最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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特別編8 艦隊演習(後編)

そして艦隊の再編成を終えてから50分後、眼前にはいつの間にやら茜が射し始めたタウイタウイの海が広がっている。

 

「……来ねえな」

 

堺の呟き通り、来るはずの第二次空襲が来ない。艦隊の周囲には静かな空が広がるばかりだ。

 

「どうしたんでしょう?」

 

大和も首を傾げている。 そして、この2人も同じ様に首を傾げていた。

 

「なぁ、これって良くある感じか?」

 

「流石に艦娘の練度はよく分からん以上、断言はできん。だが他の反応を見るに、どうやら練度的には再攻撃を仕掛けても良い頃合いだろう。これがガチガチの実戦を想定しているのなら夜襲とかの可能性もあるが、今回は俺達ゲストが乗ってる。時間を夜まで延ばしたりはしないだろうよ。

となると考えられるのは、何か不測の事態が起きたかだな。まあそういう事態ならこっちに緊急電が入るだろうから、多分船が沈んだとかまでの大惨事じゃないだろうがな」

 

一色の質問に神谷は答えたが、何か引っかかる事が自身の中であった。何か、何かを見落としているモヤモヤ感が脳を覆う。

 

(そういや、あの出撃の時のしおい&ろーちゃんコンビ、あの2人は今どこに?敵役にいるのか?いや、だが今回の戦闘は空母による航空攻撃作戦。仮に奇襲するのなら、もうしている筈。それとも単純に、別の演習が並行して行われてるのか?)

 

とか何とか色々考えていたその時、意外な報告が見張り台の妖精から上がった。

 

『見張より艦橋、水平線上に演習火災煙!数3!』

 

「なに、どこだ!?」

 

『艦隊からの方位50度です!』

 

堺と大和の他、数人の妖精が揃って双眼鏡を目に当てた。神谷たち3人も、双眼鏡を覗いてみる。

水平線付近の空に、赤い煙が3つ上がっている。この赤い煙は、火災発生の判定を取られた艦から噴き上がる物だ。

 

「……」

 

双眼鏡を下ろし、下顎に手を当てて考え込む堺。 神谷はこの煙を見て、さっきの潜水艦コンビの所在について1つの仮説が生まれた。

 

(まさかあの2人、こっちサイドに立ってるとかないよな?)

 

流石に無いと思うが、伊401と呂500が飛び込みでこっちに参加しているのでは無いかと考えた。そうでもなければ、あの煙の説明が付かない。まさか砲撃戦もないのに、誤射なんて事がある訳もないのだから。

 

「面舵50度、第二戦速。あの演習火災煙の正体を確認する。対水上戦闘の心構えをしておいてくれ」

 

「了解」

 

堺の指示で輪形陣を形作ったまま、艦隊はゆっくりと赤い煙に向けて近付いていく。

ある程度接近したところで、また見張台から報告が来た。

 

『見張より艦橋。演習火災煙付近に戦艦1を発見』

 

「艦種は識別できる?」

 

『まだ遠いです、少しお待ちください』

 

大和と見張員妖精がやり取りをする一方、堺は何やら書類を引っ張り出して広げている。艦娘たちの予定を確認しているらしい。少し待って、報告が入ってきた。

 

『識別完了!戦艦は、ヴィットリオ・ヴェネト級と認む!』

 

その瞬間、堺が叫んだ。

 

「敵だ!ヴィットリオ・ヴェネト級といえば、大鳳たちの護衛だぞ!待て、1隻だけか?2隻いるはずだが?」

 

神谷がちらっと予定表を覗いてみると、大鳳たちの護衛には『イタリア』と『ローマ』の名前があった。つまり、ヴィットリオ・ヴェネト級は2隻いるはずなのだ。それが1隻しか見当たらないというのは、どういうことだろうか。

 

『いえ、1隻しか見当たりません』

 

「ふむ.......。了解」

 

不審そうながらも納得した堺に、大和が尋ねた。

 

「提督、そういえば大鳳さんたちの敗北条件って何ですか?」

 

「あいつらの敗北条件は、『全空母が艦載機運用不能になること』だ。手段は問われない」

 

「では、提督!」

 

堺の方を見た大和の目は、何故かギラギラと光っている。それを見た瞬間、神谷はこの後の展開を察した。

 

「やる気だな?」

 

「もちろんです!」

 

この返答を聞いた瞬間、神谷は不敵な笑みを浮かべて一色と川山に振り返った。

 

「どうやら俺達は運が良いようだ」

 

「よし。全艦へ告ぐ、敵艦隊を捕捉した、大鳳たちの艦隊だ!今あいつらは何らかの理由で艦載機を出せなくなっているらしい、この機に乗じて一気に叩く!単縦陣に移行!全艦、砲雷撃戦用意!」

 

対水上戦闘ラッパが高らかに鳴った。妖精たちが持ち場へと一斉に走り出す。 最初、神谷の言ってる事が理解できてない2人だったが、堺のこの命令で一気に顔が無邪気な少年の様になった。まさか戦艦『大和』による、砲雷撃戦が見られるとは思ってなかったのだ。

 

「さあ、やるわ。砲雷撃戦、用意!」

 

大和の声にも張りがあり、気合が入っているのがはっきりと分かる。

 

『空襲の次は砲戦か?上等じゃねえか、アタシだって重巡だ。主砲を1基降ろしちまったから火力は低いが、命中率が高けりゃいけるだろ!』

 

『第二水雷戦隊、預かります。艦隊増速、合戦用意!行くわっ!』

 

『私が、守ります!』

 

『艦隊をお守りします!』

 

他の子たちも戦意は十分らしい。輪形陣の先頭にいた『初霜』がやや速度を落とした。『大和』の左隣を、増速した『矢矧』と『雪風』が追い抜いていく。それと入れ替わるように『大和』がスピードを落とした。

艦隊の先頭に『矢矧』が飛び出し、その後ろに『初霜』と『雪風』が付ける。そして『雪風』と『大和』の間に開いた隙間には『摩耶』が入った。練度の高さを証明する、見事なまでの艦隊行動である。

 

「陣形変更完了!」

 

『こちら矢矧、第二水雷戦隊各艦、砲雷撃戦用意よし』

 

『摩耶だ、こっちもいつでもいけるぜ!』

 

「よし、二水戦は敵艦隊に向けて突撃、できれば空母に肉薄雷撃を叩き込め。摩耶は大和の直掩として後方から砲撃支援を行え」

 

『本当はアタシも突っ込みたいんだが、大和が沈んだらこっちの負けになっちまうからな。しゃあねぇ、今は我慢してやるよ』

 

『矢矧了解。たった3人しかいなくとも、二水戦の本領を見せるわ!』

 

皆、闘志に揺らぎはないらしい。だがその時、見張員妖精が怪訝そうな声で報告してきた。

 

『見張より艦橋。ヴェネト級の周囲に水柱複数確認。さらに利根型航空巡洋艦2隻、大鳳型空母1隻、雲龍型空母2隻、その他小艦艇10隻以上を確認せるも、小艦艇は不規則に運動中。対潜戦闘中と認む』

 

それを聴いて、堺がニヤリと笑った。

 

「そういうことか。どうやら上手くやったらしいな」

 

この発言と、堺の表情を見て神谷は全て察した。やはりあの仮説、正しかったらしい。

 

「何か仕込んでいたんですか、提督?」

 

「ああ。実は出港する直前にしおいとろーちゃんを捕まえて、もし大鳳と雲龍型からなる機動部隊を見付けたら、ウルフパックを仕掛けて欲しいとお願いしておいたんだ。

ヴィットリオ・ヴェネト級が1隻しかいないのも、雲龍型が1隻いないのも、多分あの子たちの雷撃でやられたからだろう」

 

なんてことないように話している堺だが、実はこれ、大鳳たちにとってはとんでもない相手だった。

今回、大鳳たちにウルフパックを仕掛けたのは潜水艦『伊19』『伊26』『伊168』『伊401』『呂500』である。史実において空母を雷撃した子が3人も含まれる上に、伊401は攻撃力が高く、そしてグラ・バルカス帝国の大型空母すら屠った呂500がいるのである。そんな面々にウルフパックを仕掛けられては、堪ったものではなかっただろう。

 

「うわぁ.......。大鳳さんの護衛の子たちからすると、想定外にも程がある訓練内容ですね」

 

「そりゃ実戦さながらにやらなきゃ生ぬるいだろ。戦場じゃ何が起こるか分かりゃしないんだから」

 

(いやまあ、そうだけど。にしてもエゲツないなぁ。流石に俺でもそんな事しないぞ。精々、敵艦隊に陸上部隊送り込んで中から艦を制圧したり、空母格納庫の中で戦闘機暴れさせる位しかしないぞ)

 

いやいやいやいや。堺よりも神谷の方が何千倍も悪質かつ、予想外の外の外の攻撃である。

 

「まあ確かに。ただ提督、その潜水艦の子たちへのお願いは、高くついたんじゃありませんか?」

 

「ああ、成功したらって条件で間宮のタダ券ねだられたよ」

 

「やっぱり.......」

 

「まあ仕方ない、背に腹は代えられん。さ、そろそろ向こうも気付く頃だ。やるぞ!」

 

「はいっ!」

 

このタイミングで、第二水雷戦隊の3隻が一気に速度を上げた。前方に見える敵役の機動部隊に向けて突っ込んでいく。

 

「主砲射撃目標、ヴィットリオ・ヴェネト級!摩耶、護衛は任せたぞ!」

 

『よっしゃ任せろ!駆逐艦だろうが巡洋艦だろうが近付けさせねえよ!』

 

「目標、ヴィットリオ・ヴェネト級。測的始め!」

『目標、ヴィットリオ・ヴェネト級。測的始めます!』

 

「面舵2当て。主砲、左砲戦! 弾種、徹甲演習弾!」

 

戦艦同士の砲戦が近い。つまりいよいよ、この演習での一番の見所が来るという訳だ。

 

『てめえら、左砲戦だ!気合入れてけよ!』

 

『測的完了!距離フタナナマル(27,000m)、敵針路55度、速力29ノット。いま針路90度に変わりました、回頭中の模様!』

 

「砲戦距離フタマルマル!射撃諸元入力始め!」

 

『了解、射撃諸元入力始めます!』

 

この時、前方を行く『摩耶』の主砲が左に回転し始めた。それにつられるように、巨大な46㎝三連装砲がゆっくりと左に回転し、砲口を左舷に向ける。

 

「敵距離フタゴーマル!あ、敵機動部隊から小型艦2隻が離れました!二水戦に向かっています!」

 

「護衛が分離したか。こっちに気付いて、潜水艦に構ってる暇がなくなったな」

 

『今度はよく引き付けるんだ……よし、てぇっ!』

 

「矢矧発砲!」

 

双眼鏡で観察すると、『矢矧』艦上から褐色の発砲煙が立ち昇っている。

 

『敵艦発見です!』

 

『雪風は、沈みませんっ!』

 

続いて『初霜』と『雪風』も砲撃を開始する。 恐らく、牽制目的の射撃だろう。何せ今の距離は、『矢矧』にとってもやや遠いはずだ。『矢矧』の持つ15.2㎝砲でこの始末なのだから、『初霜』と『雪風』の10㎝砲は当然届かない。となると考えられる可能性は、相手の牽制ということだろう。

 

「敵艦との距離は?」

 

『距離フタヒトマル!『摩耶』、面舵!』

 

「了解!」

 

そしてついに、距離が20,000mになった。いよいよ、砲撃の時は近い。

 

「面舵90度!」

 

『おもーかーじ、90度ようそろ!』

 

「回頭終わり次第最大戦速へ!主砲、砲戦用意!」

 

その時、堺や大和、3人の身体に強烈な左への遠心力がかかった。艦橋の窓から見える景色がくるりと回り、さっきまで前方に見えていたヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の影が左へと流れていく。

 

『『摩耶』、射撃開始!』

 

戦艦が流れた代わりに、発砲炎を煌めかせる『摩耶』の姿が正面に来た。見ると『摩耶』の主砲が睨む先には利根型航空巡洋艦の姿がある。『利根』か『筑摩』のどちらかを目標にしているらしい。

 

「戻せ、舵中央!主砲、交互撃ち方、射撃始め!」

 

『撃ち方よーい!』

 

ジジーッ、ジジーッ、ジジーッ

 

『てーっ!』

 

ジジーー…

ドドオォォォン!

 

強烈な砲声が鼓膜を揺さぶり、激しい衝撃で艦体が震えた。 流石に川山と一色も慣れたのか、砲撃をしっかりと見ていた。

 

『敵戦艦、面舵!本艦に同航します!』

 

「砲戦に乗ってきましたね。良いでしょう、その実力見せてもらいます!」

 

そう言い放つ大和の瞳は、戦意の炎が宿ったかと思うほど輝いている。

 

『敵利根型、発砲!狙いは『摩耶』の模様!』

 

『その闘志や良し!だが、アタシに勝てると思うなよ!』

 

『敵戦艦、発砲!』

 

いよいよ砲戦が本格化してきた。海も着弾した砲弾の水柱が上がり、船体中に海水が雨の様に降り注ぐ。

 

『雲龍型1隻、被雷の模様!』

 

「うちの艦隊じゃねえな。潜水艦の子たちだ」

 

砲声に混じって、堺がそう呟くのが聴こえた。

 

「潜水艦ばかりに美味しいところを持っていかせるな!我々とてやれるんだからな!」

 

堺がそう鼓舞した時、 観測手からの弾着報告が飛び込んだ。窓の外に双眼鏡を向けると、敵戦艦の手前に3本の水柱が上がっている。

 

『弾着、全弾近!』

 

「上げ100!」

 

そこへ、ヒュルルルルヒュイーンという甲高い音が降ってくる。敵戦艦が撃った主砲弾が飛んできたのだ。

 

「当たりませんね」

「当たらん」

 

あっさり同時に言い切る大和と神谷。その言葉通り、敵戦艦の射弾は『大和』左舷の海面に落下しただけに終わった。

 

「よく分かるな?」

 

さすが戦艦娘、その辺は堺より詳しい。神谷だって、元は艦隊司令。前線で艦を率いて戦争してたのだから、大体分かる。

 

「音の微妙な違いで何となく分かりますよ。それよりも、神谷さんの方が驚きですよ。よく分かりましたね」

 

「まあ私は銃弾を刀で切ったりするのでね。むしろ銃弾より砲弾の方が、物がデカいんでパッと見りゃ分かります」

 

まさかの人外発言に、大和困惑である。だがそこはプロ、すぐに視線を敵艦へと向ける。

 

「第2射、撃ち方よーい!てーっ!」

 

警告ブザーの後に、46㎝砲が轟然と咆哮する。各主砲の中央の砲身から砲弾が撃ち出され、ヴェネト級めがけて飛んでいった。『大和』が第2射を撃つ間に、砲弾の装填が早い『摩耶』は既に利根型と3回もの射撃の応酬を繰り広げている。双方ともまだ照準は合っていないが、弾着位置が互いに近付きつつある。

ヴェネト級と『大和』、双方の主砲弾が落下する。ヴェネト級の弾は再び『大和』の左舷に落ちたが、『大和』の砲弾は相手を飛び越して水柱を噴き上げた。

 

『弾着、全弾遠!』

 

「下げ50!」

 

実は大和の主砲たる九四式45口径46㎝三連装砲と、ヴェネト級の50口径381㎜三連装砲では、装填速度はほぼ同じである。そのため双方ともほぼ同じ間隔でしか射撃できない。

こうなると自然とどちらが先に命中弾を出すか、という勝負になる。つまりは、練度勝負という事だ。

 

『レーベレヒト・マース、被弾。第3砲塔に15.2㎝砲弾直撃、砲塔大破判定』

 

唐突に飛び込んだ判定アナウンスによると、どうやら『矢矧』が相手しているのは『Z1』であるようだ。正直言って、レーベにとってはかなり荷の重い相手である。

 

「第3射、よーい!てーっ!」

 

第2射から40秒後、46㎝砲が三度目の咆哮を上げる。やや遅れて敵役のヴェネト級戦艦も主砲を撃ってきた。双方の砲弾が2万メートルを一飛びし、相手の艦を目指す。弾着は『大和』の方が先だ。

 

『弾着、全弾遠。至近弾1』

 

「照準そのまま」

 

大和の命令を聴いて、神谷は気付いた。どうやら大和の主砲の照準が合いかけているらしい、ということに。

戦艦の砲撃というものは、案外アバウトなものなのである。直撃弾を出したり、夾叉したりしても、それは「散布界の中に敵艦が収まり、砲弾の命中率が高い状態になった」というだけなのだ。イージス艦の砲撃などとは大分性質が違うのである。

敵の砲弾の落下音が頭の上を飛び越えた、と思った時、『大和』の右舷に3本の水柱が立った。敵役は仰角の調整をミスしたらしい。

 

『マックス・シュルツ、3発被弾。艦橋大破、艦橋要員総員戦死判定。続いて初霜被弾、損傷軽微』

 

『初霜』は『Z3』と矛を交えているようだ。『雪風』もそれに加わっているのかもしれない。

 

『レーベレヒト・マース、2発被弾。缶室1基損傷、中破判定。出し得る速力15ノット。矢矧被弾、左舷高角砲損傷判定』

 

やはり『Z1』には『矢矧』の相手は荷が重すぎたようだ。早くも戦闘能力を失いかけている。

 

「てーっ!」

 

大和の主砲が、4回目の砲撃を放つ。ヴェネト級の艦上にも発砲炎が煌めく。

 

『だんちゃーく、今っ!』

 

水柱が3本上がった。2本はヴェネト級の手前に、そして1本はヴェネト級の向こうに。

 

『夾叉弾を得ました!』

 

「一斉撃ち方!」

 

すかさず大和が命じた。弾着観測機も飛ばせていないのに、第4射で照準が合うのは大したものだ。普通なら第6~8射くらいで照準が合うものなのである。

 

「ヴェネト級の主砲の破壊力は侮れません。このまま一気に決着を着けます!」

 

『筑摩被弾。飛行甲板大破、火災発生判定』

 

無機質なアナウンスが入ってきた。ふと堺が前方を見ると、『摩耶』と戦っている利根型の後部から演習火災の赤い煙が上がっている。どうやら『摩耶』が相手にしているのは『筑摩』らしい。

 

『っしゃあ!こっちも行くぜ!摩耶様の攻撃、喰らえーっ!』

 

一足早く『摩耶』が斉射に踏み切った。4基の20.3㎝(3号)連装砲を振りかざし、全力の砲撃を放つ。

この時、ヴェネト級の砲弾が落下した。3発とも『大和』左舷の海面に落下したが、1発が至近弾となっている。

 

『レーベレヒト・マース、2発被弾。機関大破、航行不能判定。

マックス・シュルツ、5発被弾。艦後部で火災.......魚雷誘爆、轟沈判定』

 

二水戦もきっちり仕事を果たしつつあるらしい。『大和』も負けていられない。

 

「一斉撃ち方、よーい!てーっ!」

 

そして『大和』も主砲斉射にかかったところだった。

 

ドドドオオオォォォォン!!!

 

鼓膜を突き破らんばかりの凄まじい轟音と、30㎝先でカメラのフラッシュを焚くより強烈な赤い閃光。主砲9門の全門斉射である。

 

「やっぱすげぇ轟音!」

 

「み、耳がおかしくなりそう.......」

 

「やっぱ砲撃はこうでないとな!!これこそ戦艦!!これこそ艦隊戦!!」

 

一色と川山が両耳を押さえながら話し合い、その横で神谷は笑っていた。その笑い声から、この演習を心の底から楽しんでいる事が分かる。

その笑い声を塗り潰すように、ヴェネト級の砲弾が甲高い音を立てて降ってきた。

甲高い音が消えた瞬間、『大和』の艦体が激しく揺さぶられる。演習弾とはいえ、大口径砲から撃ち出された弾の衝撃は大きい。どうやら今度はかなり至近に落下したらしい。

 

『だんちゃーく、今っ!』

 

その瞬間、堺と大和が構えた双眼鏡の中で、ヴェネト級が水柱に取り囲まれた。それが収まった時、ヴェネト級は艦体中央部から赤い煙を噴き上げている。

 

『1発命中、火災発生!』

 

『イタリア被弾。右舷高角砲2基大破、火災発生判定』

 

どうやら『大和』の相手は『イタリア』だったようだ。

 

『こちら矢矧、前方より敵艦1接近!秋月型だわ!秋月型は私が引き受ける、2人は空母への雷撃をお願い!』

 

『初霜、了解です!』

 

『雪風、分かりましたっ!』

 

緊張感のある矢矧の声が無線機から聴こえてきた。並の駆逐艦にとっては、65口径10㎝砲8門を凄まじい勢いで速射してくる秋月型の相手は、荷が重いどころの話ではない。軽巡としては防御力のある『矢矧』が引き受けるつもりのようだ。

 

「撃ち方よーい!てーっ!」

 

この時には『大和』の主砲は第2斉射を放っている。9発の砲弾が唸りを上げて『イタリア』に突っ込んでいく。負けじと『イタリア』も撃ち返す。

 

『だんちゃーく、今っ!2発命中!』

 

『イタリア、2発被弾。右舷前部副砲損傷、使用不能判定。右舷前部に水中弾、浸水判定』

 

浸水すれば速力が落ちるし、前後左右のトリムも狂うから砲撃が当たりにくくなる。結構な一撃を入れられたようだ。

 

「このまま一気に!」

 

大和のその言葉を、敵弾の飛翔音がかき消した。そしてその音を聴いて、神谷は「あ、これは当たる」と確信した。

次の瞬間、大地震のように艦橋が揺れる。同時に『大和』の周囲に2本の水柱が噴き上がった。

 

次の瞬間、大地震のように艦橋が揺れる。同時に『大和』の周囲に多数の水柱が林立した。

 

「喰らったか!」

 

堺が叫んだ時、判定のアナウンスより先に、神谷が叫んだ。

 

「問題ない!!左舷中央の機銃が8基やられただけだ!!」

 

『大和被弾。左舷対空機銃8基損傷』

 

遅れてアナウンスが入る。まさかアナウンスより先に、被害を正確に言い当てるとは思わず艦橋の全員が一瞬黙った。

 

「よ、よく分かりましたね。私でも、感覚で大雑把にしか分からないのに.......」

 

「なーに、勘ですよ勘」

 

因みに今の、神谷は全く被弾箇所を見ていない。着弾音と衝撃だけで、被害を正確に当てたのだ。それも身体の一部である筈の大和よりも正確にである。化け物、という言葉でしか形容できないだろう。

取り敢えず被害が機銃だけで済んだのは、不幸中の幸いというべきだろう。だがこれで、『イタリア』も照準を合わせたのだ。次からは斉射に踏み切ってくる。『イタリア』が持つ381㎜砲弾は、長砲身砲から放たれるため初速が速く貫徹力が高い。あまり多数を撃ち込まれれば、『大和』とて重大な被害を受ける恐れがある。

それを避けるにはただ1つ、「攻撃は最大の防御」を適用し『イタリア』を先に沈めるより他にない。

 

「てーっ!」

 

『矢矧、2発被弾。左舷中央部にて火災発生判定』

 

『矢矧』も頑張っているらしい。第3斉射を放つ『大和』。『イタリア』も撃ち返してくる。

弾着は『大和』の方が先だ。水柱が収まった時には『イタリア』の前部で新たな演習用火災煙が発生している。

 

『イタリア被弾。第2砲塔大破、火災発生判定』

 

「よし!」

 

大和が右手の拳をうち振った。敵の主砲を1基潰したのは大きい。これで自身がぐっと有利になった。

 

『筑摩、4発被弾。第3・第4砲塔損傷、中破判定。摩耶被弾、艦首区画にて火災発生判定』

 

『摩耶』も奮戦しているようだ。

そこに9発の381㎜砲弾が降ってきた。弾着と同時に『大和』艦体が震える。

 

『大和、2発被弾。煙突並びにクレーン損傷判定』

 

「煙突か、やってくれる!」

 

「やられたらやり返します!第4斉射、てーっ!」

 

闘志の衰えを見せない大和。第4斉射では2発が命中し、『イタリア』後部に火災を生じさせた。続く第5斉射は艦中央部に命中し、『イタリア』右舷側の90㎜単装高角砲を全滅させている。さらに第6斉射で『イタリア』機関部の一部を破壊し、そしてついに第7斉射で勝敗が決まった。

 

『イタリア、3発被弾。射撃指揮所に被弾、大破判定。艦橋大破、艦橋要員総員戦死判定。機関及び推進軸損傷判定、出し得る速力6ノット。戦闘・航行不能判定』

 

事実上の撃沈である。この時までに『大和』も4発を被弾し、左舷の高角砲のうち4基と機銃多数が使用不能になった他、後部艦橋トップの予備射撃指揮所が全滅した。だが砲戦には打ち勝った。

 

『筑摩、2発被弾。缶室全滅、航行不能判定』

 

『こちら摩耶、筑摩を倒したぜ!ちょーっと喰らっちまったが、小破ってところだ、まだまだ戦える!次はどうするよ?』

 

「筑摩にイタリアがやられたんで、今大鳳たちの艦隊の防御力は一気に弱くなっている。この機を逃すな。

この様子ならこっちは大丈夫そうだ、思いっきり暴れてこい!」

 

『提督、お前ならそう言うと思ったぜ!了解だ、取舵90度、前進いっぱい!突撃だぁ!』

 

『こちら初霜です。目標、雲龍型空母!魚雷発射します!』

 

『こちら雪風、初霜に続いて魚雷発射!雪風は、沈みませんっ!』

 

『矢矧、4発被弾。火災発生、13号対空電探故障、空中線喪失につき無線交信不能判定。電力回路一部断絶、探照灯使用不能。ただいままでに被弾せる砲弾34発、中破判定。

秋月、2発被弾。機関損傷、第4砲塔全滅。出し得る速力8ノット、大破判定』

 

えらく威勢の良い摩耶の声に続いて、駆逐艦たちから「魚雷発射」の報告が入る。矢矧からの報告がないと思ったら、どうやらまだ秋月型と撃ち合っているようだ。砲口径の大きさを活かして大破には追い込んだようだが、自身もボコボコに撃たれて中破してしまったらしい。

 

「大和、ここの艦隊の護衛には島風がいる。彼女の雷撃能力は脅威だ、それだけ気を付けろ」

 

「了解しました。主砲は誰を狙いますか?」

 

「んーと......大和、あの煙幕の中に敵艦はいそうか?」

 

「煙幕?」

 

神谷が窓の外を見た。双眼鏡を使うまでもなく、一部の海面が黒い煙で覆われているのが見える。確かに煙幕だ。

 

「お待ちください。艦長より電測、左前方の煙幕に中型以上の反応はありますか?」

 

「確認します!」

 

妖精の1人がレーダー本体の画面を見詰める。この画面だが、なんとオシロスコープのように不規則な波線がうごめいているだけだ。一色や川山はもちろん、堺や神谷にも読めない。

だが、プロのレーダー手である妖精には読み取れた。

 

「電測より艦橋、煙幕内に大型反応あり!数1!」

 

「大型?」

 

「いかん、大鳳だ!あいつ、煙幕に隠れて逃げようとしてやがる!」

 

その一言で、大和の顔色が一気に切り替わる。

 

「狙いますか!?」

 

「当然だ、撃沈をもぎ取れ!あいつ空母としては頑丈なんだ、魚雷でも1本じゃ難しい。だがさすがに46㎝砲には耐えられん!」

 

「了解。艦長より電測、射撃指揮所に電探諸元を送ってください!

艦長より砲術、主砲左砲戦、電探射撃用意!相手は煙幕に隠れているから光学照準射撃が使えません、電探射撃でいきます。射撃諸元は送信されたデータを参照せよ!」

 

『天城、魚雷3本被弾。航空燃料庫誘爆、舵故障、航行不能判定』

 

『こちら初霜、やりました!雪風ちゃんと共に、敵空母1隻撃沈です!まだ雲龍型が1隻残っています、これより狙いにいきます!』

 

「提督より初霜、了解。幸運な2人とはいえ、気を付けていけよ!」

 

『長良、2発被弾。機関並びに推進軸損傷、艦橋大破、航行不能判定』

 

『こちら摩耶!くそぅ、長良を倒してこれから空母を殺ろうってのに利根が残ってやがった!これより交戦する!あと大鳳が煙幕張って逃げようとしてるぞ、どうすんだ!?』

 

撃沈報告が続々と入ってくる。これを聞いていた神谷は、不意に呟いた。

 

「チェックメイト、だな」

 

神谷の第六感がそう告げる。第六感というと語弊があるが、神谷は感覚的に戦場を見る事が出来る。肌で空気を感じれば、戦いの流れや相手の動きがある程度予測できるのだ。

 

「勝ったのか?」

 

「健太郎、戦場ってのは最後の最後まで分からん。選挙と同じだ」

 

壊滅的にまで軍事に疎い一色にも分かりやすいよう、選挙を例えとして使った事ですんなり理解してくれた。そんな会話を他所に、戦場は進んでいく。

 

「提督より摩耶、大鳳はこっちで何とかする。利根を任せた」

 

『摩耶了解!利根サンよ、久々にサシで勝負といこうじゃねえか!』

 

『見張より艦橋、左舷後方より駆逐艦3隻急速接近!艦種は特型駆逐艦と推定!』

 

「高角砲、全門射撃!目標、接近せる駆逐艦1番艦!各個撃ち方!」

 

一色と川山は、あまりにめまぐるしく変わる戦況を前に理解が追い付かなくなりつつあった。無論、神谷は付いてくるどころか独自に堺と相手がどう動くか、目隠しチェスの様にシュミレートしている。

 

「電測より艦橋、諸元算出しました!敵針路25度、距離ヒトハチマル、速力29ノット!予想針路も含めて射撃指揮所に伝達します!」

 

『砲術より艦橋、射撃諸元受け取りました!入力開始します、主砲左旋回!』

 

左後方から向かってくる特型駆逐艦たちに向けて高角砲群が応戦する中、さっきまで『Italia』と撃ち合っていた第1・第2主砲が、ゆっくりと動いた。左側方を睨んでいた砲身が、大蛇が首をもたげるようにゆっくり左前方へと砲口を向ける。

 

「交互撃ち、いえ、一斉撃ち方、用意!」

 

「大和、やれるのか?」

 

大和の号令を聴いて、堺が振り返った。 これには神谷も驚く。いきなりの一斉射は、結構な大博打だ。

 

「お任せを」

 

だが、仮に自分が大和や堺の立場で、尚且つ乗組員の練度に絶対の自信があれば同じ判断を下すだろう。

 

「.......分かった、頼む」

 

『諸元入力良し。徹甲演習弾装填良し。照準良し!第1・第2主砲、射撃用意良し!』

 

「一斉撃ち方、よーい!てーっ!」

 

新たな目標に向けて、46㎝砲が火を噴いた。その直後に通信が飛び込んでくる。

 

『こちら初霜、由良さんやリベちゃんとぶつかってしまいました.......。敢闘虚しく大破.......。これ以上の戦闘継続は不可能です!』

 

『初霜、機関損傷、第1・第3砲塔損傷。出し得る速力2ノット、大破判定』

 

『でも.......時間は、稼ぎました!お願い、します!』

 

血を吐くような、という表現がぴったりの初霜の苦しげな口調。空母への雷撃、という任務は果たせなくなったようだ。

しかし、希望はちゃんと託されていた。

 

『初霜ちゃんに託されたから、ぜったい、やってみせますっ!

目標、空母!雪風、魚雷発射ぁーっ!!』

 

今、全てを賭けた「豪運の駆逐艦」の一撃が解き放たれた。

 

『だんちゃーく、今っ!』

 

忘れた頃に46㎝砲弾が落下する。煙幕に遮られて水柱が見えないが、果たしてどうなったのか。

 

「………?電測より艦橋、大型反応が急激に速度を落としています!」

 

レーダー手妖精が首を傾げて報告した時、判定アナウンスが入った。

 

『大鳳、2発被弾。46㎝砲弾により航空魚雷誘爆、さらに航空爆弾・航空燃料誘爆。轟沈判定』

 

「よっしゃあ!」

 

「スゲー。よう当てたなぁ、おい」

 

堺が拳を握り締め、神谷は単純にその練度の高さを称賛した。乗組員の練度の高さ、それを信じる指揮官。スペックとしても、艦の魂としても、この艦は最強の名に恥じない戦艦だ。

 

「初弾命中とはやるな!さすが大和!」

 

「提督、私を誰だと思っておいでですか?私はタウイタウイ最強の戦艦ですよ?」

 

『葛城、魚雷5本被弾。左舷傾斜40度、注排水ポンプ故障、浸水多量につき対処不能。轟沈判定』

 

どうやら『雪風』のスナイプ雷撃も決まったようだ

 

『演習終了。大鳳、雲龍、天城、葛城、いずれも轟沈又は航行不能につき、艦載機運用不能。一方で、大和は生存。以上により、本演習は大和陣営の勝利です』

 

それが、演習の終了を告げる合図となった。

 

 

「本日は1日お疲れ様でした。当泊地は如何でしたでしょうか?」

 

演習終了後、応接セットのソファーに腰かけた3人に堺がそう聞いてきた。まずは神谷が真っ先にその質問に答える。

 

「艦娘達はもちろん、1世紀以上前の兵器も見ることができたので、非常に面白かったです」

 

「神谷さんは軍事の専門家ですからね。当泊地は一昔前の兵器の見本市のようなものだったのではありませんか?」

 

「全くその通りです。ただ、ところどころ我が軍のそれにも匹敵する兵器があったのが興味深いですね。試験中だったあの対潜誘導魚雷とか、四三式弾とか」

 

「ああ、確かに」

 

「正直なところ、お宅の釧路さんを技術者としてうちにスカウトしたいくらいです」

 

「それをやられると我々が生き残れなくなるので、さすがにご勘弁願います」

 

流石に釧路のスカウトはダメらしい。ガチトーンで断ってきた。まあ予想通りではあるし、別に何が何でも手に入れるつもりもないので問題はない。惜しいのは惜しいが。

 

「私は艦娘と会えてとても楽しかったですよ。技術の進む先も見えましたし、とても有意義でした」

 

「一国の総理にそこまで言っていただけるとは、光栄の至りです」

 

「いや、私にとっても驚愕するものが少なからずありましたからね。特にあの波動治療装置、あれを導入すれば我が国の医療が大きく進歩することは間違いないでしょう。あれの導入を見送らざるを得ないのが残念です」

 

「あんなのが導入された瞬間、貴国の医師や看護師は軒並みお役御免になってしまいますからね。外交に大きな悪影響が出そうだったので、申し訳ありませんがやむを得ませんでした」

 

だが、別に「作らないでください」とは言われてない。今後の研究の道標代わりにはなるので、こっちで勝手に作ってしまえば問題はない。医療関係者のお役御免問題は、その時にでも考えれば良い。

 

「普段ゲームの中でしか見られない艦娘たちと触れ合えたことは、本当に楽しい限りでした。次はプライベートで来たいですね、良い海水浴場もあるようですし」

 

「ほう、それはそれは」

 

その時、一色と神谷が川山の肩を掴んだ。ガッシリと、逃げられないように。2人の顔は悪い顔が浮かんでいる。

 

「慎太郎」

 

「な、何だ健太郎?」

 

「そのプライベート旅行、俺らも連れてけ」

 

「は!?」

 

「でなきゃ、嫁にあの件通報だ。感じたんだろう?背中に、アイオワのアレを」

 

神谷が叩き込んだ爆弾に、川山の顔が一気に青くなった。それこそアニメでしか見れないであろう位に見事なものである。

 

「ちょ、まっ!?あれ通報する気かよ!?」

 

「さあ、どうする?」

 

「喜んでお前らも連れていきます。だから通報しないでくださいお願いします!通報なんかされたら家庭内戦争になる!俺死んじゃう!」

 

必死に懇願する川山。それを見てニヤニヤ笑っている一色に、堺が尋ねた。

 

「あの川山さんがここまで狼狽するとは、どうしたんです?」

 

「実は、川山の嫁が動画配信とかやっておりまして。しかも彼女のチャンネルは、登録者数ウン百万の有名チャンネルなんです」

 

「あー.......そりゃ通報されたらおしまいだ。格好のスキャンダルとして大炎上待った無しでしょうね」

 

実際にどうなるかと言うと、最悪の場合、ファンが暴動を起こしネットは大炎上する。 堺の考えた通りである。

 

「皆様にはたいへんお喜びいただけたようで、私としても何よりです。

そこで、そんなあなた方に重大なお知らせです」

 

「ほう、何でしょうか?」

 

「今日の午後に、艦娘たちがどんな訓練をしているかを見学いただいた訳ですが、訓練の種類は他にもあるんですよ。例えば体育訓練、これは普通に学生が体育の時間にやるようなものですね。あるいは座学などもあります。

そして……それらの訓練科目の中に、あるんですよ。そう、『水泳訓練』が!」

 

堺が放った『水泳訓練』という単語に、神谷がすごい勢いで食いついた。

 

「マジですか!?」

 

「マジです」

 

「Fooooooo!」

 

水泳訓練ということはつまり、艦娘の水着姿を見られるわけで……後はお察しである。当然ながら、一色も川山も興奮状態である。

.......あ、もしもし三英傑の嫁達?うん、そう。今すぐタウイタウイ泊地に行くと良いよ。

 

「水泳訓練、ってことは!」

 

「どっちだ!?ゴーヤのいう『提督指定』か、それとも限定グラか!?」

 

いつもは3人の内、誰かがツッコミ役として必ず残る。だが今回は全員フルマックスで興奮して、ツッコミ役不在の為、収拾がつかないのだ。

 

「どっちになるかは運次第ですね。それと川山さん、興奮されてるところすみませんが」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「貴国の観光客が来るようになってからというもの、うちの子たちの間でも海外旅行の希望が起こりまして。そこでうちの子たちに、貴国のパスポートの積極的発行をお願いしたいのですが.......」

 

「全力で善処します!!」

 

「何なら法令捻じ曲げて、パスポート無しにしてやります!!」

 

「その計画を邪魔する奴は、全員血祭りに上げてやる!!存分にやろう、というかやれ!!!!」

 

一切のためらいもなく川山はものすごく良い笑顔で言い切り、一色はガチの顔で言いのけて、神谷に至っては暗い笑みを浮かべている。思ってた数段上のリアクションに、逆に堺の方が気圧されてしまう。

 

「お、おう、よろしくお願いします」

 

こうして三英傑のタウイタウイ訪問が終わった。

ちなみに泊地司令部を出る時、4人は気付いた。出入口付近の掲示板に、『青葉新報 号外』と書かれた大きな紙がべたりと貼り付けてある。そこには、大日本皇国主催の観艦式に招かれたことが書かれていた。

 

「アイツ仕事早すぎんだろ.......」

 

「なぁ、青葉借りれたら、政敵のスキャンダル持ってこれるんじゃね?」

 

「という訳で堺さん、青葉さんを半年くらい借りても良いですか?」

 

「ダメです」

 

神谷の提案した青葉を借りて政敵のスキャンダル握ろう計画は、一色の健闘虚しく不発に終わった。3人は『延空』に乗り込み、タウイタウイ泊地を後にする。

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