化した砲となっている。『日ノ本』はそんな砲を両用砲として、艦の至る所に搭載している。その数、2000門を超える。迎撃漏れはない。
「全弾撃墜!新たな目標、無し!!」
「偵察中の鷲目より入電!白鳳の位置、特定できました!!」
「戦闘機隊、発艦開始!敵UAVを引きつけさせろ。その間にこちらの砲撃で、奴の制御中枢を叩く!!」
「アイ・サー!!戦闘機隊、全機発艦。敵、空中母機を破壊せよ」
命令を受け、続々と艦載機が発艦していく。その姿は壮観の一言なのだが、ここで霧島がある事を思い出した。
「司令、確か『白鳳』にはAPSというバリア装置が搭載されていたのでは?」
「あ、そうだ。確かミサイルも砲弾も通用しないと。なら、航空機では倒せないんじゃ.......」
「あー、いやまあ、出来なくは無いんですよ。これが」
本来なら軍事機密につき言ってはならないのだが、弱点が弱点にならないレベルなので教えても問題ないということで、『白鳳』の弱点が明かされる事になった。
「あの機体は機体中心部にAPSの制御中枢があるんですが、それを破壊すれば撃墜できるんですよ。それに翼をへし折れば、航空機ですからバランス崩して墜落します。ただ素の装甲も巡航ミサイルやら対艦ミサイルをありったけ叩き込まないと抜けないので、航空機で倒すとなると制御中枢を破壊するしかないんです。
ただこの制御中枢自体も、他の装甲に守られてますので装甲を剥がしてやらないと露出しませんから、まあ実質不可能ですね。少なくともそちらのレシプロ機でやろう物なら、単純に火力不足で撃墜は不可能です。大和辺りで吹っ飛ばしてください」
因みに制御中枢を露出させるには、機体下部のサプライユニットと呼ばれる燃料や弾薬なんかが詰まった区画の8ヶ所の接続部分を正確に破壊しないとならない。これが出来るのは、真のエースパイロットでないと不可能である。
ただそれをやってのけるエースパイロットが、皇国軍は10人近くいる。
「航空隊、白鳳2機と交戦開始!!」
「!?レーダーに感、空中空母『白鯨』及び支援プラットフォーム『黒鯨』2機です!!!!」
「主砲回頭!弾種、旭日弾!!準備完了次第、即時発射!!」
「旭日弾とは?」
「我が軍が保有するエネルギー兵器の1つで、砲弾に陽電子エネルギーを纏わせて発射します。対重装甲目標に有効で、電子機器の集中する場所に撃ち込みEMP兵器としても使える兵器です」
つまり、某宇宙戦艦ヤマトのショックカノンを実用化しているのだ。リメイク版では核融合炉を持つ第一世代の艦艇では、波動砲の様な決戦兵器扱いで機関暴走の可能性も孕む兵器であった。波動エンジンが完成した事で普通の兵器として扱える様になった代物を、皇国は普通に使っているのだ。その技術力の高さに、堺は驚愕した。
「装填よし!充填よし!撃て!!」
てっきりヤマトの様な独特の射撃音かと思っていたが、音は普通の砲撃音であった。しかし放たれた砲弾は蒼白い光の尾を纏いながら目標へと飛んでいっており、見た目はショックカノンその物である。
「弾着、今!!敵空中空母艦隊、全艦轟沈!!」
「一撃!?」
「なんて威力なの.......」
あの巨大な化け物兵器すら、たった一斉射で破壊する。その威力が艦娘達に向けられれば、まず勝てないだろう。恐らく死体すらも残らず、消し飛ばされる。
そんな事を考えている時、ふと堺は思った。恐らく今のロデニウス連合王国の前身である、クワ・トイネ王国のヤヴィン達やムーのマイラス、ラッサンが初めてタウイタウイ泊地の兵器群を見た時、こんな気持ちだったのだろうと。
「敵艦隊、捕捉!!正面です!!!!」
「白鳳の方はどうだ?」
「航空隊からは『ロスト多数なれど、想定範囲内』との事です」
「ならばコチラは、あの艦隊に集中する。ウェルドック解放!震洋と戦闘艇を出せ。展開後、本艦は潜航し海中から奇襲を掛ける。僚艦にも伝えろ!!」
今、神谷の口から信じられない言葉が飛び出した。『ウェルドック』と言ったのだ。ウェルドックは本来なら、揚陸艦に搭載される設備であり戦艦には搭載されない。つまりこの戦艦は潜水艦としても、戦艦としても、空母としても、イージス艦としても使えるという事になる。伊達に『究極超戦艦』だの『戦艦という艦種の完成系』だのとは言われてないらしい。
「神谷さん、もしかしてこの艦には揚陸艦機能が?」
「ありますよ。揚陸艦どころか、フリゲートとコルベットの中間となる『戦闘艇』と呼ばれる艦艇の整備ドックにもなります。パラサイトファイターならぬ、パラサイトシップの親となる訳です」
「司令、どうやらこの戦艦には我々の常識が通用しないらしいです.......」
「因みに震洋というのは、無人自爆ボートになります。1隻で現代艦なら、余裕で沈めますよ」
この震洋の戦法は、現代艦にとっては割とシャレにならない戦法である。確かに機関砲や速射砲があるとは言えど、もし死角にまで潜り込まれたら最悪沈没は免れない。実際、アメリカ海軍のイージス艦『コール』はアルカーイダの自爆攻撃で沈みかけた事がある。これを受けてインディペンデンス級を筆頭とする『沿海域戦闘艦』という艦種が新たに生まれたのだ。
「全艦載艇、出撃完了!!」
「これより潜水する。急速潜航!ダウントリム最大!!」
神谷の号令で、『日ノ本』は一気に大海原へと姿を消す。その穴を埋めるかの様に、他の僚艦達が『熱田』を中心に展開し攻撃を開始する。
「主砲砲撃戦!!弾種、徹甲榴弾!!撃ち方始め!!!!」
「撃て!!!!」
「我が艦の『要塞』の名は、名ばかりのお飾りではないと知れ!!主砲発射!!」
「撃てぇ!!!!」
「本艦は全対艦ミサイル発射後、現海域を離脱する!!!!ハルマゲドンモード、発動!!」
「アイ・サー!FCS、ロック!ハルマゲドンモード、戦闘開始!!!!」
但し装甲の薄い『摩耶』、『浦風』、『神風』に関しては全自動戦闘モードである『ハルマゲドンモード』使用の上で、対艦ミサイルを撃ち尽くしつつ撤退を開始した。流石の皇国海軍のイージス艦とて、真正面から熱田型や大和型の砲撃を受けては跡形もなく消し飛んでしまう。
この攻撃は演習用のAIも想定していなかったらしく、迎撃に手を焼いている。一斉に数千発単位でミサイルと砲弾が撃ち込まれては、流石のAIでもキャパオーバーらしい。攻撃で気を引いてる間に震洋部隊が肉薄し、更に相手の火力を分散させていく。
「上の連中はかなり気を引いてくれています」
「そうでなくては困る。だが、そろそろ信玄でも飛ばしてくるだろ」
神谷の読み通り、すぐに敵艦隊から対潜ミサイル信玄が飛んできた。それも恐らく装備してる信玄、全部を叩き込んでくれているのか、その数は200発を超える。
「これ、不味いんじゃ.......」
「確かに普通の潜水艦ならヤバいでしょう。ですが、堺さん。祖国たる皇国の名を冠し、究極と言われる『日ノ本』に死角はありませんよ。
TLS、掃射開始!!!!」
「アイ・サー!!」
次の瞬間、船体中から赤紫のビームが四方八方に無数に飛び出す。船体中に張り巡らされたTLSは本来は対空用なのだが、レーザー兵器なので潜水中でも使えるのだ。これにより、着弾前に接近する信玄全てを破壊する事に成功した。
「さーて、フィナーレといこう。浮上と同時に仕掛ける。主砲、副砲は旭日弾を装填。エネルギー充填開始!同時に魚雷発射管、注水!!他、全ての火器は攻撃準備!!」
「アイ・サー!エネルギー充填まで残り5、4、3、2、1。充填よし!!」
「発射管、注水!」
「各両用砲、機関砲、射撃モードを対艦に変更」
「TLS、パルスレーザー、エネルギー再充填完了!」
「ミサイル、準備良し!」
神谷は2人に「揺れるので、何かに掴まっていてください」と言うと、艦橋にいる乗員達に叫んだ。
「急速浮上!!アップトリム最大!!同時に魚雷、主砲、副砲、TLS、パルスレーザー発射!!」
一息にそう命じた。その命令は直ちに実行され、まずは魚雷が各艦の艦底部目掛けて飛び出す。次にエネルギー兵器である旭日弾を装填した主砲、副砲、TLS、パルスレーザーが弾幕を展開。艦底部に向けて、猛襲を仕掛けながら海の中を駆け登る。
「浮上、今!!!!」
船体が完全に海面に浮上した頃には、敵艦隊は既に大破しかおらず沈むのも時間の問題という有り様だった。だが、神谷は知っている。こういう瀕死の奴が放つ最後の攻撃は、結構侮れない事を。
故に、完全に破壊し尽くす。
「一斉撃ち方!!!!」
発射から着弾まで時間のかかるVLSと決戦兵器の波動砲を除いた、『日ノ本』が有する火力の全てを使用した猛攻。主砲、副砲、魚雷、両用砲、機関砲、TLS、パルスレーザー砲、舷側の横列二段八連装近距離艦対艦ミサイル、全方位多目的ミサイルランチャー。その全てが敵艦に向けられたのだ。熱田型や赤城型とて、防げない。
「敵艦隊、全艦撃沈。白鳳についても堕ちた様です」
レーダー員の報告によって、演習が終わった事が分かった。神谷が無線で「演習終了」の指示を出した事で、この異次元の戦闘は幕を降ろした。
翌朝 外務省 応接室
「朝早くからお呼び立てしてすみません」
「いえいえこちらこそ。川山さんから呼び出しがあったということは、結論が出たということでしょう。難しい案件にも関わらず早期に対応していただき、ありがとうございます」
まだ9時前だと言うのに、堺と霧島を呼び出したのは勿論、例のタウイタウイ大日本皇国編入に関する事である。
「さて、本題に入りましょう。まずは、昨日堺さんが提案してきた『タウイタウイ島の大日本皇国領への編入案』についての、我が国での検討結果からお伝えします。結論から申し上げますと、我々大日本皇国としては、タウイタウイ島の自国領への編入を受け入れることはできないと判断しました。理由はいくつか挙げられます。
第一に、昨日堺さんが言及していましたが、軍の指揮系統に関する話ですね。我が軍と堺さんのところの部隊では、技術レベルに明らかな差があります。それを自国領に編入するとなれば、艦娘たちや妖精たちは必然的に我が軍の指揮下に置かれることになる訳ですが、戦力の性質上動かしにくい部分があるんです。部隊の行軍速度に差が出たりする訳ですからね」
昨日の夜、三英傑はテレビ電話で会議を行った。その結果なのである。神谷曰く「別に統合運用自体は出来るが、いざ戦うってなった時にモノになるかは別問題だ。皇国軍の装備とあっちの装備じゃ、兵器を形作る根本の戦略面とかドクトリンが違いすぎて連携するメリットがない」らしい。
「第二に、行政上の処理が面倒だという点です。一色総理とも相談したのですが、自国領に編入するとなると新たに住所を割り振ったり、戸籍調査を行う必要が出てくるなど、事務的な処理が面倒なんですよ、率直に申し上げまして。そういったこまごました手続きや調査にかかる人的・時間的・金銭的コストを計算した結果、割に合わないと判断されました。これが2点目の理由です」
これは一色の決めた事だった。実際にはこれ以外にも国会のアホ議員が色々言い掛かり付けてくるだろうし、事実上の政府とかの機構が無い以上は何かと向こうでゴタ付く可能性が高い。その辺りが起きたら面倒なので、もう国認定した方が楽だったのだ。
「そして第三に、世論です」
「世論、ですか?それはどういうことでしょう?」
堺が尋ねると、川山は眉をハの字にした。正直、結構理由が理由なのである。
「実はですね、あなた方の存在が国内で報じられて以降、ネットや有識者たちの間では、国家としてのあなた方の所属をどうするべきか、という議論が行われてきました。そんな中で、一般市民の中でも特定の分野に通暁した者たち.......はっきり言えばオタクたちが声を上げたのです。『無理に自国領に編入して艦娘たちの信頼を損ねるくらいなら、一線引いた位置から見守るくらいの関係の方がまだマシだ』と。
その意見が一度出回るや、他の一般市民や有識者も多数この意見に賛同するようになりました。このたった数日間の間に延べ数十万人もの署名が集められ、外務大臣の頭に叩きつけられたほどなのです。あ、ちなみに本当に外務大臣が秘書官に署名書類で頭を叩かれたんですよ。比喩ではなく実話です。外務省にもオタクは少なからずおりますもので.......」
「えぇ.......」
オタクが政治を動かすという、現実的に考えてとんでもない事態に堺も引いている。それと同時に、オタクたちの熱意に改めて畏敬の念を抱く。「オタクヤベェ」と。
まさか民意がこんな重要な案件の方向性を決めてしまうとは思わなかった。 まあだが、三英傑がオタクなので一応は平常運転だろう。うん、そうだ。これは平常運転である。
「それに加えて、艦娘たちが暮らしに困る事態は見過ごせないと、クラウドファンディングや街頭募金によってタウイタウイ泊地の存続を支援する活動まで始まっているのです。私が把握しているクラウドファンディングだけでも、この会談の直前の時点で200万円くらい集まっていましたよ。これに街頭募金が加わりますから、おそらく相当な額に昇るでしょう」
「えぇ.......」
「わ、私たちの生活を支援してくださるのは、素直にありがたいのですが.......行動力がすごいですね」
「ははは.......。まあ、良くも悪くも行動的なんですよ、我が国の民は」
正直、この状況には三英傑含め政府も驚いた。なにせTwitter、Instagram、facebook、5ちゃんねる、ニコニコ、その他諸々でオタクが一致団結してるのだから。
「以上3点から、我々としてはタウイタウイ島の編入案は辞退させていただきたく思います」
「分かりました。そんな話を聴かされては、泊地の代表者である私としても、編入案は取り下げます。仮交渉の時のように、タウイタウイ島と大日本皇国は互いに独立国として国交を開くことにしましょう」
「そうですね。そうなると、そちらの国号はどうされますか?」
「日本国に戻すことにしますよ。そもそもロデニウス大陸からだいぶ離れてしまったようですし、仮に近くにあったとしても政体や国家体系がまるで違うようですから、今さらロデニウス連合王国を名乗る訳にもいきませんので」
「分かりました。ではこちらも、あなた方のことは『日本国の国民』として接することにいたします」
「ありがとうございます」
その後、午前中いっぱい使って様々なことが話し合われ、最終的に以下のような内容が決まった。
・タウイタウイ島は『日本国』と国号を改める。領土はタウイタウイ島のみ、国家主席を堺とし、人口200人プラスアルファ程度の規模の小国家という扱いとなる。
・大日本皇国と日本国は互いを独立国と認め、国交を正式に開設する。
・日本国の海軍・陸軍は、指揮系統の独立性が保証される。ただし、大日本皇国からの要請に応じて、一時的に指揮権を大日本皇国軍総司令部に委譲し総司令官神谷浩三元帥直属の遊撃部隊である『神谷戦闘団』として行動することは起こり得るものとする。
・大日本皇国は日本国に対して、食糧、資源、資金等の提供による支援を行う。日本国はその見返りとして、大日本皇国における一部の技術開発や、諸外国に対する大日本皇国からの技術供与・指導を支援する。
・大日本皇国から日本国への観光・交流目的での渡航は、これを許可する。ただし、大日本皇国から見て日本国は外国扱いとなること、日本国は島そのものが軍事拠点となっていることから、大日本皇国人の入国の際は、日本国からの指示を厳守した上で観光・交流を楽しんでもらうこととする。
そして午前中の交渉が終わった後、午後になっても堺と霧島は忙しくしていた。その理由はというと、
「第二、第四、第六一駆逐隊からのリクエスト、全て買い込みました!」
「OKだ、こっちは工廠組からの注文の交渉にまだ少しかかる!三戦隊、四戦隊、それに一航戦の分を頼む!」
「了解しました!」
艦娘たちから要求された『大日本皇国訪問のお土産』である。1人1人の注文量はそんなに多いわけではないのだが、「ちりも積もれば山となる」とはまさにこのこと。加えて明石や釧路といった「工廠組」や一部のオタク艦娘からはゲーム機のような電化製品を要求されたため、これの輸出交渉やら何やらでドタバタ状態であった。買い物は神室町のカムロモールで行ったのだが、建物内を走り回りカートを何十台も使って購入しまくっていた。堺曰く、「なんで天皇陛下への謁見やら外交交渉やらよりこっちのほうが疲れるんだ……」とのことである。
一応、神谷邸の使用人にも手伝って貰い、ありったけの資金を総動員して莫大な数の買い物やら輸出手続きやらをどうにか済ませた2人は、夜が明けて5日目の朝にヘロヘロになった状態で二式大艇に乗り込み、タウイタウイ島への帰還の途につくのだった。