2ヶ月後 二国合同特別大演習観艦式当日 横須賀
「あー、いよいよ当日か」
「長かった.......マジで長かった.......」
「浩三、死にかけてたもんな」
タウイタウイ泊地から帰還してから、早2ヶ月。この2ヶ月間、観艦式に向けての会談が幾度となく繰り返された。タウイタウイには皇国の担当官が向かい、逆に皇国には艦娘がやって来た。撮影班がタウイタウイに向かって観艦式の宣伝PVを作る為の撮影も行われたし、例によって神谷が精神崩壊したりしてした。
だがそんな努力の成果として、この観艦式はこれまでに無い物凄い規模となった。通常の観艦式は艦艇の見学があったり、市内行進や音楽隊による演奏がある。後は出店も出る。だが今回、やる事自体はいつも通りなのだがタウイタウイ泊地全面協力の結果、観艦式とは思えない大規模な物になったのである。例えば艦娘のライブがあったり、出店も艦娘達の物があったりとオタクが泣いて喜ぶ祭典になったのだ。
「三英傑の皆さん、お待たせしました」
そして今からは、開会式前の会場の最終確認、という名目で天皇陛下の散策が行われる。参加者は天皇陛下、三英傑&向上、そして堺である。
一行は開会式が行われるステージを抜けて、出店のある通りへと入っていく。既に各出店は仕込みに入っており、いい匂いも立ち込めている。
「ほう、あれは面白そうな店だ」
「『甘味くじ』ですか。って、これうちの子たちの店じゃないか.......」
タウイタウイ側の出店の1つ『甘味くじ』である。1回500円でガラガラくじを回し、出た玉の色に応じて景品として艦娘手作りのスイーツが当たる、という代物らしい。看板では「外れ無し」を謳っている。
そして景品は、こんな感じ
・Commandant Testeお手製マカロン12個セット
・Warspite秘伝のレシピ アップルパイ1枚
・「不死鳥」のように昔からあるパンだよ バランカ5個セット
・Italia手作り マリトッツォ1個
・Iowaのバニラアイス1個(バケツサイズ)
・Graf Zeppelinの熟練技が光る! バウムクーヘン1個
・艦娘たちにも大人気 間宮の羊羮1本
普通にどれも美味そう、というか艦これユーザーからしてみれば全部制覇したい代物である。
「いらっしゃいませー…あっ、しれぇ!」
店番をしていた雪風が、堺に気付いて手を振る。まるで近所の常連客のおじさんと、幼い看板娘である。
「おう雪風。もうやり始めてんのか?」
「はい!1つ引いていきますか?」
「では私もやらせてもらおう」
「おい浩三、どうする?せっかくだしやってくか?」
「それじゃそうしようかな」
なんか引く雰囲気になったので、全員で1回ずつ回す事にした。まずは天皇陛下。出た玉は金色である。つまり、いきなり当たり引いたのだ。
「おめでとうございます!J賞、間宮の羊羮1本プレゼントです!」
因みに天皇陛下、羊羹は大好物なので狙ってた物が羊羹だったりする。
「陛下がいきなり当てた?」
「よし、そうとなれば俺も!」
意気込んでくじマシンに手をかけた神谷。玉は白。当たったのは、アイオワのバニラアイスである。
「お待たせー。A賞の、アイオワさんのバニラアイスだよー」
そう言いながら時津風が出してきたのは、バケツサイズのアイスクリームだった。
「ゑ.......?」
一瞬、大元のアイスを取り出したのかと思った。このバケツアイスから、あのでかいスプーンみたいなので掬って渡すのかと。だがどうやら、これが1人前らしい。
因みにバケツは、あの高速修復剤のバケツである。しっかり「修復」と大きく書かれている。
「ハハハ、おい浩三、何固まってんだよ」
「いや、これどうやって食べろと.......?」
「そのまま食えばいいだろ」
台の前で「これ絶対、糖尿なるぞ」とか何とかボソボソ言ってる神谷を押し除けて、今度は一色が回す。出たのは黒。
「こちらD賞の賞品、グラーフさんのバウムクーヘンよ!」
ケーキ屋でよく見かけるような白い箱が天津風から手渡された。一部がセロハンのような透明な素材でできており、そこから木の年輪に似た美しい丸い模様が見える。
「バウムクーヘンを自作か!?いい腕してるな」
「ん、何か知ってんのか慎太郎?」
「そりゃあ、こちとらヨーロッパにはよく行ってたんだからな。バウムクーヘンは、焼こうとすると特殊な構造の焼き窯が必要になるし、綺麗に焼き上げるには熟練の技が要るんだ。こんなに綺麗な焼き目となると、これはかなりの腕だぜ」
バウムクーヘンは筒状の物体に、上から生地を掛けながら焼いて作る。一応作ろうと思えば家でも作れるらしいし、キャンプなんかで作るという人もいるが、お店の様に綺麗には作れない。だがこのバウムクーヘン、川山曰く「ヨーロッパの一流店並み」の出来栄えらしい。
「そんじゃ、次は俺か。どれどれ…」
次は川山。出てきたのは青。
「こちら、B賞の賞品。ウォースパイトさんのアップルパイよ」
「おっ、ありがとう。こいつは当たりだな」
だが神谷、ここで何故かニヤニヤしながら川山の肩を叩いた。その笑みは、完全に人の不幸を嘲笑う時のソレである。
「おいおい慎太郎、そんなメニューで大丈夫か?イギリスのパイなんだろ?」
「何だ浩三、スターゲイジーパイでも連想してんのか?イギリスのパイでも、アップルパイは当たりだぞ、旨いんだ。何なら、アップルパイはアメリカのお菓子ってイメージが強いけど、元はイギリスのお菓子なんだからな」
どうやらハズレではなく、当たり枠だったらしい。横で「なんでスターゲイジーパイとかハギスとか鰻のゼリー寄せにしねぇんだよ」とか言ってる神谷を尻目に、今度は向上が引く。出たのは緑。
「I賞ですね.......。お待たせしました、イタリアさんお手製のマリトッツォです!」
「ほう、マリトッツォか。本場のイタリアじゃ、これの上に指輪を乗せてプロポーズしたりするらしいから、やってみたらどうだ?お前確か付き合ってる人いただろ?」
「え、本当ですか川山さん?」
「ああ、マジだ」
「それじゃ、ちょっと頑張ってみようかな」
最後に堺がマシンの前に立った。何か念じてから、ガラガラくじを回す堺。出てきた玉の色は白。と、いうことは。
「しれぇ、頑張って食べてくださいね!」
雪風が満面の笑みと共に差し出した高速修復材のバケツを前に、堺はしばし立ち尽くす羽目になった。そんな彼の肩に、神谷がポンと手を置いて、いい笑顔で一言。
「Welcome to this side.」
「Noooooooooooo!!!!」
てれててー、てー、ててーて、ててーて……。
なんか何処ぞのスターウォーズやってる2人置いといて、幾つか出店を周る。そうこうしていると開会の時間になってきたので、一行は貴賓席へと戻った。
安定の堅苦しい挨拶を終えて、ここからは基本的に自由時間である。さっきまで開会式が行われていたステージは、すぐにコンサートステージに早変わり。那珂ちゃんがトップバッターとして、持ち曲の『恋の2-4-11』を歌う。
「それじゃあみんな、いっくよー☆『恋の2-4-11』!」
次の瞬間、
その裏で神谷と堺を筆頭とした、観艦式の主催陣の中でも実際に艦艇を動かす人間が集まって色々最終チェックを行なっていた。流石にこっちは映しても面白く無いので、まずは彼女達の様子をお届けしよう。
「久しぶりねぇ〜。こうやって姉妹水入らずで過ごすのは」
「いつもは浩くんもいるもんね」
「少し淋しいですね。浩三さん、今は会議中なのでしょう?」
「浩三は艦隊を動かす立場だからな。仕方あるまい」
「でも、どうやら朝に回ってたみたいよ?何かデカい景品持って帰ってきてたもの」
そう言いながら回るのは、神谷の妻達。『白亜のワルキューレ』こと、エルフ五等分の花嫁である。後から白亜衆の訓練展示があるのだが、今は神谷の命令で、兵士全員出店を回っている。
というのも「どうせいつもと同じ内容でやるから、別に待機しなくていい。というか寧ろ、こんな事滅多にないから楽しんでこい!!」という命令を出してくれたので、一応の警備要員を残して兵士達は羽を伸ばしている。
「あ、なんかあるよ!」
「甘味くじ?」
「どんなのかしらね?」
「.......どうやらガラガラを引いて、出てきた玉の色で商品が貰えるみたいだな」
「しかもハズレ無しですよこれ!」
エルフ五等分の花嫁、まずは甘味くじに挑戦である。まあまあ並んでるいるが、15分程で順番が来た。
「まずは私ね!」
ヘルミーナが引いたのは赤。赤は何かと言うと…
「はい!F賞の賞品、コマンダン・テストお手製マカロン12個セットです!」
そう言いながら雪風が、ケーキ屋の箱の様な物を渡してきた。中を確認するとカラフルなマカロンが入っており、インスタにあげれば映える事間違い無しである。
「次は私だな」
次はアナスタシア。出てきた玉の色は青。
「はい。こちらB賞の賞品、ウォースパイトさんのアップルパイよ」
「アップルパイか。紅茶が欲しくなるな」
「次は私ですね」
次はミーシャ。出てきたのは白。という事は…
「よっと。A賞の、アイオワさんのバニラアイスだよー」
「で、デカ!」
この甘味くじのネタ枠、アイオワのバケツアイスである。
「うわぁ!食べがいがあります!!」
「え、これ食べれるの.......?」
「はい!」
「アンタの胃袋はどうなってんのよ.......」
エリスが呆れるのも無理はない。普通に常人が食べれば確実に腹を壊すし、何より一回で食べ切れる量ではない。だがミーシャ、食い意地が化け物レベルなので食べれるのだ。因みに、他の姉妹はまず轟沈するだろう。
「次は私だねー」
次はレイチェル。出てきたのは黄色。
「S賞だねー。はーい、「不死鳥」のように昔からあるパンだよ バランカ5個セットだよー」
時津風がドーナツの様に真ん中に穴が空いた、謎のパンの様なお菓子を持ってきた。これを見た瞬間、レイチェルは分かった。
「これ、スーシュカじゃん!」
レイチェルは良い感じに神谷のオタクが移りゲーム、アニメ、漫画とサブカル大好きっ子に進化した。このスーシュカはゴールデンカムイのロシア編で鯉登少尉殿が食べていたお菓子で、バランカをしっかり乾燥させた物がスーシュカなのである。その為、ここまで大興奮なのだ。
「最後は私ね」
最後はエリス。出てきたのは金。
「おめでとうございます!J賞、間宮の羊羹です!」
事実上の一等賞、間宮の羊羹である。タウイタウイ泊地でも大人気の間宮羊羹、その為このくじでも20本しか用意できてない激レア品なのだ。スイーツをゲットしたエルフ五等分の花嫁は、また別の出店へと繰り出した。
そして突然だが、実はこのイベント、外国からも客が来ている。勿論タウイタウイ泊地の艦娘とかではなく、普通の外国人観光客である。と、いう訳で、次はこの方の目線でこの観艦式の出店の模様をお届けしよう。
「おぉ!!艦娘だ、艦娘が動いている!!!!」
えー恐らく原作キャラで1番登場頻度の高い、現在本編では現地部隊と皇国のパイプ役をやっているムーの技術士官。そして神谷の盟友にして、皇国のサブカルオタク。マイラスである。
「うおぉぉ!!ライブもやるのか!!!!これは聞かなくては!!!!!!!」
知っての通りマイラスはパ皇との戦争で観戦武官として来日し、何だかんだでムーに艦これとアズールレーンを広げた男である。その為、軍人以外にも大日本皇国サブカルチャー振興審議会 特別客員顧問、艦隊これくしょんムー提督の会『紺碧会』 親衛総隊長、アズールレーン布教委員会 会長を務めている。平たく言うとサブカルチャーの布教に力を入れまくっていて、艦これとアズレンの布教には特に力を入れまくっている、という事である。
「いやー、神谷さんが情報くれて良かったぁ。やっぱり持つべき者は、オタクの同志だなぁ」
今回の観艦式の情報は、神谷がマイラスに電話で伝えたのである。本当は今日は会議があったのだが、権力と功績を使って無理矢理休みを捩じ込んで、皇国に来たのだ。それに今回はタウイタウイ側が兵器を展示してたりするので、それを山車に使って「ちょっと兵器の資料集めしてきます!」と言えば、上も何とも言えない。
「さてまずは.......。おぉ、艦娘のやるレストランがあるのか!これは行かなくては!!」
ライブの開始まで時間があるので、まずは少し早い昼食を取る事にした。向かったのは艦娘がレストランをやっている出店『レストラン タウイタウイ』である。
「いらっしゃいませー」
「ふぐぅ!」
出迎えてくれたのは何と鈴谷であった。しかも格好がブレザーではなく、しっかりメイドの格好をしていた。
「んー?お客さん、どうかしたの?」
「いや、何でもないです.......」
軽く血を吐き散らかすレベルで尊死しかけるが、大丈夫だ問題ない。
「こちらへどうぞ」
席に案内されると、メニューを渡された。メニューの方も艦これ、もしくは旧海軍に関係するメニューばかりであった。海軍カレーは勿論、竜田揚げ、イワシ団子、卵焼き、オムライスとコンソメスープのセット等々。見る人が見れば、一目で元ネタが分かるだろう。
「あ、すみませーん」
「はーい。ご注文は?」
今度は現在アニメでも大活躍中の矢矧が来た。尊死しかけるが、もう慣れた。尊死するのは織り込み済みである。
「この大和のオムライスセットと、龍田の竜田揚げください」
「はい。少々お待ちください」
暫くすると頼んでた物が来た。元ネタはお分かりだろうが、味も最高だった。オムライスは卵フワフワ、竜田揚げはサクサク、本当に美味しかった。
この後は展示されてる兵器群を申し訳程度に撮影し、甘味くじやったり、お土産買ったり、ライブで踊り狂ったりしてると、観艦式のメインイベントである艦隊行動演習が始まった。解説アナウンスは堺が担当しており、三英傑と天皇陛下は総旗艦である『日ノ本』の艦内で様子を見ていた。
「浩三くん、やはり君は見ただけで名前が分かるのかね?」
「流石に単艦の見分けは付きませんけど、少なくとも型式は分かりますよ。大和型とか吹雪型とか」
「俺は全く見分けつかんぞ」
「俺もだ」
神谷が解説を挟みながら、艦娘達による艦隊行動演習を見学していた。だが最後に、向こうはトンデモない兵器をぶっ込んできやがったのである。
『フライホイール、接続!点火ぁ!ヤマト発進!』
なんと海中から、あの宇宙戦艦ヤマトが出て来たのである。海を突き破って大空へ飛び立って行く。
「「「「ヤマトだぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」」
天皇陛下も三英傑も、同時に叫んだ。最後の最後にエグいのをぶっ込んで来たが、今度はこちらの番となる。なんか今から動かしても見た目負けする気しかしないが、もうそこは仕方がない。
因みに今回の観閲艦は『日ノ本』『熱田』『赤城』である。
「なんかまあ、見た目負け感凄いけど俺達もやるぞー」
第一受閲艦隊がやって来た。第一受閲艦隊には駆逐艦『神風』『旗風』『吹雪』『白露』『磯風』『北風』『早雲』『夕立』の駆逐隊がやって来た。
「あれは確か右のが神風型、左のが浦風型、で合っていたかな?」
「仰る通りで御座います。主力艦隊から1隻ずつ出してもらっております」
「こうやってみると、スッキリしてるよなぁ。今の.......駆逐艦?菊地艦?」
お約束、一色の名前間違い発生である。菊地って誰だと思うかもしれないが、特に意味はないしいつもの事なのでスルーする。
第二受閲艦隊には摩耶型8隻、続く第三受閲艦隊は突撃戦隊、第四受閲艦隊には潜水艦隊が通過していく。
「あれはたしか、前回の観艦式でも見た潜水艦だったね。確か空母機能があるとか」
「その通りで御座います。あの艦隊に所属する艦艇は全て、潜水艦でありながら潜水艦には似つかない兵器を搭載した艦艇。どの艦隊も先の戦争に於いて、類稀なる活躍をしております」
「その活躍って何だ?」
「あー、そういやお前ら知らんのか。前に話した海域封鎖作戦、アレを担当した艦隊があの潜水艦隊だ。神出鬼没の航空攻撃と砲撃。向こうの船乗りからすりゃ、地獄だっただろうよ」
グラ・バルカス帝国との戦争の際、潜水艦隊はその隠密性と攻撃能力を生かして、海域や沿岸部を封鎖する作戦を展開していた。輸送船だろうが戦艦含む主力艦隊だろうが、通過する艦艇は悉くが沈められる魔の海域。そんな地獄を作り出していたのである。
この頃になると、空に受閲航空隊もやって来た。まずはSH13海鳥とAS5海猫の編隊。その次はPUS3三式大艇、E3鷲目、P1泉州。更にF8震電II、F9心神、A9ストライク心神と言った戦闘機が続く。
「おぉ、あれは確か富嶽II。あんなにも大きいのだね」
「えぇ。特殊戦術打撃隊の航空機を除けば、富嶽IIこそが最も巨大な航空機ですからね。機関砲を多数搭載した重装甲の前には、普通の航空機では近付く事すら出来ません」
「その後ろの機体は何だね?」
「AC180迅雷。200mm砲を装備するガンシップです」
編隊は更に続く。特殊戦術打撃隊のA10彗星II、ADFシリーズ、そしてF8CZ震電IIタイプ・極。最後に特殊戦術打撃隊の空中母機『白鳳』、空中空母『白鮫』と支援プラットフォーム『黒鮫』、機動空中要塞『鳳凰』が続いた。
海上では空母と揚陸艦で構成される第五受閲艦隊が続き、戦艦で構成される第六受閲艦隊も続く。最後に熱田型と赤城型で構成される第七受閲艦隊が続き、次は訓練展示に入る。ミサイル撃ったり、一斉回頭したり、主砲撃ったり、艦載機発艦させたりしている。そんな時、天皇陛下は神谷にこんな事を頼んできた。
「なぁ神谷くん」
「何でしょう、陛下」
「宇宙戦艦ヤマトって、乗れないかなぁ?」
天皇を除く、艦橋にいた全員の時が止まった。『日ノ本』の艦橋要員、三英傑、天皇の随行員、全員である。
「.......ちょ、ちょっとタイム!!」
一色がいち早く現実に戻り、三英傑を集めて緊急会議を開く。
「(おーい、これできるの!?)」
「(軍に最も疎い俺に聞くか!?えぇ!軍事のプロさんよ!!)」
「(全く、陛下は子供心忘れてないお方なのは知ってるが、今だけは捨てて欲しかった!)」
まさかの発言により、三英傑パニックである。取り敢えず話し合いの末、ダメ元で通信を送ってみる事にした。別にこれで断られても、天皇陛下が残念がるだけなので減るものは無い。向こうも天皇陛下の頼みと言われれば、責める事は出来ないから外交的にも問題なし。という訳で送ってみたのだが…
「あー、艦長。『貴軍からの要請を受諾する』だそうです.......」
「申し訳ありません陛下、やはり無理だったそうで……え、嘘ぉ!?」
「マジかよ」
「堺さん、マジでウチの陛下がすみません」
まさかのOKであった。だが生憎と神谷はこの後、神谷戦闘団による訓練展示がある。一緒には行けない。なので天皇陛下とその随行員、そして一色と川山に頼んで行ってもらう事にした。一団を見送ると、神谷はそのまま『日ノ本』の後部格納庫に走る。
「あー、ヤマト乗りてー」
「到着早々それですか?お気持ちわかりますけど今は訓練展示に集中してください。というか、良いじゃないですかそっちは!乗れるんだから!私含め、他は乗れないんですからね!?」
「いやー、三英傑やってて良かった!」
「取り敢えず、背中に気を付けましょうか。手元狂って、そっちに510mm砲弾ぶっ放させるかもしれませんよ」
「それ模擬弾でもシャレにならんから、マジで普通にやめてくれ」
模擬弾だとしても、510mm砲弾のエネルギーはシャレにならない。普通に死体が跡形もなく消し飛んでしまう。
「そんじゃま、巫山戯るのはこの辺りで終いにして最終ブリーフィングを始めるか」
今回の演習の想定は単純明快。敵陣地の占領である。まず神谷戦闘団が先に地上で動き、演習の中盤で白亜衆と赤衣鉄砲隊がヘリボーンで降下。陣地に突撃し、占領する。因みに極帝も上空支援として出るが、神谷は魔法は使わない事になっている。
「…以上が流れとなります」
「いつも通りだな。そんじゃ、精々大暴れするとしようか!」
同時刻 仮設訓練場
『ただいまより、神谷戦闘団による戦闘訓練を開始致します。大きな音にご注意ください。
屋上で赤い旗を振っている隊員のいる建物をご覧ください。これより屋上のレンジャー隊員が敵の装備、兵力等を正確に把握する為、敵の陣地後方に侵入します』
屋上のレンジャー隊員が素早くグラップリングフックを引っ掛け、そのまま素早く下へと降下する。一応設定では後方にいるのだが、彼らの仕事はこれで終わりなので裏に退散して貰う。
『こちらレンジャー、敵兵力は歩兵60、戦車2、装甲車5、軽装甲車4、榴弾砲5、機関銃8』
『団長、了解。そのまま敵の動きを監視せよ』
続いて敵陣地の反対方向から偵察バイクが侵入し、ジャンプとドリフトとウィリーという簡単なアクロバットをキメて、そのままバイクを倒して43式小銃を撃って退場する。訓練展示ではお決まりのパターンである。
『こちら先遣隊。敵、防御陣地は強固!このまま突撃した場合、多大なる被害が出ると思われる』
『こちら団長、それなら破壊すれば問題なし。砲兵隊、前へ!敵を拠点ごとぶち抜け!!』
『砲兵隊、了解!拠点ごと滅します!!』
よくある訓練展示の無線の会話はカチカチしてるが、こと神谷戦闘団に限っては普通にいつもの様に話す。
そんな訳で今度は51式510mm自走砲とと44式230mm自走砲が出て来て、そのまま砲撃位置について素早く準備を整える。
『これより、自走砲による空砲射撃が行われます。大きな音にご注意ください』
このアナウンスの直後、轟音が鳴る。幾ら空砲と言えど、510mm砲の砲撃音は馬鹿でかい。
『こちらレンジャー!敵歩兵部隊は後退を開始!!』
『団長了解!機甲部隊、更に砲撃を加えよ!』
次は46式戦車と34式戦車改が現れた。隊列を組んで、砲撃を加えて行く。
ズドォン!ズドォン!
こちらも51式程では無いにしろ、それでもやはり爆音が鳴り響く。
『団長より歩兵部隊!この機を逃さず、突撃を開始せよ!!エイティシックスはこれを援護し、敵陣地の占領にかかれ!機甲部隊、砲兵隊は効力射を持って援護せよ!!』
次の瞬間、会場の周囲から歩兵の一団がジェットパックを使って空に舞い上がる。
『会場上空と海側をご覧下さい。これより歩兵部隊が空中と陸上に分かれて、敵陣地に突撃を開始致します』
一方の陸上では装甲歩兵を先頭に、敵陣地へと攻め込んでいく。更に後方からXMLT1土蜘蛛が飛び出し、その機動性を生かしてアクロバティックに動く。ただ、悪く言えば踊り狂う巨大な白いゴッキーである。
『こちら団長、これより敵陣地上空に降下する。合わせろ!!』
更にここで敵陣地の上空に、真っ白な突空と真っ黒で派手な突空が現れた。白亜衆の乗る機体である。
「降下開始!!」
『敵陣地上空をご覧下さい。AVC1突空が飛来しました。中から神谷浩三元帥が白亜衆と、白亜のワルキューレを。向上六郎大佐が赤衣鉄砲隊をそれぞれ率いて、敵陣地に降下していきます』
「そぉーら、極帝!出番だぞ!!」
「心得た、我が友よ!!」
ここに加えて極帝も登場し、会場は大興奮である。因みに極帝には流石に元の大きさになられると、色々不味いので大体20m位のワイバーンよりちょっと大きい位のサイズになって貰っている。
『会場上空に飛来しているのは、神谷団長が気合いで手懐けた竜神皇帝『極帝』です。この世の竜の王であり、神谷戦闘団の頼れる相棒、だそうです』
「人間共よ、我を見よ!!!!」
因みに極帝、何気に初お披露目であったりする。一応、その存在は何度かリークしてあるのだが、実際にその姿を公に見せるのは今回が初めてなのだ。そんな理由もあって、極帝さんテンションMAXであり炎を空に向かって吐くというアドリブまで加えやがった。
「なぁ!?!?」
「長官、これ後で始末書物ですよ.......」
「俺、長官だから書かねぇよ。ってか誰に出す訳?別に良いだろ!それにほら、国民の皆様も大喜びだし」
なんか職権濫用してるが、まあコイツだから仕方ない。それに別に被害も出てないし、謝る相手も居ないのだ。更に始末書を出す相手もいないのだから、問題にならないだろう。多分。
「おーし、それじゃお前達。よろしく」
最後に5人が魔法とか、武器の能力を見せて訓練展示は大盛況で終わった。神谷は突空に乗り込んで、そのままヤマトへと飛んだ。そして着陸させず、突空から艦上に直接飛び降りてヤマトに乗り込んだ。
「うおぉ!リアル・ショックカノン!!」
「やはり、飛び降りて来ましたか」
「大和さん!あー、今はヤマトさんとお呼びした方がいいのか?」
どうやらこういう風に来るのは事前に分かってたみたいで、ヤマトが既に後部甲板にて待っていてくれていた。しかも彼女の衣装はカラーリングこそ古代と同じ赤と白だが、デザイン自体は旧作の森雪の着てるスーツであるため、見た目がもう大変なことになっている。
(ちょちょちょその格好はイカンでしょ!?俺を心停止させる気かよ!?)
思わず死にかけた神谷だが、何とか気を取り直して彼女についていく。着いたところは、あの第一艦橋だった。
「大日本皇国の神谷浩三様が到着されました」
「了解、お疲れ様」
「うわぁヤベぇぇぇぇ!!本物の第一艦橋だぁぁぁぁ!!」
神谷、エレベーターを降りた時点でもうテンションがバグっている。艦橋をぐるりと見回し、天皇陛下の御前にも関わらずさらに興奮して叫ぶ。
「こ、これがマジの第一艦橋!こっちは相原と南部の席、これは徳川機関長の席、向こうが雪のレーダー席、そっちは艦長席!!これ本物だよな!?夢じゃねーよな!?」
「おーい浩三。陛下が目の前にいるんだが.......」
「諦めろ慎太郎、聴こえてねーよ」
川山と一色の会話すら耳に入らないらしい。オタクモード入った時の神谷は、そのフィジカルも合わさって暴走超特急化するので仕方ない。
「神谷長官、そろそろ現実にお戻りください」
「ああ堺司令って、陛下!?失礼しました!!」
現実世界にやっと帰還した神谷。と、ここである事を思い付いた。堺へと向き直り、何やら企んだ笑顔で話し出す。
「ああそうだ堺司令。1つ、話というかお願いがあるのですが.......」
「奇遇ですね、私からも神谷長官に1つ申し上げたき儀がございます」
どうやら堺も、話があるらしい。
「この後の波動砲発射パフォーマンス、ヤマトにも参加していただきたい!」
「この後の波動砲発射パフォーマンス、本艦も参加させたいのですが!」
堺と神谷はお互いに目を丸くした。その直後、第一艦橋内に笑い声が満ちた。堺と神谷は同時に噴き出し、川山は肩を震わせながら必死で口を押さえ、一色は腹を抱えて笑い転げている。ヤマトと天皇、それに他の随員までもが揃って苦笑していた。
「ハハッ。お見通しでしたか堺司令」
「ククク、そりゃあ分かりますって。神谷長官のオタクぶりを見たら、それくらいは想像できますよ」
ひとしきり笑った後、堺と神谷は意識を切り替えて打ち合わせを始めた。
「大日本皇国の軍艦に関しては、当初の予定通りに並んでいただきたい。本艦は空中に位置取りますので」
「了解。では発射命令は我が軍のやり方で良いですか?」
「そうしましょう、そっちの方が混乱が少ないです。
それから神谷長官に1つお願いがあります」
「何でしょう?」
「合図は私がやりますので.......神谷長官には、そこの戦闘指揮席に座って波動砲のトリガーを引いていただきたいのです」
一瞬、神谷の時は止まった。数秒後、思考が追い付き意味を理解した。つまり、波動砲のトリガーを引けちゃうのである。
「え.......?え!?つまり私に、ヤマトの波動砲を撃ってほしいと!?」
「そうです。よろしいでs」
「よっしゃやらせろくださいお願いします!!!」
「決断早いですねぇ、了解です」
目をキラキラさせながら食い気味に叫ぶ神谷と、苦笑する堺。ともかくこれで話は決まった。
「それじゃ、そろそろ準備にかかりましょうか。ヤマトは飛ぶ必要がありますし、今から準備すれば良い時間になるでしょう」
「承知しました。こちらは貴国の軍に合わせますので、全体的な指示をお願いします」
観艦式の最後を締めくくるイベント、それが大日本皇国海軍の主力艦による波動砲の一斉発射パフォーマンスである。元々は堺が「せっかくなので1つ派手なものを見てみたいです。国威発揚にもなるでしょうし」と注文したのを受けて、神谷が企画したものだった。
これに急遽、宇宙戦艦ヤマトを加えようというのである。神谷としては、この機会を逃すなど絶対にあり得なかった。せっかく波動砲" を名乗る砲が一堂に介するのだ、本家本元が参加しないなんてあり得ない、というわけである。
『それではこれより、本日の『軍観閲式』最後のイベント、波動砲一斉発射パフォーマンスの準備を行います。参加する軍艦は、我が皇国海軍が誇る艦隊旗艦級の戦艦クラスと空母クラス、それに我が皇国最強の戦艦たる『日ノ本』。そして、日本国のゲストから特別参加いただく『大和改二一九九』こと『宇宙戦艦ヤマト』です。我が海軍が誇る主力艦たちと、波動砲の本家本元たるヤマト、そのド迫力のコラボレーションをお楽しみください!』
神谷が会場にアナウンスを入れる傍ら、第一艦橋では号令が飛び交う。
「波動エンジン、エネルギー注入準備!微速前進0.5!」
「微速前進0.5、ようそろ!」
因みに今回、波動砲を撃つ皇国海軍の艦艇は総旗艦たる『日ノ本』を筆頭に熱田型から『熱田』『天之御影』『大山祇』『吉備津彦』。赤城型から『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』。大和型から『大和』『武蔵』『長門』『陸奥』の合計13隻が参加する。
「補助エンジン、第二戦速から第三戦速へ!波動エンジン、シリンダーへの閉鎖弁オープン!」
「波動エンジン点火10秒前!」
既に天皇は艦長席に案内されており、川山は索敵席、つまり森雪の席に。一色は太田の座る航法席に座っていた。随員たちはそれぞれ南部の砲術席と真田の応急処置席に案内されている。
ちなみに機関席には最初から機関長妖精が張り付いている。そりゃあそうだろう、この席ばかりは専門家が必要だ。
「神谷長官、そちらにどうぞ!」
「感謝します堺司令!」
神谷が案内されたのは、よりにもよって戦闘指揮席、つまり古代の席だった。
「5、4、3、2、1、0!フライホイール接続、点火!」
ヤマトの号令の直後、艦後方からジェットエンジンの咆哮を数十倍に大きくしたような轟音が聴こえてきた。そして、待望の瞬間が来る。
「ヤマト発進!」
「ヤマト、発進します!」
堺の号令をヤマトが復唱し、操縦捍をぐいっと引いた。離陸するジェット機の中にいるような感覚が、全員を襲う。一気に加速した『ヤマト』は、やがてふわりと宙に浮き上がった。水平線が視界の下方へと吹っ飛び、夕焼け色の空が正面に来る。
(((うおぉぉぉぉ生の「ヤマト発進!」きたぁぁぁぁぁ!!!)))
そして言うまでもなく、三英傑は全員テンションマックス状態である。
「右15度転換!」
「右、15度転換」
空に飛び上がった『ヤマト』は、少し面舵を切って右へと回頭していく。この時神谷は、この台詞をどこで聴いたか思い出した。聞き覚えのある台詞だったのである。
(やってくれるじゃねえか堺司令! 旧作1作目とその劇場版から持ってきやがったな!)
どうやら今回のヤマトは2199や2202の『BBY01宇宙戦艦ヤマト』ではなく、旧作の『宇宙戦艦ヤマト』らしい。
「マルチ隊形を取れ!」
「了解!」
ゆっくりと針路を変更し『ヤマト』は横一列に並んだ、大日本皇国の主力艦たちの真上に陣取る。
(マルチ隊形って懐かしすぎんだろ! 「さらば」まで織り混ぜてきたのかよ、俺の涙腺が壊れるじゃねーか!)
神谷、さっきから興奮しっぱなしである。その神谷に、通信席からヘッドホン型通信機を持ってきた堺が声をかけた。
「神谷長官、こちらは配置に着きました。既に艦隊との無線は繋いでありますので、指示をお願いします」
「ああ、分かった!」
やっと我に返った神谷は、1つ息を吐くと命令を下した。流石にここからは、いつもの冷静な指揮官にならなくてはならない。
「ただいまより、波動砲の一斉発射パフォーマンスを行う!全艦、波動砲発射用意!」
この号令が出た時には、既に会場の方の準備は粗方済んでいる。このパフォーマンスを見ようとしている観客たちに、特製の黒いゴーグルが配布されていたのだ。
波動砲発射時の閃光は、普通に失明しかねないほど強烈なものである。それを軽減するため、ゴーグルの配布が行われたのだ。
「神谷長官、すみませんが一度席をお立ちください。波動砲の照準を定めますので」
「ん、分かった」
堺に言われて、神谷は素直に席を譲った。そういえば波動砲発射時は発射トリガーを操縦捍にしていたな、と思い出す。
「再起動時に備えて、艦内電源を非常用に切り替え!」
「ヤマト、
「了解。
「
堺、かなりバタバタである。せり上がってきた拳銃形の波動砲発射トリガーを握りながら、さらに命令を出している。
「波動砲への回路開け!」
「回路開きます。非常弁全閉鎖、強制注入機作動!」
「強制注入機、作動を確認。安全装置解除。圧力、発射点へ上昇中、あとゼロ、2.......最終セーフティ解除!圧力、限界へ!」
発射フェイズが進行するに従って、艦橋には独特の音が響き始める。そう、波動砲にエネルギーが充填されていく時の、階段を上がるようにだんだん高くなっていくあの音である。
「エネルギー充填80%!」
「ターゲットスコープ、オープン!電影クロスゲージ、明度20!」
戦闘指揮席に、戦闘機の照準器を思わせるヘッドアップディスプレイが飛び出してくる。
「軸線に乗った!照準固定!」
堺が撃鉄を起こす。後は引き金を引けば、波動砲は発射される。すると堺は席を立った。
「神谷長官、どうぞ」
「ああ.......、感謝する!」
堺に代わって神谷が席についた。そのタイミングでヤマトが号令を下す。
「波動砲発射用意!総員、対ショック、対閃光防御!」
一瞬にして艦橋の窓に遮光フィルターが貼られた。同時に、艦橋内にいた面々は専用の黒いゴーグルを着用し始める。
「陛下、こちらを装着なさってください。これ以降、私が良いと言うまで外さないよう、くれぐれもお願いいたします」
「分かりました」
第一艦橋の後方では、堺が天皇と一色、川山にゴーグルを配布している。
「長官、失礼します」
「ありがとう」
戦闘指揮席に座り、発射トリガーに手をかけている神谷には、ヤマトが手ずからゴーグルを嵌めていた。
「エネルギー充填120%!」
その報告を受け、さらに艦橋内の全員がゴーグルを装着したことを確認したヤマトは、堺を振り返って報告した。
「波動砲、発射準備完了!」
「了解」
いつの間にやら通信席にスタンバイしていた堺が、無線機のスイッチを入れる。
「大日本皇国軍、戦艦『日ノ本』へ。こちらヤマト、そちらの準備はどうですか?」
『こちら宗谷です。大日本皇国軍代表全艦、波動砲発射準備完了しました。いつでもどうぞ』
「了解!こちらも神谷長官がトリガーを握りました。これよりカウントダウンに入ります!」
ついにこの刻が来た。高鳴る胸を抑えながら、神谷はトリガーを。堺は通信機を力強く握りしめて、声を張り上げる。
「最終カウントダウン!全艦、波動砲発射10秒前!」
合図は大日本皇国軍式に行うことになっている。これは混乱を避け、一斉発射を確実に決めるためだ。
「9!8!7!6!5!」
物音1つ立てるのも憚られるような重圧、一際甲高くなった波動エネルギーの充填音。
「4!3!2!1!」
「「「『発射!』」」」
無線機の向こうからその号令が届くと同時に、堺、ヤマト、神谷の号令が重なった。そしてカチッと音を立て、神谷がトリガーを引く。
次の瞬間、ピカッ! と青白い閃光が激しく光った。超新星爆発が目の前で起きたかと錯覚するほどの光量だ。そして、
ズドオォォォォォォン!!!!
10条以上もの青い光のビームが、水平線めがけて飛んでいった。夕陽の赤に波動砲の青が非常に映える。
素晴らしい見映えに、観客席からはこれまでで一番の歓声が上がる。そして盛況のうちに、軍観閲式は終幕を迎えた。
「あ、そうだ、せっかくの機会ですから記念撮影でもやりませんか? もちろん、堺司令とヤマトさんも交えて」
「私たちは構いませんが彼女が艤装から離れられないので、撮影するとしたらとりあえずこの艦の上ですね」
「なら、前部甲板にしましょうか。主砲と艦橋をバックにする形で」
ということで、軍観閲式が終わった直後『ヤマト』に乗り込んでいた面々は写真撮影することになった。ここで神谷が取り出したのが何と
「おまっ!?いつの間にそれを!」
「へへーん、ゲットしたぜ。向上をちょっとパシらせちまったけど」
「何やってんだよ浩三.......」
あの丸められるスマホである。軍観閲式の準備の時に、釧路にねだってゲットしたのだ。川山や一色ですら手に入れていないというのに、ある意味ズルである。しかも、ちゃんと基本的なアプリ類も入っているため、皇国内で普通に使える代物になっている。
「まま、固いことは言わずに.......」
「よし、後でコイツ締めよう」
「名案だな、乗った。陛下にすら献上してない物を勝手に持つとかねーしな」
「ちょ、待てお前ら!?」
さすがの神谷も、天皇陛下の名を出されては慌てるしかない。
その時突然、神谷、いや、その場にいた全員の背筋に凄まじいプレッシャーが走った。
「その辺にした方がよろしいのではないでしょうか?陛下の御前ですよ?」
そのプレッシャーを発しているのは、他ならぬ"ヤマト"である。何度も絶体絶命の危機を乗り越え、地球を救い続けてきただけあって、彼女のプレッシャーは半端ではなかった。というかぶっちゃけ、後ろに阿修羅と不動明王が見えた。
「「「アッハイ」」」
一瞬で大人しくなる三英傑。流石にバックに阿修羅と不動明王が居ては、逆らった瞬間死ぬ。
「分かればよろしいです。さあ、記念撮影といきましょうか」
ということで予定通り『ヤマト』の第一主砲の前で撮影となった。カメラは天皇の随員が持っていた一眼レフと、神谷のスマホである。随員の方に撮影してもらう形となった。
「それではいきますよ…はい!」
何度か同じ動作を繰り返し、2台合わせて10枚近い写真が撮られた。それが終わると、天皇は随員と共に退艦し、川山と一色もそれについていった。ヤマトも艦内の報告を聴きに行ったため、残ったのは神谷と堺である。『ヤマト』の艦橋を見上げながら、先に神谷が口を開いた。
「堺司令、改めてご参加いただきありがとうございました。艦娘たちと交流できただけではなく、まさかヤマトに乗艦して波動砲の発射までできるとは、思ってもみませんでした。本当に、感謝の言葉が見つからないくらい深く感謝しております」
「それはこちらの台詞ですよ神谷長官。これほどのビッグイベント、それも貴国の君主たる天皇陛下の御即位20年という節目を祝えるイベントに参加できたこと、光栄の至りです。こちらこそ、ありがとうございました」
「いえいえ。堺司令のところの艦娘たちが参加してくださったおかげで、今回の式典は開催前からものすごい反響でしたよ。それこそ、歴代のどの天皇陛下の統治の節目を祝う軍観閲式よりも、大いに盛り上がりました」
「そんなに盛り上がったのですか?」
「ええ。具体的に言うと、軍の公式チャンネルにおける広報動画の再生回数はなんと全バージョンが1億回を突破し、コマーシャルも再放送に次ぐ再放送。しかもあちこちの放送局からオファーがありましたので、軍広報部には結構な額が入っています。その上、コマーシャルや広報動画の新バージョンが出る度にネットの掲示板やらTwitterやらではこの話題がほぼ毎回トレンド入り、それも上位のトレンドばかりでした。
極めつけには、広報のために張り出したポスターは軒並み盗難の被害に遭ってしまいました」
「えぇ.......」
因みに本来なら盗難届けとか出すべきだろうが、今回ばかりは目を瞑る事にしてある。まあ後でSNSに注意喚起の文章位は掲載するが、今回くらいは見逃しても良いだろう。
「そう言われてみれば、広報用の動画やら写真やらの撮影が始まるのとほぼ同時に、うちに来る観光客が一気に増えてました。しかもバカンスに来たのかと思いきや、揃いも揃ってうちの艦娘たちが目当ての方ばかりでしたから、規則や指示の厳守を必死に呼び掛ける羽目になりましたよ。貴国の方々が礼儀正しい方ばかりだったのが幸いでした」
「オタクたちも分かってますからね。自分1人の勝手な行動で他の大勢に迷惑をかけるようなことがあってはならない、と。もしそんなことをすれば、未来永劫出入り禁止なんてことにもなりかねないのですから。
貴国が我が国で何と呼ばれているか、ご存知ですか? 『聖地中の聖地』ですよ。そんな重要な聖地を汚すなど、あってはならない、というわけです」
「.......何と言うか、妙なところで筋を通しますね、貴国のオタクたちは..............」
会場からの喧騒が海風に乗って聴こえてくる。イベント自体は全て終わったのだが、軍艦の見学やら艦娘たちとの交流やらで帰ろうとしない人が多いらしい。
現に、既に陽が落ちて暗くなっているにも関わらず、ライトアップされた軍艦に向けられるビデオカメラやフラッシュが途絶えない。また、よく目を凝らすと来客が艦娘たちに話しかけ、軽い握手会やサイン会、撮影会になっているものまで散見される。
「これだけ盛り上げることができたのも、堺司令と艦娘たちが参加してくださったおかげです。重ね重ね、本当にありがとうございました」
「とんでもない、お礼を言うのは私の方ですよ。こんなめでたきイベントの末席に連ねてくださり、ありがとうございました」
そう言って、固い握手を交わす2人。次の瞬間、神谷は落ちる感覚に襲われた。
神谷邸 自室
「………んぁ?」
神谷はいつもの様に、神谷邸の自室で目が覚めた。周りには、エルフ五等分の花嫁が転がっている。
「なんだったんだ、あの夢.......。ってか、あれ夢か?なんか妙に現実感あったし」
タウイタウイ、堺修一、艦娘、観艦式、宇宙戦艦ヤマト、波動砲。何やら色々覚えている。堺修一は知らないが、他の単語はよく知る単語だ。
「今何時よ」
そのままベッドの上に置いてあるスマホに手を伸ばしたのだが、そのスマホはいつものスマホでは無かった。
「あ?これ、俺のスマホじゃ.......。ッ!?丸める、スマホ!」
写真アプリをタップし、写真を確認する。そこには夢で見た、あのヤマトの艦上で撮った写真が入っていた。勿論、堺とヤマトもいる。
「.......またいつか、会えるのかねぇ」
神谷はまたいつもの様に、日常へと戻っていく。恐らくあっちの世界にいる堺もまた、艦娘達とのドタバタな日常に戻っているのだろう。また世界が交わる事は、もう無いのかもしれない。だがそれでも、あの奇妙な数ヶ月間は楽しい物であった。
彼らの果てしない、国家や仲間達を護る戦いはまだまだ続く。
以上で特別編は終了となります。コラボしてくださったRed October様、本当にありがとうございました!